JP5116968B2 - 球状アルミナ粉末の製造方法 - Google Patents

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本発明は、アルミナ原料粉末を火炎中に溶射して球状化した球状アルミナ粉末の製造方法に関する。
具体的には、耐湿信頼性、熱伝導性、充填性、耐摩耗性に優れ、充填材として好適な低ソーダ球状アルミナ粉末の製造方法に関する。
アルミナ原料粉末を火炎中に溶射して球状化した球状アルミナ粉末は、熱伝導性、充填性に優れていることから、半導体封止材の充填材や基板等に用いられており、水酸化アルミニウムなどのアルミナ原料粉末を高温火炎中に供し溶射することで球状化する方法が一般的に知られている。
この方法によれば、流動性に優れた球状アルミナ粉末を得ることができるが、用いられるアルミナ原料粉末は、バイヤー法によって製造された水酸化アルミニウム粉末であるので、ソーダ成分が少なくとも数百ppm含まれており、それが球状アルミナ粉末からなる製品に残存して耐湿信頼性を損なうという問題があった。
この問題を解決するために、例えば特開2001-199719号公報には、アルミナ原料粉末を、高温火炎中に溶射し、球状アルミナを製造する方法において、アルミナ原料粉末中に平均粒径0.1〜2.0mmのシリカ質粉末をSiO2換算で1〜50%存在させることによってソーダ成分含有率を20ppm以下にする製造方法が記載されている。
しかしながら、特開2001-199719号公報に記載された方法では、シリカ粒径が大きすぎるためサイクロンで分離することができないため、サイクロン等で回収された粉末に含まれる粒径が0.1〜2.0mmのシリカ粉末を、篩い・分級機等を用いて分離・除去しなければならなかった。
また、ソーダ成分の低減は、アルミナ原料粉末より揮発したソーダ分が、ヒュームドシリカと反応もしくは吸着により図られていたため、生産効率が低いという問題点があった。
また、表面をシリカで被覆した球状アルミナに関しては、特開昭61−266456号公報に、表面をシリカで被覆したアルミナを充填材の一部もしくは全部として使用する高熱伝導性のエポキシ樹脂成形材料が記載されている。
しかし、特開昭61−266456号公報に記載された、シリカで被覆されたアルミナは熱伝導性を向上させるものであり、本発明が課題とする耐湿信頼性を大幅に向上させるには、その条件が十分に解明されていなかった。
また、無機酸化物粉体(粉体A)とそれより粒径の小さい微粉の無機酸化物粉体(粉体B)を火炎中に溶射して粉体Aの表面を改質する方法については、特開2004−262674号公報に記載されている。
しかし、特開2004−262674号公報に記載されている方法では、生成粒子が樹脂に配合された場合の粘性改善については記載されているが、本発明が課題とする生成粒子の耐湿信頼性を向上させる条件が解明されておらず、不十分であった。
特開2001-199719号公報 特開昭61−266456号公報 特開2004−262674号公報
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、耐湿信頼性、熱伝導性、充填性、耐摩耗性に優れ、充填材として好適な低ソーダ球状アルミナ粉末の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果、球状アルミナ粉末の表面にシリカコーティング層を形成して、アルミナ粉末中のソーダ成分を密封することにより、耐湿信頼性、熱伝導性、充填性、耐摩耗性に優れ、充填材として好適な低ソーダ球状アルミナ粉末の製造方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である
請求項に係る球状アルミナ粉末の製造方法は、バイヤー法によって製造されたソーダ成分を含有するアルミナ原料粉末を火炎中に溶射して球状化する球状アルミナ粉末の製造方法であって、前記アルミナ原料粉末中に、平均粒径2μm未満であって比表面積が10〜25m2/gのシリカ微粉を0.5〜20重量%存在させて、火炎中で溶射することにより、前記球状アルミナ粒子の表面にシリカコーティング層を形成することを特徴とする。
請求項に係る球状アルミナ粉末の製造方法は、請求項において、前記アルミナ原料粉末中に存在するシリカ微粉が2.0〜20重量%であることを特徴とする。
請求項に係る球状アルミナ粉末の製造方法は、請求項又はにおいて、アルミナ原料粉末とシリカ微粉を事前混合する方法として、微粉の凝集を解砕する100kcal/mol以上の剪断エネルギーを有するミキサーを用いることを特徴とする。
