JP4392097B2 - 超微粉球状シリカの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散性、流動性、充填性に優れ、充填材として好適な超微粉球状シリカの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高純度シリカを高温で溶融し、冷却したものは非晶質網目構造を持ち、低膨脹性で耐熱衝撃性があり、熱伝導率が低いため耐熱材料として古くから用いられている。また、化学的に安定で、高い絶縁性を持ち、高周波誘電体損失も低いことから、半導体封止材用フィラーとして用いられ、特に球状のものは流動性や充填性の向上に役立っている。
【0003】
しかしながら、半導体封止材中に占めるフィラーの比率を高めた場合、成型時の流動性は低下し、チップを搭載したダイが変形したり、金ワイヤーの切断を伴う等、様々な成形性不良を招くという問題がある。
【0004】
そこで、フィラーの高充填下であっても封止時の成形性を損なわせないように流動性を改善させる技術として、ロジンラムラー線図で表示した直線の勾配を0.6〜0.95とし粒度分布を広くする方法(特開平6−80863号公報)、ワーデルの球形度で0.7〜1.0とし粒子の球形度をより高くする方法(特開平3−66151号公報)、更には封止時の流動性をより高めるため、平均粒子径0.1〜1μm程度の超微粉シリカを少量添加する方法(特開平5−239321号公報、特開平1−62337号公報、特開平8−208882号公報)等が提案され実用化に至っている。
【0005】
このような球状シリカ粉末の製造方法としては、例えば、金属アルコラートを特定の条件でゾルゲル法により析出させ球状化する方法、石英、珪石等のシリカ質原料を高温火炎中で溶融又は軟化により球状化する方法、金属シリコン微粒子を火炎中に投じて酸化反応させながら球状化する方法等がある。
【0006】
高温火炎による溶融球状化法としては、従来から縦型炉を使用した技術が主体である。例えば、特開昭62−241542号公報には、炉頂部に高温火炎及び無機質粉末原料の噴射用バーナーが設置された縦型炉を用い、炉壁内面に適度厚みの球状化粒子の付着層を形成させて、球状化粒子による炉壁耐火物の剥離を防止し、安定操業を可能とした球状化粒子の製造方法が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
高温火炎中に供給されたシリカ質原料の大部分は、その融点以上で溶融球状化され、捕集系において所望粒度のものが分級・捕集されるが、その一部が蒸発して気相のSiOとなり、それが析出固化したいわゆるフュームドシリカと呼ばれる平均粒子径0.1〜1μm程度の超微粉シリカが、溶融球状シリカ粉末と共に捕集系で分級・捕集される。
【0008】
しかし、特開昭62−241542号公報には、炉壁内面温度が600℃〜1100℃と記載されているので、シリカの蒸発が少なく、また粒成長を遂げないために流動性助長効果に優れる平均粒子径0.1〜1μmの超微粉シリカに成長させることが極めて困難であった。
【0009】
従って、従来の高温火炎による溶融球状法では、流動性、分散性及び充填性に優れた、平均粒子径0.1〜1μmの良質な超微粉シリカを生産することが困難という問題があり、新たな技術の開発が求められていた。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、流動性、分散性及び充填性に優れた、平均粒子径0.1〜1μmの良質な超微粉シリカ粉末を容易に製造することができる、超微粉シリカの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、縦型溶融炉の炉頂に設置されたバーナーから、可燃ガスと助燃ガスを噴射し、それによって形成された高温火炎中にシリカ質原料粉末を噴射して加熱溶融処理を行った後、炉体を通過した浮遊溶融状粉末を捕集系で分級・捕集する球状シリカ粉末の製造方法において、上記縦型溶融炉の下部側面に一次エアーバルブを設けその開度を調整して、上記高温火炎の先端から下方3m以内に位置する炉壁の炉内面から5cm内側におけるガス体温度(以下、「炉壁近傍のガス体温度」ともいう。)を1200〜1800℃に保持すると共に、平均粒子径0.1〜1μmの浮遊溶融状粉末を分級・捕集することを特徴とする超微粉球状シリカの製造方法である。
【0012】
【発明実施の形態】
以下、図面を参照しながら更に詳しく本発明を説明する。
【0013】
