本発明は、加工性、耐衝撃性に優れるとともに、加工後や加熱後においても下地金属との密着性にも優れるため、過酷な成形加工に耐え得る金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、ラミネート金属板並びにその製造方法に関するものである。
また、本発明は、フレーバー性にも優れる金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、ラミネート金属板並びにその製造方法に関するものである。
また、本発明は、レトルト処理性に優れる、特にレトルト処理時に発生するフィルムの白濁を防止できる金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、ラミネート金属板並びにその製造方法関するものである。
従来、薄肉深絞り缶や絞りしごき缶(DI缶)のような過酷な成形を強いられる金属缶用材料には、金属板からの金属溶出による味やフレーバーの低下、さらには内容物の変質の発生などを防止するために、缶内面側に樹脂層を設けたものが一般に使用されている。このような缶内面側に樹脂層が設けられた缶およびこのような缶を形成しうる樹脂被覆金属板として、最近環境ホルモンの危険性を指摘されているエポキシ系塗膜層を代替したポリエステル系樹脂をラミネートした金属板が用いられている。
このような用途で使用されるポリエステル系樹脂には、以下のような性能が要求される。すなわち、金属板との密着性に優れ、製缶時の成形加工によるフィルムの伸びや圧縮等の変形、缶成形時の摩擦によるフィルムの劣化や密着性の低下が無いこと、製缶後の乾燥、印刷焼付け、レトルト殺菌処理等の加熱によってラミネートされたポリエステル樹脂フィルムが結晶化または劣化し、フィルムの剥離、収縮、クラック、ピンホール等を生じないこと、金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフィルムにクラックが発生したり、剥離したりしないこと、各種内容物に接した時に腐食や剥離が生じないこと、フィルムが白濁しないこと等がある。さらに、缶の内容物の香り成分がポリエステルフィルムに吸着したり、ポリエステルフィルムの溶出成分や臭いによって内容物の風味がそこなわれないことも求められる(以下フレーバー性と記載する)。
例えば、特許文献1などには、成形性、耐熱性、耐食性、フレーバー性等の観点から、ポリエチレンテレフタレート系樹脂で被覆された金属板が提案され、また特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート系樹脂で被覆された金属板が提案されている。さらに、このような金属缶用材料に用いられる被覆用樹脂には、絞りしごき加工に追従し得る、優れた成形性が要求されると共に、鋼板から剥離しないような優れた密着性、及び打缶時、缶詰工程および運搬時の衝撃に耐え得るような優れた耐衝撃性が要求されるため、特許文献3、及び特許文献4には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムが元来有する、食品衛生性やフレーバー性に加えて、フィルムの結晶配向を、ラミネート技術等で制御することにより、優れた成形性と密着性、耐衝撃性が両立するような製造方法が提案されている。このような技術は、現状の成形性、密着性および耐衝撃性の要求レベルにおいては、適応可能であった。
しかしながら、当該分野では、年々、材料の軽量化のための板厚減少が進行しており、この傾向は今後も続くと思われるが、前記の現行ポリエチレンテレフタレート系樹脂の製造方法では、より厳しい加工に供された場合、加工性と耐衝撃性を両立させることが困難である。これは、加工性と耐衝撃性は、樹脂層の結晶配向度(面配向)に大きく依存する性能でそれらが相反する傾向にあるからである。すなわち、樹脂層中に結晶配向成分が増えると、結晶部で塑性変形が阻害され、加工性が低下する。この為、加工性の観点からは、配向結晶量は少ないほど良いが、衝撃を受けた場合、この結晶部分は、割れの進行を食い止める部位として働くため、耐衝撃性の観点からは配向結晶量は多いほど良い。このように、加工性と耐衝撃性は、両特性の許容領域となるよう配向結晶量を調節し、設計される。しかしながら、両特性の両立域は、現在の要求性能が限界の状態であり、今後の加工度の上昇に対応できる新規の高加工性フィルム、そしてそれを被覆したフィルムラミネート金属板の開発が期待されていた。
このようなニーズに対し、ポリエステル系樹脂にポリオレフィン樹脂を混合することにより、高度の加工性と耐衝撃性を両立させるという技術の検討が精力的に行われている。特許文献5、特許文献6には、飽和ポリエステル樹脂とアイオノマー樹脂との組成物からなる皮膜を金属板にラミネートする技術が開示されており、非晶状態でも耐衝撃性を維持できることが示されているが、単なるアイオノマーの添加では得られる耐衝撃性は十分ではなく、逆に、実際はポリエステル樹脂の配向がアイオノマーの添加により妨げられるため、ポリエステル樹脂が本来持つ機械的強度が低下し成形時の樹脂破れが生じやすいという問題がある。また、加工後や加熱後の下地金属との密着性にも劣っている。
さらに、特許文献7、特許文献8には、ポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、及びアイオノマー樹脂の3元組成物を金属板にラミネートし、耐衝撃性を改善できることが示されているが、本組成の混合物においてもポリエステルエラストマーの衝撃応力を緩和する能力が低いためポリエステル樹脂の耐衝撃性を向上する効果はごくわずかであり、また、エラストマーを加えない場合と同様に加工後や加熱後の下地金属との密着性にも劣っている。
一方、特許文献9には、ポリエステル樹脂にゴム状弾性体樹脂とともに極性基を有するビニル重合体を混合することにより、ポリエステル樹脂中に極性基を有するビニル重合体でカプセル化されたゴム状弾性体樹脂を微細分散させる技術が開示されている。このような弾性体樹脂の微細分散により耐衝撃性は改善され、成形性と耐衝撃性のレベルは高いものとなった。しかしながら、このようなカプセル状態を製造する工程管理は難しく、弾性体樹脂の分散状態は樹脂の成形条件で大きく変化し安定しないため、その結果得られる樹脂フィルムとしての性能も常に一定にならないという問題点があった。このような分散状態が最適条件を外れると、大きく性能が低下することがわかっており、実際このような組成の樹脂を製造しても部分的に樹脂性能が低い部分が生じ、トータルとしては得られる成形性や耐衝撃性等の性能は不十分であった。さらに、加工や衝撃による下地金属との密着性の低下、加熱後の密着性低下という問題点があった。
さらに、特許文献10には、ポリエステル樹脂中に極性基を有するビニル重合体を微細分散させた混合樹脂に適量の酸化防止剤(ラジカル禁止剤)を添加することにより、ビニル重合体の分解を抑制させる技術が開示されている。しかしながら、特定のビニル重合体とポリエステル樹脂の混合物においては、ポリエステル樹脂の重合触媒と酸化防止剤が共存する時、樹脂の劣化が起こりやすくなる。特にポリエステル樹脂が劣化し、耐衝撃性、フレーバー性等の性能が低下する。
さらに、特許文献11には、ポリエステル樹脂中に微細なアイオノマー樹脂が分散相として存在している樹脂層を被覆することにより加工性、耐衝撃性、密着性を高める技術を開示しているが、分散する変性ポリオレフィン樹脂の組成、およびポリエステル樹脂の組成が適当でなく、性能は不十分なものであった。
また、このようなフィルムをラミネートした金属板を使用した缶において、レトルト処理後にフィルムが白濁し外観が劣化するという問題があり、特にレトルト蒸気が直接接触する缶蓋や缶底部において顕著であるが、前記従来技術では、そのような白濁を防止することは考慮されていない。
以下に、先行技術文献情報について記載する。なお、特許文献12〜19については、説明の都合上、[発明を実施するための最良の形態]の項目において説明する。
特開昭59−232852号公報
特開平1−180336号公報
特開平5−269920号公報
特開平6−320669号公報
特開平7−195617号公報
特開平7−195618号公報
特開平7−290643号公報
特開平7−290644号公報
WO99/27026号パンフレット
特開2001−172481号公報
特開2001−353814号公報
特開平5−222357号公報
特開平5−1164号公報
特開平11−48431号公報
特開平11−138702号公報
特公昭54−22234号公報
特公昭60−12233号公報
特公昭63−13829号公報
特開昭61−149341号公報
この様な課題に対し、本発明は、その解決手段を提供するもので、加工性、耐衝撃性に優れるとともに、加工後、加熱後の密着性にも優れるため、過酷な成形加工に耐え、しかも成形条件に関わらず安定的に性能が得られる金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、ラミネート金属板並びにその製造方法を提供するものである。
また、本発明は、フレーバー性にも優れる金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、ラミネート金属板並びにその製造方法を提供するものである。
また、本発明は、レトルト処理性に優れる、特にレトルト処理時に発生するフィルムの白濁を防止できる金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、ラミネート金属板並びにその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、ポリエステル樹脂の元来持つ加工性、フレーバー性等の良さを失わずに、より厳しい加工に耐え、耐衝撃性、密着性等の性能を保持する樹脂層の構造を検討した。さらに、その構造が成形条件に関わらず安定的に得られる樹脂組成を探求した結果、ある特定組成の粒状の変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂からなる樹脂フィルムを被覆した金属板において飛躍的に高い加工性、耐衝撃性、フレーバー性が得られ、かつ加工後、加熱後の密着性にも優れることを見出した。しかも、その樹脂構造が成形条件に関わらず安定的に得られるため、高い性能が安定的に得られる。さらに、この樹脂組成においては、耐食性等の必要特性も十分あることが確認された。
混合樹脂層の最適樹脂構成は、カルボン酸から誘導される官能基を特定量含有する粒状の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂中に分散している時に得られる。これは、このような官能基組成の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂中に最も安定的に分散し、しかもその変性ポリオレフィン樹脂自体の機械的性能も最適であるため、最大の加工性、耐衝撃性が得られるのである。
加工性と耐衝撃性を両立できる理由としては、以下の機構が推定される。厳しい加工や衝撃により樹脂に破壊の力が働く時、ポリエステル樹脂内にクレーズそしてクラックが発生し、それが成長して破壊に至るが、適切な組成、大きさの粒状変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂中に分散されていると、そのようなクレーズ、クラックの進展が変性ポリオレフィン樹脂の応力緩和により抑制され、破壊に至るのを抑えることが可能となる。さらに、このような変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂が接する周囲で、ポリエステル樹脂の塑性変形が促進されるという効果が現れ、破壊に至る応力集中を緩和し、樹脂が破壊しにくくなるという効果もある。
このようなカルボン酸を含有する変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂と混合された樹脂フィルムは、下地金属との密着性は通常のポリエステル樹脂に比較すれば高いものの、より厳しい加工を施した時には不十分になる可能性がある。また、このような樹脂組成のフィルムにおいては、高度の加工性、耐衝撃性が発現するとともに通常使用するのに十分なフレーバー性が発現するが、近年用途によってはフレーバーの変化に対し非常に敏感な人が多くなり、非常に厳しい要求があるのも事実である。そのような要求に対し、変性オレフィンを分散したポリエステル樹脂はオレフィン成分を含有するためフレーバー性が不十分になる可能性がある。
そこで、鋭意検討した結果、カルボン酸を含有する変性ポリオレフィン樹脂の層を金属板に接する層とすることにより、加工後や加熱後の密着性が飛躍的に向上することがわかった。さらに、この変性ポリオレフィン樹脂層は、混合樹脂層との密着性にも優れるため層間剥離も無く、全体として高い密着性を保持することができる。また、変性オレフィン分散ポリエステル層の上にポリオレフィン樹脂を含まないポリエステル樹脂層を重ねることによりフレーバー性を要求レベル以上に高めることができることがわかった。
本発明は、上記の考えや知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するモノマー成分は、ジカルボン酸がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールと1,4−ブタンジオールで、その割合がモル比率で20:80〜80:20である熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径0.1〜5μmの粒状の状態で存在する粒状樹脂を全樹脂中の重量比率で3〜30重量%の範囲で分散させた混合樹脂からなり、該粒状樹脂はカルボン酸から誘導される官能基をカルボン酸換算の重量比率で2〜20重量%含有する変性ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(2)前記変性ポリオレフィン樹脂は、粒子径0.1〜5μmの粒状の状態でフィルム中に存在する変性ポリオレフィン樹脂の量が混合樹脂中の体積分率で3〜25vol%の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(3)前記混合樹脂中のポリエステル重合触媒量Xと酸化防止剤量Yの比X/Yが重量比率で0.2以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(4)前記混合樹脂中の酸化防止剤含有量が500ppm以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(5)前記樹脂フィルムが、重量比率で、顔料を5〜40重量%含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(6)前記樹脂フィルムは、膜厚が10〜50μmであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の混合樹脂からなる樹脂層R1層とポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層R0層が積層された構造を有するフィルムであり、かつ金属板にラミネートされた時に前記R0層が最外層になるよう設計されたことを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(8)前記R1層の膜厚が10〜50μm、前記R0層の膜厚が1〜10μm、かつ前記R1層と前記R0層の厚み比R1/R0が、R1/R0=2/1〜10/1であることを特徴とする前記(7)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(9)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の混合樹脂からなる樹脂層R1層とカルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層R2層が積層された構造を有するフィルムであって、かつ金属板にラミネートされた時に前記R2層が金属板に接するよう設計されたことを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(10)前記R1層の膜厚が10〜50μm、前記R2層の膜厚が1〜10μmかつ前記R1層と前記R2層の厚み比R1/R2が、R1/R2=1/1〜20/1であることを特徴とする前記(9)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(11)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の混合樹脂からなる樹脂層R1層の一方の面上に、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層R0層が積層され、前記R1層のもう一方の面上に、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層R2層が積層された、R0層/R1層/R2層の3層構造を有するフィルムであり、かつ金属板にラミネートされた時に前記R0層が最外層になるよう設計されたことを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(12)前記R1層の膜厚が10〜50μm、前記R0層の膜厚が1〜10μm、前記R2層の膜厚が1〜10μm、前記R1層と前記R0層の厚み比R1/R0が、R1/R0=2/1〜10/1、かつ前記R2層との厚み比R1/R2が、R1/R2=1/1〜20/1であることを特徴とする前記(11)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(13)前記R2層の変性ポリオレフィン樹脂がカルボン酸から誘導される官能基をカルボン酸換算の重量比率で2〜20重量%含有することを特徴とする前記(9)〜(12)のいずれかに記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(14)前記樹脂フィルムが、重量比率で、顔料を5〜40重量%含有することを特徴とする前記(7)〜(13)のいずれかに記載の金属板ラミネート用樹脂フィルム。
(15)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の金属板ラミネート用樹脂フィルムを製造するにあたり、原料樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し溶融させ、Tダイから押出しフィルム成形することを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルムの製造方法。
(16)前記(7)、(8)または(14)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルムを製造するにあたり、前記R1層の原料となる樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し溶融させ、同時に前記R0層の原料となる樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂を別の押出し機に挿入し溶融させ、それらの溶融樹脂を1つのTダイから押出し、R1層/R0層の2層構造のフィルムに成形することを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルムの製造方法。
(17)前記(9)、(10)、(13)または(14)に記載の金属板ラミネート用樹脂フィルムを製造するにあたり、前記R1層の原料となる樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し溶融させ、同時に前記R2層の原料となる樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂を別の押出し機に挿入し溶融させ、それらの溶融樹脂を1つのTダイから押出し、R1層/R2層の2層構造のフィルムに成形することを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルムの製造方法。
(18)前記(11)〜(14)のいずれかに記載の金属板ラミネート用樹脂フィルムを製造するにあたり、前記R1層の原料となる樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し溶融させ、同時に、前記R0層の原料となる樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂を、また前記R2層の原料となる樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂を、各々前記押出し機とは別の押出し機に挿入し溶融させ、前記溶融樹脂を1つのTダイから押出し、R0層/R1層/R2層の3層構造のフィルムに成形することを特徴とする金属板ラミネート用樹脂フィルムの製造方法。
(19)金属板の少なくとも一方の表面に、前記(1)〜(14)のいずれかに記載された樹脂フィルム、または前記(15)〜(18)のいずれかに記載された方法で製造された樹脂フィルムを被覆したことを特徴とするラミネート金属板。
(20)金属板が、表面に付着量50〜200mg/m2の金属クロム層と、金属クロム換算の付着量が3〜30mg/m2のクロム酸化物層を有する電解クロメート処理鋼板であることを特徴とする前記(19)に記載のラミネート金属板。
(21)樹脂フィルムのフィルム面と平行な方向の面配向係数が0.010未満であることを特徴とする前記(19)または(20)に記載のラミネート金属板。
(22)前記樹脂フィルムは、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された混合樹脂がTダイから押出されて直接金属板表面に被覆される押出しラミネート法により被覆されたものであることを特徴とする前記(19)〜(21)のいずれかに記載のラミネート金属板。
(23)前記樹脂フィルムは、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された混合樹脂からなる樹脂層(R1層)と、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂からなる樹脂層(R0層)からなる2種類の樹脂が同時に1つのTダイから押出されて直接金属板表面に被覆される2層押出しラミネート法により被覆されたものであることを特徴とする前記(19)〜(21)のいずれかに記載のラミネート金属板。
(24)前記樹脂フィルムは、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された混合樹脂からなる樹脂層(R1層)と、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層R2層からなる2種類の樹脂が同時に1つのTダイから押出されて直接金属板表面に被覆される2層押出しラミネート法により被覆されたものであることを特徴とする前記(19)〜(21)のいずれかに記載のラミネート金属板。
(25)前記樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂からなる樹脂層(R0層)と、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された混合樹脂からなる樹脂層(R1層)と、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層R2層からなる3種類の樹脂が同時に1つのTダイから押出されて直接金属板表面に被覆される3層押出しラミネート法により被覆されたものであることを特徴とする前記(19)〜(21)のいずれかに記載のラミネート金属板。
(26)前記(19)〜(25)のいずれかに記載のラミネート金属板を製造するにあたり、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された混合樹脂中のポリエステル樹脂の融点−70℃〜融点+30℃の範囲に加熱した金属板に、樹脂フィルムをラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
(27)前記(22)に記載のラミネート金属板を製造するにあたり、前記混合樹脂を、該混合樹脂中のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し溶融させた後、金属板の表面に直接押出してラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
