JP4405299B2 - 耐デント性に優れた金属缶成形加工用ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板及び金属缶 - Google Patents

耐デント性に優れた金属缶成形加工用ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板及び金属缶 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板及びポリエステルフィルム被覆金属板を成形して得られるポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶に関するものである。更に詳細には、製缶性(例えば、絞り・しごき加工性)に優れたポリエステル樹脂フィルム被覆金属板に関するもので、特に高速製缶性に優れているため、生産性が高くしかも歩留まりが良好なポリエステル樹脂フィルム被覆金属板に関するものである。また、得られる缶は内容物を充填・密封した後、例えば、缶体が落下等により打撃や衝撃を受けても、内面フィルムの破壊・損傷が起こり難い、と言った「耐デント性」に優れた特性を有しているため、内容物の保存性に優れている。
スチールやアルミニウムを素材とした金属缶・容器は、その形状からスリーピース缶とツーピース缶とに大別される。スリービース缶は、地蓋、缶胴、天蓋から成るためスリービース缶と呼ばれており、製胴方法が現在はシーム溶接や接着が主であることから、価格の安いスチールが使用されている。一方、ツーピース缶は、地蓋と缶胴とが一体となったもので、それに天蓋とから成るためツーピース缶、又は、缶胴部に接合部がないことからシームレス缶とも呼ばれ、絞り加工や絞り・しごき加工で製缶されスチールとアルミニウムが使用されている。
金属缶の場合、内面は内容物による腐食防止の点から塗装が、一方、外面は内容物の提示や商標デザインの提示等の点から塗装・印刷が施されている。こうした塗装に使用されるエポキシ系、フェノール系と言った各種の熱硬化性塗料は樹脂を有機溶剤に溶解したものや分散させたものを塗布・乾燥して金属を被覆するもので、広く使用されている。しかしながら、こうした熱硬化性樹脂の被覆方法は乾燥時間が長くかかり生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など、種々の問題を発生させることが多い、と言った欠点があった。
こうした種々の問題を解消するため、近年、熱可塑性樹脂フィルムを積層した、ラミネート缶が開発され市場に出回っており、樹脂フィルムを金属板に被覆した技術は、例えば特開平2−70430号公報(特許文献1)、特開平4−224936号公報(特許文献2)、および特開平6−320669号公報(特許文献3)に開示されている。
しかし、こうした開示されている技術では、缶の内面側用フィルムとして適用した場合、式(1)で表される缶壁部の加工度(板厚減少率とも呼ばれる)が高い絞り・しごき加工に耐えるフィルムはなく、高加工度のしごき加工を行うとフィルムが成形に追随しないため、缶胴部のフィルムにマイクロクラックが入り易く、激しい場合はフィルム破断に繋がる場合がある。更に言えば、例えば、60缶/分以上の高速成形を行った場合、缶の内面側のフィルムが成形加工パンチに粘着して、パンチが抜け難い、と言った問題が起こり易く、高加工性に劣る、と言った欠点も有している。
加工度(%)={(元素厚−缶壁部板厚)/元板厚}×100・・・(1)
また、缶体に内容物が充填・密封された後、缶体が落下等による打撃や衝撃を受けた場合、その部位では金属材料が変形するばかりでなく、同時にその打撃、衝撃と金属材料の変形により被覆されているフィルムや塗膜にクラックが入ったり、剥離する、と言った状況が起こる場合がある。こうした、フィルムや塗膜にクラックが入った部位や剥離した部位は缶体金属の腐食起点となり、内容物によっては金属腐食の形態が孔食となり缶体に孔が開くと言った穿孔缶となる場合がある。
従って、塗膜やフィルムは缶体が落下等により打撃や衝撃を受けても、クラックが入り難いことや剥離が起こらないことが重要で、こうした特性を塗膜やフィルム面からは「耐デント性」と呼ばれている。耐デント性は、結晶性ポリエステルの場合、特に、レトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理によって著しく低下するため、充填する内容物に制約があった。
樹脂フィルムの耐デント性を向上させるための技術は、例えば特開平9−323379号公報(特許文献4)に開示されている。この技術は(A)エチレンテレフタレートを主体とする結晶性ポリエステルと(B)ポリブチレンテレフタレート或いはポリブチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルのブレンド物からなっており、ブレンド物中のエステル交換率を限定した技術であるが、基本的には結晶性の高いポリエステル樹脂を適用していること、またブレンド物中のエステル交換率の制御が難しいこと等から、必ずしも前述したレトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理を経た後の耐デント性が十分に確保できるとは言えない技術である。
更に、特開平7−2241号公報(特許文献5)には、表層がエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル、コポリエステルからなり金属と接する側の層には、ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステル乃至コポリエステルとエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル乃至コポリエステルを必須成分とした複層構造を有し、且つ缶の状態で缶底部及び缶上部の表層フィルムの複屈折率を0.04乃至0.18に限定した技術が提案されている。しかし、この技術は、加工を受けない缶底部の表層フィルムも複屈折率を有していることから、フィルムは成形加工に供するラミネート材の段階で配向結晶化しており、耐デント性は良くても絞り・しごき加工、特に高速・高加工度の絞り・しごき加工には適さないものであった。
また、特開平6−255022号公報(特許文献6)には、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂をブレンドした樹脂層を金属板に被覆する方法によって低温化における衝撃加工性を付与する手段が開示され、特開平6−226915号公報(特許文献7)には、ポリカーボネート樹脂層とポリエステル樹脂層からなる二層フィルムを金属板に被覆する方法によって衝撃加工性を付与する手段が開示されているが、これらの手段は、近年問題となった環境ホルモン問題から、なかなか実用化し難い面がある。
更に、耐デント性が良好なポリエステル被覆積層体が、特開平10−119183号公報(特許文献8)に開示されている。この技術は、(I):ポリエチレンテレフタレート・セグメント、(II):ブチレングリコールと芳香族二塩基酸から誘導されたポリエステル・セグメント、(III):ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸から誘導されたポリエステル・セグメントを(I):(II):(III)=10〜70:12〜81:3〜54の質量%で含有し、更にヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜1.5質量%含有するポリエステルよりなる積層体である。
しかしながら、該積層体を、例えば80缶/分の速い速度で絞り・しごき加工して金属缶を得ようとした場合、加工パンチまたはダイスとの離型性が悪く、フィルムの破れやカジリの発生が起こり易く、ポリエステル被覆積層体として満足できるものではなかった。 従って、現状では、高速・高加工の絞り・しごき加工が可能で、かつ得られる缶体が耐デント性に優れたものはなく、こうした缶体の出現が所望されているのが現実である。
特開平2−70430号公報 特開平4−224936号公報 特開平6−320669号公報 特開平9−323379号公報 特開平7−2241号公報 特開平6−255022号公報 特開平6−226915号公報 特開平10−119183号公報
本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板は、特に、絞り・しごき加工等による製缶における、高速(例えば、60缶/分以上)・高加工度(例えば、前述した缶胴部の板厚減少率で25%以上、缶胴部の局部的最大板厚減少率としては50%以上)での製缶性に優れたポリエステル樹脂フィルム被覆金属板を提供するものである。また、本発明の缶体は耐食性に優れ、例えば、内容物の充填・密封後の缶体が落下等による打撃や衝撃を受けても缶の内面フィルムにはクラックや剥離と言った損傷が起こり難い、と言った良好な耐デントを有していることから、内容物の保存性に優れた缶体を提供するものである。
特に、上記の良好な耐デント性と言った特性は、内容物によっては充填・密封した後に施されるレトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理を経た後でも良好であることから、多様な内容物の充填に対応できる優れたポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶を提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板は、少なくとも缶の内面側に相当する金属板表面に被覆されるポリエステル樹脂フィルム(F)は、ゴム弾性樹脂(R)を含有するポリエステル樹脂フィルム層(B層)とポリエステル樹脂フィルム層(A層)とからなる二層構成のフィルムであり、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)が金属板と相接して被覆されていることを特徴とする耐デント性に優れた金属缶成形加工用ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板としている。
更に詳細には、前記のポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、融点(B−Tm)が220℃以上、結晶融解熱(B−Hm)及び/または冷結晶化熱(B−Hc)が20〜45J/g、極限粘度(B−IV)が0.55dl/g以上であるポリエステル樹脂からなり、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、融点(A−Tm)が235℃以上、ガラス転移温度(A−Tg)が65℃以上、結晶融解熱(A−Hm)及び/または冷結晶化熱(A−Hc)が25〜50J/g、極限粘度(A−IV)が0.60dl/g以上、であるポリエステル樹脂からなる。
更に、前記のポリエステル樹脂フィルム層(B層)には、ポリエステル樹脂100質量部に対して等価球換算径として2000nm以下の微粒子のゴム弾性樹脂(R)を5〜40質量部と極性基を有するビニル重合体(V)を1〜10質量部を含有する、混合ポリエステル樹脂からなっており、ゴム弾性樹脂(R)としては、特にポリエチレン及び/またはエチレン−ブテン共重合体が最適である。又、本発明の金属缶は、上記のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板から成形加工、特に絞り・しごき加工を行って得られる金属缶であって、缶体の内面側に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)の密度が1.360g/cm3 以下であるポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶としている。
以上、説明したように、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板は、等価球換算径として2000nm以下のゴム弾性樹脂(R)を含有する、融点(B−Tm)が220℃以上、ガラス転移温度(B−Tg)が65℃以上、結晶融解熱(B−Hm)及び/または冷結晶化熱(B−Hc)が20〜45J/g、極限粘度(B−IV)が0.55dl/g以上であるポリエステル樹脂フィルム層(B層)と融点(A−Tm)が235℃以上、ガラス転移温度(A−Tg)が65℃以上、結晶融解熱(A−Hm)及び/または冷結晶化熱(A−Hc)が25〜50J/g、極限粘度(A−IV)が0.60dl/g以上であるポリエステル樹脂フィルム層(A層)とからなる二層構成のフィルムであるポリエステル樹脂フィルム(F)を、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)が金属板と相接するように被覆させた金属板、としたことにより、例えば、絞り・しごき加工のような加工成形における高速・高加工度での製缶性に優れている、と言った利点を有している。
