JP3807037B2 - 押出ラミネート法及びこの方法により得られる製缶用ラミネート - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、金属等の基体にポリエステルを積層する押出ラミネート法及びこの押出ラミネートから形成された製缶用ラミネートに関する。より詳細には、生産性が高く、被覆の均一性及び密着性に優れ、耐衝撃性(耐デント性)に優れ、特に高温での熱履歴を受けた後での耐デント性(耐熱デント性)に優れたラミネートの押出ラミネート法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、側面無継目缶(サイド・シームレス缶)としては、アルミニウム板、ブリキ板或いはティン・フリー・スチール板等の金属素材を、絞りダイスとポンチとの間で少なくとも1段の絞り加工に付して、側面継目のない胴部と該胴部に、継目なしに一体に接続された底部とから成るカップに形成し、次いで所望により前記胴部に、しごきポンチとダイスとの間でしごき加工を加えて、容器胴部を薄肉化したものが知られている。また、しごき加工の代わりに、再絞りダイスの曲率コーナ部で曲げ伸ばして側壁部を薄肉化することも既に知られている(特公昭56−501442号公報)。
【0003】
また、側面無継目缶の有機被覆法としては、一般に広く使用されている成形後の缶に有機塗料を施す方法の他に、成形前の金属素材に予め樹脂フィルムをラミネートする方法が知られており、特公昭59−34580号公報には、金属素材にテレフタル酸とテトラメチレングリコールとから誘導されたポリエステルフィルムをラミネートしたものを用いることが記載されている。また、曲げ伸ばしによる再絞り缶の製造に際して、ビニルオルガノゾル、エポキシ、フェノリクス、ポリエステル、アクリル等の被覆金属板を用いることも知られている。
【0004】
ポリエステル被覆金属板の製造についても、多くの提案があり、例えば、特公昭59−34580号公報には、金属素材にテレフタル酸とテトラメチレングリコールとから誘導されたポリエステルフィルムをラミネートしたものを製缶に用いることが記載されている。
【0005】
また、特開平5−4229号公報には、表面に二軸配向が残存しているポリエチレンテレフタレートより成る塗膜が記載され、更に特開平6−172556号公報には、固有粘度[η]が0.75以上のポリエステルフィルムを金属ラミネートに用いることが提案されている。
【0006】
更に、特開平3−101930号公報には、金属板と、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルフィルム層と、必要により金属板とポリエステルフィルムとの間に介在する接着プライマー層との積層体から成り、該ポリエステルフィルム層は、式
Rx =IA /IB
式中、IA はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角が24゜から28゜)の回折面によるX線回折強度、IB はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.39nm(CuKαX線回折角が21.5゜から24゜)の回折面によるX線回折強度、
で定義されるX線回折強度が0.1乃至15の範囲内にあり且つ結晶の面内配向の異方性指数が30以下であるフィルム層から成ることを特徴とする絞り缶用被覆金属板が記載されており、また、上記被覆金属板を絞り再絞り成形し、且つ再絞り成形に際して缶胴側壁部を曲げ伸ばしにより薄肉化して成る薄肉化絞り缶が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術に認められる提案は、成形前の金属素材に樹脂フィルムを施せばよく、通常の塗装処理のように、塗膜の焼き付け炉や塗料排ガスの処理施設が不要で、大気汚染がなく、また成形後の缶体に塗装処理を行わなくてもよいという利点を与えるものであるが、フィルムへの製膜性や金属基体上への押し出しコート性能の点で、未だ改善されるべき余地がある。また、このラミネートを製缶等の用途に用いた場合、缶への成形性や、缶の諸特性、特に耐衝撃性(耐デント性)、熱履歴後の耐衝撃性、耐腐食性及び巻締性乃至密封性等の点で改善されるべき余地がある。
【0008】
即ち、一般の金属−樹脂積層体においては、金属基体上に樹脂を押し出しコートすることが広く行われているが、ポリエステルの場合にもこの押し出しコート法が適用できれば、製膜及び延伸に伴う作業やそのためのコストを低減できることが期待できる。
【0009】
しかしながら、金属−ポリエステル積層体、特にシームレス容器形成用の積層体においては、製造工程上種々の熱処理を受けるが、この熱処理に際して未延伸、即ち未配向のポリエステルが熱結晶化(白化−ラメラの生成)する傾向があり、被覆が脆くなり、加工性が損なわれるという問題を生じる。積層体のポリエステルを分子配向状態に維持しておけば、熱処理の際の粗大結晶(球晶)生成が防止されるので、これが、積層用に分子配向されたポリエステルフィルムを用いる理由である。
【0010】
また、熱可塑性樹脂を基材上に押出しラミネートして積層体を製造する方法としては押出し機とTダイを用いるいわゆるTダイ法が知られているが、ポリエステル樹脂をTダイ法でラミネートしようとすると、押出し機およびダイ内部での不安定流動や、Tダイを出てからの張力不足に起因する耳ぶれや蛇行現象を生起するいわゆるドローレゾナンス現象を起こし、均一な膜厚が得られにくく、また、耳ぶれした両端部をトリミングする必要があることから歩留まりが悪いなどの問題点があった。これらの現象は、樹脂の引き取り速度を上げていったときに特に起こりやすく、ポリエステル樹脂の高速ラミネーションを非常に困難にしている。
また、ポリエステル樹脂は熱劣化による減粘を起こしやすいため、甚だしい場合にはTダイから滴下するような場合もある。
同様の問題は、ラミネートの形成に未延伸のキャストフィルムを使用する場合にも、また二軸延伸フィルムを使用する場合にも、フィルム成形段階で同様に生じる。
【0011】
また、ラミネートを実際の缶詰製品に適用した場合に要求される実用的な耐衝撃性として、耐デント性と呼ばれるものがある。これは、缶詰製品を落下して、或いは缶詰製品同士が相互に衝突して、缶詰製品に打痕と呼ばれる凹みが生じた場合にもなお、被覆の密着性やカバレージが完全に保たれることが要求されるという特性である。即ち、デント試験で被覆が剥離し或いは被覆にピンホールやクラックが入る場合には、この部分から金属溶出や孔食による漏洩等を生じて、内容物の保存性を失うという問題を生じるのである。
【0012】
次に、缶詰用缶の場合、被覆への熱処理の影響を避けることができない。即ち、缶の外面に内容物等を表示する印刷を施すのが普通であり、印刷インクを焼き付けるための加熱の影響が、ポリエステルフィルムに生じる。また、実際の製缶においては、樹脂被覆の歪み除去安定化等を目的として、缶の加熱が行われる場合もあり、この加熱によるポリエステルへの影響も無視できない。ポリエステルは、加熱により結晶化と同時に熱劣化、即ち分子量が低下する傾向があり、これにより耐デント性が低下し、金属基体との密着性低下或いは被覆性低下やネックイン加工、巻締加工等の際の加工性が低下する。
【0013】
従って、本発明の目的は、金属等の基体にポリエステルを主体とする樹脂層を設けるに当たって、上記の問題点を解消し、被覆の均一性、被覆の完全さ及び密着性に優れ且つ成形性や生産性にも優れた押出ラミネート及びこの押出ラミネート法による製缶用ラミネートを提供するにある。
【0014】
本発明の他の目的は、耐衝撃性、特に耐デント性が顕著に改善され、特に高度の絞り加工或いはしごき加工や製缶時或いは製缶後の熱処理にもかかわらず、結晶化による脆化や樹脂の熱劣化が抑制され、優れた耐デント性が維持されるた金属−ポリエステル積層体、並びにこの積層体から形成されたシームレス容器を提供するにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、高温での熱履歴を受けた後での耐デント性が顕著に改善されたポリエステル−金属積層体並びにこの積層体から形成されたシームレス容器を提供するにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、基体上にポリエステルを主体とする樹脂を積層する押出ラミネート法において、下記式(1)
R =η12.2/η1216 ・・・(1)
式中、η12.2前記樹脂の押出温度における剪断速度12.2sec−1での 溶融粘度であり、η1216前記樹脂の押出温度における剪断速度1216 sec−1での溶融粘度である、
で定義される溶融粘度比(R)が2.0以上の範囲にあり且つη1216が500ポイズ以上の範囲となるような押出温度で前記樹脂を溶融押出した後、急冷することを特徴とする押出ラミネート法が提供される。
本発明の上記押出ラミネート法において
1.前記樹脂が、溶融押出し時の温度において、0.2乃至1.5グラムの溶融張力を有するものであること、
2.前記樹脂が、溶融押出し時の温度において、1.3乃至2.0のダイスウェルを有するものであること、
3.前記樹脂が、下記式(2)
d=Mw/Mn …(2)
式中、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。
で定義される多分散度(d)が2.5以上であるものであること、
が好ましい。
【0017】
本発明の上記押出ラミネート法においてはまた、前記樹脂が、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステルと、(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメント及び(III)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントとの共重合ポリエステルとのブレンド物であり、合計量を100重量部として、I:II:III =30〜80:8〜63:2〜42の重量比で含有するポリエステル乃至ポリエステル組成物から成り且つ該ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5重量部の分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を少なくとも一種類含有することが好ましい
【0018】
本発明の上記押出ラミネート法においては更にまた、金属基体とポリエステルを主体とする複数の樹脂を積層する押出ラミネートに法において、前記複層樹脂層の表面樹脂層を構成する樹脂がガラス転移点が70℃以上のポリエステル組成物から成り且つ前記複層樹脂層の下地樹脂層を構成する樹脂が(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステルと、(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメント及び(III)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントとの共重合ポリエステルとのブレンド物であり、合計量を100重量部として、I:II:III =30〜80:8〜63:2〜42の重量比で含有するポリエステル乃至ポリエステル組成物から成り且つ該ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5重量部の分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を少なくとも一種類含有することが好ましい
【0019】
記ブレンド物中のポリエチレンテレフタレート・セグメント(I)を主体とするポリエステルが、下記式(3)
E=100・[1-exp{(Hu/R)・(1/Tm0−1/Tm)}]…(3)
ここで、
Hu :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融解熱量9200(J/mol)
R :気体定数8.314(J/(mol・K))
Tm :ブレンド物の融点(K)
Tm0:エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融点(K)。
で定義されるエステル交換率(E)が0.5乃至20%の範囲にあるものが特に好ましい。
また、ブレンド物の固有粘度[η]が0.55以上であることが特に好ましい。
【0020】
本発明によれば、前記ラミネートを加工して得られ、少なくとも内面がポリエステル組成物で被覆された容器が提供される。
【0021】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明では、ポリエステルをダイスを通して溶融押出し、これを直接、或いは一旦フィルムに成形した後、金属等の基体にラミネートするが、このポリエステルとして、前記式(1)の溶融粘度比(R)が2.0以上であり、且つ剪断速度1216sec-1での溶融粘度η1216が500ポイズ以上のポリエステルを選択することにより、ドローレゾナンス現象を抑制し、均一な膜厚で且つ被覆欠陥がなくしかも基体との密着性に優れたラミネートを、高い歩留まりをもって、しかも100m/min以上という高速度で安定して製造することができる。
【0022】
本発明において、剪断速度1216sec-1での溶融粘度(η1216)を問題としているのは、押出機やダイス内部では、高剪断速度でポリエステルの溶融押出が行われており、この高剪断速度の一基準値として上記剪断速度を採用している。また、前記式(1)の溶融粘度比(R)は、高剪断速度1216sec-1での溶融粘度と低剪断速度12.2sec-1での溶融粘度との比であって、剪断速度の範囲として100倍の範囲をとったものであるが、この比はポリエステル溶融流動体の非ニュートニアン性を示すものである。即ち、ニュートニアン性流体の場合、溶融粘度比(R)は1.0であるが、ニュートニアン流体からのずれが大きくなるに従って、この溶融粘度比(R)は1に比べて大きな値をとるようになる。
【0023】
一般に、ドローレゾナンス現象を抑制するためには、安定した流動性を持ち、溶融張力の大きい樹脂を用いることが有効であるが、ポリエステルでは溶融張力の増大は粘度の著しい上昇を伴うことから、通常の押出し機では押出し自体が不能となる場合が多く、高速押出しは不可能であった。押出し温度を上げて押出し可能にした場合、樹脂の減粘・張力減少などから、前述のドローレゾナンス現象やダイからの溶融樹脂の滴下を引き起こし、高速ラミネーションを行うことはできない。
【0024】
これに対して、本発明においては、前述した溶融粘度特性に関連して、剪断速度の大きい押出し機内部においては、ポリエステル溶融物が低粘度に維持されて低負荷で押出しが可能となると共に、ダイスから解放された後は剪断が掛からず粘度上昇し溶融張力も増大するため、樹脂のタレやドローレゾナンス現象が抑制される。
