JPWO2016136099A1 - 樹脂被膜金属板、樹脂被膜金属板の製造方法、及び金属容器 - Google Patents

樹脂被膜金属板、樹脂被膜金属板の製造方法、及び金属容器 Download PDF

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Abstract

本発明に係る樹脂被膜金属板は、金属板の両面に樹脂被膜層を備える樹脂被膜金属板であって、成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層がエチレンテレフタレート単位97mol%以上であり、且つ、0.05PHR以上5PHR以下の範囲内のワックス成分を含有し、金属板に被覆された後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されていることを特徴とする。

Description

本発明は、金属板の両面に樹脂被膜層を備える樹脂被膜金属板、樹脂被膜金属板の製造方法、及び金属容器に関する。
一般に、金属容器は2ピース缶と3ピース缶とに大別される。2ピース缶とは、缶底と一体になった缶体と蓋との2つの部分によって構成される金属容器である。3ピース缶とは、缶胴、上蓋、及び底蓋の3つの部分によって構成される金属容器である。2ピース缶の缶体は、シーム部(溶接部)を有さないために外観が美麗である反面、絞り加工法等で製造されるため、一般に高い加工度が要求される。これに対して、3ピース缶の缶胴は、シーム部を有するために2ピース缶の缶体と比較すると外観が劣るが、高い加工度は必要ではない。2ピース缶の加工においては、金属容器の容量が大きくなるほど加工度が高くなるため、一般に小容量の金属容器に対しては2ピース缶が使用され、大容量の金属容器に対しては3ピース缶が使用される傾向がある。
2ピース缶の素材としては、金属板の両面に樹脂被膜層を備える樹脂被膜金属板を素材として、絞り加工法やDI(Draw & Ironing)加工法によって缶体を製造する技術が提案されている(特許文献1〜3参照)。また、このような樹脂被膜金属板を成形した缶体の意匠性を高めるため、印刷処理等が可能なように成形加工後に金属容器の外面側に位置する樹脂被膜層に白色顔料を添加する技術も提案されている(特許文献4,5参照)。しかしながら、これらは、比較的加工度の低い食缶等の用途に限られており、2ピース缶の中でも、エアゾール缶等のように缶サイズが大きくて絞りの加工度が高く、缶の高さ方向の延伸度が大きい2ピース缶、すなわち加工度が高い2ピース缶における成形では、被覆した樹脂に成形傷や凹凸等の欠陥が出やすく適用が困難であった。特に意匠性向上のために白色顔料を添加した樹脂を被覆した金属板を成形した缶体においては、外観欠陥が発生しやすく意匠性が大きく低下するため、加工度の高い用途には使用できなかった。このような加工度の高い2ピース缶用材料として、樹脂被膜層の結晶化度を制御することによって成形加工後の熱処理による外観欠陥を抑制する技術が提案されている(特許文献6参照)。
特公平7−106394号公報 特許第2526725号公報 特開2004−148324号公報 特開平8−169098号公報 特開2004−130536号公報 国際公開第2013/030972号
本発明の発明者らは、樹脂被膜金属板を用いて加工度が高い2ピース缶の缶体に成形し、加工後の樹脂被膜層と金属板との密着性、成形加工後に金属容器の内面側に位置する樹脂被膜層の被覆性、及び成形加工後に金属容器の外面側に位置する表面側の樹脂被膜層の意匠性を高める目的で熱処理を行った結果、表面側の樹脂被膜層に成形傷や微小凹凸等に起因する外観上の欠陥が発生することを知見した。このため、樹脂被膜金属板を用いて加工度が高い2ピース缶の缶体を製造するためには、成形及び熱処理によって外観上の欠陥が発生しないようにする必要がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、成形及び熱処理によって外観上の欠陥が発生することを抑制可能な樹脂被膜金属板、樹脂被膜金属板の製造方法、及び金属容器を提供することにある。
本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねてきた結果、成形傷は成形時における工具と樹脂被膜層との間の摺動性不足に起因するものであることを知見した。また、熱処理によって発生する外観上の欠陥は、成形加工の際に発生した樹脂被膜層内の残留応力が熱処理によって緩和されることにより、樹脂被膜層が不均一に変形し、不均一な顔料の分布が形成されるために発生することを知見した。そして、本発明の発明者らは、この知見に基づきさらに研究を重ねた結果、成形傷は樹脂被膜層中にワックスを添加することにより抑制され、また熱処理後の微小凹凸は特定の樹脂組成の樹脂被膜層において結晶化度を制御することにより成形加工後の樹脂被膜層の残留応力を低減することで抑制できるという技術思想を想到するに至った。
本発明に係る樹脂被膜金属板は、金属板の両面に樹脂被膜層を備える樹脂被膜金属板であって、成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が、エチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、且つ、0.05PHR以上5PHR以下の範囲内のワックス成分を含有し、金属板に被覆された後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にあることを特徴とする。
成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が5PHR以上30PHR以下の酸化チタンを含有していることが好ましい。
成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が2層以上の構造を有し、各層の樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、最表面から1μm以上5μm以下のワックス成分を含有する層を有し、ワックスを含有している層での樹脂量に対するワックス量及び樹脂被膜層全体の樹脂量に対するワックス量が共に0.05PHR以上5PHR以下の範囲内にあり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にあることが好ましい。
