JP2007001081A - 樹脂フィルム被覆金属板及び樹脂フィルム被覆金属缶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単層もしくは2層以上の層構造を有する熱可塑性ポリエステルを主成分とする樹脂フィルムを少なくとも金属板の片面に被覆した樹脂フィルム被覆金属板であって、
樹脂フィルムの最表層の樹脂中に、(I)平均粒径が0.5〜5μmの粒子を0.01〜0.5重量%、かつ、(II)ポリオレフィン系樹脂を0.01〜2重量%含有するフィルム(フィルムA)、もしくは(I)平均粒径が0.5〜5μmの粒子を0.01〜0.5重量%、かつ、(III)表面自由エネルギーが35mN/m以下の樹脂を0.1〜2重量%含有するフィルム(フィルムB)を少なくとも片面に有することを特徴とする樹脂フィルム被覆金属板。上記の樹脂フィルム被覆金属板を、樹脂フィルム被覆面が缶内面側になるように成形してなることを特徴とする樹脂フィルム被覆金属缶。
【選択図】なし
Description
泡立ち性、泡持ち性は、金属板に被覆される樹脂フィルムの中に含まれる粒子の形態、そして缶成形時にその粒子により生じる窪みまたは空孔に起因することがわかっている。しかし、一方でそのような空孔は缶内容物の香り成分の吸着点となり、さらに、金属板との密着性低下、缶への衝撃によるフィルムクラックの発生、剥離、また各種内容物に接した時の腐食や剥離の原因となる。このように、泡の発生を促進するためには粒子の添加量を増す必要があるが、一方で、添加量を増すと香り成分の吸着によるフレーバー性の低下および耐食性の劣化が起きやすくなるという問題があった。
[1]単層もしくは2層以上の層構造を有する熱可塑性ポリエステルを主成分とする樹脂フィルムを少なくとも金属板の片面に被覆した樹脂フィルム被覆金属板であって、樹脂フィルムの最表層の樹脂中に、(I)平均粒径が0.5〜5μmの粒子を0.01〜0.5重量%、かつ、(II)ポリオレフィン系樹脂を0.01〜2重量%含有するフィルム(フィルムA)を少なくとも片面に有することを特徴とする樹脂フィルム被覆金属板。
γs=γsd+γsh
γsdは表面自由エネルギーのうち、ファンデルワールス力やロンドン力に起因する分散成分で、γshは極性基の水素結合や酸・塩基相互作用等の力に関係する極性成分である。ラミネート金属板の表面に液体を滴下したときの接触角をθ、液体の表面自由エネルギーをγl、その分散成分をγld、その極性成分をγlhとすると、それらは次の関係を満足する。
(γsh)1/2= −(γld/γlh)1/2*(γsd)1/2 + γl/(γlh)1/2*(1+cosθ)/2
そこで、表面自由エネルギーが既知(γl、γlh、γldが既知)の5つの液体(純水、グリセロール、ホルムアミド、エチエングリコール、ジメチルグリコロール)を測定物(ラミネート金属板)の表面に滴下し、各々の液体について接触角θを測定して求める(湿度:60±5%、温度20℃)。そして、上記式に前記5液の各々について測定した接触角θと各々の液体のγl、γlh、γldの値を代入して、最小二乗法フィッティングで、γsd、およびγshを求める。ラミネート金属板の表面自由エネルギーγsは、γsdとγshの和で示される。
Xc=dc×(d−da)/d/(dc−da)×100
Xc:結晶化度(%)、d:対象フィルムの密度、dc:フィルム樹脂が100%結晶化した時の密度、da:フィルム樹脂が100%非晶状態の時の密度
樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレート樹脂単相からなる場合、dc=1.46、da=1.34であるから、結晶化度15%となるフィルムの密度は、1.36である。
炭酸飲料用缶などの用途で使用されるポリエステル系樹脂フィルムには、金属板との密着性に優れ、製缶時の成形加工によるフィルムの伸びや圧縮等の変形、および摩擦によるフィルムの劣化や密着性の低下が無いこと、製缶後の乾燥、印刷焼付け、レトルト殺菌処理等の加熱によって被覆されたフィルムが結晶化または劣化し、フィルムの剥離、収縮、クラック、ピンホール等を生じないこと、缶への衝撃によってフィルムにクラックが発生したり、剥離したりしないこと、各種内容物に接した時に腐食や剥離が生じないこと、フィルムが白濁しないこと等の性能が要求される。さらに、缶の内容物の香り成分がフィルムに吸着したり、フィルムの溶出成分や臭いによって内容物の風味が損なわれないことも求められる。
樹脂被覆金属板について、以下の条件で第一段絞り、再絞りを行い薄肉化深絞り缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径…150〜160mm
1段絞り …絞り比1.65
・再絞り
第1次再絞り…絞り比:1.25
第2次再絞り…絞り比:1.25
再絞り工程のダイスコーナー部の曲率半径:0.4mm
再絞り時のしわ押さえ加重…39227N(4000kg)
・缶胴部の平均薄肉化率
成形前の樹脂被覆金属板の厚さに対し45〜60%