(28)原料となる樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し、溶融させた後、金属板の表面に直接押出しラミネートすることを特徴とする前記(27)に記載のラミネート金属板の製造方法。
(29)前記(23)に記載のラミネート金属板を製造するにあたり、R1層とR0層を、前記R1層のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し、溶融させた後、金属板の表面に2層押出しラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
(30)R1層の原料となる樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し、同時にR0層の原料となる樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂からなる樹脂を別の押出し機に挿入し、それらを溶融させた後、金属板の表面に直接押出してラミネートすることを特徴とする前記(29)に記載のラミネート金属板の製造方法。
(31)前記(24)に記載のラミネート金属板を製造するにあたり、R1層とR2層を、前記R1層のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し、溶融させた後、金属板の表面に2層押出しラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
(32)R1層の原料となる樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し、同時にR2層の原料となる樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂を別の押出し機に挿入し、それらを溶融させた後、金属板の表面に直接押出してラミネートすることを特徴とする前記(31)に記載のラミネート金属板の製造方法。
(33)前記(25)に記載のラミネート金属板を製造するにあたり、R1層とR2層とR0層を、前記R1層のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し、溶融させた後、金属板の表面に3層押出しラミネートすることを特徴とするラミネート金属板の製造方法。
(34)R1層の原料となる樹脂として、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し溶融させ、同時に、R0層の原料となる樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂からなる樹脂を、またR2層の原料となる樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂を、各々前記押出し機とは別の押出し機に挿入し、それらを溶融させた後、金属板の表面に直接押出してラミネートすることを特徴とする前記(33)に記載のラミネート金属板の製造方法。
本発明によれば、加工性、耐衝撃性、密着性、またさらにフレーバー性、レトルト処理性に優れた金属板ラミネート用樹脂フィルムおよびラミネート金属板並びにその製造方法が得られる。本発明のラミネート金属板は、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶用途に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底用金属板と好ましく使用することができる。
また、本発明のラミネート金属板は、材料の板厚減少による薄肉化が進み、特に過酷な成形を強いられる薄肉深絞り缶用途へ使用する材料としても好適である。
本発明のラミネート金属板は、レトルト処理時にフィルムの白濁がないので、ツーピース缶やスリーピース缶の蓋材など、白濁が問題になる用途への使用に適する。
以下に本発明の金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、ラミネート金属板並びにその製造方法について説明する。
本発明の樹脂フィルムは、熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径0.1〜5μmの粒状の状態で存在する粒状樹脂を全樹脂中の重量比率で3〜30重量%の範囲で分散させた混合樹脂からなり、該粒状樹脂はカルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂である。
すなわち、本発明の樹脂フィルムは、熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする。熱可塑性ポリエステル樹脂は、その酸成分は各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が、グリコール成分としては各種の脂肪族ジオール、芳香族ジオールが任意に共重合されたものが用いられる。
酸成分としては、具体的には、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタル酸、ダイマー酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカジオン酸、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが用いられる。特にテレフタル酸および/またはイソフタル酸を主成分としたものが、機械的物性とフレーバー性等のバランスの点から好適である。
一方、グリコール成分としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、trans−1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類、p−キシレングリコール、cis−1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、水添ビスフェノールAなどが用いられる。特にエチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールを主成分としたものが、機械的物性とフレーバー性等のバランスの点から好適である。
すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールが主成分のもの、および/またはテレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールが主成分のもの、および/またはテレフタル酸とエチレングリコールおよび1、4−ブタンジオールを主成分とするものが、混合樹脂状態での機械的物性、フレーバー性のバランスの点から特に適する。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート及び/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂が好適である。ポリエチレンテレフタレート及び/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂骨格中のエチレングリコールとテレフタル酸のみを構成単位とする部分及び/またはエチレングリコールとテレフタル酸とイソフタル酸を構成単位とする部分の合計が90重量%以上を占めているもので、その他の部位で、酸成分が、各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を任意に共重合しても良い。
さらに、発明の目的を損なわない範囲で、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物から誘導される構成単位を少量、たとえば2重量%以下の量で含んでいてもよい。
本発明のポリエステル樹脂は、ジエチレングリコール含有量が1.5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.9重量%以下である。ポリエステル中のジエチレングリコール含有量が多い場合には、成型加工時での乾燥、印刷焼付け等の加熱処理によってポリマの劣化が進行し、クラック、ピンホールの発生が起こり耐衝撃性、フレーバー性に劣る場合がある。
また、フレーバー性の点から樹脂中のアセトアルデヒド含有量を10ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは7ppm以下である。アセトアルデヒド含有量がかかる範囲、特に10ppmを越えるとフレーバー性に劣る場合がある。アセトアルデヒド含有量を10ppm以下とする方法は特に限定されるものではない。例えばポリエステル樹脂を重縮合反応等で製造する際の熱分解によって生じるアセトアルデヒドを除去するため、樹脂を減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する方法等によって得られたポリエステル樹脂をフィルムに成形する方法等を挙げることができ、好ましくは樹脂を減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において150℃以上、融点以下の温度で固相重合したポリエステル樹脂を用いる方法がよい。
また、本発明のポリエステル樹脂はフレーバー性の点から樹脂中の環状三量体等からなるオリゴマーはより少ない方が好ましい。特に環状三量体の含有量を0.9重量%以下とすることが好ましく、特には0.7重量%以下とすることがより好ましい。樹脂中のオリゴマ含有量がかかる範囲、特に0.9重量%を越えるとフレーバー性に劣る場合がある。オリゴマ含有量を0.9重量%以下とする方法は特に限定されるものではないが、上述のアセトアルデヒド含有量を減少させる方法と同様の方法等を採用することで達成できる。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、0.3〜2.0dl/g、より好ましくは0.3〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.5〜1.0dl/gである。2.0dl/gを越える場合は、粘度が非常に高いため変性ポリオレフィン樹脂との混合が著しく困難となり、変性ポリオレフィン樹脂が均一に分散しない結果、ポリエステル樹脂の機械強度や耐衝撃性が低くなる可能性があり、一方、固有粘度が0.3dl/g未満の場合には粘性が低いために成形性が不良となり、均一なフィルムを製造することが困難となる可能性がある。上記固有粘度は、JIS K7367−5に示される方法で測定され、25℃のo−クロロフェノール中で0.005g/mlの濃度で測定されたもので、固有粘度=(T−T0)/(T0*c)という式によって求められる。式中、cは溶液100ml当たりの樹脂濃度をグラム数で表わした濃度を、T0、およびTは、溶媒、および樹脂溶液の毛細管形粘度計内の流下時間をそれぞれ表す。
さらに、本発明に使用するポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50〜120℃、より好ましくは60〜100℃であることが望ましい。ガラス転移温度が50℃未満の場合は、ポリエステル樹脂の耐熱性が劣るため成形時の温度上昇で傷等が入りやすくなり、一方、ガラス転移温度が120℃を超える場合には逆に加工性に劣ることがある。また、低温結晶化温度(Tc)については、通常130〜210℃、好ましくは140〜200℃であり、融点(Tm)は、通常210〜265℃、好ましくは220〜260℃であることが望ましい。低温結晶化温度が130℃未満では結晶化が起こりやすいためレトルト殺菌処理(120℃程度の高温高湿処理。本明細書では「レトルト処理」とも記載する。)時等に結晶化が起こりフィルムにクラックが入ったり剥離が生じやすくなり、一方210℃を超えるものはポリエステルの加工性、耐衝撃性等の機械的強度に劣ることがある。融点が210℃未満では成型加工時の熱で樹脂が劣化し、クラックやピンホールの発生が起こりやすくなり、一方265℃を超えるものは成型加工時の乾燥、印刷焼付等の加熱処理によって結晶化が進行し、やはりクラックやピンホールの発生が起こりやすくなる。上記ガラス転移温度、低温結晶化温度、結晶融解温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温時の吸熱ピーク温度を測定したもので、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
本発明では、ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分において、全テレフタル酸量と全イソフタル酸量の割合がモル比率で97:3〜85:15と規定する。本発明における混合樹脂においては、樹脂中の変性ポリオレフィンがポリエステル樹脂の結晶化を妨げ、加工や加熱等による密着性や耐食性の低下が起こりにくくなるため、変性ポリオレフィン樹脂を含有しない場合に比べて最適な比率はテレフタル酸リッチ側に広がり、イソフタル酸を全く含まないホモエチレンテレフタレート樹脂をポリエステル樹脂として使用しても本発明の変性ポリオレフィン樹脂を含有する場合は通常の缶用材料としての使用が可能である。さらに、イソフタル酸比率が3モル%共重合化されれば加工、加熱後の密着性が飛躍的に向上する。全テレフタル酸量と全イソフタル酸量の割合が85:15よりイソフタル酸が多くなると融点が低下し、成型加工時の耐熱性が劣る可能性がある。
また、特にレトルト処理を行う用途には、熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するモノマー成分において、ジカルボン酸がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコールと1,4−ブタンジオールで、両者の割合(ジオール成分において、エチレングリコール量と1,4ブタンジオール量の割合)がモル比率で20:80〜80:20と規定したものが最も適当である。さらに、60:40〜30:70の範囲が最も適当である。前記のようなポリオレフィン樹脂を含むポリエステル樹脂においては、樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂の結晶化を妨げるために、特にレトルト処理において、ポリエステル樹脂の強度が不足し凝集破壊が起きやすくなるという問題があった。このような問題に対し、特に結晶化速度の速いポリブチレンテレフタレートをポリエチレンテレフタレートに所定の割合で混合することによりポリエステル樹脂の結晶化が速まり、レトルト処理においても凝集破壊が生じにくくなる。このような効果は特に、フィルムをラミネートした蓋材において、レトルト処理時にフィルム中に浸入した水蒸気がフィルムを凝集破壊してフィルムが白濁するという現象の防止において顕著で、前記組成のポリエステル樹脂を使用することによりそのような問題点が解決できる。ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの割合がモル比率で80:20よりポリエチレンテレフタレート量が高いと結晶化速度が十分に速まらず上述の効果は期待できない。一方、20:80よりポリブチレンテレフタレート量が高いと融点が低く耐熱性に劣る。
ポリエステル樹脂中に混合されるカルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂は、耐衝撃性を向上するとともに、加工性、耐熱性等その他の諸特性には悪影響を与えないようにするため、粒子径が等価球換算計で0.1〜5μmの粒子の状態で存在することが必要で、少なくとも全変性ポリオレフィン樹脂中の重量比率で30%以上のものが等価球換算径で0.1〜5μmの粒径で存在することである。また、その変性ポリオレフィン樹脂の全樹脂中の重量比率は3〜30重量%の範囲にあることが必要である。
変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中に分散させると、粒子径が0.1μm以下の非常に細かい粒子から5μmを越える大きな粒子まで幅広い分散が生じるが、粒子径が0.1μm未満の粒子は混合樹脂の物性に何ら影響を及ぼさないし、一方、粒子径が5μmを超える粒子についても混合樹脂の加工性等の物性を改善しないかむしろ低下させるため、少なくとも全変性ポリオレフィン樹脂中の重量比率で30%以上のものが等価球換算径で0.1〜5μmの範囲であることが必要である。物性の低下を抑制するという観点からは、粒子径が5μmを超える粒子の重量比率は1%以下にすることが好ましい。また、混合する変性ポリオレフィン樹脂の全樹脂中の重量比率が3重量%未満では耐衝撃性の向上に不十分であり、30重量%を超えると加工性や耐熱性等の性能を低下させる。
変性ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度はポリエステル樹脂の場合と同様の測定方法で0℃以下が望ましい。好ましくは、−30℃以下である。ガラス転移温度が0℃を超えるものは、耐衝撃性がやや劣り、特に低温の耐衝撃性に劣る。また、さらに室温でのヤング率が250MPa以下、及び破断伸びが200%以上、より望ましくはヤング率が100MPa以下、及び破断伸びが500%以上であることがより好ましい。分子量は特に限定するものではないが、数平均分子量で2×103以上1×106以下が好ましい。2×103未満や1×106超になると、機械的性能に劣り耐衝撃性が低下する場合がある他、成型加工しにくくなる可能性がある。
カルボン酸から誘導される官能基はカルボン酸換算の重量比率で2〜20重量%、より好ましくは3〜12重量%含有される。この組成範囲においてポリエステル樹脂との親和性、分散性が最大に高まるからで、変性ポリオレフィン樹脂がマトリックスのポリエステル樹脂と強い親和性を持つほど衝撃時において異樹脂間の層間破壊の緩和効果が高まり、その結果耐衝撃性が高くなるとともに、さらに成型加工時の変性ポリエステル粒同士の凝集が抑制される結果成形条件による性能のばらつきが減少する。そのような効果は、官能基のカルボン酸換算の重量比率が2重量%以上で得られ、一方20重量%を超えるとポリエステル樹脂との親和性が逆に低下する結果、耐衝撃性が劣る。
本発明では、粒子径0.1〜5μmの粒状の状態で混合樹脂中に存在する変性ポリオレフィン樹脂の量が混合樹脂中の体積分率で3〜25vol%の範囲であることを規定する。前述したように、粒子径が0.1μm未満の粒子は混合樹脂の物性に何ら影響を及ぼさないし、一方、粒子径が5μmを超える粒子についても混合樹脂の加工性等の物性を改善しないかむしろ低下させるため、耐衝撃性の向上に寄与する粒状の変性ポリエステル樹脂は粒径が等価球換算径で0.1〜5μmのものだけである。このサイズの粒子の、フィルム全体における体積の絶対値でフィルム物性が整理できるため、体積分率で3〜25vol%の範囲であると規定した。変性ポリオレフィン樹脂の体積比率が3vol%未満では耐衝撃性の向上に不十分であり、25vol%を超えると加工性等の性能を低下させる。
さらに、混合樹脂中の1辺10μmの立方体中(体積1000μm3)の、粒子径0.1〜5μmの粒状の状態で混合樹脂層中に存在する変性ポリオレフィン樹脂の数としては、5〜105個の範囲が好ましい。さらに好ましくは50〜104個である。5個未満では耐衝撃性の向上に不十分であり、105個を超えると加工性等の性能を低下させる。
前記混合樹脂からなる樹脂フィルムの膜厚は10〜50μmの範囲が好ましい。上限値は経済的な観点、下限値は、耐衝撃性、加工性の観点からである。すなわち、膜厚が10μm以上になると耐衝撃性、加工性がより優れるが、膜厚が50μmを超えると樹脂フィルムのコストが上昇し、また耐衝撃性、加工性の向上効果が飽和するためである。
以下に変性ポリオレフィン樹脂の製造方法を述べる。カルボン酸から誘導される官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸イオンの金属塩等があり、これらの官能基を含むモノマーをポリオレフィン樹脂中に共重合、グラフト重合、またはブロック重合することにより、カルボン酸変性ポリオレフィンが得られる。
カルボン酸から誘導される官能基を含むモノマーを具体的に挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル等の炭素数3〜8の不飽和カルボン酸、およびそれらの酸の全体または一部がナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の1〜2価の金属陽イオンで中和された金属塩が挙げられる。この中和度は、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜70%であり、このような中和度の変性ポリオレフィン樹脂から形成される組成物は、溶融押出性に優れている。
また、カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、マレイン酸モノメチルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、さらにアクリルアミン、アクリルアミド等が挙げられる。
これらのカルボン酸誘導官能基含有モノマーを、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、イソブテン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル等のカルボン酸誘導官能基非含有オレフィンモノマーと共重合させるか、ブロック重合またはグラフト重合させることにより、カルボン酸誘導官能基含有変性ポリオレフィン樹脂が得られる。この中でも特に、カルボン酸基がポリオレフィン樹脂中にグラフト重合または共重合されたものが高い性能を示す。このような変性ポリオレフィン樹脂としては、市販の樹脂も使用可能である。たとえば、モディパーA(日本油脂(株)社製)、ニュクレル(三井デュポンポリケミカル(株)社製)、ボンダイン(住友化学工業(株)社製)、アドマー(三井化学(株)社製)、タフテック(旭化成(株)社製)等が挙げられる。
また、それらのカルボン酸が一部金属塩で中和されたものも使用可能である。このような樹脂は加工性がやや低下するものの耐衝撃性はより高いものが得られる。市販の樹脂としては、ハイミラン(三井デュポンポリケミカル(株)社製)等が挙げられる。さらに、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中に溶融分散させる時に酸化亜鉛や水酸化カルシウム等を添加すると、変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基がそれらの金属イオンで中和され、結果的にカルボン酸が一部金属塩で中和されたカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂中に分散する構造をとるものが得られる。
変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中に分散させることにより原料となる混合樹脂が得られる。分散の方法としては、たとえば2つの樹脂を溶融して混合し、1相になる温度に保った後に2相に分離する温度まで冷却して相分離を利用してポリエステル樹脂相中に変性ポリオレフィン樹脂相を分散させる方法や、2つの樹脂を共通の溶媒に溶解させた後溶媒を蒸発させる方法、あらかじめ1次粒径を1μm以下に微細化した変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂中で凝集しない温度で溶融させて分散させる方法、あらかじめ1次粒径を1μm以下に微細化した変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂構成モノマーを含む溶液中においてモノマーを重合させポリエステル樹脂を製造するとともに変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル中に分散した状態にする方法、さらに2つの樹脂を溶融混合して機械的なせん断力で変性ポリオレフィン樹脂を微細化する方法等があり、いずれの方法も可能である。