成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が2層以上の構造を有し、各層の樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、最表面から1μm以上5μm以下のワックス成分を含有する層を有し、ワックスを含有している最表面層での樹脂量に対するワックス量及び樹脂被膜層全体の樹脂量に対するワックス量が共に0.05PHR以上5PHR以下の範囲内にあり、樹脂被膜層全体の樹脂量に対する酸化チタン量が5PHR以上30PHR以下の範囲内にあり、且つ、少なくとも最表面から1μmの深さまでは、酸化チタン量が2PHR以下の範囲内にあり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にあることが好ましい。
成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が最表面層、少なくとも1層の中間層、及び最下層からなる3層以上の構造を有し、各樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、最表面及び最下面からそれぞれ1μm以上5μm以下のワックス成分を含有する層を有し、ワックスを含有している層での樹脂量に対するワックス量及び樹脂被膜層全体の樹脂量に対するワックス量が共に0.05PHR以上5PHR以下の範囲内にあり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にあることが好ましい。
前記樹脂被膜層全体の樹脂量に対する酸化チタン量が5PHR以上30PHR以下の範囲内にあり、且つ、少なくとも最表面から1μmまでと、最下面から1μmまでの範囲での酸化チタン量が2PHR以下の範囲内にあることが好ましい。
成形加工後に容器の内面側に位置する樹脂被膜層が、金属板に被覆された後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されていることが好ましい。
成形加工後に容器の内面側に位置する樹脂被膜層が、エチレンテレフタレート単位97mol%以上である樹脂材料によって形成されていることが好ましい。
成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層の水との接触角が、成形加工後に82°以上100°以下の範囲内にあることが好ましい。
本発明に係る樹脂被膜金属板の製造方法は、樹脂被膜層を形成するために、二軸延伸フィルムを使用して、樹脂の融点以上に加熱した金属板の両面にフィルムを熱融着させることを特徴とする。金属板の加熱温度を(樹脂の融点+50℃)以下にするとさらに好ましい。
本発明に係る金属容器は、本発明に係る樹脂被膜金属板を成形加工することによって形成された金属容器であって、金属容器の外面側に位置する樹脂被膜層の水との接触角が82°以上100°以下の範囲内にあることを特徴とする。
本発明に係る樹脂被膜金属板、樹脂被膜金属板の製造方法、及び金属容器によれば、成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層の成形傷及び残留応力を低減できるので、成形及び熱処理によって外観上の欠陥が発生することを抑制できる。
図1は、本発明の一実施形態である樹脂被膜金属板の構成を示す断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である樹脂被膜金属板について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である樹脂被膜金属板の構成を示す断面図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である樹脂被膜金属板1は、金属板2と、金属板2の一方の面側に形成された樹脂被膜層3と、金属板2の他方の面側に形成された樹脂被膜層4と、を備えている。樹脂被膜層3及び樹脂被膜層4はそれぞれ、成形加工後に金属容器の外面側及び内面側に位置する。
金属板2は、ぶりきやティンフリースチール等の鋼板によって形成されている。ぶりきとしては、0.5〜15g/mの錫めっき量を有するものを用いるとよい。ティンフリースチールは、付着量50〜200mg/mの金属クロム層と、その上層に金属クロム換算の付着量が3〜30mg/mのクロム酸化物層とを有するとよい。鋼板は、目的の形状に成形できるものであれば特にその種類を問わないが、以下に示すような成分や製法のものが望ましい。
(1)C(カーボン)量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、箱焼鈍で再結晶焼鈍したもの。
(2)C量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、連続焼鈍で再結晶焼鈍したもの。
(3)C量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、連続焼鈍で再結晶焼鈍及び過時効処理したもの。
(4)C量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、箱焼鈍又は連続焼鈍で再結晶焼鈍した後、2次冷間圧延(DR(Double Reduced)圧延)したもの。
(5)C量が概ね0.003%以下程度の極低炭素鋼にNb,Ti等の固溶したCを固定する元素を添加したIF(Interstitial Free)鋼を用い、連続焼鈍で再結晶焼鈍したもの。
鋼板の機械的特性は、目的の形状に成形できるものであれば特に限定されないが、加工性を損なわず、且つ、十分な缶体強度を保つために、降伏強度YPが220MPa以上580MPa以下程度のものを用いることが望ましい。塑性異方性の指標であるランクフォード(r値)については0.8以上であるものが望ましく、r値の面内異方性Δrについては、その絶対値が0.7以下であるものが望ましい。鋼板の板厚は、目的の缶の形状や必要となる缶体強度から適宜設定できる。鋼板自体及び缶体のコスト上昇を抑制する観点から、概ね0.15〜0.4mm程度の板厚のものを用いることが望ましい。
