JP4226103B2 - 樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムやスチールを素材とした金属缶・容器は、その形状からスリーピース缶とツーピース缶とに大別される。スリーピース缶は、地蓋、缶胴、天蓋からなるためスリーピース缶と呼ばれている。一方ツーピース缶は、地蓋と缶胴とが一体となったもので、それに天蓋とからなるためツーピース缶、または、缶胴部に接合部がないことからシームレス缶とも呼ばれている。
【0003】
金属缶の場合、缶内面には耐食性を確保するため塗装が施されて使用されているが、近年、樹脂フィルムを積層したラミネート缶が開発され、市場に出回っている。ラミネート缶は、金属素材に樹脂フィルムを積層させたものから、缶体成形加工を行うものが主であり、特にツーピース缶を得るには高度な成形加工技術を必要とする。かかる意味においても、ツーピースのラミネート缶に関わる技術は、例えば特開平7−2241号公報、特開平7−195619号公報、特開平8−244750号公報等、数多く提案され、開示されている。
【0004】
ラミネート缶のメリットは、消費者側から見た場合、適用する有機樹脂フィルムにもよるが、耐内容物性、特に内容物の味、風味といったフレーバー性に優れている点が第一に挙げられている。一方、デメリットとしては、今度はメーカー側からであるが、前述したようにツーピース缶の場合、有機樹脂フィルム被覆金属板の加工度合(又は、変形度合)が大きいので成形時に内面樹脂フィルムに傷が入ったりして、缶内面の品質確保ができなくなるため、缶体の品質検査を厳重に行う必要があることと、製品歩留りが現行の塗装缶に比し劣るといった点が挙げられる。
【0005】
特に、スチール素材を用いたツーピースラミネート缶の場合、前記の傾向が大きいが、アルミニウム素材のラミネート缶でも同様なことが起こる。こうしたラミネート缶の内面樹脂フィルムの皮膜欠陥は、前述したように缶成形加工時に入るものであり、この欠陥を最小限に抑えることは、品質、製品歩留まりの点から重要な技術課題であることは言うまでもない。
しかし、しごき加工を伴うツーピース缶成形の場合、特にその高加工率の場合、適切な方法がないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、皮膜欠陥のない高品質なシームレス缶を歩留まりよく提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、板厚0.20mm〜0.32mmのアルミニウム板の両面に、ポリエステル樹脂フィルムを被覆したラミネートアルミニウム板を、カップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工を行ってシームレス缶を得るポリエステル樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法において、前記アルミニウム板の両面に被覆したポリエステル樹脂フィルムが、(1)ポリエチレンテレフタレート、(2)ポリブチレンテレフタレート、(3)ポリエチレンイソフタレート、(4)ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合樹脂、または(5)これらのブレンド樹脂、よりなるものであり、このフィルムをその厚み10〜50μm、密度1.36g/cm未満の非晶質状態となるようにした後、カップの絞り加工を被覆樹脂のガラス転移温度(Tg)から樹脂の冷結晶化温度(Tc)の範囲で行い、次いで、絞り加工で得たカップに冷風を当ててカップの缶体温度を30〜50℃にした後、カップの再絞り加工およびしごき加工を、加工金型の温度を60〜120℃で加工し、得られた缶体を加熱・冷却し、再度被覆した樹脂フィルムの密度を1.36g/cm未満の非晶質状態にした後、ネック加工およびフランジ加工をすることを特徴とする樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明の方法における缶体の成形加工について述べる。
本発明の缶体の成形加工方法は、樹脂被覆ラミネートアルミニウム板を絞り加工によりカップ状に成形する第1工程と、ついで第1工程で得たカップを更に再絞り加工し、第1工程で得たカップより缶径が小さく缶高さの高いカップを成形すると同時に、このカップの缶壁部をパンチとしごきダイスの間に通し、缶壁を薄く伸ばすしごき加工を同一成形加工機により行う第2工程と、第2工程で得た缶体を適当な缶高さに切断するトリミングを行った後、缶開口部を縮径にするネック加工と天蓋を巻き締めるのに必要なフランジ加工を同一加工機で行う第3工程からなっている。
【0009】