また流路内やダイス内部では、ポリエステル溶融物は非ニュートン流動特性を持つため、不安定流動を生じにくく、この点でもドローレゾナンス現象の発生が抑制されるものである。
【0025】
従来、金属−ポリエステル積層体の製造に使用されているポリエステルの溶融粘度比(R)は1或いはその前後の値をとるものであり、このようなポリエステルを押出コートで基体上にラミネートすると、後述する比較例に示すとおり、耳ぶれを発生する。耳ぶれは高速になるほど激しくなるため、高速押出しを行うことはできない。
【0026】
これに対して、本発明によれば、溶融粘度比(R)及びη1216を上記範囲に設定することにより、後述する実施例に示すとおり、耳ぶれや滴下の発生を完全に抑制しながら、100m/min以上の高速でのラミネートが可能となるのである。
添付図面の図1は、種々のポリエステルについて、溶融粘度比(R)を縦軸及びη1216を横軸として、ドローレゾナンスとの関係をプロットしたグラフであり、ドローレゾナンスを防止する上で、本発明で規定した溶融粘度特性を有することが重要であることが了解される。
【0027】
本発明に用いるポリエステルにおいて、剪断速度1216sec-1における溶融粘度(η1216)は500ポイズ以上であることが必要であり、これ以下ではダイスからの溶融樹脂の滴下を生じて製膜できない。
またその上限は押出し機の性能に依存するが、一般に押出し機の過度の負荷を軽減させ、メルトフラクチャーの発生を防止するためには、上記η1216は4000ポイズ以下であることが望ましい。
一方、溶融粘度比(R)は2.0以上であることが必要である。
【0028】
前記樹脂層はまた、溶融押出し時の温度において、0.2乃至1.5グラムの溶融張力を有するものであることが好ましく、溶融張力が上記範囲よりも低い場合には、ドローレゾナンス(耳ぶれ)が発生する傾向があり、一方溶融張力が上記範囲よりも高い場合には、高速下で膜切れを発生する傾向がある。
前記樹脂層は更に、溶融押出し時の温度において、1.3乃至2.0のダイスウェルを有するものであることが好ましく、溶融張力にも関係するが、ダイスウェルが上記範囲よりも小さい場合には、ドローレゾナンス(耳ぶれ)が発生する傾向があり、一方ダイスウェルが上記範囲よりも大きい場合には、高速下で膜切れを発生する傾向がある。
【0029】
前記樹脂層はまた、下記式(2)
d=Mw/Mn …(2)
式中、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である、
で定義される多分散度(d)が2.5以上であるものであることが好ましく、多分散度(d)が上記の範囲内にあれば、安定した押出性が確保される。
【0030】
本発明によれば、製膜時或いはラミネート時のドローレゾナンス現象が解消されるため、利用できる膜幅が広く、膜の歩留まりがよく、また製膜時或いはラミネート時の生産性に優れるという利点がある。また、押出時のネックインが小さいため、膜のトリミング幅が小さくて済み、利用できる膜幅が広く、歩留まりがよくなると共に、膜の平面性も優れたものとなる。このため、本発明によると、被覆の均一性及び被覆の完全さに優れたポリエステル被覆層が形成される。本発明によるラミネートのポリエステル被覆層は、金属等の基体との密着性に優れ且つ容器等への成形性にも優れている。
【0031】
本発明では、上記の通り、特定の溶融粘度特性のポリエステル乃至ポリエステル組成物を溶融押出することが重要であるが、それと同時に押出物を急冷することが重要である。即ち、押出後に樹脂を急冷することにより、粗大結晶の生成を抑制し、ラミネートの容器への成形やフィルムの二軸延伸加工に際して、優れた成形性が保持される。
【0032】
本発明の押出加工によるラミネートのポリエステル被覆層の密度と非晶密度の差は、0.05以下という特徴がある。
ここで上記密度の関係式は、下記式
ρ−ρa ≦ 0.05
式中、ρはポリエステル被覆層の密度勾配管法で測定される密度であり、ρa は上記ポリエステル被覆層を融点より30℃高い温度で3分間保持し、次いで液体窒素中で急冷して作成した非晶試料の密度である。
で表される。
【0033】
本発明のラミネートでは、ポリエステル被覆層の密度が、上記の範囲に抑制されているため、その構造は非晶に近く、金属等の基体に対する密着性が向上し、且つ絞りや絞り−しごきに対する加工性が向上しているものと認められる。
【0034】
本発明のラミネートを絞り成形或いは絞り−しごき成形、接着或いは溶接による缶胴成形加工に付すると、優れた加工性、耐衝撃性(耐デント性)、耐腐食性及び耐熱性を有する容器が得られる。
即ち、絞り成形或いは絞り−しごき成形加工によるシームレス容器の側壁部(胴部)のポリエステル層は、容器軸方向に一軸配向され、優れた配向結晶性を有することにより、耐衝撃性に優れており、また腐食成分に対するバリアー性に優れている。
【0035】
本発明では、金属基体に積層されるポリエステルとして、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントと(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントと(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントとを、合計量を100重量部として、I:II:III =30〜80:8〜63:2〜42の重量比で含有するポリエステル乃至ポリエステル組成物を用いることが好ましく、積層体に優れた加工性、耐衝撃性(耐デント性)、耐腐食性及び耐熱性を付与することができる。これらの特性は、金属基体−ポリエステル積層体を絞り−再絞り加工或いは絞り−しごき加工等に付して、シームレス缶を製造するときに極めて重要な特性である。
【0036】
本発明に使用するポリエステルにおいて、上記エチレンテレフタレート・セグメント(I)は、形成される被覆に機械的強度や剛性及び耐熱性を付与する成分であり、一方ポリエステル・セグメント(II)及び(III )は形成されるポリエステル被覆のガラス転移温度を低下させると同時に結晶化速度を速くし、微細結晶を生成するとともに、ポリエステル被覆層の加工性を向上させ、さらに缶の用途に適用した際の耐デント性を向上させる成分であり、これらを組み合わせて用いることにより、耐熱性を低下させることなく、耐衝撃性の向上が得られる。
【0037】
即ち、ポリエステル・セグメント(II)及びポリエステル・セグメント(III )を同時に組み込むことによって、デント試験後の金属露出を著しく抑制できる。
【0038】
本発明のポリエステル乃至ポリエステル組成物は、前述した重量比の組成を有することも重要であり、ポリエステル・セグメント(I)の量が80重量部よりも多いときには、ポリエステル組成物の耐衝撃性が本発明の範囲内にある場合に比して低下する傾向があり、一方ポリエステル(I)の量が30重量部よりも少ないときには、ポリエステル組成物の耐熱性が本発明の上記範囲内にある場合に比して低下する傾向があり、更にフィルムが工具に粘着したりする成形上の問題があり、いずれも好ましくない。
【0039】
また、ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメント(II)の量が63重量部よりも多いときや、ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメント(III )の量が42重量部よりも多いときには、耐衝撃性が本発明の場合に比して低下する傾向があり、特にシームレス缶にしたとき、衝撃を受けた際の金属露出(ERV)が大きくなる。また、ポリエステル・セグメント(II)の量が8重量部よりも少ないときや、ポリエステル・セグメント(III )の量が2重量部よりも少ないときには、耐衝撃性能がやはり本発明の場合に比して低下する傾向があり、特にシームレス缶にしたとき、衝撃を受けた際の金属露出(ERV)が大きくなり、耐衝撃性に関してポリエステル・セグメント(II)及び(III )の量には最適範囲がある。
【0040】
本発明においては、ポリエステル組成物が(I)エチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステルと、ポリエステル・セグメント(II)及びポリエステル・セグメント(III )を含む共重合ポリエステルとのブレンド物であることが、耐熱性の点で、特に好ましい。たとえば同じ成分比であっても、これら三者が共重合ポリエステル中に存在する場合には、その融点が低下する傾向があるが、上記のブレンドの形で用いることにより、被覆の耐熱性が向上する。
【0041】
本発明では、上記ブレンド物中の成分(I)、即ちエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステルの前記式(3)に示すエステル交換率が0.5〜20%の範囲にあることが好ましい。
【0042】
エステル交換率を求める前記式(3)は、一般に知られているフローリーの式を基にしたものであり、ブレンド物中のエステル交換反応の程度と、エチレンテレフタレート主体の結晶性ポリエステル(I)の融点降下との間に一定の関係があることに基づいて、求められるものである。即ち、ポリエステル(I)の融点降下が全く生じていない場合、式(3)左辺の1/Tm0−1/Tmの値は0となり、エステル交換率Eはゼロ%となる。融点降下の程度が大きくなると、1/Tm0−1/Tmの値は負でその絶対値が大きくなり、エステル交換率Eは大きな値となる。
【0043】
本発明の好適な態様では、上記エステル交換率が0.5乃至20%の範囲にあることが、衝撃後の耐食性に関して重要である。即ち、エステル交換率が0.5%を下回る場合には、両成分のブレンドが不十分で、満足すべき物性のフィルムを得ることができない。一方、エステル交換率が20%を上回ると、樹脂の製膜性、ラミネートの加工性、被覆の耐熱性、成形容器の諸物性に悪影響を及ぼす。即ち、ポリエステルの溶融押出時に、エステル交換率が高すぎると、製膜時ののネックインが大きくなり、Tダイ幅に対して樹脂の膜幅が小さくなる傾向がある。また、ネックインの増大に伴い、全体の膜幅だけでなく、製品として利用できる平坦厚みの幅も減少する傾向がある。
また、金属とラミネートされた状態においても、エステル交換率が高すぎると、ラミネートの加工性に悪い影響を与える。更に、容器の状態でも、耐デント性、即ち、衝撃後の耐食性が著しく低下する。
この理由は、次の通りと考えられる。ブレンド物は海−島構造の二相構造を有しており、本願ではポリエチレンテレフタレート主体のポリエステル(I)成分とブチレングリコールと芳香族酸あるいは脂肪族酸から誘導されたポリエステル(II)成分および(III) 成分に相当する。(I)成分は耐熱性に寄与し、(II)成分および(III) 成分は被膜のガラス転移温度を低下させ、結晶化速度を速くすることにより熱処理後の耐衝撃性を向上する。
エステル交換率が20%を越えると(I)成分の耐熱性が損なわれると同時に、(II)成分および(III) 成分のガラス転移温度の低下効果および結晶化速度を速くする効果が損なわれるために耐衝撃性が低下すると考えられる。これに対して、エステル交換率が上記範囲内にあるブレンド物の被覆層では、熱結晶化が抑制され、衝撃時のフィルム割れが防止され、優れた耐食性が維持されるものである。
【0044】
本発明では、上記のポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を0.01乃至1.5重量部の範囲で含有させることが好ましく、これにより、高温での熱処理を受けた後での耐デント性を著しく向上させることができる。
【0045】
即ち、金属−ポリエステル積層体を絞り成形して成るシームレス缶では、ポリエステル被覆層に歪みが残留しており、缶の耐久性や耐熱水性の点では、この歪みを高温での熱処理により除去することが望ましい。本発明で用いる特定のポリエステル乃至ポリエステル組成物は、それ自体耐デント性に優れたものではあるが、例えば240℃で3分間の熱処理を受けると、デント試験後の電流値(金属露出の尺度)が十数mAという大きな値に達するのであり、この原因は、ポリエステルに著しい熱分解が生じるためである。
【0046】
樹脂の熱分解防止のために、酸化防止剤を配合することは一般的であるが、例えば酸化防止剤として最も一般的な2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を配合したのでは、熱処理時における熱分解防止も達成されず、デント試験後の電流値も依然として高いレベルである。これはBHTの分子量が小さく、比較的高温となるポリエステルの溶融押出し条件では、その多くが揮発してしまい、熱処理時には十分な酸化防止効果が得られないことに起因する。
【0047】
これに対して、分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を選択し、これを前記ポリエステル乃至ポリエステル組成物に配合すると、熱処理時における分解が完全に防止されると共に、デント試験後の金属露出を著しく低下させることができる。尚、使用する酸化防止剤を非イオウ系と限定しているのは、イオウ系の酸化防止剤では、添加したポリエステル組成物に着色や異臭が生じるためである。
【0048】
本発明では、上記酸化防止剤を0.01乃至1.5重量部の限定された量で用いることも重要であり、上記範囲を下回ると所定の効果が得られなく、一方上記範囲を上回ると、ポリエステルのゲル化を生じて被覆の平滑性が失われてシームレス缶への成形が困難となる傾向がある。
【0049】
本発明の積層体及びシームレス容器において、上記ポリエステル・セグメント(I)(II)及び(III )を含有する酸化防止剤配合ポリエステル乃至ポリエステル組成物は、少なくとも、耐食性が問題となる缶内面側に設けるべきであり、これは単層で設けても、或いは多層で設けてもよい。後者の場合、酸化防止剤配合ポリエステル層を下地樹脂層として設け、この下地樹脂層の上に表面樹脂層として、ガラス転移温度70℃以上のエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルを設けるのが、加工性、耐食性、耐衝撃性、フレーバー保持性等の総合的見地から望ましい。このポリエステルの例としてエチレンテレフタレート/イソフタレート単位またはエチレンテレフタレート/ナフタレート単位のポリエステルが挙げられる。
【0050】
本発明において、ポリエステルを主体とする層は、押出コートにより金属基体上に設けられていても、或いは二軸延伸フィルムの形で金属基体上に熱接着されていてもよい。前者の場合、ポリエステルを製膜し、二軸延伸することなしに直接ラミネートすることができ、この場合にも十分にシームレス缶に加工でき、この缶においても前述した諸特性が得られるという利点がある。このため、前者の態様によれば、諸工程を省略して、生産性を高め、設備費を節減して、高性能のシームレス缶を安価に提供できるという利点をもたらす。また、後者の場合、フィルムの製膜工程やラミネート工程での熱分解の程度が少なく、缶底部において、ポリエステルの二軸分子配向による耐衝撃性や耐腐食性の向上効果を享受できるという利点がある。