又、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板は、高速・高加工度の絞り・しごき加工性に優れていることから、成形時に発生する内面フィルムの成形傷が入り難いため、缶体の内面フィルムの健全性が確保出来る、と言った利点を有している。
又、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶は、上記ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板から成形して得られる金属缶であって、缶の内面側に被覆されている該ポリエステル樹脂フィルム(F)の密度を1.360g/cm3 以下であるポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶としたことにより、内容物を充填・密封した缶体が落下された場合に起こるフィルムのマイクロクラックや剥離が、特にレトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理を経た後でも発生し難い、と言った優れた耐デント性を有する、と言った利点を有している。
本発明における第一の発明であるポリエステル樹脂フィルム被覆金属板について述べる。まず、本発明で適用されるポリエステル樹脂フィルム(F)について述べる。
本発明では、少なくとも缶の内面側に相当する金属板表面に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)とからなる二層構成のフィルムで、共に結晶性のポリエステル樹脂を基本樹脂とし、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)が金属板と相接して被覆されている。
ポリエステル樹脂フィルム層(A層)及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の各フィルム層は、成形性や耐デント性に対しお互いに作用をしあうが、基本的には本発明の目的達成に対し役割分担を有しており、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は主に高速・高加工度での製缶性の確保を担い、ゴム弾性樹脂(R)を含有するポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、主に耐デント性の確保を担っている。
本発明におけるポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ゴム弾性樹脂(R)を基本樹脂であるポリエステル樹脂に含有させ、打撃や衝撃のエネルギーを吸収する作用を付与させたものである。こうしたゴム弾性を有する樹脂の内、特にガラス転移温度(Tg)が10℃以下の樹脂が最適である。この理由は、例えば、炭酸飲料やビール等では、当然低温で保存されるため、そうした低温下でも打撃や衝撃のエネルギーを吸収する作用を有する必要があるからである。かかる意味において、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下の樹脂が、更に好適にはガラス転移温度(Tg)が4℃以下の樹脂が耐デント性を確保するためには良い。
ゴム弾性樹脂(R)として好適な樹脂は、ポリエチレン及びエチレン−ブテン共重合体で、これらの樹脂の1種或いは2種を適用することが挙げられる。ポリエチレンを適用する場合は、密度が0.90〜0.96g/cm3 の範囲にあるポリエチレン樹脂の微粒子が、特に最適である。この理由は、密度が0.90g/cm3 未満の場合は、ポリエステル樹脂に含有させる量にもよるが、フィルム層全体が軟質化するため、カップ成形時のラミネート金属板の剪断で切れが悪くなり、フィルムヘアーと呼ばれる剪断端部にフィルム残りが起こる場合がある。このフィルム残りがカップ成形時に離脱して、カップや金型に付着したりすると、缶体の品質不良や成形不良の原因となり、重大な問題を引き起こす危険があるため、好ましくない。
また、密度が0.96g/cm3 を超えると硬質化してくるため、前述したフィルムヘアー問題はないが、衝撃エネルギーを吸収する能力が低下し、本発明の目的である耐デント性向上効果が小さくなり、好ましくない。ポリエチレン及びエチレン−ブテン共重合体等の樹脂はポリエステル樹脂に対しては非相溶性樹脂であるため、ポリエステル樹脂中に分散系として存在し、その含有量は、それぞれ1種の場合はポリエステル樹脂100質量部に対してそれぞれが5〜40質量部で、2種の場合はポリエチレンとエチレン−ブテン共重合体の含有量を適宜選択することが可能であるが、総含有量としてはポリエステル樹脂100質量部に対して5〜40質量部である。
含有量が5質量部未満では、衝撃エネルギーを吸収する能力が十分に発揮出来ず、耐デント性が確保出来ない場合があり、好ましくない。一方、含有量が40質量部を超えると、含有するポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体の特性が発現してくるため、耐熱性が低下し、高速・高加工の絞り・しごき加工で内面フィルムがパンチに粘着したり、パンチの内面フィルムへの食い込みが起こったりして、パンチの離型性(パンチが缶体からの抜け易さを示す特性でストリップアウト性とも呼ばれている)が劣ってくるため、成形された缶胴上部に挫屈が起こったり、激しい場合は缶体がパンチから抜けないといったことが起こり正常な缶体が得られにくく好ましくない。
含有量の最適範囲は、分散させる樹脂の等価球換算径との関係もあり、単純には決められない面もあるが、後述する等価球換算径であれば、7〜30質量部の範囲が良好な耐デント性確保と高速・高加工度における製缶性の確保の両方を兼備させることができるので好ましい。更に、本発明では、ポリエステル樹脂中に分散系として存在するポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体は、基本形状としては球状で、等価球換算径として2000nm以下の微粒子である。
本発明において、ポリエステル樹脂中に分散系として存在するポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂の大きさは、衝撃エネルギーを吸収する能力を確保する上で、含有量との関係を含め重要となる。理想的な姿としては、分散させる樹脂の等価球換算径が小さい程緻密な充填状態の確保が可能となるため、少ない含有量で衝撃エネルギーを吸収する能力を発揮させることが可能となる。逆に、分散させる樹脂の径が大きいと、疎らな充填状態となるため衝撃エネルギーを吸収する能力が低下し、含有量を多くしないと衝撃エネルギーを吸収する能力を確保することが難しくなる。その結果前述した耐熱性が低下し、高速・高加工の絞り・しごき加工でパンチの離型性が劣り正常な缶体が得られない、と言った現象が現れ易くなる。
従って、ポリエステル樹脂中に存在するポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂は、等価球換算径として小さいほど好ましいが、安定して製造可能な観点からと、前述した含有量の観点からは200nmまでが現実的なサイズ径であるため、下限値は200nmとする。一方、上限値である2000nmを超えると、前述したように耐デント性確保の点から含有量を多くする必要があり、好ましくない。
更に、安定的に製造できる点と耐デント性の確保の両面からは、等価球換算径の下限値は250nm以上であり、また、耐デントと高速・高加工の絞り・しごき加工性の両方を確保できる面からは、上限値は少なくとも1800nm以下、より良い等価球換算径として1500nm以下が好ましい。本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、前記のゴム弾性樹脂(R)の他に、極性基を有するビニル重合体(V)を1〜10質量部を含有する。
前述したように、ポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂は、ポリエステル樹脂に対しては非相溶性の樹脂であるため、本発明のようにいかに等価球換算径の小さい微粒子として分散させたとしても、ポリエステル樹脂とポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂との境界はお互いの化学結合はないため、接しているだけである。従って、加工度の大きい加工を行うと、樹脂同士の境界で界面剥離となり、フィルム内で内部欠陥を作る原因となる。こうした内部欠陥の部位では水、イオン、ガスと言った物質の透過がし易くなり、バリアー効果が低下する。従って、内容物が充填された缶体としては、金属腐食が起こり易くなるため、缶寿命の低下に繋がり好ましくない。又、ポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂は、金属との自己接着能を有していない樹脂であるから、金属板との密着性低下の原因となる。
本発明では、上記の問題を回避すること、更には、ポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂の等価球換算径サイズを一定の範囲内に安定的に確保することを目的として、極性基を有するビニル重合体(R−V)をポリエステル樹脂100質量部に対して1〜10質量部を含有させるものである。極性基を有するビニル重合体(V)は、ポリエステル樹脂とポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂との相溶化剤として作用するもので、界面張力の差を利用してポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂にカプセル構造を形成させる。従って、ポリエチレやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂がコア部、ビニル重合体(V)がシェル部として形成されるため、ポリエステル樹脂内で前述した分散構造を容易にとることが可能となる。
更に、シェル部となるビニル重合体(V)は極性基を有しているため、ポリエステル樹脂の末端の水酸残基やカルボキシル残基と化学結合して一体化するため樹脂間の界面密着性が向上し、高加工度の加工を行なってもフィルム内の内部欠陥を作り難い。更に、金属板との密着性も向上させる、と言った効果も併せ持つ。
極性基を有するビニル重合体(V)としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレン・メチレンアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合物等のアクリル系樹脂が適用でき、これらのアクリル樹脂の1種もしくは2種以上でも適用可能である。
極性基を有するビニル重合体(V)の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜10質量部の範囲である。1質量部未満では、ポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体のシェル部を形成させるには不十分な量で、前述したように加工度の大きい加工を行うとフィルム内の内部欠陥を作る危険性や金属板との密着性が不十分な危険性が高くなるため、好ましくない。又、10質量部を超えても、シェル部の形成に対し過剰となり効果が飽和してくるため、経済的でない。
極性基を有するビニル重合体(V)は、ポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体等の樹脂の分散性と変性として作用させるものであるから、極性基を有するビニル重合体(V)の含有量は、ポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体樹脂の含有量に対応して適宜選定する必要があるということは言うまでもないが、ビニル重合体(V)とポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体樹脂の質量部比で0.1〜0.3の範囲が好ましい範囲である。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)に適用するポリエステル樹脂の融点(B−Tm)は230℃以上である。