混合、溶融する装置としては、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、V形ブレンダーなどの混合装置や、1軸または2軸の押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混合装置が使用でき、その際、混合装置の温度管理や温度変化等の温度制御を通常の混合方法に比べ厳しくしたり、混合時間を通常の混合時間に比べて例えば3倍〜10倍程度長くしたり、混合時の機械的なせん断速度を通常の速度に比べて、例えば2倍〜5倍程度速くしたりなどすることで、あるいはそれらを組み合わせて、たとえばタンブラーブレンダーで機械的に混合した後に押出機で溶融混合することにより、熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた分散性の高い混合樹脂が得られる。押出機で溶融混合することで得た分散性の高い混合樹脂をフィルム成形することで、より変性ポリオレフィン樹脂の粒径が揃った樹脂フィルムが得られ、その結果耐衝撃性等の性能も高まる。このような粒径が揃い、分散性の高い混合樹脂を押出し機に挿入で溶融してフィルム成形することで、フィルム成形しながら変性ポリオレフィン樹脂を分散させるよりも、はるかに粒状樹脂の粒径分布が狭まり、その結果各種性能において優れた性能を発揮できるフィルムが得られる。
一方、本発明の効果を妨げない限り、前記混合樹脂中に光安定剤、耐衝撃性改良剤、相溶化剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、反応触媒、着色防止剤、ラジカル禁止剤、可塑剤、酸化防止剤、末端封鎖剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、抗黴剤等の添加剤が添加されていても良い。これらの添加剤の含有量としては、本発明では、混合樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上15重量部以下が好ましい。さらに望ましくは0.01重量部以上2重量部以下、特に望ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下である。0.005重量部未満では効果が不十分で、一方15重量部を超えると添加剤が過剰となり混合樹脂層の機械的性能を低下させる。
滑り性、成形加工性、耐衝撃性等の向上に効果がある無機粒子としては乾式法および湿式法で製造されたシリカ、多孔質シリカ、コロイド状シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、スピネル、酸化鉄、リン酸カルシウム等が挙げられ、また有機粒子あるいは有機高分子粒子としてはポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、スチレン−アクリル系架橋粒子、アクリル系架橋粒子、スチレン−メタクリル酸系樹脂架橋粒子、メタクリル酸樹脂系架橋粒子などのビニル樹脂系粒子や、シリコーン、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルエステル、フェノール樹脂等を構成成分とする有機高分子粒子を挙げることができる。これら粒子の粒子径、含有量は特に限定されるものではないが、性能を最大限に発揮するためには粒子径は0.01〜5μmの範囲が好ましく、さらには0.1〜2.5μmの範囲が好ましい。また、それらの粒径分布は鋭く、標準偏差0.5以下が好ましい。さらに、粒子の形状は真球に近いものが望ましく、好ましくは長径/短径の比が1.0〜1.2である。
反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物等が、着色防止剤としては例えばリン化合物等を挙げることができる。
ラジカル禁止剤としては、フェノール系ラジカル禁止剤、リン系ラジカル禁止剤、スルフィド系ラジカル禁止剤、及び窒素系ラジカル禁止剤から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
可塑剤としては、炭素数2〜20の脂肪酸多塩基酸またはそのエステル誘導体に対する炭素数8〜20の芳香族多塩基酸またはそのエステル誘導体のモル比が0〜2.0である多塩基酸成分と、炭素数2〜20の脂肪族アルコールとを縮重合したものを、炭素数2〜20の一塩基酸又はそのエステル誘導体及および/または炭素数1〜18の一価アルコールで末端エステル化したポリエステルからなる可塑剤を挙げることができる。
帯電防止剤としては、成膜工程におけるフィルムのロールへの巻き付きや、フィルム表面への汚れ付着等の静電気障害を防止することを目的として、特許文献12に開示される帯電防止剤等の樹脂組成物中に練り込む方法や、フィルム表面に特許文献13に記載されている帯電防止剤を塗布する方法などを必要に応じて適用することができる。
抗菌剤としては、特許文献14、特許文献15等に開示されている従来公知の抗菌剤を必要に応じて使用することができる。
混合樹脂中にはポリエステル樹脂の重合触媒が添加される。重合触媒としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも一種以上の元素を1ppm以上500ppm以下含有することが好ましい。より好ましくは3ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上である。ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも一種以上の元素量が1ppmに満たないとフレーバー性向上の効果が十分でない場合があり、500ppmを越えるとポリエステルに異物が発生し結晶核剤となり結晶化しやすくなるため、耐衝撃性が悪化したり、耐熱性が低下したりする場合がある。これらの元素の中ではフレーバー性の点からゲルマニウム元素が特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂に、ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも一種以上の元素を含有させるために使用する化合物は、ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム酸化物、水酸化物、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレート、ゲルマニウムβ−ナフトレート等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。
アンチモン化合物としては、三酸化二アンチモン、三弗化アンチモン、酢酸アンチモン、硼酸アンチモン、ギ酸アンチモン、亜アンチモン酸等を挙げることができる。
チタン化合物としては、二酸化チタン等の酸化物、水酸化チタニウム等の水酸化物、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート等のアルコキシド化合物、テトラヒドロキシエチルチタネート等のグリコキシド化合物、フェノキシド化合物、酢酸塩等の化合物を挙げることができる。
上記の元素をポリエステル樹脂に含有させる方法は従来公知の任意の方法を採用することができ特に限定されるものではなく、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒として添加することが好ましい。このような方法として、ゲルマニウムの場合を例に挙げると、ゲルマニウム化合物の粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特許文献16に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコール成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。
本発明で規定するカルボン酸を含有する変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂と混合している時に、通常ポリエステル樹脂に混合されている重合触媒と、ビニル重合物の安定化のために一般に使用される酸化防止剤が共存すると、樹脂が劣化し性能が低下する。樹脂が劣化し性能が低下する機構は必ずしも明らかではないが、酸化防止剤が重合触媒に作用し、重合触媒の効果を低下させるとともに、特にポリエステル樹脂を劣化させる化合物を生成するためと推定している。そのため、本発明では、混合樹脂に添加する重合触媒量Xと酸化防止剤量Yの比、X/Y(重量比)は0.2以上とする必要がある。さらに、酸化防止剤については、500ppm以下にすることが好ましい。このような酸化防止剤としては、フェノール系酸化禁止剤、リン系酸化禁止剤、スルフィド系酸化禁止剤、及び窒素系酸化禁止剤から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
過酷な成形に対応するための混合樹脂からなる樹脂フィルムの機械的性能としては、破断伸びが20%以上、好ましくは50%以上であり、破断強度が20N/mm2以上であることが望ましい。ここで、樹脂フィルムの破断伸び、破断強度は、通常の引張り試験機により求められる。引張り試験方法としては、5mm×60mmの樹脂被覆層をチャック間距離30mmにセットし、25℃の一定温度下で引張り速度20mm/分で引張り試験を行い求めることができる。低温での引張り特性を求める場合は0〜5℃の一定温度下で同様の引張り試験を行うことにより求めることができる。試験のための樹脂サンプルは、フィルム、樹脂ラミネート金属板または成形体いずれから採取しても良い。
本発明では、樹脂フィルム中に顔料を5〜40重量%含有することを規定する。変性ポリオレフィン樹脂を分散させたポリエステル樹脂中では顔料の分散性が向上し、より少量の顔料の添加で目的の色調が得られる。顔料が5重量%未満では所望の色調を得ることができず、40重量%を超えると加工性が低下する。顔料の種類は特に限定されるものではないが、本発明の効果を妨げない限り、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、エアロジル、二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、マグネタイト、コバルトブルー、ベンガラ等を適宜使用し、金属ラミネート板あるいは、金属缶を好ましい色調に仕上げることが可能となる。
前記混合樹脂からなる樹脂フィルムは、通常のポリエステル樹脂に比べると、下地金属との密着性に優れ、また高度の加工性、耐衝撃性が発現するとともに通常使用するのに十分なフレーバー性が発現されるので、金属板ラミネート用樹脂フィルムとして好適に使用できる。
しかし、前記混合樹脂からなる樹脂フィルムは、より厳しい加工を施した時には下地金属との密着性が不十分になる可能性がある。また、近年用途によってはフレーバーの変化に対し非常に敏感な人が多くなり、非常に厳しい要求がある。そのような要求に対し、前記混合樹脂からなる樹脂フィルムは、オレフィン成分を含有するためフレーバー性が不十分になる可能性がある。
このような問題は、樹脂フィルムとして、上記した混合樹脂からなる樹脂層上に、カルボン酸を含有する変性ポリオレフィン樹脂層を積層したフィルム、またはポリオレフィン樹脂を含まないポリエステル樹脂層を積層したフィルムを使用することによって解決される。前記多層構造の樹脂フィルムについて以下に説明する。
(1)樹脂フィルムを、前記混合樹脂からなる樹脂層(本明細書ではR1層または混合樹脂層とも記載する)上に、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層(本明細書ではR2層とも記載する。)を積層させた構造を有するフィルムとし、金属板にラミネートされたときに前記R2層を下地金属との密着層とするように設計する。
前記構造を有するフィルムにより、加工後や加熱後の密着性が飛躍的に向上することができる。さらに、この変性ポリオレフィン樹脂層(R2層)は、混合樹脂層(R1層)との密着性にも優れるため層間剥離も無く、全体として高い密着性を保持することができる。この機構については、以下のものを推定している。すなわち、ポリエステル樹脂はもともと下地金属と化学的な結合を持つような官能基の少ない樹脂であり金属密着性は高くない。一方、カルボン酸誘導基を持つ変性ポリオレフィン樹脂は樹脂中に含まれるカルボン酸誘導基が下地金属と強い相互作用を持ち、密着性が非常に高いという特徴があるが、耐熱性やフレーバー性に劣るため、缶内面用フィルムとしては使用できなかった。そこで、このような変性ポリオレフィン樹脂層を下地金属との密着層にして、ポリエステル樹脂層をその上に積層すれば、密着性とその他の耐熱性やフレーバー性等の性能を両立するフィルムができると予想されるが、前記両樹脂は溶融粘度や融点が非常に異なるため、両樹脂を積層させた時の層間密着性は非常に劣りそのような複層フィルムは実際には製造できなかった。本発明では、密着層である変性ポリオレフィン樹脂層(R2層)と同様の組成の変性ポリオレフィン樹脂を混合樹脂層(R1層)中に混合することにより、層間の密着性を製造上および実用上問題無いレベルまで高めるとともに、そのポリエステル樹脂に混合した変性ポリオレフィン樹脂を粒状にすることにより、加工性や耐衝撃性が向上できるという二つの効果が同時に達成できるものである。
混合樹脂層(R1層)と変性ポリオレフィン樹脂層(R2層)を積層させたフィルムは、通常の複層樹脂の押出し法により得ることができる。すなわち、二つの押出し機を用いて、異なる押出し機に、R1層の原料樹脂として、熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂と、R2層の原料樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂をそれぞれ挿入し、それぞれの融点以上に溶融しフィードブロック法やマルチマニュホールド法により一つのTダイから積層させた状態で押出し、冷却ロール等で冷却して複層フィルムとしてフィルム化した後に金属板上にラミネートするか、直接金属板上に溶融樹脂を押出した後に冷却ロールで挟み込んでラミネートする直接ラミネート法により複層の樹脂層が製造可能である。Tダイの方式としては、複数の樹脂の溶融温度を詳細に制御できるマルチマニュホールド法で製造するのが特に好ましい。
また、別の製造方法として、変性ポリオレフィン樹脂の表面張力がポリエステル樹脂に比べ小さいため、溶融した混合樹脂が冷却される間に変性ポリオレフィン樹脂が混合樹脂の表面に濃化する性質を利用して、一つの押出し機に両方の樹脂を挿入して、溶融混合した後にTダイから押し出した時に冷却速度を遅くする等の方法で変性ポリオレフィン樹脂を混合樹脂表面に濃化させる方法でも両樹脂の積層フィルムを製造することができる。
R1層とR2層の厚み比R1/R2は、R1/R2=1/1〜20/1であることが加工性、耐衝撃性等の機械的性質と密着性を最大にする組成で、さらに、R1/R2=5/1〜10/1が好適である。R1層がこれより薄いと機械的性質が非常に劣り、一方R2層がこれより薄いと密着性に劣る。さらに、R2層の変性ポリオレフィン樹脂層の最適な膜厚は1〜10μmであり、さらに1〜5μmが好適である。1μm未満では密着性が不十分であり、一方、10μm以上の厚さになると、R1層のオレフィン分散ポリエステル樹脂における高度の耐衝撃性、加工性の発現が失われる。同様にR1層の変性オレフィン分散ポリエステル樹脂層の最適な膜厚は10〜50μmであり、さらに15〜25μmが好適である。10μm未満では耐衝撃性、加工性の発現が不十分であり、一方50μmを超えてもそれらの性能は高まらずコスト的に不利だからである。
さらに、R2層の変性ポリオレフィン樹脂の最適組成も、R1層の混合樹脂中の変性ポリオレフィンと同じ、カルボン酸から誘導される官能基をカルボン酸換算の重量比率で2〜20重量%、より好ましくは3〜12重量%含有するものであることが好ましい。これは、厳しい加工や衝撃後の密着性については、下地金属と樹脂の密着とともに、R1層の混合樹脂とR2層の変性ポリオレフィン樹脂の密着も重要であり、その2層の密着が基本的に変性ポリオレフィン樹脂同士の相互作用によるものであるため、近い樹脂組成である方が有利だからである。ここで、カルボン酸換算の重量比率とは、変性ポリオレフィン樹脂に含まれるカルボン酸から誘導される官能基を全て加水分解、または酸による中和によってカルボン酸に変え、もとの変性ポリオレフィン樹脂中のカルボン酸基(−COOH)量を重量比率で示したものである。
(2)混合樹脂層(R1層)の上に、ポリエチレンテレフタレート及び/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層(本明細書ではR0層とも記載する。)を積層させた構造を有するフィルムとし、金属板にラミネートされたときにR0層が最外層になるように設計する。
ポリエチレンテレフタレート及び/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂骨格中のエチレングリコールとテレフタル酸のみを構成単位とする部分及び/またはエチレングリコールとテレフタル酸とイソフタル酸を構成単位とする部分の合計が90重量%以上を占めているもので、その他の部位で、酸成分が、各種の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を任意に共重合しても良い。
R1層は柔軟なため、共重合したポリエステル樹脂では、耐熱性、フレーバー性に劣る場合がある。変性ポリオレフィン樹脂が分散された混合樹脂からなる樹脂層(R1層)を下層とし、オレフィンを含まないポリエステル樹脂(R0層)を上層とする2層構造とし、R0層を内容物と接する層にすることにより、フィルムのフレーバー性が飛躍的に高まる。これによって、フレーバー性を前記した厳しい要求に対応できるレベルまで高めることができる。ポリエステル樹脂中に含まれるわずかなオレフィン部分は、ポリエステル部分に比べ香料成分であるd−リモネン等のテルペン炭化水素の収着が大きいため、オレフィンを含まないポリエステル樹脂に比べれば全体として香料の収着が大きく、そのため香料を含む内容物がフィルムに触れた場合、香料成分が内容物よりフィルムに移行する量が大きくなる。このような現象を抑えるために、オレフィン成分を含むポリエステル樹脂上にオレフィン成分を含まないポリエステル樹脂層を設けることが有効である。また、加工性、耐衝撃性等の機械的性質も改善できる。
上層(R0層)の最適な膜厚は1〜10μmであり、さらに3〜5μmが好適である。1μm未満では香料成分の収着を抑制する効果がほとんど期待できず、一方、10μm以上の厚さになると、下層のオレフィン分散ポリエステル樹脂における高度の耐衝撃性、加工性の発現が失われる。下層(R1層)の最適な膜厚は10〜50μmであり、さらに15〜25μmが好適である。10μm未満では耐衝撃性、加工性の発現が不十分であり、一方50μmを超えてもそれらの性能は高まらずコスト的に不利だからである。
R1層とR0層を合わせたフィルムの合計膜厚は10〜50μmの範囲であることがより好ましい。上限値は経済的な観点、下限値は、耐衝撃性、加工性の観点からである。すなわち、膜厚が10μm以上になると耐衝撃性、加工性がより優れるが、合計膜厚が50μmを超えると樹脂フィルムのコストが上昇し、また耐衝撃性、加工性の向上効果が飽和するためである。
さらに、下層(R1層)と上層(R0層)の厚み比R1/R0が、R1/R0=2/1〜10/1であることが加工性、耐衝撃性等の機械的性質とフレーバー性を最大にする組成で、5/1〜10/1がさらに好適である。R0層がこれより厚いと機械的性質が非常に劣り、一方R0層がこれより薄いと製造時にR0層とR1層がライン方向及び幅方向に均一な膜厚比にならず性能にバラツキが生じ性能に劣る。
R0層のポリエステル樹脂は、ジエチレングリコール含有量が1.5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.9重量%以下である。ポリエステル中のジエチレングリコール含有量が多い場合には、成型加工時での乾燥、印刷焼付け等の加熱処理によってポリマの劣化が進行し、クラック、ピンホールの発生が起こり耐衝撃性、フレーバー性に劣る場合がある。
R0層のポリエステル樹脂の固有粘度は、0.3〜2.0dl/g、より好ましくは0.3〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.5〜1.0dl/gである。0.3dl/g未満の場合は、変性ポリオレフィン樹脂との混合が著しく困難となり、変性ポリオレフィン樹脂が均一に分散しない結果、ポリエステル樹脂の機械強度や耐衝撃性が低くなる可能性があり、一方、固有粘度が2.0dl/gを越える場合には粘度が低いため成形性が不良となり、均一なフィルムを製造することが困難となる可能性がある。また、上記固有粘度は、JIS K7367−5に示される方法で測定され、25℃のo−クロロフェノール中で0.005g/mlの濃度で測定したもので、固有粘度=(T−T0)/(T0*c)という式によって求められる。式中、cは溶液100ml当たりの樹脂濃度をグラム数で表わした濃度を、T0、およびTは、溶媒、および樹脂溶液の毛細管形粘度計内の流下時間をそれぞれ表す。
R0層のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であることが望ましい。ガラス転移温度が30℃未満の場合は、ポリエステル樹脂の耐熱性が劣るため成形時の温度上昇で傷等が入りやすくなり、一方、ガラス転移温度が100℃を超える場合には逆に加工性に劣る。また、低温結晶化温度(Tc)については、通常70〜210℃、好ましくは80〜200℃であり、融点(Tm)は、通常210〜265℃、好ましくは220〜260℃であることが望ましい。低温結晶化温度が70℃未満では結晶化が起こりやすいためレトルト処理時等に結晶化が起こりフィルムにクラックが入ったり剥離が生じやすくなり、一方210℃を超えるものはポリエステルの機械的強度に劣る。融点が210℃未満では成型加工時の熱で樹脂が劣化し、クラックやピンホールの発生が起こりやすくなり、一方265℃を超えるものは成型加工時の乾燥、印刷焼付等の加熱処理によって結晶化が進行し、やはりクラックやピンホールの発生が起こりやすくなる。また、上記ガラス転移温度、低温結晶化温度、結晶融解温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温時の吸熱ピーク温度を測定したもので、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
混合樹脂層(R1層)と、ポリエチレンテレフタレート及び/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層(R0層)を積層させたフィルムは、通常の複層樹脂の押出し法により得ることができる。すなわち、二つの押出し機を用いて、異なる押出し機に、R1層の原料樹脂として、請求項1〜5のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂と、R0層の原料樹脂として、ポリエチレンテレフタレート及び/またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂をそれぞれ挿入し、それぞれの融点以上に溶融しフィードブロック法やマルチマニュホールド法により一つのTダイから積層させた状態で押出し、冷却ロール等で冷却して複層フィルムとしてフィルム化した後に金属板上にラミネートするか、直接金属板上に溶融樹脂を押出した後に冷却ロールで挟み込んでラミネートする直接ラミネート法により複層の樹脂層が製造可能である。Tダイの方式としては、複数の樹脂の溶融温度を詳細に制御できるマルチマニュホールド法で製造するのが特に好ましい。
また、本発明の効果を妨げない限り、R0層のポリエステル樹脂に光安定剤、耐衝撃改良剤、相溶化剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、反応触媒、着色防止剤、ラジカル禁止剤、可塑剤、帯電防止剤、末端封鎖剤、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、抗黴剤等の添加剤を添加しても良い。これらの添加剤の含有量としては、R0層のポリエステル樹脂100重量部に対して、本発明では0.005重量部以上15重量部以下が好ましい。さらに望ましくは0.01重量部以上2重量部以下、特に望ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下である。0.005重量部未満では効果が不十分で、一方15重量部を超えると添加剤が過剰となりポリエステル樹脂相に含まれる成分が機械的性能を低下させる。
