JP2001199719A - 球状アルミナ粉末の製造方法 - Google Patents

球状アルミナ粉末の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】金型摩耗性と高流動性とを発現させるのに適度
な球状を有し、しかも耐湿信頼性に優れた低ソーダ球状
アルミナ粉末を容易に製造すること。 【解決手段】アルミナ原料粉末を、高温火炎中に溶射
し、球状アルミナを製造する方法において、アルミナ原
料粉末中に平均粒径0.1〜2.0mmのシリカ質粉末
をSiO2換算で1〜50%存在させることを特徴とす
るソーダ含有率20ppm以下の球状アルミナ粉末の製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱伝導性、充填
性、耐湿信頼性に優れ、充填材として好適な低ソーダ球
状アルミナ粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、球状アルミナ粉末は、熱伝導性、
絶縁性に優れていることから、半導体封止材の充填材や
基板等に用いられている。球状アルミナ粉末は、アルミ
ニウム系化合物を高温火炎中に溶射し、球状化する方法
が一般的に知られている。この方法によれば、摩耗特
性、流動性に優れた球状アルミナ粉末を得ることができ
るが、その反面、用いられる原料は、例えばバイヤー法
によって製造された水酸化アルミニウム粉末であるの
で、少なくとも数百ppmのソーダ成分が不可避的に含
まれており、それが製品に残存するという問題がある。
ソーダ成分の多い充填材を例えば半導体封止材に用いる
と、その耐湿信頼性を著しく低下させてしまう。
【0003】そこで、これまでに、アルミナ粉末の低ソ
ーダ化については多くの提案がなされている。例えば、
特開平5−294613号公報、特開平7―41318
号公報には、破砕アルミナ粉末をハロゲン化化合物の存
在下で加熱処理をし、低ソーダ化を行うと共に、カッテ
ィングエッジのない丸みを帯びた粒子(角取り粒子)と
することが開示されている。しかしながら、得られた角
取りアルミナは、破砕形状アルミナ粉末よりも摩耗特性
は確かに改善され、流動性も向上したが、球状とは言い
難いので、球状溶融シリカ粉末と同等レベルまでには流
動性を改善することができない。また、ソーダ成分の低
減効果も十分ではなく、更には、環境上、ハロゲンを系
外に放出させない十分な配慮が必要であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑み
てなされたものであり、その目的は、耐金型摩耗性と高
流動性とを発現させるのに適度な球状を有し、しかも耐
湿信頼性に優れた低ソーダ球状アルミナ粉末を容易に製
造することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ア
ルミナ原料粉末を、高温火炎中に溶射し、球状アルミナ
を製造する方法において、アルミナ原料粉末中に平均粒
径0.1〜2.0mmのシリカ質粉末をSiO2換算で
1〜50%存在させることを特徴とするソーダ含有率2
0ppm以下の球状アルミナ粉末の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、更に詳しく本発明について
説明する。
【0007】本発明で使用されるアルミナ原料として
は、水酸化アルミニウム粉末、アルミナ粉末等が挙げら
れる。これらの粒度は、所望する製品粒度と球状程度に
応じて適切に選択される。
【0008】一方、シリカ質粉末としては、平均粒径
0.1〜2.0mmの珪石、石英等のシリカ質粉末が用
いられる。本発明においては、シリカ質粉末の平均粒径
と使用量が重要である。平均粒径が0.1mmよりも小
さいと、回収後に球状アルミナ粉末との分離が困難とな
り、また2mmよりも大きいと、低ソーダ化効果が低下
する。シリカ質原料の割合は、アルミナ原料に対し、内
割でSiO2換算1〜50%、好ましくは5〜20%で
ある。1%よりも少ないと低ソーダ化効果が不十分とな
り、また50%をこえても低ソーダ化効果は向上しな
い。
【0009】シリカ質粉末を存在させたアルミナ原料粉
末を高温火炎に溶射するには、アルミナ原料とシリカ質
粉末とをあらかじめ混合しておき、それを同一ラインか
