JP4754106B2 - 樹脂被覆金属容器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂被覆金属容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性に優れ、広く自動車部品や電気製品の部品、筐体等の成形材料として使用されている。さらに、加工時の潤滑、耐磨耗性、水蒸気や酸素などの金属腐食要因物質のガスバリア性及び金属との密着性に優れており、耐腐食性や加工性を向上したり、表面に意匠性を付与することを目的に、金属被覆材料としても広く使用されている。
【0003】
ポリエステル樹脂を金属材料の被覆材料に使用する場合、これらの特性をさらに向上させる方法として、特開平7-195617号公報や特開平7-290644号公報に開示されるようにポリエステル樹脂とアイオノマー樹脂とをアロイ化する方法が知られている。本法ではアイオノマー樹脂により、機械的性質、金属との密着性が改善される。さらにはWO99/27026に開示されるように、前記のポリエステル樹脂とアイオノマーのような極性基を有するビニル重合体との樹脂組成物に対してさらにゴム弾性体樹脂を添加し、ポリエステル樹脂極性基を有するビニル重合体により弾性体樹脂をカプセル化したゴム状弾性体を微分散する技術が開示され、より一層耐衝撃や熱安定性が改善されることが知られている。
【0004】
また、金属容器外面被覆等に用いられる樹脂、特にフィルムについては、従来使用されている白色塗料の下塗りを省略するために、上記特性に加えて、隠蔽性が高く、厳しい成形加工にも使用でき、美麗感があり印刷に適している白色フィルムが求められている。例えばポリエステル樹脂からなる白色フィルムにおいて隠蔽性を発現させるには、白色顔料粒子を高濃度に添加する方法、顔料濃度の異なる白色フィルムを多層化する方法、フィルム中に微小な気泡を含有させる方法等が挙げられる。顔料の添加量を増加させる方法により高い隠蔽性を持たせると、フィルム自体が脆くなり、加工時の破断が多発し、また、フィルムが成形に耐えることができずに、割れやひび割れ等が課題となる。また、これらの対策として、顔料濃度の異なる白色フィルムを多層化する方法が提案されているが、薄膜フィルム多層化といった工程が必要となること、また場合により厳しい成形加工時に多層化されたフィルム界面での剥離等が発生することがある。また、微小な気泡を多量に含有させる方法により高い隠蔽性を持たせる場合、気泡の大きさを制御する必要があり、また、得られたフィルムは一般に成形加工性が悪化する。厚みを増大させることで隠蔽性を増大させることも可能であるが、フィルムコストの増加につながるため好ましい方法とはいえない。このため、高い隠蔽性と優れた成形性といった背反する特性を兼備した白色フィルムが、容器等の成形加工速度向上、付与する意匠性の多様化に伴い、一層望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記問題点を解決することにあり、特に高い隠蔽性を有し、成形性に優れるといった背反する特性を兼備する樹脂組成物を被覆した金属板を加工してなる樹脂被覆金属容器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく、上記のポリエステル樹脂とアイオノマーのような極性基を有するビニル重合体との樹脂組成物についてさらに検討した結果、当該樹脂組成物は、特定の極性を有する白色無機粒子を特定量添加することにより、前記ポリエステル樹脂と前記アイオノマーのような極性基を有するビニル樹脂との界面密着力を増加し、この結果、高い隠蔽性と優れた成形加工性といった背反する特性を兼備し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、固有粘度0.3dl/g以上であり重合触媒の残渣としての金属化合物が50ppm以下であるポリエステル樹脂及び極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体を含む混合物に、ポーリング電気陰性度の差が1.0(eV)0.5以上ある元素同士が結合した極性基を有しその平均粒径が0.2〜0.5μmの粒状で分散している白色無機粒子10〜50質量%を含有し他の無機物の含有量が白色無機粒子に対して質量比で10%以下である樹脂組成物を、直接及び/又はフィルムに加工してから、金属板の少なくとも片面に1〜300μmの厚さで被覆した後、当該金属板を成形加工してなる樹脂被覆金属容器であって、前記ポリエステル樹脂と前記ビニル重合体の界面に偏在する前記無機粒子数が全無機粒子の20%以上、及び/又は、前記無機粒子が偏在する前記ポリエステル樹脂と前記ビニル重合体の界面層数が全界面層数の20%以上であることを特徴とする樹脂被覆金属容器である。
【0008】
また、前記樹脂組成物が、ゴム状弾性体樹脂を前記ビニル重合体の一部又は全部の相に内包する樹脂被覆金属容器である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明に使用するポリエステル樹脂は、ヒドロキシカルボン酸化合物残基のみを、また、ジカルボン酸残基及びジオール化合物残基を、あるいは、ヒドロキシカルボン酸化合物残基とジカルボン酸残基及びジオール化合物残基とをそれぞれ構成ユニットとする熱可塑性ポリエステルである。また、これらの混合物であっても良い。
【0011】
ヒドロキシカルボン酸化合物残基の原料となるヒドロキシカルボン酸化合物を例示すると、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシエチル安息香酸、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4'-カルボキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0012】
また、ジカルボン酸残基を形成するジカルボン酸化合物を例示すると、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びアジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0013】
次に、ジオール残基を形成するジオール化合物を例示すると、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略称する)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、o-ヒドロキシフェニル-p-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4- ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'-ビフェノール、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール、及びこれら芳香族ジオールの芳香環部位が部分的に水素添加されたもの、及びエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水添ビスフェノールA等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等が挙げられ、これらは単独で使用することも、また、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0014】
