JP4422296B2 - 樹脂組成物、これを用いた樹脂フィルム、樹脂被覆金属板並びに樹脂被覆金属容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂組成物、特に耐衝撃性、耐薬品性、成形性、耐熱性、ガスバリヤ性及び金属との密着性が良好で、樹脂の耐分解性が高く、樹脂成分の焼け起因のゲル化物や樹脂からの有機物の溶出物が少なく、フレーバー性に特に優れる樹脂組成物に関する。更に、本発明は、かかる樹脂組成物を使用した樹脂フィルム、該樹脂フィルムを金属板の片面又は両面に単一層状に又は多層状に積層成形又は塗布して被覆した樹脂被覆金属板、及び、該樹脂被覆金属板を成形してなる樹脂被覆金属容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性、ガスバリア性及び金属との密着性に優れており、構造材、筐体などの樹脂成形体に使用され、また腐食防止を目的とした金属板の被覆用の材料として使用されている。しかし、耐衝撃性や樹脂と金属との密着性、ガスバリア性といった性質はポリエステル樹脂の結晶化度に強く依存しているため、樹脂の結晶構造を厳密に制御しなければ目標の特性が得られない。具体的には樹脂の金属と接触する部位では密着性を良好にするために結晶化度を小さくし、その他の部位においては、逆に耐衝撃性やガスバリア性を確保するために結晶化度を大きくしなければならず、密着性と耐衝撃性やガスバリア性とを同時に満たすためには樹脂の結晶化度を適切に傾斜させる必要があった。この結果、温度制御等の製造条件が厳しく制約されていた。
【0003】
金属板の被覆用の材料として樹脂を使用する場合には、樹脂と金属との密着性や耐衝撃性、ガスバリア性が重要であるが、これらを向上させる手法として、特開平3-269074号公報には、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂からなる樹脂組成物とをラミネートする方法が開示されている。当該方法では、ラミネート工程中で界面の結晶化度を容易に低下できるため密着性が向上する反面、ガスバリア性及び耐衝撃性が低下し、これら両特性を発現させるためには、2軸延伸膜を使用して結晶化を積極的に残留させる等の工程上の制約があった。
【0004】
しかし、特開平7-195617号公報や特開平7-290644号公報において開示されるように、ポリエステル樹脂とアイオノマー樹脂との組成物を使用することで、機械的性質、電気的性質、耐熱性、ガスバリア性及び金属との密着性が改善され、さらにはWO99/27026において開示されるように、前記のポリエステル樹脂とアイオノマーのような極性基を有するビニル重合体との樹脂組成物に対してさらにゴム弾性体樹脂を添加し、ポリエステル樹脂にゴム弾性体樹脂を微細分散し、極性基を有するビニル重合体により弾性体樹脂をカプセル化するという技術が開発され、よりいっそうの諸特性の改善が図られ、前記の諸般の課題はほぼ解決することができた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者らが上記のポリエステル樹脂とアイオノマーのような極性基を有するビニル重合体との樹脂組成物についてさらに検討したところ、これらの樹脂組成物では、有機低分子物質が発生し、耐衝撃性などが低下する問題を有し、特に当該樹脂を使用した容器を、飲料、食品用途に使用した場合、内容物に臭気が発生し、内容物の風味が低下する場合があった。さらに樹脂成分の焼けに起因するゲル化物が樹脂組成物内に残留し、フィルム成形した場合にフィシュアイの原因となり、フィルム時の破断や容器に使用した場合には製缶不良や金属腐食の原因となることがあった。
【0006】
一般に樹脂からの有機低分子量物質の発生原因としては、樹脂中に残留する原料や、重合度の低い低分子成分や、樹脂製造時や製缶時に生じた分解生成物の容器の内容物への溶出が考えられる。また、樹脂に残留するゲル状異物は、混練時や加工時で生成する熱劣化物が原因であると考えられる。
【0007】
樹脂の分解に起因する有機低分子成分の溶出やゲル状異物の抑制法としては、一般的に樹脂の製造や成形などの各工程を樹脂の分解温度以下で行う方法が有効であるが、上記の樹脂組成物の混練、成型などの各工程の温度をポリエステル樹脂、アイオノマーのような極性基を有するビニル重合体、及びゴム弾性体樹脂の各樹脂の分解温度以下に設定しても、有機低分子物質の発生はなくならなかった。従って、上記の樹脂組成物の混練、成型などの各工程における有機低分子物質やゲル状異物の発生は、成分樹脂の単純な熱分解が原因ではないと考えられる。
【0008】
また酸素が樹脂の分解を促進する場合には、不活性ガス雰囲気下での樹脂の製造、成型を行うことが有効な場合もあるが、不活性ガスの導入装置などが必要であり、簡便な方法とは言いがたく、さらに樹脂の分解が酸素以外に起因する場合には不活性ガス雰囲気を利用する方法は効果がない。
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題に鑑み、耐衝撃性、耐薬品性、成形性、耐熱性、ガスバリヤ性及び金属との密着性が良好で、しかも、樹脂の分解や樹脂中に混入するゲル状異物、樹脂からの有機物の溶出物が少なく、樹脂均一性やフレーバー性に特に優れた樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
また、本発明は、かかる樹脂組成物を使用した樹脂フィルムを提供し、また、該樹脂フィルムを積層した樹脂被膜により被覆された樹脂被覆金属板を提供し、更に該樹脂被覆金属板を成形してなる樹脂被覆金属容器を提供するも目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討し、以下の知見を得、本発明を完成した。即ち、ポリエステル樹脂(A) 、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV)0.5以上ある元素間の結合を含む極性基を有するビニル重合体(B) 及びポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体樹脂(C)からなる樹脂組成物から有機低分子量物質やゲル状異物が発生することがある。特に、(A) 、(B) 及び(C) を含む樹脂組成物を容器あるいは樹脂被覆金属容器に使用すると、これらの容器から有機低分子量物質が内容物に溶出し、臭気原因となってフレーバー性が低下したり、被覆した樹脂フィルム内にゲル状異物を起点とした欠陥が生じ、耐腐食性が劣化する場合があった。しかし、ポリエステル樹脂(A) 、ビニル重合体(B) もしくはゴム状弾性体樹脂(C) をそれぞれ単独で同じ条件で(温度、時間、連続性)溶融混練しても、有機低分子物質やゲル状異物は発生せず、臭気が発生することもない。
【0011】
上記の如く、元来、有機低分子物質やゲル状異物の発生自体はポリエステル樹脂(A) 、ビニル重合体(B) もしくはゴム状弾性体樹脂(C) の各樹脂単独の熱分解温度以上でも条件によっては起きうるものである。しかし、本発明者らは、単独で同一条件下で溶融混合しても有機低分子物質やゲル状異物が発生しないことから、一般的に知られている各樹脂の熱分解とは異なるもので、これらの樹脂を複合した際の固有の問題であることを確認した。さらに詳細検討した結果、有機低分子量物質の発生はポリエステル樹脂(A) 及びビニル重合体(B) の相互作用によるものであること、さらには、有機低分子量物質の溶出物を精査した結果、主成分はビニル重合体(B) がラジカル反応により分解した有機物質であり、またポリエステル樹脂(A) 中にはポリエステル製造触媒の残留物であるゲルマニウム、アンチモン、チタン等の金属化合物が1ppmから500ppm程度残留している場合があり、ポリエステル樹脂(A) 中にそのような金属化合物が残留している場合に、ビニル重合体(B) の分解が引き起こされるものであることを見出した。即ち、極性基を有するビニル重合体(B) は、通常熱的にも安定とされており、分解は問題にならないが、上記のような電子移動に関与する金属化合物を含有するポリエステル樹脂と混合して加熱すると、ビニル重合体の極性基の近傍にラジカルが生じ、ビニル重合体主鎖の切断により樹脂が分解し、臭気原因となる有機物質が発生することか明らかになった。さらにゲル状異物の発生原因を混練機を解体して解析した結果、ゲル状異物はバレル内で流動停止する部位(挿入熱電対の上流側など)で発生していることを発見した。また、ゲル状異物組成、構造を解析した結果、ビニル重合体(B) やゴム状弾性体(C)の熱劣化物であることが判明した。すなわち、ゲル状異物は、バレル内の流動停止部位にビニル重合体(B) やゴム状弾性体(C)が付着滞留して経時的に熱劣化した樹脂が混練樹脂に混入して発生したことが明らかになった。さらに、単独で混練した場合はゲル状異物が発生していないことから、樹脂組成物(I) にした場合にこれらの付着・滞留が起こると考えられる。
【0012】
本発明者らは、さらに検討を進め、このようなビニル重合体(B) のラジカル分解防止し、有機物の溶出を抑制するには、ある種のラジカル禁止剤すなわちラジカル捕捉能を有する化合物及びラジカル前駆体を分解する能力を有する化合物を適切な量だけ添加することによって、ポリエステル樹脂(A) 及びビニル重合体(B) からなる樹脂組成物の耐衝撃性、金属との密着性等の優れた物理特性を損なうことなく、ポリエステル樹脂(A) 中に残留する金属化合物によるビニル重合体(B) のラジカル分解を抑制することが可能であることを見出した。
さらに、ゲル状異物の抑制には樹脂の滞留時間が長いためこれらの分解抑制剤添加だけでは不十分で、流動停止部での樹脂付着・滞留自体を抑制することが必要であることが判明した。樹脂付着・滞留防止の一般的手法としては、低分子量の離型剤の添加やアクリル系の加工助剤を添加してバレルやスクリューへの付着を防止する技術が公知である。しかし、本系にこれらの手法を適用しても、低分子離型剤が金属被覆膜表面に移行して加工邑を形成したり、加熱混合中に加工助剤が分解して逆にゲル状異物の発生が増加するなどの欠陥があった。本発明者らはさらに検討を重ねて以下の事象を見いだし、本発明に至った。すなわち、樹脂組成物(I) の溶融張力とバレルやスクリューへ付着・滞留したビニル重合体(B) もしくはゴム状弾性体(C) の量とに相関がある。樹脂組成物(I) の溶融張力を増大することで当該部への樹脂付着・滞留の抑制が可能である。溶融張力の増大には、必要量のポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加して樹脂組成物(I )中にフッ素系樹脂をミクロフィブリル状に分散させることが有効である。ポリテトラフルオロエチレン含有粉体であれば加熱混練中に分解したり、加工邑を生じたりしない。
【0013】
本発明は、ポリエステル樹脂(A);
ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体(B);
加熱混合したときに、ポリエステル樹脂(A)中に微細分散され、かつ、ポリエステル樹脂(A)との界面の80%以上がビニル重合体(B)で被覆されてカプセル化された構造を形成する、ポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体樹脂(C);
ラジカル禁止剤;及び
粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a)とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m 3 ) 1/2 以下であり圧搾粉砕した有機系重合体粒子(b)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体;
を含有してなり、ポリエステル樹脂(A)、ビニル重合体(B)、及びゴム状弾性体樹脂(C)を含有する樹脂組成物(I) 100質量部に対して、前記ラジカル禁止剤を0.001〜7質量部、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体を0.001〜7質量部を含有することを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。
【0014】
この樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の添加量は、樹脂組成物(I)100質量部に対して0.005〜1質量部であることが好ましい。さらには、有機系重合体粒子(b)は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を1質量%以上含有する重合体もしくはポリエステル樹脂であることが望ましい。
【0016】
さらに、本発明は、上記のような樹脂組成物を、単独で成形し、又は他の樹脂組成物及び/ 又は接着剤と組み合わせて積層成形もしくは塗布してなる樹脂フィルムをも提供する。さらに、本発明は、上記のような樹脂フィルムを、金属板の片面及び/ 又は両面に、単一層状に又は他の樹脂組成物及び/又は接着剤と組み合せて多層状に積層して、被覆してなる樹脂被覆金属板をも提供する。
【0017】
さらに、本発明は、上記のような樹脂被覆金属板を成形してなる樹脂被覆金属容器を提供する。
さらに、本発明は、ポリエステル製造触媒の残留物である金属化合物を含むポリエステル樹脂(A) 、及びポーリングの電気陰性度差が0.39(eV)0.5以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1質量% 以上含有するビニル重合体(B)、及びポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体樹脂(C)を含有する樹脂組成物(I) を混合する工程において、ポリエステル樹脂(A)、ビニル重合体(B)、又はゴム状弾性体樹脂(C)のいずれか1種以上に予めラジカル禁止剤、および粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a) とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m3)1/2以下であり圧搾粉砕した有機系重合体粒子(b)とからなるポリテロらフルオロエチレン含有粉体を添加する工程をさらに有し、前記樹脂組成物(I) 100 質量部に対して添加するラジカル禁止剤を0.001 〜7 質量部とし、添加するポリテトラフルオロエチレン含有粉体を0.001 〜7 質量部として、前記混合工程における樹脂組成物(I)の分解およびゲル状異物発生を防止する製造方法も提供する。この方法の混合工程ではポリテトラフルオロエチレン含有粉体は、粒子径が10μm以下のポリテトラフルオロエチレン(a) と有機系重合体(b) との混合体で樹脂組成物(I)100質量部に対して0.005 〜1 質量部添加することが望ましい。さらに好ましくは有機系重合体(b) がエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を1質量%以上含有する単量体もしくはポリエステル樹脂であることが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体を加えた樹脂組成物、及びこれを用いた樹脂フィルム、樹脂被覆金属板並びに樹脂被覆金属容器について説明する。
(1)はじめに
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A) 、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV)0.5以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1質量% 以上含有するビニル重合体(B) 、ポリエステル樹脂(A) 中に微細分散され、かつ、ポリエステル樹脂(A)との界面の80%以上がビニル重合体(B) で被覆されてカプセル化された構造を有するポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体樹脂(C)、ラジカル禁止剤、及び粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a) とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m3)1/2以下である有機系重合体粒子(b)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体を含有することを必須とする。本発明の樹脂組成物において、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1 質量% 以上含有するビニル重合体(B) 及びポリエステル樹脂(A) 中に微細分散され、かつ、ポリエステル樹脂(A)との界面の80%以上がビニル重合体(B) でカプセル化された構造を有するポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体樹脂(C)をポリエステル樹脂(A) に混合するのは、ポリエステル樹脂(A) に耐衝撃性を付与するためである。そして、ポリエステル樹脂(A) とポーリングの電気陰性度差が0.39(eV)0.5以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1 質量% 以上含有するビニル重合体(B) を含む樹脂組成物では、前述のように、ポリエステル樹脂(A) に含まれる場合がある金属化合物が原因となってビニル重合体(B) の分解による低分子量物質の発生を防止するためにラジカル禁止剤を添加するものである。さらに前述のように樹脂の混練・成形装置内での樹脂滞留を防止し、ゲル状の熱劣化樹脂異物の発生を抑制するために、粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a) とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m3)1/2以下である有機系重合体粒子(b)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加するものである。
【0019】