滑り性、成形加工性、耐衝撃性の向上に効果がある無機粒子としては乾式法および湿式法シリカ、多孔質シリカ、コロイド状シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、スピネル、酸化鉄、リン酸カルシウム等、また有機粒子あるいは有機高分子粒子としてはポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、スチレン−アクリル系架橋粒子、アクリル系架橋粒子、スチレン−メタクリル系架橋粒子、メタクリル系架橋粒子などのビニル系粒子、シリコーン、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルエステル、フェノール樹脂等を構成成分とする粒子を挙げることができる。これら粒子の粒子径、含有量は特に限定されるものではないが、性能を最大限に発揮するためには粒子径は0.01〜5μmの範囲が好ましく、さらには0.1〜2.5μmの範囲が好ましい。また、それらの粒径分布は鋭く、標準偏差0.5以下が好ましい。さらに、粒子の形状は真球に近いものが望ましく、好ましくは長径/短径の比が1.0〜1.2である。
反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等を挙げることができる。
ラジカル禁止剤としては、フェノール系ラジカル禁止剤、リン系ラジカル禁止剤、スルフィド系ラジカル禁止剤、及び窒素系ラジカル禁止剤から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
可塑剤としては、炭素数2〜20の脂肪酸多塩基酸又はそのエステル誘導体に対する炭素数8〜20の芳香族多塩基酸又はそのエステル誘導体のモル比が0〜2.0である多塩基酸成分と、炭素数2〜20の脂肪族アルコールとを縮重合したものを、炭素数2〜20の一塩基酸又はそのエステル誘導体及び/又は炭素数1〜18の一価アルコールで末端エステル化したポリエステルからなる可塑剤を挙げることができる。
帯電防止剤としては、成膜工程におけるフィルムのロールへの巻き付きや、フィルム表面への汚れ付着等の静電気障害を防止することを目的として、特許文献12に開示される帯電防止剤等の樹脂組成物中に練り込む方法や、フィルム表面に特許文献13に記載されている帯電防止剤を塗布する方法などを必要に応じて適用することができる。
抗菌剤としては、特許文献14、特許文献15等に開示されている従来公知の抗菌剤を必要に応じて使用することができる。
R0層のポリエステル樹脂は、重合触媒として、ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも一種以上の元素を1〜500ppm含有することが好ましい。より好ましくは3〜300ppmである。ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも一種以上の元素量が1ppmに満たないとフレーバー性向上の効果が十分でない場合があり、500ppmを越えるとポリエステルに異物が発生し結晶核剤となり結晶化しやすくなるため、耐衝撃性が悪化したり、耐熱性が低下したりする場合がある。これらの元素の中ではフレーバー性の点からゲルマニウム元素が特に好ましい。
本発明の樹脂に、ゲルマニウム、アンチモン、チタンから選ばれる少なくとも一種以上の元素を含有させるために使用する化合物は、ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム酸化物、水酸化物、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレート、ゲルマニウムβ−ナフトレート等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。
アンチモン化合物としては、三酸化二アンチモン、三弗化アンチモン、酢酸アンチモン、硼酸アンチモン、ギ酸アンチモン、亜アンチモン酸等を挙げることができる。
チタン化合物としては、二酸化チタン等の酸化物、水酸化チタニウム等の水酸化物、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート等のアルコキシド化合物、テトラヒドロキシエチルチタネート等のグリコキシド化合物、フェノキシド化合物、酢酸塩等の化合物を挙げることができる。
上記の元素をポリエステルに含有させる方法は従来公知の任意の方法を採用することができ特に限定されるものではなく、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、反応触媒として添加することが好ましい。このような方法として、ゲルマニウムの場合を例に挙げると、ゲルマニウム化合物の粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特許文献16に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコール成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。
本発明のR0層のポリエステル樹脂はフレーバー性の点から樹脂中のアセトアルデヒド含有量を10ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは7ppm以下である。アセトアルデヒド含有量がかかる範囲、特に10ppmを越えるとフレーバー性に劣る場合がある。アセトアルデヒド含有量を10ppm以下とする方法は特に限定されるものではない。例えばポリエステル樹脂を重縮合反応等で製造する際の熱分解によって生じるアセトアルデヒドを除去するため、樹脂を減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する方法等によって得られたポリエステル樹脂をフィルムに成形する方法等を挙げることができ、好ましくは樹脂を減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において150℃以上、融点以下の温度での固相重合したポリエステル樹脂を用いる方法がよい。
また、本発明のポリエステル樹脂はフレーバー性の点から樹脂中の環状三量体等からなるオリゴマはより少ない方が好ましい。特に環状三量体の含有量を0.9重量%以下とすることが好ましく、特には0.7重量%以下とすることが好ましい。樹脂中のオリゴマ含有量がかかる範囲、特に0.9重量%を越えるとフレーバー性に劣る場合がある。オリゴマ含有量を0.9重量%以下とする方法は特に限定されるものではないが、上述のアセトアルデヒド含有量を減少させる方法と同様の方法等を採用することで達成できる。
R0層に酸化防止剤を添加する場合、R1層への影響を最小限にするため、R1層と同程度の添加量とすることが好ましい。
(3)混合樹脂からなる樹脂層(R1層)の一方の面上に、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層(R0層)が積層され、前記R1層のもう一方の面上に、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層(R2層)が積層された、R0層/R1層/R2層の3層構造を有するフィルムであり、かつ金属板にラミネートされた時に前記R0層が最外層になるよう設計する。
本フィルムは、(2)で記載したR1層/R2層からなる2層構造の樹脂フィルムの、R1層上に、前記(1)で記載したR0層が積層されされたものである。この3層構造のフィルムは、下地金属との密着性に優れ、またフレーバー性にも優れる。R1層、R0層、R2層の構成および作用効果は、前記(1)および(2)で記載されているものと同様である。さらに、このような3層構造では密着性が高まるとともに、応力の緩和効果が高まることで加工において非常に欠陥が生じにくくなり、加工性が飛躍的に高まる。
前記R0層/R1層/R2層の3層構造を有するフィルムは、通常の複層樹脂の押出し法により得ることができる。すなわち、三つの押出し機を用いて、R1層の原料として請求項1〜5のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し溶融させ、同時に、前記R0層の原料樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂を、また前記R2層の原料樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂を、各々前記押出し機とは別の押出し機に挿入し、それぞれの融点以上に溶融しフィードブロック法やマルチマニュホールド法により一つのTダイから積層させた状態で押出し、冷却ロール等で冷却して複層フィルムとしてフィルム化した後に金属板上にラミネートするか、直接金属板上に溶融樹脂を押出した後に冷却ロールで挟み込んでラミネートする直接ラミネート法により複層の樹脂層が製造可能である。Tダイの方式としては、複数の樹脂の溶融温度を詳細に制御できるマルチマニュホールド法で製造するのが特に好ましい。
さらに、いずれの場合も、混合樹脂層(R1層)、またはポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂層(R0層)の上に他のポリエステル樹脂層を積層した層構成にすることもできる。その場合は、別の押出し機に第三層の原料となるポリエステル樹脂を挿入し、溶融して他の樹脂と同時にTダイに流し入れ一つの口から押出すことにより作製できる。カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる樹脂層(R2層)がある場合、該R2層が下地金属側になるように設計される必要がある。
前記(1)〜(3)に記載した樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルム中に顔料を5〜40重量%含有することを規定する。変性ポリオレフィン樹脂を分散させたポリエステル樹脂中では顔料の分散性が向上し、より少量の顔料の添加で目的の色調が得られるので、顔料はR1層中に添加することが好ましい。樹脂フィルム中の顔料の添加量が5重量%未満では所望の色調を得ることができず、40重量%を超えると加工性が低下する。顔料の種類は特に限定されるものではないが、本発明の効果を妨げない限り、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、エアロジル、二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、マグネタイト、コバルトブルー、ベンガラ等を適宜使用し、金属ラミネート板あるいは、金属缶を好ましい色調に仕上げることが可能となる。
本発明において、金属板は特に限定されないが、成形性の点で鉄及びアルミニウムを素材とする金属板が好ましい。鉄を素材とする金属板の場合、その表面に樹脂密着性や耐食性を改善するため、無機酸化物皮膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。また、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどのメッキ層を設けてもよい。また、スズメッキの場合は、0.5〜15g/m2、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2のメッキ量を有するものが加工性および樹脂密着性の点から特に好ましい。このような金属板は、厚さが、通常0.01〜5mm、好ましくは0.1〜2mmである。そして、金属板片面上または両面上に、前記発明にある樹脂組成物層を被覆した樹脂ラミネート層が形成される。
鉄を素材とする金属板の場合、請求項20に規定する電解クロメート処理鋼板が、本発明の樹脂フィルムとの密着性、耐食性、製造コストの観点から特に好ましい。本発明の樹脂は、加工や加熱後の密着性に優れるため、金属クロムおよびクロム酸化物の最適範囲が現行の樹脂の場合よりも広がる。しかし、より高い性能を求める場合には本発明の範囲が最適ということが見出された。金属クロム層の金属クロム量の下限を50mg/m2と規定したのは、50mg/m2未満では耐食性、加工後密着性が不十分な場合があり、上限を200mg/m2に規定したのは、200mg/m2を超えると耐食性、加工後密着性の向上効果が飽和し、逆に製造コスト上昇するからである。クロム酸化物中のクロム量の金属クロム換算量の下限を3mg/m2と規定したのは、3mg/m2未満になると密着性が劣る場合があり、上限を30mg/m2に規定したのは30mg/m2を超えると色調が悪化する他、密着性も劣るからである。
本発明において、樹脂フィルムのフィルム面と平行な方向の面配向係数を0.010未満と規定したのは、この範囲のものは特に加工性が優れるためである。面配向係数の上昇に伴い加工度は劣ってくる。これは、先述したように配向結晶が塑性変形を妨げる為であるが、本発明の面配向係数の範囲であれば、実質的に加工性に悪影響を与えないレベルである。また、本発明の面配向係数の領域でも、従来技術に比較して、充分優れる耐衝撃性を有するが、要求される加工性と耐衝撃性を考慮して、意図的に面配向係数を0.010以上に上げ、さらに優れた耐衝撃性を得ることも可能である。以上のようなフィルムの配向は、延伸されたフィルムを金属板にラミネートすることにより得られる。すなわち、フィルム製造時に、公知の方法で1軸または2軸方向に延伸を行い延伸配向を付与したフィルムを、ラミネート時に配向を残存させるように制御させて熱ラミネートすることにより得られる。また、フィルムの延伸については、機械的性能の点から、特に2軸延伸がより優れる。
ラミネート金属板を製造する方法については公知の方法が使用できるが、特にR1層の混合樹脂中のポリエステル樹脂の融点−70℃〜融点+30℃の範囲に加熱した金属板に、樹脂フィルムを回転するロールを用いて押し付けてラミネートする方法が好ましい。ポリエステル樹脂の融点−70℃未満では、金属板との密着力が十分でなく、ポリエステル樹脂の融点+30℃を超えるとフィルム層がラミネートロールに融着してしまうためである。本発明の樹脂は、加工や加熱後の密着性に優れるため、フィルムラミネートにおける製造条件の最適範囲が現行の樹脂の場合よりも大きく広がり、製造管理、品質管理の点で省力化、安定化が可能となり有利である。
ラミネートするフィルムについては、延伸配向したフィルム、無延伸のフィルム、いずれも使用可能である。特に、延伸フィルムを使用する場合は、前述したようにその配向度を熱ラミネート時の温度制御により目標の値とする制御が必要である。
ラミネート金属板を製造する場合、以下に記載するようにして、直接金属板上に溶融樹脂を押出し、しかる後に冷却ロールで挟み込んでラミネートする直接ラミネート法が好ましい。
金属板に混合樹脂からなる樹脂フィルムをラミネートする場合、原料となる樹脂として、請求項1〜5のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し、前記原料となる樹脂を、該樹脂中のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し溶融させた後、金属板の表面にTダイから直接押出してラミネートする。
金属板にR1層とR0層を積層した樹脂フィルムをラミネートする場合、R1層の原料となる樹脂として、請求項1〜5のいずれかの項に記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し、同時にR0層の原料となる樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂からなる樹脂を別の押出し機に挿入し、それらを、前記R1層のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し、溶融させた後、金属板の表面に、TダイからR1層とR0層を積層させた状態でR1層が金属板側になるようにして直接2層押出しラミネートする。
金属板にR1層とR2層を積層した樹脂フィルムをラミネートする場合、R1層の原料樹脂として、請求項1〜5のいずれかに記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し、同時にR2層の原料樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂を別の押出し機に挿入し、それらを、前記R1層のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し、溶融させた後、金属板の表面に、TダイからR1層とR2層を積層させた状態で、且つR2層が金属板側になるようにして直接2層押出しラミネートする。
金属板にR0層/R1層/R2層の3層構造の樹脂フィルムをラミネートする場合、R1層の原料樹脂として、請求項1〜5のいずれかの項に記載された熱可塑性ポリエステル樹脂中に、粒子径が0.1〜5μmの粒状の変性ポリオレフィン樹脂をあらかじめ分散させた混合樹脂を押出し機に挿入し溶融させ、同時に、R0層の原料樹脂として、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを基本骨格としたポリエステル樹脂からなる樹脂を、またR2層の原料樹脂として、カルボン酸から誘導される官能基を有する変性ポリオレフィン樹脂を、各々前記押出し機とは別の押出し機に挿入し、それらを、前記R1層のポリエステル樹脂の融点+10℃〜融点+50℃の範囲に加熱し、溶融させた後、金属板の表面に、TダイからR0層とR1層とR2層を積層させた状態で、且つR2層が金属板側、R1層が中間層、R0層が最外層になるようにして直接3層押出しラミネートする。
樹脂を溶融する温度がポリエステル樹脂の融点+10℃未満では、樹脂の粘度が著しく劣るため、品質安定性、生産性に劣るためであり、ポリエステル樹脂の融点+50℃を超えると、ラミネートロールへの密着、気泡の混入、樹脂の劣化などが問題となるためである。ポリエステル樹脂の融点+40℃以下がより好ましい。また、金属板の温度は、R1層の混合樹脂中のポリエステル樹脂の融点−70℃〜融点+30℃の範囲であることが好ましい。
本発明の樹脂は、押出しラミネートにおける製造条件においても、厳しい管理を必要としないため、製造管理、品質管理の点で省力化、安定化が可能となり有利である。また、このような粒径が揃い、分散性の高い混合樹脂を押出し機に挿入で溶融してフィルム成形することで、フィルム成形しながら変性ポリオレフィン樹脂を分散させるよりも、はるかに粒状樹脂の粒径分布が狭まり、その結果各種性能において優れた性能を発揮できるフィルムが得られる。
本発明において、樹脂フィルムが押出しラミネート法により被覆されたものに限定される理由は、ラミネート時の気泡巻き込みを防止する観点で、押出しラミネート法が通常のフィルムラミネート法に比べ優れるからである。一般的なフィルムラミネート方式では、特にラミネート速度が上昇するにしたがって、気泡が巻き込まれやすくなる。巻き込まれた気泡は、単に下地金属板との密着力低下を引き起こすだけでなく、耐衝撃性にも悪影響を与える。本発明者らは、衝撃に対して、気泡の際部に応力集中が起こるため、この部分が脆くフィルム破壊の起点となっていることを突き止めている。さらに、樹脂をフィルム成形してラミネートする工程と、樹脂を直接押出してラミネートする工程との差より生じる製造コストの差も押出しラミネート法の利点である。
本発明の樹脂が、従来のポリエステル樹脂では不可能であった押出しラミネート法による製造が可能であるのは、本発明の樹脂が実質無配向状態でも十分な性能が得られるためで、従来のポリエステル樹脂が配向量の厳重な管理を必要とするためそのような管理ができない直接押出しによる製造が不可能であったのに比べ、製造面における利点も大きい。
本発明の樹脂ラミネート金属板は、本発明の樹脂フィルムが被覆されていれば良く、必要に応じて公知の樹脂フィルムを本発明の樹脂フィルムの下層及び/又は上層に積層して金属板に被覆しても良い。
本発明においては、本発明の効果を妨げない限り、プライマー層を金属板との密着層として設けても良い。本発明のラミネート金属板は、樹脂層と金属板の一次密着性、加工後密着性とも優れたものであるが、より厳しい腐食環境、あるいはより優れた密着性が要求される環境下では、プライマー層を設けて、要求に応じた特性を付与できる。例えば、金属缶として使用する場合、より腐食性の強い内容物を充填すると、樹脂層を通して、内容物が金属板との界面に侵入し、金属板を腐食させ、フィルムとの密着性が劣化する可能性がある。このような場合、適切なプライマー層を設けることにより樹脂層の剥離を防ぐことが可能となる。R2層が無い場合、密着層としてプライマー層を設けることが有効である。
プライマーの種類は特に限定されるものではないが、公知のプライマー層を用いることも可能である。例えば、特許文献17に開示されるポリエステル樹脂系の水系分散剤、特許文献18に開示されるエポキシ系プライマー、特許文献19に開示される各種官能基を有する重合体等が挙げられる。また、プライマー層の形成方法は特に限定されるものではないが、金属板にプライマー塗料を塗布−乾燥、あるいは、本発明のフィルムにプライマー塗料を塗布−乾燥してもよく、あるいは金属板にプライマーフィルムをラミネートしても良いし、さらには、本発明のフィルムとプライマー層を貼り合わせたフィルムをラミネートしても良い。
本発明の金属板ラミネート用樹脂フィルムは、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆用途に好適に使用することができる。また、本発明の前記フィルムは、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底の被覆用としても良好な金属密着性、成形性を有するため、この用途にも好ましく使用することができる。また、前記フィルムを被覆したラミネート金属板は、加工性、耐衝撃性、密着性に優れるので、材料の板厚減少が進み、特に過酷な成形を強いられる薄肉深絞り缶用途へ使用する材料として好適である。
また、前記フィルムを被覆したラミネート金属板は、レトルト処理時のフィルムの白濁を防止できるので、フィルムの白濁防止の要求の強い缶蓋や缶底部に使用される缶部材、例えばツーピース缶の蓋部材、あるいはスリーピース缶の蓋部材、缶胴部材に好適に使用できる。
<実施例1>
ラミネート金属板の面配向係数については、アッベ屈折計を用い、光源はナトリウム/D線、中間液はヨウ化メチレン、温度は25℃の条件で屈折率を測定して、フィルム面の金属板長手方向の屈折率Nx、フィルム面の金属板幅方向の屈折率Ny、フィルムの厚み方向の屈折率Nzを求め、下式から面配向係数Nsを算出した。
面配向係数(Ns)=(Nx+Ny)/2−Nz
<実施例2>
樹脂原料として、カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を表1〜4に示す配合比でポリエステル樹脂とタンブラーブレンダーを使用してコールドブレンドした後、2軸押出し機を用いて270℃で溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂が分散したポリエステル樹脂原料ペレットを得た。その原料樹脂ペレットを1軸押出し機に挿入し、押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、マルチマニホールド型Tダイから押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら合計10〜50μmの厚みの樹脂フィルムを連続製造した。
一方、2層構造のフィルムの場合はR1層用樹脂原料として、カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を表1〜4に示す配合比でポリエステル樹脂とタンブラーブレンダーを使用してコールドブレンドした後、2軸押出し機を用いて270℃で溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂が分散したポリエステル樹脂原料ペレットを得た。その原料樹脂ペレットを1軸押出し機に挿入し、一方、R0層樹脂原料となる、変性ポリオレフィン樹脂を含有しないポリエステル樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R1層、R0層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し2層にして押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら樹脂フィルムを連続製造した。
使用したポリエステル樹脂およびカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂は以下の通りである。
1.ポリエステル樹脂
(1)PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂、固有粘度0.62dl/g
(2)PET/I(10):テレフタル酸とイソフタル酸比率が90:10のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート共重合樹脂、固有粘度0.62dl/g