本発明で使用される製造装置の概略図の一例を図1に示した。この装置は、原料フィーダー1と、球状化バ−ナ−2及び炉内壁近傍のガス体温度を調整する一次エアーバルブ5とを備えた密閉型縦型溶融炉4と、捕集系とで構成されている。捕集系には、高温火炎3で溶融した球状シリカ粉末とこれに混在する超微粉球状シリカ(フュームドシリカ)とをブロワ9による吸引で分級するためのサイクロン7と、サイクロン7では捕集できなかった超微粉球状シリカを回収するバグフィルター8とが少なくとも備えられている。サイクロンから排出された超微粉球状シリカを含む高温ガスは、水冷ジャケット連絡管6によって冷却される。10は吸引ガス量制御バルブ、11はガス排気口、12は捕集粉抜き出し装置である。
【0014】
本発明においては、一次エアーバルブ5を調整することにより、高温火炎の先端から下方3m以内に位置する炉壁近傍のガス体温度を1200〜1800℃に保持することができる。一次エアーバルブ5の開度を大きくすると、炉壁近傍のガス体温度は上昇する。高温火炎の先端は、炉内が監視できるようなマンホールを設置することによって、確認することができる。
【0015】
炉壁近傍のガス体温度は熱電対を用いて測定される。図1に示すように、炉頂を起点として下方1列に、TR−1〜TR−8の熱電対が、1m間隔にその先端を炉内面に5cm突出させて炉壁に設置されている。従って、本発明において「炉壁近傍」とは、炉内壁面から約5cm程度の位置ということもできる。
【0016】
本発明において、炉壁近傍のガス体温度が1200℃未満であると平均粒子径0.1μm未満の超微粉シリカとなり、また1800℃超であると平均粒子径1μm微細シリカ粉末となり、いずれの場合も流動性に優れた平均粒子径0.1〜1μmの良質な超微粉球状シリカを製造することができなくなる。
【0017】
炉壁近傍のガス体温度を1200℃〜1800℃に制御される炉体の位置は、高温火炎の先端から下方3mまでの位置であり、それよりも更に下方の位置がこの温度になると、平均粒子径1μm超の粒子に成長してしまい所期の目的を達成することが困難となる。
【0018】
本発明において、高温火炎を形成する可燃ガスとしては、アセチレン、エチレン、プロパン、ブタン、等の炭化水素系ガスあるいはこれらの混合ガスが用いられる。また、助燃ガスとしては純酸素が最適であるが、90%以上の酸素の純度であれば本発明の目的を十分に達成することができる。
【0019】
高温火炎の温度は、シリカの融点以上の高温を形成できる火炎条件であることが好ましい。そのために、炉頂に設けられたバーナーから、可燃ガスと助燃ガスを可燃ガス量に対する助燃ガス量を理論燃焼量の0.7倍以上、1.5倍未満程度の割合で噴射することによって行うことができる。バーナー本数は、2本以上、好ましくは4本以上である。
【0020】
本発明に用いるシリカ質原料は、石英、珪石等特に制限はない。また、その形状は丸でも角でもよく、更には結晶質でも非晶質でも良い。粒度としては、平均粒子径で1〜25μm程度のものが使用される。シリカ質原料の搬送には、通常、助燃ガス(キャリアガス)が用いられ、その混合比は1.2kg/Nm3程度以下ある。
【0021】
本発明の捕集系では、サイクロン7とバグフイルター8とが少なくとも備えており、必要に応じて、溶融炉の底部に連接させて重沈室が設けられる。サイクロン7とバグフイルター8の設置数及び操業条件は、所望する製品粒度に応じて決められる。この捕集系は、溶融球状化品の輸送工程に織り込んで行ってもよく、また一括捕集してから別ラインで行ってもよい。
【0022】
本発明で製造された超微粉球状シリカの平均粒子径は、例えばコールター社製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置「LS−230」を用いて測定することができる。
【0023】
また、本発明で製造された超微粉球状シリカの平均球形度としては、以下の方法で測定された値で、0.95以上であることが好ましい。
【0024】
すなわち、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子社製「JSM−T200型」)と画像解析装置(例えば日本アビオニクス社製)を用い、電子顕微鏡で得られたSEM写真の画像解析を行って測定する。測定粒子数は100個以上とする。
【0025】
まず、粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の真円度はA/Bとなる。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、個々の粒子の真円度は、A/B=A×4π/(PM)2として算出する。このようにして得られた100個以上の粒子の真円度を求めその平均値を平均球形度とする。