なお、上記の特性を達成するための鋼の成分は特に限定されるものではないが、例えば、Si,Mn,P,S,Al,N等の成分を含有すればよく、Siの含有量は0.001〜0.1%の範囲内、Mnの含有量は0.01〜0.6%の範囲内、Pの含有量は0.002〜0.05%の範囲内、Sの含有量は0.002〜0.05%の範囲内、Alの含有量は0.005〜0.100%の範囲内、Nの含有量は0.0005〜0.020%の範囲内にあることが好ましい。また、B,Cu,Ni,Cr,Mo,V等の他の成分を含有してもよいが、耐食性等を確保する観点から、これら他の成分の含有量は総量で0.02%以下であることが望ましい。
樹脂被膜層3は、エチレンテレフタレート単位が97mol%以上、好ましくは98mol%以上の樹脂材料によって形成されている。エチレンテレフタレート単位が97mol%未満である場合、成形時の工具との摺動で発生する熱により樹脂が軟化するため成形傷が発生しやすくなると共に、熱処理後の表面凹凸が発生しやすくなる。また、樹脂被膜層3は、単層でも2層以上の構造になっていてもよいが、各層中の樹脂はそれぞれエチレンテレフタレート単位が97mol%以上となるようにする。
樹脂被膜層4は、樹脂被膜層3と金属板2の両面にそれぞれ貼り合わせることから、樹脂被膜層3の樹脂と近い温度で溶融すると製造しやすいため、樹脂被膜層3の樹脂と同等の融点であることが好ましく、エチレンテレフタレート単位が97mol%以上であることが好ましい。また、樹脂被膜層4も、単層でも2層以上の構造になっていてもよいが、各層中の樹脂はそれぞれエチレンテレフタレート単位が97mol%以上であることが好ましい。
樹脂被膜層3,4中の樹脂は、耐熱性や加工性を損なわない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合させてもよい。ここで、樹脂被膜層3の場合は、樹脂中の3mol%未満の範囲内とする。また、樹脂被膜層4の場合も樹脂中の3mol%未満の範囲内とすることが好ましい。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族カルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を例示できる。グリコール成分としては、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等を例示できる。なお、これらのジカルボン酸成分及びグリコール成分は2種以上を併用してもよい。
樹脂被膜層3,4を形成する樹脂材料は、その製法によって限定されることはない。例えば、(1)テレフタル酸、エチレングリコール、及び共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させて共重合ポリエステルとする方法や、(2)ジメチルテレフタレート、エチレングリコール、及び共重合成分をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させて共重合ポリエステルとする方法等を利用して、樹脂材料を形成することができる。また、エチレンテレフタレート樹脂とブチレンテレフタレート樹脂等の他の樹脂を混合して樹脂材料を形成してもよい。共重合ポリエステルの製造においては、必要に応じて、蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加物を添加してもよい。白色度を向上させる場合には、蛍光増白剤の添加は有効である。このような組成の樹脂をTダイから溶融押出しして薄膜に成形した後に縦方向及び横方向に延伸して製造する二軸延伸フィルムを用いることが好ましい。
金属板2への被覆時に樹脂被膜層3,4をその融点以上の温度とする時間は1〜30msecの範囲内にすることが望ましい。被覆時の加圧圧力は、特に限定されないが、面圧を9.8〜294N(1〜30kgf/cm)の範囲内にすることが望ましい。面圧がこの範囲より小さい場合、金属板2と樹脂被膜層3,4との界面の温度が融点以上であっても、融点以上の温度になっている時間が短時間であるため樹脂被膜層3,4の溶融が不十分となり、樹脂被膜層3,4と金属板2との十分な密着性を得られないことがある。一方、面圧がこの範囲より大きい場合、樹脂被膜層3,4が溶融してロールに接着する溶着が発生することがある。
容器の外面側となる樹脂被膜層3は、金属板2に被覆した後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下、好ましくは1J/g以上15J/g以下、より好ましくは3J/g以上10J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されている。結晶化熱量と融解熱量とは、示差走査熱量測定装置(Differential Scanning Calorimetry : DSC)を用いて測定することができる。結晶化熱量と融解熱量との差は被覆後の樹脂被膜層3の結晶化度の指標となるものである。樹脂被膜層3の結晶化熱量と融解熱量との差が1J/g未満である場合、成形加工後の残留応力は低減するものの、耐衝撃性が低下し、一定以上の衝撃が加わった場合、樹脂被膜割れが発生する。一方、結晶化熱量と融解熱量との差が20J/gより大きい場合には、樹脂被膜層3の結晶化度が高くなり、成形加工後の残留応力が大きくなるため、熱処理によって外観上の欠陥が発生する。以上のことより、容器の外面側となる樹脂被膜層3の結晶化熱量と融解熱量との差は、1J/g以上20J/g以下とする。
容器の内面側となる樹脂被膜層4は、金属板2に被覆した後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されていることが望ましい。結晶化熱量と融解熱量との差が1J/g未満である場合、成形加工後の耐衝撃性が低下し、一定以上の衝撃が加わった場合、樹脂被膜割れが発生する場合がある。一方、結晶化熱量と融解熱量との差が20J/gより大きい場合には、樹脂被膜層4の結晶化度が高くなり、成形加工後の残留応力が大きくなる。このため、樹脂被膜層4の割れが発生することによって耐食性が悪化する場合がある。