本発明の方法では、絞り加工がラミネート板の温度を被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲で行われる。絞り加工の温度を被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に限定した理由は、絞り加工による缶底部コーナーの被膜健全性を確保するためである。
【0010】
絞り加工による缶底部コーナーの被膜は、パンチが最初に当たる個所であり、高い衝撃がかかる。従って、この部位の樹脂フィルムにマイクロクラックが生じた場合、その後の再絞り加工およびしごき加工で、ひどい被膜欠陥となってしまう危険性が大きく、絞り加工による缶底部コーナーの被膜健全性の確保は、缶体の内面品質の点から重要な要素となる。このような観点から、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)未満での加工は、缶底部コーナーの樹脂フィルムにマイクロクラックが生じ易く、好ましくない。また、冷結晶化温度(Tc)を超えて絞り加工を行った場合は、樹脂の熱結晶化が起こり易くなり、樹脂フィルムの衝撃強度が低下し、缶底部コーナーの樹脂フィルムにマイクロクラックが生じ易く、好ましくない。
従って、本発明の方法では絞り加工は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲で行う必要がある。
【0011】
絞り加工を、被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に限定したのは、上記の理由からで、好ましくはガラス転移温度(Tg)+5℃から冷結晶化温度(Tc)−10℃の範囲が良い。
絞り加工に供するラミネート板の温度とは、接触式温度計等で測定される表面温度を指し、ラミネート板の温度を、被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に制御する手段としては、ラミネート板を電気炉中で加熱する方法や熱風で加熱する方法等、常用の手段が適用される。
また、絞り加工を行う金型の表面温度を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に加熱して成形加工する加温加工方法も、ラミネート板を加熱した場合と同様な効果が得られるが、この場合は、絞り加工を行う前のラミネート板の表面温度により、加工金型の設定温度を決める必要があるが、ラミネート板の表面温度が、例えば常温の場合は、設定温度はガラス転移温度(Tg)より10〜15℃高めに設定すると良い。
また、上記の常用の手段でラミネート板の加熱を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲にして成形加工する方法と、加工を行う金型の表面温度を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に加熱して成形加工する加温加工方法の併用も可能であり、設備にあった手段が採用できる。
【0012】
次に、再絞り加工およびしごき加工について述べる。
本発明の方法における、再絞り加工およびしごき加工は、絞り加工で得たカップの缶体温度を50℃以下にした後、加工金型の温度を120℃以下で行う。前述した缶体内面の皮膜欠陥は、この再絞り加工及びしごき加工で起こり易い。その理由は、成形加工の際に金属の加工熱が発生し、樹脂フィルムの特性を大きく変化させるためである。熱による樹脂フィルムの特性変化は、(1)樹脂フィルムの軟化、(2)樹脂フィルムの結晶化などがあるが、いずれの特性変化も成形加工による皮膜欠陥の発生原因となる。
【0013】
即ち、(1)樹脂フィルムが軟化した場合は、樹脂フィルムと成形加工金型との離型性が悪くなり、その結果離型時に樹脂フィルムに傷を付け易くなる。また、(2)樹脂フィルムが結晶化した場合は、アルミニウム板の成形加工形状に樹脂フィルムが追随し難くなり、その結果樹脂フィルムに欠陥が発生し易くなる。
【0014】
従って、この成形加工の温度制御は樹脂フィルムの欠陥発生防止の点から重要な要素であり、本発明の方法では絞り加工で得たカップの缶体温度を50℃以下とすることが必要である。カップの缶体温度が50℃を超えると、樹脂フィルムと成形加工金型との離型性が悪く、樹脂フィルムが傷つき易く、缶体の内面側は耐食性確保が難しい。また、外面側は「カジリ」と言った、しごきダイスによる缶高さ方向への傷が入り易くなり、その後行われる印刷での外観性が劣り、好ましくない。
【0015】
