JP2006256206A - 樹脂被覆アルミニウム合金板およびそれを用いた缶蓋 - Google Patents
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Abstract
【課題】 安定した開口性と耐フェザリング性を有する缶蓋に適用する樹脂被覆アルミニウム合金板、およびそれを用いた缶蓋を提供する。
【解決手段】 アルマイト処理を施すか、またはアルマイト処理を施した後にさらにシランカップリング処理を施したアルミニウム合金板に、共重合ポリエステルの2層樹脂脂を被覆して樹脂被覆アルミニウム合金板とし、これを缶蓋に成形加工する。
【選択図】 図3
【解決手段】 アルマイト処理を施すか、またはアルマイト処理を施した後にさらにシランカップリング処理を施したアルミニウム合金板に、共重合ポリエステルの2層樹脂脂を被覆して樹脂被覆アルミニウム合金板とし、これを缶蓋に成形加工する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、樹脂被覆アルミニウム合金板に関し、特に手で開口可能な缶蓋(イージーオプンエンドまたはEOE)に用いる樹脂被覆アルミニウム合金板、およびそれを用いた缶蓋に関する。
近年のジュース、ビールなどを充填した飲料缶や野菜や魚肉などを充填した食缶には、缶切りなどの開口治具を用いずに手で開口可能なイージーオプンエンドまたはEOEと呼ばれる易開封の缶蓋(以下、EOEという)が取り付けられている。これらのEOEはアルミニウム合金などの金属板に塗料を塗布したものが用いられていた。しかし、金属板に塗料を塗布し、焼き付ける際の有機溶媒やヒュームの飛散による環境に与える悪影響などの観点から、塗料の塗布に代えて熱可塑性樹脂を被覆してなる樹脂被覆金属板がEOEとして用いられるようになっている。
樹脂被覆アルミニウム合金板を缶用材料に適用した例としては次のようなものがある。例えば特許文献1は、シラン処理、またはアルマイト処理とシラン処理などの表面処理を施したアルミニウム合金板に、ポリエステル樹脂などからなる熱可塑性樹脂を被覆してなる熱可塑性樹脂被覆アルミニウム合金板を開示しており、熱可塑性樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレンなども用途により選択して適用することが記載されている。
この公報に記載の熱可塑性樹脂被覆アルミニウム合金板は、絞りしごき缶、絞り加工後ストレッチ加工を施した缶、絞り加工後ストレッチ加工を施し、さらにしごき加工を施した缶などの厳しい加工が施され、特に皮膜の加工密着性が要求される用途に適用することを目的としたものであり、缶蓋に適用することを目的としたものではない。そのため、缶蓋に適用した場合の開口性、すなわちV字型のスコア加工部を断裂させて開口させた後に開口端面に樹脂が残る(フェザリング)ことなく開口できる特性に関しては必ずしも良好ではなく、安定した開口性が得られない。
特許文献2は、樹脂被覆金属板をEOEとして用いた例であり、ラミネート缶蓋を構成する金属薄板に合成樹脂フィルムを接着した後、合成樹脂フィルム層に多数の微細孔を穿設して破断を容易にすることにより、フェザリングの1種であるエンゼルヘアの発生を防止する方法を開示している。しかし、この方法による缶蓋を缶に用いた場合、缶が高所から落下して変形が生じた場合、微細孔に亀裂が生じて金属板面が大気中に露出し、金属部分が腐食することがある。
本出願に関する先行技術文献情報として次のものがある。
国際公開公報WO98/51840号パンフレット
特開2002−254557号公報
本発明においては、安定した開口性と耐フェザリング性を有する缶蓋に適用する樹脂被覆アルミニウム合金板、およびそれを用いた缶蓋を提供することを目的とする。