前述したように、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板では、高速・高加工度の製缶性確保を担っているのは主にポリエステル樹脂フィルム層(A層)であるが、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は全く関与しない訳ではなく、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)に使用するポリエステル樹脂の融点(B−Tm)が220℃未満の場合、高速・高加工度の成形加工の際、絞り加工においては成形性に大きな問題は起こり難いが、特に、しごき加工でパンチの離型性が劣り、パンチが成形された缶体から抜け難くなるため、缶体の上部で挫屈する、と言った現象や、激しい場合は全くパンチが抜けない、と言った現象が起こる場合がある。
こうした現象は、主に、金属の加工による加工熱やフィルムと加工金型との摩擦によって発生する摩擦熱がフィルムを軟化させるために起こる現象で、特にしごき加工において、高加工度になる程発熱量は大きく、また加工速度が速いほど加工時に発生した熱が放熱されない状態で次の成形加工が行われるため、単位時間当たりの金型への蓄熱量は大きくなる。こうした金型への蓄熱を抑え、フィルムへの影響を小さくする方法として、金型を冷却する方法が提案されているが、高速化になるほど冷却速度の方がなかなか追いつかなくなるため、自ずと限界があり、かかる意味からもポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(B−Tm)も間接的には重要な要素となり、本発明ではポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(B−Tm)は、220℃以上とする。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(B−Tm)が220℃以上であれば、後述する加工速度及び加工度の範囲であれば問題はなく、連続成形が可能となる。
本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点(B−Tm)の上限値は特に限定していないが、その上層にあるポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)より高い融点を有するポリエステル樹脂では、金属板に被覆する際のラミネート性から好ましくなく、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)−30℃以内、好ましくはポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)−25℃以内の融点が、ラミネート適性、更には後述するフィルムの密度を1.360g/cm3 以下にする際の加熱処理で、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)のフィルム収縮が抑制されるため、好ましい。
ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の結晶融解熱(B−Hm)及び/または冷結晶化熱(B−Hc)は、20〜45J/gの範囲である。結晶融解熱(Hm)及び冷結晶化熱(Hc)は、共に樹脂の結晶性を熱量で示したもので、冷結晶化熱(Hc)は単位質量当たりの樹脂が熱で結晶化する量を熱量で示したもので、結晶融解熱(Hm)は単位質量当たりの樹脂が熱で結晶化したものが融解する量を熱量で示したものである。従って、冷結晶化熱(Hc)が大きいことは結晶化する量が多いことを示し、結晶融解熱(Hm)が大きいことは結晶化した量が多いことを示している。
通常、絞り・しごき加工の場合、所望する缶サイズ、例えば350mlのビール缶サイズを得るためには、缶胴部の金属板の破断防止から2回若しくは3回のしごき加工、即ち多段しごき加工を行っているのが一般的である。
前述したように、高速・高加工度のしごき加工では、ポリエステル樹脂は加工時の発熱により結晶化と缶高さ方向へ伸ばされることにより延伸化が同時に起こる。この結果、ポリエステル樹脂フィルムの伸び特性は成形以前に比べ、著しく低下することになり、ポリエステル樹脂によっては成形に追随出来ず、フィルムが缶高さ方向に対し円周状にクラックが発生する、と言った現象が起こり、激しい場合は金属板の破断に繋がる場合がある。
金属板の破断が起こった場合、残骸を取り除く必要があることから、ライン停止となり著しく生産性を低下させる結果となる。また、フィルムが破断しても、缶体としては被覆フィルムの健全性が確保出来ないことから、実用性を有する缶にはならず、不良缶となり好ましくない結果となる。こうした現象は、ポリエステル樹脂の結晶性に起因するものであるから、前述した結晶融解熱(Hm)及び冷結晶化熱(Hc)の大きな樹脂を適用することは好ましくない。しかし、結晶性のポリエステル樹脂で結晶融解熱(Hm)及び冷結晶化熱(Hc)の小さな樹脂は、概して軟質であるため、前述したパンチ離型性の点で劣る、と言った問題が発生する。
そこで、本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)に適用されるポリエステル樹脂の結晶融解熱(B−Hm)及び冷結晶化熱(B−Hc)は、一方若しくは両方の特性値として20〜45J/gの範囲のみとする。20J/g未満の場合、パンチ離型性が劣るため、前述した缶体の上部で挫屈する、と言った現象や、激しい場合は全くパンチが抜けない、と言った現象が起こる場合があり好ましくない。特に、しごき加工が60缶/分以上の高速の場合や加工度が50%以上の高加工度の場合、こうした現象が顕著に現れてくる危険性が高い。従って、20J/g未満でも、しごき加工が低速で且つ低加工度の場合は問題なく成形できる場合があることは言うまでもない。一方、45J/gを超えると、パンチの離型性は良好であるが、フィルムに微細なクラックが発生し易く、フィルムの健全性を確保することが難しくなる場合があり、好ましくない。
本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)に適用されるポリエステル樹脂の極限粘度(B−IV)は0.55dl/g以上である。極限粘度(IV)は、ポリエステル樹脂の平均分子量を示す指標で、極限粘度(IV)が高い程平均分子量が大きいことを示している。ポリエステル樹脂フィルムの機械的特性は、同一樹脂組成の場合、耐デント性に直接関係する。例えばフィルムの衝撃破壊強度、と言った機械的特性は、極限粘度(IV)が高い程高いため、本発明の目的である耐デント性の改善に対しては多くの場合、極限粘度(IV)の高いポリエステル樹脂からなるフィルムが提案されている。
しかし、極限粘度(IV)の高いポリエステル樹脂から製膜することは、溶融粘度が高くなるためTダイで層状に押し出すための押し出し機のパワーがより大きいものが必要とすることから生産コストが上がる、と言ったことや、更には押し出し機内で発生する摩擦熱によって、溶融温度が上昇するため樹脂の熱分解が起こり易くなるため、分子量低下に繋がり易い、と言った状況が起こり、結局は思ったほど高い極限粘度(IV)のポリエステル樹脂フィルムが得られない、と言った場合がある。
本発明では、前述したゴム弾性性樹脂(R)を含有させることにより、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)に使用するポリエステル樹脂の極限粘度(B−IV)は、0.55dl/gまで適用が可能となり、この極限粘度(IV)でも良好な耐デント性が確保される。しかし、前述したように、フィルムの衝撃破壊強度は極限粘度(IV)が高い程高いため、コーラ、スポーツ飲料のような高腐食性の内容物に対しては、極限粘度(IV)は高めのポリエステル樹脂を適用するのが好ましく、かかる意味からは、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)に使用するポリエステル樹脂の極限粘度(B−IV)は、好ましくは0.60dl/g以上、更に好ましくは0.65dl/g以上が良い。極限粘度の上限値は特に限定するものではないが、前述した生産性との兼ね合いからは、2.00dl/g以下が好ましい。
次に、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)について述べる。
ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、融点(A−Tm)が235℃以上、ガラス転移温度(A−Tg)が65℃以上、結晶融解熱(A−Hm)及び/または冷結晶化熱(A−Hc)が25〜50J/g、極限粘度(A−IV)が0.60以上のポリエステル樹脂からなる。前述したように、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は主に高速・高加工度製缶性を担うものである。従って、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、パンチと直接接するフィルムであることから、耐熱性は最も重要な要件であり、融点(A−Tm)は235℃以上とする。
ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点(A−Tm)が235℃以上あれば、高速・高加工度のしごき加工で、前述したパンチの離型性が劣り、缶体の上部で挫屈する、と言った現象やパンチが成形された缶体から抜けない、と言った現象は回避され、良好な製缶性が確保される。融点の上限値は特に限定するものではないが、パンチの離型性の観点からは260℃を超えても更なる効果は見られず、又、ポリエステル樹脂は一般的に融点が高いものは強結晶性の樹脂となる傾向にあることから、260℃以下が好ましい。
ガラス転移温度(A−Tg)は65℃以上である。ガラス転移温度(Tg)もパンチの離型性にかかわってくる要件である。ガラス転移温度(A−Tg)が65℃未満では、しごき加工時に起こる発熱でフィルムが軟化し、パンチに粘着したり、また、局部的に高い面圧が掛かることからパンチがフィルムに食い込んだりする場合があり、その結果パンチの離型性が劣り、前述した缶体の上部で挫屈する、と言った現象やパンチが成形された缶体から抜けないといった現象が起こる場合があり、好ましくない。
ガラス転移温度の上限値は特に限定するものではないが、一般的には前述した低温下における衝撃エネルギーを吸収する能力はガラス転移温度が低い方が高いため、本発明のようにポリエステル樹脂フィルム層(B層)にゴム弾性性樹脂を含有させていても、耐デント性の点からは110℃以下が好ましい。本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に適用されるポリエステル樹脂の結晶融解熱(A−Hm)及び冷結晶化熱(A−Hc)は、一方若しくは両方の特性値として25〜50J/gの範囲とする。
前述したように、高速・高加工度のしごき加工では、ポリエステル樹脂は前述したように結晶化と延伸化が起こり、場合によってはフィルムが缶高さ方向に対し円周状にクラックが発生する、と言った現象が起こり易くなるため、結晶融解熱(Hm)及び冷結晶化熱(Hc)の大きな樹脂を適用することは好ましくない。しかし、本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の存在により、上記のような円周状のクラックの発生が回避されることから、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は基本的にはパンチの離型性に対する特性を有せしめたものである。とは言え、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)にマイクロクラックが激しく発生した場合、そのクラックがポリエステル樹脂フィルム層(B層)に伝播しポリエステル樹脂フィルム層(B層)にまでマイクロクラックを発生させる、と言ったことが起こる場合があり、こうした現象は内容物の保存性の確保の点から、当然好ましくない。