また、これらから得られるポリエステル樹脂を単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても良い。本発明に使用するポリエステル樹脂は、これらの化合物又はその組み合わせにより構成されていれば良いが、中でも芳香族ジカルボン酸残基とジオール残基より構成される含芳香族ポリエステル樹脂であることが、加工性、熱的安定性の観点から好ましい。
【0015】
また、本発明に使用するポリエステル樹脂は、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される構成単位を少量、例えば2モル%以下の量を含んでいても良い。
【0016】
耐熱性や加工性の面から、これらのジカルボン酸化合物、ジオール化合物の組み合わせの中で最も好ましい組み合わせは、テレフタル酸50〜95モル%、イソフタル酸及び/又はオルソフタル酸50〜5モル%のジカルボン酸化合物と、炭素数2〜5のグリコールのジオール化合物との組み合わせである。
【0017】
本発明に使用する好ましいポリエステル樹脂を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレート等が挙げられるが、中でも適度の機械特性、ガスバリア性、及び金属密着性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレートが最も好ましい。
【0018】
なお、本発明の樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂は、特にポリエステル製造触媒の残留物などであるゲルマニウム、アンチモン、チタン等の金属化合物を含むことがある。本発明の樹脂組成物に用いるポリエステル樹脂中の金属化合物の含有量は、特に限定されないが、フレーバー性を損失しないためにも重合触媒の残渣としての金属化合物が50ppm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明に使用するポリエステル樹脂は、25℃のo-クロロフェノール中、0.5%の濃度で測定した固有粘度が0.3dl/g以上でなければならない。0.3dl/g未満の場合は、高分子効果が発現できない。固有粘度の上限は、特に規定するものではないが、固有粘度が2.0dl/g超では成形性が不良となり、2.0dl/g以下であることが好ましい。より好ましくは、固有粘度が0.7〜1.5dl/gであり、0.7dl/g未満ではポリエステル樹脂自体の材料強度が不十分で、厳しい形成加工条件下で、割れが生じる場合がある。また、1.5dl/g超では添加する無機粒子の分散性が悪化する場合がある。
【0020】
本発明に使用するポリエステル樹脂は、非晶性であっても結晶性であっても良く、結晶性である場合には、結晶融解温度(Tm)が、100℃以上であることが好ましい。100℃未満では、加熱処理等、熱によって変形する場合がある。さらに、Tmが210〜265℃であり、好ましくは210〜245℃であり、低温結晶化温度(Tc)が、110〜220℃、好ましくは120〜215℃であることが望ましい。Tmが265℃超もしくは、Tcが220℃超の場合は、混練時にビニル重合体が分解する場合がある。Tmが210℃未満もしくは、Tcが110℃未満の場合は、耐熱性が不充分で加工時にフィルム形状を保持できない場合がある。ガラス転移温度(Tg、サンプル量約10mg、昇温速度10℃/分の示差型熱分析装置(DSC)で測定)が、50〜120℃、より好ましくは60〜100℃であることが望ましい。また、非晶質である場合は、上記のTgが100℃以上であることが望ましい。非晶質でかつTgが100℃未満の場合は、耐熱性が不充分で加工時に割れ等が発生する場合がある。
【0021】
本発明に使用する樹脂組成物では、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体を含有する事を必須とする。極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体とは、ポーリングの電気陰性度の差が0.45(eV)0.5以上有る元素が結合した基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体である。極性基を有するユニットが1質量%未満では、耐衝撃性が低下する場合がある。ポーリングの電気陰性度の差が0.45(eV)0.5以上有る元素が結合した基を具体的に例示すると、-C-O-、-C=O、-COO-、エポキシ基、C2O3、C2O2N-、-CN、-NH2、-NH-、-X(X: F, Cl, Br)、-SO3-、等が挙げられる。また、極性基として金属イオンで中和された酸根イオンを有していてもよい。この場合、金属イオンの例としてはNa+、K+、Li+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Pb2+、Cu2+、Mn2+、Ti3+、Zr3+、Sc3+等の1価、2価又は3価の金属陽イオンが挙げられる。
【0022】
極性基を有するユニットを例示すると、-C-O-基を有する例としてビニルアルコール、-C=O基を有する例としてビニルクロロメチルケトン、-COO-基を有する例としてアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル酸及びその金属塩若しくはエステル誘導体、エポキシ基を有する例としてはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタクリル酸グリシジル等のα,β-不飽和酸のグリシジルエステル、C2O3基を有する例として無水マレイン酸、C2O2N-基を有する例として無水マレイン酸のイミド誘導体、-CN基を有する例としてアクリロニトリル、-NH2基を有する例としてアクリルアミン、-NH-基を有する例としてアクリルアミド、-X基を有する例として塩化ビニル、-SO3-基を有する例としてスチレンスルホン酸、等が挙げられ、また、これらの酸性官能基の全部または一部が、上記の金属イオンで中和された化合物が挙げられ、これらが単独でまたは複数でビニル重合体に含有されていても良い。
【0023】
本発明に使用するビニル重合体は、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体であり、そのようなビニル重合体を例示すると、上記の極性基含有ビニル系ユニットの単独若しくは2種類以上の重合体、及び上記極性基含有ビニル系ユニットと下記一般式(i)で示される無極性ビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
-CHR1=CR2R3- (i)
(式中、R1、R3は、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基若しくは水素を、R2は、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基若しくは水素を示す。)
一般式(i)の無極性ビニルモノマーを具体的に示すと、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等のα-オレフィン、イソブテン、イソブチレン等の脂肪族ビニルモノマー、スチレンモノマーの他にo-、m-、p-メチルスチレン、o-、m-、p-エチルスチレン、t-ブチルスチレン等のアルキル化スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー付加重合体単位等の芳香族ビニルモノマー等が挙げられる。