本発明の目的を達成するため、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板は、アルマイト処理を施してなるアルミニウム合金板の少なくとも片面に、上層が2〜20μmの厚さのエチレンイソフタレート0〜10モル%とエチレンテレフタレート90〜100モル%からなる共重合体、下層が3〜30μmの厚さのエチレンイソフタレート5〜30モル%とエチレンテレフタレート60〜95モル%からなる共重合体からなり、かつ上層と下層の厚さの総和が5〜50μmである2層樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム合金板(請求項1)、または
アルマイト処理を施し、次いでシランカップリング剤を塗布乾燥してなるアルミニウム合金板の少なくとも片面に、上層が2〜20μmの厚さのエチレンイソフタレート0〜10モル%とエチレンテレフタレート90〜100モル%からなる共重合体、下層が3〜30μmの厚さのエチレンイソフタレート5〜30モル%とエチレンテレフタレート60〜95モル%からなる共重合体からなり、かつ上層と下層の厚さの総和が5〜50μmである2層樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム合金板(請求項2)であり、
上記(請求項1または2)の樹脂被覆アルミニウム合金板において、樹脂被覆アルミニウム合金板の少なくとも2層樹脂を被覆していない側からアルミニウム合金板に2層樹脂被覆界面にまで達するスコア加工を施してアルミニウム合金板部分のみを切断した後、スコア部を90°に折曲げた状態で、折曲げ線の線方向に引張った際の破断に至るまでの2層樹脂のフェザー状の伸びが3mm%以下でかつ、破断荷重が2kgf以下であること(請求項3)を特徴とする。
アルマイト処理を施し、次いでシランカップリング剤を塗布乾燥してなるアルミニウム合金板の少なくとも片面に、上層が2〜20μmの厚さのエチレンイソフタレート0〜10モル%とエチレンテレフタレート90〜100モル%からなる共重合体、下層が3〜30μmの厚さのエチレンイソフタレート5〜30モル%とエチレンテレフタレート60〜95モル%からなる共重合体からなり、かつ上層と下層の厚さの総和が5〜50μmである2層樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム合金板(請求項2)であり、
上記(請求項1または2)の樹脂被覆アルミニウム合金板において、樹脂被覆アルミニウム合金板の少なくとも2層樹脂を被覆していない側からアルミニウム合金板に2層樹脂被覆界面にまで達するスコア加工を施してアルミニウム合金板部分のみを切断した後、スコア部を90°に折曲げた状態で、折曲げ線の線方向に引張った際の破断に至るまでの2層樹脂のフェザー状の伸びが3mm%以下でかつ、破断荷重が2kgf以下であること(請求項3)を特徴とする。
また本発明の缶蓋は、上記(請求項1〜3)の樹脂被覆アルミニウム合金板を用いた易開封の缶蓋(請求項4)である。
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板は、アルマイト処理、またはアルマイト処理後のさらなるシラン処理などの表面処理を施したアルミニウム合金板に、樹脂組成と厚さがそれぞれ異なる共重合ポリエステルからなる2層樹脂を被覆したものであり、特に手で開口可能な缶蓋(イージーオプンエンドまたはEOE)に用いた際に開口しやすく、フェザリングを生じにくく、さらに樹脂層の内容物のフレーバーに与える影響が少ない。そのためEOE用の材料として好適に適用することができる。
本発明においては、アルマイト処理を施すか、またはアルマイト処理を施した後にさらにシラン処理を施したアルミニウム合金板に、共重合ポリエステルの樹脂組成と厚さの異なる2層樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム合金板をEOE用の材料として用いることにより、開口性と耐フェザリング性が常時良好な状態で得られるようにしたものである。以下、本発明の内容を説明する。