これら樹脂の組成は、特に限定するものではないが、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、ビニル重合体(B) を1 〜50質量部含むことが好ましい。ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してビニル重合体(B)が1 質量部未満では耐衝撃性が低下する場合があり、50質量部超では耐熱性が低下する場合がある。さらに本発明ではこの樹脂組成物(I)100質量部に対しラジカル禁止剤を0.001 〜7 質量部、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体を0.001 〜7 質量部添加する。ポリエステル樹脂(A) とビニル重合体(B) を含む樹脂組成物(I) に対して、ラジカル禁止剤が0.001 質量部未満では、ポリエステル樹脂(A) 中に微量に含まれる金属化合物とビニル重合体(B) との反応による低分子量物質の発生を有効に抑制することができず、ラジカル禁止剤が7 質量部を越えて存在しても実質的に溶出量の削減効果が飽和し不経済であり、さらに樹脂特性が低下するなどの問題が生ずる。また、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が0.001 質量部未満では樹脂組成物(I) の溶融張力を十分に増加できず、ゲル状異物を削減できない。さらにポリテトラフルオロエチレン含有粉体が7質量部超添加した場合は、ポリテトラフルオロエチレンが表面に多量に移行し、金属板との密着性が低下したり、フィルム加工した場合にフィルム内のビニル重合体(B)の分散性が変化し、不均一性が増加することがある。
【0020】
(2)ポリエステル原料
本発明に使用するポリエステル樹脂(A) とは、ヒドロキシカルボン酸化合物残基のみを、また、ジカルボン酸残基及びジオール化合物残基を、あるいは、ヒドロキシカルボン酸化合物残基とジカルボン酸残基及びジオール化合物残基とをそれぞれ構成ユニットとする熱可塑性ポリエステルである。また、これらの混合物であっても良い。
【0021】
ヒドロキシカルボン酸化合物残基の原料となるヒドロキシカルボン酸化合物を例示すると、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシエチル安息香酸、2-(4- ヒドロキシフェニル)-2-(4'-カルボキシフェニル) プロパン等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2 種類以上を混合して使用しても良い。
また、ジカルボン酸残基を形成するジカルボン酸化合物を例示すると、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びアジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2 種類以上を混合して使用しても良い。
【0022】
次に、ジオール残基を形成するジオール化合物を例示すると、2,2-ビス(4- ヒドロキシフェニル) プロパン( 以下、「ビスフェノールA 」と略称する) 、ビス (4-ヒドロキシフェニル) メタン、ビス(2- ヒドロキシフェニル) メタン、o-ヒドロキシフェニル-p- ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル )エーテル、ビス(4- ヒドロキシフェニル) スルホン、ビス(4- ヒドロキシフェニル) スルフィド、ビス(4- ヒドロキシフェニル) スルフォン、ビス(4- ヒドロキシフェニル) ケトン、ビス(4- ヒドロキシフェニル) ジフェニルメタン、ビス (4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ビス(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル) メタン、ビス(3- メチル-4- ヒドロキシフェニル) メタン、ビス(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル) エーテル、ビス(3,5- ジメチル -4-ヒドロキシフェニル) スルホン、ビス(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル) スルフィド、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル) エタン、1,1-ビス(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル) エタン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル) シクロヘキサン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4- ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4- ヒドロキシフェニル) フェニルメタン、2,2-ビス(4- ヒドロキシフェニル) ブタン、2,2-ビス(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(3,5- ジクロロ-4- ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(3,5- ジブロモ-4- ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(3- メチル-4- ヒドロキシフェニル) プロパン、 2,2- ビス(3- クロロ-4- ヒドロキシフェニル) プロパン、2,2-ビス(3- ブロモ-4 -ヒドロキシフェニル) プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2- ビス(4- ヒドロキシフェニル) プロパン、4,4'- ビフェノール、3,3',5,5'-テトラメチル -4,4'- ジヒドロキシビフェニル、4,4'- ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール及びエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水添ビスフェノールA 等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等が挙げられ、これらは単独で使用することも、また、2 種類以上を混合して使用することもできる。
【0023】
また、これらから得られるポリエステル樹脂を単独で使用しても、2 種類以上混合して使用しても良い。本発明に使用するポリエステル樹脂(A) は、これらの化合物又はその組み合わせにより構成されていれば良いが、中でも芳香族ジカルボン酸残基とジオール残基より構成される含芳香族ポリエステル樹脂であることが、加工性、熱的安定性の観点から好ましい。
【0024】
また、本発明に使用するポリエステル樹脂(A) は、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される構成単位を少量、例えば2 モル% 以下の量を含んでいても良い。
耐熱性や加工性の面から、これらのジカルボン酸化合物、ジオール化合物の組み合わせの中で最も好ましい組み合わせは、テレフタル酸50〜95モル% 、イソフタル酸及び/ 又はオルソフタル酸50〜5 モル% のジカルボン酸化合物と、炭素数 2〜5 のグリコールのジオール化合物との組み合わせである。
【0025】
本発明に使用する好ましいポリエステル樹脂(A) を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6- ナフタレート、ポリブチレン-2,6- ナフタレート等が挙げられるが、中でも適度の機械特性、ガスバリア性、及び金属密着性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6- ナフタレート、ポリブチレン-2,6- ナフタレートが最も好ましい。
【0026】
なお、本発明の樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂は、特にポリエステル製造触媒の残留物などであるゲルマニウム、アンチモン、チタン等の金属化合物を含むものである。このような金属化合物を含まないポリエステル樹脂は、通常の混練、成形工程の条件下、より特定的にはビニル重合体(B)の分解温度より低い温度条件下では、ビニル重合体(B)の分解を引き起こさない。本発明の樹脂組成物に用いるポリエステル樹脂中の金属化合物の含有量は、特に限定されないが、一般的には、重合触媒のと残渣としての金属化合物が1ppmから500ppm程度、さらには1000ppm 程度まで残留している場合があり、本発明はそのような場合を対象としている。
【0027】
(3)ポリエステル樹脂の物性
本発明に使用するポリエステル樹脂(A) は、通常0.3 〜2.0dl/g 、より好ましくは0.40〜1.7dl/g 、さらに好ましくは0.50〜1.5dl/g の固有粘度を有することが好ましい。固有粘度が0.3dl/g 未満の場合は、極性モノマー含有ビニル重合体 (B)と均一に混合しないため機械強度や耐衝撃性が低く、一方、固有粘度が2.0d l/gを越える場合には成形性が不良となり、何れも好ましくない。
【0028】
上記固有粘度は、25℃のo-クロロフェノール中、0.5%の濃度で測定し、下記(i )式によって求められる。式中、C は溶液100ml 当たりの樹脂のg 数で表わした濃度を、 to は溶媒の流下時間を、t は溶液の流下時間を各々表す。
固有粘度= {ln(t/to }/C (i)
本発明に使用するポリエステル樹脂(A) は、ガラス転移温度(Tg 、サンプル量約10mg、昇温速度10℃/ 分の示差型熱分析装置(DSC) で測定) が、通常50〜120 ℃、より好ましくは60〜100 ℃であることが望ましい。
【0029】
このポリエステル樹脂(A) は、非晶性であっても結晶性であっても良く、結晶性である場合には、結晶融解温度(Tm)が、通常210 〜265 ℃、好ましくは210 〜 245℃であり、低温結晶化温度(Tc)が、通常110 〜220 ℃、好ましくは120 〜21 5℃であることが望ましい。Tmが210 ℃未満であったり、Tcが110 ℃未満の場合は、耐熱性が不充分で絞り加工時にフィルム形状を保持できない場合がある。また、Tmが265 ℃超であったり、Tcが220 ℃超の場合は、金属板の表面凹凸に充分樹脂が入り込めず、密着不良となる場合がある。
【0030】
(4)ビニル重合体(B)の極性基
本発明に使用するポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1 質量% 以上含有するビニル重合体(B)において、極性基を有するユニットが1 質量% 未満では、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0031】
ポーリングの電気陰性度の差が0.39(eV)0.5 以上ある元素が結合した基を具体的に例示すると、-C-O- 、-C=O、-COO- 、エポキシ基、C2O3、C2O2N-、-CN 、-NH2、-NH-、-X(X;F, Cl, Br) 、-SO3- 、等が挙げられる。また極性基として金属イオンで中和された酸根イオンを有していてもよい。この場合、金属イオンの例としてはNa+ 、K + 、 Li + 、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Pb2+、Cu2+、Mn2+,Ti3+, Zr3+, Sc3+等の1 価、2 価または3 価の金属陽イオンが挙げられる。
【0032】
(5)極性基を有するユニットの例
ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユットを例示すると、-C-O- 基を有する例としてビニルアルコール、-C=O基を有する例としてビニルクロロメチルケトン、-COO- 基を有する例としてアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル酸及びその金属塩若しくはエステル誘導体、エポキシ基を有する例としてはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタクリル酸グリシジル等のα, β- 不飽和酸のグリシジルエステル、C2 O3 基を有する例として無水マレイン酸、C2 O2 N-基を有する例として無水マレイン酸のイミド誘導体、-CN 基を有する例としてアクリロニトリル、-NH2 基を有する例としてアクリルアミン、-NH-基を有する例としてアクリルアミド、-X(X:F, Cl, Br) 基を有する例として塩化ビニル、-SO3 - 基を有する例としてスチレンスルホン酸、等が挙げられ、またこれらの酸性官能基の全部または一部が上記の金属イオンで中和された化合物が挙げられ、これらが単独でまたは複数でビニル重合体(B) に含有されていても良い。ビニル重合体(B) に含有される極性基を有するユニットは、ポーリングの電気陰性度の差が0.39(eV)0.5 以上ある元素が結合した基を有するユニットであれば良く、上記の具体例に限定されるものではない。
【0033】
(6)ビニル重合体(B)
本発明に使用するビニル重合体(B) は、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体であり、そのようなビニル重合体を例示すると、上記の極性基含有ビニル系ユニットの単独若しくは2 種類以上の重合体、及び上記極性基含有ビニル系ユニットと下記一般式(ii)で示される無極性ビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0034】
CHR1 =CR2 R 3 (ii)
(式中、R1 、R3 は各々独立に炭素数1 〜12のアルキル基若しくは水素を、R2 は炭素数1 〜12のアルキル基、フェニル基若しくは水素を示す。)
一般式(ii)の無極性ビニルモノマーを具体的に示すと、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等のα- オレフィン、イソブテン、イソブチレン等の脂肪族ビニルモノマー、スチレンモノマーの他にo-、m-、p-メチルスチレン、o-、m-、p- エチルスチレン、t-ブチルスチレン等のアルキル化スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマーの付加重合体単位等の芳香族ビニルモノマー等が挙げられる。
【0035】
ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基含有ユニットの単独重合体を例示すると、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。また、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基含有ユニットと無極性ビニルモノマーとの共重合体を例示すると、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びこれらの共重合体中の酸性官能基の一部若しくは全部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン- グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、ブテン-エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等及びそれらの酸性官能基のすべて、または一部が金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂類が挙げられる。
【0036】
アイオノマー樹脂としては、公知のアイオノマー樹脂を広く使用することができる。具体的には、ビニルモノマーとα, β- 不飽和カルボン酸との共重合体で共重合体中のカルボン酸の一部若しくは全部を金属陽イオンにより中和したものである。
ビニルモノマーを例示すると、上記のα- オレフィンやスチレン系モノマー等であり、α, β- 不飽和カルボン酸を例示すると炭素数3 〜8 のα, β- 不飽和カルボン酸でより具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル等が挙げられる。
【0037】
中和する金属陽イオンを例示すると、Na+ 、K + 、Li+ 、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Pb2+、Cu2+、Mn2+,Ti3+, Zr3+, Sc3+等の1 価、2 価または3 価の金属陽イオンが挙げられる。また、金属陽イオンで中和されていない残余の酸性官能基の一部は低級アルコールでエステル化されていても良い。
アイオノマー樹脂を具体的に例示すると、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸との共重合体、あるいはエチレンとマレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸との共重合体であって、共重合体中のカルボキシル基の一部若しくは全部がナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属イオンで中和された樹脂が挙げられる。
【0038】
これらの中で、耐衝撃性向上能が高く、ポリエステル樹脂(A) とゴム状弾性樹脂体(C) との相溶性を改善する目的で最も好ましいのが、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸の共重合体( カルボキシル基を有する構成単位が2 〜15モル%)で、重合体中のカルボキシル基の30〜70% がNa、Zn等の金属陽イオンで中和されている樹脂である。
【0039】
耐衝撃性を向上する性能が高い点で、ガラス転移温度(Tg、サンプル量約10mg、昇温速度10℃/ 分の示差熱型分析装置(DSC) で測定) が50℃以下、室温でのヤング率が1000MPa 以下、及び破断伸びが50%以上であるビニル重合体(B) が好ましい。
本発明で使用する好ましいビニル重合体(B) を例示すると、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらの酸性官能基の一部もしくは全部が金属イオンで中和された極性オレフィン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、無水マレイン酸、酢酸ビニルとα- オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0040】