そこで、本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に適用されるポリエステル樹脂の結晶融解熱(A−Hm)及び冷結晶化熱(A−Hc)は、一方若しくは両方の特性値として25〜50J/gの範囲とする。25J/g未満の場合、パンチの離型性ガ劣るため、前述した缶体の上部で挫屈する、と言った現象や、激しい場合は全くパンチが抜けない、と言った現象が起こる場合があり好ましくない。特に、しごき加工が60缶/分以上の高速の場合や加工度が50%以上の高加工度の場合、こうした現象が顕著に現れてくる危険性が高い。従って、25J/g未満でも、しごき加工が低速で且つ低加工度の場合は問題なく成形ができる場合がある、ことは言うまでもない。
一方、50J/gを超えると、パンチの離型性は良好であるが、フィルムに微細なクラックが発生し易く、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)のフィルムの健全性にまで影響を及ぼす場合があり、好ましくない。本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に適用されるポリエステル樹脂の極限粘度(A−IV)は0.60以上である。ポリエステル樹脂フィルム層(A層)はパンチと直接接するフィルムであるから、しごき加工の際にかかる面圧に耐える必要がある。又、前述したように、極限粘度(IV)が高いポリエステル樹脂は機械的強度も高いこと、更には、熱による結晶化が起こり難いと言った特性を有していることから、しごき加工の際の発熱で結晶化による伸び特性の低下が緩和される方向にある。そこで、本発明では上記の理由からポリエステル樹脂フィルム層(A層)に適用するポリエステル樹脂の極限粘度(A−IV)は0.60以上とする。
ポリエステル樹脂の極限粘度(A−IV)が0.60dl/g未満では、打撃・衝撃の大きさにもよるが耐デント性が若干劣り、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に微細なクラックが入る場合があり、好ましくない。前述したように、フィルムの衝撃破壊強度は極限粘度(IV)が高い程高いため、コーラ、スポーツ飲料のような高腐食性の内容物に対しては、極限粘度(IV)は高めのポリエステル樹脂を適用するのがより好ましく、かかる意味からは、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)に使用するポリエステル樹脂の極限粘度(A−IV)も高い方がより安全であることから、好ましくは0.65dl/g以上、更に好ましくは0.70dl/g以上が良い。極限粘度の上限値は特に限定するものではないが、前述したようにフィルム製膜の生産性との兼ね合いからは、2.00dl/g以下が好ましい。
金属板に被覆されているフィルム厚みについて言えば、本発明では、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)とからなるポリエステル樹脂フィルム(F)の厚みは10〜40μmが最適で、その内ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の厚みは少なくとも5μm以上は必要で、更に、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の厚みとポリエステル樹脂フィルム層(B層)の厚みの比は、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)厚み/ポリエステル樹脂フィルム層(A層)厚み、として1.0以上〜7.0未満が最適である。
成形加工前のラミネート金属板に積層されているポリエステル樹脂フィルム(F)のフィルム厚みが10μm未満の場合、加工度によっては成形後の缶胴部のフィルム厚みが3〜4μm程度になる個所が局部的に発生し、フィルムの健全性確保が難しく、また、健全性は確保できたとしても、内容物の透過を抑制するバリアー効果が低下してくるため、長期間の内容物保存性が劣り、耐食性の点で不十分な場合があり好ましくない。また、耐デント性の点でもポリエステル樹脂フィルム層(B層)の厚みが5μm未満であったり、上記の総フィルム厚みが10μm未満であったりすると、衝撃エネルギーを十分に吸収出来ず、フィルムにクラックが発生する場合があり、この点からも好ましくない。
一方、ラミネート金属板に積層されているフィルム厚みが、総厚みとして40μmを超えた場合、耐食性や耐デント性の点では十分性能を発揮するが、その効果は飽和した状態であり経済的ではないだけでなく、ラミネート金属板の総厚みが厚くなるため、加工時の面圧が高くなり、加工度によってはパンチの離型性の低下を招く原因となるため、好ましくない。勿論、ポリエステル樹脂フィルム(F)の厚みは、加工度が小さい場合は薄いフィルムが適用でき、加工度が大きい場合は厚いフィルムを適用することが、内容物の保全性の点からは、パンチの離型性が確保できる範囲内で望ましい、ことは言うまでもない。
更に、フィルム厚みについて言えば、前述したようにポリエステル樹脂フィルム層(A層)厚みとポリエステル樹脂フィルム層(B層)の厚みの比は、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)厚み/ポリエステル樹脂フィルム層(A層)厚み、として1.0以上〜7.0未満が最適である。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)厚み/ポリエステル樹脂フィルム層(A層)厚みの比が1.0未満では、特に総厚みが薄くなった場合、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の特性が十分に発揮されたとしても、厚み要因の影響を受けるため衝撃破壊強度が小さくなり、その結果耐デント性が低下しフィルムにクラックが発生し耐食性低下に繋がる場合があり好ましくない。
一方、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)厚み/ポリエステル樹脂フィルム層(A層)厚みの比が7.0を超えると、総厚みが厚くなった場合、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)の特性が大きく発現し、耐デント性は良好であるが、フィルム全体の耐熱性や機械的特性が低下し、パンチの離型性不良に繋がるため好ましくない。ポリエステル樹脂フィルム層(B層)厚み/ポリエステル樹脂フィルム層(A層)厚みの比は、前述したポリエステル樹脂フィルム層(B層)の厚みが5μm以上、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)との総厚みとしては10〜40μmの範囲内であれば、製缶性と耐デント性の兼備から、1.0〜4.8の範囲が良い。
なお、本発明で適用されるポリエステル樹脂フィルム層(A層)及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)のポリエステル樹脂は、共に結晶性のポリエステル樹脂を基本樹脂としたもので、その一例としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸と、グリコール成分としてエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ペンタンジオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコールからなるポリエステル樹脂の共重合物やブレンド物が、前記の融点(Tm)、結晶融解熱、冷結晶化熱及びガラス転移温度の限定範囲であれば、適用できる。更に、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)のポリエステル樹脂は、必要に応じて酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤、無機又は有機粒子よりなる滑剤等を配合させてもよい。
本発明におけるポリエステル樹脂の製造方法については特に限定しない。即ち、エステル交換法又は直接重合法のいずれの方法で製造されたものであっても使用できる。又、極限粘度(IV)を高めるために固相重合法で製造されたものであってもかまわない。更に、缶に内容物を充填・密封後に実施されるレトルト殺菌処理、パストロ殺菌処理等でのポリエステル樹脂からの溶出オリゴマー量を少なくする点から、減圧固相重合法で製造されたオリゴマー含有量が低いポリエステルを使用することは好ましい。
本発明では、金属板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)の密度は特に限定するものでないが、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)とポリエステル樹脂フィルム層(B層)の二層構成フィルム全体の密度は、1.360g/cm3 以下であることが望ましい。密度が1.360g/cm3 以下でであることは、被覆されているフィルムは、非晶質状態もしくは極めて非晶質状態に近い状態であることを示している。
成形加工前の金属板に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)の密度が1.360g/cm3 以下が望ましい理由は、フィルムを絞り・しごき加工に追随させるためで、金属板に被覆されているポリエステル樹脂フィルムの密度が1.360g/cm3 超えると、フィルムの伸び特性が落ちてくるため、特に缶壁前の板厚減少率が大きい、高加工度に追随できず、局部的フィルム破断が起こり、缶の内外面フィルムの健全性は確保できないことがあるためである。缶の内面側のフィルムの健全性が確保できなくなると、素地金属の腐食に発展するため、内容物の保存性の点で大きな問題となり、好ましくない。
従って、缶の内面側に相当するポリエステル樹脂フィルム(F)の密度を1.360g/cm3 以下にすることによって、内面フィルムの健全性が確保でき、耐食性の優れた絞り・しごき加工缶の成形が達成できるので望ましい。
次に、本発明に使用される金属板について述べる。
本発明では、金属板として、鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板が適用される。鋼板は、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用鋼板として使用されているもの、具体的には絞り缶用、絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられている鋼板が適用される。鋼板表面の施される表面処理も同様で、通称TFS−CTと呼ばれている、鋼板の両面に片面の付着量として金属クロムが80〜150mg/m2 、その上層に金属クロム換算で10〜20mg/m2 の水和酸化クロム皮膜を有する電解クロム酸処理鋼板、鋼板の両面に片面の付着量として50〜1000mg/m2 、その上層に金属クロム換算で10〜15mg/m2 の水和酸化クロム皮膜を有するNiめっき鋼板、鋼板の両面に片面付着量として20〜2000mg/m2 のNiめっき層、その上層に片面の付着C量として1〜100mg/m2 の有機樹脂を主体とする化成処理皮膜層を有するNi−化成処理鋼板等、幅広く適用される。
アルミニウム板やアルミニウム合金板も同様で、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用アルミニウム板として使用されているもの、具体的には、絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられているアルミニウム板が適用される。アルミニウム板やアルミニウム合金板の表面処理については、アルミニウム板の両面に片面のクロム付着量として10〜60mg/m2 の化成処理を行ったリン酸クロム処理アルミニウムやその他の化成処理が施されたアルミニウム板やアルミニウム合金板、等、幅広く適用される。本発明のポリエステル樹脂被覆金属板を得る際のフィルムは、製膜の履歴は問わず、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無配向フィルムの何れでも良い。