従来、アルミニウム合金やティンフリースチールにポリエステル樹脂を積層被覆してなるポリエステル樹脂被覆金属板をEOE用の材料として用いることが試みられている。ポリエステル樹脂は縦横2軸方向に延伸加工した後、配向した結晶状態を熱固定したフィルムとすることにより、強度、加工性、および液体や気体などの耐透過性などの優れた特性が発現する。金属板に2軸延伸ポリエステルフィルムを積層被覆したポリエステル被覆金属板を缶材として適用する場合、2軸延伸ポリエステルフィルムの熱固定温度以上に加熱した金属板に2軸延伸ポリエステルフィルムを当接して熱圧着する。接着強度を向上させるために、ポリエステルフィルムと金属板の間に接着剤を介在させる場合もある。熱圧着する際に金属板に接する部分の樹脂は配向した結晶状態が崩れて非晶質化し、引張強度が低下し伸びが向上し、加工性が増大する。この非晶質化する部分は金属板の加熱温度が高く、金属板に接している時間が長いほど増大する。そのため、絞り缶や絞りしごき缶などの厳しい加工が施される缶用途にポリエステル被覆金属板を適用する場合は、非晶質化する部分を増大させて加工性を高めることが行われている。
一方、2軸延伸ポリエステル被覆金属板をEOEに適用する場合は、金属板に設けたV字型のスコア加工部を断裂させて開口させる際に、金属板と被覆したポリエステルフィルムが共に断裂し、開口端面に樹脂が残ったり、缶蓋のプルタブ以外の部分からポリエステルフィルムが剥離する(フェザリング)ことのない、開口性(フィルムの引裂性)と接着性(耐フェザリング性)を両立することが要求される。このような特性を満足させるためには、2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さ、金属板に積層する前の引張強度や伸びなどの物性、すなわち、フィルムの面配向係数、すなわち延伸倍率や熱固定温度などの製膜条件を厳密に管理したフィルムを用い、金属板に積層する際に金属板の温度を一定範囲に保持し、金属板との接触温度や加圧力を厳密に制御するなど、製膜条件を厳しく管理しなくてはならない。しかし、上記の特性を満足する範囲が極めて狭いために、製膜条件を厳しく管理してもEOEに適用可能なポリエステル被覆金属板を高歩留で製造することは極めて困難である。
本発明においては、開口性、すなわち樹脂の引裂性を向上させるために、特定の共重合ポリエステルの2層樹脂、特に未延伸すなわち無配向の共重合ポリエステルの2層樹脂を、アルマイト処理を施すかまたはアルマイト処理を施した後にさらにシラン処理を施したアルミニウム合金板に積層被覆することにより、優れた引裂性を有し、フェザリングを生じにくいEOE材料として適用するものである。
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板において、アルミニウム合金板に積層被覆する樹脂としては、上層がエチレンイソフタレート0〜10モル%とエチレンテレフタレート90〜100モル%の共重合体からなり、下層がエチレンイソフタレート5〜30モル%とエチレンテレフタレート70〜95モル%の共重合体からなる2層の共重合ポリエステル樹脂を用いる。以下、説明を容易にするために、エチレンイソフタレートをEI、エチレンテレフタレートをET、エチレンイソフタレートとエチレンテレフタレートの共重合体をPETIと称する。
上層のPETIにおいて、EIが10モル%を超える場合は、2層樹脂被覆アルミニウム合金板を缶蓋に成形して用いた場合、缶に充填した内容物の成分が樹脂に吸着されてフレーバーが変化するので好ましくない。また下層のPETIにおいて、EIが5モル%未満であると2層樹脂とアルミニウム合金板の接着力が不足し、開口に際してスコア溝で囲まれたプルタブ外の部分で樹脂が剥離しやすくなる。一方、EIが30モル%を超えても接着力の向上効果が飽和し、コスト的に有利でなくなる。