特に耐衝撃性が高い点でさらに好ましくはエチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの共重合体中の酸性官能基の一部もしくは全部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−一酸化炭素−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−一酸化炭素−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−無水マレンイ酸共重合体、ブテン−エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ブテン−エチレン−グリシジルアクリレート共重合体が挙げられる。
【0041】
(7)ビニル重合体(B)の物性
バリア性確保の観点から、α- オレフィンとポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットとの共重合体が、好ましい組み合わせである。なお、本発明に使用するビニル重合体(B)は、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1 質量% 以上含有するビニル重合体であれば良く、上記の具体例に限定されるものではない。
【0042】
また、ビニル重合体(B) の分子量は特に限定するものではないが、数平均分子量で2000以上500000以下が好ましい。2000未満や500000超では、耐衝撃性が低下する場合がある。
(8)第三樹脂成分(本発明の三元系樹脂組成物)
本発明樹脂組成物では、ポリエステル樹脂(A) 及び極性を有するビニル重合体(B)以外に、耐衝撃性を向上させるために、あるいはその他の目的のために、ラジカル禁止剤の働きを阻害しないような第3 成分の樹脂を加えるが、特に耐衝撃性を向上させるために、ゴム状弾性体樹脂(C) を添加して三元系樹脂組成物を構成する。
【0043】
(9)ゴム状弾性体(C)
本発明に使用するゴム状弾性体樹脂(C) は、公知のゴム状弾性体樹脂を広く使用できる。
中でも、ゴム弾性発現部のガラス転移温度(Tg 、サンプル量約10mg、昇温速度 10 ℃/ 分の示差型熱分析装置(DSC) で測定) が50℃以下、室温でのヤング率が10 00MPa以下、及び破断伸びが50% 以上であるゴム状弾性体樹脂が好ましい。ゴム弾性発現部のTgが50℃超、室温でのヤング率が1000MPa 超、及び破断伸びが50% 未満では、十分な耐衝撃性を発現できない。
【0044】
低温での耐衝撃性を確保するためには、Tgが10℃以下、より望ましくは-30 ℃以下であることが好ましい。また、より確実な耐衝撃性を確保するためには、室温でのヤング率は100MPa以下、より望ましくは10MPa 以下であることが、破断伸びは100%以上、より望ましくは300%以上であることが、好ましい。
(10)ゴム状弾性体(C) の例示
【0045】
本発明に使用するポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体(C)は、下記一般式(iii)
-R1 CH-CR2 R3 - (iii)
(式中、R1 とR3 は各々独立に炭素数1 〜12のアルキル基又は水素を示し、R2 は炭素数1 〜12のアルキル基、フェニル基又は水素を示す。)で表わされる繰り返し単位を有する樹脂である。
【0046】
本発明に使用するポリオレフィン樹脂は、これらの構成単位の単独重合体であっても、また、2 種類以上の共重合体であっても、更に、これらのユニットで形成される樹脂単位の共重合体であっても良い。繰り返し単位の例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等のα- オレフィンを付加重合した時に現れる繰り返し単位や、イソブテンを付加した時の繰り返し単位等の脂肪族オレフィン、スチレンモノマーの他にo-、m-、p-メチルスチレン、o-、m-、p-エチルスチレン、t-ブチルスチレン等のアルキル化スチレン、モノクロロスチレン等のハロゲン化スチレン、α- メチルスチレン等のスチレン系モノマーの付加重合体単位等の芳香族オレフィン等が挙げられる。
【0047】
ポリオレフィン樹脂を例示すると、α- オレフィンの単独重合体であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリオクテニレン等が挙げられる。また、上記ユニットの共重合体としてはエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボーネン共重合体等の脂肪族ポリオレフィンや、スチレン系重合体等の芳香族ポリオレフィン等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、上記繰り返し単位を満足していれば良い。また、これらの樹脂を単独若しくは2 種類以上混合して使用しても良い。
【0048】
また、ポリオレフィン樹脂は、上記のオレフィンユニットが主成分であれば良く、上記のユニットの置換体であるビニルモノマー、極性ビニルモノマー、ジエンモノマーがモノマー単位若しくは樹脂単位で共重合されていても良い。共重合組成としては、上記ユニットに対して50モル% 以下、好ましくは30モル% 以下である。50モル% 超では寸法安定性等のポリオレフィン樹脂としての特性が低下する。
【0049】
極性ビニルモノマーの例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸誘導体、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水マレイン酸のイミド誘導体、塩化ビニル等が挙げられる。
ジエンモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、5-メチリデン-2- ノルボーネン、5-エチリデン-2- ノルボーネン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等が挙げられる。
【0050】
ポリオレフィン樹脂として耐衝撃強度を付与するために最も好ましい樹脂は、エチレン- プロピレン共重合体、エチレン-1- ブテン共重合体、エチレン-1- ペンテン共重合体、エチレン-3- エチルペンテン共重合体、エチレン-1- オクテン共重合体等のエチレンと炭素数3 以上のα- オレフィンの共重合体、もしくは、前記2 元共重合体にブタジエン、イソプレン、5-メチリデン-2- ノルボーネン、 5- エチリデン-2- ノルボーネン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等を共重合したエチレン、炭素数3 以上のα- オレフィン及び非共役ジエンからなる3 元共重合体である。中でも、ハンドリングのし易さから、エチレン- プロピレン共重合体やエチレン-1- ブテン共重合体の2 元共重合体、若しくは、エチレン- プロピレン共重合体やエチレン-1- ブテン共重合体に、非共役ジエンとして5-メチリデン-2- ノルボーネン、5-エチリデン-2- ノルボーネン、シクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエンを使用し、α- オレフィン量を20〜60モル% 、非共役ジエンを0.5 〜10モル% 共重合した樹脂が最も好ましい。
【0051】
またこのような本発明の好適な3 元系樹脂組成物で使用されるポリエステル樹脂(A) 及び極性を有するビニル重合体(B) については、前述の樹脂類(A) 及び(B)が使用される。
(11)三元系樹脂組成物の高次構造:微細分散したカプセル化構造
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A) 、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1 質量% 以上含有するビニル重合体(B) 、ゴム状弾性体樹脂(C) 、及びラジカル禁止剤からなり、ポリエステル樹脂(A) 中にゴム状弾性体樹脂(C) が微細分散し、かつ、ゴム状弾性体樹脂(C) の少なくとも一部がビニル重合体(B) でカプセル化された構造が、耐衝撃性、金属板への密着性がより高いという点で好ましい。
【0052】
このようなカプセル化した微細分散の高次構造を有することにより、従来のように結晶層と多結晶層の二層構造を形成した二軸延伸フィルムを厳密な温度制御をしてラミネートするという複雑面倒でかつ高価なプロセスと異なり、無延伸フィルムでも、厳格な温度制御の必要なしで、従来品を凌ぐ高い耐衝撃性と金属との高い密着性を実現することが可能になる。このように高耐衝撃性と密着性とにより、高品質化、薄膜化によるコストダウン、従来より過酷な製缶(軽量缶)が可能になる。また、延伸工程が不要であるので、金属板への直接ラミネーションによるフィルム成形工程の省略が可能になり、延伸すればさらに高い耐衝撃性が実現できる。また、厳密な温度制御が不要であるので、薄膜化、高速製造によるコストダウン、膜厚、性能の安定化による品質向上が可能になる。
【0053】
(12)三元系高次構造:微細分散の定義
本発明において、ポリエステル樹脂(A) 中にゴム状弾性体樹脂(C) が「微細分散」とは、ゴム状弾性体樹脂(C) の全粒子の内、70体積%以上の粒子が100 μm 以下の等価球換算径でポリエステル樹脂(A) 中に分散している状態である。ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径が100 μm 超では、耐衝撃性が低下し、また本発明の樹脂組成物の製膜性が低下する。好ましくは1 μm 以下、より好ましくは 0.5μm 以下の等価球換算径であることが望ましい。1 μm 超では、十分な耐衝撃性を発揮できない場合がある。
【0054】
(12)三元系高次構造:カプセル化の定義
また、ビニル重合体(B) で「カプセル化」されたゴム状弾性体樹脂(C) とは、ゴム状弾性体樹脂(C) 界面の80%以上、好ましくは95% 以上をビニル重合体(B)が被覆し、ポリエステル樹脂(A) とゴム状弾性体樹脂(C) との直接接触面積を20% 未満とした構造である。このような構造とすることにより、ビニル重合体(B)でカプセル化されたゴム状弾性樹脂体(C) の微細分散が容易となり、耐衝撃性、製膜性が向上し、またゴム状弾性体樹脂(C)は一般に金属板との密着性が低いが、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するビニル重合体(B) が金属板との密着性を有するため、微細分散した粒子が金属板に接しても樹脂組成物と金属板との密着性を確保できる効果を有する。
【0055】
ゴム状弾性体樹脂(C) の全粒子がビニル重合体(B) でカプセル化されている必要はなく、少なくとも体積比で70% 以上のゴム状弾性体樹脂(C) がビニル重合体 (B)でカプセル化されていれば良い。カプセル化されていないゴム状弾性樹脂体 (C)が体積比で30% 超存在する場合は、微細分散が困難になり、耐衝撃性が低し、また樹脂組成物を金属板に被覆する場合は、金属板に直接接触するゴム状弾性樹脂体(C) の比率が増加してしまい、樹脂組成物と金属板との密着性の確保が困難になる。
【0056】
カプセル化されていないゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径は特に規定するものではないが、耐衝撃性、加工性の観点から100 μm 以下、特に1.0 μm 以下が望ましい。
また、過剰量のビニル重合体(B) が、ゴム状弾性樹脂体(C) をカプセル化しないで、単独でポリエステル樹脂(A) 中に分散していても良い。カプセル化しないビニル重合体(B) の量、径は、特に制限するものではないが、全ビニル重合体(B )の体積比で20% 以下、等価球換算径で1.0 μm 以下であることが望ましい。体積比で20% 超では、樹脂組成物の耐熱性等の基本特性が変化する場合がある。また、等価球換算径が1.0 μm 超では、加工性が低下する場合がある。
【0057】
(14)混合によるカプセル化の原理
上記のような三元系樹脂組成物を混合してポリエステル樹脂(A) 中にビニル重合体(B) でカプセル化したゴム状弾性樹脂体(C) を微細分散させるには、ビニル重合体(B) とポリエステル樹脂(A) 及びゴム状弾性樹脂体(C) との界面張力のバランスを適切にすることが重要である。
【0058】
好ましくはビニル重合体(B) のゴム状弾性樹脂体(C) に対するSpread Paramet er(λ(Resin C)/(Resin B) )が正になるように極性基を有するユニットの含有量を制御することが望ましい。λ(Resin C)/(Resin B) を正にすることにより、ビニル重合体(B) でゴム状弾性樹脂体(C) をカプセルしても熱力学的な安定性が確保できる。異種高分子間のSpread Parameterとは、S. Y. Hobbs; Polym., Vol.29, p1598(1989)で定義されているパラメータであって、下記の式(iv)
λ(Resin C)/(Resin B) = Υ(Resin C)/(Resin A)
-Υ(Resin C)/(Resin B) - Υ(Resin B)/(Resin A) (iv)
〔但し、式中、Resin A はポリエステル樹脂(A) を、Resin B はゴム状弾性樹脂体(C) を、またResin C はビニル重合体(B) をそれぞれ示し、またΥi/j は樹脂 iと樹脂j 間の界面張力であり、近似的には樹脂i と樹脂j 間の相溶性を示すパラメータΧi/j 相溶性が良好なほど小さな値を示す) の0.5 乗に比例する。〕
で与えられる。
【0059】
ポリエステル樹脂(A) とゴム状弾性樹脂体(C) との相溶性は低く、Υ(Resin B)/(Resin A) >0となるので、ビニル重合体(B) の無極性ビニルモノマー(MonomerV)と極性基含有ユニット(Monomer U) の配合比を調整して、下記の式(v) 、(vi)
χA/C = φχ(Resin A)/(Monomer V) +(1-φ) χ(Resin A)/(Monomer U)
- φ(1- φ) χ(Monomer V)/(Monomer U) (v)
χB/C = φχ(Resin C)/(Monomer V) +(1-φ) χ(Resin C)/(Monomer U)
- φ(1- φ) χ(Monomer V)/(Monomer U) (vi)
〔但し、φは無極性ビニルモノマーの配合比(体積比)を示す。〕
で与えられるゴム状弾性樹脂体(C) とビニル重合体(B) との相溶性を示すχB/C 及びポリエステル樹脂(A) とビニル重合体(B) との相溶性を示すχA/B を0 に近付けるようにすれば、λ(Resin C)/(Resin B) を正にすることが可能となる。
【0060】
したがって、好ましいビニル重合体(B) は、ポリエステル樹脂(A) 及びゴム状弾性樹脂体(C) の種類に応じて、これらの樹脂との相溶性を考慮して決定される。
好ましい組み合わせを具体的に例示すると、ポリエステル樹脂(A) が芳香族ジカルボン酸残基とジオール残基より構成される芳香族ポリエステル樹脂で、ゴム状弾性樹脂体(C) がポリオレフィン樹脂である場合、ビニル重合体(B) としてエチレンと極性基を有するユニットとの共重合体や、無水マレイン酸若しくはグリシジルメタクリレートを1 質量% 以上導入したSEBSが好ましく、中でもエチレンと極性基を有するユニットとの共重合体は、エチレンと極性基を有するユニット間の配合比を適切に制御することにより、λ(Resin C)/(Resin B) を正に制御し易い。より好ましくは、エチレンと極性基を有するユニットとの共重合体にポリエステル樹脂(A) と共有結合、配位結合、水素結合、イオン結合等の化学作用を有する官能基が導入されていると、カプセル化した際にポリエステル樹脂(A) とビニル重合体(B) との界面を熱力学的により安定化できることから望ましい。
【0061】
(15)カプセル化に使用できる樹脂の例
三元系樹脂組成物を混合してカプセル化構造を形成するために好適なエチレンとポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットとの共重合体をより具体的に示せば、エチレン- ビニル酸共重合体、エチレン- ビニル酸エステル共重合体やこれらのアイオノマー樹脂、エチレンとα, β- 不飽和酸のグリシジルエステルとの共重合体、エチレンとビニル酸若しくはビニル酸エステルとα, β- 不飽和酸のグリシジルエステルとの3 元共重合体、等である。中でも、アイオノマー樹脂、エチレンとα, β-不飽和酸のグリシジルエステルとの共重合体、エチレンとビニル酸若しくはビニル酸エステルとα, β- 不飽和酸のグリシジルエステルとの3 元共重合体が好ましい。これらの樹脂は、ポリエステル樹脂(A) と比較的強い化学的相互作用を示し、ゴム状弾性樹脂体(C) と安定したカプセル構造を形成する。その中でも、アイオノマー樹脂は、温度によってポリエステル樹脂(A) との化学作用の強度が変化するので、成形性の観点から最も好ましいものである。
【0062】
アイオノマー樹脂としては、公知のアイオノマー樹脂を広く使用することができる。具体的には、ビニルモノマーとα, β- 不飽和カルボン酸との共重合体で共重合体中のカルボン酸の一部若しくは全部を金属陽イオンにより中和したものである。
ビニルモノマーを例示すると、上記のα- オレフィンやスチレン系モノマー等であり、α, β- 不飽和カルボン酸を例示すると炭素数3 〜8 のα, β- 不飽和カルボン酸でより具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル等が挙げられる。
【0063】
中和する金属陽イオンを例示すると、Na+ 、K + 、Li+ 、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Co2+、Ni2+、Pb2+、Cu2+、Mn2+,Ti3+, Zr3+, Sc3+等の1 価、2 価または3 価の金属陽イオンが挙げられる。また、金属陽イオンで中和されていない残余のカルボキシル基の一部は低級アルコールでエステル化されていても良い。