ら溶射する方法が好ましいが、アルミナ原料とシリカ質
粉末とを別々の溶射バーナーから供給することもでき
る。
【0010】本発明において、高温火炎温度は、高球形
度の球状アルミナ粉末を得るために、またシリカ質粉末
をシリカフュームとして揮発させるために、約2000
℃程度に高められる。その結果、球状化されたアルミナ
粒子同士、シリカ質粉末が溶融した溶融シリカ粒子同
士、更にはアルミナ粒子と溶融シリカ粒子との間に合着
が起こり、回収されたアルミナ粉末の球形度、純度を低
下させる恐れがある。そこで、原料の溶射に際しては、
その分散性を高めるため、フィード法が乾式である場合
には、フィード管部をエゼクタ効果と高速空気流による
せん断力による分散を利用したリングノズル方式が好ま
しく、また湿式である場合には、原料粉末を媒体中に分
散させてスラリーとし、それを火炎中に霧状で噴霧する
ことが好ましい。
【0011】高温火炎を形成するには、水素、天然ガ
ス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の可燃ガ
スと、空気、酸素等の助燃ガスとをバーナーから噴射さ
せることによって行うことができる。本発明において
は、この可燃ガス及び/又は助燃ガスの一部又は全部を
用いて原料粉末の一部又は全部を噴射することができる
ので、より効率的かつ経済的に球状アルミナ粉末を製造
することができる。
【0012】本発明においては、高温火炎中で溶射され
たシリカ質粉末の一部又は全部がシリカフュームとして
揮発する。この揮発成分は、火炎外で冷却されてフュー
ムドシリカとなる。このフュームドシリカは、回収され
た粉末中のアルミナ粒子やシリカ粒子の100倍以上も
の比表面積を有するものである。そのため、アルミナ原
料より揮発したソーダ成分が系内で冷却・固化する際
に、大部分がこのフュームドシリカと反応もしくは吸着
して捕獲され、上記比表面積の著しい相違を利用して分
離・除去される。
【0013】火炎処理された粉末から低ソーダ球状アル
ミナ粉末を分離・回収するには、サイクロン、重力沈
降、ルーバー、バグフィルター等の捕集装置が用いられ
る。この場合において、ソーダ成分を捕獲したフューム
ドシリカは、その比表面積が球状アルミナ粉末に比べて
著しく小さいので、最終のバグフィルターで回収し、球
状アルミナ粉末はその前段階のサイクロン等で回収でき
るように捕集系装置を設計する。また、分離・回収され
た球状アルミナ粉末に混入したシリカ質粉末は、その粒
径が0.1〜2.0mmであることを利用して、篩、分
級機等を用い、必要に応じて分離・除去する。
【0014】本発明によれば、ソーダ成分含有率20p
pm以下、条件を選べば10ppm以下の球状アルミナ
粉末を容易に製造することができる。従って、本発明で
製造された球状アルミナ粉末は、ソーダ成分含有率が小
さいので、半導体封止材の充填材として用いても、その
耐湿信頼性が著しく高まる。
【0015】本発明において、ソーダ成分含有率は、試
料10gを100mlの純水中に浸漬し、100℃の温
度で24時間放置した際に抽出されたソーダ成分を原子
吸光法で測定することができる。
【0016】本発明で製造される球状アルミナ粉末の球
状の程度は、平均球形度が0.90以上、特に0.95
以上であることが好ましい。0.9よりも低くなると、
金型摩耗性と流動性が低下する。
【0017】平均球形度は、走査型電子顕微鏡(日本電
子社「JSM−T200型」)と画像解析装置(日本ア
ビオニクス社製)を用い、以下のようにして測定するこ
とができる。
【0018】先ず、粉末のSEM写真から粒子の投影面
積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)
に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球
形度はA/Bとして表示できる。そこで、試料粒子の周
囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、
PM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(Pm
/2π)2となり、個々の粒子の粒径度は、球形度=A
/B=A×4π/(PM)2として算出することができ