樹脂被膜層3,4の結晶化度は、被覆前の樹脂被膜層3,4の配向度や融点、及び被覆条件(鋼板加熱温度、被覆時面圧、被覆後の冷却までの時間、被覆後の冷却温度、ライン速度)を調整することによって制御できる。例えば、被覆時の金属板2の加熱温度を高くすることによって、樹脂被膜層3,4の結晶化度を低くすることができる。なお、金属板2の加熱温度は、樹脂被膜層3,4の融点より高くするが、10〜50℃程度高くすることが好ましい。また、面圧を低下させ、被覆時の加圧による樹脂被膜層3,4の冷却効果を小さくすることにより、樹脂被膜層3,4の結晶化度を低くすることができる。また、被覆後の冷却開始までの時間を短くして、被覆後の冷却過程における樹脂被膜層3,4の結晶化を抑制することにより、樹脂被膜層3,4の結晶化度を低くすることができる。なお、被覆後の冷却開始までの時間は、ラインの長さやライン速度にもよるが、0.5秒〜10秒の範囲である。また、ライン速度を上げることによって、加熱温度が同条件でも樹脂被膜層3,4の結晶化度を低くすることができる。これは、加熱されてから被覆されるまでの放冷等の影響が少なくなるためである。
樹脂被膜層3の融点は、250℃以上265℃以下の範囲内にあり、樹脂被膜層3が2層以上の構造になっている場合は、各層の融点差は10℃以下であることが望ましく、6℃以下であることがより望ましく、3℃以下であることがさらに望ましい。樹脂被膜層3の融点が250℃未満である場合、加工時の表面摺動や金属板2の加工発熱等によって樹脂被膜層3が軟化しやすくなり、樹脂被膜層3の表面に成形傷が発生したり、樹脂破断に至ったりする場合がある。一方、樹脂被膜層3の融点が265℃より大きい場合には、樹脂被膜層3の結晶性が高くなり、加工度の高い加工に追随できない可能性がある。また、各層の融点差が10℃より大きい場合、熱処理による各層の溶融状態が大きく異なるため、不均一な変位(流動)によって外観上の欠陥が発生しやすくなる。
樹脂被膜層4の融点も樹脂被膜層3との貼り合わせという点から、250℃以上265℃以下の範囲内にあり、樹脂被膜層4が2層以上の構造になっている場合は、各層及び樹脂被膜層3の樹脂との融点差は10℃以下であることが望ましく、6℃以下であることがより望ましく、3℃以下であることがさらに望ましい。また、各層及び樹脂被膜層3の樹脂との融点差が10℃より大きい場合、熱処理による各層及び樹脂被膜層3の溶融状態が大きく異なるため、不均一な変位(流動)によって欠陥が発生しやすくなる。
加工度が高い成形加工を行った際に樹脂被膜層3に成形傷が発生することを抑制するために、樹脂被膜層3にはワックス成分が添加されている。添加するワックス成分は特に限定されないが、有機滑剤が好ましく、ポリエステル樹脂との相溶性が良好なステアリン酸、ステアリン酸エステル、パルミチン酸、パルミチン酸エステル等の脂肪酸や脂肪酸エステル、パラフィン、ポリエチレン等の直鎖脂肪族等が使用可能であるが、特にポリエステル樹脂との相溶性が良好で高融点であるカルナウバワックスを用いることが望ましい。
ワックス成分の添加量は0.05PHR〜5PHRの範囲内とする。ワックス成分の添加量が0.05PHRより少ない場合、潤滑の効果が小さく、成形傷に起因する外観欠陥抑制効果が得られない。一方、ワックス成分の添加量が5PHRより多い場合には、樹脂被膜層3をロール状に巻いた時にワックス成分の転写等が発生して問題となる他、印刷性が劣化する可能性がある。ワックス成分の添加量は、好ましくは0.10PHR〜3PHRの範囲内、より好ましくは0.20PHR〜2PHRの範囲内である。
容器成形加工工程において、樹脂被膜層3が、成形加工や塗装の焼付等で熱履歴を受けると、ワックス成分は表面に析出して摺動性が向上する傾向になるため、樹脂被膜層3全体に対するワックス成分の添加量が0.05PHR〜5PHRであれば、樹脂被膜層3の膜厚方向でのワックス成分の存在位置は限定するものではないが、樹脂被膜層3の最表面層に添加することが好ましく、その場合の最表面層は最表面から1μm以上5μm以下であることが好ましい。最表面層のワックス成分は摺動性を向上させる効果が高く、最表面層に添加した方がワックス成分の添加量が少なくても摺動性向上効果が高くなる。また、樹脂被膜層3の最下層に添加することが好ましく、その場合の最下層は最下面から1μm以上5μm以下であることが好ましい。最下層のワックス成分は加工時に樹脂層と金属板との間の界面で発生する応力を緩和することにより、成形時の樹脂密着性を向上させる効果がある。ワックス成分が添加された最表面層及び最下層の膜厚が1μmより小さい場合、樹脂被膜層3の成形傷が十分抑制できない場合や成形時の樹脂密着性に劣る場合があり、製造方法によっては樹脂被膜層3の表面の光沢を十分に確保できなくなったりする場合がある。一方、ワックス成分が添加された最表面層及び最下層の膜厚は5μmより大きくてもよいが、それ以上の改善効果が少なくなってくるため、5μm以下とすることが好ましい。
本発明に係る樹脂被膜金属板を成形加工することによって形成された金属容器では、金属容器の外面側に位置する樹脂被膜層3の水との接触角が82°〜100°の範囲内にあることが好ましく、85°〜95°の範囲内にあることがさらに好ましい。樹脂被膜金属板の製造直後では、通常、加熱時間が短時間であるため、ワックス成分は、当初添加した層に存在している場合が多いが、容器成形加工工程において、樹脂被膜層3が、成形加工や塗装の焼付等で熱履歴を受けると、ワックス成分は表面に析出して摺動性が向上する傾向になる。本発明に規定するワックス成分の添加を行うことにより、本発明に係る樹脂被膜金属板を成形加工することによって形成された金属容器では、金属容器の外面側に位置する樹脂被膜層3の水との接触角が82°〜100°の範囲内になっており、好適な成形が行われたことがわかる。なお、容器成形前に容器成形後の樹脂被膜層3の水との接触角を推定評価するためには、樹脂被膜層3に熱履歴を与えて冷却後に水との接触角を評価するとよい。熱履歴の条件は特に限定するものではないが、融点−50℃以上融点+30℃以下の温度で30秒以上保持するとよい。例えば、本発明では、熱風乾燥炉を用い、90秒で240℃に到達するように加熱し、冷風にて強制冷却した後の水との接触角は、成形加工した容器外面側に位置する樹脂被覆層3の水との接触角とよく相関があることを確認した。また、この最適な水との接触角範囲を表面自由エネルギーの最適範囲で示すと、27〜33mN/mである。