アイオノマー樹脂を具体的に例示すると、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸との共重合体、あるいはエチレンとマレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸との共重合体であって、共重合体中のカルボキシル基の一部若しくは全部がナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属イオンで中和された樹脂が挙げられる。これらの中で、ポリエステル樹脂(A) とゴム状弾性樹脂体(C) との相溶性を改善する目的で最も好ましいのが、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸の共重合体( カルボキシル基を有する構成単位が2 〜15モル%)で、重合体中のカルボキシル基の30〜70 %がNa、Zn等の金属陽イオンで中和されている樹脂である。
【0064】
(16)カプセル化された三元系樹脂組成物の製造方法
本発明のポリエステル樹脂(A) 、ビニル重合体(B) 及びゴム状弾性樹脂体(C) を含有する樹脂組成物をカプセル化した構造にすることは、公知の混合法により製造することができる。具体的には、適切な界面張力の差を有するポリエステル樹脂(A) 、ビニル重合体(B) 及びゴム状弾性樹脂体(C) を選択した後は、所定の温度、例えば200 〜350 ℃で公知の各種混合機を用いて溶融混練すれば、界面張力差を利用してカプセル構造を形成して製造することができる。
【0065】
(17)コア- シェルタイプゴム状弾性体を用いる三元系樹脂組成物の製造方法
ポリエステル樹脂(A) 中にビニル重合体(B) でカプセル化したゴム状弾性樹脂体(C) を微細分散させる方法としては、上述のような界面張力の差を利用する方法のほか、ビニル重合体(B) でゴム状弾性樹脂体(C) が予めカプセル化されてるコア- シェルタイプゴム状弾性体をポリエステル樹脂(A) に添加する方法も挙げられる。
【0066】
このコア- シェルタイプゴム状弾性とは、コア部とシェル部から構成される2層構造を有しており、コア部は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部であるビニル重合体(B) は前述のごとく、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを有し、コア部に比して硬質である樹脂を指す。例えばコア部をアクリル系ゴム状弾性体、ジエン系ゴム状弾性体、若しくはシリコン系ゴム状弾性体で構成し、これにグラフトしたアクリレート若しくはメタクリレートを主成分とするアクリル系重合体がシェル部を構成する樹脂が挙げられる。なお、グラフトとは、コア部の樹脂とシェル部の樹脂とのグラフト共重合化を意味する。
【0067】
このコア−シェルタイプゴム状弾性体は耐衝撃性、ポリエステル樹脂中での分散性、金属との密着性が高いので、本発明の樹脂組成物においてこのコア−シェルタイプゴム状弾性体を使用することは好ましい。
(18)コア- シェルタイプゴム状弾性体のコア部
コア部を構成するゴム状弾性体を具体的に示すと、一般式(vii) の構造を有するユニットで構成されるアクリレート系重合体、又は、ジエン系重合体、あるいは、ジメチルシロキサンを主体とするゴム状弾性体である。
【0068】
CH2=CR1-CO-O-R2 (vii)
(19)コア部エラストマーの例
上記のアクリレート系重合体の構成ユニットを具体的に例示すると、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、アルキルエタクリレート等であり、R1は水素又は炭素数1 〜12のアルキル基を、また、R2は炭素数1 〜12のアクリル基を有するものが好ましい。さらに具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート等が挙げられる。中でも耐衝撃性付与と言う観点から、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-ヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレートが好ましい。コア部を形成するアクリレート系重合体は、これらの単独重合体であっても、2 種類以上の共重合体であっても良い。
【0069】
また、コア部を構成するアクリレート系重合体は、上記のアクリレートが主成分であれば、他のビニルモノマーが共重合されていても良い。主成分とは50質量 %以上である。具体的にビニルモノマーを例示すると、α- オレフィンモノマーやスチレン系モノマー、極性ビニルモノマーが挙げられる。より具体的に示すと、α- オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1- ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられ、スチレン系モノマーとしては、スチレンモノマーの他にo-,m-,p-エチルスチレン、t-ブチルスチレン等のアルキル化スチレン、モノクロロスチレン等のハロゲン化スチレン、α- メチルスチレン等が挙げられ、また、極性ビニルモノマーとしてはアクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸及びそのイミド誘導体、酢酸ビニル、塩化ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0070】
更に、コア部を構成するアクリレート系重合体は、ゴム弾性を発揮するために架橋剤により一部架橋されていることが好ましい。架橋剤を例示すると、エチレン性不飽和を有するビニルモノマーで、ジビニルベンゼン、ブチレンジアクリレート、エチレンジメタクリレート、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート等が挙げられる。架橋剤の添加量は30質量% 以下、好ましくは20質量% 以、より好ましくは5 質量% 以下である。30質量% 超では硬化してゴム弾性が発揮できない場合が多い。
【0071】
また、コア部を構成するジエン系重合体は、ジエンモノマーの重合体若しくはその水添重合体であり、具体的にはポリブタジエン及びその水添重合体、ブタジエンとスチレンとの共重合体及びその水添重合体等が挙げられる。
(20)コア部の物性
コア部を構成する重合体の分子量は、特に制限するものではないが、数平均分子量で2000以上が好ましい。2000未満では十分なゴム弾性を発揮できない。また、コア部が架橋したアクリレート系重合体である場合は、架橋点間分子量が2000以上であることが十分なゴム弾性を付与する観点から好ましい。コア部を構成する重合体のガラス転移温度( 昇温速度10℃/ 分、示差型熱分析装置(DSC) で測定 )は、30℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは-10 ℃以下である。ガラス転移温度が30℃超では、室温以下でのゴム弾性が発揮し難い。
【0072】
(21)シェル部の定義
次に、コア- シェルタイプゴム状弾性体のシェル部について説明する。シェル部は極性基を有するユニットから成るアクリレート系重合体で構成されていることが好ましく、アクリレート系重合体の極性を利用することにより微細分散が可能になると共に、コア- シェルタイプゴム状弾性体が金属板に接触した際の密着性を確保できる。
【0073】
(22)シェル部の例
シェル部を構成するアクリレート系重合体は、一般式(vii) のユニットからなる重合体である。具体的には先に挙げたモノマーの重合体であり、アクリレートユニットが主成分である限り、上記のビニルモノマーと共重合していても良い。ここで主成分とは50質量% 以上である。他のビニルモノマーと共重合した場合、アクリレート成分の組成比は70質量% 以上であることが好ましい。70質量% 未満では、アクリレートユニットの極性が十分に利用できず、微細分散や金属板との密着性が不充分な場合がある。
【0074】
(23)シェル部の物性
コア- シェルタイプゴム状弾性体は、コア部が軟質なゴム状物質であるので、シェル部を構成する樹脂は硬質であることがハンドリング性から必要である。このためには、シェル部を構成するアクリレート系重合体のガラス転移温度( 昇温速度10℃/ 分、示差型熱分析装置(DSC) で測定) が30℃以上であることが好ましく、より好ましくは50℃以上である。
【0075】
シェル部を構成するアクリレート系重合体ユニットとして最も好ましいのは、ガラス転移温度が上記の範囲にあり、また、重合速度の制御が容易であることからメチルメタクリレートである。
(24)コア- シェルタイプゴム状弾性体の相溶性向上(末端修飾型)
更に、シェル部を構成するアクリレート系重合体には、ポリエステル樹脂(A) との相溶性を向上するために、ポリエステル樹脂(A) の残留末端官能基やエステル結合と反応可能な官能基若しくは結合基が導入されていることが好ましい。官能基を具体的に例示すれば、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基が挙げられ、シェル部をグラフト化する際に、これらの官能基を有する公知のビニルモノマーを添加することにより官能基が導入できる。また、結合基を例示すれば、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合等が挙げられ、シェル部をグラフト化する際に、T. O. Ahn et al.; J. Polym. Sci. Part A Vo l.31, 435(1993)に開示されているようなこれらの結合を有する開始剤を使用することにより結合基が導入できる。これらの官能基や結合基の中で、反応性の観点から最も好ましいのが、エポキシ基及び芳香族- 芳香族のエステル結合であり、シェル部を重合する際に、それぞれ、グリシジルメタクリレート、 T. O. Ahnet al.; J. Polym. Sci. Part A Vol.31, 435(1993) に開示されているポリアリレートアゾ開始剤を添加することにより、上記のエポキシ基及びエステル結合が導入できる。
【0076】
コア- シェルタイプゴム状弾性体を具体的に例示すると、コア部がポリブチルアクリレート、シェル部がポリメチルメタクリレートからなるMBA 樹脂、コア部がブタジエン- スチレン共重合体、シェル部がポリメチルメタクリレートからなるMBS 樹脂、コア部がポリジメチルシロキサン、シェル部がポリメチルメタクリレートからなる重合体等が挙げられ、更には、米国特許第4096202 号に開示されているアクリレートベースコア- 重合アクリレートシェル重合体を本発明に使用することができる。
【0077】
これらの官能基、結合基を含有するユニットの導入量は、各々反応性によって導入量が決定され、アクリレートユニットが主成分である範囲においては特に限定するものではない。しかし、官能基の場合は、官能基含有ユニットの導入量が 15 質量% 以下であることが好ましく、より好ましくは5 質量% 以下である。15質量% 超では混練工程で櫛形ポリマーが生成され、ポリエステル樹脂(A) に対する相溶性が十分に向上しない場合がある。また、結合基である場合は、結合基含有ユニットの導入量が15質量% 以下であることが好ましい。15質量% 超では結合基を有するユニットがドメインを形成し、ポリエステル樹脂(A) に対する相溶性が向上できない場合がある。
【0078】
コア- シェルタイプゴム状弾性体は、ゴム状重合体であるコア部を20質量% 以上、好ましくは50質量% 以上、より好ましくは80質量% 以上含有していることが望ましい。20質量% 未満では十分な耐衝撃性が発揮できない場合がある。
コア- シェルタイプゴム状弾性体は、ビニル重合体(B) とゴム状弾性樹脂体(C )とをグラフト化してコア- シェルタイプゴム状弾性体を形成させた後、ポリエステル樹脂(A) と混合することによって製造できる。例えば公知のラジカル重合法で重合できるが、中でも米国特許第4096202 号に記載されているような乳化重合法が生成した重合体の粒径をミクロに制御する観点から好適である。重合法を具体的に示すと、以下の方法が挙げられるが、コア- シェルタイプグラフトゴム状弾性体でシェル部がアクリレート系重合体であれば良く、製法を当該製法に制限するものではない。
【0079】
第一段階の重合として、上述のコア部を構成するユニットモノマーをラジカル重合する。この際に、グラフト剤として、ポリエチレン性不飽和を有し複数の2 重結合を有するモノマーを約0.1 〜5 質量% 添加する。本グラフト剤の複数の2 重結合は各々反応速度が異なることが好ましく、具体的にはアリルメタクリレート、ジアリルマレート等である。コア部の重合体を重合後、第二段階の重合として、シェル部を構成するモノマー及び開始剤を添加してシェル部をグラフト重合することによりコア- シェルタイプゴム状弾性体を得ることができる。
【0080】
(25)コア- シェルタイプゴム状弾性体の相溶性向上(添加剤型)
本発明に使用するポリエステル樹脂(A) とコア- シェルタイプゴム状弾性体からなる樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(A) とコア- シェルタイプゴム状弾性体との相溶性を向上する目的で、公知の相溶化剤を添加しても良い。相溶化剤の添加量は15質量% 以下が好ましく、より好ましくは5 質量% 以下である。15質量% 超では、相溶化剤が独自に相構造を形成する場合があり、十分な相溶性向上効果が発揮し難い。
【0081】
具体的に相溶化剤を例示すると、反応型相溶化剤と非反応型相溶化剤が挙げられ、反応型相溶化剤としては、コア- シェルタイプゴム状弾性体と相溶なポリエステル樹脂(A) の末端残留官能基や結合手と反応可能な官能基や結合手を導入したポリマーが挙げられる。より具体的には、コア- シェルタイプゴム状弾性体のシェル部を構成するポリマーにグリシジルメタクリレート、無水マレイン酸をランダム共重合した重合物や、シェル部を構成するポリマーに芳香族ポリエステルをブロック、グラフト共重合した重合物が挙げられる。また、非反応型相溶化剤としては、コア- シェルタイプゴム状弾性体のシェル部を構成するポリマーとポリエステル樹脂(A) のブロック、グラフト共重合体が挙げられる。
【0082】
(26)樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物の混合には、樹脂混練法、溶媒混合法等の公知の樹脂混合方法を広く使用できる。樹脂混練法を例示すると、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、V 型ブレンダー等によりドライブレンドで混合した後、1 軸若しくは2 軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。また、溶媒混合法を例示すると、樹脂組成物に含まれる原料樹脂の共通溶媒に各樹脂を溶解した後、溶媒を蒸発させたり、共通の貧溶媒に添加して析出した混合物を回収する方法等がある。
【0083】
本発明の樹脂組成物の混合温度は、特に限定されないが、樹脂(A)(B)(C) からなる三元系樹脂組成物が十分に混合されればよく、通常は樹脂(A)(B)(C) の各樹脂のそれぞれの分解温度より低い温度で十分に混合され得る。このような低い温度条件下での混合であっても、本発明の知見によれば、ポリエステル樹脂(A) 中に金属化合物が微量にでも残留していると、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを含むビニル系重合体(B) の分解反応が起きて有機低分子量物質を発生し、それがフレーバー性を低下させる原因になっている。また、ゲル状異物は異物は加熱混合したり成形する際に、流動停止部に樹脂が付着滞留し、ビニル重合体(B) やゴム状弾性体(C)が熱劣化することが原因になっている。従って、本発明によれば、樹脂(A) 及び(B) さらには(C) の各樹脂の分解温度より低い温度条件において樹脂(A) 及び(B) さらには(C) からなる樹脂組成物を加熱下で混合、さらには成形する際に発生する有機低分子量物質を、これらの樹脂組成物と共にラジカル禁止剤を添加することにより、実質的になくすことが可能になる。さらにポリテトラフルオロエチレン含有粉体を共に添加することにより加熱時の溶融張力を増大して流動停止部への樹脂付着滞留を防止でき、ゲル状異物の発生を低減することが可能となる。
【0084】
樹脂(A)(B)(C) の各樹脂の分解温度は、樹脂の種類により決まるが、一般的には、樹脂(A) は280 ℃程度以上、樹脂(B) は200 ℃程度以上、樹脂(C) は250 ℃程度以上である。
また、本発明によれば、本発明の樹脂組成物を加熱下で混合、成形などの工程を経て製造した際に発生するゲル状異物の量、その後の熱水抽出により抽出される樹脂組成物中の有機低分子量物質の量を各々5ppm以下、好適には2ppm以下に低下させることができる。さらには各々1ppm以下に低下させることも可能である。
【0085】
さらに、同様の理由から、本発明の樹脂組成物は金属板の表面に被覆する際の加熱によっても有機低分子量物質が発生することを防止される。
(27)ラジカル禁止剤の量
本願発明の樹脂組成物には、樹脂100 質量部に対して、ラジカル禁止剤0.001 〜7 質量部が添加されなければならない。0.001 質量部以下の添加では、顕著な効果が得られないため好ましくない。一方、ラジカル禁止剤を7 質量部を越えて添加しても、実質的に溶出量の削減効果が飽和するため、過剰添加となり不経済であり、さらに樹脂の弾性率、密着性の低下などの樹脂特性が低下するため好ましくない。より高い効果の発現のためには、上記樹脂組成物(I)100質量部に対して、ラジカル禁止剤を0.005 〜1 質量部添加することが好ましい。
【0086】
(28)ラジカル禁止剤の種類
本願発明で使用される樹脂組成物(I) から発生する有機低分子物質は、極性基を有するビニル重合体がポリエステル樹脂中に含まれる金属化合物の作用でラジカル分解することによって発生する。そのため本発明で使用されるラジカル禁止剤としては、ラジカルを捕捉することでラジカル反応を停止する効果を有するフェノール系ラジカル禁止剤や窒素系ラジカル禁止剤、及び過酸化物類と反応し、ラジカル反応の開始の抑制や反応中間体を不活性化する働きを有するりん系及びスルフィド系ラジカル禁止剤が好ましい。
【0087】
(29)フェノール系ラジカル禁止剤の定義
フェノール系ラジカル禁止剤とは、分子内に1 個以上のフェノール性水酸基を有する化合物を指す。ラジカル反応の連鎖を停止する効率を向上するために立体的に嵩高いt-ブチル基等をフェノール性水酸基の近傍に有する化合物が好ましく、また樹脂の混練や、製膜、製缶工程においてラジカル禁止剤の揮散が少ない点で分子量が350 以上であることが好ましい。また、ラジカル禁止剤の樹脂内での拡散性の観点から、分子量は5000以下であることが好ましい。反応性の向上、分子量の向上の観点から、一分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の使用も好ましい。