また、加工金型の温度は、120℃以下として再絞り加工およびしごき加工を行うが、120℃を超える温度では、樹脂フィルムが軟化して成形加工金型との離型性が悪くなるため、かえって樹脂フィルムの傷付きがひどくなり缶内面の耐食性確保が難しいと共に、場合によっては樹脂フィルムと成形加工金型との離型の際に缶胴部が座屈し、正常な缶体が得られないといった事態となることがある。また、外面側は、前述した「カジリ」が激しく入り、その後行われる印刷での外観性が劣るだけでなく、場合によっては「カジリ」部を起点とする缶胴破断が起こり、好ましくない。再絞り加工およびしごき加工の際、加工金型全体の温度を120℃以下で行うのが好ましいが、特に加工度が低い場合は、加工パンチの温度を120℃以下にするだけでも、樹脂フィルムの欠陥防止効果は得られる。再絞り加工およびしごき加工の際の加工金型全体の温度、または加工パンチの温度は、基本的には低い方が良く、好適な温度としては100℃以下にするのが好ましい。なお、しごき加工はしごきダイスを1枚で行う1段しごき加工や、2枚ないしは3枚で行う多段しごき加工などが適用できる。
【0016】
絞り加工で得たカップの缶体温度を50℃以下にする手段としては、絞り加工で得たカップが50℃以上の場合は冷風を当てる等の手法が採用でき、また、加工金型の温度を120℃以下にする手段としては、金型に冷却水を通す方法、水、又は潤滑成分を水に溶解または分散させたものを吹きかけて冷却する方法、更にはこれらの併用といった方法が採用できる。どの手法を採用するかは、設備との関係で適宜選択することが好ましい。
【0017】
なお、本発明の方法では、カップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工における、缶壁部の板厚減少度、即ち加工度は特別限定するものではないが、皮膜欠陥の防止という観点からは、加工度は小さい方が良いが、缶重量が重くなり不経済となるため、缶壁部のアルミニウム板厚(Wt)が、缶底部のアルミニウム板厚(Bt)との関係において、
【数1】
加工度=〔(Bt−Wt)/Bt〕×100=50〜70%
の範囲で成形加工を行うことが好ましい。
【0018】
次に、アルミニウム板について説明する。
本発明の方法に適用されるアルミニウム板は、通常缶容器に用いられる3004系アルミニウム合金や5052系アルミニウム合金、5081系アルミニウム合金等種々のアルミニウム合金が適用される。アルミニウム合金の板厚としては、0.20mm〜0.32mmのものが適用される。板厚が0.20mm未満では、炭酸飲料やビール等を充填、密封する内圧缶の場合、耐圧強度が十分でなく缶底部が張りだした状態になる場合があり、好ましくない。一方、0.32mmを超えると、缶の耐圧強度は十分に確保されるが、実質的には品質過剰であり、経済的でない。
【0019】
板厚の限定理由は、上述のように缶の耐圧強度から限定したものである。従って適用するアルミニウム合金板の機械的特性、特に耐力強度と関わりがある。即ち、耐力強度が高い場合は板厚の薄手化が可能となるが、実際には本発明を実施する際は、板厚は缶全体の強度バランスを考慮し、適宜選択することが望ましい。
【0020】
次に、本発明の方法に適用される樹脂フィルムについて説明する。
本発明方法での樹脂フィルムは、ポリエステル樹脂フィルムが使用される。ポリエステル樹脂は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)のようなホモポリマーや、例えばポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合樹脂であるコーポリマーや、またこうしたホモポリマー同士あるいはコポリマーとのブレンド樹脂等が使用される。
【0021】
樹脂フィルムの厚みとしては、10〜50μmである。缶の内面に当たる面に積層される樹脂フィルムの厚みは、缶内面の耐食性の点から限定されるものであり、10μm未満では缶の成形加工後に充填する内容物にもよるが、十分な耐食性を確保するのは難しい場合がある。
一方、50μmを超えると、内容物に対し耐食性は十分確保されるが、実質的に過剰品質となり、経済的でない。したがって、樹脂フィルムの厚みとしては、12〜40μmが品質および経済性からは好ましい範囲である。
【0022】
また、本発明の方法を実施する際、樹脂フィルムの厚みの選定は、後述する缶壁部の薄肉化の加工度との関係があることも選定の際の重要な要素である。
即ち、加工度が高い場合は、当然その加工度に応じ樹脂フィルムの厚みも薄くなるため、缶内面の耐食性も低下する。従って予め厚手の樹脂フィルムを使用することが望ましい。一方、加工度が低い場合はそれに応じて予め薄手のフィルムを適用することが可能となる。
【0023】