(3)PET/PBT(60):ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの比率が40:60の混合樹脂、固有粘度0.6dl/g
(4)PET/AD(20):テレフタル酸とアジピン酸比率が80:20のアジピン酸共重合ポリエチレンテレフタレート共重合樹脂、固有粘度0.6dl/g
2.カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂
(1)EM1:ポリメタクリル酸メチル−(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA5200)、カルボン酸誘導官能基の重量比率21重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(2)EM2:ポリメタクリル酸メチル−(エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA8200)、カルボン酸誘導官能基の重量比率18重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(3)EM3:エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(住友化学工業(株)社製ボンダインHX8290)、カルボン酸誘導官能基の重量比率11重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(4)EM4:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN1560)、カルボン酸誘導官能基の重量比率8重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(5)EM5:エチレン−メタクリル酸共重合体の50%Zn中和物(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN1560をZnで一部中和したもの)、カルボン酸誘導官能基の重量比率7重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(6)EM6:エチレン−メタクリル酸共重合体の60%Zn中和物(三井デュポンポリケミカル(株)社製ハイミラン1557)、カルボン酸誘導官能基の重量比率5重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(7)EM7:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN0200H)、カルボン酸誘導官能基の重量比率1重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(8)EM8:ポリスチレン−(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA5100)、カルボン酸誘導官能基の重量比率6重量%、ガラス転移温度:20℃
(9)EPR:エチレン−プロピレンゴム(JSR(株)社製EP07P)、カルボン酸誘導官能基の重量比率0重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
さらに、樹脂原料として、市販のあらかじめカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した状態でペレット化された樹脂(三井デュポンポリケミカル(株)社製シーラーPT4274)を表3の参考例32、36に示す配合比でそのまま1軸押出し機に挿入し、押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、マルチマニホールド型Tダイから押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら単層および2層の樹脂フィルムを連続製造した。
このようにして得られた樹脂フィルムを、誘導加熱方式で加熱したティン・フリー・スチール(以下TFSと略す。厚さは、薄肉化深絞り缶用としては0.18mm、DI缶用としては0.23mm、テンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算))の両面に熱圧着した後、水中急冷する熱接着法でラミネート金属板を得た。なお、ラミネート時の金属板温度(ラミネート温度)を表5および6に示す。
樹脂フィルムのR1層中に分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子径、表中の各種温度、ラミネート金属板の面配向係数を実施例1と同様の方法で測定した。
前記で得たラミネート金属板を、薄肉化深絞り缶またはDI缶に製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製し、製缶した缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性(室温、低温)、加工後の密着性、加熱後の密着性、フレーバー性を調査した。
調査方法の詳細を以下に記載する。
1.薄肉化深絞り成形による評価
1−1.製缶加工
ラミネート金属板を、以下の条件で第一段絞り、再絞りを行い薄肉化深絞り缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径…150〜160mm
1段絞り …絞り比1.65
・再絞り
第1次再絞り…絞り比:1.25
第2次再絞り…絞り比:1.25
再絞り工程のダイスコーナー部の曲率半径:0.4mm
再絞り時のしわ押さえ加重…39227N(4000kg)
・缶胴部の平均薄肉化率
成形前のラミネート金属板の厚さに対し40〜55%
1−2.歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点−15℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
(1)加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評点をつけた。合格は○以上の評価のものである。
限界加工度(薄肉化率) : 評点
薄肉化率40%の成形不可 : ×× (劣)
薄肉化率40%まで成形可 : × ↑
薄肉化率45%まで成形可 : △
薄肉化率50%まで成形可 : ○ ↓
薄肉化率55%まで成形可 : ◎ (優)
(2)室温および低温耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率50%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底に、30cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに5分後の電流値を読み取り、以下のように評価した。同じ試験を、室温20℃の時と0℃の時に行い、前者を室温耐衝撃性、後者を低温耐衝撃性とした。合格は○以上の評価のものである。
(室温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が30mA以上 :×× (劣)
電流値が10mA以上〜30mA未満 :× ↑
電流値が5mA以上〜10mA未満 :△
電流値が1mA以上〜5mA未満 :○ ↓
電流値が1mA未満 :◎ (優)
(低温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が50mA以上 :× (劣)
電流値が30mA以上〜50mA未満 :△ ↑
電流値が10mA以上〜30mA未満 :○
電流値が5mA以上〜10mA未満 :◎
電流値が1mA以上〜5mA未満 :◎◎ ↓
電流値が1mA未満 :◎◎◎ (優)
(3)加工後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、クエン酸1.5重量%−食塩1.5重量%の水溶液に24時間浸漬した後の、缶先端部の樹脂のはがれ長さを観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10mmを超えるはがれ :×× (劣)
5mmを超えて10mm以下のはがれ :× ↑
2mmを超えて5mm以下のはがれ :△
2mm以下のはがれ :○ ↓
はがれ無し :◎ (優)
(4)加熱後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、オーブンにて210℃で10分空焼きした後の、缶先端部の樹脂のはがれ程度を観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10%を超えるはがれ :×× (劣)
5%を超えて10%以下のはがれ :× ↑
2%を超えて5%以下のはがれ :△
0.5%を超えて2%以下のはがれ:○
0.5%以下のはがれ :◎ ↓
はがれ無し :◎◎ (優)
(5)フレーバー性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄した後、香料水溶液(d−リモネン20ppm水溶液)を入れ、密封後常温で20日間放置し、その後開封してエーテル浸漬で追い出される部分を、ガスクロマトグラフィーにより1缶当りのd−リモネンの吸着量として定量して、味特性を評価した。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
吸着量200μg/缶を超えるもの :× (劣)
吸着量100μg/缶を超えて200μg/缶以下 :△ ↑
吸着量30μg/缶を超えて100μg/缶以下 :○
吸着量10μg/缶を超えて30μg/缶以下 :◎ ↓
吸着量10μg/缶以下 :◎◎ (優)
2.絞りしごき成形(DI成形)による評価
2−1.製缶加工
ラミネート金属板を、以下の条件で絞り、しごき成形を行いDI缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径:150mm
絞り比:1.6
・第二段絞り
絞り比:1.25
・しごき
しごきポンチ径:3段アイアニング65.8mmφ
・缶胴部の総しごき率
成形前のラミネート金属板の厚さに対し55〜70%
2−2.歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点−15℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
(1)加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評点をつけた。合格は○以上の評価のものである。
限界加工度(総しごき率) : 評点
総しごき率55%の成形不可 : ×× (劣)
総しごき率55%まで成形可 : × ↑
総しごき率60%まで成形可 : △
総しごき率65%まで成形可 : ○ ↓
総しごき率70%まで成形可 : ◎ (優)
(2)室温および低温耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(総しごき率65%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底に、25cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに5分後の電流値を読み取り、以下のように評価した。同じ試験を、室温20℃の時と0℃の時に行い、前者を室温耐衝撃性、後者を低温耐衝撃性とした。合格は○以上の評価のものである。
(室温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が30mA以上 :×× (劣)
電流値が10mA以上〜30mA未満 :× ↑
電流値が5mA以上〜10mA未満 :△
電流値が1mA以上〜5mA未満 :○ ↓
電流値が1mA未満 :◎ (優)
(低温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が50mA以上 :× (劣)
電流値が30mA以上〜50mA未満 :△ ↑
電流値が10mA以上〜30mA未満 :○
電流値が5mA以上〜10mA未満 :◎
電流値が1mA以上〜5mA未満 :◎◎ ↓
電流値が1mA未満 :◎◎◎(優)
(3)加工後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、クエン酸1.5重量%−食塩1.5重量%の水溶液に5時間浸漬した後の、缶先端部の樹脂のはがれ長さを観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10mmを超えるはがれ :×× (劣)
5mmを超えて10mm以下のはがれ :× ↑
2mmを超えて5mm以下のはがれ :△
2mm以下のはがれ :○ ↓
はがれ無し :◎ (優)
(4)加熱後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、オーブンにて210℃で10分空焼きした後の、缶先端部の樹脂のはがれ程度を観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10%を超えるはがれ :×× (劣)
5%を超えて10%以下のはがれ :× ↑
2%を超えて5%以下のはがれ :△
0.5%を超えて2%以下のはがれ:○
0.5%以下のはがれ :◎ ↓
はがれ無し :◎◎ (優)
(5)フレーバー性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄した後、香料水溶液(d−リモネン20ppm水溶液)を入れ、密封後常温で20日間放置し、その後開封してエーテル浸漬で追い出される部分を、ガスクロマトグラフィーにより1缶当りのd−リモネンの吸着量として定量して、味特性を評価した。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
吸着量200μg/缶を超えるもの :× (劣)
吸着量100μg/缶を超えて200μg/缶以下 :△ ↑
吸着量30μg/缶を超えて100μg/缶以下 :○
吸着量10μg/缶を超えて30μg/缶以下 :◎ ↓
吸着量10μg/缶以下 :◎◎ (優)
調査結果を表5および6に示す。
表1〜6から、いずれの缶種についても以下のことが判る。
参考例1、3、5および発明例2は、単層で混合樹脂のポリエステル種類を種々変えたポリエステル樹脂に本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を分散させたフィルムであり、これを本発明のラミネート条件でラミネートした参考例37、39、41および発明例38は、非常に良好な成形性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。その中で、アジピン酸を共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた参考例3のフィルムをラミネートした参考例39において、全体的な性能は良好であるがポリエステル樹脂の融点がやや低いこととバリア性がやや低いことから加熱後の密着性とフレーバー性に劣る傾向がある。また、市販の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した樹脂から製造されたフィルムの参考例32、36を本発明のラミネート条件でラミネートした参考例68、72も同様に良好な性能を示す。一方、比較例1〜5は、ポリエステル種類を種々変えたポリエステル樹脂にポリオレフィン樹脂を含まないフィルムの例である。これらのフィルムをラミネートした比較例15〜19は、特に加工性、耐衝撃性のレベルが低い。
参考例4〜8は、種々の本発明のポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂を使用したフィルムであり、これをラミネートした参考例40〜44はどれも良好な成形性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、ガラス転移温度のやや高いポリオレフィン樹脂を用いた参考例8のフィルムをラミネートした参考例44は加工性、耐衝撃性にやや劣る傾向があった。一方、比較例10〜12は、カルボン酸誘導官能基比率が本発明の範囲を外れるポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂であり、これをラミネートした比較例24〜26はどれも加工性と耐衝撃性に劣る。
参考例9〜16は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量、および分散状態を発明の範囲内で種々変化させたフィルムであるが、これを本発明のラミネート条件でラミネートした参考例45〜52は、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。しかしながら、分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない参考例9のフィルムをラミネートした参考例45、および変性ポリオレフィン樹脂の数が非常に多い参考例15のフィルムをラミネートした参考例51では、耐衝撃性にやや劣る傾向がある。
一方、比較例6〜9は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量が本発明を満たさないフィルムであるが、これを本発明のラミネート条件でラミネートした比較例20〜23は、加工性または耐衝撃性において非常に劣る。分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない比較例6のフィルムをラミネートした比較例20では室温の耐衝撃性に非常に劣り、変性ポリオレフィン樹脂の量が多い比較例9のフィルムをラミネートした比較例23では、加工性に非常に劣る。
参考例27〜31は、変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に二酸化チタン顔料を混合したフィルムで、これを本発明のラミネート条件でラミネートした参考例63〜67は、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示し、また白色の均一な色調が得られるが、顔料添加量が望ましい範囲より少ない参考例27のフィルムをラミネートした参考例63ではやや色調の隠蔽性が不足していた。一方、顔料添加量が望ましい範囲より多い参考例31のフィルムをラミネートした参考例67ではやや加工性が低下する。
参考例17〜21は、混合樹脂中の重合触媒と酸化防止剤の配合量を発明の範囲内で種々変化させたフィルムであるが、これを本発明のラミネート条件でラミネートした参考例53〜57は、全て良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、酸化防止剤量が多い参考例53ではやや加工性と耐衝撃性に劣る。一方、混合樹脂中の重合触媒と酸化防止剤の配合量が本発明の範囲内を外れる比較例13、14のフィルムを本発明のラミネート条件でラミネートした比較例27、28は、加工性、耐衝撃性、密着性に劣る。
参考例22、23は、フィルムの各層の膜厚を変化させたもので、これを本発明のラミネート条件でラミネートした参考例58、59は、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。参考例22は、フィルムがやや薄いため、これをラミネートした参考例58は、耐衝撃性がやや劣る。
参考例41および73〜76は、参考例5のフィルムについてラミネート条件を本発明の範囲内で変化させたものであるが、本発明の範囲であればラミネート温度に関わらず良好な成形性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。
参考例24、25は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に滑剤、ラジカル禁止剤、および相溶化剤をそれぞれ混合したフィルムで、これを本発明のラミネート条件でラミネートした参考例60、61は、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。さらに、添加した添加剤の機能に応じた、滑り性、耐ラジカル劣化性、および相溶性を併せ持ち、特に相溶化剤を混合した参考例61では高度の低温耐衝撃性が発現する。
参考例26は、2軸延伸法で製膜した本発明のフィルムであり、これをラミネートした参考例62、77は、いずれも良好な性能を示す。参考例77は、面配向係数が0.015であり、加工性が若干劣る。参考例62は、本発明の範囲の面配向係数を持つものであり、加工性、耐衝撃性とも極めて良好である。
参考例33〜36は、オレフィンを含まないポリエステル樹脂層を上層に設けた2層フィルムであり、これをラミネートした参考例69〜72は、単層に比べさらに低温の耐衝撃性とフレーバー性に優れるが、上層にポリブチレンテレフタレートを含むフィルムを使用した参考例35のフィルムをラミネートした参考例71はフレーバー性にやや劣る。
<実施例3>
樹脂原料として、カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を表7及び8に示す配合比でポリエステル樹脂とタンブラーブレンダーを使用してコールドブレンドした後、2軸押出し機を用いて270℃で溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂が分散したポリエステル樹脂原料ペレットを得た。一部は樹脂原料として、市販のあらかじめカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した状態でペレット化された樹脂(三井デュポンポリケミカル(株)社製シーラーPT4274)をそのまま用いた。表中、ポリエステル樹脂の樹脂種およびポリオレフィン樹脂の樹脂種の符号に対応する樹脂種は、実施例2において記載したものと同じである。
金属板としては、実施例2と同様、薄肉化深絞り缶用として厚さ0.18mm、DI缶用として厚さ0.23mmで、いずれもテンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算)のティン・フリー・スチール(以下TFSと略す)を用い、前記原料樹脂ペレットを1軸押出し機に挿入し、2層の場合はR0層用の樹脂を別の押出し機に挿入して同時に溶融して押出し、前記金属板の片面に直接溶融樹脂を押出し2本のロールで挟んで密着させながら一度冷却した後、反対側の面に同じ方法で樹脂をラミネートした直後水中急冷し、両面ラミネート金属板を得た。なお、ラミネート時の金属板の温度は230℃とした。樹脂フィルムの膜厚は10〜50μmになるように、Tダイのリップ開口幅を調節した。供試樹脂の種類、および押出しラミネート時の樹脂溶融温度を表7〜10に示す。使用したポリエステル樹脂およびカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂は実施例2で使用したものと同じである。
樹脂フィルム中に分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子径、表中の各種温度、ラミネート金属板の面配向係数測定方法は全て実施例2と同様である。前記で得たラミネート金属板を、実施例2と同様にして、薄肉化深絞り缶またはDI缶に製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製した。製缶した缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を実施例2と同様に調査した。
調査結果を表9及び10に示す。
表7〜10から、いずれの缶種についても以下のことが判る。
参考例78、80、81および発明例79は、混合樹脂のポリエステル種類を種々変えたポリエステル樹脂に本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を分散させた樹脂層が単層で形成されており、いずれも良好な成形性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。その中で、アジピン酸を共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた参考例80において、全体的な性能は良好であるがポリエステル樹脂の融点がやや低いこととバリア性がやや低いことから加熱後の密着性とフレーバー性に劣る傾向がある。また、市販の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した樹脂から製造された参考例108、112も同様に良好な性能を示す。一方、比較例29〜32は、ポリエステル種類を種々変えたポリエステル樹脂にポリオレフィン樹脂を含まない樹脂の例である。これらは、特に加工性、耐衝撃性のレベルが低い。