上記の2層樹脂において上層樹脂の厚さは2〜20μm、下層樹脂の厚さは3〜30μmであり、かつ上層と下層の厚さの総和が5〜50μmであることが好ましい。2層樹脂の厚さの総和が5μm未満であると、アルミニウム合金板に積層被覆して缶蓋として用いた場合に内容物が樹脂を透過して、被覆素地のアルミニウム合金板を腐食することがある。一方、50μmを超えると開口により大きな力が必要となり、またフェザリングが生じやすくなり好ましくない。この5〜50μmのトータル厚さの2層樹脂において上層のPETIの厚さは2〜20μmであることが好ましい。上層のPETIの厚さが2μm未満であると十分な引裂性が得られない。一方、20μmを超えても引裂性の向上効果が飽和し、コスト的に有利でなくなる。また、この5〜50μmのトータル厚さの2層樹脂において下層のPETIの厚さは3〜30μmであることが好ましい。下層のPETIの厚さが3μm未満であると樹脂とアルミニウム合金板の接着力が不足し、開口に際してスコア溝で囲まれたプルタブ外の部分で樹脂フィルムが剥離しやすくなる。一方、30μmを超えても接着力の向上効果が飽和し、コスト的に有利でなくなる。
上記の2層樹脂を被覆する基板としては、密着性に優れていることが必要であり、表面にアルマイト処理を施したアルミニウム合金板、またはアルマイト処理を施し、次いでシランカップリング剤を塗布乾燥してなるアルミニウム合金板を用いることが好ましい。
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板は、上記2層樹脂を上記のアルミニウム合金板からなる基板の少なくとも片面に積層被覆することにより得られる。2層樹脂の下層樹脂がアルミニウム合金板からなる基板に接するようにして、公知の熱接着法を用いて接着する。接着強度を高めるためにアルミニウム合金板と2層樹脂の間に接着剤を介して熱接着してもよい。また、前記した2層樹脂の製造において、共押出機でそれぞれの樹脂ペレットを加熱溶融してTダイから共押出する際に、アルミニウム合金板上に直接押し出して積層被覆してもよい。
このようにして得られる本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板においては、樹脂被覆アルミニウム合金板の少なくとも2層樹脂を被覆していない側からアルミニウム合金板に2層樹脂被覆界面にまで達するスコア加工を施してアルミニウム合金板部分のみを切断した後、スコア部を90°に折曲げた状態で、折曲げ線の線方向に引張った際の破断に至るまでの2層樹脂のフェザー状の伸びが3mm以下でかつ、破断荷重が2kgf以下であることが好ましい。
フェザー状の伸びおよび破断荷重は以下のようにして測定する。すなわち、図1に示すように樹脂被覆アルミニウム合金板から短冊状の供試片1を切り出し、供試片1の2層樹脂2を被覆していない側からアルミニウム合金板3に、2層樹脂被覆界面にまで達するスコア加工4を施す。また、供試片1の上下端部のいずれか一方の右端部または左端部の一方に、下記の引張試験において供試片1をチャックに回転自在に固定するための孔5を穿設する。次いで、スコア加工部4を折曲げてアルミニウム合金板3を完全に切断する。この状態で2層樹脂2は無傷の状態で保持される。次に図2に示すようにアルミニウム合金板3の切断部からある程度離れた部分で供試片1を90°折り曲げる。このように成形加工した供試片1を、図3に示すようにスコア加工部4において2層樹脂2が90°折り曲げられた状態で供試片1の上下部を、孔5を穿設した片端部がチャックの片方に設けた突起部に嵌合するようにしてチャックに固定し、折り曲げ線の線方向Cに引張り、2層樹脂2が折り曲げ線の片端から引張った際に、2層樹脂2が伸びてフェザー状に引き裂かれて伸び6が生じる。そして図4に示すように、フェザー状の伸び6の最大部分7をフェザー状の伸びとして測定し、引張った際の最大荷重破断荷重として測定する。
