JP3853137B2 - 微細球状シリカの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細球状シリカの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体産業においては、半導体の高集積化が進むにつれ、半導体チップの封止材の高性能化が求められ、特に電気絶縁性、低膨張率などの機能が要求されている。この要求を満たすため、合成樹脂、特にエポキシ樹脂に、溶融処理された無機質粒子、特に溶融シリカ粒子をフィラーとして充填した封止材が一般に用いられている。そして、このシリカ質粒子が球状の形状を持ったものであると、高充填することができ、しかも封止する際の流動性や耐金型摩耗性にも優れているので、現在では球状シリカ質粒子が賞用されている。
【0003】
このように封止材に用いられる球状シリカは、例えばシリコン粒子を火炎中に投じて酸化反応させながら球状化する方法、金属アルコラートを特定の条件でゾルゲル法により析出させ球状化する方法、不定形の粒子を粉砕機の中で粒子の角を取り疑似球状化する方法、シリカ粉末を高温火炎中で溶融又は軟化する方法、などによって製造できることが知られている。
【0004】
しかしながら、封止材にフィラーを高充填させた場合、それが球状シリカであっても封止材の流動性が低下し、様々な成形性不良を引き起こすという問題がある。
【0005】
そこで、フィラーが高充填された場合であっても、その封止材の成形性(流動性)を損なわせないようにした技術として、例えばロジンラムラー線図で表示した直線の勾配を0.6〜0.95とし粒度分布を広くする方法(特開平6−80863号公報)、ワーデルの球形度で0.7〜1.0とし、より球形度を高くする方法(特開平3−66151号公報)、封止材の流動性を高めるため、平均粒子径0.1〜1μm程度の球状微小粉末を少量添加する方法(特開平5−239321号公報)、などが提案されている。
【0006】
これらの中でも、球状微小粉末を少量添加する方法は、フィラーの高充填域においても封止材の流動特性やバリ特性が飛躍的に改善できるため、最近注目を浴びている。この様な球状の微小粉末は、主として金属粉末を火炎中に投じて酸化反応させながら球状化する方法によって製造することができ、市販品として「アドマファインSO−25R」、「アドマファインSO−C2」(アドマテックス社製、商品名)などがある。しかしながら、このような球状微小粉末添加による流動性改善効果は、封止材のエポキシ樹脂の種類によって異なり、その管理が容易でない問題がある。
【0007】
そこで、本発明者らは、この問題を解消するため、母体フィラーに添加される無機質球状粒子の粒度分布と母体フィラーの割合が、封止材の流動特性やバリ特性などの成形性に与える影響について検討した。その結果、頻度粒度分布で1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を少なくとも一つを有する球状シリカ粉末、特に1μm以下の粒子を60〜95%、0.1μm以下の粒子を10%以下(0を含む)を含み、0.25〜0.50μmの領域と、1.0〜3.0μmの領域とに極大値を有する球状シリカ粉末を用い、その適正量を母体フィラーと混合してから樹脂に配合すると、驚くべきことに、それが高充填されても成形性が損なわれることなく、むしろ改善され、しかも樹脂の種類に関係なくそれが可能となることを見いだした。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記母体フィラーに添加される球状シリカ粉末は、2カ所の極大値を有するため、その製造は、それぞれの極大値に見合った最頻径を有し粒度分布の異なった2種の球状シリカ質粉末を機械的に混合するものであったので、設備が嵩み、しかもシリカ質粉末の平均粒径が約1μm程度の非常に微細なものである場合には、2種の球状シリカ質粉末の混合工程で凝集や付着などを起こし、均一に混合することは容易でなくなる、などの問題が未解決であった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を少なくとも一つを有する球状シリカ粉末を、原料粉末の熱処理から一貫して、工業的規模で容易に製造する方法を提供することである。
【0010】
すなわち、本発明は、金属シリコン粉末を高温火炎中に供給し、酸化燃焼によりシリカ微粉末を製造する方法において、実質的に金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末からなる混合原料粉末の水系スラリーを高温火炎中に供給することを特徴とする微細球状シリカの製造方法である。本発明においては、結晶シリカ粉末の平均粒径が1.0〜10μmであることが更に好ましい。
【0011】
