JP2001117253A - 電子写真感光体および電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体および電子写真装置

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JP2001117253A
JP2001117253A JP30119599A JP30119599A JP2001117253A JP 2001117253 A JP2001117253 A JP 2001117253A JP 30119599 A JP30119599 A JP 30119599A JP 30119599 A JP30119599 A JP 30119599A JP 2001117253 A JP2001117253 A JP 2001117253A
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Masahiro Iwasaki
真宏 岩崎
Masakazu Iijima
正和 飯島
Fumiaki Taho
文明 田甫
Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
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Fujifilm Business Innovation Corp
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高性能で耐久性に優れた電子写真感光体を提
供する。 【解決手段】 少なくとも電荷発生材料と電荷輸送材料
を含む電子写真感光体において、該電荷輸送材料として
電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックを含むブロック共
重合体またはグラフト共重合体を含有し、該電荷輸送性
ブロックが下記一般式(1)で示される構造を繰り返し単
位として有することを特徴とする電子写真感光体。 【化1】 (式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置
換のアリール基を示し、X1及びX2はそれぞれ独立に置換
もしくは未置換のアリーレン基を示し、Lは枝分れもし
くは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテ
ロ原子含有炭化水素基を示す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な電荷輸送性
共重合体を用いた電子写真用感光体に関し、特にデジタ
ル式電子写真法に好適な電子写真用感光体ならびにデジ
タル式電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真技術は、高速で、高印字
品質が得られる等の利点を有するために、複写機、プリ
ンター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を
果たしている。
【0003】電子写真技術において用いられる電子写真
感光体としては、従来からセレン、セレン-テルル合
金、セレン-ヒ素合金等の無機光導電性材料を用いたも
のが広く知られている。一方、これらの無機系感光体に
比べ、コスト、製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有
する有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の研究も
活発に行われ、現在では無機系感光体を凌駕するに至っ
ている。特に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷
輸送をそれぞれ別々の層に担わせる機能分離型積層構成
のものが開発されたことにより、材料選択の自由度が増
し、著しい性能の向上を遂げ、現在ではこの機能分離積
層型の有機感光体が電子写真感光体の主流となってい
る。すなわち、電荷発生能と電荷輸送能の両方に優れた
材料は希有であり、またその様な材料の設計開発も困難
であったが、一方にのみ秀でた材料なら設計開発も容易
であり、各機能に秀でた材料を組合せ用い機能分離型積
層構成を採用することで、高性能な電子写真感光体を得
ることが可能となった。
【0004】機能分離積層型有機感光体用の電荷発生層
としては、キノン系顔料、ぺリレン系顔料、アゾ系顔
料、フタロシアニン系顔料、セレン等の電荷発生能に優
れた顔料を蒸着等により直接成膜したもの、あるいは高
濃度で結着樹脂中に分散したものが実用化されている。
一方、電荷輸送層としては、ヒドラゾン系化合物、ベン
ジジン系化合物、アミン系化合物、スチルベン系化合物
等の電荷輸送能に優れた低分子化合物を絶縁性樹脂中に
分子分散したものが用いられている。
【0005】ところで、光学的に原稿を感光体上に結像
させて露光する従来のアナログ方式の電子写真式複写機
に用いる感光体としては、濃度階調による中間調の再現
性を良好にするために、図1に示すような光誘起電位減
衰特性を持つ感光体、すなわち、露光量に対し比例的に
電位減衰を起こす感光体(以下、「J字型感光体」とい
う。)が要求される。上記の無機系感光体、機能分離型
の積層型有機感光体は全てこの範疇に入る光誘起電位減
衰特性を示す。しかしながら、近年の高画質化、高付加
価値化、ネットワーク化等の要請に伴い盛んに研究開発
が行われているデジタル方式の電子写真装置では、一般
にドット等の面積率で階調を出す面積階調方式を採用す
るため、むしろ図2に示すような、ある露光量に達する
までは電位減衰せず、その露光量を越えると急峻な電位
減衰が起こる、いわゆるS字型の光誘起電位減衰特性を
有する感光体(以下、「S字型感光体」という。)を使用
する方が、画素の鮮鋭度が高められる等の点から望まし
い。
【0006】このS字型光誘起電位減衰特性は、ZnO等の
無機顔料あるいはフタロシアニン等の有機顔料を樹脂中
に粒子分散した単層型感光体において公知の現象である
[例えば、R.M.Schaffert:「Electrophotography」, Foc
al Press, p.344(1975)、J.W.Weigl, J.Mammino, G.L.W
hittaker, R.W.Radler, J.F.Byrne:「Current Problems
in Electrophotography」, Walter de Gruyter, p.287
(1972)]。特に、現在多用されている半導体レーザーの
発振波長である近赤外域に光感度を有するフタロシアニ
ン系顔料を樹脂中に分散したレーザ露光用単層感光体が
多数提案されている[例えば、グエン・チャン・ケー,
相沢: 日本化学会誌, p.393(1986)、特開平1-169454号
公報、同2-207258号公報、同3-31847号公報、同5-31338
7号公報]。
【0007】しかしながら、これらの単層型感光体では
単一材料で電荷発生と電荷輸送の両機能を担う必要があ
るものの、上述したように両機能共に優れた性能を有す
る材料は稀有であり、実用に耐え得るものは未だ得られ
ていない。特に顔料粒子は、一般的に多くのトラップレ
ベルを有するため、電荷輸送能が低く、電荷が残留す
る、繰り返し安定性が低い等の欠点があり、電荷輸送を
担わせるには不適当である。この問題を根本的に解決
し、材料選択の自由度を上げ、ひいては総合的な感光体
特性を向上させるためには、S字型感光体においても、
機能分離構成の導入が不可欠である。
【0008】この問題に対し、D. M. Pai等は、電荷発
生層と電荷輸送層からなる積層型感光体において、電荷
輸送層として少なくとも2つの電荷輸送領域および1つの
電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領域が互いに接触
して回旋状電荷輸送路を形成してなる不均一電荷輸送層
を用いることにより、任意の電荷発生層との組合せでS