フェザー状の伸びおよび破断荷重は以下のようにして測定する。すなわち、図1に示すように樹脂被覆アルミニウム合金板から短冊状の供試片1を切り出し、供試片1の2層樹脂2を被覆していない側からアルミニウム合金板3に、2層樹脂被覆界面にまで達するスコア加工4を施す。また、供試片1の上下端部のいずれか一方の右端部または左端部の一方に、下記の引張試験において供試片1をチャックに回転自在に固定するための孔5を穿設する。次いで、スコア加工部4を折曲げてアルミニウム合金板3を完全に切断する。この状態で2層樹脂2は無傷の状態で保持される。次に図2に示すようにアルミニウム合金板3の切断部からある程度離れた部分で供試片1を90°折り曲げる。このように成形加工した供試片1を、図3に示すようにスコア加工部4において2層樹脂2が90°折り曲げられた状態で供試片1の上下部を、孔5を穿設した片端部がチャックの片方に設けた突起部に嵌合するようにしてチャックに固定し、折り曲げ線の線方向Cに引張り、2層樹脂2が折り曲げ線の片端から引張った際に、2層樹脂2が伸びてフェザー状に引き裂かれて伸び6が生じる。そして図4に示すように、フェザー状の伸び6の最大部分7をフェザー状の伸びとして測定し、引張った際の最大荷重破断荷重として測定する。
上記のようにして測定した樹脂被覆アルミニウム合金板の樹脂のフェザー状の伸びが3mmを超え、また破断荷重が2kgfを超える樹脂フィルムを用いて作製したEOEを開口した場合、樹脂フィルムが断裂しにくくフェザリングが生じやすくなる。フェザー状の伸びおよび破断荷重は特に0〜100℃の温度範囲でそれぞれ3mm以下、2kgf以下であることが好ましい。ジュースや炭酸飲料などの冷やして飲む飲料を充填した缶などは、行楽などに出発する前に0℃以下の温度に冷却して持って行き、目的地で内容物が凍った状態で開口する場合がある。また、汁粉やスープなどの飲料を充填した缶などは、沸騰水中に浸漬して暖めた状態で開口する場合がある。このように、缶蓋は0〜100℃の温度範囲で開口する可能性があるため、この温度範囲でフェザリングの発生を防止するためには、上記のようにして測定した樹脂被覆アルミニウム合金板の樹脂の破断伸び、および破断強度は0〜100℃の温度範囲でそれぞれ3mm以下、2kgf以下であることが好ましい。
本発明の缶蓋は、上記のようにして得られる樹脂被覆アルミニウム合金板を円板状のブランクに打ち抜き、その片面に、またはアルミニウム合金板の片面のみに樹脂を被覆したアルミニウム合金板の場合は樹脂フィルムを被覆していない側の面にスコア溝を刻設することによって得られる。以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。
(2層樹脂の作製)
表1に示すEI(括弧内にモル%を表示)およびET(括弧内にモル%を表示)の組成を有するPETIを用い、押出法により表1に示す厚さを有する2層の無延伸の樹脂フィルムを作成した。また、比較用にポリエステル樹脂フィルム(上層が厚さ15μmのEI(5モル%)・ET(95モル%)共重合体(表1中でEI(5)・ET(95)で表示)、下層が厚さ5μmのEI(15モル%)・ET(85モル%)共重合体(表1中でEI(15)・ET(85)で表示)の2層フィルム、)の2軸延伸フィルム(面配向係数:0.145)も作製した。ポリエステル樹脂フィルムの面配向係数はアッベイの屈折計を用いて測定した平面方向(縦方向、横方向)および厚さ方向の屈折率より算出した。
表1に示すEI(括弧内にモル%を表示)およびET(括弧内にモル%を表示)の組成を有するPETIを用い、押出法により表1に示す厚さを有する2層の無延伸の樹脂フィルムを作成した。また、比較用にポリエステル樹脂フィルム(上層が厚さ15μmのEI(5モル%)・ET(95モル%)共重合体(表1中でEI(5)・ET(95)で表示)、下層が厚さ5μmのEI(15モル%)・ET(85モル%)共重合体(表1中でEI(15)・ET(85)で表示)の2層フィルム、)の2軸延伸フィルム(面配向係数:0.145)も作製した。ポリエステル樹脂フィルムの面配向係数はアッベイの屈折計を用いて測定した平面方向(縦方向、横方向)および厚さ方向の屈折率より算出した。
(アルミニウム合金板の処理)
上記のようにして製膜した2層樹脂を被覆する基板として、アルミニウム合金板(JIS:5182、厚さ:0.30mm)に下記の条件でアルマイト処理を施した。
[脱脂処理]
70℃に加熱した市販の脱脂剤(EC370、日本ペイント(株)製)の1%溶液中に20秒間浸漬した後、水洗し乾燥した。