【0024】
極性基含有ユニットの単独重合体を例示すると、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。また、極性基含有ユニットと無極性ビニルモノマーとの共重合体を例示すると、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びこれらの共重合体中の酸性官能基の一部若しくは全部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、ブテン-エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等及びそれらの酸性官能基のすべて、または一部が金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂類が挙げられる。
【0025】
アイオノマー樹脂としては、公知のアイオノマー樹脂を広く使用することができる。具体的には、ビニルモノマーとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体で共重合体中のカルボン酸の一部若しくは全部を金属陽イオンにより中和したものである。
【0026】
ビニルモノマーを例示すると、上記のα-オレフィンやスチレン系モノマー等であり、α,β-不飽和カルボン酸を例示すると炭素数3〜8のα,β-不飽和カルボン酸で、より具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル等が挙げられる。
【0027】
中和する金属陽イオンを例示すると、Na+、K+、Li+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Pb2+、Cu2+、Mn2+、Ti3+、Zr3+、Sc3+等の1価、2価または3価の金属陽イオンが挙げられる。また、金属陽イオンで中和されていない残余の酸性官能基の一部は、低級アルコールでエステル化されていても良い。
【0028】
アイオノマー樹脂を具体的に例示すると、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸との共重合体、あるいはエチレンとマレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸との共重合体であって、共重合体中のカルボキシル基の一部若しくは全部がナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属イオンで中和された樹脂が挙げられる。
【0029】
これらの中で、耐衝撃性向上能が高く、ポリエステル樹脂と後述のゴム状弾性樹脂体との相溶性を改善する目的で最も好ましいのが、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸の共重合体(カルボキシル基を有する構成単位が2〜15モル%)で、重合体中のカルボキシル基の30〜70%がNa、Zn等の金属陽イオンで中和されている樹脂である。
【0030】
ガラス転移温度(Tg、サンプル量約10mg、昇温速度10℃/分の示差熱型分析装置(DSC)で測定)が50℃以下、室温でのヤング率が1000MPa以下、及び破断伸びが50%以上であるビニル重合体が、より耐衝撃性を向上するために好ましい。
【0031】
本発明で使用する好ましいビニル重合体を例示すると、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらの酸性官能基の一部もしくは全部が金属イオンで中和された極性オレフィン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、無水マレイン酸、酢酸ビニルとα-オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0032】
特に、耐衝撃性が高い点で、さらに好ましくは、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びこれらの共重合体中の酸性官能基の一部もしくは全部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-グリシジルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-グリシジルアクリレート共重合体、エチレン-一酸化炭素-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-一酸化炭素-グリシジルアクリレート共重合体、エチレン-無水マレンイ酸共重合体、ブテン-エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、ブテン-エチレン-グリシジルアクリレート共重合体が挙げられる。
【0033】
バリア性確保の観点から、α-オレフィンと極性基を有するユニットとの共重合体が、好ましい組み合わせである。なお、本発明に使用するビニル重合体は、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体であれば良く、上記の具体例に限定されるものではない。
【0034】
また、ビニル重合体の分子量は特に限定するものではないが、数平均分子量で2000以上500000以下が好ましい。2000未満や500000超では、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0035】
ビニル重合体の分散形状、状態は特に規制するものではないが、好ましくは平均粒径が5μm以下の粒状で分散していること、さらに好ましくは、平均粒径が1μm以下の粒状に分散していることである。5μm超では、フィルム加工が困難となることがある。平均粒径が1μm以下の粒状に分散させることにより衝撃性が増大し、加熱環境下での変形応力緩和効果が大きくなる。
【0036】
また、ビニル重合体の量は、体積比で20%以下が好ましい。体積比で20%超では、樹脂組成物の耐熱性等の基本特性が変化する場合がある。
【0037】
さらに、本発明で使用する樹脂組成物には、極性を有する白色無機粒子を、ポリエステル樹脂とビニル重合体の合計質量に対して、10〜50質量%添加されてなければならない。極性を有する白色無機粒子とは、ポーリングの電気陰性度の差が0.45(eV)0.5以上ある元素(I)-元素(II)結合を分子内に有する白色無機粒子である。ポリエステル樹脂とビニル重合体の合量に対し、本成分含有量が10質量%未満であれば、ポリエステル樹脂相とビニル重合体相との界面の密着力強化効果や、十分な隠蔽効果が得られない。50質量%超では樹脂組成物が脆化し、製膜性、加工性が低下する。極性を当該範囲に制御することにより、当該成分とポリエステル樹脂の極性ユニットやビニル重合体間の極性基間で、水素結合、イオン相互作用、配位相互作用などの静電的相互作用、あるいは共有結合が生じる。この結果、白色無機粒子とビニル重合体の複合作用による隠蔽効果向上と共に、界面の密着力が強化され、無機物を添加することによる樹脂組成物の機械的強度の低下を抑制でき、成形加工時の割れやひびが抑制される。これらの相互作用をさらに強くするためには、ポーリングの電気陰性度の差が1.0(eV)0.5以上であることが好ましい。なお、白色無機粒子に対し、質量比で10%までであれば、隠蔽性、白色度等、白色無機粒子添加効果を損なうことなく、また、衛生性に問題がなければ不純物等の他の無機物が混入していてもよい。