字型光誘起電位減衰特性が実現できることを報告してい
る[特開平6-83077号公報(米国特許第5306586号明細
書)]。また、電荷発生層、不均一電荷輸送層、及び均一
電荷輸送層から成る3層構成の感光体がS字型光誘起電位
減衰特性を示すことも見出され(特願平7-208552)、上記
D. M. Pai等の発明からさらに機能分離度が高められ
た。
【0009】しかしながら、これらの発明において鍵と
なる光誘起電位減衰特性をS字型にする機能(以下、「S
字化」という)を担う不均一電荷輸送層の具体例として
は、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜、六方晶セレンの
樹脂分散膜、ポリビニルカルバゾール-ドデシルメタク
リレート相分離系ブロック共重合体が開示されているの
みであり、しかもこれ等の材料には以下に示すような問
題点があり、上記発明を実用化するには、不均一電荷輸
送層材料の新たな開発が不可欠な課題であった。
【0010】すなわち、フタロシアニン顔料、六方晶セ
レン等の電荷発生能を有する着色顔料を不均一電荷輸送
層用電荷輸送材料として用いると、特に電荷輸送層側か
ら電荷発生層を露光する構成を採った場合、不均一電荷
輸送層での光吸収およびそれに伴う電荷発生により、光
感度や帯電性に悪影響がでたり、繰り返し安定性が低下
する等の問題が生起した。この問題は、不均一電荷輸送
層に吸収のない波長域に光感度を有する電荷発生層を用
い且つ該波長域内のみの露光を行う露光装置を用いるこ
とにより回避することができるが、材料や装置に制約が
貸せられることとなり、根本的な改善策が望まれる。さ
らに、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜や六方晶セレン
の樹脂分散膜の製造に当たっては、これら顔料の粉砕お
よび/または分散工程が必要であるが、粉砕には莫大な
エネルギーを要し、且つ不純物混入の危険性を伴う。さ
らにまた、安定な分散液を得ることは一般的に困難であ
り、分散溶剤やバインダー樹脂の探索に多大な労力を要
すると共に、選択材料に著しい制約を受ける。また、分
散液中での結晶成長や凝集化による分散液の変性は一般
的に避けられず、長期に亘る使用は不可能であり、コス
トアップをもたらす。
【0011】一方、ポリビニルカルバゾール-ドデシル
メタクリレート相分離系ブロック共重合体は、特殊な2
官能性開始剤を用いて合成されるものであり、製造が困
難、コストが高い等の問題があった。さらに、機械的強
度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低い等の
問題もあった。しかしながら、相分離系ブロック共重合
体では、塗布液としては均一溶液であり、乾燥時に相分
離し所望とする不均一電荷輸送層を与えるものであるた
め、上記のような粉砕/分散に係わる問題は根本的に解
消されると云う利点を有する。また、顔料ではないた
め、上記の光暴露に係わる問題も発生しない。
【0012】ところで、電荷輸送性高分子としては、ポ
リビニルカルバゾールが電子写真感光体用の電荷輸送材
料として有効であることが古くから知られているが、機
械的強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低
い等の実用上の本質的な問題があった。この問題を解決
する手段として、電荷輸送層に要求される機能である電
荷輸送能と、成膜性、可撓性、強度等の機械的特性を分
離し、それぞれを別々の材料に担わせる機能分離の発想
に基づく材料開発が為され、前述のように現在では、高
い電荷輸送能を有するトリアリールアミン系電荷輸送性
低分子化合物と、成膜性、可撓性、強度に優れたポリカ
ーボネート系樹脂からなる分子分散系複合材料が、電子
写真用電荷輸送層材料の主流となっている。しかしなが
ら、このような分子分散系複合材料では、分子分散され
た電荷輸送性低分子化合物が経時および/または加熱で
結晶化してしまい、特性が劣化するという問題があり、
特に高温下での使用やあるいは発熱を伴うデバイスへの
適用には制限があった。また、高画質が得られる液体現
像方式の電子写真装置用の電子写真用感光体に用いた場
合、現像液に触れることで、電荷輸送性低分子化合物の
溶解あるいは結晶化等が起こり、電荷輸送層が変性ある
いはクラックが生じる等の問題があった。さらにまた、
十分な電荷輸送性を確保するためには、電荷輸送性低分
子化合物を樹脂中に35 〜 60wt%の高濃度で分散する必
要があり、可撓性、強度等の機械的特性に優れた樹脂を
用いても、複合膜としての機械的特性には限界があっ
た。
【0013】さらなる高寿命化、高耐久化、低コスト化
が要請される電子写真感光体を初め、有機電子デバイス
に幅広く、有機電荷輸送材料が活用されるには、上記の
ような問題の克服が不可欠であり、その手段として、近
年、ポリビニルカルバゾールに代わる高性能電荷輸送性
高分子の研究開発が、再び活発化している。現在まで
に、トリアリールアミン系電荷輸送性低分子化合物が高
い電荷輸送性を有すると云う知見を基に、トリアリール
アミン骨格を主鎖あるいは側鎖に含む電荷輸送性高分子
が多数、開発されている(例えば、米国特許4,806,443号
明細書、同4,806,444号明細書、同4,801,517号明細書、
同4,937,165号明細書、同4,959,288号明細書、特開昭61
-20953号公報、特開平1-134456号公報、同1-134457号公
報、同1-134462号公報、同4-133065号公報、同4-133066
号公報、同8-176293号公報、同8-176293号公報)。
【0014】しかしながら、これらの電荷輸送性高分子
は、単独重合体もしくは数種のモノマーを混合し共重合
させたランダム共重合体であり、本質的に相分離性を示
すことはなく、それら単独ではS字化のための不均一電
荷輸送層を形成することはできない。この問題に対し、
本発明者らは、それら電荷輸送性高分子に該電荷輸送性
高分子と非相溶な絶縁性高分子を加えた相分離性ポリマ
ーブレンドがS字化のための不均一電荷輸送層として有
効に機能し得ることを発明した(特願平9-251211、同8-1
58520)。しかしながら、ポリマーブレンドでは、一般に
相分離スケールが数μm以上の大きさであり、画像の均
質性が低下すると云う問題があった。さらに、乾燥速
度、乾燥温度等の成膜条件により、相分離スケールが大
きく変化し、それに伴い電子写真特性が大きく変化して
しまうと云う製造再現性上の問題もあった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術
における上記のような実情に鑑みなされたものであっ
て、上記のような問題点を克服し得る新規な電荷輸送性
高分子化合物を用いた電子写真感光体及びそれを用いた
電子写真装置を提供することを目的とする。
【0016】すなわち、本発明の目的は、少なくとも電
荷発生材料と電荷輸送材料を含む機能分離型電子写真感
光体において、該電荷輸送材料として特定の電荷輸送性
ブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いること
により高性能な電子写真感光体、特に高性能なS字型電
子写真感光体を提供することにある。また、本発明の他
の目的は、該高性能電子写真感光体を利用した高画質か
つ高耐久な電子写真装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電荷輸送
材料および高分子材料に関して鋭意検討を重ねた結果、
所望とする機能を有する複数のブロックを共有結合で連
結させると云うブロックあるいはグラフト共重合化の手
法により、各機能を損ねることなく、多機能を有する材
料が得られ、トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性
ブロックと絶縁性ブロックからなる共重合体が電荷輸送
材料として優れた総合特性を有し、特に該両ブロックが
非相溶性のものがS字型感光体用の不均一電荷輸送層材