【0088】
(30)フェノール系ラジカル禁止剤の例
フェノール系ラジカル禁止剤の例としては、テトラキス[ メチレン(3,5- ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン、トリエチレングリコール- ビス[3-(3-t-ブチル-5- メチル-4- ヒドロキシフェニル) プロピオネート] 、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル) プロピオネート、等があげられる。
【0089】
(31)りん系ラジカル禁止剤の定義
りん系ラジカル禁止剤とは分子内に1 個以上のホスファイト基及び/ またはホスホネート基を有する化合物を指す。また樹脂の混練や、製膜、製缶工程においてラジカル禁止剤の揮散が少ない点で分子量が350 以上であることが好ましい。ラジカル禁止剤の樹脂内での拡散性の観点から、分子量は5000以下であることが好ましい。反応性の向上、分子量の向上の観点から、1 分子内に複数のホスファイト基及び/ またはホスホネート基を有する化合物の使用も好ましい。
【0090】
(32)りん系ラジカル禁止剤の例
りん系ラジカル禁止剤の例としては、2,2-メチレンビス(4,6- ジ-t- ブチルフェニル) オクチルホスファイト、トリス(2, 4- ジ-t- ブチルフェニル) フォスファイト等があげられる。
(33)スルフィド系ラジカル禁止剤の定義
スルフィド系ラジカル禁止剤とは、分子内に1 個以上のスルフィド基を有する化合物を指す。樹脂の混練や、成形工程においてラジカル禁止剤の揮散が少ない点で、分子量が350 以上であることが好ましい。また、ラジカル禁止剤の樹脂内での拡散性の観点から、分子量は5000以下であることが好ましい。反応性の向上、分子量の向上の観点から、1 分子内に複数のスルフィド基を有する化合物の使用も好ましい。
【0091】
(34)スルフィド系ラジカル禁止剤の例
スルフィド系ラジカル禁止剤の例としては、テトラキス[ メチレン-3-(ドデシルチオ) プロピオネート] メタン、ビス( トリデシルオキシカルボニルエチル) スルフィド等があげられる。
(35)窒素系ラジカル禁止剤の定義
窒素系ラジカル禁止剤とは、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素基にアミノ基が結合し、発生したラジカルに水素を供与することでラジカルを消失させるような化合物を指す。
【0092】
(36)窒素系ラジカル禁止剤の例
窒素系ラジカル禁止剤の例としては、ビス(2-ドデシルフェニル)アミン、ビス(3-オクチルフェニル)アミン、ビス(4-オクチルフェニル)アミン等が挙げられる。
(37)ラジカル禁止剤の使用形態:混合使用
本発明で使用されるラジカル禁止剤は単独で使用しても良く、また混合して使用しても良い。
【0093】
本発明の樹脂組成物(I) において観測されるビニル重合体(B) のラジカル分解は、通常の熱的なラジカル分解の主要因の一つが、蓄積した過酸化物基の熱分解によって生じるラジカル反応であるのとは異なり、残留触媒などの金属化合物からの電子移動反応によるラジカル発生が主要因であるため、ラジカル禁止剤を1 種を単独で使用する場合には、フェノール系がラジカルを捕捉し、連鎖を切断する効果が高く、結果として樹脂の分解を抑制する効果が高い点で好ましい。
【0094】
りん系及びスルフィド系ラジカル禁止剤は、ラジカル発生源やラジカル反応の中間体となる過酸化物を分解する効果を有するため、フェノール系ラジカル禁止剤との混合して使用することで一層の高い効果を発揮する。また、同様の相乗効果は一分子中にフェノール性水酸基、ホスファイト基及び/ またはホスホネート基、アミノ基及びスルフィド結合の2 種以上を有する様な複合型のラジカル禁止剤においても観測されるため、この使用も好ましい。
【0095】
複合型のラジカル禁止剤の例としては、2,2-チオ- ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル) プロピオネート] 、2,4-ビス[(オクチルチオ) メチル]-o-クレゾール、2 ,6−ジ-t- ブチル-4- (4 ,6-ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン-2- イルアミノ)フェノール等があげられる。
【0096】
(38)ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の添加量
本願発明の樹脂組成物には、樹脂100 質量部に対して、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体0.001 〜7 質量部が添加されなければならない。ポリテトラフルオロエチレン含有粉体とは、粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a) とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m 3 ) 1/2 以下である有機系重合体粒子(b)とからなり、効率的に溶融張力を増加するために50質量部以上ポリテトラフルオロエチレンが含有されていることが望ましい。さらにポリテトラフルオロエチレン含有体は添加されるとき粉体形状である。ここで粉体形状とは、等価楕円体の短径が最大でも10mm以下の形状をしている固形物である。また、当該粉体は0.001 〜7質量部添加されなければならない。ポリテトラフルオロエチレン含有粉体が0.001 質量部未満では樹脂組成物(I) の溶融張力を十分に増加できず、ゲル化した異物を削減できない。さらにポリテトラフルオロエチレン含有粉体が7質量部超添加した場合は、ポリテトラフルオロエチレンが表面に多量に移行し、金属板との密着性が低下したり、フィルム加工した場合にフィルム内の樹脂(B)の分散性が変化し、不均一性が増加することがある。樹脂組成物(I)100質量部に対して、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体0.005 〜1 質量部添加することが好ましい。さらに好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンの添加量が0.005 〜1質量部になるようにポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加することが好ましい。
【0097】
(39)混合体に含有されるポリテトラフルオロエチレンの定義
本発明の混合粉体に含有されるポリテトラフルオロエチレンは、ポリテトラフルオロエチレンが主成分であればよく、ポリテトラフルオロエチレン粒子の乳化重合の際、ポリテトラフルオロエチレンの特性を損なわない範囲で、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の含フッ素オレフィンや、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等の含フッ素アルキル(メタ)アクリレートなどのビニルモノマーを共重合してもよい。共重合成分の含量は、テトラフルオロエチレンに対して10重量%以下であることが好ましい。
(40)ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の好ましい形態
本願発明で使用される樹脂組成物(I) から発生するゲル状異物は、樹脂(B)やゴム状弾性体(C) が加熱混合や加工時にバレル内の流動停止部に樹脂付着・滞留することが原因であり、付着滞留防止には樹脂組成物(I)の溶融張力を増大することが必要である。このため本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン樹脂が、加熱混合や加熱加工時にミクロフィブリル状に分散していることが好ましい。ミクロフィブリルとは太さが1μm 以下、長さが10μm 以上の繊維状に分散した状態であり、他の特性を損なわずに溶融張力を増大するためには太さが0.1 μm 以下、長さが100 μm 以上であることがより好ましい。このような分散を実現するためには、粒子径10μm 以下のポリテトラフルオロエチレン(a) 粒子であることが好ましい。このような粒径を有するポリテトラフルオロエチレン(a) 粒子は、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でテトラフルオロエチレンモノマーを重合することにより得られる。さらに好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(a) とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m 3 ) 1/2 以下である有機系重合体(b) との混合体を添加することが好ましい。 (a),(b)とを混合することにより、樹脂組成物(I) とポリテトラフルオロエチレン含有粉体との相溶性が向上し、ミクロフィブリル化しやすくなる。
【0098】
(40)ポリテトラフルオロエチレン含有粉体に添加する有機系重合体(b) の種類
有機系重合体(b) は、有機系樹脂(b) はポリエステル樹脂(A) もしくはビニル重合体(B) とに親和性を有することが望ましい。従って、Fedors法より算出された溶解度パラメターの差が、これらの樹脂と有機系重合体(b) とで10(MJ/m3 )1/2 以下あることが望ましい。具体的に有機系重合体(b) を例示すると、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−クロルスチレン、o−クロルスチレン、p−メトキシスチレン,o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等の単一重合体もしくは複数の重合体が挙げられる。またさらには前述のポリエステル樹脂を挙げることができる。これらの中でポリエステル樹脂(A) およびビニル重合体(B) との親和性から最も好ましいのは、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ポリエステル樹脂を挙げることができる。特に好ましいものとしてエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を1質量%以上含有する重合体もしくは前述のポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0099】
(41)ポリテトラフルオロエチレン含有粉体の製法
本発明のポリテトラフルオロエチレン含有粉体の製法を例示すると、前述の乳化重合により重合したポリテトラフルオロエチレン粒子分散液単体もしくはこれと有機系重合体(b)粒子分散液とを混合して凝固またはスプレードライにより粉体化することにより得られる。ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液(a) と有機系重合体(b)粒子分散液とを混合する方法としては、前述の乳化重合したポリテトラフルオロエチレン粒子分散液と前述のビニル単量体の乳化重合などによって得られる有機系重合体(b)粒子分散液との重合液を単純混合する方法、さらにこれらの混合液に前述のようなビニルモノマーを添加して公知の乳化重合して共重合化する方法などが挙げられる。
ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液として使用可能な市販原料を例示すると、旭ICIフロロポリマー社製のフルオンAD−1,AD−936、ダイキン工業社製のポリフロンD−1,D−2、三井デュポンフロロケミカル社製のテフロン30J等を挙げることができる。有機系重合体(b)粒子分散液としては、前述のビニル単量体をイオン性乳化剤を用いて乳化重合した液もしくはイオン性重合開始剤を用いてソープフリーで前述のビニル単量体を乳化重合した液などを挙げることができる。
これらの混合においては、凝集速度をコントロールする目的で、公知のノニオン性乳化剤をポリテトラフルオロエチレン粒子/または有機系重合体(b) の表面上に吸着させておくこともできる。また、混合液を凝固する際には、事前に公知の方法で塩析し、その後に凝固させることも可能である。
さらにポリテトラフルオロエチレン含有粉体の製法の別法として、凝固またはスプレードライにより粉体化したポリテトラフルオロエチレン粒子に圧搾粉砕した有機系重合体(b)をボールミルなどの公知の方法で混合する方法なども挙げられる。本法は有機系重合体(b)がポリエステル樹脂である場合など好適に適用できる。
【0100】
(42)ラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体の添加方法
本発明で使用されるラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体の上記樹脂組成物(I) への添加方法としては、原料樹脂であるポリエステル樹脂(A) 、ビニル重合体(B) のいずれか1 種以上に、また、樹脂組成物(I) がゴム状弾性体樹脂(C) を含有する場合には、ポリエステル樹脂(A) 、ビニル重合体(B) またはゴム状弾性体樹脂(C) のいずれか1 種以上にあらかじめラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加してから樹脂組成物とすることにより、上記樹脂組成物(I) にラジカル禁止剤が含有させればよい。この際、ビニル重合体(B) にラジカル禁止剤、ポリエステル樹脂(A) にポリテトラフルオロエチレン含有粉体をあらかじめ添加しておくことが、ビニル重合体(B) の分解を効率よく抑制し、かつマトリックス樹脂の溶融張力を効率よく増加できる。この結果、より少量のラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体の添加によって、溶出物およびゲル状異物の削減効果が発揮できる点で好ましい。
【0101】
複数の原料樹脂にラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加する場合は、結果的に樹脂組成物に含有されるラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体の量が、前述のラジカル禁止剤の必要量を満たしていればよい。
原料樹脂(A) 、(B) 及び/ または(C) にラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加する別の方法としては、樹脂の重合の際に反応槽に直接これらを投入する方法や、重合後に加熱ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押し出し機等を用いて配合する方法が挙げられる。
【0102】
また、ラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体の別の添加方法としては、これらを含有しない (A) 、(B) および(C)からなる原料樹脂を混合して上記樹脂組成物またはフィルムを調製する際に添加しても良い。この際、ラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体はそのものを直接添加してもよく、あるいはマスターバッチ法により添加してもよい。また、いったんラジカル禁止剤またはポリテトラフルオロエチレン含有粉体を含有しない原料樹脂を混合して上記樹脂組成物(I) を調製した後、フィルムに調製する際に製膜機のホッパ内にこれらを投入することで添加してもよい。
【0103】
(43)強化剤
また、本発明の樹脂組成物には、剛性や線膨張特性の改善等を目的に、ガラス繊維、金属繊維、チタン酸カリウィスカー、炭素繊維のような繊維強化剤、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ミルドファイバー、金属フレーク、金属粉末のようなフィラー類を混入させても良い。これらの充填剤の内、ガラス繊維、炭素繊維の形状としては、6 〜60μm の繊維径と30μm 以上の繊維長を有することが望ましい。また、これらの添加量としては、全樹脂組成物質量に対して0.5 〜50質量部であることが望ましい。
【0104】
(44)添加剤
更に、本樹脂組成物には、目的に応じて、熱安定剤、光安定剤、離型剤、滑剤、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤等を適正量添加することも可能である。
(45)多層化
またフレーバー性の向上、耐衝撃性の向上などの目的で、本樹脂組成物とともに、他の樹脂組成物及び/ 又は接着剤と組み合わせて使用しても差し支えない。
【0105】
(46)用途(非被覆材料)
本発明の樹脂組成物は広く樹脂成形体として使用できる。具体的にはバンパー、ボンネット、ドア材、ホイールカバー、オイルタンク、インストゥルメンタルパネルなどの自動車内外部品、玩具、容器、家電・コンピュータ・携帯電話などの筐体などに使用できる。本樹脂組成物を成形体に加工する方法は特に限定する物ではないが、公知の射出成形、ブロー成形、押出成形を広く適用する事ができる。
【0106】
(47)被覆使用時の金属板の例
本発明の樹脂組成物は広く金属板の被覆材として使用することができる。金属板は特に限定するものではないが、ブリキ、薄錫めっき鋼板、電解クロム酸処理鋼板( ティンフリースチール) 、ニッケルめっき鋼板等の缶用鋼板や、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛- 鉄合金めっき鋼板、溶融亜鉛- アルミニウム- マグネシウム合金めっき鋼板、溶融アルミニウム- シリコン合金めっき鋼板、溶融鉛- 錫合金めっき鋼板等の溶融めっき鋼板や、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛- ニッケルめっき鋼板、電気亜鉛- 鉄合金めっき鋼板、電気亜鉛- クロム合金めっき鋼板等の電気めっき鋼板等の表面処理鋼板、冷延鋼板やアルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、マグネシウム等の金属板等が挙げられる。また、金属板への被覆も片面又は両面の何れであっても良い。また、本発明の樹脂組成物を金属板へ被覆した際の被覆膜厚みは、特に制限するものではないが、1 〜300 μm であることが好ましい。1 μm 未満では被膜の耐衝撃性が十分でない場合があり、300 μm 超では経済性が悪い。