樹脂被膜層4の傷つき防止のために、樹脂被膜層3と同様に樹脂中にワックス成分を添加しても構わない。その場合のワックス成分の添加量も、0.05PHR〜5PHRの範囲内とすることが望ましい。
樹脂被膜層3は、印刷処理等の意匠性を高めるための処理が可能なように、白色であることが求められる場合がある。このため、樹脂被膜層3は、5PHR以上30PHR以下、好ましくは10PHR以上25PHR以下、より好ましくは12PHR以上20PHR以下の範囲内で酸化チタンを含有していることが望ましい。酸化チタンの含有量が5PHR未満である場合、加工後に十分な白色度が確保できない場合がある。一方、酸化チタンの含有量が30PHRより多い場合には、加工度が高い成形加工を行った際、金属板2と樹脂被膜層3との密着性や加工性が問題となる場合がある。
白色度を確保するためには、樹脂被膜層3全体の樹脂量に対する酸化チタン量が5PHR以上30PHR以下の範囲内であり、膜厚が10μm以上であることが好ましい。また、最表面付近の酸化チタン量が高い場合、成形後の表面から脱離しやすくなるため、樹脂被膜層3の最表面から少なくとも1μmまでの位置での酸化チタン量は2PHR以下とすることが好ましい。また、最下面付近の酸化チタン量が高い場合、下地金属との密着性が低下しやすくなるため、最下面から少なくとも1μmまでの範囲内での酸化チタン量も2PHR以下とすることがさらに好ましい。
樹脂被膜層3に添加する酸化チタンとしては、特に限定されないが、ルチル型酸化チタンが90%以上のものを用いることが好ましい。ルチル型酸化チタンが90%より低い場合、樹脂材料との混合時に酸化チタンの分散性が良くなく、また、樹脂材料の分子量低下を招くことがある。なお、本願実施例及び比較例では、ルチル型酸化チタンを使用した。酸化チタンの添加方法としては、以下の(1)〜(3)に示すような各種方法を用いることができる。なお、方法(1)を利用して酸化チタンを添加する場合には、酸化チタンをグリコールに分散したスラリーとして反応系に添加することが望ましい。また、酸化チタンを添加した樹脂被膜層3の厚みは、加工後の白色度を確保するために、10〜40μm、好ましくは12〜35μm、より好ましくは15〜25μmの範囲内にすることが望ましい。樹脂被膜層3の厚みが10μm未満である場合、加工時に樹脂被膜層3の割れが生じやすくなる。一方、樹脂被膜層3の厚みが40μmより大きい場合には、成形による残留応力が大きくなりすぎて密着性が劣る場合があるためである。
(1)共重合ポリエステル合成時のエステル交換又はエステル化反応の終了前、若しくは重縮合反応開始前に酸化チタンを添加する方法
(2)共重合ポリエステルに添加し、溶融混練する方法
(3)方法(1),(2)において、酸化チタンを多量に添加したマスターペレットを製造し、粒子を含有しない共重合ポリエステルと混練し、所定量の酸化チタンを含有させる方法
また、酸化チタンとフィルム樹脂との間の密着性を良くするため、酸化チタン表面をシリカやアルミナ等で表面処理することが好ましい。
前述したように、樹脂被膜層3,4は、全体が同じ組成である単層でもよく、複層構造であってもよい。また、樹脂被膜層3,4は、単層の場合でも複層の場合でも、合計が10μm以上40μm以下の範囲内であることが好ましい。10μm未満であると、加工時に樹脂被膜層3に割れが生じて被覆性が劣る場合があり、40μm超の場合、成形による残留応力が大きくなりすぎて密着性が劣る場合があるためである。また、樹脂被膜層3,4が所定の構成になっていれば、層の形成方法は限定するものではない。例えば、複数の成分の異なるフィルムを積層してもよいし、複数成分を溶融押し出し法でフィルムに形成してもよい。なお、複数の成分の異なるフィルムをそれぞれ形成してから積層してフィルムを形成する場合は、密着性等の観点から各層の厚みは1μm以上であることが好ましいが、フィルムに塗装等の方法で層を形成したり、溶融押し出し等で同時に複数層を形成する場合は、各層の厚みはさらに薄くしてもよく、また、層が明確に分かれていなくてもよい。
金属板として厚さ0.23mmのT3CA(JIS G 3303)、TFS(Tin Free Steel、金属Cr層:120mg/m、Cr酸化物層:金属Cr換算で10mg/m)を用い、フィルム熱圧着法を用いて金属板の両面に以下の表1A,1Bに示す実施例1〜38及び比較例1〜12の樹脂被膜層を形成した。具体的には、金属板を樹脂被膜層の融点より20℃高い温度まで加熱した状態で、ニップロールを利用して二軸延伸法で作製したフィルム状の樹脂被膜層を金属板に熱圧着し、次いで5秒以内の水冷によって冷却することにより、金属板の両面に樹脂被膜層を被覆した。なお、成形加工後に容器の外面側に位置する金属板の一方の面側には酸化チタンを含む場合と含まない場合の樹脂被膜層(外面樹脂層)、成形加工後に容器の内面側に位置する金属板のもう一方の面側には酸化チタンを含まない樹脂被膜層(内面樹脂層)を被覆した。また、得られた樹脂被膜金属板について、以下に示す方法を利用して、樹脂被膜層の融点、樹脂被膜層の結晶化熱量、及び樹脂被膜層の融解熱量を測定した。また、外面樹脂層については、その白色度及び熱処理後の水との接触角を測定した。測定結果を以下の表1A,1Bに示す。
(1)樹脂被膜層の融点
示差走査熱量測定装置を用いて10℃/分の昇温速度、窒素ガス流量50ml/分で、室温から290℃まで被覆前の樹脂被膜層を昇温したときの吸熱ピークを測定し、200〜280℃の間で測定された吸熱ピークのピーク温度を樹脂被膜層の融点とした。
(2)結晶化熱量及び融解熱量
希釈した塩酸により樹脂被膜金属板の金属表面を溶解して樹脂被膜層を剥離し、剥離した樹脂被膜層を十分に蒸留水で洗浄して乾燥させた。なお、以後、剥離した樹脂被膜層での評価が必要な場合は、本方法を用いた。そして、示差走査熱量測定装置を用いて、10℃/分の昇温速度、窒素ガス流量50ml/分で−50℃から290℃まで樹脂被膜層を昇温したときの発熱ピーク及び吸熱ピークを測定し、100〜200℃の間で観測された発熱ピークの面積から結晶化熱量を算出し、200℃〜280℃の間で観測された吸熱ピークの面積から融解熱量を算出した。なお、外面樹脂層については、酸化チタンの含有量を除いた重量を樹脂量として、樹脂単位重量当たりの結晶化熱量及び融解熱量を算出した。