本発明の金属板にポリエステル樹脂フィルム(F)を被覆する方法としては、その一例として、少なくともポリエステル樹脂フィルム層(B層)の融点以上の温度に加熱した金属板の一方の面に、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)が金属板と相接するように、ラミネートロールを用いてフィルムをラミネートする方法等の周知の方法で金属板に被覆して一次接着を行った後、続けてポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点以上、もしくは上記の金属板の他方の面に被覆した任意フィルムの融点以上の温度に板温として金属板を加熱した後、直ちに水冷または/および空冷等で急冷して得る方法が適用できる。金属板の他方の面には任意のフィルムでも、または塗装でも何れでも可能である。任意のフィルムを適用する場合は、当然のことながら、金属板は融点の高い方を基準に板温を設定する必要があり、また両面同時ラミネートでも、逐次ラミネートでも可能である。
一次接着を行う際の金属板の加熱方法としては、電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、加熱ロールに接触させて加熱する方法、高周波で誘導加熱する方法等の加熱方法が採用できるが、その後に続けて行うポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点以上、もしくは上記の金属板の他方の面に被覆した任意フィルムの融点以上の温度に板温として金属板を加熱する際は、ポリエステル樹脂フィルムが被覆されているので電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、高周波で誘導加熱する方法等の非接触加熱が好ましく、加熱ロールのような接触型加熱方式は採用しない方が良いことは言うまでもない。
又、急冷する方法としては圧縮空気や冷却された圧縮空気を吹きかけて冷却する方法、水等に浸漬して冷却する方法の単独もしくは複合で採用することが可能である。本発明のポリエステル樹脂フィルム(F)の全体の密度を1.360g/cm3 以下にするには、一次接着を行った後続けて少なくともポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点以上の温度に板温として金属板を加熱し、特に供給するフィルムが二軸延伸フィルムや一軸延伸フィルムの場合、十分に溶融して結晶を破壊すること、更には、冷却の過程で結晶化を起こさせない、ことが肝要である。前述した急冷の条件は重要で、ポリエステル樹脂フィルム表面での熱伝達係数が0.0005cal/cm2 ・sec・℃以上、0.005cal/cm2 ・sec・℃未満の条件で冷却することが重要である。急冷する方法としては圧縮空気や冷却された圧縮空気を吹きかけて冷却する方法、水等に浸漬して冷却する方法の単独もしくは複合で採用することが可能である。
次に、本発明の第二であるポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶について述べる。
本発明の金属缶は、缶胴は前述したように絞り加工や絞り・しごき加工によって得られるシームレス缶が基本の缶である。本発明の缶の例としては、(1)絞り・しごき加工を行った後、開口部を正規の缶高さにトリミングした後、開口部を更に絞り加工を行い口部を缶胴の径に比べ小径に加工(ネックイン加工)した後、缶蓋を巻締められるようにフランジを加工(フランジ加工)し形成するシームレス缶。具体的な一例としては、350mlビール缶サイズの場合は、缶胴の外径が呼称211(2インチ+11/16インチ)の缶胴を呼称204(2インチ+4/16インチ)の蓋を巻締められるように、缶胴の開口部を絞り加工したシームレス缶が挙げられる。
(2)絞り・しごき加工によりシームレス缶を作成し、その後、シームレス缶開口部を更に絞り加工を行い、肩部成形やキャップ出来る径にまで成形し、更にキャップで閉缶することが出来るようにネジ切り加工を行った、再栓可能なボトル型缶等のシームレス缶。(3)絞り・しごき加工によりシームレス缶を作成し、その後缶底部を絞り加工を行い、肩部成形やキャップ出来る径にまで首部を成形した後首部をトリミングして、更にキャップで閉缶することが出来るようにネジ切り加工を行い、一方、シームレス缶の元々の開口部には缶蓋を巻締めた、再栓可能なボトル型缶等のシームレス缶等が挙げられる。
従って、本発明のシームレス缶は最終的にどの形状の缶体を得るかによって、前述した式(1)で示される缶壁部の加工度は異なるが、加工度としては25%以上70%以下が最適の範囲である。そして、本発明における金属缶の少なくとも内面側に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)の密度は、1.360g/cm3 以下である。密度が1.360g/cm3 以下であると言うことは、前述したように実質的に非晶質状態、或いは非晶質状態に極めて近い状態であることを意味している。本発明における金属缶に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)の密度を、1.360g/cm3 以下にする理由の第一は、次行程の成形加工性を確保するためである。
即ち、ポリエステルフィルム被覆金属板を絞り・しごき加工を経て作成された缶は、前述したように開口部を更に絞り加工を行い口部を缶胴の径に比べ小径に加工(この加工をネックイン加工と呼ばれている)した後、蓋を巻締めるためのフランジ出しを加工(この加工をフランジ加工と呼ばれている)をするのが、アルミ製の易開缶蓋(イージーオープンエンド、通称EOEと呼ばれている)の低コスト化から一般的である。このネックイン加工及びフランジ加工は、口部の小径化が大きいほど加工が厳しく、この部位でフィルム剥離が起こり易い。勿論、フィルム剥離が起こった缶は、剥離部が内容物に曝されるため下地金属の腐食に繋がるため、問題となる。
こうした問題を回避するためには、被覆されているフィルムの伸び特性と下地金属との密着性が良好である必要があり、そのためには、被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)は非晶質状態が好ましく、密度を1.360g/cm3 以下にすることで達成される。また、前述した再栓可能なボトル型の場合は、成形加工が通常のシームレス缶の加工に比べ、一層厳しい加工を受けることになるため、ポリエステルフィルムの密度は1,360g/cm3 以下にする必要がある。本発明における金属缶に被覆されているポリエステル樹脂フィルムの密度を、1.360g/cm3 以下にする理由の第二は、耐デント性を確保することにある。
本発明のポリエチレンやエチレン−ブテン共重合体と言ったゴム弾性樹脂(R)は、成形加工前は球状の状態でポリエステル樹脂フィルム層(B層)に分散しているが、しごき加工によって缶高さ方向に激しく伸ばされる。こうした状態ではゴム弾性樹脂(R)も成形歪みが樹脂内に多く蓄積されており、衝撃エネルギーを吸収する能力が落ち、その結果耐デント性の向上効果は低下する。こうした状況を回復させるためには、熱を加えて歪みを開放してやれば良いわけであるが、ポリエステル樹脂の融点以下の温度では、ポリエステル樹脂自身が結晶化してしまい、ポリエステル樹脂自身の衝撃破壊強度を低下させることから、耐デント性はかえって低下させる結果となってしまうことがある。
そこで、ポリエステル樹脂フィルム(F)の密度を、1.360g/cm3 以下にする。この状態は、前述したようにポリエステル樹脂は実質的に非晶質状態、或いは非晶質状態に極めて近い状態であり、こうした状態であればゴム弾性樹脂(R)は再度球状となり特性が十分に発揮でき、優れた耐デント性が確保される。絞り・しごき加工で得られた金属缶に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)を実質的に非晶質化し、密度を1.360g/cm3 以下にする方法としては、缶体をポリエステル樹脂フィルム層(A層)の融点以上に加熱し再溶融した後、急冷することで得られる。
缶体の加熱により被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)を非晶質にする工程としては、(1)絞り・しごき加工で得られた金属缶の開口部をトリミングする前に脱脂剤で成形加工用潤滑剤を脱脂後、少なくともトリミングされる開口部を非晶質にする、(2)絞り・しごき加工で得られた金属缶を加熱して成形加工用潤滑剤を揮散させると同時に非晶質にする、(3)トリミング後、シームレス缶であれば、ネック・フランジ加工前に、再栓可能なボトル型缶であればネジ切り加工前に、少なくとも加工該当個所を非晶質にする等の工程によって行うことが可能である。どの工程で、どのような手段で行うかは、設備との関係で適宜選択することができる。
缶体の加熱方法としては電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、高周波で誘導加熱する方法等の加熱方法が採用できる。従って、金属缶の外面に施す塗装・印刷工程の熱を利用して金属缶を加熱することも可能である。又、急冷する方法としては圧縮空気や冷却された圧縮空気を吹きかけて冷却する方法等が採用できる。また状況によっては水等に浸漬して冷却する方法も可能である。
以下、実施例にて、本発明の方法の効果を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、本実施例で行った評価法は以下の通りである。
(1)ポリエステル樹脂フィルムの融点(Tm)は、ポリエステルフィルム10mgを用い、窒素気流中、示差走査熱量計(DSC)で、10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、発熱部の積分強度を冷結晶化熱Hc(J/g)、吸熱部の積分強度を結晶融解熱Hm(J/g)、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とした。
(2)ポリエステル樹脂フィルムの密度は、密度勾配管法にて測定した。
(3)ポリエステルの極限粘度(IV)は、ウベローデ粘度計でオルトクロルフェノール溶液中にポリエステルフィルムを0.100=0.003g溶解し、25.0±0.1℃で測定した。
(4)ゴム弾性樹脂の等価球換算径、分散状態及びビニル重合体の分散状態は、ラミネート材をミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂フィルム中の存在状態を透過顕微鏡で観察して調べた。
(5)ポリエステル樹脂フィルム層(B層)のガラス転移温度は、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)からなる二層フィルムを作成する際、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)のみの25μm単層フィルムを作成し、各実施例及び各比較例と同一条件でラミネート材を作成し、TMA(セイコー電子工業株式会社製のTMA−SS100)で、昇温条件:5℃/分、荷重:3g、プローブ:1mmフラット(石英製)の条件で測定した時のプローブ侵入開始温度(℃)とした。
(6)パンチ離型性評価
缶内面のフィルムと加工パンチの離型性は、連続成形缶をランダムに500缶抽出し、成形缶上部に起こる缶体の挫屈程度を観察し評価した。
離型性の評価は、次のように評価基準を設定し行った。
◎:缶開口部の挫屈なく良好
○:軽微な缶開口部の挫屈あるが正規な缶高さは確保可能で実用上問題ない
○〜△:缶開口部に挫屈があり正規な缶高さを確保するのが難しい缶が散発しており 実用性は不可
△:缶開口部に挫屈があり正規な缶高さを確保するのが難しく実用性は不可
×:缶体がパンチから抜けなかったり、抜けても缶開口部に激しい挫屈があり実用 性不可
(7)缶の内面フィルムの健全性評価
缶内面の樹脂フィルムの傷付き程度については、1.0%食塩水に界面活性剤を0.1%添加した電解液で、缶体を陽極、陰極を銅線とし印加電圧6Vで3秒後の電流値を測定し、被覆フィルムの健全性の評価とした。
なお、評価はランダムに50缶抽出し、その荷重平均値を表2に示した。
缶内面フィルム健全性は、QTV値の荷重平均値で0.2mA以下を実用レベルとした。(以降、この評価法をQTV試験と称する)。
(8)耐デント性評価
缶内面のフィルムの耐デント性については、缶にお茶を充填した後125℃で30分レトルト殺菌処理を行った後、4℃の保冷庫に保存し、缶体温度が4℃になった時点で、缶胴部に先端幅が1mmの幅20mmのくさびを置き、荷重500gを5cmの高さからくさびに落下させ、デントを起こさせた。(以降、この方法を缶胴デントと称する)又、同様に缶体温度が4℃になった時点で、高さ45cmの位置から60°の角度で缶底部を下にして落下させ、デントを起こさせた。(以降、この方法を缶底デントと称する)