更には、本発明で製造される微細球状シリカが、頻度粒度分布で1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を少なくとも一つを有するものであることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0013】
本発明が目的としている微細球状シリカは、1μmの前後のそれぞれの領域に極大値の少なくとも一つを有するものである。それを実現するため、本発明では、実質的に金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末からなる混合原料粉末を用いる。混合原料粉末の純度は、要求される製品純度に応じて決定されるが、Fe2O3やNa2Oといった不純物は、微細球状シリカを封止材フィラーに場合に、絶縁性不良や成形性不良を引き起こすので、できるだけ混入させないことが好ましい。
【0014】
金属シリコン粉末は、高温場におかれることによってSi又はSiOの蒸気となり、それが酸化されて微細な球状シリカ粒子となる。そのため、一様な高温場においては、金属シリコンから生成するシリカ粉末を2つの極大値を持ったものに制御することは極めて困難である。そこで、本発明は、1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を有する微細球状シリカを、従来の機械的混合法によることなく、原料粉末の熱処理によって製造しようとするものであり、1μm未満の領域に極大値を有する球状シリカを金属シリコン粉末から、1μm以上の領域に極大値を有する球状シリカを結晶シリカ粉末から、生成させようとするものである。
【0015】
金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末の割合は、金属シリコン粉末が95〜50%、特に90〜70%で、結晶シリカ粉末が5〜50%、特に10〜30%であることが好ましい。結晶シリカ粉末が5%よりも著しく少ないと、金属シリコンの酸化熱によって、結晶シリカは溶融よりも蒸発が促進されて、得られた球状シリカには1μm超の領域に極大値を持たせることが困難となる。一方、結晶シリカ粉末が50%よりも過多になると、高温場の熱量が主に結晶シリカの溶融に費やされるため、金属シリコンの酸化における粒成長が抑制され、1μm未満の領域における極大値は0.25μmよりも小さくなる傾向がある。また、結晶シリカ粉末の粒子濃度が高いために粒子同士の分散が不十分となり、溶融粒子同士の融着、肥大化が起こる。そのため、結晶シリカ粉末の平均粒径に関係なく、1.0〜3.0μm粒子が極端に減少し、本発明が目的としている1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を有する微細球状シリカ粉末を高収率で製造することが困難となる。
【0016】
金属シリコン粉末の平均粒径は100μm程度未満であることが好ましい。その平均粒径が100μmよりも著しく大きくなると、酸化燃焼反応が不均一となり、未反応の残留物が製品に混入する恐れがある。
【0017】
一方、結晶シリカ粉末の平均粒径は、以下の理由から1.0〜3.0μmであることが好ましい。すなわち、本発明が目的としている1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を有する微細球状シリカにおいて、1μm以上の領域における極大値が1.0〜3.0μmである時に成形性が一段と向上する。そこで、このようなものを製造するには、熱処理品から球状シリカの粗粉を分級によりある程度除去せねばならない。そこで、本発明のような混合原料粉末を用いる方法において、この除去操作を軽減もしくは省略して80%以上の高収率を実現するには、結晶シリカ粉末の平均粒径を1.0〜10μmとすることが有効な手段であることを多くの実験を重ねて見いだした。結晶シリカ粉末の平均粒径が10μmよりも著大になると、分級を行っても微粉球状シリカの収率が混合原料粉末中の結晶シリカ粉末の含有率に比例して低下するようになる。
【0018】
本発明においては、実質的に金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末からなる混合原料粉末は、水系スラリーで供給される。これによって、金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末は均一な混合状態を保持して熱処理を受けることができ、得られる微細球状シリカの均質性が高まる。また、結晶シリカ粉末の平均粒径が、本発明で好適な1.0〜10μmであるときは、乾式供給では圧損が高まり搬送が容易でなくなる。
【0019】