本発明によれば、バイヤー法によって製造されたソーダ成分を含有する球状アルミナ粉末の表面にシリカコーティング層を形成して、アルミナ粉末中のソーダ成分を密封することにより、耐湿信頼性、熱伝導性、充填性、耐摩耗性に優れ、充填材として好適な低ソーダ球状アルミナ粉末の製造方法を提供することができる。
具体的には、アルミナ球状粒子表面にシリカコーティング層を形成することにより、アルミナ粒子内のソーダ成分を密封することにより、耐湿信頼性に優れた低ソーダ球状アルミナ粉末が製造できる。
また、シリカ微粉を添加していることで、サイクロンで回収した粉末を、篩い・分離する必要がないなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
発明を実施するための最良の形態について、図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明における球状アルミナ粉末の製造装置を例示する図である。
図1において、1は溶射炉、2はバーナー、3は可燃ガス供給管、4は支燃ガス供給管、5は原料供給管、6はサイクロン、7はバグフィルター、8はブロワーを示す。
図1に示すように、本発明における球状アルミナ粉末の製造装置は、溶射炉1の頂上部にバーナー2をセットし、それには可燃ガス供給管3、支燃ガス供給管4、原料供給管5が接続されており、水酸化アルミニウムなどのアルミナ原料粉末を原料供給管5から吹き込んで火炎中に溶射することによって、角張ったアルミナが球状化されて平均粒径が1〜80μmの球状アルミナを製造することができる。
溶射炉を通過した粉末は、ブロワー8で吸引され、サイクロン6並びにバグフィルター7で回収される。
サイクロン6で回収された粉末は、シリカコーティングされた球状アルミナ粉末である。
本発明においては、アルミナ原料粉末中に、平均粒径2μm未満のシリカ微粉を0.5〜20重量%、好ましくは2〜20重量%存在させて、火炎中で溶射することにより、前記球状アルミナ粒子の表面にシリカコーティング層を形成することを特徴とする。
アルミナ原料粉末にシリカ微粉を事前に混合し、それらを原料供給管より火炎中に吐出することで、溶融球状化されたアルミナ粉末並びにその表面に100〜400nm程度の膜厚でアモルファスのシリカコーティング層を形成することができる。
この方法により、アルミナ原料粉末を火炎中に溶射して球状化した球状アルミナ粉末であって、前記球状アルミナ粉末の表面に、平均粒径2μm未満のシリカ微粉を用いたシリカコーティング層を有し、 該球状アルミナ粉末の表面から常温で抽出した抽出液中のソーダ成分含有率が40ppm以下の球状アルミナ粉末を製造することができる。
また、前記シリカコーティング層の球状アルミナ粉末における表面カバー比率が0.7以上であることが好ましい。
球状アルミナ粉末の全表面の70%以上をシリカコーティング層で覆うことによって、アルミナ粉末中のソーダ成分を密封することにより、耐湿信頼性をさらに向上させることができる。
本発明において、表面カバー比率とは、球状アルミナ粉末を破砕し、破砕片を顕微鏡で観察し、球表面と認められる破砕片を詳細観察サンプルとして100個選び、これらを詳細観察した結果、コーティング層が前記球表面上に認められたサンプル数の比率とする。
アルミナ原料粉末にシリカ微粉を混合する方法としては、V型ミキサーを用いる方法が一般的に知られるが、微粉の凝集を解砕する100kcal/mol以上の高い剪断エネルギーを有し、微粉を粗粉に付着させる高い衝撃力を有するミキサー、例えばヘンシェル型ミキサーの方がコーティング膜の均一生成にはより効果的である。このようなミキサーを用いるとアルミナ原料粉末に対するシリカ微粉の偏析が生じにくく、かつアルミナ粒の周りにシリカ微粉をまぶすように混合する。このような混合物が火炎中に溶射されるとアルミナ粒子表面へ均一にシリカが溶融付着したコーティング層を生成するために、ソーダ成分を閉じ込める効果が増大するからである。
溶射中にアルミナ粒子内に内在するソーダ成分は、表面層に析出し、溶射前に比較し高いレベルとなってしまうケースが多いが、このシリカコーティング層によりソーダ成分を粒子内に密封してアルミナ粉末の表面から常温で抽出した抽出液中のソーダ成分含有率を40ppm以下に低減することができ、その結果、球状アルミナ粒子の耐湿信頼性を向上させることができる。
シリカ微粉の平均粒径を2μm未満とするのは、粒径が小さいシリカ粉は高温火炎中で容易に溶融し、アルミナ球状粒子表面にシリカコーティングを形成し易くすることができるうえ、火炎中に溶射することによってアルミナ球状粒子とシリカコーティング層との境界面の結合力を強固にすることができるからである。