[アルカリ処理]
50℃に加熱した10%水酸化ナトリウム水溶液中に15秒間浸漬した後、水洗し乾燥した。
[酸洗処理]
室温の7%硫酸中に5秒間浸漬した後、水洗し乾燥した。
[アルマイト処理]
上記のようにして脱脂処理、アルカリ処理、酸洗処理を施したアルミニウム合金板を陽極として、40〜50℃に加熱した15%の硫酸水溶液中で、10A/dm2 の電流密度で5秒間電解し、アルミニウム合金板にアルマイト処理を施し、表1にAで示す2層樹脂被覆用基板とした。
[シランカップリング処理]
上記のようにしてアルマイト処理を施したアルミニウム合金板に、さらに下記の条件でシランカップリング処理を施した。すなわち、シランカップリング剤(KBM903、信越化学工業(株)製)を水/エタノールを2/1に混合した溶液に5%の濃度で希釈し、30℃に加熱した溶液中に5秒間浸漬して塗布乾燥し、表1にBで示す2層樹脂被覆用基板とした。
上記のようにして製膜した2層樹脂を被覆する基板として、アルミニウム合金板(JIS:5182、厚さ:0.30mm)に下記の条件でアルマイト処理を施した。
[脱脂処理]
70℃に加熱した市販の脱脂剤(EC370、日本ペイント(株)製)の1%溶液中に20秒間浸漬した後、水洗し乾燥した。
[アルカリ処理]
50℃に加熱した10%水酸化ナトリウム水溶液中に15秒間浸漬した後、水洗し乾燥した。
[酸洗処理]
室温の7%硫酸中に5秒間浸漬した後、水洗し乾燥した。
[アルマイト処理]
上記のようにして脱脂処理、アルカリ処理、酸洗処理を施したアルミニウム合金板を陽極として、40〜50℃に加熱した15%の硫酸水溶液中で、10A/dm2 の電流密度で5秒間電解し、アルミニウム合金板にアルマイト処理を施し、表1にAで示す2層樹脂被覆用基板とした。
[シランカップリング処理]
上記のようにしてアルマイト処理を施したアルミニウム合金板に、さらに下記の条件でシランカップリング処理を施した。すなわち、シランカップリング剤(KBM903、信越化学工業(株)製)を水/エタノールを2/1に混合した溶液に5%の濃度で希釈し、30℃に加熱した溶液中に5秒間浸漬して塗布乾燥し、表1にBで示す2層樹脂被覆用基板とした。
(樹脂被覆アルミニウム合金板の作製)
次いで、これらの2層樹脂被覆用基板AまたはBの片面に、表1に示す2層樹脂フィルムを熱接着法を用いて積層被覆し、表1に示す樹脂被覆アルミニウム合金板(試料番号:1〜10)を作成した。比較用のポリエステル樹脂フィルムを積層被覆したアルミニウム合金板は、熱接着条件を変えて、配向をやや低下させたもの(試料番号:11)を作製した。
次いで、これらの2層樹脂被覆用基板AまたはBの片面に、表1に示す2層樹脂フィルムを熱接着法を用いて積層被覆し、表1に示す樹脂被覆アルミニウム合金板(試料番号:1〜10)を作成した。比較用のポリエステル樹脂フィルムを積層被覆したアルミニウム合金板は、熱接着条件を変えて、配向をやや低下させたもの(試料番号:11)を作製した。
このようにして得られた表1に示す試料番号:1〜11の樹脂被覆アルミニウム合金板から幅20mm、長さ50mmの短冊状の試片を切り出し、図1に示すように、試片の端部のいずれか一方の端部に、引張試験において試片をチャックに回転自在に固定するための孔を穿設した。また孔を穿設した側の端部から20mmの部分に、試片の樹脂を被覆していない側からアルミニウム合金板に、樹脂被覆界面にまで達するスコア加工を施した後、スコア部分で折曲げてアルミニウム合金板を切断した。次いで図2に示すように、アルミニウム合金板の切断部分から10mm離れた部分で試片1を90°折り曲げた。このように成形加工した試片を、図3に示すようにスコア加工部において樹脂2が90°折り曲げられた状態で試片の上下部を、孔を穿設した片端部がチャックの片方に設けた突起部に嵌合するようにしてチャックに固定し、折り曲げ線の線方向に引張り、樹脂が折り曲げ線の片端から引き裂かれるようにしてフェザー状の伸びおよび破断荷重を測定した。