【0051】
[ポリエステル]
本発明に用いるポリエステル層は、前記式(1)で定義される溶融粘度比(R)が2.0以上の範囲にあり且つη1216が500ポイズ以上、特に500乃至4000ポイズの範囲にあるポリエステル乃至ポリエステル組成物である。本明細書において、ポリエステルとは、ホモポリエステルのみならず、共重合ポリエステルをも含む意味で使用するものである。また、このポリエステル樹脂層は、溶融押出し時の温度において、0.2乃至1.5グラムの溶融張力及び1.3乃至2.0のダイスウェルを有し、前記式(2)で定義される多分散度(d)が2.5以上であることが好ましい。
【0052】
上記ポリエステル乃至ポリエステル組成物は、被覆層の物性と溶融押出特性の点から、0.55以上の固有粘度[η]を有するのが望ましく、また、耐熱性や加工性と溶融押出特性の点から、160乃至270℃、特に200乃至250℃の範囲に少なくとも1つの融解ピークを有することが好ましい。
【0053】
ポリエステルが誘導される酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタール酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の二塩基性芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、シクロヘキサンジ酢酸等の脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸等が挙げられる。勿論、これらは、単独でも或いは2種以上の組み合わせでも使用される。
【0054】
ポリエステルが誘導されるアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール類や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコール等が挙げられる。勿論、これらは、単独でも或いは2種以上の組み合わせでも使用される。
【0055】
上記溶融粘度特性を有するポリエステルの適当な例として、ポリエステル主鎖中に3官能以上の多官能成分を導入して、分岐鎖或いは架橋鎖を形成したものであり、その具体例としては、(a)テレフタール酸等の芳香族ジカルボン酸を主体とする二塩基酸、(b)エチレングリコール及び/またはブチレングリコールを主体とするジオール及び(c)三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールから成る群より選択された少なくとも1種の分岐乃至架橋成分から誘導されたポリエステル乃至ポリエステル組成物が挙げられる。三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールとしては、前に例示したものが使用される。
【0056】
三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールビスフエノールの多官能成分は、ポリエステル乃至ポリエステル全体当たり0.05乃至3.0モル%、好ましくは0.1乃至3.0モル%含有されていることが好ましく、上記含有量よりも低いと、前述した溶融粘度特性を得ることが困難となる傾向があり、上記含有量よりも多いとポリエステルのゲル発生など溶融押出特性が低下したり、被覆層の機械的性質が低下する傾向がある。
【0057】
本発明で好適に使用されるポリエステル乃至ポリエステル組成物は、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントと(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントと(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントとを、合計量を100重量部として、I:II:III =30〜80:8〜63:2〜42の重量比で含有する。
【0058】
本明細書において、セグメントとは、通常使用されている意味、即ち、鎖状高分子の特性を統計的に表現する際に使用される高分子鎖中の最小単位である。前述した各ポリエステル・セグメントは、それぞれ固有の特性を示すものであることは、既に指摘したところであるが、これらの各ポリエステル・セグメントは、統計的に上記の組成比でポリエステル乃至ポリエステル組成物に含まれていればよく、その存在状態は特に問わない。例えば、ポリエステル相互のブレンド物でもよく、また共重合ポリエステルでもよい。
【0059】
しかしながら、本発明においては、(I)エチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステル(A)と、ポリエステル・セグメント(II)及びポリエステル・セグメント(III )を含む共重合ポリエステル(B)とのブレンド物であることが好ましいので、以下この例について詳細に説明するが、本発明はこの場合に限定されない。
【0060】
本発明で一方の成分として用いるエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステル(A)は、エステル反復単位の大部分、80モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占める結晶性ポリエステルが好適である。ホモポリエチレンテレフタレートが耐熱性の点で好適であるが、エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用し得る。
【0061】
テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、オルソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2,−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸及びビフェニル−3,4,3′,4′−テトラカルボン酸から成る群より選ばれた多塩基酸の少なくとも1種が好適である。共重合成分としてイソフタル酸もしくはナフタレン2,6−ジカルボン酸を含むポリエステルは耐内容物性、内容物の香味保持性等に優れている。
【0062】
ジオール成分は、エチレングリコールを主体とすることが好適であり、高速製膜性の点で特にペンタエリスリトールを含むことが好ましい。更に、本発明の本質を損なわない範囲で、それ以外のジオール成分、例えば、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が含まれていてもよい。
【0063】
用いるエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステル(A)は、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5乃至1.5の範囲にあるのがよい。
また、このポリエステル(A)の融点(Tm)は、200乃至280℃の範囲に、またガラス転移点(Tg)は、20乃至90℃の範囲にあるのがよい。
【0064】
本発明で他方の成分として用いる共重合ポリエステル(B)は、(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを前記量比で含む共重合ポリエステルである。
【0065】
エステル単位(II)を構成する芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられるが、テレフタル酸が好適である。
【0066】
エステル単位(III )を構成する脂肪族二塩基酸成分としては、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ダイマー酸等をあげることができるが、Tgを低下する効果が大きいことから長鎖の脂肪族二塩基酸が好ましく、工業的生産の見地から特にアジピン酸が好ましい。エステル単位(II)あるいはエステル単位(III )を構成する酸成分は、二塩基酸のみからなることが好適であるが、本発明の本質を損なわない範囲で二塩基酸以上の多塩基酸を含有していてもよい。
【0067】
ジオール成分は、ブチレングリコールのみからなることが好適であるが、本発明の本質を損なわない範囲内で、ブチレングリコール以外のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0068】
この共重合ポリエステル(B)は、芳香族エステル単位(II)と 脂肪族エステル単位(III )とを前記量比で含むことも重要であり、脂肪族エステル単位の含有量が上記範囲よりも少ないときには、耐衝撃性(耐デント性)の改善が不十分であり、一方上記範囲を上回ると、やはり耐衝撃性が低下し、更に被覆の耐熱性、加工性、腐食成分に対するバリアー性等が低下するようになる。
【0069】
この共重合ポリエステル(B)も、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5乃至2.0の範囲にあるのがよい。 また、共重合ポリエステル(B)の融点(Tm)は、120乃至230℃の範囲に、またガラス転移点(Tg)は、−30乃至30℃の範囲にあるのがよい。
【0070】
本発明では、エチレンテレフタレート系ポリエステル(A)と上記の特定の共重合ポリエステル(B)とを前述した量比となるようにブレンドして使用する。混合は乾式混合で行っても、或いはメルトブレンドによって行ってもよい。
【0071】
本発明で用いるポリエステル組成物は、エチレンテレフタレート系ポリエステル(A)と共重合ポリエステル(B)のブレンドであることに関連して、示差熱分析に付すると、エチレンテレフタレート系ポリエステル(A)に特有の融点(Tm1 )と、共重合ポリエステル(B)に特有の融点(Tm2 )とを示す。勿論、各ピークの高さは両成分の配合比に依存する。この事実は、均一の組成物であっても、エチレンテレフタレート系ポリエステル(A)と共重合ポリエステル(B)とが主として互いに独立の相として存在していることを示している。
【0072】
しかしながら、このポリエステル組成物は、後述するブレンドの条件によりエステル交換反応が進行し、エチレンテレフタレート系ポリエステル(A)は融点降下を生じる。ブレンド物中のエチレンテレフタレート系ポリエステルの融点(Tm)とブレンド前のエチレンテレフタレート系ポリエステルの融点(Tm0 )により前記式(3)で定義されるエステル交換率が、0.5乃至20%の範囲にあるのが好ましい。
【0073】
エチレンテレフタレートを主体とする結晶性ポリエステル樹脂(A)と、特定の共重合ポリエステル樹脂(B)とのブレンド物において、前述した範囲のエステル交換率に制御する方法としては、押し出し機の前工程にて、あらかじめ樹脂チップをブレンドし、樹脂温度、反応時間、湿度等を制御しながら混練してエステル交換率を制御する方法や、直接原料チップを押し出し機中に入れて押し出し機中の樹脂温度、滞留時間を制御する方法などがあり、いずれの方法を用いてもよいが、混練時の温度、時間はエステル交換反応において非常に重要なパラメーターである。ポリエステル樹脂の混練時の温度としては240℃〜280℃が一般的であるが、温度が高いとエステル交換反応は進みやすいが、逆に熱分解が始まり、結果的に分子量が低下する。また、混練時間は長いほどエステル交換率は上昇する。
【0074】
混合乃至混練操作は、ブレンダーやヘンシェルミキサー等を用いて乾式混合を行った後、各種ニーダー或いは一軸乃至二軸の押出型溶融混練装置や射出機用混練装置を用いて、溶融混練を行うことができる。
【0075】
(酸化防止剤)
本発明に用いる酸化防止剤は、分子量400以上の酸化防止剤であり、これに限定されるものではないが、高分子フェノール系酸化防止剤、例えば、
テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン(分子量1177.7)、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(分子量544.8)、
1,3,5−トリメチルー2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(分子量775.2)、
ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル(分子量794.4)、
1,3,5−トリス(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン 2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(分子量783.0)、
トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量586.8)、
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量638.9)
等を用いることができる。中でも特に、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好適である。
【0076】
分子量400以上の酸化防止剤の他の例として、トコフェロール系酸化防止剤、例えばα−型、β−型、γ−型、δ−型等のトコフェロールを挙げることができる。α−トコフェロールが特に好適である。
【0077】
これらの酸化防止剤は、前記ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5重量部の量で用いる。
【0078】
勿論、このポリエステル組成物には、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、二酸化チタン(チタン白)等の顔料、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方に従って配合することができる。
【0079】
[金属等の基体]
本発明では、ポリエステル層をラミネートすべき基体としては、金属板や金属箔、紙、他のプラスチックフィルム乃至シート等が挙げられる。これらの内でも金属板が好ましく、金属板としては各種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用される。
【0080】
表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板であり、特に10乃至200mg/m2 の金属クロム層と1乃至50mg/m2 (金属クロム換算)のクロム酸化物層とを備えたものであり、このものは塗膜密着性と耐腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例は、0.5乃至11.2g/m2 の錫メッキ量を有する硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金属クロム換算で、クロム量が1乃至30mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0081】