2.歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点230℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
ここで、得られた薄肉化深絞り缶の缶内面フィルムの空孔や粒子の数については、最も空孔や粒子の数が多い部分を缶胴においてSEMで観察して探し出し、その部分についてSEMでフィルム表面を観察し、任意のフィルム表面の少なくとも10ヶ所において100μm×100μmの範囲の該当する数を数え、その平均値を100倍したものを面積1mm2中の空孔や粒子の数とした。また、空孔数や露出粒子数は、表面からその大きさが0.5〜5μmであることが確認できるもののみを数えた。
・加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評価した。なお、合格は○以上の評価のものである。
限界加工度(薄肉化率) :評価
薄肉化率45%の成形不可 :××(劣)
薄肉化率45%まで成形可 :× ↑
薄肉化率50%まで成形可 :△
薄肉化率55%まで成形可 :○ ↓
薄肉化率60%まで成形可 :◎ (優)
・耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率55%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底において、30cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、電流値を読み取り、以下のように評価した。なお、合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
電流値が0.3mA以上 :×× (劣)
電流値が0.1mA以上〜0.3mA未満 :× ↑
電流値が0.05mA以上〜0.1mA未満 :△
電流値が0.01mA以上〜0.05mA未満:○ ↓
電流値が0.01mA未満 :◎ (優)
・耐食性
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率50%)にネック加工を施し、缶体中に、ビール(サッポロ黒ラベル)を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、5℃に冷却した後、缶底を下にして30cmの高さから落下させて衝撃を与えた。その後40℃の雰囲気で30日間保持した後に、缶内のビール中の鉄溶出量を測定してその溶出量により耐食性を評価した。なお、合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
鉄溶出量が1.0ppm以上 :×× (劣)
鉄溶出量が0.5ppm以上〜1.0ppm未 :× ↑
鉄溶出量が0.2ppm以上〜0.5ppm未満 :△
鉄溶出量が0.1ppm以上〜0.2ppm未満 :○ ↓
鉄溶出量が0.1ppm未満 :◎ (優)
・フレーバー性
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率50%)の内面を洗浄した後、香料水溶液(d−リモネン20ppm水溶液)を入れ、密封後35℃で20日間放置し、その後開封して缶内部を水で洗浄した後にエーテル浸漬で抽出されるリモネン量をガスクロマトグラフィーにより1缶当りのd−リモネンの吸着量とし、味特性を評価した。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
吸着量200μg/缶を超えるもの :× (劣)
吸着量100μg/缶を超えて200μg/缶以下 :△ ↑
吸着量30μg/缶を超えて100μg/缶以下 :○
吸着量10μg/缶を超えて30μg/缶以下 :◎ ↓
吸着量10μg/缶以下 :◎◎ (優)
・泡立ち性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、ビール(サッポロ黒ラベル)を充填後、炭酸ガスを内圧1kg/cm2になるように充填し、5℃で120時間冷却した後、20℃の室内で開缶し5秒後のビール表面の泡立ち性を以下の基準で評価した。
試験結果 :評価
泡が液面を完全に覆わない :× (劣)
厚さ2mm未満の泡が液面をほぼ完全に覆う :△ ↑
厚さ2mm以上5mm未満の泡が液面を完全に覆う :○
厚さ5mm以上10mm未満の泡が液面を完全に覆う :◎ ↓
厚さ10mm以上の泡が液面を完全に覆う :◎◎ (優)
・泡持ち性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、ビール(サッポロ黒ラベル)を充填後、炭酸ガスを内圧1kg/cm2になるように充填し、5℃で120時間冷却した後、20℃の室内で開缶し、ビール表面の泡立ちが液面の中で切れ目を生じ完全に覆わなくなるまでの時間を測定し以下の基準で評価した。
試験結果 :評価
1分以内 :× (劣)
1分超〜10分 :△ ↑
10分超〜20分 :○
20分超〜30分 :◎ ↓
30分超 :◎◎ (優)