料として、好適であることを見いだし本発明を完成する
に至った。
【0018】すなわち、本発明は少なくとも電荷発生材
料と電荷輸送材料を含む電子写真感光体において、該電
荷輸送材料として電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロック
を含むブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有
し、該電荷輸送性ブロックが下記一般式(1)で示される
構造を繰り返し単位として有することを特徴とする電子
写真感光体を提供する。
【0019】
【化3】
【0020】(式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換
もしくは未置換のアリール基を示し、X1及びX2はそれぞ
れ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、L
は枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素
基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示す。) 本発明で使用する電荷輸送性共重合体は、トリアリール
アミン構造を含む電荷輸送性ブロックによる高い電荷輸
送能を有する。また、この電荷輸送性共重合体では絶縁
性ブロックの導入と云うアロイ化の手法により、電荷輸
送能を損ねることなく、機械的強度、ガラス転移温度、
結晶化度、屈折率、接着性、吸着性、可撓性、溶解性、
溶融性、相分離状態等の制御を行うことが可能である。
一方、単なる単独重合体やランダム共重合体ではこれら
の特性を、輸送能に影響なく制御することは困難であ
る。さらに、所望とする他の特性を発揮する成分を共重
合化することで、さらなる高機能化材料への展開も可能
である。
【0021】絶縁性ブロックとしては、ビニル系モノマ
ーの重合物、特に下記一般式(2)で示されるビニルモノ
マーを重合し得られたものが機械的強度、可撓性、透明
性等の点から好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原
子、ハロゲン原子、または置換もしくは未置換のアルキ
ル基または置換もしくは未置換のアリール基を示し、R1
とR2は置換基同士結合し環構造をとってもよい。R4はハ
ロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換も
しくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアル
コキシル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もし
くは未置換のアシルオキシ基、または置換もしくは未置
換のアルコキシルカルボニル基を示す。) かかる共重合体は、有機電子写真感光体を初め、有機EL
素子、有機フォトリフラクティブ素子、有機光センサー
等の各種有機電子デバイス用の電荷輸送材料としても、
好適に利用できる。
【0024】特に、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロッ
クが非相溶性である共重合体は、サブミクロンスケール
のミクロ相分離構造を与え、それを不均一電荷輸送層と
して用いた積層型感光体は、S字型感光体として機能
し、しかも上述したような従来のS字型感光体が持つ課
題を根本的に解決することができる。
【0025】S字型光誘起電位減衰特性発現の機構に関
しては、トラップ説[例えば、北村,小門: 電子写真学会
誌, Vol. 20, p. 60 (1982)]、D .M. Paiらが上記の特
許で唱えている回旋状電導説等幾つかの提案はあるもの
の、未だ確立された説はない。しかしながら、これまで
にS字型感光体として報告されている上記の顔料樹脂分
散型単層感光体、D.M.Pai等の電荷発生層および不均一
電荷輸送層からなる積層感光体、および電荷発生層、不
均一電荷輸送層および均一電荷輸送層からなる積層感光
体においては、少なくとも電荷発生領域に隣接する電荷
輸送領域の電荷輸送路が電気的不活性マトリックス中に
電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一な構造を有
するものであるという共通点を認めることができる。
尚、ここでいう電気的不活性とは、その輸送エネルギー
レベルが、電荷輸送ドメインの輸送エネルギーレベルか
ら大きくかけ離れており、通常の電界強度では、実質的
に輸送電荷が注入されることがなく、輸送電荷にとって
事実上の電気的絶縁状態にあることを意味する。
【0026】本発明の非相溶性の電荷輸送性ブロックと
絶縁性ブロックからなる共重合体を含有する相分離系不
均一電荷輸送層を用いた積層型感光体がなぜS字型光誘
起電位減衰特性を発揮するかは必ずしも明らかではない
が、D. M. Paiらが唱える回旋状電導説によれば、S字型
光誘起電位減衰が起こる過程は、以下のようなものであ
ると推定されている。
【0027】まず、不均一電荷輸送層では、電気的不活
性マトリックス中に分散された電荷輸送性ドメインが互
いに接触し、回旋状の電荷輸送路を形成しているものと
考えられている。この場合、電子写真感光体が帯電され
感光層に高電界が印加されると、露光により電荷発生層
で発生した電荷は電界によるクーロン力により電界に沿
って、電荷発生層から電荷輸送層に注入され、電荷輸送
性ドメイン中を電界方向に移動する。しかし、電荷輸送
性ドメインの末端凸部に到達した所で、電気的不活性マ
トリックスの障壁に出会い、電界により移動方向が規制
されているため、ここで該電荷の移動は一旦停止するこ
とになる。この間の移動距離が感光層の全膜厚に対して
充分小さければ、この間の電位減衰は無視できるものと
なる。殆ど全ての表面電荷に相当する電荷が注入された
後は、該注入電荷近傍での表面に垂直な局部的電界は無
視できるほど小さくなり、停止していた電荷は電界によ
る束縛を逃れ表面に垂直な方向以外の方向に拡散するこ
とが可能となり、回旋状に連なる連結路を辿って最初に
電荷が停止された所よりも深部に達する。この深部にお
いて、先程と同様に電荷は再び十分な高電界に晒されド
メイン内を電界方向に沿って移動し、再び電気的不活性
マトリックスの障壁に出会い、移動を停止する。しか
し、前の電荷の移動で電界強度は低下しているので、よ
り多くの電荷が回旋状電荷輸送路を通り次の絶縁性障壁
にまで達する。かくして、電荷の移動はカスケード的に
起こり、S字型の光誘起電位減衰となる、と云うのがD.
M.Pai等による説明である。尚、顔料樹脂分散型の単層S
字感光体においては、露光光は表面近傍で吸収されそこ
で電荷が発生されるため、該光吸収/電荷発生の領域を
電荷発生層、それに続く残りの領域を電荷輸送層と見な
すことができ、同様に上記説明が当てはまる。
【0028】本発明の非相溶性の電荷輸送性ブロックと
絶縁性ブロックからなる共重合体を含有する相分離系不
均一電荷輸送層を用いた積層型感光体がS字型の光誘起
電位減衰挙動を呈するのも、電荷輸送性ブロックからな
る相が電荷輸送性ドメイン、絶縁性ブロックからなる相
が電気的不活性マトリックスを形成し、上記のような現
象が起きているためと推定されるが、本発明の最大範囲
は、理論により拘束されるものではない。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態によっ
て、さらに詳しく説明する。
【0030】本発明では電荷輸送材料として、前記一般
式 (1)で示される構造を繰り返し単位として有する電
荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックを含むブロック共重
合体又はグラフト共重合体を使用する。
【0031】各ブロックの分子量は2000以上が好ま
しい。
【0032】上記一般式(1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ
独立に置換もしくは未置換のアリール基から選ばれ、該
アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル
基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置
換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、メ
トキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられ
る。
【0033】X1及びX2はそれぞれ独立に置換もしくは未
置換のアリーレン基から選ばれ、具体的には、フェニレ
ン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン
基等、およびこれらのメチル置換体、エチル置換体、メ
トキシ置換体、またはハロゲン置換体等が挙げられる。
【0034】上記一般式(1)中、Lは枝分れもしくは環構
造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原子含
有炭化水素基から選ばれ、機械的強度等の点から、エー
テル結合、エステル結合、カーボネート結合、シロキサ
ン結合等から選ばれる結合基を有する炭素数1〜20の
ヘテロ原子含有炭化水素基が好ましい。その具体例とし
ては、 -O-CO-C2H4-CO-O-, -O-CO-C6H4-CO-O-, -CH2
-O-CH2-, -O-CO-O-,-C3H6Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-C3H6-,
-CO-O-C2H4-O-CO-, -C2H4-CO-O-C2H4-O-CO-C 2H4-, -O-C
O-O-C6H4-C(CH3)2-C6H4-O-CO-O-等が挙げられる。
【0035】以下に、一般式(1)で示される繰り返し単
位の好ましい例を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】前記共重合体を形成する絶縁性ブロックと
しては、如何なるものでも構わない。例えば、ポリビニ
ルアセタール、ポリアルキルメタクリレート、ポリアル
キルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポ
リ酢酸ビニル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリカー
ボネート、ポリエステル、ポリシロキサン等、およびこ
れらのブロック、グラフト、ランダムまたは交互共重合
体等が挙げられるが、機械的強度、可撓性、可視光およ
び赤外光透過性、化学的安定性、絶縁性等の点で、ビニ
ル系モノマー、特に前記一般式(2)で示されるビニルモ
ノマーを重合し得られるものが好ましい。
【0040】上記一般式(2)中、R1〜R3はそれぞれ独立
に水素原子、ハロゲン原子、または置換もしくは未置換
のアルキル基またはアリール基から選ばれる。置換もし
くは未置換のアルキル基またはアリール基の具体的とし
ては、メチル基、エチル基、メトキシ基、クロロメチル
基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0041】R4はハロゲン原子、置換もしくは未置換の
アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、ア
シルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基から選ば
れる。アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオ
キシ基、およびアルコキシカルボニル基の炭素数は1〜1
8個が好ましく、またアリール基としてはフェニル基、
ナフチル基、ピレニル等が挙げられる。置換基として
は、ハロゲン原子、フェニル基、ヒドロキシ基、アミノ
基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル
基等が挙げられる。
【0042】また、絶縁性ブロックとしては、電荷輸送
性等の観点からは、極性の低いもの程好ましい。絶縁性
ブロックの極性は、ビニルモノマーの重合物にあって
は、該ビニルモノマーのビニル基への水素付加体の双極
子モーメントによって、支配され、該双極子モーメント
が2D以下のものが好ましい。より好ましくは1.5D以
下であり、さらに好ましくは1D以下である。
【0043】上記一般式(2)中、R1〜R3が水素原子また
はアルキル基であり、且つR4がアルキル基、アリール
基、アルキル基置換アリール基、またはアリール基置換
アルキル基であるものは、その水素付加体の双極子モー
メントが1D以下であり、特に好ましい。
【0044】また、機械的強度、表面汚染耐性等の点か
らは、絶縁性ブロックのガラス転位温度は30℃以上であ
ることが好ましく、より好ましくは、60℃以上であり、
さらに好ましくは90℃以上である。
【0045】絶縁性ブロックの体積抵抗率は1013Ω・cm
以上が好ましく、より好ましくは10 14Ω・cm以上であ
る。体積抵抗率が1013Ω・cmより低いと、電気的不活性
マトリックスの電気的絶縁性が損なわれ、S字性が失わ
れたり、暗減衰が増加する傾向にある。
【0046】本発明に用いる共重合体中の電荷輸送性ブ
ロックと絶縁性ブロックの組成比は、それらの相分離の
結果として得られる電荷輸送性ドメインと電気的不活性
マトリックスの体積比が10/1〜1/10となる範囲内で任意
に設定される。電荷輸送性ドメインと電気的不活性マト
リックスの体積比のより好ましい範囲は4/1〜1/2であ
る。電荷輸送性ドメインの体積比率が10/1より多いと、
電荷輸送性ドメインが密に接触あるいは電荷輸送性ブロ
ックがマトリックスとなってしまい、実質的に均一な構
造の電荷輸送路を形成し、上記のS字型光誘起電位減衰
特性発現に不可欠な電荷輸送路の不均一構造が消失し、
S字性が失われる傾向にある。他方、電荷輸送性ドメイ
ンの体積比率が1/10より少ないと、電荷輸送路が分断さ
れ、残留電位の増大、応答速度の低下等の障害を招く傾
向にある。
【0047】不均一電荷輸送層の相分離構造としては、
電荷輸送性ブロックがドメインとなり、絶縁性ブロック
がマトリックスとなるものであれば如何なる構造を取っ
ても構わないが、電荷輸送性ブロックからなる相が島、
絶縁性ブロックからなる相が海となる相分離構造を取る
場合に、より良いS字性が得られる。また、スピノーダ
ル分解により得られる変調構造を取る場合にも、好まし
いS字性が得られる。
【0048】本発明に用いる共重合体はブロック共重合
体またはグラフト共重合体であれば、その構成ブロック
の連結形式は如何なるものでも構わない。すなわち、電
荷輸送性ブロックをA、絶縁性ブロックをBとすると、AB
型、ABA型、BAB型、(AB)n型、(AB)nA型、およびB(AB)n
型のブロック共重合体、電荷輸送性ブロックを主鎖、絶
縁性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体、絶縁性ブ
ロックを主鎖、電荷輸送性ブロックを側鎖とするグラフ
ト共重合体、もしくはABA型等のブロック共重合体の側
鎖にAおよび/またはBをグラフト化したブロック-グラフ
ト共重合体等が挙げられる。
【0049】本発明に用いる共重合体の合成方法として
は、" 第4版実験化学講座28 高分子合成(丸善、1992)"
、"マクロモノマーの化学と工業(アイピーシー、199
0)" 、"高分子の相溶化と評価技術(技術情報協会、199
2)" 、 "高分子新素材One Point12 ポリマーアロイ(共
立、1988)" 、"Angew. Macromol. Chem., 143, pp.1-9
(1986)"、"日本接着学会誌,26, pp.112-118 (1990)"、"
Macromolecules, 28, pp.4893-4898 (1995)"、"J. Am.