【0107】
(48)金属板の被覆方法:フィルム圧着(間接/ 直接)、直接ラミネーション
金属板への被覆には、公知の方法が使用できる。具体的には、(1) あらかじめ混練機により原料樹脂を溶融混練することで調製した本樹脂組成物をT ダイス付の押出機でフィルム化し、これを金属板に熱圧着する方法( この場合、フィルムは無延伸でも、1 方向若しくは2 方向に延伸してあっても良い) 、(2)Tダイスから出たフィルムを直接熱圧着する方法、が挙げられる。さらにフィルムを直接熱圧着する別の方法としては、(3 )T ダイス付の押出機のホッパに本樹脂組成物の代わりに、本樹脂組成物の原料となる樹脂及びラジカル禁止剤を投入し、押出機内で本樹脂組成物に混練し、それを直接熱圧着する方法が挙げられる。更に、本発明の樹脂組成物は、被覆後の膜内部に結晶化度を傾斜させなくても十分な耐衝撃性を発現できる。従って、(4) 樹脂組成物を溶融してバーコーターやロールでコーティングする方法、(5) 溶融した樹脂組成物に金属板を漬ける方法、(6) 樹脂組成物を溶媒に溶解してスピンコートする方法、等により金属板に被覆することも可能であり、被覆方法は特に限定されるものではない。
【0108】
金属板への被覆方法として作業能率から最も好ましいのは、上記(1) ,(2) 及び(3 )の方法である。(2) の方法を使用して被覆する場合は、フィルム厚みは上記と同様の理由により1 〜300 μm であることが好ましい。さらに膜の表面粗度は、フィルム表面粗度を任意に1mm 長測定した結果がRmaxで500nm 以下であることが好ましい。500nm 超では熱圧着で被覆する際に気泡を巻き込む場合がある。また本樹脂組成物の高い衝撃性のため、延伸をすることなく使用しても高い衝撃性を発揮する。そのため延伸することなく金属被覆材料として使用可能であり、省工程化が可能である。また無延伸で金属被覆材料として使用する場合には温度、通板速度などの制御で薄膜内の結晶化度を制御する必要が無いため、プロセスウィンドウの拡大、高速製造が可能となる。さらに製膜時、被覆時の結晶化度制御の為の温度制御が容易であるため、性能の安定した製品の製造が可能となる。
【0109】
(49)滑剤の使用
本発明の樹脂フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムであり、被覆前の樹脂フィルムでも上記の(4) 〜(6) の方法等で被覆後に形成された樹脂フィルムであっても良い。また、金属板への被覆工程や金属板加工時の潤滑性を向上する目的で、特開平5-186613号公報に開示されているような公知の滑剤が添加されていても良い。
【0110】
滑剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子などの有機系のいずれでもよいが、無機系が好ましい。
滑剤の粒径は2.5 μm 以下が好ましい。2.5 μm 超では樹脂フィルムの機械特性が低下する。滑剤の添加量は金属板の巻取性や深絞り加工性に応じて決定されるが、0.05〜20%が好ましい。
【0111】
特に、平均粒径が2.5 μm 以下であると共に粒径比( 長径/ 短径) が1.0 〜1. 2である単分散の滑剤が耐ピンホールの点で好適であり、例えば、真球状シリカ、真球状酸化チタン、真球状シリコーンなどを挙げることができる。滑剤の平均粒径、粒径比は粒子を電子顕微鏡観察により求めることができる。滑剤の粒径分布は鋭く、標準偏差が0.5 以下が好ましい。
【0112】
滑剤の添加量は、フィルム製造工程における巻取り性と関係するので、一般に粒径が大きいときは少量、小さいときは多量に用いるとよい。例えば、滑剤の種類にもよるが、平均粒径0.2 〜2.0 μm で0.02〜0.5 質量%程度である。
(50)顔料の使用
本発明の樹脂フィルムは、顔料を含んでもよい。例えば、白色顔料として、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、などの無機系顔料を挙げることができる。顔料の平均粒径は、滑剤の粒径と同じ理由から、2.5 μm 以下が好ましい。顔料の添加量は、着色の機能を達成するために必要な量であり、 3〜50質量%程度の範囲内で使用される。顔料の添加方法は公知の方法によることができる。
【0113】
(51)可塑剤、帯電防止剤、抗菌剤などの使用
ポリエステル樹脂の可塑剤としては、例えば、炭素数2 〜20の脂肪酸多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体に対する炭素数8 〜20の芳香族多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比が0 〜2.0 であるこれらの多塩基酸成分と、炭素数2 〜20の脂肪族アルコールとを縮重合したものを、炭素数2 〜20の一塩基酸又はそのエステル形成性誘導体及び/又は炭素数1 〜18の一価アルコールで末端エステル化したポリエステルからなるポリエステル樹脂用可塑剤を挙げることができる。
【0114】
成膜工程におけるフィルムのロールへの巻き付きや、フィルム表面への汚れ付着等の静電気障害を防止することを目的として、特開平5 -222357 号公報に開示される帯電防止剤等の樹脂組成物中に練り込む方法や、フィルム表面に特開平5-1164号公報に記載されている帯電防止剤を塗布する方法などを必要に応じて適用することができる。
【0115】
特開平11-48431号公報、特開平11-138702 号公報等に開示されいてる従来公知の抗菌剤を必要に応じて使用することができる。
(52)積層方法(多層/ 単層、片面/ 両面、金属厚み)
また、本発明の樹脂フィルムを金属板に被覆する際には、金属板の片面及び/ 又は両面に、少なくとも上記樹脂フィルムを用いて単一層状に又は多層状に積層して被覆することができる。この際に、1 又は2 種類以上の樹脂フィルムを用いて金属板の片面及び/ 又は両面に単一層状にあるいは多層状に積層しても良く、また、必要に応じてPET フィルム、ポリカーボネートフィルム等のポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムや、6-ナイロンフィルム等のポリアミドフィルムや、アイオノマーフィルム等の他の公知の樹脂フィルム、あるいは、結晶/ 非結晶ポリエステル組成物フィルム、ポリエステル /アイオノマー組成物フィルム、ポリエステル/ ポリカーボネート組成物フィルム等の公知の樹脂組成物フィルムをその下層及び/ 又は上層に積層して被覆しても良い。具体的な積層方法としては、上述の(1) ,(2) 及び(3 )の方法を使用する場合、多層のT ダイスを使用して本発明の樹脂フィルムと他の樹脂フィルムや樹脂組成物フィルムとの多層膜を製造し、これを熱圧着する方法がある。また、上述の(4) 〜(6) の方法を使用する場合、他の樹脂組成物を被覆した後に本発明の樹脂組成物を被覆したり、逆に本発明の樹脂組成物を被覆した後に他の樹脂組成物を被覆することにより、多層に積層することが可能である。本発明の樹脂被覆金属板は本発明の樹脂フィルムが被覆された金属板であり、被覆は片面であっても両面であっても良い。金属板の厚みは特に制限するものではないが、0.01〜5mm であることが好ましい。0.01mm未満では強度が発現し難く、5mm 超では加工が困難である。
【0116】
(53)接着剤
本発明の樹脂被覆金属板は、本発明の樹脂フィルムが被覆されていれば良く、必要に応じて公知の樹脂フィルムを本発明の樹脂フィルムの下層及び/ 又は上層に積層して金属板に被覆しても良い。また、公知の接着剤を金属板と本発明の樹脂フィルムとの間に積層することも可能である。接着剤を例示すると、特公昭60-12233号公報に開示されるポリエステル樹脂系の水系分散剤、特公昭63-13829号公報に開示されるエポキシ系接着剤、特開昭61-149341 号公報に開示される各種官能基を有する重合体等が挙げられる。
【0117】
(54)製缶方法
本発明の樹脂被覆金属容器は、本発明の樹脂被覆金属板からなる樹脂被覆金属容器で公知の加工法により成形できる。具体的にはドローアイアニング成形、ドローリドロー成形、ストレッチドロー成形、ストレッチドローアイアニング成形等が挙げられるが、本発明の樹脂被覆金属板を使用した樹脂被覆金属容器であれば良く、成形法は前記の成形法に限定するものではない。
【0119】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A) 、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1質量% 以上含有するビニル重合体(B) 、ゴム状弾性体樹脂(C)、ラジカル禁止剤、及び粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a) とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m 3 ) 1/2 以下である有機系重合体粒子(b)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体を含有する樹脂組成物である。ポリエステル樹脂(A) 中にビニル重合体(B) でカプセル化されたゴム状弾性樹脂体(C) が微細分散している構造を有する樹脂組成物(I)100質量部に対して、ラジカル禁止剤を0.001 〜7 質量部およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体を0.001 〜7 質量部を含有させてなる樹脂組成物が、ゴム状弾性樹脂体(C)によりポリエステル樹脂(A) の耐衝撃性が改善でき、更にビニル重合体(B) でゴム状弾性樹脂体(C) をカプセル化しているため、ポリエステル樹脂(A) とゴム状弾性樹脂体(C) との相溶性を改善し、耐衝撃性を向上させると共に、金属板とゴム状弾性樹脂体(C) との直接接触を防止して金属板と樹脂組成物との密着性を確保できる点で優れている。さらに、ラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレンの添加により樹脂組成物の分解およびゲル状異物の発生が抑制され、分解生成物の溶出および金属板に被覆した際のフィルム欠陥が少ない樹脂組成物を供給できる。
【0120】
この結果、本発明の樹脂組成物は、成形性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械強度、ガスバリア性、金属との密着性、均一性等に優れると共に、フレーバー性にも優れているため、樹脂成形体などに好適に使用することが可能である。また、本発明の樹脂フィルムは、本発明の樹脂組成物を主体とするフィルムであり、特に密着性等やフレーバー性に優れるため金属被覆用の樹脂フィルムとして好適に使用できる。また、本発明の樹脂被覆金属板は、上記の樹脂組成物若しくは樹脂フィルムが金属板の片面若しくは両面を被覆しているため、樹脂と金属板との密着性、耐食性、耐衝撃性、加工性に優れると共に、塗装・印刷特性にも優れ意匠性を付与し易く、さらにラジカル禁止剤の添加によって、樹脂の分解が抑制されていることから、金属缶等の金属容器、家電製品の筐体や金属製家具等の部材、自動車外板等の自動車用部材、内装壁やドア等の建材用内外装部材等に広く使用できる。特に、絞り成形時や絞りしごき成形時の樹脂の加工追従性に優れており、外観に優れた金属容器を形成し得る。
【0121】
更に、本発明の樹脂被覆金属容器は、本発明の樹脂被覆金属板を成形してなる金属容器なので、打缶、缶詰工程、運搬時の衝撃に耐え得る耐衝撃性、製缶後の乾燥、印刷、焼付等に耐え得る耐熱性を有し、特にフレーバー性( 保香性) に優れた長期保存性を有する。従って、清涼飲料水や食品等の容器として好適に使用することができる。
【0122】
(55)樹脂被覆層の性能、機械的性質
ドローアイアニング成形、ドローリドロー成形、ストレッチドロー成形、ストレッチドローアイアニング成形等の成形を行った場合、樹脂被覆層にクラックが入る場合があるが、クラック発生に対して樹脂の機械的性質も重要な要因のひとつである。特に、樹脂被覆層の破断伸びが20%以上、好ましくは50%以上であり、破断強度が2kgf/mm2 以上であることが望ましい。
【0123】
ここで、樹脂被覆層の破断伸び、破断強度は、通常の引張り試験機により求められる。引張り試験方法としては、5mm×60mmの樹脂被覆層をチャック間(標点)距離30mmにセットし、25℃の一定温度下で引張り速度20mm/ 分で引張り試験を行い求めることができる。低温での引張り特性を求める場合は5℃の一定温度下で同様の引張り試験を行うことにより求めることができる。樹脂被覆層は、フィルム、樹脂被覆鋼板または成形体いずれから採取しても良い。樹脂被覆鋼板または成形体から樹脂被覆層のみ採取する方法としては、以下の方法で剥離してフィルム状として試験片に供することができる。
【0124】
樹脂被覆鋼板またはその成形体から引張り試験片サイズにサンプルを切り出し40℃の18%塩酸に10数時間程度浸漬させ、鋼板のみを溶出させることによって樹脂被覆層のみ残存するので、それを水洗乾燥することによってフィルム状試験片とすることができる。樹脂被覆鋼板またはその成形体の両面に樹脂被覆層がある場合は、採取したい樹脂被覆層の反対側の樹脂被覆層にカッターナイフ等で鋼板に達する深さのキズを格子状に入れて塩酸に浸漬することによってフィルム状の試験片を得ることができる。成形体から得られた樹脂被覆層は成形によって既に延伸されているので、フィルムまたは樹脂被覆鋼板から採取した樹脂被覆層の伸びに比べて、樹脂の伸びは小さくなるが、成形体から採取した樹脂被覆層の伸びが20%以上であり、かつ、破断強度が2kgf/mm2 であれば、成形体としての耐衝撃性は好ましい状態にある。成形体から採取した樹脂被覆層の伸びが20%未満であるか、または、破断強度が2kgf/mm2 未満の場合は成形体の樹脂皮膜の耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性が低くなり衝撃時皮膜表面にクラックが発生し易くなるので好ましくない。
【0125】
(56)樹脂被覆層の延伸度
先に、ポリエステル樹脂(A) 中におけるゴム状弾性体樹脂(C) の微分散について定義したが、本発明の樹脂組成物は金属板の表面に被覆された後、金属板が絞り加工その他の加工を施されると、加工後には微分散の状態が変化する。
一般的に述べると、被覆金属板を一方向に延伸した場合、延伸方向の微分散粒子の寸法は延伸倍率に比例して又はそれ以下の倍率で伸び、延伸方向に垂直方向の微分散粒子の寸法は延伸後ももとのまま維持されるかいく分減少する傾向にあるということができる。二方向加工や複雑な加工を行ったときは、それにつれて変形をする。
【0126】
後記の実施例に、スチール板に被覆後に深絞り加工して製缶したときの微分散したゴム状弾性体樹脂(C) の変形を観察した様子を示している。
【0127】
【実施例】
次に、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。以下の実施例及び比較例において、ポリエステル樹脂(A) としてポリエチレンテレフタレート(PET)[東洋紡(株)製RN163]、ポリブチレンテレフタレート(PBT)[東レ(株)製1401-X04] 、極性基を有するユニットを1 質量% 以上有するビニル重合体(B)としてエチレン系アイオノマー[ 三井デュポン( 株) 製ハイミラン1706、1707] 、エチレン- メタクリル酸共重合体[ 三井デュポン(株)製ニュークレルN1035]、及びコア- シェルタイプゴム状弾性体としてポリブチルアクリレート- ポリメタクリル酸メチル共重合体(MBA)[呉羽化学(株)製パラロイドEXL2314]、ゴム状弾性体樹脂(C) としてエチレン- プロピレンゴム(EPR)[JSR (株)製EP07P]、エチレン- ブテンゴム(EBM)[JSR (株)製EBM2041P] を使用した。ポリテトラフルオロエチレン含有粉体としてポリテトラフルオロエチレン粉体(平均粒径1μm)とグリシジルメタクリレート(5wt%)で変性したドデシルメタクリレート粉体との混合体(混合重量比80/20)「TF−1」、ポリテトラフルオロエチレン粉体(平均粒径1μm)と上記のPET ペレットを圧搾粉砕した粉体との混合体(混合重量比80/20)「TF−2」を使用した。TF−1,TF−2の等価楕円体の最大短径は各々50, 150μm であった。
【0128】
(実施例1 〜11)
表1 に示す各樹脂とラジカル禁止剤のテトラキス[ メチレン(3,5- ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン、TF−1とを表1 に示す各組成比で、V 型ブレンダーを使用してドライブレンドした。各樹脂の組成は表1 に示すとおりで、ラジカル禁止剤、TF−1いずれの場合も樹脂組成物(I)100質量部に対して0.1 質量部を添加した。この混合物を2 軸押出機で260 ℃で溶融混練してラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体を含有する樹脂組成物ペレットを得た。
【0129】
本樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂(A) 中のビニル重合体(B) の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。またゴム状弾性体樹脂(C) を添加した場合にはポリエステル樹脂 (A)中のビニル重合体(B) 及びゴム状弾性体樹脂(C) の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、ゴム状弾性体樹脂(C) を添加しない場合にはビニル重合体(B) の等価球換算径は表1 に示すように1 μm 以下でポリエステル樹脂(A )中に微細分散していた。またゴム状弾性体樹脂(C) を添加した場合は、何れもゴム状弾性体樹脂(C) はビニル重合体(B) でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径は表1 に示すように1 μm 以下でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。
【0130】
【表1】
【0131】
本ペレットを使用して押出しT ダイスで30μm 厚みのフィルムを得た( 押出温度:280℃) 。本フィルムを250 ℃に加熱した2.5mm 厚みのティンフリースチールの両面に張り合わせ、水冷により10秒以内に100 ℃以下まで急冷した。