【0038】
本発明で使用する白色無機粒子は、ポーリングの電気陰性度の差が0.45(eV)0.5以上ある極性を有していればよく、特に化学構造を限定するものでないが、隠蔽性、熱安定性が高く、水溶液等溶液中で人体に対して有毒となる種々のイオンを発生しない粒子が好ましく、金属酸化物および金属の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、珪酸塩、水酸化物等が挙げられる。具体的に白色無機粒子を例示すると、酸化チタン(チタン白、ルチル型およびアナターゼ型等、TiO2)、酸化亜鉛(亜鉛華、ZnO)、酸化鉄(Fe3O4)、シリカ(珪石粉、SiO2)、ホワイトカーボン(SiO2・nH2O)、珪藻土(SiO2・nH2O)、タルク(滑石粉、3MgO・4SiO2・H2O)、硫酸バリウム(BaSO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、石膏(CaSO4・2H2O)、クレー(例えばAl2O3・2SiO2・2H2Oなど)、炭酸マグネシウム(例えば、3MgCO3・Mg(OH)2・3H2O〜MgCO3・3Mg(OH)2・11H2Oなど)、アルミナ(Al(OH)3) 等が挙げることができる。これらは単独で使用することも、また、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0039】
中でも隠蔽性、熱安定性が高く、人体に対して所定量範囲内で無毒であり、ポーリングの電気陰性度の差が1.0(eV)0.5以上の結合を有し、ビニル重合体中の極性ユニットとの相互作用が強く、界面の密着力が強化され、成形加工時の割れやひびが抑制できる観点から好ましいのは、金属酸化物である。具体的に当該無機粒子を例示すると、酸化チタン(チタン白、ルチル型およびアナターゼ型等、TiO2:2.0(eV)0.5)、酸化亜鉛(亜鉛華、ZnO:1.9(eV)0.5)、酸化鉄(Fe3O4:1.7(eV)0.5)、シリカ(珪石粉、SiO2:1.7(eV)0.5)、等が挙げられる。中でも、隠蔽力が高く汎用性のある酸化チタンが特に好ましい。添加される酸化チタン種としては特に限定されず、ルチル型、アナターゼ型、ブルカライト型等いずれでも構わないが、隠蔽性の観点からルチル型が好ましい。
【0040】
これらの白色無機粒子の分散形状、状態は特に規制するものではないが、隠蔽性の観点から、好ましくはこれらの粒子の平均粒径が0.1〜1.0μmの粒状で組成物中に分散していること、さらに好ましくは、平均粒径が0.2〜0.5μmの粒状に分散していることが望ましい。平均粒子径が0.1μm以下では、ポリエステル樹脂相への分散性が低下する。また、平均粒子径が1.0μm超では、得られるフィルム表面にザラツキ感が生じ、外観を損ねる場合がある。ポリエステル樹脂相とビニル重合体相の界面強度を増強する観点から、これらの成分は当該界面に局在していることが好ましい。具体的には、無機粒子数(X1)のうち、個数で20%以上の粒子が、前記ポリエステル樹脂相と前記ビニル重合体相の界面に偏在するか、前記ポリエステル樹脂と前記ビニル重合体との界面数(X2)のうち、界面数で20%以上に前記白色無機粒子が存在するように分散していることが好ましい。より好ましくは、X1の50%以上が当該界面に存在するか、X2の50%以上に前記粒子が1個以上ある分散状態である。このような分散状態は、ミクロな視点では偏在しているものの、前記ビニル重合体相が前記ポリエステル樹脂相に微分散されているためマクロな視点では、結果的に前記白色無機粒子の分散性を向上させており、前記ビニル重合体相とともに光散乱強度を向上させ、高い隠蔽効果をもたらす。また、ポリエステル樹脂相の隠蔽性の観点からは白色無機粒子がポリエステル樹脂相にも分散していることが好ましく、特に、X1の10%以上がポリエステル樹脂相に分散していることが好ましい。
【0041】
これらの分散状態は、ポリエステル樹脂相、ビニル重合体相、白色無機粒子を公知の方法で識別することにより観察できる。具体的な方法として以下の方法が例示できる。必要に応じてポリエステル樹脂相と白色無機粒子相とを染色コントラストで識別可能にした後、ビニル重合体のみを溶解する溶媒によりビニル重合体相をエッチングし、電子顕微鏡で観察する。エッチングされた面(ポリエステル樹脂相とビニル重合体相の界面)への白色無機粒子の偏在状態を画像処理法などを利用して数値化できる。具体的には、識別した白色無機粒子を無作為に任意抽出し、ポリエステル樹脂相とビニル重合体相の界面に存在する白色無機粒子の個数比、あるいは、ポリエステル樹脂相とビニル重合体相の界面層を同様に抽出し、白色無機粒子が存在している界面層の個数比により偏在状態を定量的に評価できる。偏在判別対象とする白色無機粒子あるいは界面層の個数は特に限定しないが、約5000倍に拡大した観察視野(5cm×5cm)中の全数を評価することが好ましく、統計上の有為性から、同評価を10視野以上、より好ましくは20視野以上行うことが望ましい。
【0042】
さらに、ビニル重合体の一部の相、好ましくは全相には、ゴム状弾性体が内包されていることが、樹脂組成物の耐衝撃性や成形加工時での変形応力緩和効果を増大する観点から望ましい。ゴム状弾性体には、公知のゴム状弾性体樹脂を広く使用できる。中でも、発現部のガラス転移温度(Tg、サンプル量約10mg、昇温速度10℃/分の示差型熱分析装置(DSC)で測定)が50℃以下、室温でのヤング率が1000MPa以下、及び破断伸びが50%以上であるゴム状弾性体樹脂が好ましい。ゴム弾性発現部のTgが50℃超、室温でのヤング率が1000MPa超、及び破断伸びが50%未満では、十分に耐衝撃性や成形加工時での変形応力緩和効果を発現できない。さらに、これらの効果をより増大する観点から、Tgが10℃以下、より望ましくは-30℃以下であることが好ましい。さらには、室温でのヤング率は100MPa以下、より望ましくは10MPa以下であることが、破断伸びは100%以上、より望ましくは300%以上であることが、好ましい。
【0043】
ゴム状弾性体を具体的に例示すると、山下晋三著「ゴムエラストマー活用ハンドブック」工業調査会発行(1985年)に記載されている固形ゴム、ラテックス、熱可塑性エラストマー、液状ゴム、粉末ゴムなどが挙げられる。なかでも、被膜加工性から最も好ましいのが、固形ゴムと熱可塑性エラストストマーであり、金属腐食要因物へのバリア性の観点から最も好ましいのが、ポリオレフィン系のゴム状弾性体である。具体的に好ましいポリオレフィン系のゴム状弾性体を例示すると、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-3-エチルペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレンと炭素数3以上のα-オレフィンの共重合体、もしくは、前記2元共重合体にブタジエン、イソプレン、5-メチリデン-2-ノルボーネン、5-エチリデン-2-ノルボーネン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等を共重合したエチレン、炭素数3以上のα-オレフィン及び非共役ジエンからなる3元共重合体である。その中でも、エチレン-プロピレン共重合体やエチレン-1-ブテン共重合体の2元共重合体、若しくは、エチレン-プロピレン共重合体やエチレン-1-ブテン共重合体に、非共役ジエンとして5-メチリデン-2-ノルボーネン、5-エチリデン-2-ノルボーネン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエンを使用し、α-オレフィン量を20〜60モル%、非共役ジエンを0.5〜10モル%共重合した樹脂が、被膜加工性から最も好ましい。