また、シリカ微粉を0.5〜20重量%存在させるのは、0.5重量%未満では、アルミナ粉末の表面に十分なシリカコーティング層を形成しない結果、ソーダ成分を密封することができないからであり、また、シリカ微粉を20重量%以下とするのは、これ以上シリカ添加量を増やしてもコーティング層によるソーダ成分の密封効果が飽和してしまうからである。
また、アルミナ原料粉末中に存在するシリカ微粉の好ましい範囲を2.0〜20重量%とするのは、シリカ微粉を2.0%以上含有させることにより、ソーダ成分の密封効果がさらに向上するからである。
また、前記シリカ微粉の比表面積は10〜400m2/gが好ましい。
尚、シリカ微粉の粒径が極微粉領域になると、レーザー回折散乱粒度分析法では十分な精度が得られない。そこで、添加するシリカ粉の微粉の程度を表す場合には、主に比表面積を用いることにした。
シリカ微粉の比表面積を10m2/g以上としてアルミナ粉末の比表面積との差を大きくすることによって、サイクロン6によって分離、除去することができ、サイクロン等で回収した粉末を、従来のように篩い・分級機等で分離・除去する必要がない。
また、シリカ微粉の比表面積を400m2/g以下とすることによって、通常入手できるシリカ微粉のほとんど全てを使用することができる。
また、前記シリカ微粉の比表面積は10〜25m2/gが更に好ましい。
なぜなら、シリカ微粉の比表面積が25m2/gを越えると、粒子が極めて微粉となるので蒸発粒子が多くなりアルミナ粒子表面へのコーティングに寄与しにくくなっているからである。
なお、本発明のシリカ微粉の代わりに酸化チタンを用いることも考えられるが、酸化チタンは、長期間太陽光(基本的に紫外線)にさらされていると酸化により有機物材料の劣化がおこるため、使用場所等に制限がある。一方、シリカについては、その様な問題はないので、制限されることはない。
前述の図1に示す装置を用いて、球状アルミナ粉末を製造する実験を行った。
アルミナ原料粉末とシリカ粉末との事前混合はV型ミキサーを用いた。
実験については、可燃ガスとしてLPG33Nm3/Hr、支燃ガスとして酸素110Nm3/Hrの条件で、1500℃以上の高温火炎を形成した。
原料粉末の搬送ガスとして酸素55Nm3/Hrで原料粉末80Kg/Hrの速度で、火炎中に吐出した。
また、サイクロンに流入するガス(燃焼ガス含む)は、1000Nm3/Hr以上とし、サイクロン流入ガス速度を10m/sec以上を確保した。このことにより、10m2/g以上の微粉については、サイクロンでは捕集されずに、バグフィルターで捕集されることになる。
アルミナ原料粉末については、平均粒径21.6μm、ソーダ成分含有率14ppmのものを使用し、添加するシリカ微粉の平均粒径は0.5μmとして表1に示す条件で配合し、事前に混合した粉末を、溶射に供した。また、前記添加するシリカ微粉の比表面積は200m2/gであった。
サイクロンで回収された粉末のソーダ成分含有率・平均粒径・比表面積を測定した結果を、表1に示す。
Figure 0005116968
ソーダ成分含有率測定は、試料4gを純水40ml中に常温で容器に投入し、10秒間手攪拌の後、すばやく遠心分離機に10分間かけ、固液分離後の抽出液中のNa+を、東亜医用電子製イオンクロマトグラフで測定した。
平均粒径測定は、レーザー回折散乱式粒度分析法であるCILAS製粒度分布測定で行った。
表面カバー比率の測定は、試料約1gを瑪瑙製乳鉢に入れ、同製乳棒にて強い衝撃を加えて粉砕し、破断試料をサンプリングして日本電子製JEMー4000EX顕微鏡で破断面を観察・計測した。
また、コーティングの状況は、日本電子製JEM-4000EXで観察した。
図2は、本発明の球状アルミナ粉末の表面に形成されたシリカコーティング層を示す制限視野電子回折像を示す図である。
図2に示すように、結晶質層からなる球状アルミナ粉末の表面に、非晶質(アモルファス)のシリカコーティング層が形成されている。
表1に示すように、シリカ微粉添加量の増大に伴い、ソーダ成分含有が低下していることが確認され、本発明の効果が確認できた。
すなわち、実験No.3〜No.10のように、シリカ微粉を本発明の範囲である0.5重量%以上添加することによってソーダ成分含有率を40ppm以下にすることができ、2重量%以上の添加でソーダ成分含有率を10ppm以下にすることができ、その効果は、顕著となっている。
また、アルミナ粉末の比表面積値がシリカ微粉添加後も大きくなっていないことより、添加したシリカが効率よくアルミナ粒子表面にコーティングされていることが分かる。