更に他の例としては、アルミニウムメッキ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板が用いられる。
【0082】
軽金属板としては、所謂アルミニウム板の他に、アルミニウム合金板が使用される。耐腐食性と加工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Zn:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものである。これらの軽金属板も、金属クロム換算で、クロム量が20乃至300mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0083】
金属板の素板厚、即ち缶底部の厚み(tB )は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、一般に0.100乃至0.500mmの厚みを有するのがよく、この内でも表面処理鋼板の場合には、0.10乃至0.30mmの厚み、また軽金属板の場合には0.15乃至0.40mmの厚みを有するのがよい。
【0084】
金属箔としては、表面処理鋼箔や軽金属箔の内、厚みが0.005乃至0.120mmの範囲にあるものが使用される。この金属箔は所謂カップ容器を製造するのに有用である。
【0085】
[ラミネート及びその製造方法]
本発明の積層体の断面構造の一例を示す図2において、この積層体1は金属基体2と少なくとも内面側に位置するポリエステル組成物層3とから成っている。金属基体2には外面被膜4が形成されているが、この外面被膜4はポリエステル組成物層3と同様のものであってもよいし、また通常の缶用塗料や樹脂(ポリエステル)フィルム被覆であってもよい。
【0086】
積層体の断面構造の他の例を示す図3において、ポリエステル組成物層3と金属基体2との間に接着用プライマーの層5を設けている以外は、図2の場合と同様である。
【0087】
積層体の断面構造の他の例を示す図4において、ポリエステル組成物層3を下地樹脂層とし、このポリエステル組成物層3の上にエチレンテレフタレート系ポリエステルの表面樹脂層6を設けている以外は図2の場合と同様である。
【0088】
本発明に用いるポリエステル−金属ラミネートは、前記ポリエステル組成物を溶融状態で金属基体上に押出しコートして、熱接着させることにより製造することができる。また、別法として、予め製膜されたポリエステルフィルムを金属基体に熱接着させることによっても製造することができる。
【0089】
本発明において、押出コートやフィルムの熱接着に使用するポリエステル層は、単層であっても、また多層の積層構造のものであってもよい。多層の場合、下地樹脂層が前述したブレンド物から成り、表面樹脂層が前述した80モル%以上のエチレンテレフタレート単位からなる共重合ポリエステルから成るのがよい。表面樹脂層は、70℃以上のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。
【0090】
本発明に使用するポリエステル層の厚みは、全体として、2乃至100μm、特に5乃至50μmの範囲にあるのが金属の保護効果及び加工性の点でよい。多層の場合、ブレンド物層と、エチレンテレフタレート系ポリエステル層とは、96:4乃至4:96の厚み比を有するのがよい。
【0091】
ポリエステル−金属ラミネートの押出コート法による製造方法を説明するための図5において、金属板11を必要により加熱装置12により予備加熱し、一対のラミネートロール13、13間のニップ位置13aに供給する。一方、ポリエステル組成物は、金属板の両側に配置された押出機のダイヘッド14、14を通して薄膜15、15の形に押し出し、ラミネートロール13と金属板11との間に供給され、ラミネートロール13により金属板11に圧着される。ラミネートロール13は、一定の温度に保持されており、金属板11にポリエステル組成物から成る薄膜15を圧着して両者を熱接着させると共に両側から冷却して積層体16を得る。一般に、形成される積層体16を更に冷却用水槽18等に導いて、熱結晶化を防止するため、急冷を行う。
【0092】
この押出コート法では、樹脂組成の選択とロールや冷却槽による急冷とにより、ポリエステル乃至ポリエステル組成物の層は、結晶化度が、低いレベル、非晶密度との差が0.05以下に抑制されているため、ついで行う絞り加工等に対する十分な加工性が保証される。勿論、急冷操作は上記例に限定されるものではなく、形成されるラミネートに冷却水を噴霧して、ラミネートを急冷することもできる。
【0093】
金属基体に対するポリエステル組成物の熱接着は、溶融ポリエステル層が有する熱量と、金属板が有する熱量とにより行われる。金属板の加熱温度(T1 )は、一般に90℃乃至290℃、特に100℃乃至280℃の温度が適当であり、一方ラミネートロールの温度は10℃乃至150℃の範囲が適当である。
【0094】
本発明において、積層体の製造に予め製膜されたポリエステルフィルムを使用することもできる。
このフィルムは、上記ポリエステル組成物をT−ダイ法でフィルムに成形し、過冷却された未配向のキャストフィルムとする。この未配向のフィルムを熱接着に用いることもできるし、また、このキャストフィルムを公知の方法により、逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを熱固定したものをラミネートの製造に用いることもできる。
【0095】
ポリエステル系フィルムは一般に二軸延伸されているのが好ましい。二軸配向の程度は、X線回折法、偏光蛍光法、複屈折法、密度勾配管法密度等でも確認することができる。フィルムの二軸延伸の程度は、0.04乃至0.18の複屈折を有するものが適当である。フィルムの延伸は一般に80乃至130℃の温度で、面積延伸倍率が2.5乃至16.0、特に4.0乃至14.0となる範囲から、ポリエステルの種類や他の条件との関連で、複屈折が前記範囲となる延伸倍率を選ぶ。また、フィルムの熱固定は、130乃至240℃、特に150乃至230℃の範囲から、やはり前記条件が満足されるような熱固定温度を選ぶ。
【0096】
一般に必要でないが、接着用プライマーを用いる場合には、フィルムへの接着用プライマーとの密着性を高めるために、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面をコロナ放電処理しておくことが一般に望ましい。コロナ放電処理の程度は、そのぬれ張力が44dyne/cm以上となるようなものであることが望ましい。
【0097】
この他、フィルムへのプラズマ処理、火炎処理等のそれ自体公知の接着性向上表面処理やウレタン樹脂系、変性ポリエステル樹脂系等の接着性向上コーティング処理を行っておくことも可能である。
【0098】
ポリエステルフィルムを使用するラミネート方法を説明するための図6において、金属板11を加熱ロール12により用いるポリエステルの融点(Tm)以上の温度(T1 )に加熱し、ラミネートロール13、13間に供給する。一方、ポリエステルフィルム15は、供給ロール17から巻きほぐされ、ラミネートロール13、13間に金属板11をサンドイッチする位置関係で供給される。ラミネートロール13、13は、加熱ロール12よりも若干低い温度(T2 )に保たれており、金属板11の両面にポリエステルフィルムを熱接着させる。ラミネートロール13、13の下方には、形成されるラミネート16を急冷するための冷却水18を収容した水槽が設けられており、この水槽中にラミネートを導くガイドローラ19が配置されている。ラミネートロール13、13と冷却水18との間には一定の間隔のギャップGを形成し、このギャップGに保温機構19aを設けて、一定の温度範囲(T3 )に保持し、ポリエステルの溶融相から固相への遷移状態において、配向の戻りによるフィルム厚み方向途中における二軸配向のピークが形成されるようにするのがよい。
【0099】
金属板の加熱温度(T1 )は、一般にTm+0℃乃至Tm+100℃、特にTm+0℃乃至Tm+50℃の温度が適当であり、一方ラミネートロール13の温度T2 は、70℃乃至180℃、特に80℃乃至150℃の範囲が適当である。上記の温度設定により、金属板上のポリエステルには、上記温度差に対応する温度勾配が形成され、この温度勾配は次第に消失するが、ポリエステルの表面側から金属板側への厚み方向途中の部分が、溶融相から固相への遷移状態において配向の戻り現象を生じる温度領域を十分な時間をかけて通過するようにする。このために、ラミネートロール通過後のラミネートを、保温域で保温するのが有効である。
【0100】
ポリエステルフィルムと金属素材の間に所望により設ける接着プライマーは、金属素材とポリエステル組成物層との両方に優れた接着性を示すものである。密着性と耐腐食性とに優れたプライマー塗料の代表的なものは、種々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料であり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:50乃至5:95重量比、特に40:60乃至10:90の重量比で含有する塗料である。
接着プライマー層は、一般に0.01乃至10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は予め金属素材上に設けてもよい。
【0101】
本発明におけるラミネートの製造は、上記の方法に限定されない。即ち、予め形成された延伸乃至未延伸のフィルムと金属基体等との間に、前述したポリエステル乃至ポリエステル組成物を溶融押出する、所謂サンドイッチラミネーションによっても、ラミネートを製造することができる。この手段は、非常に融点の異なる複数の樹脂や基材密着性に劣る樹脂を積層できる利点を有する。勿論、エチレンテレフタレート系高結晶性ポリエステルフィルムと、金属基体を前述したポリエステルブレンド物の溶融物を介して積層するのにも有利に使用できる。
【0102】
[シームレス缶及びその製造]
本発明のシームレス缶の一例を示す図7において、このシームレス缶21は前述したポリエステル−金属ラミネート1の絞り−再絞り加工による曲げ伸ばし或いは更にしごき加工により形成され、底部20と側壁部22とから成っている。側壁部22の上端には所望によりネック部23を介してフランジ部24が形成されている。この缶21では、底部20に比して側壁部22は曲げ伸ばし或いは更にしごき加工により積層体元厚の20乃至95%、特に30乃至85%の厚みとなるように薄肉化されている。
【0103】
本発明のシームレス缶は、上記のポリエステル−金属ラミネートをポンチとダイスとの間で、有底カップに絞り−深絞り成形し、深絞り段階で曲げ伸ばし或いは更にしごきによりカップ側壁部の薄肉化を行なうことにより製造される。即ち、薄肉化のための変形を、缶軸方向(高さ方向)の荷重による変形(曲げ伸ばし)と缶厚み方向の荷重による変形(しごき)との組み合わせでしかもこの順序に行う。曲げ伸ばしはエチレンテレフタレート単位のc軸方向への分子配向を与え、一方しごきはエチレンテレフタレート単位のベンゼン面のフィルム面に平行な分子配向を与える。
【0104】
本発明のシームレス缶は、上記のポリエステル−金属ラミネートを有底カップに絞り成形或いは更に深絞り成形することにより得られ、好ましくは、この深絞り段階で曲げ伸ばし或いは曲げ伸ばしとしごきを行うことによりカップ側壁部の薄肉化を行なう。
【0105】
例えば、深絞り曲げ伸ばし成形(絞り−曲げ伸ばし再絞り成形)によれば、被覆金属板から成形された前絞りカップを、このカップ内に挿入された環状の保持部材とその下に位置する再絞りダイスとで保持する。これらの保持部材及び再絞りダイスと同軸に、且つ保持部材内を出入し得るように再絞りポンチを配置する。再絞りポンチと再絞りダイスとを互いに噛みあうように相対的に移動させる。
【0106】
これにより、前絞りカップの側壁部は、環状保持部材の外周面から、その曲率コーナ部を経て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材の環状底面と再絞りダイスの上面とで規定される部分を通り、再絞りダイスの作用コーナ部により軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップよりも小径の深絞りカップに成形することができる。
【0107】
この際、再絞りダイスの作用コーナー部の曲率半径(Rd )を、金属板素板厚(tB )の1乃至2.9倍、特に1.5乃至2.9倍の寸法とすることにより、側壁部の曲げ引張りによる薄肉化を有効に行うことができる。のみならず、側壁部の下部と上部とにおける厚みの変動が解消され、全体にわたって均一な薄肉化が可能となる。一般に、缶胴の側壁部を素板厚(tB )基準で80%以下の厚み、45%迄、特に40%迄の厚みに薄肉化することができる。
【0108】
深絞り缶の場合、下記数式(5)
Figure 0003807037
式中、Dは剪断したラミネート材の径であり、dはポンチ径である、
で定義される絞り比RD は一段では1.1乃至3.0の範囲、トータルでは1.5乃至5.0の範囲にあるのがよい。
【0109】
また再絞り或いは曲げ伸ばしでは、再絞りダイの曲げ伸ばし加工部の後方にしごき加工部を配置して、側壁部に対してしごき加工を行うこともできる。
【0110】
曲げ伸ばし或いは更にしごきにより、下記数式(6)
Figure 0003807037
式中、tB は素板厚であり、tW は側壁部の厚みである
で定義されるリダクション率RI が20乃至95%、特に30乃至85%の厚みになるように薄肉化することが好ましい。
【0111】
絞り成形等に際して、被覆金属板或は更にカップに、各種滑剤、例えば流動パラフィン、合成パラフィン、食用油、水添食用油、パーム油、各種天然ワックス、ポリエチレンワックスを塗布して成形を行うのがよい。滑剤の塗布量は、その種類によっても相違するが、一般に0.1乃至10mg/dm2 、特に0.2乃至5mg/dm2 の範囲内にあるのがよく、滑剤の塗布は、これを溶融状態で表面にスプレー塗布することにより行われる。
【0112】
カップへの絞り成形性を向上させるため、ポリエステル被覆絞りカップの温度を被覆樹脂のガラス転移点(Tg)以上、特に熱結晶化温度以下の範囲に予め設定加熱して、樹脂被覆層の塑性流動を容易にした状態で成形することが有利である。
【0113】
成形後の内面側有機被覆金属製カップは、カップ開口部の耳の部分を切断する、所謂トリミングを行った後、印刷工程に付する。このトリミング処理に先立って、成形後のカップを被覆樹脂のガラス転移点(Tg)以上で融点よりも低い温度に加熱して、被覆樹脂の歪みを緩和しておくことができる。この操作は、熱可塑性樹脂の場合特に被覆と金属との密着性を高めるために有効である。