Chem. Soc., 111, pp.7641-7643 (1989)"、"特開平6-830
77号公報" 等の文献に記載されているブロック共重合体
またはグラフト共重合体を与え得る任意の適当な合成法
を用いることができる。
【0050】例えば、予め電荷輸送性重合体と絶縁性重
合体を合成し、それら重合体同士を反応結合させること
によって所望とするブロック共重合体が得られる。ま
た、電荷輸送性ブロックを形成するモノマーと絶縁性ブ
ロックを形成するモノマーの重合形式が同じであり且つ
両者の反応性が大きく異なる場合には、単にそれらモノ
マーの混合物を重合させることで、まず、反応性の高い
方のモノマーが重合し、該モノマーが消費された後、反
応性の低い方のモノマーが重合し、所望とするブロック
共重合体が得られる。また、予め一方のモノマーの重合
物を合成し、該重合物の末端および/または側鎖にア
ゾ、過酸エステル、パーオキシ、ジチオカルバマート、
アルカリ金属アルコラート、アルカリ金属アルキル等の
重合開始能を有する基を含む重合開始剤を導入し、該重
合開始剤により、他方のモノマーを重合させることによ
っても、所望とするブロック共重合体またはグラフト共
重合体が得られる。この方法によれば、重縮合または重
付加系重合体と付加重合または開環重合系重合体からな
るブロック共重合体またはグラフト共重合体を容易に得
ることができる。また、分子中にアゾ、過酸エステル、
パーオキシ等の重合開始能を有する基を複数含む化合物
を用い、まず、一部の重合開始基から、一方のモノマー
を重合させ、次に残りの重合開始基から、他方のモノマ
ーを重合させることによっても所望とするブロック共重
合体が得られる。また、カチオンリビング重合法、アニ
オンリビング重合法、ラジカルリビング重合法等のリビ
ング重合法により、各モノマーを逐次重合させることに
よっても所望とするブロック共重合体を得ることができ
る。リビング重合法は、各ブロックの分子量を容易に制
御でき、且つ分子量分布の狭い重合体を与え得ると云う
利点を有する。また、イモータル重合法、Iniferter法
等により、各モノマーを逐次重合させることによっても
所望とするブロック共重合体を得ることができる。さら
にまた、予め一方のモノマーの重合物の末端に他方のモ
ノマーを導入したマクロモノマーを合成し、該マクロモ
ノマーを重合することによって所望とするグラフト共重
合体を得ることができる。
【0051】本発明の共重合体の分子量は如何なる値で
も構わないが、成膜性、相分離性等の高分子特性を発揮
するには、2000以上であることが望まれる。好ましく
は、1万以上であり、より好ましくは、2万以上であ
る。分子量の上限に関しては電気的特性上の制限は特に
ないが、湿式塗布法によって成膜を行う場合には、適当
な溶液粘度を与える範囲内にあることが必要となり、一
般的には、5000000以下であることが好ましい。
【0052】ポリマーブレンド、ポリマーアロイの分野
でよく知られているように、一般に、異なる高分子は互
いに非相溶であり、それらの混合物およびブロック共重
合体またはグラフト共重合体は相分離状態を取る。一般
に、単なる混合物、すなわち、ポリマーブレンドではそ
の相分離のスケールは数μm以上のマクロなものとなる
(マクロ相分離)。此れに対し、各成分が共有結合で連結
されたブロック共重合体およびグラフト共重合体では、
サブミクロン以下の微細なドメインからなる相分離状態
を与える(ミクロ相分離)。ブロック共重合体およびグラ
フト共重合体における相分離のスケールは、一般的に各
ブロックの平均長と同一次元であり、分子量にほぼ比例
することが知られている。
【0053】本発明に用いるブロック共重合体またはグ
ラフト共重合体も、一般的にミクロ相分離状態を取る。
しかしながら、ブロック共重合体またはグラフト共重合
体は、必ずともミクロ相分離状態を取るものばかりでは
なく、各ブロックの組合せによっては、相溶性を示し、
相分離を起こさないものも在る。
【0054】一般的に、相溶性は、分子量が小さくなる
程、また、互いの溶解度パラメーター差が小さくなる
程、高くなる。
【0055】相分離状態は構成ブロックの種類および分
子量により、熱力学的に最も安定な構造が存在し、一般
的には、Aブロック、Bブロックからなる共重合体では、
連結形式には依らず、A/B組成比にのみ依存し、A/B比の
増加に伴い、Aが球状ドメインでBがマトリックス、Aが
棒状ドメインでBがマトリックス、A/B交互層、Bが球状
ドメインでAがマトリックス、Bが棒状ドメインでAがマ
トリックスへと系統的に変化する。しかしながら、湿式
塗布法により、成膜する場合には、用いる溶媒および乾
燥速度等により、相分離状態を任意に制御することがで
きる。例えば、A/B比が大きく熱力学的にはB球Aマトリ
ックスを取る場合でも、塗布溶媒として、Bの良溶媒で
あり且つAの貧溶媒である溶媒を選択すれば、A球Bマト
リックス構造を得ることができる。また、A、B両者の良
溶媒を用い、急速に溶媒を除去すると、スピノーダル分
解状態で凍結した相分離構造(変調構造)を得ることがで
ある。また、A/B比が大きく熱力学的にはB球Aマトリッ
クスを取る共重合体に、Bのみと相溶性のある重合体を
添加すると、Aが球、BおよびBのみと相溶性のある重合
体がマトリックスとなる相分離構造を得ることもでき
る。
【0056】本発明で使用する共重合体は高い電荷輸送
能と優れた機械的特性等を兼ね備えているため、種々の
有機電子デバイスに好適に用いられる。特に、機能分離
型電子写真感光体に好適に用いられる。例えば、高い電
荷輸送性と成膜性、顔料への吸着性および接着性を兼ね
備えたものは、電荷発生能を有する顔料と併用すること
で、優れた単層型感光体、および積層型感光体用の電荷
発生層を与える。また、高い電荷輸送性と機械的強度、
化学的強度および低表面エネルギーを兼ね備えたもの
は、電荷輸送層または表面保護層用材料として有効であ
る。特に、絶縁性ブロックにヒドロキシル基、アルコキ
シシリル基等の架橋サイトを導入したものは、それらに
より架橋硬化することで、非常に強靭な電荷輸送性膜を
与え、表面保護層として、特に好ましい。さらにまた、
電荷輸送性ブロックがドメイン、絶縁性ブロックがマト
リックスとなるミクロ相分離状態を与えるものは、上述
したように、機能分離S字型感光体用の不均一電荷輸送
層として、好適に用いられる。
【0057】S字化電荷輸送層において、回旋状電荷輸
送経路の形成は、電荷輸送性ドメイン同士の確率的な接
触に依存する。その接触の確率が多すぎると、電荷輸送
経路は回旋状とならずS字性が低下し、またその接触の
確率が少なすぎると輸送層全体を貫き連続した電荷輸送
経路が形成できなくなり、残留電位の増大を招く。電荷
輸送性ドメインの互いの接触は必ずしも直接接触してい
る必要はなく、電荷輸送性ドメイン間の非常に薄い絶縁
層は、電荷がそのギャップを飛び越えることができ、且
つそこでの捕獲が無視できるならば、その存在は許容さ
れる。ここでいう回旋状電荷輸送路とは、電荷の移動が
膜厚方向に対して1回以上逆行するように形成されてい
る電荷輸送路のことである。
【0058】本発明に用いる共重合体は、両ブロックが
非相溶な時、S字化電荷輸送層として、有効に機能す
る。
【0059】図3ないし図6は、本発明のS字型電子写真
用感光体の断面図である。図3においては、導電性支持
体1上に、電荷発生層2が設けられ、さらにその上にS字
化と電荷輸送を担う不均一電荷輸送層3が設けられてい
る。図4においては、図3の構造の上にさらに主な電荷
輸送を担う均一電荷輸送層4が設けられている。図5にお
いては、導電性支持体1上に不均一電荷輸送層3が設けら
れ、その上に電荷発生層2が設けられている。図6にお
いては、導電性支持体1上に均一電荷輸送層4が設けら
れ、その上に不均一電荷輸送層3が設けられ、さらにそ
の上に電荷発生層2 が設けられている。
【0060】これらの電子写真感光体は、さらに所望に
より下引き層、保護層、および/または乱反射層等を含
むことができる。
【0061】前記のように、電荷発生層で発生した電荷
が不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの障害
に出会い最初に一時停止するまでの間の移動距離が感光
層の全膜厚に対して充分小さければ、その間の電位減衰
は無視できるものとなり、より理想的なS字性を示す。
つまり、電荷発生層とS字化のための不均一電荷輸送層
は近接している方がより良いS字性を与える。ただし、
電荷の注入や電荷の発生を助ける等の目的のために電荷
発生層と不均一電荷輸送層の間に適当な中間層を設ける
こともできる。また、電荷発生層と不均一電荷輸送層の
間に均一電荷輸送層を挿入してもよい。
【0062】また、本発明で用いるS字化電荷輸送層の
膜厚は0.1〜50μmが適当であり、好ましくは0.2〜15μ
m、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲に設定される。0.