参考例81〜85は、種々の本発明のポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂を使用したものであり、どれも良好な成形性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、ガラス転移温度のやや高いポリオレフィン樹脂を用いた参考例85は加工性、耐衝撃性にやや劣る傾向があった。一方、比較例37〜39は、カルボン酸誘導官能基比率が本発明の範囲を外れるポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂であり、どれも加工性と耐衝撃性に劣る。
参考例86〜93は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量、および分散状態を発明の範囲内で種々変化させた混合樹脂を本発明の押出しラミネート条件でラミネートしたものであるが、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。しかしながら、分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない参考例86、および変性ポリオレフィン樹脂の数が非常に多い参考例92(93)では、耐衝撃性にやや劣る傾向がある。
一方、比較例33〜36は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量が発明を満たさない樹脂層であるが、加工性または耐衝撃性において非常に劣る。分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない比較例33では室温の耐衝撃性に非常に劣り、変性ポリオレフィン樹脂の量が多い比較例36では、加工性に非常に劣る。また、変性ポリオレフィン樹脂の量が多い比較例35、および36では、フレーバーにも問題がある。
参考例103〜107は、変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に二酸化チタン顔料を混合した混合樹脂層で、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示し、また白色の均一な色調が得られるが、顔料添加量が望ましい範囲より少ない参考例103ではやや色調の隠蔽性が不足していた。一方、顔料添加量が望ましい範囲より多い参考例107ではやや加工性が低下する。
参考例94〜98は、混合樹脂中の重合触媒と酸化防止剤の配合量を発明の範囲内で種々変化させた樹脂層で、全て良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、酸化防止剤量が多い参考例94ではやや加工性と耐衝撃性に劣る。一方、混合樹脂中の重合触媒と酸化防止剤の配合量が発明の範囲内を外れる比較例40、41は、加工性、耐衝撃性、密着性に劣る。
参考例99、100は、樹脂層の膜厚を変化させたもので、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。参考例99は、樹脂層の厚みがやや薄いため、耐衝撃性がやや劣る。
参考例101、102は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に滑剤、ラジカル禁止剤、および相溶化剤をそれぞれ混合した樹脂層で、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。さらに、添加した添加剤の機能に応じた、滑り性、耐ラジカル劣化性、および相溶性を併せ持ち、特に相溶化剤を含む参考例102では高度の低温耐衝撃性が発現する。
参考例109〜112は、オレフィンを含まないポリエステル樹脂層を上層に設けた2層樹脂であり、単層に比べさらに低温の耐衝撃性とフレーバー性に優れるが、上層にポリブチレンテレフタレートを含む樹脂を使用した参考例111はフレーバー性にやや劣る。
<実施例4>
R1層用樹脂原料として、1次粒子径を0.3μmとしたカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を表11および12に示す配合比でポリエステル樹脂とタンブラーブレンダーを使用してコールドブレンドした後、2軸押出し機を用いて270℃で溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂が分散したポリエステル樹脂原料ペレットを得た。その原料樹脂ペレットを1軸押出し機に挿入し、一方、R0層樹脂原料となる、変性ポリオレフィン樹脂を含有しないポリエステル樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R1層、R0層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し2層にして押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら合計9.5〜70μmの厚みの樹脂フィルムを連続製造した。
使用したポリエステル樹脂およびカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂は以下の通りである。
1.ポリエステル樹脂
(1)PET/PBT(90):ポリエチレンテレフタレート(カネボウ合繊(株)社製EFG10)とポリブチレンテレフタレート(大日本インキ化学工業社製プラナック)の比率が10:90の混合樹脂、固有粘度0.6dl/g、Tg27℃、Tc60℃、Tm215℃、Ge含有量10ppm
(2)PET/PBT(80):ポリエチレンテレフタレート(カネボウ合繊(株)社製EFG10)とポリブチレンテレフタレート(大日本インキ化学工業社製プラナック)の比率が20:80の混合樹脂、固有粘度0.6dl/g、Tg35℃、Tc75℃、Tm220℃、Ge含有量10ppm
(3)PET/PBT(70):ポリエチレンテレフタレート(カネボウ合繊(株)社製EFG10)とポリブチレンテレフタレート(大日本インキ化学工業社製プラナック)の比率が30:70の混合樹脂、固有粘度0.62dl/g、Tg45℃、Tc90℃、Tm230℃、Ge含有量20ppm
(4)PET/PBT(60):ポリエチレンテレフタレート(カネボウ合繊(株)社製EFG10)とポリブチレンテレフタレート(大日本インキ化学工業社製プラナック)の比率が40:60の混合樹脂、固有粘度0.6dl/g、Tg50℃、Tc105℃、Tm235℃、Ge含有量10ppm
(5)PET/PBT(40):ポリエチレンテレフタレート(カネボウ合繊(株)社製EFG10)とポリブチレンテレフタレート(大日本インキ化学工業社製プラナック)の比率が60:40の混合樹脂、固有粘度0.6dl/g、Tg60℃、Tc120℃、Tm240℃、Ge含有量10ppm
(6)PET/PBT(20):ポリエチレンテレフタレート(カネボウ合繊(株)社製EFG10)とポリブチレンテレフタレート(大日本インキ化学工業社製プラナック)の比率が80:20の混合樹脂、固有粘度0.6dl/g、Tg65℃、Tc140℃、Tm245℃、Ge含有量10ppm
(7)PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(カネボウ合繊(株)社製EFG10)、固有粘度0.62dl/g、Tg72℃、Tc150℃、Tm255℃、Ge含有量20ppm
(8)PET/I(10):テレフタル酸とイソフタル酸比率が90:10のエチレンフタレート−エチレンイソフタレート共重合樹脂(カネボウ合繊(株)社製IP121B)、固有粘度0.6dl/g、Tg70℃、Tc170℃、Tm230℃、Ge含有量10ppm。
2.カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂
(1)EM1:ポリメタクリル酸メチル−(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA5200)、カルボン酸誘導官能基の重量比率21重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(2)EM2:ポリメタクリル酸メチル−(エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA8200)、カルボン酸誘導官能基の重量比率18重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(3)EM3:エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(住友化学工業(株)社製ボンダインHX8290)、カルボン酸誘導官能基の重量比率11重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(4)EM4:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN1560)、カルボン酸誘導官能基の重量比率8重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(5)EM5:エチレン−メタクリル酸共重合体の50%Zn中和物(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN1560をZnで一部中和したもの)、カルボン酸誘導官能基の重量比率7重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(6)EM6:エチレン−メタクリル酸共重合体の60%Zn中和物(三井デュポンポリケミカル(株)社製ハイミラン1557)、カルボン酸誘導官能基の重量比率5重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(7)EM7:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN0200H)、カルボン酸誘導官能基の重量比率1重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(8)EM8:ポリスチレン−(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA5100)、カルボン酸誘導官能基の重量比率6重量%、ガラス転移温度:20℃
(9)EPR:エチレン−プロピレンゴム(JSR(株)社製EP07P)、カルボン酸誘導官能基の重量比率0重量%、ガラス転移温度:−30℃以下。
R1層用樹脂原料として、ペレット化されたカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂を表12の比較例16に示す配合比でそのまま1軸押出し機に挿入し、一方、R0層樹脂原料となる、変性ポリオレフィン樹脂を含有しないポリエステル樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R1層、R0層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し2層にして押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら合計9.5〜70μmの厚みの樹脂フィルムを連続製造した。
このようにして得られた樹脂フィルムを、誘導加熱方式で加熱したティン・フリー・スチール(以下TFSと略す。厚さは、薄肉化深絞り缶用としては0.18mm、DI缶用としては0.23mm、テンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算))の両面に熱圧着した後、水中急冷する熱接着法でラミネート金属板を得た。なお、ラミネート時の金属板温度(ラミネート温度)を表13および14に示す。
樹脂フィルムのR1層中に分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子径、表中の各種温度、ラミネート金属板の面配向係数を実施例1と同様の方法で測定した。
前記で得たラミネート金属板を、薄肉化深絞り缶またはDI缶に製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製した。製缶した缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性(室温、低温)、加工後の密着性、加熱後の密着性、レトルト処理性を調査した。レトルト処理性はレトルト処理後の缶底のフィルムの白濁(耐白濁性)で評価した。なお、蓋は、ラミネート金属板を市販されている250ml陰圧缶(3ピース缶)の缶蓋と同様の加工を施して得た。
調査方法の詳細を以下に記載する。
1.薄肉化深絞り成形による評価
1−1.製缶加工
ラミネート金属板を、以下の条件で第一段絞り、再絞りを行い薄肉化深絞り缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径…150〜160mm
1段絞り …絞り比1.65
・再絞り
第1次再絞り…絞り比:1.25
第2次再絞り…絞り比:1.25
再絞り工程のダイスコーナー部の曲率半径:0.4mm
再絞り時のしわ押さえ加重…39227N(4000kg)
・缶胴部の平均薄肉化率
成形前のラミネート金属板の厚さに対し40〜55%
1−2.歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点−15℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
(1)加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評点をつけた。合格は○以上の評価のものである。
限界加工度(薄肉化率) : 評点
薄肉化率40%の成形不可 : ×× (劣)
薄肉化率40%まで成形可 : × ↑
薄肉化率45%まで成形可 : △
薄肉化率50%まで成形可 : ○ ↓
薄肉化率55%まで成形可 : ◎ (優)
(2)室温および低温耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率50%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底に、30cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに5分後の電流値を読み取り、以下のように評価した。同じ試験を、室温20℃の時と0℃の時に行い、前者を室温耐衝撃性、後者を低温耐衝撃性とした。合格は○以上の評価のものである。
(室温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が30mA以上 :×× (劣)
電流値が10mA以上〜30mA未満 :× ↑
電流値が5mA以上〜10mA未満 :△
電流値が1mA以上〜5mA未満 :○ ↓
電流値が1mA未満 :◎ (優)
(低温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が50mA以上 :× (劣)
電流値が30mA以上〜50mA未満 :△ ↑
電流値が10mA以上〜30mA未満 :○
電流値が5mA以上〜10mA未満 :◎
電流値が1mA以上〜5mA未満 :◎◎ ↓
電流値が1mA未満 :◎◎◎(優)
(3)加工後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、クエン酸1.5重量%−食塩1.5重量%の水溶液に24時間浸漬した後の、缶先端部の樹脂のはがれ長さを観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10mmを超えるはがれ :×× (劣)
5mmを超えて10mm以下のはがれ :× ↑
2mmを超えて5mm以下のはがれ :△
2mm以下のはがれ :○ ↓
はがれ無し :◎ (優)
(4)加熱後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、オーブンにて210℃で10分空焼きした後の、缶先端部の樹脂のはがれ程度を観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10%を超えるはがれ :×× (劣)
5%を超えて10%以下のはがれ :× ↑
2%を超えて5%以下のはがれ :△
0.5%を超えて2%以下のはがれ:○
0.5%以下のはがれ :◎ ↓
はがれ無し :◎◎ (優)
(5)レトルト処理後のフィルムの白濁
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率50%)にネック加工を施し、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、4℃に冷却した後、130℃の雰囲気内で1時間レトルト処理を行った。レトルト処理後に缶底のフィルムが白濁した程度を目視で観察した。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
全体の50%を超える白濁 :× (劣)
白濁が全体の10%を超えて50%以下 :△ ↑
白濁が全体の2%を超えて10%以下 :○
非常にわずかな白濁有り(全体の2%以下) :◎ ↓
変化無し :◎◎ (優)
2.絞りしごき成形(DI成形)による評価
2−1.製缶加工
ラミネート金属板を、以下の条件で絞り、しごき成形を行いDI缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径:150mm
絞り比:1.6
・第二段絞り
絞り比:1.25
・しごき
しごきポンチ径:3段アイアニング65.8mmφ
・缶胴部の総しごき率
成形前のラミネート金属板の厚さに対し55〜70%
1−2.歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点−15℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
(1)加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評点をつけた。合格は○以上の評価のものである。
限界加工度(総しごき率) :評点
総しごき率55%の成形不可 :×× (劣)
総しごき率55%まで成形可 :× ↑
総しごき率60%まで成形可 :△
総しごき率65%まで成形可 :○ ↓
総しごき率70%まで成形可 :◎ (優)
(2)室温および低温耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(総しごき率65%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底に、25cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに5分後の電流値を読み取り、以下のように評価した。同じ試験を、室温20℃の時と0℃の時に行い、前者を室温耐衝撃性、後者を低温耐衝撃性とした。合格は○以上の評価のものである。
(室温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が30mA以上 :××(劣)
電流値が10mA以上〜30mA未満 :× ↑
電流値が5mA以上〜10mA未満 :△
電流値が1mA以上〜5mA未満 :○ ↓
電流値が1mA未満 :◎ (優)
(低温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が50mA以上 :× (劣)
電流値が30mA以上〜50mA未満 :△ ↑
電流値が10mA以上〜30mA未満 :○
電流値が5mA以上〜10mA未満 :◎
電流値が1mA以上〜5mA未満 :◎◎ ↓
電流値が1mA未満 :◎◎◎(優)
(3)加工後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、クエン酸1.5重量%−食塩1.5重量%の水溶液に5時間浸漬した後の、缶先端部の樹脂のはがれ長さを観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10mmを超えるはがれ :××(劣)
5mmを超えて10mm以下のはがれ :× ↑
2mmを超えて5mm以下のはがれ :△
2mm以下のはがれ :○ ↓
はがれ無し :◎ (優)
(4)加熱後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、オーブンにて210℃で10分空焼きした後の、缶先端部の樹脂のはがれ程度を観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格
は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
10%を超えるはがれ :×× (劣)
5%を超えて10%以下のはがれ :× ↑
2%を超えて5%以下のはがれ :△
0.5%を超えて2%以下のはがれ:○
0.5%以下のはがれ :◎ ↓
はがれ無し :◎◎ (優)
(5)レトルト処理後のフィルムの白濁(耐白濁性)
歪取り熱処理を施した缶体(総しごき率65%)にネック加工を施し、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、4℃に冷却した後、130℃の雰囲気内で1時間レトルト処理を行った。レトルト処理後に缶底のフィルムが白濁した程度を目視で観察した。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
全体の50%を超える白濁 :× (劣)
白濁が全体の10%を超えて50%以下 :△ ↑
白濁が全体の2%を超えて10%以下 :○
非常にわずかな白濁有り(全体の2%以下) :◎ ↓
変化無し :◎◎ (優)
調査結果を表13および14に示す。
表11〜14から、いずれの缶種についても以下のことが判る。
発明例1〜6、参考例7は、R1層がポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの混合比を種々変えたポリエステル樹脂に本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を分散させた樹脂層でR0層が本発明で規定するポリエチレンテレフタレートのフィルムであり、これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例38〜44は、非常に良好な成形性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。その中で、ポリブチレンテレフタレート比率の低いポリエステル樹脂を用いた発明例6のフィルムをラミネートした発明例43、さらにホモポリエチレンテレフタレートを用いた参考例7のフィルムをラミネートした参考例44において、ポリブチレンテレフタレート比率が低まるほど加熱後の密着性とレトルト処理後の耐白濁性に劣る傾向にあるが、それでも全体的な性能は良好である。また、R1層のポリエステル樹脂をイソフタル酸で共重合化したポリエチレンテレフタレートを使用した参考例8のフィルムをラミネートした参考例45は加熱後の密着性とレトルト処理後の耐白濁性にやや劣る傾向にあるが、それでも全体的な性能は良好である。一方、ポリブチレンテレフタレート比率の非常に高い発明例1、2のフィルムをラミネートした発明例38、39は、融点がやや低いため加熱後の密着性に劣る傾向にあるが、全体的な性能は良好である。一方、比較例1〜8は、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの混合比を種々変えたポリエステル樹脂にポリオレフィン樹脂を含まないフィルムの例である。これらのフィルムをラミネートした比較例23〜30は、特に耐衝撃性のレベルが低い。