【0044】
ビニル重合体相にゴム状弾性体を内包する方法を具体的に例示すると、ゴム状弾性体の化学構造に応じてビニル重合体内の極性ユニットの割合を1質量%以上の範囲で制御し、ビニル重合体相がゴム状弾性体相とポリエステル樹脂相との界面に存在するように3者間の界面張力、すなわち、ぬれ性を制御することによって達成できる。
【0045】
本発明で用いる樹脂組成物での、ビニル重合体相にゴム状弾性体を内包した分散状態とは、面積比で、ゴム状弾性体樹脂相の界面の80%以上、好ましくは95%以上をビニル重合体が被覆し、ポリエステル樹脂とゴム状弾性体との直接接触面積を20%未満とした構造である。このような構造とすることにより、ビニル重合体でカプセル化されたゴム状弾性体の微細分散が容易となり、耐衝撃性、製膜性が向上する。また、ゴム状弾性体は一般に金属板との密着性が低いが、極性基を有するビニル重合体が金属板との密着性を有するため、微細分散したゴム状弾性体が金属板に接しても樹脂組成物と金属板との密着性を確保できる効果を有する。内包状態は、ゴム状弾性体とビニル重合体とを公知の染色法などで識別し、電子顕微鏡などで観察することにより判別できる。
【0046】
ゴム状弾性体の添加量は特に規定しないが、好ましい添加量はポリエステル樹脂に対してビニル重合体とゴム状弾性体の含量が50質量%以下である。50質量%超では硬度が低下する場合がある。
【0047】
また、本発明で用いる樹脂組成物には、他の目的、すなわち剛性、線膨張特性、潤滑性、表面硬度、熱安定、光安定、酸化安定、離型、染色の付与、帯電防止、抗菌抗カビ等を目的に、公知のこれらの人体に対して無毒とされる物性改質剤を適正量添加してもよい。中でも、酸化防止剤では、特にラジカル禁止剤が好ましく、フェノール系ラジカル禁止剤、スルフィド系ラジカル禁止剤、および窒素系ラジカル禁止剤から選ばれる1種または2種以上添加されることが好ましい。
【0048】
本発明で使用する樹脂組成物の混合には、樹脂混練法、溶媒混合法等の公知の樹脂混合方法を広く使用できる。樹脂混練法を例示すると、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、V 型ブレンダー等によりドライブレンドで混合した後、1軸若しくは2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。また、溶媒混合法を例示すると、樹脂組成物に含まれる原料樹脂の共通溶媒に各樹脂を溶解した後、溶媒を蒸発させたり、共通の貧溶媒に添加して析出した混合物を回収する方法等がある。
【0049】
溶融混合により混練する場合は、必要に応じていずれか一つもしくは複数の樹脂内に白色無機粒子を予め混合したマスターバッチを用意し、これらのマスターバッチを一部もしくは全部に使用して溶融混合してもよい。また、逆に予め樹脂成分のみを溶融混合したのち、無機粒子を添加して溶融混合してもよい。隠蔽性の観点から、白色無機粒子がポリエステル樹脂相にも分散していることが好ましく、ポリエステル樹脂に白色無機粒子を予め高濃度に混合したマスターバッチを用いた溶融混合がより好ましい。
【0050】
本発明に使用する樹脂組成物の形態は、直接用いても、及び/又はフィルムに加工して用いてもかまわない。フィルムに加工して用いる場合は、少なくとも前記樹脂組成物を単独で成形し、又は他の樹脂または樹脂組成物及び/又は接着剤と組み合わせて積層してなる樹脂フィルムを用いてもかまわない。単独成形する場合は、公知の製法を広く適用できる。具体的には、溶媒キャスト法、熱圧縮法、カレンダー法、Tダイスキャスト法、Tダイス1軸もしくは2軸延伸法、インフレーション法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また、単独成形したフィルム上に、フレーバー性、溶出物の流出防止等の目的から、他の樹脂または樹脂組成物よりなるフィルムを積層する場合も公知の積層方法が使用できる。具体的には、多層Tダイス法により成形時に積層する方法や、単独成形したフィルムに熱圧着もしくは接着剤を介して積層する方法などが挙げられる。単独成形したフィルムに熱圧着もしくは接着剤を介して積層する場合は、単独成形した前記フィルムの表面張力を増大して密着性を増強するため、コロナ放電処理やプラズマ処理などの公知のフィルム処理してもかまわない。
【0051】
また、接着剤には、特公昭60-12233号公報に開示されるポリエステル樹脂系の水系分散剤、特公昭63-13829号公報に開示されるエポキシ系接着剤、特開昭61-149341号公報に開示される各種官能基を有する重合体等公知の接着剤を広く使用できる。接着する層、本発明で用いる樹脂組成物層の主成分に応じて主成分樹脂に有効な接着剤を選択することが好ましい。さらに、本発明で用いるフィルムの上下層に、表面硬度付与や意匠性付与などの目的で、公知の人体に対して無毒な有機物層もしくは無機物層を積層してもよい。
【0052】
さらに、印刷性向上のために前記コロナ放電処理やプラズマ処理などの公知のフィルム処理してもかまわない。
【0053】
本発明で用いる金属板は、少なくとも前記樹脂組成物を、直接及び/又は加工してなるフィルムが表面を被覆した金属板である。金属板は特に限定するものではないが、ブリキ、薄錫めっき鋼板、電解クロム酸処鋼板(ティンフリースチール)、ニッケルめっき鋼板等の容器用鋼板や、アルミニウム等の金属容器に用いられる金属板が挙げられる。また、金属板への被覆も片面又は両面の何れであっても良い。また、本発明で用いる樹脂組成物を金属板へ被覆した際の被覆膜厚みは、特に制限するものではないが、1〜300μmであることが好ましい。1μm 未満では被膜の耐衝撃性が十分でない場合があり、300μm超では経済性が悪い。
【0054】
金属板への被覆には、公知の方法が使用できる。具体的には、(1) あらかじめ混練機により原料樹脂を溶融混練することで調製した本樹脂組成物をTダイス付の押出機でフィルム化し、これを金属板に熱圧着する方法(この場合、フィルムは無延伸でも、1方向若しくは2方向に延伸してあっても良い)、(2) Tダイスから出たフィルムを直接熱圧着する方法、が挙げられる。さらにフィルムを直接熱圧着する別の方法としては、(3) Tダイス付の押出機のホッパに本樹脂組成物の代わりに、本樹脂組成物の原料となる樹脂及び無機粒子を投入し、押出機内で本樹脂組成物に混練し、それを直接熱圧着する方法が挙げられる。更に、本発明で用いる樹脂組成物は、被覆後の膜内部に結晶化度を傾斜させなくても十分な耐衝撃性を発現できる。従って、(4) 樹脂組成物を溶融してバーコーターやロールでコーティングする方法、(5) 溶融した樹脂組成物に金属板を漬ける方法、(6) 樹脂組成物を溶媒に溶解してスピンコートする方法、(7) 接着剤等により金属板に被覆することも可能であり、被覆方法は特に限定されるものではない。