【0114】
ラミネートの絞り−しごき成形は、好適には次の手段で行われる。即ち、図8に示す通り、被覆金属板から成形された前絞りカップ30は、このカップ内に挿入された環状の保持部材31とその下に位置する再絞り−しごきダイス32とで保持される。これらの保持部材31及び再絞り−しごきダイス32と同軸に、且つ保持部材31内を出入し得るように再絞り−しごきポンチ33が設けられる。再絞り−しごきポンチ33と再絞り−しごきダイス32とを互いに噛みあうように相対的に移動させる。
【0115】
再絞り−しごきダイス32は、上部に平面部34を有し、平面部の周縁に曲率半径の小さい作用コーナー部35を備え、作用コーナー部に連なる周囲に下方に向けて径の減少するテーパー状のアプローチ部36を有し、このアプローチ部に続いて曲率部37を介して円筒状のしごき用のランド部(しごき部)38を備えている。ランド部38の下方には、逆テーパ状の逃げ39が設けられている。
前絞りカップ30の側壁部は、環状保持部材31の外周面40から、その曲率コーナ部41を経て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材31の環状底面42と再絞りダイス32の平面部34とで規定される部分を通り、再絞りダイス32の作用コーナ部35により軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップ30よりも小径の深絞りカップに成形される。この際、作用コーナー部35において、コーナー部35と接する側の反対側の部分は、曲げ変形により伸ばされ、一方、作用コーナー部35と接する側の部分は、作用コーナー部を離れた後、戻し変形で伸ばされ、これにより側壁部の曲げ伸ばしによる薄肉化が行われる。
【0116】
曲げ伸ばしにより薄肉化された側壁部は、その外面が径の次第に減少する小テーパー角のアプローチ部36と接触し、その内面がフリーの状態で、しごき部38に案内される。側壁部がアプローチ部を通過する行程は続いて行うしごき行程の前段階であり、曲げ伸ばし後のラミネートを安定化させ、且つ側壁部の径を若干縮小させて、しごき加工に備える。即ち、曲げ伸ばし直後のラミネートは、曲げ伸ばしによる振動の影響があり、フィルム内部には歪みも残留していて、未だ不安定な状態にあり、これを直ちにしごき加工に付した場合には、円滑なしごき加工を行うことができないが、側壁部の外面側をアプローチ部36と接触させてその径を縮小させると共に、内面側をフリーの状態にすることにより、振動の影響を防止し、フィルム内部の不均質な歪みも緩和させて、かつ曲げ伸ばしにより発生した熱も奪い、円滑なしごき加工を可能にするものである。
【0117】
アプローチ部36を通過した側壁部は、しごき用のランド部(しごき部)38と再絞り−しごきポンチ33との間隙に導入され、この間隙(C1)で規制される厚みに圧延される。最終側壁部の厚みC1は積層体元厚(t)の20乃至95%、特に30乃至85%の厚みとなるように定める。尚、しごき部導入側の曲率部37は、しごき開始点を有効に固定しながら、しごき部38への積層体の導入を円滑に行うものであり、ランド部38の下方の逆テーパ状の逃げ39は、加工力の過度の増大を防ぐものである。
【0118】
再絞り−しごきダイス32の曲率コーナー部35の曲率半径Rdは、曲げ伸ばしを有効に行う上では、ラミネートの肉厚(t)の2.9倍以下であるべきであるが、この曲率半径があまり小さくなるとラミネートの破断が生じることから、ラミネートの肉厚(t)の1倍以上であるべきである。
【0119】
テーパー状のアプローチ部36のアプローチ角度(テーパー角度の1/2)αは1乃至5゜を有するべきである。このアプローチ部角度が上記範囲よりも小さいと、ポリエステルフィルム層の配向緩和やしごき前の安定化が不十分なものとなり、アプローチ部角度が上記範囲よりも大きいと、曲げ伸ばしが不均一な(戻し変形が不十分な)ものとなり、何れの場合もフィルムの割れや剥離を生じることなしに、円滑なしごき加工が困難となる。
【0120】
しごき用のランド部38と再絞り−しごきポンチ33とクリアランスは前述した範囲にあるが、ランド長Lは、一般に0.5乃至30mmの長さを有しているのがよい。この長さが上記範囲よりも大きいと加工力が過度に大きくなる傾向があり、一方上記範囲よりも小さいとしごき加工後の戻りが大きく、好ましくない場合がある。
【0121】
本発明のシームレス缶において、フランジ部のポリエステル層は、過酷な巻締加工を受けることから、缶側壁部のポリエステル層に比して、マイルドな加工を受けていることが好ましい。これにより、巻締部の密封性及び耐腐食性を向上させることができる。この目的のため、しごき後の缶側壁部の上端に、缶側壁部の厚みよりも厚いフランジ形成部が形成されるようにする。即ち、缶側壁部の厚みをt1 及びフランジ部の厚みをt2 とすると、t2 /t1 の比は、1.0乃至2.0、特に1.0乃至1.7の範囲に定めるのがよい。
【0122】
再絞り−しごき成形後のシームレス缶を示す図9、図10及び図11において、シームレス缶50は、素板厚とほぼ同じ厚みを有する底部51と、再絞り−しごき加工により薄肉化された側壁部52とから成るが、側壁部52の上部には、これよりも厚肉のフランジ形成部53が形成されている。
フランジ形成部53には、種々の構造があり、図10に示した例では、側壁部52の外面とフランジ形成部53の外面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部53の内面は側壁部52の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部53が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくことにより形成される。
フランジ形成部53の図9に示した例では、側壁部52の内面とフランジ形成部53の内面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部53の外面は側壁部52の外面よりも大きい径を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきダイのランド部と共に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径のしごき部分を設けることで、フランジ形成部53と側壁部52とが形成される。
フランジ形成部53の図11に示した例では、フランジ形成部53の外面は側壁部52の外面よりも大きい径を有すると共に、フランジ形成部53の内面は側壁部52の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部53が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくと共に、再絞り−しごきダイのランド部と、更に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径のしごき部分を設けることで、フランジ形成部53と側壁部52とが形成される。
【0123】
本発明によるシームレス缶は、前述した印刷工程等を含めて、少なくとも一段の熱処理に付することができる。この熱処理には、種々の目的があり、加工により生じるフィルムの残留歪を除去すること、加工の際用いた滑剤を表面から揮散させること、表面に印刷した印刷インキを乾燥硬化させること等が主たる目的である。この熱処理には、赤外線加熱器、熱風循環炉、誘導加熱装置等それ自体公知の加熱装置を用いることができる。また、この熱処理は一段で行ってもよく、2段或いはそれ以上の多段で行うこともできる。熱処理の温度は、180乃至240℃の範囲が適当である。熱処理の時間は、一般的にいって、1秒乃至5分間のオーダーである。
熱処理後の容器は急冷してもよく、また放冷してもよい。即ち、フィルムや積層板の場合には急冷操作が容易であるが、容器の場合には、三次元状でしかも金属による熱容量も大きいため、工業的な意味での急冷操作は面倒なものであるが、本発明では急冷操作なしでも、結晶成長が抑制され、優れた組合せ特性が得られるのである。勿論、所望によっては、冷風吹付、冷却水散布等の急冷手段を採用することは任意である。
【0124】
本発明による積層体の内、押出コート法によるものやキャストフィルムを用いたものでは、ポリエステル組成物層は本質的に未配向なものであるが、前述した絞り加工或いは再絞り加工の際、側壁部のポリエステル層が缶軸方向に一軸配向され、この分子配向により、薄肉化された側壁部のポリエステル組成物層の機械的強度や腐食成分に対するバリアー性の点で多くの利点が奏される。勿論、シームレス缶の缶底部のポリエステル層は実質上未配向の状態で残留するが、前述した理由により、缶底部のポリエステル層も耐デント性に優れた状態に維持されることはいうまでもない。
このタイプのシームレス缶の側壁部におけるポリエステル層は、複屈折法で測定した下記式(7)、
Δn=n1 −n2 ‥‥(7)
1 はフィルムの最大配向方向の屈折率であり、n2 はフィルムの厚み方向の屈折率である、
による複屈折(Δn)が0.02乃至0.3の範囲にあることが好適である。
【0125】
一方、本発明による積層体の内、二軸延伸フィルムを用いたものでは、ポリエステル組成物層は本質的に二軸配向されたものであるが、前述した絞り加工或いは再絞り加工の際、側壁部のポリエステル層が缶軸方向に一軸配向され複雑な分子配向状態となる。何れにしろ、これらの分子配向により、薄肉化された側壁部のポリエステル組成物層の機械的強度や腐食成分に対するバリアー性の点で多くの利点が奏される。また、シームレス缶の缶底部のポリエステル層は実質上二軸配向が残存しているため、耐腐食性や耐デント性に優れた状態に維持することができる。
【0126】
二軸延伸フィルムを用いたラミネートのポリエステル組成物層は、下記式(4)Δn13 =nm −nt …(4)
m はフィルムの最大配向方向の屈折率であり、nt はフィルムの厚み方向の屈折率である、
で定義される複屈折(Δn)に関して、フィルムの表面側での値をΔn1 、表層から金属板に至るフィルムの中間位置での値をΔn2 、金属板に接する側での値をΔn3 とすると、Δn1 またはΔn2 の少なくとも一つが0.02以上であり且つΔn3 がΔn1 またはΔn2 以下であるという特徴を有している。
この配向の分布構造では、高配向層が表層乃至中間層に存在するため、腐食成分の透過防止、芳香成分の吸着防止、耐衝撃性の向上に役立ち、一方低配向層が金属板に接する側に存在することにより密着性向上に役立っている。
表4に、積層体および熱処理後の積層体(缶底を想定)の種々の複屈折に対するデントERV試験結果を示す。この実験例では、ラミネート時の板温度を変えることにより積層体の複屈折を調整した。なお、フィルムの[η]は0.64、エステル交換率は5.0%であった。
積層体の複屈折Δn1 およびΔn2 が0.02以上で良好な耐デント性を示す傾向にある。ここで、ERV(エナメルレーター値)とは、デント後のフィルムの割れを6.3Vにより流れる電流値で評価したものである。また、積層体のΔn1 およびΔn2 が0.02以上であっても高温の熱処理条件では、ERVは若干増加する傾向にある。
このように、二軸延伸フィルムを用いた積層体およびシームレス缶底の複屈折Δn1 およびΔn2 が0.02以上となるのが望ましい。
【0127】
得られた缶は、所望により、一段或いは多段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻締用の缶とする。また、ネックイン加工に先立って、ビード加工や、特公平7−5128号公報に記載された周状多面体壁加工を施すことができる。
本発明の缶に周状多面体壁加工を施すと、側壁が外圧によって変形しにくい耐圧強度に優れた構造となり、更に缶体の手による把持が容易となり、また缶の意匠性が独特のものとなるという利点がある。
【0128】
本発明の周状多面体壁缶の一例を示す図12において、(A)はこの容器の側面図、(B)は部分側面断面図及び(C)は水平断面図である。この容器60は、前述したラミネートの絞りしごき加工で形成された上部開口の側壁部66及び閉塞底部67と上端に巻締めにより設けられた蓋体68とから成っている。この胴部60には、周状に多面体壁が形成されており、この多面体壁は、構成単位面61と、構成単位面同士が接する境界稜線62及び境界稜線同士が交わる交叉部63を有し、該境界稜線62及び交叉部63は構成単位面に比べて相対的に容器外側に凸、構成単位面61の対向する交叉部間の部分65は相対的に容器内側に凹となっている。またこの多面体壁では、構成単位面61の隣合った容器軸方向配列が位相差をなした配列とされている。
【0129】
この具体例において、構成単位面1は、四辺形(菱形)abcd(図13参照)から成っており、構成単位面1の周方向に隣合った容器軸方向配列が丁度1/2の位相差をなして配列されている。
【0130】
図13は構成単位面の説明図であって、(A)は構成単位面の平面図であり、(B)、(C)及び(D)は、窪みの曲率半径Rとの関係で構成単位面の中央部の垂直断面を示す図である。図13の(A)は図12の容器胴部に使用される多面体壁面の四辺形単位面61の一例を取り出して示したものであり、菱形abcdが構成単位面61となっている。菱形における各辺ab、bc、cd、daは容器側面に形成される境界稜線62に相当する辺であり、外向きに凸となる頂点a、b、c、dが交叉部63に該当する。
側壁が円筒の場合、上方頂点aと下方頂点cとは同一径の円周面上に位置しており、左方頂点bと右方頂点dとは同一径の円周面上に位置している。配列が1/2の位相差をなしている場合、全ての頂点は同一径の円周面上に位置しており、図12の(C)に示す通り、これら頂点に対応する容器胴部内半径は、最大半径rである。一方、各稜線ab、bc、cd、daは端で径外方に最も突出しているが、中間に行くに従って容器中心軸からの距離、即ち径が減少するようになっている。周方向の対角線bdの中点の径sをとると、この径sはrよりも小さく、図12の(C)の場合、最小内半径を与える。容器胴上の単位面を軸方向に投影したとき、頂点acは重なるが、軸方向の対角線acは、周方向の対角線bdとは重ならずに対角線bdよりも径外方向に位置しており、四辺形abcdは滑らかに湾曲した面となっている。
【0131】
図13の(A)において、構成単位面としての菱形寸法は、周方向対角線bdの長さをwとし、軸方向対角線acの高さをLとすると、w及びLはそれぞれ構成単位面の周方向最大巾及び軸方向の最大長さとなる。軸方向対角線の長さac(高さL)に比して、実際の構成単位面上のac断面での長さは長く、このac断面は容器内側に滑らかに窪んだ曲線となっている。構成単位面のac断面の長さは、窪みの曲率半径R=5t(図13の(B))、R=0.3r(図13の(C))、R=r(図13の(D))が大きくなるに従って、短くなる。