1μmより薄いとS字性が低下する傾向にある。膜厚の上
限に関しては、用いるS字化電荷輸送層の電荷輸送能に
より制限され、応答速度、残留電位等が許容される範囲
内で設定される。
【0063】電荷輸送性ドメインの平均粒子径は0.005
〜3μmが好ましく、より好ましくは0.01 〜 1μm、特に
好ましくは0.02〜0.5μmの範囲である。電荷輸送性ドメ
インの平均粒子径が3μmより大きいと、好ましい膜厚
の範囲内でのS字化に必要な電荷輸送路の不均一構造の
形成が確率的に低くなり、S字性が低下することにな
る。他方、電荷輸送性ドメインの平均粒子径が0.005μ
mより小さい場合には、電荷輸送路が均一な構造に近付
き、S字性が低下することになる。
【0064】電荷輸送性ドメインの電荷移動度は、電子
写真感光体の応答速度を支配する一因子であり、移動度
が高いほどのものほど、高速の電子写真装置に好適に用
いられる。本発明の電子写真装置においては、少なくと
も現像に用いる電界強度域において、10-6cm2/Vs以上で
あることが好ましい。より好ましくは5×10-6cm2/Vs以
上である。尚、電荷輸送性ドメインの電荷移動度を、直
接測定することは困難であり、電荷輸送性ブロックと同
一構造の電荷輸送性高分子の電荷移動度で代用すること
ができる。移動度の測定は、当業界における常法であ
る、Time-of-Flight法により行うことができる。
【0065】また、S字化電荷輸送層中に、主たる輸送
電荷と逆極性の電荷のみを輸送し得る化合物を添加する
ことにより、残留電位の低下、繰り返し安定性の向上等
の効果を得ることもできる。
【0066】また、S字化電荷輸送層中に、電荷輸送性
高分子および/または絶縁性高分子を添加することもで
きる。電荷輸送性高分子を添加する場合、本発明のブロ
ックまたはグラフト共重合体の電荷輸送性ブロックと相
溶性を有することが好ましい。また絶縁性高分子を添加
する場合には、本発明のブロックまたはグラフト共重合
体の絶縁性ブロックと相溶性を有することが好ましい。
【0067】不均一電荷輸送層の塗布方法としては、ブ
レードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、
スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコ
ーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテン
コーティング法等の通常の方法を用いることができる。
尚、塗布液は均一溶液またはミセル溶液とすることがで
きる。
【0068】本発明の電子写真感光体に用いる導電性支
持体としては、当業界でそのような支持体として利用さ
れうる任意の種類から選択でき、不透明または実質的に
透明であることができる。その例としては、アルミニウ
ム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属類、及び、アルミ
ニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、
金、白金、ジルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化イ
ンジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラス
およびセラミックス等、あるいは導電性付与剤を塗布ま
たは含浸させた紙、プラスチック、ガラスおよびセラミ
ックス等が挙げられる。これらの導電性支持体は、ドラ
ム状、シート状、プレート状等、適宜の形状のものとし
て使用することができる。さらに必要に応じて導電性支
持体の表面には、各種の処理を行うことができる。例え
ば、表面の酸化処理や薬品処理、および、着色処理等、
または、砂目立て、ホーニング等の機械的粗面化処理等
を行うことができる。支持体表面の酸化処理や機械的粗
面化処理は支持体表面を粗面化するのみならず、その上
に塗布される層の表面形状をも制御し、露光用光源とし
てレーザー等の可干渉光源を用いた場合に問題となる支
持体表面および/または積層界面での正反射による干渉
縞の発生を防止すると云う効果を発揮する。
【0069】また、導電性支持体と光導電層の間に、任
意的に設けられる一層または複数層の下引き層は、感光
層の帯電時において導電性支持体から感光層への電荷の
注入を阻止すると共に、感光層を導電性支持体に対して
一体的に接着保持せしめる接着層としての作用、あるい
は場合によっては干渉縞の原因となる光の正反射を防止
する作用等を示す。
【0070】上記下引き層としては、公知のものを用い
ることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹
脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹
脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹
脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニル
アセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポ
リエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニト
ロセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等
の樹脂およびこれらの共重合体、ジルコニウムアルコキ
シド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップ
リング剤等の硬化性金属有機化合物を、単独でまたは2
種以上を混合して用いることができる。また、帯電極性
と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も使用できる。
【0071】下引き層の膜厚は、0.01〜10μmが適当で
あり、好ましくは0.05〜5μmの範囲である。塗布方法と
しては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーテ
ィング法、スプレーコティング法、浸漬コーティング
法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング
法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いるこ
とができる。
【0072】本発明の積層型電子写真用感光体における
電荷発生層は、J字型、S字型を問わず積層感光体に電荷
発生層として用いられ得る任意のものから選択すること
ができる。例えば、非晶質セレン、セレン-テルル合
金、セレン-ヒ素合金、セレン化合物およびセレン合
金、酸化亜鉛、酸化チタン、a(アモルファス)-Si、a-
SiC等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、スク
アリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ
系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩系、チ
アピリリウム塩系等の有機顔料および染料等が挙げられ
る。また、これらの電荷発生材料は、単独であるいは2
種以上混合して用いることができる。
【0073】フタロシアニン系化合物は、デジタル式の
電子写真装置に光源として現在広く使用されているLED
およびレーザーダイオードの発振波長である600〜850nm
に優れた光感度を有するため、本発明における電荷発生
材料として特に好ましい。フタロシアニン系化合物とし
ては、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、及
びそれらの誘導体が利用できる。金属フタロシアニンの
中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、S
n、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、またこ
れら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アル
キル化物、アルコキシ化物等も使用できる。具体的に
は、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシ
アニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジル
フタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジ
クロロ錫フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロシアニ
ン等を挙げることができる。また、上記化合物のフタロ
シアニン環に任意の置換基が導入された置換フタロシア
ニン類も使用することができる。さらにまた、上記化合
物のフタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で
置換されたアザフタロシアニン類も有効である。これら
フタロシアニン系化合物の形態としては、アルモルファ
スまたは全ての結晶形のものが使用可能である。
【0074】これ等フタロシアニン系化合物の中でも、
無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロ
ロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロ
シアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優
れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料
として特に好ましい。
【0075】また、殆どのフタロシアニン系化合物が正
孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有してい
るのに対し、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸引性基