本発明で水系スラリーを用いる場合、スラリーの固形分濃度は10〜70%、好ましくは20〜60%である。スラリー固形分濃度が10%より著しく低いと、金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末の混合が容易となるが、水の蒸発に費やされる熱量が大きいためエネルギー効率が悪く、結晶シリカの溶融が不十分となる恐れがある。そのうえ、原料スラリーが希薄濃度となるため、金属シリコンの酸化における粒成長が抑制され、1μm未満の領域における極大値を0.25〜0.50μmとすることが困難となる。スラリー固形分濃度が70%超であると、金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末の混合が困難となるだけでなく、スラリーの粘度が高まり、乾式供給する場合と同様に搬送ができなくなることもある。
【0020】
高温火炎は、バーナーによる可燃性ガスの燃焼によって作り出すことが好ましい。高温火炎を形成するための燃料ガスとしては、プロパン、ブタン、プロピレン、アセチレン、水素等が使用され、また助燃ガスとしては、酸素、空気が使用される。
【0021】
本発明で使用される装置は、高温火炎の形成、ないしは高温火炎の形成と共に混合原料粉末を高温火炎中に供給することのできる溶融炉と、溶融処理物の捕集系とからなっている公知の装置にて実施することができる。この捕集系では、重力沈降室、サイクロン、バグフィルター等の捕集機が設置される。本発明では熱処理品を捕集系内でのオンライン分級で3μm以上の粗粉をある程度除去することによって、目的とする微細球状シリカ粉末を容易に製造することができる。また、熱処理品を一旦捕集した後、回転翼を有した分級機等の公知機器でオフライン分級で得ることも可能である。更には、混合原料粉末の金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末の混合比と構成粒度を調整することによって、分級操作を行うことなく、全量を最終のバグフィルターから捕集することもできる。
【0022】
本発明における粒度特性は、レーザー散乱光法による粒度測定法に基づく値であり、コールター粒度測定器(モデルLS−230;コールター社製)にて測定した。
【0023】
本発明の微細球状シリカにおける「球状」の程度としては、真円度にて表される値が0.90以上であることが好ましい。この真円度は、走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JSM−T200型」)と画像解析装置(日本アビオニクス社製)を用いて測定した。先ず、粉末のSEM写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の真円度はA/Bとして表示できる。
【0024】
そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2 となり、個々の粒子の真円度は、真円度=A/B=A×4π/(PM)2として算出することができる。
【0025】
本発明で得られた微細球状シリカは、それ自体を樹脂等の充填材や、その他の各種用途に用いることができる。
【0026】
封止材のフィラーとして用いるときは、多くの場合、母体フィラーのシリカ質粉末と混合される。その混合割合は、内割りで1〜20%、特に3〜15%であることが好ましい。1%未満であると封止材の成形性改善効果が不十分となり、また20%をこえると、逆に成形性が低下する。母体フィラーとしては、樹脂組成物のシリカフィラーとして一般に使用されているものが用いられるが、低熱膨張率及び耐湿性等の封止材としての要求特性に応じるために、特に非晶質シリカ粉末が好ましく、その形状は破砕状、球状又はそれらの混在物であっても構わない。母体フィラーとなるシリカ質粉末の平均粒径は、5〜100μm程度のものが使用される。
【0027】
本発明で得られた微細球状シリカの用途が封止材のフィラーである場合、それと母体フィラーの合計量として、最終樹脂組成物中に80〜95%程度含有するようにして充填されることが好ましい。その際の樹脂としては、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤が一般的である。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例をあげて更に具体的に説明する。
【0029】
図1に示される装置、すなわち、燃料ガス供給管3、助燃ガス供給管4、原料粉末供給管5がそれぞれ接続されてなるバーナー2が、溶融炉1の頂部に設置されている装置を用いて、微細球状シリカを製造した。バーナーは、熱量を効率的に利用するため、同一炉に4本設置し、各バーナー中心から原料粉末スラリーを噴出させ溶融炉で球状化を行う。溶融炉から排出された熱処理品は、サイクロン6、バグフィルター7、ブロワー8からなる捕集系に空気輸送されるように直列に接続されており、所望する粒度の微細球状シリカが各捕集機で捕集することができるようになっている。
【0030】
実施例1