各構成単位面において、周方向対角線bdの長さ(w)と実際の構成単位面上のbd断面での長さとが異なる場合がある。例えば、図12の(C)では、周方向対角線bdと実際の構成単位面上のbd断面とが一致していて、それらの長さが等しいが、この断面における辺の中点は周方向対角線bdの位置よりも径外方向に位置していたり、径内方向に位置している場合がある。
図12及び図13に示す例では、ac断面が滑らかに湾曲しており、bd断面は実質上ストレートであるが、他の具体例を示す図12においては、ac断面もbd断面も共に内方に滑らかに窪むように湾曲している。
【0132】
本発明のラミネートは、重ね合わせ接合部をもった接着缶の製造にも適応できる。接着缶の製造は、それ自体公知の方法で行うことができる。例えば、缶胴の素材となる長方形のラミネート板の両端縁に、予めテープ状の熱可塑性有機接着剤を融着した後、そのラミネート板を円筒形に曲げ、有機接着剤が融着された端縁を加熱すると共に、その接着剤が互いに接着するごとく重ね合わせ、次いで重ね合わせ部分を圧着冷却して接着を完成させる。
【0133】
この際、缶胴継ぎ目の内側となるラミネートの切断端面の金属が露出するのを防止するため、テープ状接着剤を、その幅方向の一部を折り返し部分として残して接着し、この折り返し部分を端縁の切断端面を包囲するごとくほぼ180度折り曲げ、切断端面を被覆保護するようにするのがよい。
【0134】
熱可塑性有機接着剤としては、コポリアミド系接着剤や、コポリエステル系接着剤等が使用され、これらはテープの形で用いられる。
【0135】
本発明のラミネートは更に、溶接缶の製造にも適応できる。溶接缶の製造には、それ自体公知のラップ接合或いは突き合わせ接合による電気抵抗溶接を用いることができる。例えば、缶胴の素材となる長方形のラミネート板の両端縁を、予めポリエステルフィルムが施されていない状態としておくか、或いはポリエステルフィルム層が研磨により除去された状態とし、そのラミネート板を円筒形に曲げ、金属が露出した端縁を重ね合わせ、次いで重ね合わせ部分を圧着して通電することにより、溶接による継ぎ目を形成する。
【0136】
この溶接による継ぎ目では、金属が露出しているので、金属露出面と密着する樹脂被覆層を設ける。樹脂被覆層としては、コポリエステル樹脂、コポリアミド樹脂等が適している。
【0137】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。
本発明の特性値は以下の測定法による。
【0138】
(1)溶融粘度比、溶融粘度、溶融張力、ダイスウェル
東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用した。
キャピラリは流入角無しで直径1mm、長さ10mmのものを使用し、キャピラリ出口雰囲気温度は保温チャンバーを使用して一定に保つようにして測定した。
溶融粘度比は、バレル内に樹脂投入後5分経過したときのピストン速度1mm/分(剪断速度12.16/秒)における粘度と100mm/分(剪断速度1216/秒)における粘度の比をとった。
溶融粘度及びダイスウェルは、剪断速度1216/秒における値を、バレル内に樹脂投入後5分経過した時点で測定した。
溶融張力は、ピストン速度5mm/分・巻き取り速度30m/分で測定し、キャピラリ出口からロードセルプーリーまでの距離は400mmとした。
(2)最大安定製膜速度
Tダイ押出し機を使用して樹脂を冷却ドラムとニップロール間で引き取り、製膜速度30、50、70、100、120、150m/分でキャストフィルムを作成し、安定した製膜が可能な速度の最大値を最大安定製膜速度とした。安定したとは、耳ぶれの幅を得られた樹脂皮膜の巾に対する割合が1%未満、且つ押出し時のダイからの溶融樹脂の滴下(垂れ落ち)が目視観察で認められない状態をいう。
(3)多分散度
GPCによる相対法により多分散度を求めた。本体には東ソー製高速GPC装置HLC−8120GPC型、カラムには東ソー性TSKgel SuperHM−Hを2本連結して使用した。
ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.3mlに試料5mgを溶解し、これにクロロホルム4mlを加えて良く攪拌し試料溶液とした。キャリア溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃、流量0.6ml/minの条件で示差屈折計検出器を使用して溶出曲線を求め、同じ溶媒に溶解した分子量既知のポリスチレンによる検量線からMw,Mnを求め前記式(2)に従って多分散度dを算出した。なお、ブレンド樹脂の場合には各成分毎にピーク分解はおこなわず、全体を一成分と見なして計算をおこなった。
【0139】
(4) 製缶加工試験
(実施例8−13、実施例16−17、比較例8−14、比較例17−19)被覆アルミ板にペトロレイタムを塗布し、直径152mmの円板を打ち抜き、常法に従い浅絞りカップを成形した。この絞り工程における絞り比は1.65であった。次いでこの絞りカップの第一次、第二次薄肉化再絞り成形を行った。
第一次再絞り比 1.18
第二次再絞り比 1.18
このようにして得られた深絞りカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径 66mm
カップ高さ 127mm
側壁厚み変化率 −55%(素板厚に対して)
この絞りカップを常法に従いドーミング成形を行い、樹脂の歪み除去の目的で240℃にて熱処理を行った。その後、開口端縁部のトリミング加工、曲面印刷、フランジング加工を行って350gツーピース缶を作成し、製缶加工工程中、および缶の樹脂被覆面の異常の有無を目視にて評価した。
【0140】
(実施例14−15、比較例15−16)
被覆金属板にワックス系潤滑剤を塗布し、白色面が缶外面となるように直径158mmの円盤を打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いでこの浅絞りカップを再絞り・しごき加工を行い、深絞り−しごきカップを得た。
この深しぼりカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径 : 52mm
カップ高さ : 140mm
素板厚に対する缶壁部の厚み 73%
素板厚に対するフランジ部の厚み 85%
この深しぼり−しごきカップを、常法に従いドーム成形を行い、220℃にて熱処理を行った後、カップを放冷後、開口端縁部のトリミング加工、曲面印刷および焼き付け乾燥、ネック加工、フランジ加工、更に周状多面体壁加工を行って250g用のシームレス缶を得た。周状多面体壁は、図12及び図13に示す。
最小構成単位面を、容器高の中心を含み、円周方向に9個連続させ、且つ容器軸方向に1/2位相差で60mm幅で設け、L/Wを0.96、深さ比d1/d0を0.95、構成単位面の窪み曲率Rを5tとなるように設けた。
【0141】
(5)デントERV試験
缶底部を切り出し、室温、湿潤下で、厚み3mm、硬度50°のシリコンゴムに内面側を接触させて、外面側に直径5/8インチの鋼球を置き、1kgのおもりを40mm高さから落下させて衝撃張り出し加工を行う。
衝撃加工部の樹脂被膜の割れの程度を電圧6.30Vでの電流値で測定し、6個の平均を取った。
水充填後の缶を37℃雰囲気下で1週間貯蔵経時を行った後、上記試験に供したものを以下の基準で評価した。
評価
平均電流値 ≦ 0.050mA ◎
0.050mA < 平均電流値 ≦ 0.100mA ○
0.100mA < 平均電流値 ×
(6)巻締め加工試験
5℃の温度条件下で水の充填・蓋の巻締めをおこなった後、直ちに蓋を取り除いてネックフランジ部分のフィルム割れの有無を目視にて評価した。
【0142】
(7) 貯蔵試験
(実施例8−13、実施例16−17、比較例8−14、比較例17−19)
アクエリアス(登録商標)を充填した缶を5℃にて、ボトムラジアス部に直径10mmの鋼製の棒を置き、500gのおもりを60mmの高さから落下させて衝撃を与えた。その後、室温にて貯蔵試験を行い、1年後の缶の内面及び漏洩状態を調べた。更に2層構成品については缶の状態に異常がないものについては味の異常の有無を試飲(被験者20名)して調べた。
(実施例14−15、比較例15−16)
スポーツドリンクを90℃で熱間充填後、十分に冷却した後に、充填缶を5℃にて50cm高さより落下させ、コンクリート床上に置かれたステンレス製のくさび(角度15°)に缶底が衝突するようにした後、37℃で1年間貯蔵し、缶衝撃部および缶内面の稜線部の腐食状態を観察した。
【0143】
(8)融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、エステル交換率
示差熱走査型熱量計DSC7(パーキンエルマー社製)を用いた。積層フィルムにおいては、各組成で単層フィルムを試作し、同様の条件で加工したときの値を測定した。試料約5mgを窒素気流下にて樹脂の融点より30℃高い温度で3分間溶融保持し、500℃/分の速度で0℃まで急速冷却する。ついで、10℃/分の昇温速度で測定した。
結晶融解に基づく吸熱ピークの最大高さの温度をTmとし、ガラス転移に基づく比熱変化点をもってTgとした。
ブレンド物中のポリエステルセグメント(I)の融点(Tm)及びポリエステルセグメント(I)のみからなる単層フィルムの融点(Tm0 )を用いて、前記式(3)に従いエステル交換率(E)を定義した。
(9)固有粘度[η]
前記単離フィルムをフェノール、テトラクロロエタンの重量比1:1混合溶媒に120℃で10分間撹拌して溶かし、30℃にて毛細管法で測定し、下記式により求めた。樹脂層が複層構成の場合は、分離せずに全体の粘度を測定した。
【数1】
Figure 0003807037
製缶加工試験における歪み除去を目的とした熱処理の前後で缶底部の固有粘度を測定し、その変化から熱処理による樹脂の分解程度の目安とした。
(10)密度
密度勾配管法により測定した。水−硝酸カルシウム系或いはn-ヘプタン−四塩化炭素系の密度勾配管を使用した。
単離フィルムについて、密度勾配管法で密度(ρ)を求めた。また、樹脂をTmより30℃高い温度で3分間溶融保持した後、液体窒素中に入れて急冷した試料の密度を非晶密度(ρa)と定義した。
(11)複屈折
ラミネート板及び缶底部において、中央部を中心にそれぞれ5mm角に切り出し、単離した。試料の所定位置をエポキシ樹脂に包埋し、ラミネートフィルム及び缶底部フィルムにおいては、厚み方向に平行となるように、3μm厚みに切り出し、偏光顕微鏡によりレターデーションを測定し、複屈折を算出した。
(12)ラミネートおよび缶体からのフィルム単離
上記試験を行うにあたって積層体および缶体からのフィルム単離が必要な場合は以下のようにおこなった。ラミネートにおいては板幅方向の中央部を、缶体においては缶底部中央部分をそれぞれ5mm角に切り出し、金属基材がアルミ板の場合には7%塩酸水溶液で、金属基材がスチール板の場合には18%塩酸溶液で基材を溶解し樹脂を単離した。十分に水洗後、室温にて真空乾燥を行い試料を得た。
【0144】
実施例1
表1に示される組成の樹脂をエクストリュージョン製膜設備を備えたφ65mm押出し機に供給した後、表1に示される樹脂温度で厚さ20μmとなるように溶融押出しを行いこれを冷却ドラムとニップロール間で引き取り、キャストフィルム製膜をおこなった。
最大安定ラミ速度試験に供し、不安定化要因を評価した。評価結果及び樹脂の特性を表1に示した。ネックインも小さく150m/分まで安定して製膜が可能であった。
【0145】
実施例2
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。ネックインも小さく150m/分まで安定して製膜が可能であった。
【0146】
実施例3
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工好条件を使用した。(I)エチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステル(A)と、ポリエステルセグメント( II )及びポリエステルセグメント( III )を含む共重合ポリエステル(B)のブレンドである。他は実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。ネックインも小さく150m/分まで安定して製膜が可能であった。
【0147】
実施例4
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。実施例3の[η]が低い場合である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。120m/分までは安定して製膜が可能であったが、150m/分ではやや耳ぶれが観察された。
【0148】
実施例5
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。実施例3の樹脂を下層に、表層にPET/IA12を配した2層フィルムである。他は実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。実施例3よりもネックインはやや大きくなったが150m/分まで安定して製膜が可能であった。
【0149】
実施例6
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。架橋成分を含まない例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。100m/分までは安定して製膜が可能であったが、120m/分以上では耳ぶれが観察された。
【0150】
実施例7
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。実施例6の表層をNDC共重合樹脂にした例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。100m/分までは安定して製膜が可能であったが、120m/分以上では耳ぶれが観察された。
【0151】
比較例1
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。通常のPETの例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。30m/分でも耳ぶれがはじまっており、これ以上のラミ速度では激しい蛇行が生じた。本樹脂は、260℃では十分溶融しないため押出し加工が不可能であり、280℃では270℃より更に激しい耳ぶれが観察された。
【0152】
比較例2
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。通常のPET/IAの例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。50m/分で耳ぶれがはじまり、これ以上のラミ速度では激しい蛇行が生じた。
【0153】
比較例3
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した他は、実施例1と同様にした。