を有するフタロシアニン類およびアザフタロシアニン類
は電子を主たる輸送電荷とするn型半導体であるため、
電荷発生材料としてこれらのフタロシアニン系化合物を
含み、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層を順次
積層してなるS字型感光体は、それを負帯電で使用した
場合、高感度で且つ導電性支持体からの正電荷の注入が
抑えられ、暗減衰が小さく帯電性が高いと云う良好な電
子写真特性を示す。
【0076】また、六方晶セレン、アントラキノン系顔
料およびペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、
電荷発生材料として好ましく使用できる。レーザー光の
ビーム径は発振波長が短くなるほど小径化できるため、
更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の
検討がなされているが、これらの化合物は、紫外域から
可視域に光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷
発生材料として特に好ましく用いることができる。
【0077】電荷発生層は、前記電荷発生材料を真空蒸
着法により直接成膜する、または、前記電荷発生材料を
結着樹脂中に分散または溶解することにより作製でき
る。
【0078】電荷発生層に結着樹脂を用いる場合、その
結着樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリビ
ニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分
変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル
樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、フ
ェノール樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂等が用いら
れる。これらの結着樹脂はブロック、ランダムまたは交
互共重合体であることができ、また、これらの結着樹脂
は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。ま
た、前記したように、本発明の電荷輸送性ブロックまた
はグラフト共重合体も電荷発生層用の結着樹脂として有
効である。
【0079】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(体積
比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。より好ましく
は、3:1〜1:1の範囲に設定される。電荷発生材料の結着
樹脂に対する配合比が10:1より多いと、暗減衰が増大
し、また湿式塗布法では均質な膜を得ることが困難にな
る。また、1:10より少ないと光感度の低下、残留電位の
増大等の障害が起きる。
【0080】また、本発明で用いる電荷発生層の膜厚は
一般的には、0.05〜5μmが適当であり、好ましくは0.1
〜2.0μmの範囲に設定される。塗布方法としては、ブレ
ードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ス
プレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコー
ティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコ
ーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0081】均一電荷輸送層を併設する場合、その均一
電荷輸送層は、当業界でJ字型積層感光体に電荷輸送層
として用いられている任意のものから選択できる。例え
ば、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、ヒドラゾン
系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合物
等を、単独でまたは2種以上を混合して、絶縁性樹脂(例
えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステ
ル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート等)中に
均一分子分散した固溶膜を用いることができる。あるい
は、それ自身電荷輸送能を有する高分子化合物等を用い
ることができる。また、セレン、a-Si、a-SiC等の電荷
輸送能を有する無機物質を用いることもできる。上記電
荷輸送性高分子化合物としては、ポリビニカルバゾール
等の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、
特開平5-232727号公報等に開示されているような電荷輸
送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物、およびポリ
シラン等を挙げることができる。
【0082】本発明のS字型感光体における均一電荷輸
送層としては、特に製造上、電荷輸送性高分子化合物を
用いることが好ましい。すなわち、不均一電荷輸送層と
均一電荷輸送層を積層成膜する場合、均一電荷輸送層に
電荷輸送性低分子化合物を用いると、電荷輸送性低分子
化合物が不均一電荷輸送層中に混入してしまい、不均一
電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの主たる電荷に
対する絶縁性が低下することによりS字性が損なわれた
り、あるいは不均一電荷輸送層中に混入した電荷輸送性
低分子が不均一電荷輸送層中で電荷トラップとなり残留
電位の増大、輸送能の低下及び光感度の低下等の障害が
発生する。この問題は特に、湿式塗布法により、各層を
成膜する場合に顕著になる。これらの問題は、上層の塗
布溶剤として下層を溶解および膨潤し難いものを選択す
る、または、不均一電荷輸送層を架橋硬化性のものと
し、上層塗布溶剤による溶解および膨潤が起こらないよ
うにする等により、回避することが可能である。ところ
が、上述したように高分子同士は相溶することなく相分
離を起こすことが一般的であることが知られており、均
一電荷輸送層として、電荷輸送性高分子化合物を用いた
場合、不均一電荷輸送層樹脂と相溶することなく相分離
するため、上記のような混入の問題は殆ど発生せず、材
料および製造法の選択に当たっての制約が解消されると
いう利点を有する。
【0083】さらに均一電荷輸送層用の電荷輸送性高分
子化合物としては、上記一般式(1)で表される構造を繰
り返し単位として含有する電荷輸送性樹脂が、高い電荷
輸送能を有し、機械的特性にも優れているので特に好ま
しい。特に、不均一電荷輸送層に用いたブロックまたは
グラフト共重合体の電荷輸送性ブロックと同一構造の電
荷輸送性高分子を均一電荷輸送層に用いると、不均一電
荷輸送層から均一電荷輸送層への電荷の注入が非常にス
ムーズになり、特に好ましい。
【0084】尚、均一電荷輸送層中に電荷輸送性マトリ
ックスに囲まれるような電気的不活性な領域が存在して
もよい。例えば表面摩擦力の低減、磨耗の低減、または
表面への異物付着の低減等を目的に低表面エネルギーの
絶縁性粒子等を含有させることができる。また、均一電
荷輸送層には電荷輸送能の向上等を目的に、電荷輸送性
微粒子等を添加することもできる。
【0085】また、本発明の共重合体の中で、電荷輸送
生ブロックと絶縁性ブロックが相溶性であるものは、均
一電荷輸送層として有効に利用できる。さらに、上述し
たように均一電荷輸送層中には電荷輸送性マトリックス
に囲まれるような電気的不活性な領域が存在してもよい
ため、本発明の共重合体の中で、電荷輸送生ブロックが
マトリックス、絶縁性ブロックがドメインとなるミクロ
相分離状態を取るものも、均一電荷輸送層として用いる
ことができる。
【0086】均一電荷輸送層が最表層となる構成におい
ては、機械的強度の観点から、均一電荷輸送層の材料と
して架橋硬化性材料を用いることが好ましい。
【0087】本発明で用いる均一電荷輸送層の膜厚は50
μm以下、好ましくは30μm以下に設定される。塗布方法
としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコー
ティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティング
法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング
法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いるこ
とができる。また、セレン等の気相成膜可能なものは、
真空蒸着法等により直接成膜することもできる。
【0088】本発明において、不均一電荷輸送層および
均一電荷輸送層を含む電荷輸送層全体の合計膜厚は、5
〜50μmが適当であり、好ましくは10〜40μmの範囲に設
定される。
【0089】電荷輸送層が電荷発生層と露光光源の間に
存在する場合、実効の光感度の低下を防ぐ上で、電荷輸
送層は露光波長の光に対し事実上透明であることが望ま
しい。好ましくは、電荷輸送層における露光に用いる光
の透過率は50%以上である。より好ましくは70%以上であ
り、さらに好ましくは90%以上である。しかしながら、
低感度での使用が望まれる場合には、露光波長の光に対
し吸収のある物質を添加し、実効的な光感度を調整する
こともできる。
【0090】本発明において、感光層の上に必要に応じ
て設けてもよい保護層は、帯電部材から発生するオゾン
や酸化性ガス等、および紫外光等の化学的ストレス、あ
るいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起
因する機械的ストレスから感光層を保護し、感光層の実
質の寿命を改善するために有効である。特に、薄層の電
荷発生層を上層に用いる層構成において、効果が顕著で
ある。
【0091】保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中