缶胴デント及び缶底デントを行った後、変形した部位以外を絶縁物でシールし、缶体を陽極、陰極を銅線とし印加電圧6Vで30秒後の電流値を測定し、デント部フィルムの健全性の評価とした。なお、評価はランダムに20缶抽出して測定し、その測定値の最も高い数値を表2に示している。
缶胴デント及び缶底デント共、実用レベルは0.30mA以下とした。(以降、この評価法を耐デント性評価と称する)。
なお、実施例及び比較例で用いたビニル重合体の略語と内容は次の通りである。
(イ)ビニル重合体A:エチレン−酢酸ビニル・グリシジルメタクリレート重合体
(ロ)ビニル重合体B:エチレン−メチルアクリレート・グリシジルメタクリレート重合 体
(実施例1)
缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が238℃、極限粘度が0.62dl/gの厚み13μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が223℃、極限粘度が0.58dl/gの厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが26μmの二層フィルム(フィルム1)を作成した。こうして得たフィルム1と缶の外面用フィルムとして融点が235℃の厚み12μmの単層のポリエステルフィルム(フィルムA、後述する缶の成形時に必要なフィルムで実施例及び比較例とは無関係であるため、評価の対象外。以降同様)を用いて、鋼板の両面に金属クロムが110mg/m2 、更にその上層に金属クロム換算で18mg/m2 の水和酸化クロム皮膜を有する板厚が0.19mmの電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し板温が260℃で、一方の面にフィルム1をポリエステルフィルム層(B層)が鋼板と相接するように、他方の鋼板面にはフィルムAを、ラミネートロールで熱圧着法により両面に一次接着した後、続いて鋼板板温が260℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト1)を作成した。
同様にして、缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.62dl/gの厚み13μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が237℃、極限粘度が0.58dl/gの厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが26μmの二層フィルム(フィルム2)を作成した。こうして得たフィルム2と缶の外面用フィルムとして融点が245℃で厚みが12μmの単層のポリエステルフィルム(フィルムB、後述する缶の成形時に必要なフィルムで実施例及び比較例とは無関係であるため、評価の対象外。以降同様)を用いて、前記の電解クロロム酸処理鋼板(TFS−CT)を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し、板温が260℃で一方の面にフィルム2をポリエステルフィルム層(B層)が鋼板と相接するように、他方の鋼板面にはフィルムBを、ラミネートロールで熱圧着法により両面に一次接着した後、続いて鋼板板温が265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト2)を作成した。
同様にして、缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が251℃、極限粘度が0.62dl/gの厚み13μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が245℃、極限粘度が0.58dl/gの厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが26μmの二層フィルム(フィルム3)を作成した。
こうして得たフィルム3及び前記単層のポリエステルフィルムを用いて、前記の電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を加熱ロール(ジャッケトロールで加熱し、板温が260℃で一方の面にフィルム3をポリエステルフィルム層(B層)が鋼板と相接するように、他方の鋼板面にはフィルムBを、ラミネートロールで熱圧着法により両面に一次接着した後、続いて鋼板板温が275℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト3)を作成した。
得られた、ラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト1、テスト2、テスト3共に、ゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト1〜テスト3のラミネート鋼板の両面に成形用潤滑剤を塗油後、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側になるようにして、80缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行い、缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度がテスト1及びテスト2から得た缶は260℃に、テスト3から得た缶は275℃になるように熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した。続いて呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例1のテスト1〜テスト3のラミネート鋼板は、良好なパンチ離型性を示し、製缶性に優れていることが判る。また、得られる缶は内面フィルムの健全性を示すQTV値や耐デント性は、良好なものが得られていることが判る。
Figure 0004405299
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(実施例2)
缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、融点が248℃、極限粘度が0.65dl/gの厚み10μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が248℃、極限粘度が0.78dl/gの厚み15μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム4)を作成した。
こうして得たフィルム4と実施例1で使用したフィルムBを用いて、鋼板の両面に片面の付着量として500mg/m2 のNiめっきを行った後、フェノール樹脂と縮合リン酸を含有する化成処理液を塗布・乾燥し、片面の付着量として10mg/m2 の化成処理を行ったNi−化成処理鋼板を、実施例1の手順に従って加熱し板温が260℃で、一方の面にフィルム4をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムBをラミネートロールで熱圧着法により両面に一次接着した後、続いて鋼板板温が265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト4)を作成した。
同様に、缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、融点が248℃、極限粘度が0.65の厚み10μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が247℃、極限粘度が0.78dl/gの厚み15μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム5)を作成した。こうして得たフィルム5と実施例1で使用したフィルムBを用いて、前記のNi−化成処理鋼板を用いて、実施例1の手順に従って加熱し板温が260℃で、一方の面にフィルム5をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、他方の面にはフィルムBをラミネートロールで熱圧着法により両面に一次接着した後、続いて鋼板板温が265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト5)を作成した。
得られた、ラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト4、テスト5共に、ゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト4〜テスト5のラミネート鋼板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、80缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従って呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例2のテスト4及びテスト5のラミネート鋼板は、良好なパンチ離型性を示し、製缶性に優れていることが判る。また、得られる缶は内面品質や耐デント性は良好なものが得られていることが判る。
(実施例3)
缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が247℃、極限粘度が0.72dl/gの厚み12μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が237℃、極限粘度が0.65dl/gの厚み18μmのフィルム層とからなる総厚みが30μmの二層フィルム(フィルム6)を作成した。こうして得たフィルム6と実施例1で使用したフィルムBを用いて、鋼板の両面に、片面のNi付着量として600mg/m2 その上層に金属クロム換算で15mg/m2 の水和酸化クロム皮膜を有する板厚が0.19mmのNiめっき鋼板を、実施例1の手順に従って加熱し、板温が260℃で一方の面にフィルム6をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムBをラミネートロールで両面に一次接着した後、続いて鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト6)を作成した。
同様に、缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は、融点が248℃、極限粘度が0.72dl/gの厚み12μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が236℃、極限粘度が0.65dl/gの厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム7)を作成した。こうして得たフィルム6と実施例1で使用したフィルムBを用いて、前記のNiめっき鋼板の板温が260℃で一方の面にフィルム7をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムBを両面に一次接着した後、続いて鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト7)を作成した。
得られた、ラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト6、テスト7共に、ゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト6〜テスト7のラミネート鋼板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、80缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従って呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例3のテスト6及びテスト7のラミネート鋼板は、良好なパンチ離型性を示し、製缶性に優れていることが判る。また、得られる缶は内面品質や耐デント性は良好なものが得られていることが判る。
(実施例4)
缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.68dl/gの厚み6μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が237℃、極限粘度が0.73dl/gの厚み7μmのフィルム層とからなる総厚みが13μmの二層フィルム(フィルム8)を作成した。こうして得たフィルム8と実施例1で使用したフィルムBを用いて、実施例3で使用したNiめっき鋼板に、実施例1の手順に従って板温が260℃で一方の面にフィルム8をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムBを両面に一次接着した後、続いて鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト8)を作成した。
同様に、缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.68dl/gの厚み13μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が237℃、極限粘度が0.73dl/gの厚み24μmのフィルム層とからなる総厚みが37μmの二層フィルム(フィルム9)を作成した。こうして得たフィルム9と実施例1で使用したフィルムBを用いて、実施例3で使用したNiめっき鋼板に、実施例1の手順に従って板温が260℃で一方の面にフィルム9をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムBを両面に一次接着した後、続いて鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト9)を作成した。
得られた、ラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト8、テスト9共に、ゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト8及びテスト9のラミネート鋼板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、80缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従って呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例4のテスト8のラミネート鋼板は、良好なパンチ離型性や耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。また、得られる缶は内面品質や耐デント性は良好なものが得られていることが判る。テスト9のラミネート鋼板のパンチ離型性は極僅かであるが開口部が挫屈している缶が見られたが、実用上問題ないレベルであった。一方、得られた缶は内面品質や耐デント性は非常に良好なものが得られていることが判る。
(実施例5)
缶の内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.68dl/gの厚み8μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が221℃と246℃、極限粘度が0.93dl/gの厚み8μmのフィルム層とからなる総厚みが16μmの二層フィルム(フィルム10)を作成した。こうして得たフィルム10と実施例1で使用したフィルムBを用いて、片面の金属クロム換算として12mg/m2 の付着量を有するリン酸クロム系化成処理が施された板厚が0.28mmの3004系アルミニウム合金板を加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し板温が260℃で、アルミニウム合金板の一方の表面にはフィルム9をポリエステル樹脂フィルム層(B層)がアルミニウム合金板と相接するように、又、他の面にはフィルムBを両面に一次接着した後、続いてアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト10)を作成した。
同様に、内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が247℃、極限粘度が0.68dl/gの厚み15μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が222℃と247℃、極限粘度が0.93dl/gの厚み15μmのフィルム層とからなる総厚みが30μmの二層フィルム(フィルム11)を作成した。こうして得たフィルム11と実施例1で使用したフィルムBを用いて、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)がアルミニウム合金と相接するように、前記のアルミニウム合金板にテスト10を作成した時と同じ条件で、一方の面にはポリエステル樹脂フィルム層(B層)がアルミニウム合金と相接するように、他の面にはフィルムBを両面に一次接着した後、続いてアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト11)を作成した。
得られた、ラミネートアルミニウム合金板のポリエステル樹脂フィルム層(A)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト10、テスト11共に、ゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当するアルミニウム合金板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト10及びテスト11のラミネートアルミニウム合金板の両面に成形加工用潤滑剤を塗布後、実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、100缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が62%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の金属板温度が260℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従って呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、実施例5のテスト10及びテスト11のラミネートアルミニウム合金板は、良好なパンチ離型性を示し、製缶性に優れていることが判る。また、得られる缶は内面品質や耐デント性は良好なものが得られていることが判る。
(比較例1)
内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が232℃、極限粘度が0.62dl/gの厚み12μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含む融点が218℃、極限粘度が0.62dl/gの厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム12)を作成した。こうして得たフィルム12と実施例1で使用したフィルムAを用いて、実施例1で使用した電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を実施例1の手順に従って加熱し、板温が255℃で一方の面にフィルム12をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムAを一次接着した後、続いて鋼板板温を260℃で3秒間加熱した後、直ちに急冷しポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト12)を作成した。
得られた、ラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト12のゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト12のラミネート鋼板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、80缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示したように、缶胴開口部が挫屈しており、正規の缶高さを得ることができない缶が散発した。
更に、開口部をトリミングし挫屈個所を除去した後、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズとは容量は異なるが、一応缶は作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例1のテスト12のラミネート鋼板は、実施例のラミネート鋼板に比べパンチ離型性が劣り正規な缶は得られなかった。又、パンチ離型性ガ劣ることの影響で内面フィルムに傷が入り易く、QTV値も高く劣っており実用レベルにはなかった。但し、耐デント性は良好で実用レベルであった。なお、前述したパンチの離型性について、加工速度及び加工度を変えて検討した結果、加工速度40缶/分、缶壁部の加工度が45%では良好であったが、この製缶条件では生産性の問題があり実用化は難しい。
(比較例2)
内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.72dl/gの厚み12μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含有していない融点が235℃、極限粘度が0.78dl/gの厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム13)を作成した。こうして得たフィルム13と実施例1で使用したフィルムBを用いて、実施例1で使用した電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を実施例1の手順に従って加熱し、板温が260℃で一方の面にフィルム13をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムBを一次接着した後、続いて鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト13)を作成した。
得られたラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)には、ゴム弾性樹脂は含有していないので、分散状態については観察しなかった。なお缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱の内容は表1に示した。こうして得たテスト13のラミネート鋼板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、80缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングした後、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従って呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例2のテスト13のラミネート鋼板は、良好なパンチ離型性を示した。また、得られる缶の内面品質はQTV値は実施例と同等の性能を示し実用レベルを有しているが、耐デント性はゴム弾性性樹脂が含有されていないため発明例に比べ著しく劣り実用レベルになく、充填する内容物の多様化に対応出来ない缶となっている。
(比較例3)
内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.65dl/gの厚み12μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含有する融点が237℃、極限粘度が0.51dl/gの厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム14)を作成した。こうして得たフィルム14と実施例1で使用したフィルムBを用いて、実施例1で使用した電解クロム酸処理鋼板(TFS−CT)を実施例1の手順に従って加熱し、板温が260℃で一方の面にフィルム14をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムBを一次接着した後、続いて鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後、30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト14)を作成した。