発明例9〜13は、種々のポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂をR1層に使用したフィルムであり、これをラミネートした発明例46〜50はどれも良好な成形性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示すが、カルボン酸誘導官能基比率のやや高いポリオレフィン樹脂を用いた発明例9のフィルムをラミネートした発明例46、およびガラス転移温度のやや高いポリオレフィン樹脂を用いた発明例13のフィルムをラミネートした発明例50は低温の耐衝撃性にやや劣る傾向があった。一方、比較例13〜15は、カルボン酸誘導官能基比率が本発明の範囲を外れるポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂であり、これをラミネートした比較例35〜37はどれも加工性と耐衝撃性に劣る。
比較例16は、カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂を単純に混合しただけのフィルムで、ポリエステル樹脂中に変性ポリオレフィン樹脂が微粒子状に分散しないため、それをラミネートした比較例38では加工性、耐衝撃性ともに非常に劣る。
発明例14〜21は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量、および分散状態を発明の範囲内で種々変化させたフィルムであるが、これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例51〜58は、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。しかしながら、分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない発明例14のフィルムをラミネートした発明例51、および変性ポリオレフィン樹脂の数が非常に多い発明例20のフィルムをラミネートした発明例57では、低温の耐衝撃性にやや劣る傾向がある。
一方、比較例9〜12は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量が発明を満たさないフィルムであるが、これを本発明のラミネート条件でラミネートした比較例31〜34は、加工性または耐衝撃性において非常に劣る。分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない比較例9、10のフィルムをラミネートした比較例31、32では室温の耐衝撃性に非常に劣り、変性ポリオレフィン樹脂の量が多い比較例11、12のフィルムをラミネートした比較例33、34では、加工性に非常に劣る。
発明例33〜37は、変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に二酸化チタン顔料を混合したフィルムで、これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例70〜74は、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示し、また白色の均一な色調が得られるが、顔料添加量が望ましい範囲より少ない発明例33のフィルムをラミネートした発明例70ではやや色調の隠蔽性が不足していた。一方、顔料添加量が望ましい範囲より多い発明例37のフィルムをラミネートした発明例74ではやや加工性が低下する。
発明例22〜28は、フィルムの各層の膜厚を本発明の範囲で変化させたもので、これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例59〜65は、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。発明例22および28は、フィルムの全体の膜厚が本発明の望ましい範囲を超えるため、これをラミネートした発明例59および65は、加工性、耐衝撃性とも、望ましい膜厚のものに比べてやや劣る。一方、発明例17a〜20aは、フィルムの各層の膜厚、または膜厚比が本発明の望ましい範囲を外れるフィルムでそれらをラミネートした発明例39a〜42aは、発明例22〜28に比べて、加工性、耐衝撃性のバランスにやや劣る。
発明例41および75〜78は、発明例4のフィルムについてラミネート条件を本発明の範囲内で変化させたものであるが、本発明の範囲であればラミネート温度に関わらず良好な成形性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。一方、比較例39は、発明例4のフィルムを本発明のラミネート温度範囲の下限を下回る条件でラミネートしたものであり、フィルムが鋼板に密着しなかったため、評価不能であった。一方、比較例40は、発明例4のフィルムを本発明のラミネート温度範囲の上限を超える条件でラミネートしたため、ラミネートロールに融着して、やはり評価不能であった。
発明例29〜31は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に滑剤、ラジカル禁止剤、および相溶化剤をそれぞれ混合したフィルムで、これを本発明のラミネート条件でラミネートした発明例66〜68は、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。さらに、添加した添加剤の機能に応じた、滑り性、耐ラジカル劣化性、および相溶性を併せ持ち、特に発明例68では高度の低温耐衝撃性が発現する。
発明例32は、2軸延伸法で製膜した本発明のフィルムであり、これをラミネートした発明例69、79は、いずれも良好な性能を示す。発明例79は、面配向係数が0.015であり、加工性が若干劣る。発明例69は、請求項21の範囲の面配向係数を持つものであり、加工性、耐衝撃性とも極めて良好である。
発明例21a、22aは、R0層に本発明外のポリエステル樹脂を使用したフィルムで、これをラミネートした発明例43a、44aは加熱後の密着性にやや劣る。
<実施例5>
1次粒子径を0.3μmとしたカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を出発原料として、表15および16に示す配合比でポリエステル樹脂とタンブラーブレンダーを使用してコールドブレンドした後、2軸押出し機を用いて260℃で溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂が分散したポリエステル樹脂原料ペレットを得た。表中、ポリエステル樹脂の樹脂種およびポリオレフィン樹脂の樹脂種の符号に対応する樹脂種は、実施例4において記載したものと同じである。
金属板としては、実施例4と同様、薄肉化深絞り缶用として厚さ0.18mm、DI缶用として厚さ0.23mmで、いずれもテンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算)のティン・フリー・スチール(以下TFSと略す)を用い、前記原料樹脂ペレットを1軸押出し機に挿入しR1層用の樹脂とし、またR0層用の樹脂を別の押出し機に挿入して同時に溶融して押出し、コンバイニングアダプタで一つのTダイ入れ、前記金属板の片面に直接2層になった溶融樹脂を押出し2本のロールで挟んで密着させながら一度冷却した後、反対側の面に同じ方法で樹脂をラミネートした直後水中急冷し、両面ラミネート金属板を得た。なお、ラミネート時の金属板の温度は230℃とした。樹脂フィルムの膜厚は9.5〜70μmになるように、Tダイのリップ開口幅を調節した。供試樹脂の種類、および押出しラミネート時の樹脂溶融温度も表15および16に示す。ラミネート時の温度はまた、使用したポリエステル樹脂およびカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂は実施例4で使用したものと同じである。
ペレット化されたカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を出発原料として、表17の比較例61に示す配合比でポリエステル樹脂とそのまま1軸押出し機を用いて265℃で溶融混練して得た変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂をTダイより押出しR1層とし、26μmの厚みに直接押出しラミネートを前記TFSに対し、行った。
樹脂フィルム中に分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子径、表中の各種温度、ラミネート金属板の面配向係数測定方法は全て実施例4と同様である。前記で得たラミネート金属板を、実施例4と同様にして、薄肉化深絞り缶またはDI缶に製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製した。製缶した缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性、密着性、レトルト処理性を実施例4と同様に調査した。
調査結果を表17および18に示す。
表15〜18から、いずれの缶種についても以下のことが判る。
発明例80〜90は、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの比率を種々変えたポリエステル樹脂に本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を分散させた樹脂層をR1層に用いたフィルムが形成されており、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。その中で、ポリブチレンテレフタレート比率の低いポリエステル樹脂を用いた発明例89、さらにホモポリエチレンテレフタレートを用いた参考例90において、ポリブチレンテレフタレート比率が低まるほど加熱後の密着性とレトルト処理後の耐白濁性に劣る傾向にあるが、それでも全体的な性能は良好である。また、R1層のポリエステル樹脂をイソフタル酸で共重合化したポリエチレンテレフタレートを使用した参考例91は加熱後の密着性とレトルト処理後の耐白濁性にやや劣る傾向にあるが、それでも全体的な性能は良好である。一方、ポリブチレンテレフタレート比率の非常に高い発明例80、81は、融点がやや低いため加熱後の密着性に劣る傾向にあるが、全体的な性能は良好である。一方、比較例47〜53は、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの混合比を種々変えたポリエステル樹脂にポリオレフィン樹脂を含まない例であるが、特に耐衝撃性のレベルが低い。
参考例91、発明例92〜96は、種々のポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂をR1層に使用したもので、どれも良好な成形性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示すが、カルボン酸誘導官能基比率のやや高いポリオレフィン樹脂を用いた発明例92、およびガラス転移温度のやや高いポリオレフィン樹脂を用いた発明例96は低温の耐衝撃性にやや劣る傾向があった。一方、比較例58〜60は、カルボン酸誘導官能基比率が本発明の範囲を外れるポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂であり、どれも加工性と耐衝撃性に劣る。
比較例61は、カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂を単純に混合しただけの樹脂で、ポリエステル樹脂中に変性ポリオレフィン樹脂が微粒子状に分散しないため、加工性、耐衝撃性ともに非常に劣る。
発明例97〜104は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量、および分散状態を発明の範囲内で種々変化させた樹脂であるが、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。しかしながら、分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない発明例97、および変性ポリオレフィン樹脂の数が非常に多い発明例103では、低温の耐衝撃性にやや劣る傾向がある。
一方、比較例54〜57は、ポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量が発明を満たさない樹脂であるが、加工性または耐衝撃性において非常に劣る。分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない比較例54、55では室温の耐衝撃性に非常に劣り、変性ポリオレフィン樹脂の量が多い比較例56、57では、加工性に非常に劣る。
発明例115〜119は、変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に二酸化チタン顔料を混合した樹脂で、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示し、また白色の均一な色調が得られるが、顔料添加量が望ましい範囲より少ない発明例115ではやや色調の隠蔽性が不足していた。一方、顔料添加量が望ましい範囲より多い発明例119ではやや加工性が低下する。
発明例105〜111は、フィルムの各層の膜厚を本発明の範囲で変化させたもので、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。発明例105および111は、フィルムの全体の膜厚が本発明の望ましい範囲を超えるため、加工性、耐衝撃性とも、望ましい膜厚のものに比べてやや劣る。一方、発明例120〜123は、フィルムの各層の膜厚、または膜厚比が本発明の望ましい範囲を外れる樹脂でラミネートしたため、発明例105〜111に比べて、加工性、耐衝撃性のバランスにやや劣る。
発明例112〜114は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に滑剤、ラジカル禁止剤、および相溶化剤をそれぞれ混合した樹脂で、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、耐白濁性を示す。さらに、添加した添加剤の機能に応じた、滑り性、耐ラジカル劣化性、および相溶性を併せ持ち、特に発明例114では高度の低温耐衝撃性が発現する。
発明例124、125は、R0層に本発明外のポリエステル樹脂を使用した樹脂で加熱後の密着性にやや劣る。
<実施例6>
R1層用樹脂原料として、カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を表19〜21に示す配合比でポリエステル樹脂とタンブラーブレンダーを使用してコールドブレンドした後、2軸押出し機を用いて270℃で溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂が分散したポリエステル樹脂原料ペレットを得た。その原料樹脂ペレットを1軸押出し機に挿入し、一方、R2層樹脂原料となる、変性ポリオレフィン樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R1層、R2層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し2層にして押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら樹脂フィルムを連続製造した。
また、R0層を持つ3層構造の場合は、さらにR0層樹脂原料となる、ポリエステル樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R0層、R1層、R2層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し3層にして押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら樹脂フィルムを連続製造した。
使用したポリエステル樹脂およびカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂は以下の通りである。
1.ポリエステル樹脂
(1)PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂、固有粘度0.62dl/g
(2)PET/I:テレフタル酸とイソフタル酸比率が90:10のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、固有粘度0.62dl/g
(3)PET/PBT:ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの比率が40:60の混合樹脂、固有粘度0.6dl/g
(4)PET/AD:テレフタル酸とアジピン酸比率が80:20のアジピン酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、固有粘度0.6dl/g
2.カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂
(1)EM1:ポリメタクリル酸メチル−(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA5200)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率21重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(2)EM2:ポリメタクリル酸メチル−(エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA8200)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率18重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(3)EM3:エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(住友化学工業(株)社製ボンダインHX8290)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率11重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(4)EM4:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN1560)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率8重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(5)EM5:エチレン−メタクリル酸共重合体の50%Zn中和物(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN1560をZnで一部中和したもの)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率7重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(6)EM6:エチレン−メタクリル酸共重合体の60%Zn中和物(三井デュポンポリケミカル(株)社製ハイミラン1557)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率5重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(7)EM7:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)社製ニュクレルN0200H)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率1重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
(8)EM8:ポリスチレン−(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)グラフト共重合体(日本油脂(株)社製モディパーA5100)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率6重量%、ガラス転移温度:20℃
(9)EPR:エチレン−プロピレンゴム(JSR(株)社製EP07P)、カルボン酸誘導官能基のカルボン酸換算重量比率0重量%、ガラス転移温度:−30℃以下
さらに、樹脂原料として、市販のあらかじめカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した状態でペレット化された樹脂(三井デュポンポリケミカル(株)社製シーラーPT4274)を表20の発明例41、46に示す配合比でそのまま1軸押出し機に挿入し、一方、R2層樹脂原料となる、変性ポリオレフィン樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R1層、R2層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し2層にして押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら樹脂フィルムを連続製造した。R0層を持つ3層構造の場合は、さらにR0層樹脂原料となる、ポリエステル樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R0層、R1層、R2層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し3層にして押出し、回転する金属ロール表面で冷却しながら樹脂フィルムを連続製造した。
このようにして得られた樹脂フィルムを、誘導加熱方式で加熱したティン・フリー・スチール(以下TFSと略す)の両面に熱圧着した後、水中急冷する熱接着法でラミネート金属板を得た。なお、ラミネート時の金属板温度(ラミネート温度)を表22および23に示す。なお、TFSの板厚は、薄肉化深絞り缶用としては0.18mm、DI缶用としては0.23mmのものを用い、テンパー度はともにDR9、表面クロムめっき層の金属クロムおよびクロム酸化物の付着量は、それぞれ80mg/m2、15mg/m2(金属クロム換算)である。
樹脂フィルムのR1層中に分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子径、表中の各種温度、ラミネート金属板の面配向係数を実施例1と同様の方法で測定した。
さらに、前記で得たラミネート金属板を、薄肉化深絞り缶またはDI缶に製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製し、製缶した缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性(室温、低温)、加工後の密着性、加熱後の密着性、フレーバー性を調査した。
調査方法の詳細を以下に記載する。
1.薄肉化深絞り成形による評価
1−1.製缶加工
ラミネート金属板を、以下の条件で第一段絞り、再絞りを行い薄肉化深絞り缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径…150〜160mm
1段絞り …絞り比1.65
・再絞り
第1次再絞り…絞り比:1.25
第2次再絞り…絞り比:1.25
再絞り工程のダイスコーナー部の曲率半径:0.4mm
再絞り時のシワ押さえ加重:39227N(4000kg)
・缶胴部の平均薄肉化率
成形前のラミネート金属板の厚さに対し45〜60%
1−2.歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点−15℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
(1)加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評点をつけた。合格は○以上の評価のものである。
限界加工度(薄肉化率) :評価
薄肉化率45%の成形不可 : ×× (劣)
薄肉化率45%まで成形可 : × ↑
薄肉化率50%まで成形可 : △
薄肉化率55%まで成形可 : ○ ↓
薄肉化率60%まで成形可 : ◎ (優)
(2)室温および低温耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(薄肉化率55%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底に、30cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに5分後の電流値を読み取り、以下のように評価した。同じ試験を、室温20℃の時と0℃の時に行い、前者を室温耐衝撃性、後者を低温耐衝撃性とした。合格は○以上の評価のものである。