表1に評価結果を示した。本樹脂は比較例2の分子量を上げたものに相当する。溶融粘度比は上昇したが、十分ではなく、70m/分以上では大きな耳ぶれを生じた。本樹脂を270℃で押出し加工しようとすると、モーター負荷が非常に大きくなり押出し不能になる。本例は[η]を上げることで押出し性改善を図っても樹脂組成により限界があることの例である。
【0154】
比較例4
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。実施例2の加工条件を変更した例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。溶融粘度が高くスクリュートルクが過大であった。また、溶融張力が高すぎるため70m/分で膜切れが生じた。
【0155】
比較例5
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。実施例3の加工条件を変更した例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。溶融粘度比、溶融張力が低くわずかな滞留で大きな耳ぶれを生じる。30m/分ですでに耳揺れが観察された。
【0156】
比較例6
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。実施例3の加工条件を変更した例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。比較例5より更に加工温度を上げたため溶融粘度が著しく低下し、Tダイからの滴下を生じた。製膜は不可能である。
【0157】
比較例7
表1に示した構成のポリエステル樹脂と加工条件を使用した。実施例3エステル交換率をペレット段階で変更した例である。他は、実施例1と同様にした。表1に評価結果を示した。実施例5に比べてネックインが大きく、膜の両端の耳部が大きくなり、得られたフィルムは平坦部が狭いため使用可能な部分が狭く、歩留まりが不良であった。
【0158】
実施例8
250℃に加熱した板厚0.260mmのアルミ合金板(A3004H39材)上に、表2に示される組成の樹脂を、表2に示す酸化防止剤とドライブレンドしてエクストリュージョン・ラミネーション設備を備えた65mmφ押出し機に供給し、厚さ20μmとなるように溶融押出しを行いアルミ板片面側にラミネートした。次いで同じ樹脂成分を、エクストリュージョン・ラミネーション設備を備えた65mmφ押出し機に供給した後、板温度を樹脂の融点より30℃低い温度に加熱し、厚さ20μmとなるように溶融押出しを行い、もう一方の面にラミネートした。得られた被覆アルミ板を製缶加工試験に供し評価を行った。また被覆アルミ板の状態で樹脂のエステル交換率の測定をおこなった。使用した樹脂は実施例3で述べた樹脂と同一である(樹脂の溶融粘度特性も実施例3の樹脂と同じである)。
この缶をデントERV試験、巻締め加工試験、貯蔵試験に供し評価を行った。表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理前後で缶底部の樹脂の[η]変化はなかった。製缶加工やデントERV試験の結果も良好で、貯蔵試験後の缶の状態及び内容物に特に異常はなかった。
【0159】
実施例9
表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用した他は、実施例8と同様にした(樹脂の溶融粘度特性も実施例3の樹脂と同じである)。
実施例8の酸化防止剤添加量を増加した例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理前後で樹脂の[η]変化はなかった。製缶加工やデントERV試験の結果も良好で、貯蔵試験後の缶の状態及び内容物に特に異常はなかった。
【0160】
実施例10
2台の押出し機と2層ダイを用いて共押出しすることにより、樹脂層を2層構成とした。表層と下層の総厚み比は1:1とした。各層は表2に示す構成で、表層側には酸化防止剤を添加せず下層にのみ添加した。この他は実施例8と同様にした。この樹脂は実施例5で述べた樹脂と同一である(樹脂の溶融粘度特性も実施例5の樹脂と同じである)。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理により[η]低下が見られたがその低下幅は小さく、製缶加工やデントERV試験の結果も良好で、貯蔵試験後の缶の状態及び内容物に特に異常はなかった。
【0161】
実施例11
表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用した他は、実施例8と同様にした(樹脂の溶融粘度特性も実施例3の樹脂と同じである)。
実施例8の酸化防止剤種を変更した例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理前後で樹脂の[η]変化はなかった。製缶加工やデントERV試験の結果も良好で、貯蔵試験後の缶の状態及び内容物に特に異常はなかった。
【0162】
実施例12
2台の押出し機と2層ダイを用いて共押出しすることにより、樹脂層を2層構成とした。表層と下層の総厚み比は1:1とした。各層は表2に示す構成で、表層側には酸化防止剤を添加せず下層にのみ添加した。この他は実施例8と同様にした。実施例10の酸化防止剤種を変更した例である(樹脂の溶融粘度特性も実施例5の樹脂と同じである)。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理により[η]低下が見られたがその低下幅は小さく、製缶加工やデントERV試験の結果も良好で、貯蔵試験後の缶の状態及び内容物に特に異常はなかった。
【0163】
実施例13
2台の押出し機と2層ダイを用いて共押出しすることにより、樹脂層を2層構成とした。表層と下層の厚み比は1:1とした。各層は表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用し、Tダイ法により全体で厚さ20μmの未延伸フィルムを得た。アルミ板を樹脂の融点より30℃高い温度に加熱し、このフィルムを熱ラミネートして被覆アルミ板を得た。樹脂の溶融粘度特性は、実施例5の樹脂と同じである。
以降、缶成形については実施例8と同様にした。実施例8の押出しコートによる直接的樹脂被覆方法を、未延伸フィルム化した後に被覆する方法に変えた例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理前後で樹脂の[η]変化も非常に小さかった。耐衝撃性にも優れ、貯蔵テスト後の缶の状態及び内容物に特に異常はなかった。
【0164】
実施例14
表層はエチレングリコール100mol%、テレフタル酸88mol%、イソフタル酸12mol%からなるポリエステル樹脂であり、下層にエチレングリコール100mol%、テレフタル酸94mol%、イソフタル酸6mol%からなるポリエステル樹脂(I)とブチレングリコール100mol%、テレフタル酸100mol%からなるポリエステル樹脂(II)とブチレングリコール100mol%,アジピン酸100mol%からなるポリエステル樹脂(III) が重量比で(I):(II):(III) =(70):(24):(6)であり、かつ酸化防止剤(商品名:Irganox1010)が下層組成に対し0.1重量%配合されたポリエステル樹脂(成分(A)と成分(B)のブレンド)について、2層ダイを用いて樹脂温度260℃にて約230μm厚み(厚み構成比 表層1:下層4)のキャストフィルムを作成した(樹脂の溶融粘度特性は、実施例6の樹脂と同じである)。キャストフィルムは冷却ドラムを用いて直ちに急冷した後、フィルムを予熱しながら常法により二軸延伸フィルムを作成した。その際の延伸倍率は縦3.0倍、横3.1倍とし、熱固定温度は180℃とした。得られたフィルム厚みは25μm(表層5μm、下層20μm)であった。
その後、TFS鋼板(板厚0.195mm,金属クロム量110mg/m2 、クロム水和酸化物量15mg/m2 )の片面に、上記二軸延伸フィルムを、他の面にイソフタル酸12mol%,テレフタル酸88mol%,エチレングリコール100mol%からなるポリエステル樹脂に顔料として酸化チタンを20重量%含有した白色共重合体ポリエステル樹脂を二軸延伸した膜厚13μmのフィルムを、板温240℃、ラミネートロール温度150℃、通板速度40m/min.で両面同時にラミネートし、直ちに水冷することによりラミネート金属板を得た。
この被覆金属板にワックス系潤滑剤を塗布し、白色面が缶外面となるように直径158mmの円盤を打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いでこの浅絞りカップを再絞り・しごき加工を行い、深絞り−しごきカップを得た。
この深しぼりカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径 : 52mm
カップ高さ : 140mm
素板厚に対する缶壁部の厚み 73%
素板厚に対するフランジ部の厚み 85%
この深しぼり−しごきカップを、常法に従いドーム成形を行い、220℃にて熱処理を行った後、カップを放冷後、開口端縁部のトリミング加工、曲面印刷および焼き付け乾燥、ネック加工、フランジ加工、更に周状多面体壁加工を行って250g用のシームレス缶を得た。周状多面体壁は、図12及び図13に示す。
最小構成単位面を、容器高の中心を含み、円周方向に9個連続させ、且つ容器軸方向に1/2位相差で60mm幅で設け、L/Wを0.96、深さ比d1/d0を0.95、構成単位面の窪み曲率Rを5tとなるように設けた。次いで、スポーツドリンクを90℃で熱間充填後、十分に冷却した後に、充填缶を5℃にて50cm高さより落下させ、コンクリート床上に置かれたステンレス製のくさび(角度15°)に缶底が衝突するようにした後、37℃で1年間貯蔵し、缶衝撃部および缶内面の稜線部の腐食状態を観察した。
フィルムを分析したところエステル交換率5.1%であった。また積層体および缶底の複屈折は以下のとおりであった。
積層体 Δn1:0.030、Δn2:0.030、Δn3:<0.005
缶底 Δn1:0.040、Δn2:0.035、Δn3:<0.005
表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。デントERV試験、巻締加工試験ともに良好であり、保存試験後の腐食も発生せず良好な結果であった。
【0165】
実施例15
表層はエチレングリコール100mol%、テレフタル酸88mol%、ナフタレン2、6−ジカルボン酸12mol%からなるポリエステル樹脂であり、下層にエチレングリコール100mol%、テレフタル酸94mol%、イソフタル酸6mol%からなるポリエステル樹脂(I)とブチレングリコール100mol%、テレフタル酸100mol%からなるポリエステル樹脂(II)とブチレングリコール100mol%,アジピン酸100mol%からなるポリエステル樹脂(III) が重量比で(I):(II):(III) =(70):(24):(6)であり、かつ酸化防止剤(商品名:irganox1010)が下層組成に対し0.1重量%配合されたポリエステル樹脂(成分(A)と成分(B)のブレンド)について、2層ダイを用いて樹脂温度270℃にて約230μm厚み(厚み構成比 表層1:下層4)のキャストフィルムを作成した(樹脂の溶融粘度特性は、実施例7の樹脂と同じである)以外は、実施例14と同様に二軸延伸、ラミネート、製缶および腐食試験を実施した。
フィルムを分析したところエステル交換率3.2%であった。また、積層体および缶底の複屈折は以下のとおりであった。
積層体 Δn1:0.030、Δn2:0.035、Δn3:<0.005
缶底 Δn1:0.040、Δn2:0.040、Δn3:<0.005
表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。デントERV試験、巻締加工試験ともに良好であり、保存試験後の腐食も発生せず良好な結果であった。
【0166】
比較例8
表2に示した構成のポリエステル樹脂を使用し、酸化防止剤は添加しなかった他は実施例8と同様にした。PET/IAの耐衝撃性を示す例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。熱処理による樹脂の[η]低下は大きくないが、樹脂の性質として耐衝撃性に劣る。製缶加工時に1割程度の缶に缶胴上部の白化が観察された。また貯蔵試験後の缶にはデント部分の腐食が著しく、一部の缶では漏洩が見られた。
【0167】
比較例9
表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用した他は、実施例8と同様にした。比較例8に酸化防止剤を添加した例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。比較例8と同様に熱処理による樹脂の[η]低下は大きくないが、樹脂の性質として耐衝撃性に劣り、酸化防止剤の添加によって改善されるものではないことを示している。製缶加工時に1割程度の缶に缶胴上部の白化が観察された。また貯蔵試験後の缶にはデント部分の腐食が著しく、一部の缶では漏洩が見られた。
【0168】
比較例10
表2に示した構成のポリエステル樹脂を使用し、酸化防止剤は添加しなかった他は実施例8と同様にした。実施例8に酸化防止剤を添加しない例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。製缶加工に問題はなかったが、熱処理による樹脂の[η]低下は大きく耐衝撃性に劣る。貯蔵試験後の缶にはデント部分の腐食が著しく、一部の缶では漏洩が見られた。
【0169】
比較例11
表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用した他は、実施例8と同様にした。実施例8の酸化防止剤を変更した例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加により押出し時に異臭が発生し、樹脂の変色も著しい。容器材料として使用できないと判断されるため製缶加工試験、デントERV試験、貯蔵試験は行わなかった。
【0170】
比較例12
表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用した他は、実施例8と同様にした。実施例8の酸化防止剤を変更した例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生しないが、酸化防止剤の効果が薄く熱処理により樹脂の[η]は大きく低下し、耐衝撃性に劣る。分子量の小さな酸化防止剤であるため、押出し製膜中に揮発しやすいためである。貯蔵試験後の缶にはデント部分の腐食が著しく、一部の缶では漏洩が見られた。
【0171】
比較例13