得られた、ラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト14のゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト14のラミネート鋼板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、80缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングした後、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従って呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例3のテスト14のラミネート鋼板は、良好なパンチ離型性を示した。しかし、得られた缶はQTV値及び耐デント性は、共に実施例に比べ劣り実用レベルにないものであった。
(比較例4)
内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.65の厚み12μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は、ゴム弾性樹脂及びビニル重合体を含有する融点が245℃、極限粘度が0.62の厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム15)を作成した。こうして得たフィルム15と実施例1で使用したフィルムBを用いて、実施例3で使用したNiめっき鋼板を、実施例1の手順に従って加熱し板温が260℃で一方の面にフィルム15をポリエステル樹脂フィルム層(B層)が鋼板と相接するように、又、他の面にはフィルムBを一次接着した後、続いて鋼板板温を265℃で3秒間加熱した後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板(テスト15)を作成した。
得られた、ラミネート鋼板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト15のゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当する鋼板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト15のラミネート鋼板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側となるようにして、80缶/分の加工速度で缶壁部の加工度が58%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングした後、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに圧縮空気で急冷した後、実施例1の手順に従って呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例4のテスト15のラミネート鋼板は、パンチ離型性は良好で問題はなかった。得られた缶は、内面フィルムの健全性を示すQTV値は実施例に差がなく良好であったが、耐デント性は発明例に比べて劣っており実用レベルにはないものである。この原因を調べるため、デント部フィルムのゴム弾性樹脂の分散状態を観察した結果、ポリエステル樹脂の衝撃破壊が伝播してゴム弾性樹脂も微細なクラックが発生しており破壊されていることが判った。
(比較例5)
内面用ポリエステル樹脂フィルム(F)として、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点が248℃、極限粘度が0.65dl/gの厚み12μmのフィルム層と、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)はゴム弾性樹脂が43質量部及びビニル重合体を10質量部を含有する融点が245℃、極限粘度が0.62の厚み13μmのフィルム層とからなる総厚みが25μmの二層フィルム(フィルム16)を作成した。こうして得たフィルム16と実施例1で使用したフィルムBを用いて、実施例5で使用したアルミニウム合金板を実施例1の手順に従って、加熱ロール(ジャッケトロール)で加熱し板温が260℃で、一方の面にフィルム16をポリエステル樹脂フィルム層(B層)がアルミニウム合金板に相接するように、他の面にはフィルムBを一次接着した後、続いてアルミニウム合金板板温を265℃で3秒間加熱して後30℃の水中に浸漬して急冷し、ポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板(テスト16)を作成した。
得られた、ラミネートアルミニウム合金板のポリエステル樹脂フィルム層(B層)に含有しているゴム弾性樹脂及びビニル重合体の分散状態を観察した結果、テスト16はゴム弾性樹脂はビニル重合体でほぼカプセル化されていた。なお、缶の内面側に相当するアルミニウム合金板表面に被覆されている、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ガラス転移温度及びポリエステル樹脂フィルム層(B層)の冷結晶化熱、結晶融解熱、ゴム弾性樹脂の内容、ビニル重合体の内容は表1に示した。こうして得たテスト16のポリエステル樹脂フィルムラミネートアルミニウム合金板を実施例1の手順に従って、ポリエステル樹脂フィルム(F)面が缶の内面側になるように、90缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlビール缶用サイズのシームレス缶を成形した。得られた成形缶について、パンチの離型性を調べた。その結果は表2に示したように、缶胴開口部が挫屈しており正規の缶高さが得られない缶が散発した。
更に、開口部をトリミングし挫屈個所を除去した後、缶の金属板温度が265℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後直ちに圧縮空気で急冷した後、呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズとは容量は異なるが、一応缶は作成した。缶の内面フィルムは剥離もなく、良好な缶が得られた。得られた缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。こうして得た、缶について内面のQTV試験、耐デント性を調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例5のテスト16のラミネートアルミニウム合金板は、実施例に比べパンチ離型性が劣り正規な缶は得られない場合がある。又、パンチ離型性が劣ることの影響で内面フィルムに傷が入り易く、QTV値も実施例に比べ高く劣っており、実用レベルにはないものであった。耐デント性に関しては良好な値を示し実用レベルを有していた。なお、前述したパンチの離型性について、加工速度及び加工度を変えて検討した結果、加工速度50缶/分、缶壁部の加工度が53%の条件では良好であったが、この製缶条件では生産性の問題があり実用化は難しい。
(比較例6)
実施例1のテスト3から得た缶壁部の加工度が58%の350mlサイズのシームレス缶を用いて、開口部をトリミングした後、缶体を板温が240℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱しその後空冷した。続いて実施例1の手順に従い呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成(テスト17)した。同様に、実施例3のテスト7から得た缶壁部の加工度が58%の350mlサイズのシームレス缶を用いて、開口部をトリミングした後、缶体を板温が235℃になるよう熱風炉中を通過させて加熱しその後空冷却した、続いて実施例1の手順に従い呼称204の缶蓋が巻締められるようにネック加工およびフランジ加工を行い350mlビール缶サイズの缶を作成(テスト18)した。得られたテスト17の金属缶及びテスト18の金属缶は、共にフランジ部端面からフィルム剥離が起こっており、缶としては劣ったものである。得られたテスト17の缶及びテスト18の缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
更に、得られた缶について念のため内面フィルム剥離個所の直下までQTV電解液を入れてQTV試験を、また、耐デント性についても併せて調べた。その結果は表2に示した。表2から判るように、比較例6のテスト17のラミネート缶は、内面フィルムの健全性は実施例1のテスト3に比べ劣っており、実用レベルになくネック加工部がQTVの反応点になっていた。また、耐デントも実施例に比べ劣り実用レベルにはない。又、テスト18のラミネート缶は、表2から判るように、内面フィルムの健全性は実施例3のテスト7に比べ若干劣っているが実用レベルにはあった。しかし、耐デントが実施例に比べ劣り、実用レベルにはない。この結果は、缶体のフィルムが密度1.360g/cm3 以下の、非晶質若しくは非晶質に近い状態でないと、ネック加工およびフランジ加工でフィルム剥離を起こしたり、耐デント性が低下することを示している。
以上説明したように、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板によって、高速・高加工度の製缶性、特に絞り・しごき加工によるシームレス缶の成形が可能になったため、生産性も向上し従来の方法に比べ安価な金属缶が提供できる。しかも、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属板から得られる缶は、内面フィルムの健全性が優れているため、良好な耐食性が得られ、安心して使用できる金属缶が提供できる。更に、本発明のポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶は、内容物の充填・密封後、缶体の落下やその他において打撃や衝撃を受けても、内面フィルムの破壊損傷や剥離が低温下や、またレトルト殺菌処理やパストロ殺菌処理と言った熱水処理や温水処理を経た後でも、起こり難いため、多様な内容物を充填することが可能となるため、汎用性の高い金属缶が提供できるようになった。


特許出願人 新日本製鐡株式会社 他1名
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (2)

  1. 金属板の少なくとも缶の内面側に相当する表面にポリエステル樹脂フィルム(F)が被覆されたポリエステル樹脂フィルム被覆金属板であって、該ポリエステル樹脂フィルム(F)は、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)とポリエステル樹脂フィルム層(A層)とからなる二層構成のフィルムでポリエステル樹脂フィルム層(B層)が金属板に相接して被覆されており、ポリエステル樹脂フィルム層(B層)は融点(B−Tm)が220℃以上、結晶融解熱(B−Hm)及び/または冷結晶化熱(B−Hc)が20〜45J/g、極限粘度(B−IV)が0.55dl/g以上のポリエステル樹脂100質量部に対して、等価球換算径として2000nm以下で密度が0.90〜0.96g/cm 3 の範囲にあるポリエチレン樹脂のゴム弾性樹脂(R)の微粒子を5〜40質量部、及び極性基を有するビニル重合体(V)を1〜10質量部を含有する混合ポリエステル樹脂からなり、ポリエステル樹脂フィルム層(A層)は融点(A−Tm)が235℃以上、ガラス転移温度(A−Tg)が65℃以上、結晶融解熱(A−Hm)及び/または冷結晶化熱(A−Hc)が25〜50J/g極限粘度(A−IV)が0.60dl/g以上のポリエステル樹脂からなることを特徴とする耐デント性に優れた金属缶成形加工用ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板。
  2. 請求項1に記載の前記ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板から成形加工して得られる缶体であって、且つ、缶体の内面側に被覆されているポリエステル樹脂フィルム(F)の密度が1.360g/cm3 以下であることを特徴とするポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶。
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