(室温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が3mA以上 :×× (劣)
電流値が1mA以上〜3mA未満 :× ↑
電流値が0.5mA以上〜1mA未満 :△
電流値が0.1mA以上〜0.5mA未満 :○ ↓
電流値が0.1mA未満 :◎ (優)
(低温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が5mA以上 :× (劣)
電流値が3mA以上〜5mA未満 :△ ↑
電流値が1mA以上〜3mA未満 :○
電流値が0.5mA以上〜1mA未満 :◎
電流値が0.1mA以上〜0.5mA未満 :◎◎ ↓
電流値が0.1mA未満 :◎◎◎(優)
(3)加工後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、クエン酸1.5重量%−食塩1.5重量%の水溶液に24時間浸漬した後の、缶先端部の樹脂のはがれ長さを観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
5mmを超えるはがれ :××(劣)
2mmを超えて5mm以下のはがれ :× ↑
1mmを超えて2mm以下のはがれ :△
1mm以下のはがれ :○ ↓
はがれ無し :◎ (優)
(4)加熱後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、オーブンにて210℃で10分空焼きした後の、缶先端部の樹脂のはがれ程度を観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
5%を超えるはがれ :× (劣)
2%を超えて5%以下のはがれ :△ ↑
1%を超えて2%以下のはがれ :○
1%以下のはがれ :◎ ↓
はがれ無し :◎◎ (優)
(5)フレーバー性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄した後、香料水溶液(d−リモネン20ppm水溶液)を入れ、密封後常温で20日間放置し、その後開封してエーテル浸漬で追い出される部分を、ガスクロマトグラフィーにより1缶当りのd−リモネンの吸着量として定量して、味特性を評価した。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
吸着量200μg/缶を超えるもの :× (劣)
吸着量100μg/缶を超えて200μg/缶以下 :△ ↑
吸着量30μg/缶を超えて100μg/缶以下 :○
吸着量10μg/缶を超えて30μg/缶以下 :◎ ↓
吸着量10μg/缶以下 :◎◎ (優)
2.絞りしごき成形(DI成形)による評価
2−1.製缶加工
ラミネート金属板を、以下の条件で絞り、しごき成形を行いDI缶を得た。
・第一段絞り
ブランク径:150mm
絞り比:1.6
・第二段絞り
絞り比:1.25
・しごき
しごきポンチ径:3段アイアニング65.8mmφ
・缶胴部の総しごき率
成形前のラミネート金属板の厚さに対し60〜75%
2−2.歪取り熱処理
製缶加工に伴い導入されたフィルムの加工歪をフィルム融点−15℃の熱環境下で30秒間加熱保持した後に急冷した。
(1)加工性
フィルムの損傷を伴うことなく製缶加工できる限界によって、下記のごとく評点をつけた。合格は○以上の評価のものである。
限界加工度(総しごき率) :評点
総しごき率60%の成形不可 :××(劣)
総しごき率60%まで成形可 :× ↑
総しごき率65%まで成形可 :△
総しごき率70%まで成形可 :○ ↓
総しごき率75%まで成形可 :◎ (優)
(2)室温および低温耐衝撃性評価
歪取り熱処理を施した缶体(総しごき率70%)にネック加工を施し、缶体中に、蒸留水を充填して蓋を取りつけ巻き締めた後、缶底に、25cmの高さから0.5kgの鉄球を落下させて衝撃を与えた。次に蓋をあけ、缶内部に、被衝撃部が浸るように、1%食塩水を充填し、5分浸漬後、液中に浸した白金電極と缶金属部に6Vの負荷をかけ、さらに5分後の電流値を読み取り、以下のように評価した。同じ試験を、室温20℃の時と0℃の時に行い、前者を室温耐衝撃性、後者を低温耐衝撃性とした。合格は○以上の評価のものである。
(室温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が3mA以上 :×× (劣)
電流値が1mA以上〜3mA未満 :× ↑
電流値が0.5mA以上〜1mA未満 :△
電流値が0.1mA以上〜0.5mA未満 :○ ↓
電流値が0.1mA未満 :◎ (優)
(低温耐衝撃性評価)
試験結果 :評価
電流値が5mA以上 :× (劣)
電流値が3mA以上〜5mA未満 :△ ↑
電流値が1mA以上〜3mA未満 :○
電流値が0.5mA以上〜1mA未満 :◎
電流値が0.1mA以上〜0.5mA未満 :◎◎ ↓
電流値が0.1mA未満 :◎◎◎(優)
(3)加工後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、クエン酸1.5重量%−食塩1.5重量%の水溶液に5時間浸漬した後の、缶先端部の樹脂のはがれ長さを観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
5mmを超えるはがれ :××(劣)
2mmを超えて5mm以下のはがれ :× ↑
1mmを超えて2mm以下のはがれ :△
1mm以下のはがれ :○ ↓
はがれ無し :◎ (優)
(4)加熱後の密着性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄し、オーブンにて210℃で10分空焼きした後の、缶先端部の樹脂のはがれ程度を観察し、評価した。評点は以下の通りである。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
5%を超えるはがれ :× (劣)
2%を超えて5%以下のはがれ :△ ↑
1%を超えて2%以下のはがれ :○
1%以下のはがれ :◎ ↓
はがれ無し :◎◎ (優)
(5)フレーバー性
歪取り熱処理を施した缶体の内面を洗浄した後、香料水溶液(d−リモネン20ppm水溶液)を入れ、密封後常温で20日間放置し、その後開封してエーテル浸漬で追い出される部分を、ガスクロマトグラフィーにより1缶当りのd−リモネンの吸着量として定量して、味特性を評価した。合格は○以上の評価のものである。
試験結果 :評価
吸着量200μg/缶を超えるもの :× (劣)
吸着量100μg/缶を超えて200μg/缶以下 :△ ↑
吸着量30μg/缶を超えて100μg/缶以下 :○
吸着量10μg/缶を超えて30μg/缶以下 :◎ ↓
吸着量10μg/缶以下 :◎◎ (優)
調査結果を表22および23に示す。
表19〜23から、いずれの缶種についても以下のことが判る。
参考例1、3、4、発明例2は、R1層が本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を種々のポリエステル樹脂中に分散させた混合樹脂層で、R2層にも本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂層を用いたフィルムであり、これを本発明の金属板上にラミネートした参考例47、49、50、発明例48は、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。その中で、アジピン酸を共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた参考例49において、全体的な性能は良好であるがポリエステル樹脂の融点がやや低いこととバリア性がやや低いことから加熱後の密着性とフレーバー性が低い傾向がある。また、市販の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した樹脂から製造されたフィルムの参考例41をラミネートした参考例87も同様に良好な性能を示す。一方、比較例1〜5は、ポリエステル種類を種々変えたポリエステル樹脂に本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を含まないフィルムの例である。これらのフィルムをラミネートした比較例20〜24は、特に加工性、耐衝撃性のレベルが低い。
参考例4〜10は、本発明で規定する種々の変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂を使用したフィルムであり、これをラミネートした参考例50〜56はどれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、特にカルボン酸誘導官能基量が適切で、かつガラス転移温度が−30℃以下の変性ポリオレフィン樹脂を用いた参考例4、および6〜8のフィルムをラミネートした参考例50、および52〜54は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てに優れる。一方、比較例6は、カルボン酸誘導官能基を有しないポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂をR1層に用いたフィルムであり、これをラミネートした比較例25は加工性と耐衝撃性において非常に劣る。
参考例11〜18は、R1混合樹脂層のポリエステル樹脂中に分散された変性ポリオレフィン樹脂の配合量、および分散状態を本発明の範囲内で種々変化させたフィルムであるが、これを金属板にラミネートした参考例57〜64は、どれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、特に分散する変性ポリオレフィン樹脂量が適切で、かつ一定体積当りの粒子数も適切な参考例12、および14〜15のフィルムをラミネートした参考例58、および60〜61は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てにおいて優れる。
一方、比較例7〜10は、R1混合樹脂層のポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量が本発明を満たさないフィルムであるが、これをラミネートした比較例26〜29は、いずれも加工性または耐衝撃性において非常に劣る。分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子数が少ない比較例7のフィルムをラミネートした比較例26、および変性ポリオレフィン樹脂の粒子数が多い比較例10のフィルムをラミネートした比較例29では、加工性、耐衝撃性に非常に劣る。
参考例19〜25は、フィルムのR1層とR2層の膜厚を本発明に規定する範囲で変化させたもので、これを金属板にラミネートした参考例65〜71は、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、その中で特にR1層とR2層の厚み比が5〜10の範囲にあり、またR1層の厚みが15〜25μmの範囲にあるフィルムの参考例20〜21、および23をラミネートした参考例66〜67、および69は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てに優れる。また、参考例13aは、R1の混合樹脂層とR2の変性ポリオレフィン層の厚み比R1/R2が本発明の望ましい範囲より小さいフィルムであるが、これをラミネートした参考例32aは、参考例65〜71に比べて、フィルムの機械的性能、下地金属板との密着性にやや劣る。一方、参考例14aは、R1/R2が本発明の好適範囲より大きいフィルムであるが、これをラミネートした参考例33aは、参考例65〜71に比べて、下地金属板との密着性にやや劣る。
参考例26〜31は、本発明で規定する種々の変性ポリオレフィン樹脂をR2層に使用したフィルムであり、これをラミネートした参考例72〜77はどれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、特にカルボン酸誘導官能基量が適切で、かつガラス転移温度が−30℃以下の変性ポリオレフィン樹脂を用いた参考例27〜29のフィルムをラミネートした参考例73〜75は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てに優れる。一方、比較例13は、カルボン酸誘導官能基を有しないポリオレフィン樹脂をR2層に使用したフィルムであり、これをラミネートした比較例32は加工性と耐衝撃性において非常に劣る。
参考例32〜34は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に滑剤、ラジカル禁止剤、および相溶化剤をそれぞれ混合したフィルムで、これをラミネートした参考例78〜80は、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。さらに、添加した添加剤の機能に応じた、滑り性、耐ラジカル劣化性、および相溶性を併せ持ち、特に相溶化剤を混合した参考例80では高度の低温耐衝撃性が発現する。
参考例35は、2軸延伸法で製膜した本発明のフィルムであり、これをラミネートした参考例81、97は、いずれも良好な性能を示す。参考例97は、面配向係数が0.015であり、加工性が若干劣る傾向にあるが、参考例81は、本発明の範囲の面配向係数を持つものであり、耐衝撃性のレベルが高い。
参考例36〜40は、本発明のフィルムに二酸化チタン顔料を混合したフィルムで、これをラミネートした参考例82〜86は、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示し、また白色の均一な色調が得られるが、顔料添加量が望ましい範囲より少ない参考例36のフィルムをラミネートした参考例82ではやや色調の隠蔽性が不足していた。一方、顔料添加量が望ましい範囲より多い参考例40のフィルムをラミネートした参考例86ではやや加工性が低下する。
参考例93〜96は、参考例4のフィルムについてラミネート条件を本発明の範囲内で変化させたものであるが、本発明の範囲であればラミネート温度に関わらず良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。
参考例42〜46は、オレフィンを含まないポリエステル樹脂R0層と混合樹脂層R1層と変性ポリオレフィン層R2層を積層(R1層上にR0層を積層)した3層フィルムであり、これをラミネートした参考例88〜92は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てに非常に優れるが、特にR0層としてポリエチレンテレフタレート、またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル樹脂層を適当な膜厚で用いたフィルムをラミネートした参考例88〜89、および92は、低温の耐衝撃性とフレーバー性に非常に優れる。
参考例15aおよび16aは、オレフィンを含まないポリエステル樹脂R0層と混合樹脂層R1層と変性ポリオレフィン層R2層を積層(R1層上にR0層を積層)した3層フィルムであるが、R2層が本発明の好適範囲を外れるもので、これをラミネートした参考例34aおよび35aは、R2層が本発明の好適範囲内にある参考例42〜46に比べて、密着性が劣る。
<実施例7>
R1層用樹脂原料として、カルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂を表24〜26に示す配合比でポリエステル樹脂とタンブラーブレンダーを使用してコールドブレンドした後、2軸押出し機を用いて270℃で溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂が分散したポリエステル樹脂原料ペレットを得た。表中、ポリエステル樹脂の樹脂種およびポリオレフィン樹脂の樹脂種の符号に対応する樹脂種は、実施例6において記載したものと同じである。また、一部のR1層用樹脂原料として、市販のあらかじめカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した状態でペレット化された樹脂(三井デュポンポリケミカル(株)社製シーラーPT4274)をそのまま用いた。
金属板としては、実施例6と同様、薄肉化深絞り缶用としては厚さ0.18mm、DI缶用としては厚さ0.23mmで、いずれもテンパー度DR9、金属クロム層80mg/m2、クロム酸化物層15mg/m2(金属クロム換算)のTFSを用い、前記R1層用原料樹脂ペレットを1軸押出し機に挿入し、2層の場合はR2層樹脂原料となる変性ポリオレフィン樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R1層、R2層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し2層にして押出し、あらかじめ230℃に加熱してある前記金属板の片面に直接溶融樹脂を押出し2本のロールで挟んで密着させながら一度冷却した後、反対側の面に同じ方法で樹脂をラミネートした直後水中急冷し、両面ラミネート金属板を得た。
また、R0層を持つ3層構造の場合は、さらにR0層樹脂原料となるポリエステル樹脂を別の1軸押出し機に挿入し、R0層、R1層、R2層の膜厚をそれぞれの押出し機からの溶融樹脂の吐出量により制御しながら、各溶融樹脂をマルチマニホールド型Tダイに導入し3層にして押出し、あらかじめ230℃に加熱してある前記金属板の片面に直接溶融樹脂を押出し2本のロールで挟んで密着させながら一度冷却した後、反対側の面に同じ方法で樹脂をラミネートした直後水中急冷し、両面ラミネート金属板を得た。
樹脂フィルムの膜厚は表24〜26に示す厚みになるように、Tダイのリップ開口幅を調節した。供試樹脂の種類、および押出しラミネート時の樹脂溶融温度を表24〜29に示す。また、使用したポリエステル樹脂およびカルボン酸誘導基変性ポリオレフィン樹脂は実施例6で使用したものと同じである。
樹脂フィルム中に分散する変性ポリオレフィン樹脂の粒子径、表中の各種温度、ラミネート金属板の面配向係数測定方法は全て実施例6と同様である。前記で得たラミネート金属板を、実施例6と同様にして、薄肉化深絞り缶またはDI缶に製缶加工し、歪み取り熱処理を施して供試缶を作製した。製缶した缶体のフィルムの加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を実施例6と同様に調査した。
調査結果を表27〜29に示す。
表24〜29から、いずれの缶種についても以下のことが判る。
参考例98、100、101、発明例99は、R1層が本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を種々のポリエステル樹脂中に分散させた混合樹脂層で、R2層にも本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂層を用いたラミネート鋼板であり、良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。その中で、アジピン酸を共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた参考例100において、全体的な性能は良好であるがポリエステル樹脂の融点がやや低いこととバリア性がやや低いことから加熱後の密着性とフレーバー性が低い傾向がある。また、市販の変性ポリオレフィン樹脂がポリエステル樹脂に分散した樹脂から製造されたラミネート鋼板の参考例137も同様に良好な性能を示す。一方、比較例39〜42は、ポリエステル種類を種々変えたポリエステル樹脂に本発明で規定する変性ポリオレフィン樹脂を含まないラミネート鋼板の例であり、特に加工性、耐衝撃性のレベルが低い。
参考例101〜107は、本発明で規定する種々の変性ポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂を使用したラミネート鋼板の例であり、どれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、特にカルボン酸誘導官能基量が適切で、かつガラス転移温度が−30℃以下の変性ポリオレフィン樹脂を用いた参考例101、および103〜105は、加工性、耐衝撃性、密着性の全てに優れる。一方、比較例43は、カルボン酸誘導官能基を有しないポリオレフィン樹脂をポリエステル樹脂に分散させた混合樹脂をR1層に用いた例であり、加工性と耐衝撃性において非常に劣る。
参考例108〜115は、R1混合樹脂層のポリエステル樹脂中に分散された変性ポリオレフィン樹脂の配合量、および分散状態を本発明の範囲内で種々変化させたラミネート鋼板であり、どれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性を示すが、特に分散する変性ポリオレフィン樹脂量が適切で、かつ一定体積当りの粒子数も適切な参考例109、および111、112は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てにおいて優れる。
一方、比較例44〜47は、R1混合樹脂層のポリエステル樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の配合量が本発明を満たさない例であるが、いずれも加工性または耐衝撃性において非常に劣る。分散する変性ポリオレフィン樹脂の量が少ない比較例44、および変性ポリオレフィン樹脂の量が多い比較例47では、加工性、耐衝撃性に非常に劣る。
参考例116〜122は、R1層とR2層の膜厚を本発明に規定する範囲で変化させたもので、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、その中で特にR1層とR2層の厚み比R1/R2が5〜10の範囲にあり、またR1層の厚みが15〜25μmの範囲にある参考例117、118、および120は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てに優れる。また、参考例143は、R1層とR2層の厚み比R1/R2が本発明の好適範囲より小さい例であるが、参考例116〜122に比べて、樹脂の機械的性能に劣るうえ下地金属板との密着性にもやや劣る。一方、参考例144は、R1/R2が本発明の好適範囲より大きい例であるが、参考例116〜122に比べて、下地金属板との密着性にやや劣る。
参考例123〜128は、本発明で規定する種々の変性ポリオレフィン樹脂をR2層に使用したラミネート鋼板であり、どれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示すが、特にカルボン酸誘導官能基量が適切で、かつガラス転移温度が−30℃以下の変性ポリオレフィン樹脂を用いた参考例124〜126は、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てに優れる。
参考例129〜131は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂の混合樹脂に滑剤、ラジカル禁止剤、および相溶化剤をそれぞれ混合したラミネート鋼板で、いずれも良好な加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性を示す。さらに、添加した添加剤の機能に応じた、滑り性、耐ラジカル劣化性、および相溶性を併せ持ち、特に相溶化剤を混合した参考例131では高度の低温耐衝撃性が発現する。
参考例132〜136は、本発明の樹脂層に二酸化チタン顔料を混合したラミネート鋼板で、良好な加工性、耐衝撃性、密着性を示し、また白色の均一な色調が得られるが、顔料添加量が望ましい範囲より少ない参考例132ではやや色調の隠蔽性が不足している。一方、顔料添加量が望ましい範囲より多い参考例136ではやや加工性が低下する。
参考例138〜142は、さらにオレフィンを含まないポリエステル樹脂層(R0層)をR1層の上に設けた3層樹脂をラミネートした鋼板であり、加工性、耐衝撃性、密着性、フレーバー性の全てに非常に優れるが、特にR0層として本発明で規定するポリエチレンテレフタレート、またはイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル樹脂層を適当な膜厚で用いたラミネート鋼板の参考例138、139、および142は、低温の耐衝撃性とフレーバー性に非常に優れる。
参考例145および146は、さらにオレフィンを含まないポリエステル樹脂層(R0層)をR1層の上に設けた3層樹脂をラミネートした鋼板であるが、R1層とR2層の厚み比R1/R2が本発明の好適範囲を外れるため、参考例138〜142に比べて、密着性が劣る。