(3)白色度
分光色差計を用いて樹脂被膜金属板の樹脂被膜層3の白色度をJIS Z 8722に示される方法で評価した。測定面積は30mmφ、測定光源をC条件、測定光源に対して2°視野の観察条件で測定したハンター(Hunter)Lab値のL値を白色度とした。なお、L値が75以上の場合に白色被膜として好適である。
(4)熱処理後の水との接触角
熱風乾燥炉を用いて、金属板温度が240℃になるまで90秒で加熱して、冷風にて強制冷却した後に、接触角計(協和界面科学(株)製CA−DT型)を用いて、水の樹脂被膜層3に対する静的接触角を測定した。
Figure 2016136099
Figure 2016136099
〔評価〕
表1A,1Bに記載の樹脂被膜金属板について、以下に示す方法を利用してその成形性、外観、耐食性、加工後密着性、及び耐衝撃性を評価した。評価結果を以下の表2に示す。表2に示すように、実施例1〜38の樹脂被膜金属板では、成形性及び外観の評点は「◎◎◎」「◎◎」「◎」又は「○」であったのに対して、比較例1〜11の樹脂被膜金属板では、成形性及び外観の評点は「△」「×」であった。ここで、表1A,1Bを参照すると、実施例1〜38の樹脂被膜金属板では、外面樹脂層がエチレンテレフタレート単位97mol%以上であり、且つ、0.05PHR以上5PHR以下の範囲内のワックス成分を含有し、金属板に被覆された後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の樹脂材料によって形成されている。これに対して、比較例1〜11の樹脂被膜金属板では、樹脂組成、ワックス成分、又は外面樹脂層の結晶化熱量と融解熱量との差のいずれかが異なり、また比較例12の樹脂被膜金属板では、外面樹脂層は結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して0J/gの樹脂材料によって形成されている。
(1)成形性
表1A,1Bに記載の樹脂被膜金属板に直径123mmの円板を打ち抜き、絞り比1.7で浅絞り缶を成形した。次に、この浅絞り缶に対し、絞り比1.4で再絞り加工及びDI加工を行い、深絞り缶を成形した。このようにして得られた深絞り缶を、その後の印刷、焼き付けの熱履歴を模擬するために、熱風乾燥炉を用いて缶体温度が250℃になるまで2分間で加熱した後、冷風にて強制冷却した。そして、成形後に樹脂被膜表面の成形傷を目視で観察し、以下に示す基準に従って評点をつけた。
評点「◎◎◎」:フィルムの成形傷が全く観察されない場合。
評点「◎◎」:フィルムの成形傷が缶フランジ部分から1mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「◎」:フィルムの成形傷が缶フランジ部分から1mmを超えて3mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「○」:フィルムの成形傷が缶フランジ部分から3mmを超えて5mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「△」:フィルムの成形傷が缶フランジ部分から5mmを超えて10mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「×」:フィルムの成形傷が缶フランジ部分から10mmを超えた高さ位置まで発生した場合。
(2)外観
表1A,1Bに記載の樹脂被膜金属板に、直径158mmの円板を打ち抜き、絞り比1.7で浅絞り缶を得た。次いで、この浅絞り缶に対し、絞り比1.5で再絞り加工を行い、深絞り缶を成形した。このようにして得られた深絞り缶を、その後の印刷、焼き付けの熱履歴を模擬するために、熱風乾燥炉を用いて缶体温度が250℃になるまで2分間で加熱した後、冷風にて強制冷却した。冷却後の外面フィルムの状態を目視で観察し、以下に示す基準に従って評点をつけた。
評点「◎◎◎」:表面凹凸の欠陥が全く観察されない場合。
評点「◎◎」:表面凹凸の欠陥が缶フランジ部分から1mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「◎」:表面凹凸の欠陥が缶フランジ部分から1mmを超えて2mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「○」:表面凹凸の欠陥が缶フランジ部分から2mmを超えて3mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「△」:表面凹凸の欠陥が缶フランジ部分から3mmを超えて5mm以内の高さ位置に発生した場合。
評点「×」:表面凹凸の欠陥が缶フランジ部分から5mmを超えた高さ位置で発生した場合。
(3)耐食性
外観評価において成形及び熱処理を行った深絞り缶の缶フランジ部の樹脂被膜層を削り金属板を露出させた。その後、缶内に5%の食塩水を注入し、これに白金電極を浸漬させ(浸漬させた位置は缶中央部)、白金電極及び缶のフランジ部(鋼板露出部)をそれぞれ陰極及び陽極として電極間に6Vの電圧をかけ、4秒後の電流値を読み取った。そして、10缶測定後の電流値の平均値を求め、以下に示す基準に従って評点をつけた。
評点「◎◎」:電流値0.001mA未満
評点「◎」:電流値0.001mA以上、0.01mA未満
評点「○」:電流値0.01mA以上、0.1mA未満
評点「△」:電流値0.1mA以上、1.0mA未満
評点「×」:電流値1.0mA以上
(4)加工後密着性
外観評価において成形した深絞り缶の缶胴部からピール試験用のサンプル(幅15mm×長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部から缶外面側の樹脂被膜層を一部剥離し、剥離した樹脂被膜層を樹脂被膜層が剥離された金属板とは反対方向(角度:180度)に開き、引張速度30mm/minでピール試験を行い、以下に示す基準に従って幅15mmあたりの密着力を評価した。
評点「◎」:3.0N/15mm以上
評点「○」:2.0N/15mm以上、3.0N/15mm未満
評点「△」:1.0N/15mm以上、2.0N/15mm未満
評点「×」:1.0N/15mm未満
(5)耐衝撃性