本発明の方法に適用されるポリエステル樹脂フィルムの密度は1.36g/cm 未満である。密度は樹脂の結晶状態を示す指標となり、例えば、延伸された樹脂フィルムなどの結晶化度が高い場合は、密度は大きくなる。密度が1.36g/cm 未満であるということは、ポリエステル樹脂の状態としては非晶質であることを示す。従って、本発明の方法では、樹脂フィルムの非晶質状態はカップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工を行う直前の樹脂フィルムが被覆されたラミネート材と、ネック加工およびフランジ加工直前の缶体と、二度非晶質状態となる。
【0024】
まず、樹脂フィルム被覆ラミネート材を非晶質にする理由は、その後行うカップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工において、樹脂フィルムの加工性を十分に確保することを目的にしたもので、密度が1.36g/cm を超えると、成形加工にフィルムが耐えられずフィルム破断が起こる場合がある。特に、加工度が大きい時はこの傾向が顕著に現れ、缶体の耐食性が十分に確保できない。
【0025】
また、ネック加工およびフランジ加工直前の缶体を加熱し、再度樹脂フィルムの状態を非晶質にする理由は、ネック加工及びフランジ加工に耐える加工性を有する樹脂フィルムにするためで、特に、ネック加工率の高いいわゆる高縮径缶体においては、樹脂フィルムの密度が1.36g/cm を超えた場合はフィルム剥離が発生しやすくなる。
従って、本発明の方法では、カップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工の缶成形加工を施した後、得られた缶体を加熱し再度樹脂フィルムの密度を1.36g/cm 未満にした後、ネック加工およびフランジ加工を行う。
【0026】
カップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工を経て得られる缶体は、この時の加工により、樹脂フィルムの密着性は著しく低下しており、この状態でネック加工およびフランジ加工を行うと、樹脂フィルムは剥離する。そこで、本発明の方法では、缶体を加熱・冷却し再度樹脂フィルムの密度を1.36g/cm 未満にした後、ネック加工およびフランジ加工に供するものである。樹脂フィルムの密度を1.36g/cm 未満にすることで、樹脂フィルムは剥離やクラックが発生することなくネック加工およびフランジ加工を行うことができる。特に、ネック加工率が高い、高縮径化への対応については、樹脂フィルムの耐加工密着性が一層必要となり、この場合樹脂フィルムの密度は低い方が非晶質化度が高いため、良好となる。樹脂フィルムの密度は、カップへの絞り加工や、ネック加工・フランジ加工前の状態として、好ましくは1.35g/cm 未満が好適である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例にて、本発明の方法の効果を具体的に説明するが、その前に本発明の方法で行った評価方法に付いて述べる。
(1)樹脂フィルムの密度は、密度勾配管法により測定した。
(2)樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)および冷結晶化温度(Tc)の測定は、示差走査熱量計(DSC)で、10℃/分の昇温速度で測定し、ガラス転移温度は転移が始まる点をその温度とし、また冷結晶化温度はピー
クをその温度とした。
(3)カップの絞り加工後の缶底部コーナーのマイクロクラックについては、光学顕微鏡で観察しその程度を評価した。評価は次のように評価基準を設定
定して行った。
〇:クラックなく良好 □:軽微なクラック発生
△:明確なクラック発生 ×:激しいクラック発生
(4)再絞り加工およびしごき加工時の樹脂フィルムと加工パンチの離型性は、成形缶上部に起こる缶体の座屈程度を観察し評価した。また、缶外面に発生するカジリ程度は、傷付き程度を肉眼観察や光学顕微鏡で観察して評価
した。
▲1▼離型性の評価は、次のように評価基準を設定し行った。
〇:缶開口部の座屈なく良好 □:軽微な缶開口部の座屈あり
△:開口部円周の1/3程度座屈 ×:開口部円周の1/3以上座屈
▲2▼カジリ性の評価は、次のように評価基準を設定し行った。
〇:カジリなく良好 □:軽微なカジリが1〜3本発生
△:明確なカジリが1〜3本発生 ×:激しいカジリ発生
(5)ネック加工及びフランジ加工での樹脂フィルムの状態については、剥離状況やクラック発生状況を肉眼観察や光学顕微鏡で観察し評価した。剥離状
況やクラック発生状況の評価は、次のように評価基準を設定し行った。
〇:剥離やクラックなく良好 □:軽微なクラック発生
△:一部剥離やクラック発生 ×:剥離発生
(6)缶内面の樹脂フィルムの傷付き程度については、1.0wt%食塩水に