このようにして得られた常温の樹脂被覆金属板について、下記に示す評価方法により、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性、及び被膜均一性の各項目の評価を行った。なお、保香性及び保味性の評価は同一の試験片を使用して評価し、密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性、および被膜均一性は、保香性及び保味性を評価した試験片とは異なる試験片を使用して評価した。
【0132】
<保香性及び保味性>
上記の樹脂被覆金属板(12.5 cm×8cm 角) を蒸留水(300mL) とともにガラス製容器に入れ、ガラス栓にて密閉した後、85℃で7 日間加熱した。内容水の香り及び味の変化を以下の基準で官能評価した。結果を表2 に示す。
◎: 香りまたは味の変化はなかった
○: 香りまたは味の変化がわずかに認められる
△: 香りまたは味の変化が認められる
×: 不快な香りまたは味が認められた
【0133】
【表2】
【0134】
<密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性>
上記の樹脂被覆金属板を、クエン酸1.5 質量%-食塩1.5 質量% の水溶液(UCC液 )に室温で24時間浸漬した後、フィルムの剥がれた長さ(mm)(10 サンプルの平均 )で評価した。評価は、◎:0.0mm、○:0.0〜0.5mm 、△:0.5〜2.0mm 、及び×:20mm 超とした。密着試験の結果を表3に示す。
【0135】
更に、本樹脂被覆金属板の耐衝撃性評価をデュポン式の落垂衝撃試験で行なった。30cmの高さから金属板に0.5kg の鉄球を落とした後、サンプルの凸状に膨らんだ側(r=8mm) が上面となるように金属板を底面にして、凸状部位の周囲に柔らかいゴム状の樹脂で壁を形成し、その中に1.0%食塩水を入れて、サンプルを陽極とし、凸状部位近傍に設置した白金を陰極として+6V の電圧をかけた際のERV 値 (mA) を測定した。ERV 値は以下の指標により評価した。また、樹脂被覆金属板を 0℃の恒温槽に24時間入れた後、同様の耐衝撃性評価を行い、低温での耐衝撃性を評価した。評価は、◎: 全サンプルが0.01mA未満、○:1〜3 サンプルが0.01mA以上、△:3〜6 サンプルが0.01mA以上、×:7サンプル以上が0.01mA以上、の基準で行なった。結果を表3 に示す。
【0136】
被膜均一性は、目視可能なゲル状異物をカウントし、単位面積あたりの発生個数に換算して評価した。評点◎:0.01個/cm2 以下、○:0.1個/cm2 以下、△:0.3個/cm2 以下、×:0.3個/cm2 超。
【表3】
(実施例12〜22)
上記実施例1〜11のポリテトラフルオロエチレン含有粉体をTF-1からTF-2に変更して混練、製膜、ラミネートし、保味性、保香性密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性を評価した。この結果、実施例1〜11とほぼ同様の結果を得た。
【0140】
(実施例23〜24)
上記実施例1 に示した各樹脂の組成比( ポリエステル樹脂(A):ビニル重合体(B):ゴム状弾性体(C )=87:3:10) の樹脂ペレット、ラジカル禁止剤のテトラキス[ メチレン(3,5- ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンおよびポリテトラフルオロエチレン含有粉体:TF-1( 実施例23)またはTF-2(実施例24) を加え、V 型ブレンダーを使用してドライブレンドした。なお、ラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体の添加量は、各々樹脂ペレット100 質量部に対して0.1 質量部であった。この混合物をT 型ダイス付2軸押出機で260 ℃で溶融混練し、幅30mm、厚さ25ミクロンのフィルムに製膜した。
【0141】
本フィルムからミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂(A) 中のビニル重合体(B) の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。またゴム状弾性体樹脂(C) を添加した場合にはポリエステル樹脂(A )中のビニル重合体(B) 及びゴム状弾性体樹脂(C) の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、ゴム状弾性体樹脂(C) はビニル重合体(B) でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径は0.6 μm でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。
【0142】
本フィルムを使用して実施例1 と同様にして樹脂被覆金属板を調製し、実施例1と同様の評価方法により、評価を行った。結果を表4 に示す。
【0143】
【表4】
【0144】
(実施例25〜37)
上記実施例23に示した各樹脂の組成比( ポリエステル樹脂(A):ゴム状弾性体樹脂(C):ビニル重合体(B) =87:10:3, 樹脂組成物(I)100に対してTF-1:0.1質量部添加) の樹脂組成物を調製する際に、ラジカル禁止剤としてテトラキス[ メチレン(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンの代わりに、表5 に示す各種ラジカル禁止剤を樹脂組成物(I)100質量部に対して各0.1 質量部添加して、樹脂組成物ペレットを調製した。
【0145】
本樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂(A) 中のビニル重合体(B) 、ゴム状弾性体樹脂(C)の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、何れもゴム状弾性体樹脂(C)はビニル重合体(B) でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径は、1 μm 以下でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。
【0146】
このようにして調製した各ペレットを使用して上記と同様の手法で樹脂被覆金属板を調製し、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性の各項目の評価を行った。結果を表6 に示す。
【0147】
【表5】
(実施例38〜50)
上記実施例25〜37のポリテトラフルオロエチレン含有粉体をTF-1からTF-2に変更して混練、製膜、ラミネートし、分散状態、保味性、保香性密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性を評価した。この結果、実施例25〜37とほぼ同様の結果を得た。
【0151】
(実施例51〜55)上記実施例1 に示した各樹脂の組成比( ポリエステル樹脂(A):ゴム状弾性体樹脂(C):ビニル重合体(B)=87:10:3)の樹脂組成物を調製する際に、ラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体としてテトラキス[ メチレン(3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンおよびTF-1を表6 に示す割合で添加して樹脂組成物ペレットを調製した。
【0152】
本樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂(A) 中のビニル重合体(B) 、ゴム状弾性体樹脂(C) の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、何れもゴム状弾性体樹脂(C) はビニル重合体(B) でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径は0.3 μm 以上1 μm 以下でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。
【0153】
このようにして調製した各ペレットを使用して上記と同様の手法で樹脂被覆金属板を調製し、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性, 低温耐衝撃性, 被膜均一性の各項目の評価を行った。結果を表6に示す。
【0154】
【表6】
(実施例56〜60)
上記実施例51〜55のポリテトラフルオロエチレン含有粉体をTF-1からTF-2に変更して混練、製膜、ラミネートし、分散状態、保味性、保香性密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性を評価した。この結果、実施例51〜55とほぼ同様の結果を得た。
【0158】
(実施例61)
上記実施例1に示した各樹脂の組成比( ポリエステル樹脂(A):ゴム状弾性体樹脂(B):ビニル重合体(C)=87:10:3)の樹脂組成物を調製する際に、ポリエステル樹脂(A) としてあらかじめTF-1を0.1質量部添加したPET を、ゴム状弾性体樹脂(B) としてEBM を、ビニル重合体(C)としてラジカル禁止剤をあらかじめ添加した1706を使用した。すなわちPET: 100質量部とTF-1: 0.1 質量部、1706の100 質量部とテトラキス[ メチレン(3,5- ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンを0.1 質量部をV 型ブレンダーを使用してドライブレンドし、この混合物を2 軸押出機で各々260℃、150 ℃で溶融混練してTF-1を含有するPET,ラジカル禁止剤を含有するビニル重合体(B) のペレットを得た。これらのペレットとゴム状弾性体樹脂(C) のペレットをV 型ブレンダーを使用してドライブレンドし、この混合物を2 軸押出機で260 ℃で溶融混練して樹脂組成物ペレットを調製した。
【0159】
本樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂(A) 中のビニル重合体(B) 、ゴム状弾性体樹脂(C) の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、ゴム状弾性体樹脂(C) はビニル重合体(B) でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径は0.5 μm でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。
【0160】
このようにして調製したペレットを使用して上記と同様の手法で樹脂被覆金属板を調製し、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性及び低温耐衝撃性の各項目の評価を行った。結果を表7に示す。
【0161】
【表7】
(実施例62)
上記実施例61のポリテトラフルオロエチレン含有粉体をTF-1からTF-2に変更して混練、製膜、ラミネートし、分散状態、保味性、保香性密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性を評価した。この結果、実施例61とほぼ同様の結果を得た。
【0162】
(実施例63〜64)
表8に示す各樹脂、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体およびラジカル禁止剤としてTF-1, テトラキス[ メチレン(3,5- ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンをV 型ブレンダーを使用してドライブレンドした。各樹脂の組成は表8に示すとおりで、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体およびラジカル禁止剤はいずれの場合も樹脂組成物(I)100質量部に対して0.1 質量部添加した。この混合物を2 軸押出機で230 ℃で溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。
【0163】
実施例1〜11と同様にして分散状態を解析した結果、分散粒子の等価球換算径は表8に示すように0.3 μm 以上1 μm 以下でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。またゴム状弾性体樹脂(C) を添加した場合にはゴム状弾性体樹脂(C)はビニル重合体(B) で100%カプセル化されていた。
【0164】
【表8】
【0165】
更に、実施例1 〜11と同様にフィルムを作成して0.19mm厚みのティンフリースチールの両面に張り合わせ、保香性、保味性、密着性, 耐衝撃性, 被膜均一性を評価した。結果を表9に示す。
【0166】
【表9】
【0167】
(実施例 65〜66)
上記実施例63 〜64のポリテトラフルオロエチレン含有粉体をTF-1からTF-2に変更して混練、製膜、ラミネートし、分散状態、保味性、保香性密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性を評価した。この結果、実施例 63〜64 とほぼ同様の結果を得た。
(実施例 67〜69)
表10に示す各樹脂,TF-1,およびラジカル禁止剤としてテトラキス[ メチレン(3、5- ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンをV型ブレンダーを使用してドライブレンドした。各樹脂の配合割合は表10に示すとおりで、ラジカル禁止剤、TF−1はいずれの場合も各樹脂組成物(I)100質量部に対して0.1 質量部添加した。この混合物を2 軸押出機で240℃で溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。
【0168】
実施例1 〜11と同様にして分散状態を解析した結果、コア- シェルタイプゴム状弾性体は表10に示すように等価球換算径1 μm 以下でポリエステル樹脂(A)中に微細分散していた。
【0169】
【表10】
【0170】
更に、実施例1 〜11と同様にフィルムを作成して( 但し、押出温度は240 ℃)、0.19mm厚みのティンフリースチールの両面に張り合わせ、保香性、保味性、密着性及び耐衝撃性を評価した。結果を表11に示す。
【0171】
【表11】
(実施例 70〜72)
上記実施例 67〜69 のポリテトラフルオロエチレン含有粉体をTF-1からTF-2に変更して混練、製膜、ラミネートし、分散状態、保味性、保香性密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性および被膜均一性を評価した。この結果、実施例 67〜69 とほぼ同様の結果を得た。
【0176】
(比較例1〜6 )
表12に示す各樹脂を、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体およびラジカル禁止剤を加えずにV 型ブレンダーを使用してドライブレンドした。この混合物を2軸押出機で230 ℃で溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。実施例1〜11と同様にして分散状態を解析した結果、粒子の等価球換算径は表12に示すように1 μm 以下でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。またゴム状弾性体樹脂(C) はビニル重合体(B) で100%カプセル化されていた。
【0177】
【表12】
【0178】
更に、実施例1〜11と同様にフィルムを作成して0.19mm厚みのティンフリースチールの両面に張り合わせ、保香性、保味性、密着性及、耐衝撃性、被膜均一性を評価した。結果を表13に示す。
【0179】
【表13】
【0180】
いずれの場合もラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加した樹脂組成物を使用した場合と比較して、密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性は変化がないが、保香性、保味性および被膜均一性の点で劣ることがわかった。
(比較例7 )
ポリエステル樹脂としてPET を、コア- シェルゴム状弾性体としてMBA を90:10の質量比で、ラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加せずにドライブレンドした。この混合物を2 軸押出機で240 ℃で溶融混練して樹脂組成物(I) ペレットを得た。実施例1〜11と同様にして分散状態を解析した結果、コア- シェルタイプゴム状弾性体は等価球換算径0.25μm でポリエステル樹脂中に微細分散していた。
【0181】
更に、実施例1〜11と同様にフィルムを作成して2.5mm 厚みのティンフリースチールの両面に張り合わせ、保香性、保味性、密着性、耐衝撃性、被膜均一性を評価した。結果を表14に示す。
【0182】
【表14】
【0183】
ラジカル禁止剤およびポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加した樹脂組成物を使用した場合と比較して、密着性、常温耐撃性、低温耐衝撃性は変化がないが、保香性、保味性、被膜均一性の点で劣ることがわかった。
【0186】
(比較例8)
比較例1のポリエステル樹脂(A):ゴム状弾性体樹脂(C):ビニル重合体(B)=87:10:3の樹脂組成物を調製する際に、TF−1および金属不活性化剤として3-(N-サリチロイル) アミノ-1,2,4- トリアゾールを樹脂組成物(I)100質量部に対して0.1 質量部添加して樹脂組成物ペレットを調製した。実施例1〜11と同様にして分散状態を解析した結果、ゴム状弾性体樹脂(C) はビニル重合体(B) で100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径1.3 μm でポリエステル樹脂中に微細分散していた。
【0187】
このようにして調製したペレットを使用して樹脂被覆金属板を調製し、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性及び低温耐衝撃性の各項目の評価を行った。結果を表15に示す。
【0188】
【表15】
【0189】
添加剤として金属不活性化剤を使用した場合には、保香性及び保味性の改善は見られなかった。
【0192】
(比較例9,10)