外観評価において成形及び熱処理を行った深絞り缶の缶胴部から衝撃試験用のサンプル(幅80mm×長さ80mm)を切り出し、缶外面側が凸になるようにして、先端半径6.35mm、荷重300g、高さ100mmのデュポン衝撃試験を行った(JIS K 5600準拠)。そして、凸部側(缶外面側)の衝撃部に5%の食塩水を浸したスポンジを当て、これに白金電極を当てた。白金電極及び衝撃試験サンプル端(鋼板露出部)をそれぞれ陰極及び陽極として電極間に6.2Vの電圧をかけて4秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
評点「◎」:電流値0.05mA未満
評点「○」:電流値0.05mA以上、0.5mA未満
評点「△」:電流値0.5mA以上、5mA未満
評点「×」:電流値5mA以上
Figure 2016136099
金属板として厚さ0.23mmのT3CA(JIS G 3303)、TFS(Tin Free Steel、金属Cr層:120mg/m、Cr酸化物層:金属Cr換算で10mg/m)を用い、フィルム熱圧着法を用いて金属板の両面に以下の表3A〜3Dに示す実施例101〜141及び比較例101〜112の樹脂被膜層を形成した。具体的には、表3A〜3Dに示す2層または3層の樹脂被膜層をフィルムとして積層し、金属板を樹脂被膜層の融点(各層の融点が異なる場合は、最も高い層の融点とする)より20℃高い温度まで加熱した状態で、ニップロールを利用して二軸延伸法で作製したフィルム状の樹脂被膜層を金属板に熱圧着し、次いで5秒以内の水冷によって冷却することにより、金属板の両面に樹脂被膜層を被覆した。なお、成形加工後に容器の外面側に位置する金属板の一方の面側には酸化チタンを含む場合と含まない場合の樹脂被膜層(外面樹脂層)、成形加工後に容器の内面側に位置する金属板のもう一方の面側には酸化チタンを含まない樹脂被膜層(内面樹脂層)を被覆した。また、得られた樹脂被膜金属板について、上記[実施例1]と同じ方法を利用して樹脂被膜層の融点、樹脂被膜層の結晶化熱量、及び樹脂被膜層の融解熱量を測定した。また、外面樹脂層については、その白色度及び熱処理後の水との接触角を測定した。測定結果を以下の表3A〜3Dに示す。
Figure 2016136099
Figure 2016136099
Figure 2016136099
Figure 2016136099
〔評価〕
上記表3A〜3Dに記載の樹脂被膜金属板について、上記[実施例1]と同じ方法を利用してその成形性、外観、耐食性、加工後密着性、及び耐衝撃性を評価した。評価結果を以下の表4に示す。表4に示すように、実施例101〜141の樹脂被膜金属板では、成形性及び外観の評点は「◎◎◎」「◎◎」「◎」又は「○」であったのに対して、比較例101〜110,112の樹脂被膜金属板では、成形性及び外観の評点は「○」「△」「×」であった。ここで、表3A〜3Dを参照すると、実施例101〜141の樹脂被膜金属板では、外面樹脂層が2層以上の構造を有し、最表面層の膜厚が1μm以上であり、各層の樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上であり、最表面層が0.05PHR以上5PHR以下の範囲内のワックス成分を含有し、且つ、ワックス成分量を樹脂被膜全体の樹脂量に対して換算すると0.05PHR以上5PHR以下であり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されている。これに対して、比較例101〜110,112の樹脂被膜金属板では、樹脂組成、ワックス成分、又は外面樹脂層の結晶化熱量と融解熱量との差のいずれかが異なり、また比較例111の樹脂被膜金属板では、外面樹脂層は結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して0J/gの樹脂材料によって形成されている。
Figure 2016136099
金属板として厚さ0.23mmのT3CA(JIS G 3303)、TFS(Tin Free Steel、金属Cr層:120mg/m、Cr酸化物層:金属Cr換算で10mg/m)を用い、フィルム熱圧着法を用いて金属板の両面に以下の表5A〜5Eに示す実施例201〜237及び比較例201〜211の樹脂被膜層を形成した。具体的には、表5A〜5Eに示す構成にフィルムを積層し、金属板を樹脂被膜層の融点(各層の融点が異なる場合は、最も高い層の融点とする)より20℃高い温度まで加熱した状態で、ニップロールを利用して二軸延伸法で作製したフィルム状の樹脂被膜層を金属板に熱圧着し、次いで5秒以内の水冷によって冷却することにより、金属板の両面に樹脂被膜層を被覆した。なお、成形加工後に容器の外面側に位置する金属板の表面側には酸化チタンを含む場合と含まない場合の樹脂被膜層(外面樹脂層)、成形加工後に容器の内面側に位置する金属板の裏面側には酸化チタンを含まない樹脂被膜層(内面樹脂層)を被覆した。また、得られた樹脂被膜金属板について、上記[実施例1]及び[実施例2]と同じ方法を利用して樹脂被膜層の融点、樹脂被膜層の結晶化熱量、及び樹脂被膜層の融解熱量を測定した。また、外面樹脂層については、その白色度及び熱処理後の水との接触角を測定した。測定結果を以下の表5A〜5Eに示す。
Figure 2016136099
Figure 2016136099
Figure 2016136099
Figure 2016136099
Figure 2016136099
〔評価〕
上記表5A〜5Eに記載の樹脂被膜金属板について、上記[実施例1]及び[実施例2]と同じ方法を利用してその成形性、外観、耐食性、加工後密着性、及び耐衝撃性を評価した。評価結果を以下の表6に示す。表6に示すように、実施例201〜237の樹脂被膜金属板では、成形性及び外観の評点は「◎◎◎」「◎◎」「◎」又は「○」であったのに対して、比較例201〜210の樹脂被膜金属板では、成形性及び外観の評点は「◎」「○」「△」「×」であった。ここで、表5A〜5Eを参照すると、実施例201〜237の樹脂被膜金属板では、外面樹脂層が最表面層、中間層、及び最下層からなる3層構造を有し、3層の樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上であり、最表面及び最下面からそれぞれ1μm以上5μm以下のワックス成分を含有する層を有し、ワックスを含有している層での樹脂量に対するワックス量及び樹脂被膜層全体の樹脂量に対するワックス量が共に0.05PHR以上5PHR以下の範囲内であり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されている。これに対して、比較例201〜210の樹脂被膜金属板では、樹脂組成、ワックス成分、又は外面樹脂層の結晶化熱量と融解熱量との差のいずれかが異なり、また比較例211の樹脂被膜金属板では、外面樹脂層は結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して0J/gの樹脂材料によって形成されている。