得られた結果を条件と併せて表1に示す。
試験結果 :評価
厚さ30mm以上の泡が発生 :× (劣)
厚さ5mm以上30mm未満の泡が発生 :△ ↑
厚さ1mm以上5mm未満の泡が発生 :○
厚さ1mm未満の泡が発生 :◎ ↓
泡が全く発生しない :◎◎ (優)
得られた結果を条件と併せて表3に示す。
Claims (19)
- 単層もしくは2層以上の層構造を有する熱可塑性ポリエステルを主成分とする樹脂フィルムを少なくとも金属板の片面に被覆した樹脂フィルム被覆金属板であって、
樹脂フィルムの最表層の樹脂中に、(I)平均粒径が0.5〜5μmの粒子を0.01〜0.5重量%、かつ、(II)ポリオレフィン系樹脂を0.01〜2重量%含有するフィルム(フィルムA)を少なくとも片面に有することを特徴とする樹脂フィルム被覆金属板。 - 単層もしくは2層以上の層構造を有する熱可塑性ポリエステルを主成分とする樹脂フィルムを少なくとも金属板の片面に被覆した樹脂フィルム被覆金属板であって、
樹脂フィルムの最表層の樹脂中に、(I)平均粒径が0.5〜5μmの粒子を0.01〜0.5重量%、かつ、(III)表面自由エネルギーが35mN/m以下の樹脂を0.1〜2重量%含有するフィルム(フィルムB)を少なくとも片面に有することを特徴とする樹脂フィルム被覆金属板。 - 前記樹脂フィルムAおよび又はBの表面には、平均粒径が0.5〜5μmの粒子が、面積1mm2当り5〜5000個露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記樹脂フィルムAおよび又はBの最表層の水接触角が80度以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記樹脂フィルムAおよび又はBの最表層の表面自由エネルギーが35mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記樹脂フィルムAおよび又はBの最表層の表面自由エネルギーの極性成分が5mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記樹脂フィルムAおよび又はBの最表層の樹脂膜厚は2〜10μmであり、かつ、該最表層樹脂に含有されるポリエステル樹脂における酸成分は、イソフタル酸5〜18重量部と残部がテレフタル酸からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 金属板に接する前記樹脂フィルムAおよび又はB最下層の樹脂中には、カルボン酸誘導体変性ポリオレフィン粒状樹脂を5〜30重量%含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記樹脂フィルムAおよび又はBにおける最表層の樹脂膜厚と、最表層以外の樹脂膜厚の比率が、1:15〜1:2であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板であり、該樹脂フィルム被覆金属板は、樹脂フィルムを被覆した後に、80℃以上200℃以下の高温雰囲気中で熱処理を施されることを特徴とする樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記樹脂フィルムの結晶化度が15%以上であることを特徴とする請求項10に記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属板を、樹脂フィルム被覆面が缶内面側になるように成形してなることを特徴とする樹脂フィルム被覆金属缶。
- 樹脂フィルム表面には、粒径が0.5〜5μmの粒子が、面積1mm2当り最大で10〜10000個露出していることを特徴とする請求項12に記載の樹脂フィルム被覆金属缶。
- 樹脂フィルム表面には、孔径0.5〜5μmの空孔が、面積1mm2当り最大で1〜1000個存在していることを特徴とする請求項12または13に記載の樹脂フィルム被覆金属缶。
- 樹脂フィルム表面には、粒径が0.5〜5μmの粒子により形成される空孔が、面積1mm2当り最大で2〜500個存在していることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属缶。
- 請求項12〜15のいずれかに記載の樹脂フィルム被覆金属缶を熱処理することにより、樹脂フィルムの結晶化度を30%以上とすることを特徴とする樹脂フィルム被覆金属缶。
- 樹脂フィルム被覆金属缶の缶内面側の樹脂フィルム表面の水接触角が80度以上であることを特徴とする請求項12〜16に記載の樹脂フィルム被覆金属缶。
- 樹脂フィルム被覆金属缶の缶内面側の樹脂フィルム表面の表面自由エネルギーが35mN/m以下であることを特徴とする請求項12〜17に記載の樹脂フィルム被覆金属缶。
- 樹脂フィルム被覆金属缶の缶内面側の樹脂フィルム表面の表面自由エネルギーの極性成分が5mN/m以下であることを特徴とする請求項12〜18に記載の樹脂フィルム被覆金属缶。
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