上記実施例1 に示した各樹脂の組成比( ポリエステル樹脂(A):ゴム状弾性体樹脂(C):ビニル重合体(B)=87:10:3)の樹脂組成物を調製する際に、TF−1を樹脂組成物(I) に対して0.1質量部、ラジカル禁止剤としてテトラキス[ メチレン(3,5- ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンを下記の各割合添加して樹脂組成物ペレットを調製した。
【0193】
本樹脂組成物からミクロトームで超薄切片を切り出した後、ルテニウム酸で染色し、ポリエステル樹脂(A) 中のビニル重合体(B) 、ゴム状弾性体樹脂(C) の分散状態を透過型電子顕微鏡で解析した。この結果、何れもゴム状弾性体樹脂(C) はビニル重合体(B) でほぼ100%カプセル化されており、ゴム状弾性体樹脂(C) の等価球換算径は0.3 μm 以上1 μm 以下でポリエステル樹脂(A) 中に微細分散していた。
【0194】
このようにして調製した各ペレットを使用して上記と同様の手法で樹脂被覆金属板を調製し、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性、被膜均一性の各項目の評価を行った。結果を表16に示す。
【0195】
【表16】
【0196】
ラジカル禁止剤の添加量が0.001 質量部未満であると、十分に保香性及び保味性が改善されないことがわかった。また、ラジカル禁止剤の添加量が10質量部に達すると、密着性及び耐衝撃性が低下することがわかった。
(溶融張力増大確認例)
実施例1〜11と比較例1〜10の樹脂組成物をTダイスで厚さ30μm のフィルムに成形した際のネックインの大きさにより、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体による溶融張力の増大を確認した。本結果は、溶融張力が増加して凝固による熱収縮を抑制したことに起因していると推定される。
(比較例11〜12)
実施例1, 3の樹脂組成物からTF-1を除外して、これら実施例と同様に混練、製膜、ラミネートし、分散性、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性、被膜均一性の各項目の評価を行った。被膜均一性以外ほぼ実施例と同一であったが、被膜均一性はこれらに比較して劣っていた(×又は△)。
(比較例13〜14)
TF-1の添加量を樹脂組成物(I) に対して0.0009 質量部(比較例13)、7.5質量部(比較例14)に変更した以外はすべて実施例3と同一にして、同様に混練、製膜、ラミネートし、分散性、保香性、保味性、密着性、常温耐衝撃性、低温耐衝撃性、被膜均一性の各項目の評価を行った。比較例13では被膜均一性以外は実施例3と同一であったが、被膜均一性は劣っていた(×又は△)。また、比較例14では密着性が著しく低下した。比較例13〜14より、被膜均一性を確保するためには、適正量のポリテトラフルオロエチレン含有粉体添加が必要なこと、さらにある量以上当該粉体を添加すると密着性が低下することが分かる。
(比較例15)
特公平2-9935号公報の実施例に基づき、PBT とPET の2 層からなる2 軸延伸フィルム(PBT層:10μm 、PET 層:20 μm 、PET 層のフィルム厚さ方向の屈折率:1.526)を実施例1〜11と同一条件でティンフリースチール上に熱圧着し(PBT層がティンフリースチールと接着するように被覆) 、密着性及び耐衝撃性を実施例1〜11と同様に評価した。
【0197】
(比較例16)
特開平2-57339 号公報の実施例に基づき、2 軸延伸ポリエステルフィルム( テレフタル酸/ イソフタル酸/ エチレングリコール残基(78/22/100) から構成され、比重1.3387、30μm 厚み、面配向係数0.120 のフィルム) を実施例1〜11と同一条件でティンフリースチール上に熱圧着し、密着性及び耐衝撃性を実施例1〜11と同様に評価した。
【0198】
(比較例17)
特開昭64-22530号公報の実施例1 に基づき、108 μm 未延伸PET フィルムを95℃で縦方向に2.7 倍、105 ℃で横方向に2.6 倍に延伸した後熱処理し、約20μmの延伸フィルムを得た。本フィルムを実施例1〜11と同一条件でティンフリースチール上に熱圧着し、密着性及び耐衝撃性を実施例1〜11と同様に評価した。結果を表17に示す。
【0199】
【表17】
【0200】
これらの従来の方法による樹脂では、十分な密着性及び耐衝撃性が得られなかった。
(実施例73 〜77、比較例18〜20)
実施例1, 7, 63, 64, 68、比較例15〜17で得られた樹脂被覆金属板を、150mm 径の円盤状に切り取り、絞りダイスとポンチを用いて4 段階で深絞り加工し、55mm径の側面無継目容器( 以下缶と略す) を各々10缶作成した。
【0201】
これらの缶について、以下の観察及び試験を行い、各々下記の基準で評価した結果を表18に示す。
(1) 深絞り加工性I( フィルム表層の評価)
○ ;全10缶について、フィルムに異常なく加工され、缶内外面のフィルムに白化や破断が認められない。
【0202】
△ ;1 〜5 缶について、缶上部にフィルムの白化が認められる。
× ;6 缶以上について、フィルムの一部にフィルム破断が認められる。
(2) 深絞り加工性II( 缶内側フィルムの評価)
○ ;全10缶が内外面とも異常なく加工され、缶内側フィルム面の防錆試験(1.0% 食塩水を入れ、缶を陽極とし、白金を陰極として+6V の電圧をかけたときに流れる電流値(ERV値)(mA))において、0.1mA 以下を示す。
【0203】
× ;3 缶以上が缶内側フィルム面の防錆試験で0.1mA 超を示す。
(3) 耐衝撃性
深絞り加工が良好な缶について、水を満注し、各サンプルにつき10缶づつ高さ 10cm から塩ビタイル床面に落とした後、缶内のERV 試験を行った。
○ ;全10缶が0.1mA 以下であった。
【0204】
△ ;1 〜5 缶が0.1mA 超であった。
× ;6 缶以上が0.1mA 超であった。
(4) 耐熱脆化性
深絞り加工が良好な缶を200 ℃×5 分間、加熱保持した後、上記の方法で耐衝撃性を測定し、耐熱脆化性を評価した。
【0205】
【表18】
【0206】
以上の結果より、本発明のラジカル禁止剤およびリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加した樹脂組成物は、金属との密着性及び耐衝撃性に優れ、特に低温での耐衝撃性に優れており、さらに従来技術に比較して保香性、保味性、被膜均一性に優れていることが分かる。また、本発明の樹脂被覆金属板は被膜の加工追従性に優れ、本発明の樹脂被覆金属容器も耐衝撃性や耐熱脆化性に優れていることが分かる。
【0207】
(参考例1 :TOC と保香性の相関)
92:8の組成比で、ポリエステル樹脂(A) 及びビニル重合体(B)ペレットをV 型ブレンダーを使用してドライブレンドした。この混合物を2 軸押出機で260 ℃で溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。本ペレットを使用して、実施例1〜11と同様に樹脂被覆金属板を調製した。
【0208】
この樹脂被覆金属板(12.5 cm×8cm 角) を蒸留水(300mL) とともにガラス製容器に入れ、ガラス栓にて密閉した後、85℃で所定時間後に、内容水のTOC 値(ppm )および香り及び味の変化を実施例1〜11と同様の基準で評価した。結果を表19に示す。
【0209】
【表19】
【0210】
以上の結果により、内容水の臭気は水中に含まれる有機物質の量と相関が有ることがわかった。
(参考例2 :樹脂の種類とTOC 値)
実施例1 に記載の樹脂原料を使用してラジカル禁止剤を含有しない樹脂組成物(I)のペレットを調製した。さらに実施例1 に記載の樹脂原料のうち2 種を使用してラジカル禁止剤を含有しない樹脂混合物のペレットを調製した。
【0211】
これらペレット及び原料樹脂ペレットのTOC 値を参考例1 に示す方法で、7 日後に測定した。結果を表20に示す。
【0212】
【表20】
【0213】
260 ℃で溶融混練する条件では、原料の樹脂3 種、PET とEBM の混合樹脂、及びEBM と1706の混合樹脂ではTOC 値が低く、PET+EBM+1706及びPET+1706の混合樹脂ではTOC 値が高いことから、TOC は単なる熱分解により生じているのではないことが明らかになった。(参考例3 :PET 樹脂中の金属元素分析)市販のPET 樹脂の元素分析を行い、以下の金属元素が含有されていることを確認した( 表中の単位はmg/Kg)(表21)。
【0214】
【表21】
【0215】
(参考例4 :PET 樹脂中の金属元素量とTOC 値)
表19記載のPET 樹脂C 及び、PET 樹脂C に酸化ゲルマニウム200ppmを添加したPET樹脂D をそれぞれ使用して実施例1 に記載の方法で、ラジカル禁止剤を添加せずに樹脂ペレットを調製した。このペレットのTOC 値を参考例1 の方法で7 日後に測定したその結果PET 樹脂Cを使用して調製した樹脂ペレットからは5ppm, PET 樹脂D を使用して調製した樹脂ペレットからは16ppm のTOCが観測され、酸化ゲルマニウムが樹脂の分解を促進することが確認された。
【0216】
(三元系樹脂組成物の断面観察)
実施例10で述べた方法でラジカル禁止剤を含有するフィルムを調製した。こうして得られた三元系樹脂組成物シートのサンプルの断面の電子顕微鏡写真を図1に示す。PETマトリックス中に極性基含有ビニル重合体(最も黒い部分)でカプセル化されたゴム状弾性体樹脂(灰色部分)がサブミクロンオーダーで分散している様子がみられる。
【0217】
(被覆樹脂の延伸度の観察例)
実施例3の樹脂組成物をTダイスで厚さ30μm のフィルムに成形し、この樹脂フィルムを、250 ℃に加熱した厚さ2.5mmのティンフリースチールの両面に貼り合わせ、水冷により10秒以内に100 ℃以下まで急冷した。得られた樹脂被覆綱板をブランク径179mm 、1 段目絞り比1.6 、2 段目絞り比0.73 、3 段目絞り比0.8 で絞り加工して、缶径66mm、缶高さ122mm の缶に成形した。この成形後の缶から、図2に示すように、缶底から高さ20mm、50mm及び90mmの位置を中心とする缶胴のサンプルを切り出し、液体窒素で缶内面側の板厚方向の樹脂被覆層が出るように破壊して、缶の輪切り方向及び缶鉛直方向の2 方向から観察用のサンプルを採取した。
【0218】
採取したサンプルの樹脂被覆層中の(B)(C)相の形態観察は電子顕微鏡(SEM) で行った。(A) 相と(B)(C)相の境界が分かりにくいときは、採取したサンプルをキシレン溶媒中で超音波洗浄することにより(B)(C)相のみを選択的に溶解除去した。図3〜6の写真はこのようにして電子顕微鏡で撮影した、缶胴上部輪切り方向の樹脂被覆層の断面(図3)、缶胴上部鉛直方向の樹脂被覆層の断面(図4)、缶胴下部輪切り方向の樹脂被覆層の断面(図5)、缶胴下部鉛直方向の樹脂被覆層の断面(図6)のSEM写真である。
【0219】
図3〜6を参照すると、缶成形体の缶胴壁は絞り成形によって周方向には縮み、高さ方向には伸びるような変形を受けており、樹脂被覆層も同様の変形を受けている。このため、樹脂被覆層中の主体をなす(A) 相の変形に追従して(B)(C)相も缶高さ方向に細長く変形している。このように、(B)(C)相の形態は、フィルムあるいは樹脂被覆板が変形を受けない状態では球形に近い形をしているが、フィルムあるいは樹脂被覆板が形成等によって塑性変形すると、(B)(C)相も元の球形から追従して変形している。
【0220】
しかし、本発明の樹脂組成物を使用した樹脂被覆金属板を缶等に成形すると金属基層の変形形態に応じて樹脂被覆層中の(B)(C)相も変形した形態で存在するが、変形を受けていない樹脂組成物中に存在する(B)(C)相と本質的に異なるものではなく、同等の機能を持っているものである。
図7に、採取した缶の高さと位置と、電子顕微鏡写真から得られた(B)(C)相の形態の最大長さ(鉛直方向の粒径)と最小長さ(輪切り方向の粒径)の比(アスペクト比)の関係を示す。
【0221】
なお、この例の変形の他にも、フィルムの延伸やラミネート時の熱圧着による樹脂被覆層の変形によっても(B)(C)相が変形した形で存在することがあるが、本質的に変形を受けていない樹脂組成物中で存在する(B)(C)相と異なるものではなく、同等の機能効果をもっていることが確認されている。
【0222】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物においては、ポリエステル樹脂(A) の耐熱性、加工性、金属板への密着性、ガスバリア性、フレーバー性, 被膜均一性等の特性を確保したまま、ビニル重合体(B)及びゴム状弾性体樹脂(C)によりポリエステル樹脂(A) のさらなる伸びや耐衝撃性が改善される。さらに、ポリエステル樹脂(A) によるビニル重合体(B) の分解を抑制するラジカル禁止剤を添加することにより、樹脂の劣化、低分子量有機成分の発生を抑制する事が出来る。そしてさらにテトラフルオロエチレン含有粉体を添加することにより、加熱混合時の溶融張力を増大してバレル等での流動停止部への樹脂付着・滞留を防止してゲル状異物の発生を抑制できる。また、ラジカル禁止剤やテトラフルオロエチレン含有粉体の働きを抑制しないようなゴム状弾性体樹脂(C) は極性を有するビニル重合体(B) によりカプセル化されることにより、ポリエステル樹脂(A) とゴム状弾性体樹脂(C) との相溶性が改善されると共に、金属板とゴム状弾性体樹脂(C) との直接接触を防止して金属板と樹脂組成物との密着性を確保できる。この結果として、保香性、保味性、成形性、耐熱性、耐衝撃性、被膜均一性、耐薬品性、機械強度、金属との密着性、水や酸素などの腐食因子バリア性等の各種特性に優れ、特に金属板の被覆用材料として好適に使用することが可能である。
【0223】
更に、本発明の樹脂フィルム、樹脂被覆金属板、及び樹脂被覆金属容器は、本発明の樹脂組成物を使用しているため、各々金属板の被覆材、容器を始めとした各種金属部材、及び保存性とフレーバー性に優れた金属容器として好適に使用することが可能である。
また、本発明の樹脂被覆金属板は、予め金属板表面が樹脂で被覆されているため、需要家での塗装工程を省略することも可能であり、需要家における省工程・省コストにも貢献できる効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】三元系樹脂組成物中の各樹脂相の分散形態の観察用サンプルの断面のSEM写真。
【図2】缶形成後の樹脂被覆層中の樹脂(B)(C)相の分散形態の観察用サンプルの採取位置を示す缶の斜視図。
【図3】缶胴上部輪切り方向の樹脂被覆層の断面のSEM写真。
【図4】缶胴上部鉛直方向の樹脂被覆層の断面のSEM写真。
【図5】缶胴下部輪切り方向の樹脂被覆層の断面のSEM写真。
【図6】缶胴下部鉛直方向の樹脂被覆層の断面のSEM写真。
【図7】缶形成後の樹脂被覆層中の樹脂(B)(C)相のアスペクト比と缶壁高さの関係を示す図。
Claims (6)
- ポリエステル樹脂(A);
ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV) 0.5 以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体(B);
加熱混合したときに、ポリエステル樹脂(A)中に微細分散され、かつ、ポリエステル樹脂(A)との界面の80%以上がビニル重合体(B)で被覆されてカプセル化された構造を形成する、ポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体樹脂(C);
ラジカル禁止剤;及び
粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a)とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m 3 ) 1/2 以下であり圧搾粉砕した有機系重合体粒子(b)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体;
を含有してなり、ポリエステル樹脂(A)、ビニル重合体(B)、及びゴム状弾性体樹脂(C)を含有する樹脂組成物(I) 100質量部に対して、前記ラジカル禁止剤を0.001〜7質量部、前記ポリテトラフルオロエチレン含有粉体を0.001〜7質量部を含有することを特徴とする樹脂組成物。 - 前記有機系重合体粒子(b)が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を1質量%以上含有する重合体もしくはポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜2のいずれかに記載のラジカル禁止剤とポリテトラフルオロエチレン含有粉体とを含有する樹脂組成物を、単独で成形し、又は他の樹脂組成物及び/ 又は接着剤と組み合わせて積層成形もしくは塗布してなることを特徴とする樹脂フィルム。
- 金属板の片面及び/又は両面に、少なくとも請求項3に記載の樹脂フィルムを用いて単一層状に又は他の樹脂組成物及び/又は接着剤と組み合わせて多層状に積層して被覆してなる樹脂被覆金属板。
- 請求項4に記載の樹脂被覆金属板を成形してなる樹脂被覆金属容器。
- ポリエステル製造触媒の残留物である金属化合物を含むポリエステル樹脂(A) 、ポーリングの電気陰性度差が0.39(eV)0.5以上ある元素間の結合を含む極性基を有するユニットを1 質量% 以上含有するビニル重合体(B)、及びポリオレフィン樹脂であるゴム状弾性体樹脂(C)を含有する樹脂組成物(I)を混合する工程において、ポリエステル樹脂(A)、ビニル重合体(B)、又はゴム状弾性体樹脂(C)のいずれか1種以上に予めラジカル禁止剤、および粒子径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子(a)とFedors法により算出された溶解度パラメーターの差がポリエステル樹脂(A)およびビニル重合体(B)に対して10(MJ/m3)1/2以下である有機系重合体粒子(b)とからなるポリテトラフルオロエチレン含有粉体を添加する工程をさらに有し、前記樹脂組成物(I) 100質量部に対して添加するラジカル禁止剤が0.001〜7質量部であり、添加するポリテトラフルオロエチレン含有粉体が0.001〜7質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物を製造する方法。
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