また、シリカコーティング層の球状アルミナ粉末における表面カバー比率が0.7以上とすることにより、ソーダ成分含有率を40ppm以下に低減することができることが判明した。
<比較例>
前述の実施例と同様の装置を用い、同様のガス・粉給条件で実験を行った。
同様のアルミナ原料粉末用い、添加するシリカ粗粉については、粒径83.0μm、32μm以下粒子が0.0%を使用し、表2に示す条件で配合し、事前に混合した粉末を溶射に供した。このシリカ粗粉の比表面積は0.2m2/gであった。
サイクロンで回収された粉末を32μmで篩分け、その篩下粉末のソーダ成分含有率・平均粒径・比表面積を測定した結果を、表2に示す。
Figure 0005116968
表2に示すように、シリカ粗粉の添加量の増大に伴い、ソーダ成分含有が減少していることがわかるが、事前に32μmで篩分けして粗粒のシリカを分離しなければならなかった。
また、シリカ粗粉を30.0%以上添加しなければソーダ成分含有が、10ppm以下となっていない。
原料の事前混合方法と実験装置は実施例1と同様である。尚、混合するシリカ微粉は予め微粉程度がいくつかの水準のものを調整し準備した。
シリカ微粉の比表面積の値によって、ソーダ成分含有がどの程度影響されるかを調べた結果を前記比較例とともに表3から表5に示す。
表3はシリカ粉添加率が0.5%の場合である。実験NO18はシリカ粗粉を添加した比較例であり、実験NO15〜17はシリカ微粉を添加した発明例である。
表4はシリカ粉添加率が2.0%の場合である。実験NO23はシリカ粗粉を添加した比較例であり、実験NO20〜22はシリカ微粉を添加した発明例である。
表5はシリカ粉添加率が5.0%の場合である。実験NO28はシリカ粗粉を添加した比較例であり、実験NO25〜27はシリカ微粉を添加した発明例である。
Figure 0005116968
Figure 0005116968
Figure 0005116968
上記表3〜表5において、シリカ微粉を添加した発明例のソーダ成分含有率はすべてシリカ粗粉を添加した比較例のソーダ成分含有率を下回っている。
また、シリカ微粉比表面積が30m2/g以上になると、10〜25m2/gの範囲に比べて、ソーダ成分含有率が高くなっている。この原因としては、シリカ微粉の比表面積が大き過ぎることによってアルミナ表面へのコーティングに寄与しづらくなっていることが考えられる。
原料の事前混合方法はヘンシェル型ミキサーを用いた他は実験装置は実施例1と同様である。これらの実験結果を表6の実験NO29〜31および表7の実験NO32〜34に示す。
表6は比表面積200m2/gのシリカ微粉を添加した結果を、V型ミキサーによる混合の場合と比較したものであるが、ソーダ成分含有率はヘンシェルミキサーを用いた場合の方が低い。
表7はシリカ微粉添加率5.0%の場合の結果を、V型ミキサーによる混合の場合と比較したものであるが、この場合もソーダ成分含有率はヘンシェルミキサーを用いた場合の方が低い結果が得られている。
Figure 0005116968
Figure 0005116968
本発明における球状アルミナ粉末の製造装置を例示する図である。 本発明の球状アルミナ粉末の表面に形成されたシリカコーティング層を示す制限視野電子回折像を示す図である。
1 溶射炉
2 バーナー
3 可燃ガス供給管
4 支燃ガス供給管
5 原料供給管
6 サイクロン
7 バグフィルター

Claims (3)

  1. バイヤー法によって製造されたソーダ成分を含有するアルミナ原料粉末を火炎中に溶射して球状化する球状アルミナ粉末の製造方法であって、
    前記アルミナ原料粉末中に、平均粒径2μm未満であって比表面積が10〜25m2/gのシリカ微粉を0.5〜20重量%存在させて、火炎中で溶射することにより、前記球状アルミナ粒子の表面にシリカコーティング層を形成することを特徴とする球状アルミナ粉末の製造方法。
  2. 前記アルミナ原料粉末中に存在するシリカ微粉が2.0〜20重量%であることを特徴とする請求項に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
  3. アルミナ原料粉末とシリカ微粉を事前混合する方法として、微粉の凝集を解砕する100kcal/mol以上の剪断エネルギーを有するミキサーを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
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