界面活性剤0.1wt%を添加した電解液で、缶体を陽極、陰極は銅線とし、印加電圧6Vで3秒後の電流値を測定し、樹脂フィルムの被膜の健全
性の評価とした(以下、この評価法をQTV試験と称する)。
【0028】
実験例1
板厚0.26mmのアルミニウム板の両面に、ガラス転移温度(Tg)が63℃、冷結晶化温度(Tc)が117℃の、厚み20μmのポリエステル樹脂フィルムを被覆したラミネートアルミニウム板に潤滑油を塗布した後加熱し、温度55℃(テスト1)、65℃(テスト2)、85℃(テスト3)、105℃(テスト4)、125℃(テスト5)においてカップ絞り加工を行った。この時得られたカップについて、缶底部コーナー樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について観察した。なお、カップ絞り加工する前のラミネート樹脂フィルムの密度は1.353である。
【0029】
次いで、テスト2で得られたカップの缶体温度を30℃(テスト6)、40℃(テスト7)、50℃(テスト8)、60℃(テスト9)にした後、金型温度100℃で加工率60%の再絞り加工およびしごき加工を行った。
また、前記テスト5で得たカップについて、カップの缶体温度を40℃(テスト10)、60℃(テスト11)にした後、金型温度100℃で加工率56%の再絞り加工およびしごき加工を行った。
こうして得られた缶体について、樹脂フィルムと金型との離型性、外面樹脂フィルムのカジリ程度を観察すると共に、QTV試験で缶内面樹脂フィルムの傷付き程度を測定した。この結果は表1〜3に示した。
【0030】
表1〜3から分かるように、本発明例は比較例に比較してカップの絞り加工で缶底部コーナーのフィルムに欠陥が入り難いことがわかる。また、その後の再絞り加工としごき加工においても、樹脂フィルムと金型パンチとの離型性やカジリ等も良好で、樹脂フィルムの欠陥も極微小であり、QTV値は小さい。従って、樹脂フィルムの健全性が十分確保されていることが分かる。
【0031】
実験例2
実験例1で用いたテスト2で得られたカップを用いて、カップの缶体温度40℃にした後、金型温度60℃(テスト12)、80℃(テスト13)、100℃(テスト14)、120℃(テスト15)、140℃(テスト16)にして、加工率58%の再絞り加工およびしごき加工を行った。こうして得られた缶体について、樹脂フィルムと金型との離型性、外面樹脂フィルムのカジリ程度を観察すると共に、QTV試験で缶内面樹脂フィルムの傷付き程度を測定した。この結果を表4に示した。
【0032】
表4から分かるように、本発明例は比較例に比較して再絞り加工としごき加工においても、樹脂フィルムと金型パンチとの離型性やカジリ等も良好で、樹脂フィルムの欠陥も極微小であり、QTV値は小さい。従って、樹脂フィルムの健全性が十分確保されていることが分かる。
【0033】
実験例3
板厚0.28mmのアルミニウム板の両面に、ガラス転移温度(Tg)が68℃、冷結晶化温度(Tc)が138℃のポリエステル樹脂フィルムの厚み8μm(テスト17)、12μm(テスト18)、20μm(テスト19)、30μm(テスト20)、40μm(テスト21)、50μm(テスト22)を被覆したラミネートアルミニウム板に潤滑油を塗布した後加熱し、温度75℃にて絞り加工を行い、次いで、得られたカップの缶体温度を45℃にした後、金型温度100℃で加工率62%の再絞り加工およびしごき加工を行った。この時得られたカップの缶底部コーナー樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について観察した。
【0034】
また、得られた缶体について、樹脂フィルムと金型との離型性、外面樹脂フィルムのカジリ程度を観察すると共に、QTV試験で缶内面樹脂フィルムの傷付き程度を測定した。その結果を表5、6に示した。
なお、カップ絞り加工する前のラミネート樹脂フィルムの密度についても表5、6に示した。
【0035】
更に、前記テスト19で得られた缶体を再加熱・冷却した後、ネック加工、フランジ加工を行い、樹脂フィルムの剥離とクラック発生状況について肉眼観察および光学顕微鏡で観察すると共にQTV試験でラミネート樹脂フィルムの健全性を調べた。その結果を表7に示した。なお、ネック加工およびフランジ加工する前の樹脂フィルムの密度は、1.348g/cm (テスト23)、1.355g/cm (テスト24)、1.368g/cm (テスト25)である。
【0036】
表7からわかるように、本発明例は比較例に比較して再絞り加工としごき加工においても、樹脂フィルムと金型パンチとの離型性やカジリ等も良好で、樹脂フィルムの欠陥も極微小でありQTV値は小さい。また、ネック加工およびフランジ加工においても、樹脂フィルムの健全性が十分確保されていることが分かる。