また、上記の試料番号:1〜11の樹脂被覆アルミニウム合金板から円板状のブランクを打ち抜き、樹脂フィルムを被覆していない面にスコア残厚が50μmとなるようにしてスコア溝を刻設し、プルタブリングを取り付けてEOE缶蓋を作製した。EOE缶蓋を各試料板から500個作成して開口し、開口端部の樹脂の残存状態を肉眼観察し、以下の基準で耐フェザリング性を評価した。
◎:500個全てにおいて樹脂の残存は認められない。
○:500個のうち2個未満でわずかな樹脂の残存が認められる。
△:500個のうち2個以上5個未満で樹脂の残存が認められる。
×:500個のうち5個以上で樹脂の残存が認められる。
これらの評価結果を表2に示す。
◎:500個全てにおいて樹脂の残存は認められない。
○:500個のうち2個未満でわずかな樹脂の残存が認められる。
△:500個のうち2個以上5個未満で樹脂の残存が認められる。
×:500個のうち5個以上で樹脂の残存が認められる。
これらの評価結果を表2に示す。
表2に示すように、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板から作製した缶蓋においては、優れた耐フェザリング性を示す。
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板をEOEとして缶蓋に用いた場合、フェザリングを生じることなく安定して開口することが可能である。
1 : 供試片
2 : 2層樹脂
3 : アルミニウム合金板
4 : スコア加工部
5 : 孔
6 : フェザー状の伸び
7 : フェザー状の伸びの最大値
a : 供試片の引張り方向を示す矢印
b : 供試片の引張り方向を示す矢印
c : 2層樹脂を引き裂く方向を示す矢印
2 : 2層樹脂
3 : アルミニウム合金板
4 : スコア加工部
5 : 孔
6 : フェザー状の伸び
7 : フェザー状の伸びの最大値
a : 供試片の引張り方向を示す矢印
b : 供試片の引張り方向を示す矢印
c : 2層樹脂を引き裂く方向を示す矢印
Claims (4)
- アルマイト処理を施してなるアルミニウム合金板の少なくとも片面に、上層が2〜20μmの厚さのエチレンイソフタレート0〜10モル%とエチレンテレフタレート90〜100モル%からなる共重合体、下層が3〜30μmの厚さのエチレンイソフタレート5〜30モル%とエチレンテレフタレート60〜95モル%からなる共重合体からなり、かつ上層と下層の厚さの総和が5〜50μmである2層樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム合金板。
- アルマイト処理を施し、次いでシランカップリング剤を塗布乾燥してなるアルミニウム合金板の少なくとも片面に、上層が2〜20μmの厚さのエチレンイソフタレート0〜10モル%とエチレンテレフタレート90〜100モル%からなる共重合体、下層が3〜30μmの厚さのエチレンイソフタレート5〜30モル%とエチレンテレフタレート60〜95モル%からなる共重合体からなり、かつ上層と下層の厚さの総和が5〜50μmである2層樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 請求項1または2に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板の少なくとも2層樹脂を被覆していない側からアルミニウム合金板に2層樹脂被覆界面にまで達するスコア加工を施してアルミニウム合金板部分のみを切断した後、スコア部を90°に折曲げた状態で、折曲げ線の線方向に引張った際の破断に至るまでの2層樹脂のフェザー状の伸びが3mm以下でかつ、破断荷重が2kgf以下であることを特徴とする、樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆アルミニウム合金板を用いてなる易開封の缶蓋。
Priority Applications (1)
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