【0055】
金属板への被覆方法として作業能率から最も好ましいのは、上記(1)、(2)及び(3)の方法である。(2)の方法を使用して被覆する場合は、フィルム厚みは上記と同様の理由により、1〜300μmであることが好ましい。さらに、膜の表面粗度は、フィルム表面粗度を任意に1mm長測定した結果が、Rmaxで500nm以下であることが好ましい。 Rmaxが500nm超では、熱圧着で被覆する際に気泡を巻き込む場合がある。また、前記樹脂組成物の高い衝撃性のため、延伸をすることなく使用しても高い衝撃性を発揮する。そのため、延伸することなく容器用金属被覆材料として使用可能であり、省工程化が可能である。また、無延伸で容器用金属被覆材料として使用する場合には、温度、通板速度などの制御で薄膜内の結晶化度を制御する必要が無いため、プロセスウィンドウの拡大、高速製造が可能となる。さらに、製膜時、被覆時の結晶化度を制御するための成形温度制御が容易であるため、性能の安定した容器製品の製造が可能となる。
【0056】
また、前記樹脂組成物を、直接及び/又は加工してなるフィルムを金属板に被覆する際には、金属板の片面及び/又は両面に、少なくとも前記記樹脂組成物あるいは前記フィルムを用いて単一層状に又は多層状に積層して被覆することが必須である。この際に、1種類又は2種類以上の樹脂あるいはフィルムを用いて金属板の片面及び/又は両面に単一層状にあるいは多層状に積層しても良く、また、必要に応じて、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル樹脂および当該フィルムや、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂および当該フィルムや、6-ナイロン等のポリアミド樹脂および当該フィルムや、アイオノマー樹脂および当該フィルム等の他の公知の樹脂および当該フィルム、あるいは、結晶/非結晶ポリエステル樹脂組成物および当該フィルム、ポリエステル/アイオノマー樹脂組成物および当該フィルム、ポリエステル/ポリカーボネート樹脂組成物および当該フィルム等の公知の樹脂組成物および当該フィルムを、その下層及び/又は上層に積層して被覆しても良い。具体的な積層方法としては、上述の(1)、(2)及び(3)の方法を使用する場合、多層のTダイスを使用して本発明で用いる樹脂フィルムと他の樹脂フィルムや樹脂組成物フィルムとの多層膜を製造し、これを熱圧着する方法がある。また、上述の(4)〜(6)の方法を使用する場合、他の樹脂組成物を被覆した後に本発明で使用する樹脂組成物を被覆したり、逆に本発明で使用する樹脂組成物を被覆した後に他の樹脂組成物を被覆することにより、多層に積層することが可能である。
【0057】
本発明で使用する樹脂被覆金属板は、前記樹脂組成物を、直接及び/又は加工してなるフィルムが被覆された金属板であり、被覆は片面であっても両面であっても良い。金属板の厚みは特に制限するものではないが、0.01〜5mmであることが好ましい。0.01mm未満では強度が発現し難く、5mm超では加工が困難である。
【0058】
本発明の樹脂被覆金属容器は、前記樹脂被覆金属板からなる金属容器で公知の加工法により成形できる。具体的にはドローアイアニング成形、ストレッチドロー成形などが挙げられるが、前記樹脂被覆金属板を使用した樹脂被覆金属容器であればよく、成形法は例示した成形法に限定するものではない。なお、成形加工された前記容器は、公知の方法によって外表面に印刷層が付与されて製品とされる。
【0059】
本発明の樹脂被覆金属容器は、固有粘度0.3dl/g以上のポリエステル樹脂及び極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体を含む混合物に、極性を有する無機粒子を10〜50質量%添加した樹脂組成物を、直接及び/又はフィルムに加工してから、金属板に被覆した後、当該金属板を形成加工してなる樹脂被覆金属容器である。
【0060】
使用する樹脂組成物は、ポーリングの電気陰性度の差が0.45(eV)0.5以上の極性がある白色無機粒子を添加しているので、当該白色無機粒子成分とポリエステル樹脂のカルボニル基や末端の官能基などの極性ユニットやビニル重合体の極性ユニット間で共有結合や静電的な相互作用を及ぼすことができる。これ故、ポリエステル樹脂相とビニル共重合体相間の界面の接着力を増強したり、光散乱効果を高め、高い隠蔽性を発現することができる。さらに本効果は、無機粒子の極性、分散状態、ポリエステル樹脂の固有粘度を特定したり、ゴム状弾性体を特定の分散状態にして添加することにより顕著に発現させることができる。
【0061】
この結果、使用する樹脂組成物は、白色無機粒子を添加することによる隠蔽性と成形加工性といった背反する特性を高いレベルで有する。さらにポリエステル樹脂、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体からなる樹脂組成物が元来有する耐衝撃性、耐薬品性、成形性、耐熱性、腐食要因物質のガスバリヤ性、耐水性及び金属との密着性を損なうことはない。さらに使用する前記樹脂組成物を被覆した金属板は、良好な成形加工性、耐腐食性などの特性を兼備できる
本発明の樹脂被覆金属容器は、前記樹脂組成物を、直接及び/又はフィルムに加工してから、金属板の少なくとも片面に被覆した後、当該金属板を加工してなる金属容器であって、耐衝撃性、耐薬品性、成形加工性、耐熱性、腐食要因物質のガスバリヤ性、耐水性及び金属との密着性が良好で、特に、従来技術において課題であった、隠蔽性と成形加工性に優れ、多様かつ美麗な印刷等の意匠を施すことが可能である。従って、外観性、美粧性に優れ、極めて美麗で、食品保護効果の高い美粧金属容器を提供することができ、清涼飲料水や食品の容器として好適に使用することができる。
【0062】
【実施例】
次に、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
以下の実施例及び比較例において、ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)[ユニチカ(株)製SA-1346P、 MA-1344]、ポリブチレンテレフタレート(PBT)[ポリプラスチックス(株)製ジュラネックス2001] 、極性基を有するユニットを1質量%以上有するビニル重合体としてエチレン-メタクリル酸グリシジル共重合物[住友化学工業(株)製ボンドファースト2C]、エチレン-アクリル酸アルキル-メタクリル酸グリシジル共重合物[住友化学工業(株)製ボンドファースト7L]、エチレン系アイオノマー[三井デュポン(株)製ハイミラン1706]、ゴム状弾性体としてエチレン-プロピレンゴム(EPR)[JSR(株)製EP07P]、エチレン-ブテンゴム(EBM)[JSR(株)製EBM2041P]を使用した。また、溶融混練に際しては、フェノール系抗酸化剤[旭電化(株)製アデカスタブAO-60]を用いた。
【0064】
(実施例1〜10)
各樹脂と各種無機粒子とを表1に示す各組成比で、V型ブレンダーを使用してドライブレンドした。なお、フェノール系抗酸化剤AO-60は、いずれの場合も樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部を添加した。この混合物を2軸押出機で260℃で溶融混練し、各種白色無機粒子を含有する樹脂組成物ペレットを得た。なお、各無機粒子ポーリングの電気陰性度の差は、二酸化チタン:2.0(eV)0.5、硫酸バリウム:2.6(eV)0.5、シリカ:1.7(eV)0.5、アルミナ:2.0(eV)0.5であり、また、添加した各無機粒子の平均粒径は、二酸化チタン:0.4μm、硫酸バリウム:0.8μm、シリカ:0.5μm、アルミナ:0.6μmであった。