【0037】
実験例4
板厚0.24mmの加熱されたアルミニウム板の両面に、ガラス転移温度(Tg)が53℃、冷結晶化温度(Tc)が118℃の厚み20μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムをラミネートし、必要に応じ再加熱と急冷を行い、密度が1.343(テスト26)、1.352g/cm (テスト27)、1.358g/cm (テスト28)、1.367g/cm (テスト29)、1.375g/cm (テスト30)のラミネートアルミニウム板を得た。
このラミネート材に潤滑油を塗布した後加熱し、温度45℃にてカップの絞り加工を行い、缶底部コーナー樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について観察した。
【0038】
次いで、得られたカップの缶体温度を40℃にした後、金型温度100℃で加工率56%の再絞り加工およびしごき加工を行った。
こうして得られた缶体について、樹脂フィルムと金型との離型性、外面樹脂フィルムのかじり程度を観察すると共に、QTV試験で缶内面樹脂フィルムの傷付き程度を測定した。その結果を表8に示した。
【0039】
表8からわかるように、本発明例は比較例に比較して、カップの絞り加工で缶底部コーナーのフィルムに欠陥が入り難いことがわかる。また、その後の再絞り加工としごき加工においても、樹脂フィルムと金型パンチとの離型性やかじり等も良好で、樹脂フィルムの欠陥も極微小でありQTV値は小さい。従って、樹脂フィルムの健全性が十分確保されていることが分かる。
【0040】
下記表中の*、*1〜*3はつぎのとおりである。
* 実施例、比較例の区別の欄は、実施例を実で、比較例を比で表している。 *1 缶底コーナークラックは缶内面カップの缶底コーナークラックを指す。
2 QTV試験の単位は、mA/缶である。
3 ネック、フランジ部状況とは、ネック、フランジ部の剥離、クラック状況
を指す。
【0041】
【表1】
Figure 0004226103
【0042】
【表2】
Figure 0004226103
【0043】
【表3】
Figure 0004226103
【0044】
【表4】
Figure 0004226103
【0045】
【表5】
Figure 0004226103
【0046】
【表6】
Figure 0004226103
【0047】
【表7】
Figure 0004226103
【0048】
【表8】
Figure 0004226103
【0049】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の方法で得られる樹脂被覆アルミウムシームレス缶は、内面品質の良い、高耐食性を有する缶であり、ユーザーが安心して使用できるものである。
また、生産歩留まりも良いため、経済的にもメリットがあり、社会的ニーズに応えられる缶体であることから、その意義は大きいものである。

Claims (1)

  1. 板厚0.20mm〜0.32mmのアルミニウム板の両面に、ポリエステル樹脂フィルムを被覆したラミネートアルミニウム板を、カップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工を行ってシームレス缶を得るポリエステル樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法において、前記アルミニウム板の両面に被覆したポリエステル樹脂フィルムが、(1)ポリエチレンテレフタレート、(2)ポリブチレンテレフタレート、(3)ポリエチレンイソフタレート、(4)ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合樹脂、または(5)これらのブレンド樹脂、よりなるものであり、このフィルムをその厚み10〜50μm、密度1.36g/cm未満の非晶質状態となるようにした後、カップの絞り加工を被覆樹脂のガラス転移温度(Tg)から樹脂の冷結晶化温度(Tc)の範囲で行い、次いで、絞り加工で得たカップに冷風を当ててカップの缶体温度を30〜50℃にした後、カップの再絞り加工およびしごき加工を、加工金型の温度を60〜120℃で加工し、得られた缶体を加熱・冷却し、再度被覆した樹脂フィルムの密度を1.36g/cm未満の非晶質状態にした後、ネック加工およびフランジ加工をすることを特徴とする樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法。
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