表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用した他は、実施例8と同様にした。実施例8の酸化防止剤添加量を増大した例である。
表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加により押出し時にゲル・ツブが多発しアルミ積層体の表面が荒れた。熱処理による[η]低下は無く、耐衝撃性にも優れるが、製缶加工試験に供したところ表面の荒れにより破胴が多発し缶成形が困難であった。必要な缶数が得られないため貯蔵試験はおこなわなかった。
【0172】
比較例14
表2に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使用した他は、実施例8と同様にした。実施例10の表層樹脂を変更した例である。
この缶をデントERV試験、貯蔵試験に供し評価を行った。表2にこの缶の特性及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理前後で樹脂の[η]変化はなかった。製缶加工やデントERV試験の結果も良好であった。しかし、貯蔵試験後の内容液の味は大きく変化しており飲用には適さなかった。
【0173】
比較例15
実施例14と同樹脂および同構成について、エステル交換反応が十分になされるように押し出し機中の滞留時間を延長して押し出した以外は実施例14と同様に二軸延伸、ラミネート、製缶および腐食試験を実施した。
フィルムを分析したところエステル交換率23.2%であった。また、積層体および缶底の複屈折は以下のとおりであった。
積層体 Δn1:0.045、Δn2:<0.005、Δn3:<0.005
缶底 Δn1:0.060、Δn2:<0.005、Δn3:<0.005
表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。
成形時の内面側フィルムに部分的な割れを生じ、熱処理後の缶内面フィルムの表面がしわ状となった。デントERV試験についても不良であり、実用性がないと判断した。
【0174】
比較例16
実施例14の下層ポリエステル樹脂の重量比が(I):(II):(III) =(20):(64):(16)であること以外は実施例14と同様に二軸延伸、ラミネート、製缶および評価を実施した。
フィルムを分析したところエステル交換率4.8%であった。また、積層体および缶底の複屈折は以下のとおりであった。
積層体 Δn1:0.030、Δn2:0.030、Δn3:<0.005
缶底 Δn1:0.040、Δn2:0.030、Δn3:<0.005
表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。巻締加工試験は問題なかったが、デントERV試験は不良であった。また、保存試験後の缶内面の周状多面体稜線部が部分的に腐食しており、衝撃部のフィルム割れが認められ、且つ腐食が進行しており、実用適性がないと判断した。
【0175】
実施例16
実施例1で述べた樹脂を使用して積層板を実施例8と同様にして作成した後、直ちに冷却した(樹脂の溶融粘度特性は、実施例1の樹脂と同じである)。この積層板から作成した缶体に水を詰めて蓋を巻き締め加工した。表3に積層体の密度と150m/分での押出し加工時の状態、及び缶胴部成形時と形性と巻き締め加工時の成形性を示した。安定した高速押出しコートが可能であり、缶胴成形、巻き締め加工ともに問題はなく、パック後の缶の状態にも特に異常はなかった。
【0176】
実施例17
実施例3で述べた樹脂を使用して積層板を実施例10と同様にして作成した後、直ちに冷却した(樹脂の溶融粘度特性は、実施例3の樹脂と同じである)。この積層体から作成した缶体に水を詰めて蓋を巻き締め加工した。表3に積層体の密度と150m/分での押出し加工時の状態、及び缶胴部成形時と形性と巻き締め加工時の成形性を示した。安定した高速押出しコートが可能であり、缶胴成形、巻き締め加工ともに問題はなく、パック後の缶の状態にも特に異常はなかった。
【0177】
比較例17
実施例1で述べた樹脂を使用して積層板を実施例8と同様にして作成した後、自然冷却した。この積層板から作成した缶体に水を詰めて蓋を巻き締め加工した。実施例16の積層板樹脂層の結晶化状態を変更した例である。表3に積層体の密度と150m/分での押出し加工時の状態、及び缶胴部成形時と形性と巻き締め加工時の成形性を示した。安定した高速押出しコートが可能であったが、浅絞りカップ成形時に約半数に剥離及び亀裂が見られ、第一次再絞りで全数に被膜の剥離が生じた。巻締め加工は不可能であった。
【0178】
比較例18
表3に示した樹脂を使用して積層板を実施例10と同様にして作成した後、自然冷却した。この他は、実施例17と同様にした。実施例17の多官能成分を除いた例である。表3に積層体の密度と150m/分での押出し加工時の状態、及び缶胴部成形時と形性と巻き締め加工時の成形性を示した。高速押出しコートの際にわずかな耳揺れが観察され、得られた積層材の膜厚ムラが大きい。胴成形の際にしわや偏肉が生じやすく2割程が破胴した。ネックしわ・座屈も発生し、巻締め時には金属基材のフランジ割れが散見された。
【0179】
比較例19
実施例3で述べた樹脂を使用して積層板を実施例10と同様にして作成した後、自然冷却した。この他は、実施例17と同様にした。実施例17の積層板樹脂層の結晶化状態を変更した例である。表3に積層体の密度と150m/分での押出し加工時の状態、及び缶胴部成形時と形性と巻き締め加工時の成形性を示した。安定した高速押出しコートが可能であった。胴成形にも支障はなかったが、巻き締め加工時にフランジ部分の樹脂剥離が生じた。
【0180】
試験結果等を下記表1〜4に示す。なお、表1〜4において、多官能成分濃度は、mol%で表した。
【表1】
Figure 0003807037
【0181】
【表2】
Figure 0003807037
【0182】
【表3】
Figure 0003807037
【0183】
【表4】
Figure 0003807037
【0184】
【発明の効果】
本発明によれば、金属等の基体にポリエステルの押出コート層或いは熱接着フィルム層を設けるに当たって、特定の溶融粘度特性を有するポリエステルを用いることにより、被覆の均一性、被覆の完全さ及び密着性に優れ且つ成形性に優れたラミネートを、安価に且つ歩留まりよくしかも高速で製造することが可能となった。
また、ポリエステルとして、特定組成のものを用いることにより、耐衝撃性、特に耐デント性が顕著に改善され、特に高度の絞り加工或いはしごき加工や製缶時或いは製缶後の熱処理にもかかわらず、結晶化による脆化が抑制され、優れた耐デント性が維持されるた金属−ポリエステル積層体、並びにこの積層体から形成されたシームレス容器を提供することが可能となった。
更に、上記ポリエステルに特定の酸化防止剤を組み合わせることにより、高温での熱履歴を受けた後での耐デント性が顕著に改善されたポリエステル−金属積層体並びにこの積層体から形成されたシームレス容器を提供することが可能となった。
勿論、本発明のラミネート材は、上記の優れた特性を有することから、通常の絞りカップの製造、缶蓋、王冠、キャップ等の製造にも有用であり、またこの複合フィルムは、一般の包装材としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々のポリエステルについて、溶融粘度比(R)を縦軸及びη1216を横軸として、ドローレゾナンスとの関係をプロットしたグラフである。
【図2】本発明のラミネートの断面構造の一例を示す断面図である。
【図3】本発明のラミネートの断面構造の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明のラミネートの断面構造の更に他の例を示す断面図である。
【図5】押出コートによるラミネートの製造を説明するための装置の配置図である。
【図6】フィルムの熱接着によるラミネートの製造を説明するための装置の配置図である。
【図7】本発明のシームレス缶の構造を示す側面断面図である。
【図8】 ラミネートの絞り−しごき成形を説明するための図である。
【図9】本発明のシームレス缶のフランジ部の一例を示す断面図である。
【図10】本発明のシームレス缶のフランジ部の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明のシームレス缶のフランジ部の別の例を示す断面図である。
【図12】四辺形を構成単位面とする多面体壁を設けた容器の一例を示し、(A)は平面図、(B)は縦断面図及び(C)は水平断面図である。
【図13】図11の容器の側面に形成され多面体壁の構成単位面の一例を示し、(A)は平面図、(B)、(C)及び(D)は窪んだ部分の曲率半径を変化させて示す構成単位面の垂直断面図である。
【符号の説明】
1 積層体
2 金属基体
3 ポリエステル組成物層
4 外面被膜
5 接着用プライマーの層
6 表面樹脂層
11 金属板
12 加熱装置
13 ラミネートロール
14 ダイヘッド
15 ポリエステル組成物の薄膜
16 積層体
18 冷却用水槽
19 ガイドローラ
20 底部
21 シームレス缶
22 側壁部
23 ネック部
24 フランジ部
30 前絞りカップ
31 保持部材
32 再絞り−しごきダイス
33 再絞り−しごきポンチ
34 平面部
35 作用コーナー部
36 アプローチ部
37 曲率部
38 ランド部
39 逃げ
40 外周面
41 曲率コーナ部
42 環状底面
50 シームレス缶
51 底部
52 側壁部
53 フランジ形成部
60 容器
61 構成単位面
62 境界稜線
63 交叉部
65 交叉部間の部分
66 側壁部
67 閉塞底部
68 蓋体

Claims (11)

  1. 基体上にポリエステルを主体とする樹脂を積層する押出ラミネート法において、下記式(1)
    R =η12.2/η1216 ・・・(1)
    式中、η12.2前記樹脂の押出温度における剪断速度12.2sec−1での 溶融粘度であり、η1216前記樹脂の押出温度における剪断速度1216 sec−1での溶融粘度である、
    で定義される溶融粘度比(R)が2.0以上の範囲にあり且つη1216が500ポイズ以上の範囲となるような押出温度で前記樹脂を溶融押出した後、急冷することを特徴とする押出ラミネート法
  2. 前記樹脂が、溶融押出し時の温度において、0.2乃至1.5グラムの溶融張力を有するものである請求項1記載の押出ラミネート法
  3. 前記樹脂が、溶融押出し時の温度において、1.3乃至2.0のダイスウェルを有するものである請求項1又は2記載の押出ラミネート法
  4. 前記樹脂が、下記式(2)
    d=Mw/Mn …(2)
    式中、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。
    で定義される多分散度(d)が2.5以上であるものである請求項1乃至3の何れかに記載の押出ラミネート法
  5. 記樹脂が、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステルと、(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメント及び(III)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントとの共重合ポリエステルとのブレンド物であり、合計量を100重量部として、I:II:III =30〜80:8〜63:2〜42の重量比で含有するポリエステル乃至ポリエステル組成物から成り且つ該ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5重量部の分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を少なくとも一種類含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の押出ラミネート法。
  6. 金属基体とポリエステルを主体とする複数の樹脂を積層する押出ラミネート法において、前記複層樹脂層の表面樹脂層を構成する樹脂がガラス転移点が70℃以上のポリエステル組成物から成り且つ前記複層樹脂層の下地樹脂層を構成する樹脂が(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステルと、(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメント及び(III)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントとの共重合ポリエステルとのブレンド物であり、合計量を100重量部として、I:II:III =30〜80:8〜63:2〜42の重量比で含有するポリエステル乃至ポリエステル組成物から成り且つ該ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5重量部の分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を少なくとも一種類含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の押出ラミネート法。
  7. 前記ブレンド物中のポリエチレンテレフタレート・セグメント(I)を主体とするポリエステルが、下記式(3)
    E=100・[1-exp{(Hu/R)・(1/Tm0−1/Tm)}]…(3)
    ここで、
    Hu :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融解熱量9200(J/mol)
    R :気体定数8.314(J/(mol・K))
    Tm :ブレンド物の融点(K)
    Tm0:エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融点(K)。
    で定義されるエステル交換率(E)が0.5乃至20%の範囲にあるものである請求項5又 は6に記載の押出ラミネート法。
  8. 前記ブレンド物の固有粘度[η]が0.55以上である請求項5乃至7の何れかに記載の押出ラミネート法。
  9. 前記樹脂が、三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールから成る群より選択された少なくとも一種の分岐乃至架橋成分を含有することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の押出ラミネート法。
  10. 請求項1乃至9の何れかに記載の押出ラミネート法により、ポリエステル組成物から成る樹脂層が金属基体上に直接押出しラミネートされている製缶用ラミネート。
  11. 請求項10記載の製缶用ラミネートを加工して得られる少なくとも内面がポリエステル組成物で被覆された容器。
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