金属シリコン粉末(平均粒径:5.11μm)80%と結晶シリカ粉末として天然珪石粉末(平均粒径:1.67μm)20%からなる混合原料粉末100質量部と、水100質量部とを混合し、水系スラリー(固形分濃度50%)を調製した。これを4本のバーナー中心に設置された二流体ノズル(アトマックス社製「BNH500S−IS」から、ポンプにて火炎中に60kg/hrで噴霧した。なお、各バーナーからは、燃料ガスとしてLPG:10Nm3/hr、助燃ガスとして酸素:25Nm3/hrが噴射され、温度約1900℃の火炎が形成されている。
【0031】
バグフィルターから捕集された白色の微細球状シリカ粉末Aは、一部炉体への付着、サイクロンからの排出があったが、92%の回収率であった。走査型電子顕微鏡により、真球状の粉末であることを確認し、その真円度は0.99以上の値であった。また、X線回折分析による結晶相の同定により、未反応の金属シリコンと結晶シリカは共に検出されず、溶融シリカとなっていることを確認した。この粉末Aについて粒度分布を測定し、封止材を調合した場合の流動性助長効果を、以下に従い評価した。粉末Aの回収率、平均粒径、極大値、流動性助長効果、及びバリ長さを表2に示す。
【0032】
流動性助長効果試験
粉末Aを表1に示す配合で各材料と共にドライブレンドした後、これをロール表面温度100℃のミキシングロールを用い、5分間混練・冷却・粉砕した後、スパイラルフローの測定を行った。測定は、スパイラルフロー金型を用い、EMMI−66(Epoxy Molding Material Institude ; Society of Plastic Industry)に準拠して行った。成形温度は175℃、成形圧力は7.5MPa、成形時間は90秒である。また、バリの測定は2μm、5μm、10μm、30μmのスリットを持つバリ測定用金型を用い、成形温度は175℃、成形圧力は7.5MPaで成形した際にスリットに流れ出た樹脂をノギスで測定し、それぞれのスリットで測定された値の平均値をバリ長さとした。
【0033】
流動性の助長効果は、式SF2/SF1[但し、SF1は粉末Aを配合しない母体フィラーのみのスパイラルフロー値、SF2は母体フィラーに粉末Aを配合した時のスパイラルフロー値である。]により算出した。また、バリ長さは、式BR2/BR1[但し、BR1は粉末Aを配合しない母体フィラーのみの各スリットのバリ長さの平均値、BR2は母体フィラーに粉末Aを配合した時の値である。]により算出した。
【0034】
実施例2〜8
天然珪石粉末の平均粒径、金属シリコン粉末と天然珪石粉末の割合、及び水系スラリーの固形分濃度を種々変えたこと以外は、実施例1に準じて微細球状シリカを製造した。それらの結果を表2に示す。
【0035】
比較例1、2
原料粉末として、金属シリコン粉末、又は天然珪石粉末のみとしたこと以外は、実施例1に準じて微細球状シリカを製造した。それらの結果を表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1、表2から明らかなように、本発明の方法で製造された微細球状シリカは、粒径分布が高度に制御されており、頻度粒度分布で1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を少なくとも一つ有するものである。このような微細球状シリカを封止材フィラーの一構成成分とすることによって、フィラー全体の充填量を高めることができる。また、樹脂の種類に関係なく、優れた流動性がを示し、バリ長さも50%以下に低減することができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、頻度粒度分布で1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を少なくとも一つを有する微細球状シリカを工業的規模で容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】微細球状シリカの製造装置の概略図。
【符号の説明】
1 溶融炉
2 バーナー
3 燃料ガス供給管
4 助燃ガス供給管
5 原料粉末供給管
6 サイクロン
7 バグフィルター
8 ブロワー
Claims (3)
- 金属シリコン粉末を高温火炎中に供給し、酸化燃焼によりシリカ微粉末を製造する方法において、実質的に金属シリコン粉末と結晶シリカ粉末からなる混合原料粉末の水系スラリーを高温火炎中に供給することを特徴とする微細球状シリカの製造方法。
- 結晶シリカ粉末の平均粒径が1.0〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の微細球状シリカの製造方法。
- 微細球状シリカが、頻度粒度分布で1μmの前後のそれぞれの領域に極大値を少なくとも一つを有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の微細球状シリカの製造方法。
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