るので、任意の粒子200個の平均値を粉末の平均球形
度として求める。
【0019】
【実施例】以下、実施例、比較例を挙げて更に具体的に
本発明を説明する。
【0020】図1に示される装置を用い、球状アルミナ
粉末を製造した。溶融炉1の頂部には、燃料ガス供給管
3、助燃ガス供給管4、原料粉末供給管5を接続した2
本のバーナー2が設置されている。各バーナーから、原
料粉末を溶射し、溶融炉にて球状アルミナ粉末の生成、
ソーダ成分の除去を行っている。溶融炉から排出された
粉末は、ブロワー8で吸引され、サイクロン6、バグフ
ィルター7で分離・回収される。サイクロン6で捕集さ
れた粉末は、振動篩を用いて、粒径の大きいシリカ質粉
末を主成分とする粒子が分離・除去され、球状アルミナ
粉末が回収される。
【0021】原料粉末を酸素20Nm3/hrのキャリ
アガスに同伴させて各バーナーに搬送した。各バーナー
からは、燃料ガスとしてLPG12Nm3/hr、助燃
ガス34Nm3/hrを噴射させて火炎を形成し、その
火炎中に原料粉末40kg/hrを噴射した。
【0022】実験番号1〜5(実施例) 実験番号6〜
9(比較例) 平均粒径38.7μm、ソーダ成分含有率300ppm
の水酸化アルミニウム粉末(日本軽金属社製、商品名B
W33)と石英粉末とを表1の割合で混合し、火炎溶融
した。なお、表1の石英粉末の添加率は、SiO2換算
値である。
【0023】サイクロンから回収された粉末を、0.1
05mm目開きの網の振動篩を用いて篩下分を除去し、
得られた球状アルミナ粉末のソーダ成分含有率を上記に
従い測定した。また、平均粒径、収率及び純度を以下に
従って測定した。それらの結果を表1に示す。なお、平
均球形度は、いずれも0.96以上であった。
【0024】(1)平均粒径 コールター社製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置
(商品名「LS−230」を用いて測定した。
【0025】(2)球状アルミナ粉末収率 (得られた球状アルミナ粉末の質量)/(混合原料粉末
の質量)より収率を求めた。なお、水酸化アルミニウム
を原料とした場合、水酸化アルミニウムから球状アルミ
ナを生成する過程において0.65%の質量変化が起こ
り、収率が低くなることを考慮されるべきである。
【0026】(3)球状アルミナ粉末純度 理学電機社製全自動蛍光X線分析装置(商品名「RIX
−3000」)を用いて測定した。試料10gを成形圧
150kPaで加圧成形し、あらかじめ数種の比率の異
なる球状アルミナ粉末とシリカ粉末との混合粉末を用い
て作成された検量線をもとに、蛍光X線強度から定量を
行った。なお、スペクトル線にはAl−Kαを用い、定
量には測定角度144.8°のピークを用いた。
【0027】
【表1】
【0028】表1より、本発明の製造条件で製造された
実験番号1〜5の球状アルミナ粉末は、ソーダ成分含有
率が20ppm以下であり、しかも高収率で製造されて
いることが分かる。これに対し、実験番号6の石英粉末
無添加、実験番号9の比較例では、ソーダ成分含有率が
20ppmを超えており、また実験番号7では収率が
0.6を下回り、実験番号8では生成された球状アルミ
ナ粉末と石英粉末の篩による分離を行うことができなか
った。
【0029】実験番号10(実施例) 実験番号11
(比較例) 平均粒径29μm、ソーダ成分含有率1000ppmの
水酸化アルミニウム粉末(アルコア社製、商品名「B−
325」)を用いたこと以外は、実験番号10について
は実験番号3と同様に、実験番号11については実験番
号7と同様にして行った。その結果を表2に示す。
【0030】実験番号12〜13(実施例) 実験番号2で用いた水酸化アルミニウム粉末をボールミ
ルで8時間又は24時間粉砕し、平均粒径5μm(実験
番号12)又は平均粒径1μm(実験番号13)、ソー
ダ成分含有率300ppmとしたものを用いたこと以外
は、実験番号2と同様にして行った。その結果を表2に
示す。
【0031】実験番号14(実施例) 実験番号15
(比較例) 平均粒径30μm、ソーダ成分含有率100ppmのア
ルミナ粉末を用いたこと以外は、実験番号14について
は実験番号2と同様に、実験番号15については実験番