【0065】
本樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂中のビニル重合体及びゴム状弾性体の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、実施例1〜4のビニル重合体は、等価球換算径は1μm以下でポリエステル樹脂中に微細分散しており、また、実施例5〜10のゴム状弾性体樹脂は、何れもビニル重合体でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂の等価球換算径は1μm以下でポリエステル樹脂中に微細分散していた。また、いずれも添加した各種無機粒子数の20%以上がポリエステル樹脂とビニル重合体の界面に偏在していた。
【0066】
【表1】
Figure 0004754106
【0067】
本ペレットを使用して、押出しTダイスで15μm厚みのフィルムを得た(押出温度:280℃)。本フィルムの隠蔽性を下記に示す評価方法により、評価を行った。また、本フィルムを250℃に加熱した2.5m厚みのティンフリースチールの片面に張り合わせ、水冷により10秒以内に100℃以下まで急冷した。このようにして得られた常温の樹脂被覆金属板について、下記に示す評価方法により、密着性、成形加工性、耐レトルト性、常温耐衝撃性及び低温耐衝撃性の各項目の評価を行った。
【0068】
<隠蔽性>
上記の白色フィルム(厚さ15μm)について、マクベス社製透過濃度計TD932を使用し、透過ノズル径を3mmとし、入射光量と透過光量に基ずき、透過光濃度を測定して遮蔽性を評価した。評価は、◎:0.5以上、○:0.45〜0.5、△:0.4〜0.45、及び×:0.4以下とした。隠蔽性の結果を表2に示す。
【0069】
<密着性>
上記の白色フィルム被覆金属板を、フィルムのみにカッターナイフでクロスカット(5cm×5cm)を施し、クエン酸1.5質量%-食塩1.5質量%の水溶液(UCC液)に室温で24時間浸漬した後、フィルムの剥がれた幅(mm)(10サンプルの平均)で評価した。評価は、◎:0.0mm、○:0.0〜0.5mm、△:0.5〜2.0mm、及び×:2 .0mm超とした。密着試験の結果を表2に示す。
【0070】
<成形加工性>
上記の白色フィルム被覆金属板を、扱き率70%で扱き加工し、成形加工性を加工後のフィルム健全性、および鋼板との密着性により評価した。評価は、◎:フィルム剥離0.0mm、○:フィルム剥離1mm未満 、△:フィルム剥離2mm未満、及び×:加工中にフィルム破損とした。加工追従性試験の結果を表2に示す。
【0071】
<耐レトルト性>
上記の白色フィルム被覆金属板を、レトルト処理(水蒸気存在、加圧下、130℃、30分)し、フィルムの剥離状況、外観変化(凹凸、収縮、剥離等)を目視で確認した。評価は、◎:異常なし、○:若干の変化 、△:表面がかなり変化する、及び×:下地が露出とした。耐レトルト試験の結果を表2に示す。
【0072】
<常温耐衝撃性及び低温耐衝撃性>
本白色フィルム被覆金属板の耐衝撃性評価をデュポン式の落垂衝撃試験で行なった。30cmの高さから金属板に0.5kgの鉄球を落とした後、サンプルの凸状に膨らんだ側(r=8mm)が上面となるように金属板を底面にして、凸状部位の周囲に柔らかいゴム状の樹脂で壁を形成し、その中に1.0%食塩水を入れて、サンプルを陽極とし、凸状部位近傍に設置した白金を陰極として+6Vの電圧をかけた際のERV値(mA)を測定した。ERV値は以下の指標により評価した。また、樹脂被覆金属板を0℃の恒温槽に24時間入れた後、同様の耐衝撃性評価を行い、低温での耐衝撃性を評価した。評価は、◎:全サンプルが0.01mA未満、○:1〜3サンプルが0.01mA以上、△:3〜6サンプルが0.01mA以上、×:7サンプル以上が0.01mA以上、の基準で行なった。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
Figure 0004754106
【0074】
(比較例1〜5)
実施例1〜10と同様な方法にて、樹脂組成物を表3に示す各組成比で、V型ブレンダーを使用してドライブレンドした。なお、フェノール系抗酸化剤AO-60は、いずれの場合も樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部を添加した。この混合物を2軸押出機で260℃で溶融混練し、無機粒子として二酸化チタンを含有した樹脂組成物ペレットを得た。
【0075】
本樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂中のビニル重合体及びゴム状弾性体樹脂の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、比較例1、2のビニル重合体は、等価球換算径は1μm以下でポリエステル樹脂中に微細分散しており、また、比較例3〜5のゴム状弾性体樹脂は、何れもビニル重合体でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂の等価球換算径は1μm以下でポリエステル樹脂中に微細分散していた。
【0076】
【表3】
Figure 0004754106
【0077】
実施例1〜10と同様に、本ペレットを使用して押出しTダイスで15μm厚みのフィルムを得ようとしたが(押出温度:280℃)、比較例2および4は白色無機粒子を50質量%超添加しているため、安定的に製膜できなかった。安定製膜できた比較例1、3および5のフィルムについてのみ、隠蔽性を実施例1〜10に示す評価方法により、評価を行った。また、前記安定製膜できたフィルムについてのみ、250℃に加熱した2.5mm厚みのティンフリースチールの片面に張り合わせ、水冷により10秒以内に100℃以下まで急冷した。このようにして得られた常温の樹脂被覆金属板について、実施例1〜10と同様の評価方法により、密着性、形成加工性、耐レトルト性、常温耐衝撃性及び低温耐衝撃性の各項目の評価を行った。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
Figure 0004754106
【0079】
実施例1〜10および比較例1〜5の結果より明らかなように、ポリエステル樹脂および極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体、あるいは、ポリエステル樹脂、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体およびゴム状弾性体からなる混合物に、極性を有する白色無機粒子を特定量添加してなる樹脂組成物よりなるフィルムは、当該樹脂組成物が元来有している諸物性を保持しつつ高い隠蔽性を有していた。特に、一般のフィルムでの課題であった、隠蔽性確保のために無機粒子を添加することによる密着性、形成加工性等の低下は認められないことが解った。
【0080】
(実施例11、12および比較例6、7)
ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)[ユニチカ(株)製SA-1346P、MA-1344]、およびそれぞれに二酸化チタン(平均粒子径0.2〜0.3μm)を50%含有するマスターバッチポリエチレンテレフタレートをあらかじめ調製した。それぞれのポリエチレンテレフタレート、対応するそれぞれ二酸化チタンを50%含有するマスターバッチ、極性基を有するユニットを1質量% 以上有するビニル重合体としてハイミラン1706、ゴム状弾性体としてエチレン-ブテンゴム(EBM)を、表5に示す各組成比で、V型ブレンダーを使用してドライブレンドした。なお、フェノール系抗酸化剤AO-60は、いずれの場合も樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部を添加した。この混合物を2軸押出機で260℃で溶融混練して二酸化チタン粒子を含有(最終濃度20%)する樹脂組成物ペレット2種を得た。
【0081】
また、比較例として表5に示すように、前記ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)[ユニチカ(株)製SA-1346P、MA-1344]、およびそれぞれに二酸化チタン(平均粒子径0.2〜0.3μm)を50%含有するマスターバッチポリエチレンテレフタレートのみを用い、実施例11、12と同様に二酸化チタン粒子を含有(最終濃度20%)する樹脂組成物ペレット2種を得た。
【0082】
【表5】
Figure 0004754106
【0083】
実施例11、12に示す2種の樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂中のビニル重合体指摘及びゴム状弾性体樹脂の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、実施例1〜10と同様に何れもゴム状弾性体樹脂はビニル重合体でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂の等価球換算径は1μm以下でポリエステル樹脂中に微細分散していた。また、いずれも添加した各種無機粒子数の20%以上がポリエステル樹脂とビニル重合体の界面に偏在していた。
【0084】
実施例11、12のペレットおよび比較例6、7のペレットをそれぞれ使用して、押出しTダイスで15μm厚みの白色フィルムを得た(押出温度:280℃)。本フィルムの隠蔽性を実施例1〜10に示す評価方法により、評価を行った。また、本フィルムを250℃に加熱した2.5mm厚みのティンフリースチールの両面に張り合わせ、水冷により10秒以内に100℃以下まで急冷した。このようにして得られた常温の樹脂被覆金属板を、150mm径の円盤状に切り取り、絞りダイスとポンチを用いて4段階で深絞り加工し、55mm径の側面無継目容器(以下容器と略す)を各々10個作製した。
【0085】
これらの容器について、以下の観察及び試験を行い、各々下記の基準で評価した結果を表6に示す。
【0086】
<深絞り加工性>
深絞り加工性後の容器外面、内面のフィルムの外観変化(剥離、破断等)を目視で確認した。評価は、○:全10個について異常が認められない、△:1〜5個について変化が認められる 、×:6個以上について変化が認められる、とした。
【0087】
<耐レトルト性>
上記の樹脂被覆金属板を、定法によりレトルト処理し、容器外面、内面のフィルムの外観変化(凹凸、収縮、剥離等)を目視で確認した。評価は、○:全10個について異常が認められない、△:1〜5個について変化が認められる、×:6個以上について変化が認められる、とした。
【0088】
<耐衝撃性>
深絞り加工性後の容器に、蒸留水を満注し、各サンプルにつき10個ずつ高さ10cmから塩ビタイル床面に落とした後、容器内の前記ERV試験を行った。評価は、○:全10個について0.1mA以下であった、△:1〜5個について0.1mA超であった、×:6個以上について0.1mA超であった、とした。
【0089】
【表6】
Figure 0004754106
【0090】
実施例11、12と比較例6、7より、同じ酸化チタンを用い、濃度を同一にした場合、本発明で用いる白色フィルムの方が高い隠蔽性を示し、容器成形加工においても全く問題はなかった。さらに、本発明の容器は耐レトルト性、耐衝撃性を有した。さらに、実施例11、12の容器に、ウレタン樹脂を主たるバインダーとして使用されている有色インキを用いてグラビア印刷方法にて、アルファベットの”ABCDEFG”の文字の印刷を施し、印刷後、80℃/1分間の乾燥を行った結果、当該被覆フィルム上の文字、にじみは認められなかった。
【0091】
上記実施例1〜12および比較例1〜7で明らかなように、ポリエステル樹脂、ビニル重合体、ゴム状弾性体に、所定の極性を有する白色無機粒子を所定量添加することにより得られる樹脂組成物を被覆した金属容器は、ポリエステル樹脂とビニル重合体からなる樹脂組成物が元来有する形成加工性、耐衝撃性、金属との密着性等の優れた物理特性を損なうことなく、高い隠蔽性、印刷性を有することが解った。
【0092】
【発明の効果】
本発明の樹脂被覆金属容器は、極性を有する白色無機粒子を特定の分散状態としているので、当該白色無機粒子成分とポリエステル樹脂のカルボニル基や末端の官能基などの極性ユニットやビニル重合体の極性ユニット間で共有結合や静電的な相互作用を及ぼすため、ポリエステル樹脂相とビニル共重合体相間の界面の接着力を増強し、また高い隠蔽効果を有する。
【0093】
さらにポリエステル樹脂、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体が元来有する耐衝撃性、耐薬品性、成形性、耐熱性、腐食要因物質のガスバリヤ性、耐水性及び金属との密着性を損なうことはない。
【0094】
従って、本発明の樹脂被覆金属容器は、耐衝撃性、耐薬品性、成形性、耐熱性、腐食要因物質のガスバリヤ性、耐水性及び金属との密着性が良好で、特に、隠蔽性、成形加工性にすぐれ、多様かつ美麗な意匠を付与することが可能となる。従って、外観性、美粧性に優れ、極めて美麗で、食品保護効果の高い美粧金属容器を提供することができ、清涼飲料水や食品の容器として好適に使用することができる。

Claims (2)

  1. 固有粘度0.3dl/g以上であり重合触媒の残渣としての金属化合物が50ppm以下であるポリエステル樹脂及び極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体を含む混合物に、ポーリング電気陰性度の差が1.0(eV)0.5以上ある元素同士が結合した極性基を有しその平均粒径が0.2〜0.5μmの粒状で分散している白色無機粒子10〜50質量%を含有し他の無機物の含有量が白色無機粒子に対して質量比で10%以下である樹脂組成物を、直接及び/又はフィルムに加工してから、金属板の少なくとも片面に1〜300μmの厚さで被覆した後、当該金属板を成形加工してなる樹脂被覆金属容器であって、前記ポリエステル樹脂と前記ビニル重合体の界面に偏在する前記無機粒子数が全無機粒子の20%以上、及び/又は、前記無機粒子が偏在する前記ポリエステル樹脂と前記ビニル重合体の界面層数が全界面層数の20%以上であることを特徴とする樹脂被覆金属容器。
  2. 前記樹脂組成物が、ゴム状弾性体樹脂を前記ビニル重合体の一部又は全部の相に内包する請求項1記載の樹脂被覆金属容器。
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