Figure 2016136099
本発明によれば、成形及び熱処理によって外観上の欠陥が発生することを抑制可能な樹脂被膜金属板、樹脂被膜金属板の製造方法、及び金属容器を提供することができる。
1 樹脂被膜金属板
2 金属板
3,4 樹脂被膜層

Claims (11)

  1. 金属板の両面に樹脂被膜層を備える樹脂被膜金属板であって、成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層がエチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、且つ、0.05PHR以上5PHR以下の範囲内のワックス成分を含有し、金属板に被覆された後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にあることを特徴とする樹脂被膜金属板。
  2. 成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が5PHR以上30PHR以下の酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂被膜金属板。
  3. 成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が2層以上の構造を有し、各層の樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、最表面から1μm以上5μm以下のワックス成分を含有する層を有し、ワックスを含有している層での樹脂量に対するワックス量及び樹脂被膜層全体の樹脂量に対するワックス量が共に0.05PHR以上5PHR以下の範囲内にあり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被膜金属板。
  4. 成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が2層以上の構造を有し、各層の樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、最表面から1μm以上5μm以下のワックス成分を含有する層を有し、ワックスを含有している最表面層での樹脂量に対するワックス量及び樹脂被膜層全体の樹脂量に対するワックス量が共に0.05PHR以上5PHR以下の範囲内にあり、樹脂被膜層全体の樹脂量に対する酸化チタン量が5PHR以上30PHR以下の範囲内にあり、且つ、少なくとも最表面から1μmの深さまでは、酸化チタン量が2PHR以下の範囲内にあり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか1項に記載の樹脂被膜金属板。
  5. 成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層が最表面層、少なくとも1層の中間層、及び最下層からなる3層以上の構造を有し、各樹脂被膜層がいずれもエチレンテレフタレート単位97mol%以上の樹脂を主成分とし、最表面及び最下面からそれぞれ1μm以上5μm以下のワックス成分を含有する層を有し、ワックスを含有している層での樹脂量に対するワックス量及び樹脂被膜層全体の樹脂量に対するワックス量が共に0.05PHR以上5PHR以下の範囲内にあり、金属板に被覆された後の樹脂被膜層の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は3に記載の樹脂被膜金属板。
  6. 前記樹脂被膜層全体の樹脂量に対する酸化チタン量が5PHR以上30PHR以下の範囲内にあり、且つ、少なくとも最表面から1μmまでと、最下面から1μmまでの範囲での酸化チタン量が2PHR以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか1項に記載の樹脂被膜金属板。
  7. 成形加工後に容器の内面側に位置する樹脂被膜層が、金属板に被覆された後の結晶化熱量と融解熱量との差が単位重量当たりに換算して1J/g以上20J/g以下の範囲内にある樹脂材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか1項に記載の樹脂被膜金属板。
  8. 成形加工後に容器の内面側に位置する樹脂被膜層が、エチレンテレフタレート単位97mol%以上である樹脂材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜7のうち、いずれか1項に記載の樹脂被膜金属板。
  9. 成形加工後に容器の外面側に位置する樹脂被膜層の水との接触角が、成形加工後に82°以上100°以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜8のうち、いずれか1項に記載の樹脂被膜金属板。
  10. 請求項1〜9のうち、いずれか1項に記載の樹脂被膜金属板の製造方法であって、二軸延伸フィルムを、樹脂の融点以上に加熱した金属板の両面に熱融着させることを特徴とする樹脂被膜金属板の製造方法。
  11. 請求項1〜9のうち、いずれか1項に記載の樹脂被膜金属板を成形加工することによって形成された金属容器であって、金属容器の外面側に位置する樹脂被膜層の水との接触角が82°以上100°以下の範囲内にあることを特徴とする金属容器。
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