【0026】
本発明によって製造された超微粉球状シリカの分散性、流動性及び充填性の評価は、エポキシ樹脂を用いて半導体封止材を製造し、そのスパイラルフローを測定することによって行うことができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例をあげて更に具体的に説明する。
【0028】
実施例1〜3、比較例1、2
図1の製造装置において、炉体径φ1.2m、炉体長8mの縦型溶融炉を用いた。バーナー本数は3本である。炉体近傍のガス体温度は、図1に示すように、熱電対TR−1〜TR−8を1m間隔に設置することにより測定した。
【0029】
平均粒子径5μmの珪石粉をキャリアガス(酸素10Nm3/Hr本)にてバーナーに搬送させ、可燃ガス(プロパンガス6Nm3/Hr本)と助燃ガス(酸素20Nm3/Hr本)で形成した高温火炎中に噴射させ、その際、一次エアー開度を調整し炉壁近傍のガス体温度を変更することによって、捕集系で種々の超微粉球状シリカを分級・捕集し、以下に従い、平均粒子径及び比表面積を測定すると共に、半導体封止材を製造してそのスパイラルフローを測定し、流動性、分散性及び充填性の評価を行った。それらの結果を表1に示す。なお、平均球形度はいずれも0.95以上であった。
【0030】
(1)平均粒子径:レーザー回折式粒度測定器(コールター社「モデルLS−230」型)から得られる質量又は体積粒度分布曲線より求めた。
【0031】
(2)比表面積:湯浅アイオニクス社「モデル4−SORB」型を使用し、BET1点法で測定した。
【0032】
(3)スパイラルフロー:超微粉球状シリカを、表2に示す配合1、配合2の二種の配合条件で半導体封止材を製造し、そのスパイラルフローを測定した。半導体封止材は、各材料をドライブレンドしてからロール表面温度100℃ミキシングロールを用い、5時間混練・冷却・粉砕した製造した。また、測定は、スパイラルフロー金型を用い、EMMI−66(Epoxy Molding Material Institute ; Society of PlasticIndustry)に準拠して行った。成形温度は175℃、成形圧力は7.5MPa、成形時間は90秒である。
【0033】
流動性、分散性及び充填性の評価は、式、SF2/SF1(但し、SF1は超微粉球状シリカを配合しない母体充填材のみのスパイラルフロー値、SF2は母体充填材に超微粉球状シリカを配合したときのスパイラルフロー値である。)、により行った。
【0034】
【表1】
Figure 0004392097
【0035】
【表2】
Figure 0004392097
【0036】
表1から明らかなように、本発明によって製造された平均粒子径0.1〜1μmの超微粉球状シリカを用いることによって、半導体封止材の流動性、分散性及び充填性が著しく向上することが分かる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、流動性、分散性及び充填性に優れた、平均粒子径0.1〜1μmの良質な超微粉球状シリカを容易に製造することができる。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】超微粉球状シリカ製造設備の概略図
【符号の説明】
1 原料フィーダー
2 球状化バーナー
3 高温火炎
4 縦型溶融炉
5 一次エアーバルブ
6 水冷ジャケット連絡管
7 サイクロン
8 バグフィルター
9 ブロワ
10 吸引ガス量制御バルブ
11 ガス排気口
12 捕集粉抜き出し装置

Claims (1)

  1. 縦型溶融炉の炉頂に設置されたバーナーから、可燃ガスと助燃ガスを噴射し、それによって形成された高温火炎中にシリカ質原料粉末を噴射して加熱溶融処理を行った後、炉体を通過した浮遊溶融状粉末を捕集系で分級・捕集する球状シリカ粉末の製造方法において、上記縦型溶融炉の下部側面に一次エアーバルブを設けその開度を調整して、上記高温火炎の先端から下方3m以内に位置する炉壁の炉内面から5cm内側におけるガス体温度を1200〜1800℃に保持すると共に、平均粒子径0.1〜1μmの浮遊溶融状粉末を分級・捕集することを特徴とする超微粉球状シリカの製造方法。
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