号7と同様にして行った。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】表2の実験番号10と11の対比から明ら
かなように、石英粉末無添加の場合はアルミナ粉末のソ
ーダ成分含有率が350ppmであったのに対し、それ
をアルミナ原料に存在させることによって20ppm以
下となり、低ソーダ化効果がが顕著に現れた。
【0034】また、実験番号12、13から、原料の水
酸化アルミニウム粉末の粒度を変更しても低ソーダ球状
アルミナ粉末が得られることが分かった。更には、実験
番号14から、水酸化アルミニウム粉末をアルミナ粉末
に変えても、石英粉末を存在させることによって、低ソ
ーダ球状アルミナ粉末を得ることができた。
【0035】次に、本発明の球状アルミナ粉末の充填材
としての効果を確認するため、半導体封止材を調合し、
耐湿信頼性を以下に従い評価した。それらの結果を表3
に示す。
【0036】用いた充填材は、各実験番号で得られた球
状アルミナ粉末と平均粒径0.5μmの球状アルミナ粉
末(アドマテックス社製、商品名「AO−802」)と
を8:2の質量比で混合し、これにシランカップリング
剤としてオルガノシラン(信越化学社製、商品名「KB
M403」)を外割で0.4%混合したものである。
【0037】半導体封止材の調合は、エポキシ樹脂とし
てオツトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化
薬社製、商品名「EOCN−1020」)、硬化剤とし
てフェノールノボラック樹脂(群栄化学社製、商品名
「PSM−4261」)、モタン酸エステル離型剤(ク
ラリアンドジャパン社製、商品名「WaxEflake
s」)及び硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン
(北興化学社製)を、63.8:32.1:0.6:
3.5の質量割合で配合した。これに上記充填材を内割
で70vol%混合し、熱ロールで10分間混練した
後、冷却粉砕をして行った。
【0038】耐湿信頼性試験は、アルミニウム配線を有
する16ピンモニターICをトランスファー成形し、硬
化後260℃のハンダ浴に10秒間浸漬した後、120
℃、2気圧の水蒸気で20V印可し、アルミニウム配線
のオープン不良率(断線率)とリーク不良率(アルミニ
ウム線間の漏れ電流値が10nA以上になった率)との
和が50%以上になるまでの時間を求めた。試料個数は
20個用い、その平均値をとった。
【0039】
【表3】
【0040】表3より、本発明で製造された低ソーダ球
状アルミナ粉末を用いた半導体封止材の耐湿信頼性は、
全て100hr以上であることが分かる。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、金型摩耗性と高流動性
とを発現させるのに適度な球状を有し、しかも耐湿信頼
性に優れた低ソーダ球状アルミナ粉末を容易に製造する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】球状アルミナ粉末の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 溶融炉 2 バーナー 3 燃料ガス供給管 4 助燃ガス供給管 5 原料粉末供給管 6 サイクロン 7 バグフィルター 8 ブロワー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G004 KA00 4G042 DA01 DB01 DB09 DB10 DB32 DC03 DD03 DE05 4G076 AA02 AB06 BA39 BA46 BC01 BE20 CA03 CA26 CA36 DA02 FA01

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミナ原料粉末を、高温火炎中に溶射
    し、球状アルミナを製造する方法において、アルミナ原
    料粉末中に平均粒径0.1〜2.0mmのシリカ質粉末
    をSiO2換算で1〜50%存在させることを特徴とす
    るソーダ含有率20ppm以下の球状アルミナ粉末の製
    造方法。
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