に含有させて形成される。導電性材料としては、ジメチ
ルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、
酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金属
酸化物等の材料を用いることができるが、これらに限定
されるものではない。結着樹脂としては、ポリアミド、
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ
スチレン、ポリアクリルアミド、シリコーン樹脂、メラ
ミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹
脂を用いることができる。また、アモルファスカーボン
等の半導電性無機膜も保護層として用いることができ
る。
【0092】これらの抵抗制御型の保護層の電気抵抗は
109 〜1014Ω・cmの範囲内にあることが必要である。電
気抵抗が1014Ω・cmを超えると残留電位が増加し、他
方、10 9Ω・cm未満になると沿面方向での電荷漏洩が無
視できなくなり、解像度の低下が生じる。
【0093】保護層の膜厚は0.5〜20μmが適当であり、
好ましくは1〜10μmの範囲に設定される。
【0094】また、保護層を設けた場合、必要に応じ
て、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電
荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができ
る。このブロッキング層としては、保護層の場合と同様
に公知のものを用いることができる。
【0095】本発明の電子写真感光体においては、電子
写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは、
光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、各層また
は最上層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加
することができる。
【0096】酸化防止剤としては、公知のものを用いる
ことができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダー
ドアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、
スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導
体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0097】光安定剤としては、公知のものを用いるこ
とができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾー
ル、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の
誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは
電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子
供与性化合物等が挙げられる。
【0098】さらに、表面磨耗の低減、転写性の向上、
クリーニング性の向上等を目的として、最表面層にフッ
素樹脂等の低表面エネルギーの絶縁性粒子を分散させて
もよい。
【0099】感光体の光誘起電位減衰特性のS字性の尺
度には、例えば、帯電電位を50%減衰させるのに要する
露光量E50% と10%減衰させるのに要する露光量E10%
の比(E5 0%/E10% )を用いることができる。理想的なJ字
型感光体で電位減衰が露光量に比例している場合、E50%
/E10% 値は5となる。一般的なJ字型感光体では、電界強
度の低下に伴い、電荷発生効率および/または電荷輸送
能が低下するため、E50%/E1 0%値は5を越える値を示す。
一方、S字型の究極である、ある露光量までは全く電位
減衰せず、その露光量で一気に残留電位レベルまで電位
減衰する階段状の光誘起電位減衰曲線では、E50%/E10%
値は1となる。したがって、S字型とはE50%/E10%値が1以
上5未満の値を示すものとして規定される。上述のよう
な好ましいデジタル特性を発揮するには、E50% /E10%
値は3未満の値であることが好ましく、より好ましくは2
未満の値である。但し、階調性を高める等の理由で、ア
ナログ特性を併用する場合には、E50% /E10% 値は、お
よそ1.5〜4の範囲内で好適な結果を与える。
【0100】本発明の電子写真感光体を搭載する電子写
真装置としては、電子写真法を用いるものであれば如何
なるものでも構わないが、特にデジタル処理された画像
信号に基づき露光を行う電子写真装置が好ましい。デジ
タル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装
置とは、レーザーまたはLED等の光源を用い、2値化また
はパルス幅変調や強度変調を行い多値化された光により
露光を行う電子写真装置であり、例としてLEDプリンタ
ー、レーザープリンター、レーザー露光式デジタル複写
機などを挙げることができる。
【0101】また、現像後の感光体の初期化あるいは電
子写真特性の安定化等の目的で、画像形成用の露光光源
とは別に、光源を併用することができ、その光源の発光
域としては、不均一電荷輸送層に吸収されるものであっ
ても吸収されないものであっても構わないが、少なくと
も電荷発生層まで光が届く方が好ましい。
【0102】本発明の電子写真感光体を登載する電子写
真装置の好ましい一例を図7に模式的に示す。この装置
はレーザープリンターであり、感光体ドラム11の周りに
前露光用光源(赤色LED)12、帯電用スコロトロン13、露
光用レーザー光学系14、現像器15、転写用コロトロン16
およびクリーニングブレード17がプロセスの順序に順次
配置されている。露光用レーザー光学系14は、発振波長
780nmの露光用レーザーダイオードを備えており、デジ
タル処理された画像信号に基づき発光する。発光したレ
ーザー光14aはポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラー
により走査されながら感光体上を露光するように構成さ
れている。尚、18は用紙を示す。
【0103】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定され
るものではなく、当業者は高分子合成化学および電子写
真技術の公知の知見から、以下の実施例に変更を加える
ことが可能である。合成例1 反応性重合開始剤 4,4'-アゾビス(4-シアノ吉
草酸クロリド)の合成 塩化チオニル140mlを氷冷し、4,4'-アゾビス(4-シアノ
吉草酸)48gを徐々に加えた。混合物を30℃で6時間加熱
し、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去した。残留物を
クロロホルムより再結晶化して22gの4,4'-アゾビス(4-
シアノ吉草酸クロリド)結晶を得た。合成例2 N,N’-ビス(p,m-ジメチルフェニル)-N,N’-ビス[p-(2-
メトキシカルボニルエチル)フェニル]-[p-ターフェニ
ル]-4,4"-ジアミン 100g、エチレングリコール 200gお
よびテトラブトキシチタン 2gを、窒素気流下で4時間加
熱還流した。その後、反応容器内の圧力を徐々に0.5mmH
gまで減圧しながら過剰のエチレングリコールを留去し
つつ230℃に加熱し、そのまま、4時間反応を続けた。
その後、室温まで冷却し、反応液に塩化メチレン を加
え不溶分を溶解させ、メタノールに再沈殿することによ
り、両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマー93gを
得た。得られたプレポリマーの重量平均分子量は5.4×1
04であった。
【0104】上記ポリマー40gとトリエチルアミン0.5g
をジクロロメタン120mlに溶解し、0℃以下に冷却した。
ここに、合成例1で得られた4,4'-アゾビス(4-シアノ吉
草酸クロリド)5.6gをジクロロメタン20mlに溶解した溶
液を滴下した。混合物を室温で1時間反応させた後に30
℃で5時間反応させた。その後溶媒を留去し、反応生成
物にテトラヒドロフランを加えて溶解させた溶液をメタ
ノールに滴下し、1時間撹拌した後に沈降した固体を濾
別した。この再沈殿操作をさらに2回繰り返した。残っ
た化合物を乾燥して両末端にアゾ型重合開始剤を有する
ポリマー34gを得た。
【0105】上記重合開始剤含有ポリマー6gとn-ドデシ
ルメタクリレート8gをトルエン120mlに溶解し、窒素置
換した後に混合物を65℃で70時間加熱した。溶媒を除去
し、反応生成物にテトラヒドロフランを加え、得られた
溶液をメタノールに滴下し、1時間撹拌した後に沈降し
た固体を濾別した。得られた固体をn-ヘキサンで十分に
洗浄し、副生するポリ(n-ドデシルメタクリレート)を除
去し、トリブロック共重合体10gを得た。得られた共重
合体の重量平均分子量は7.8×104であり、トリアリール
アミン構造を含む電荷輸送性ブロックとポリ(n-ドデシ
ルメタクリレート)からなる絶縁性ブロックの重量組成
比はおよそ3:2と計算される。ここで得られたブロック
共重合体をブロック共重合体1とした。合成例3 合成例2の両末端にアゾ型重合開始剤を有するポリマー
6gをトルエン120mlに溶解し、スチレン24gとメタクリル
酸1gを加え、窒素置換した後に混合物を70℃で100時間
加熱した。これをメタノールに滴下し、沈降した固体を
濾別した。濾液を分析したところ、スチレン、メタクリ
ル酸、およびスチレン-メタクリル酸共重合体が検出さ
れた。次に、濾別した固体13gを、細かく粉砕し、キシ
レン2リットル中に入れ、24時間撹拌し、不溶分と可溶
分に分別した。1H-NMRスペクトルとGPC分析の結果、可
溶分は未反応の電荷輸送性高分子と電荷輸送性ブロック
に富むブロック共重合体であり、不溶分が目的とするブ
ロック共重合体であった。得られた共重合体の重量平均
分子量は18×104であった。
【0106】1H-NMRスペクトルの解析から、目的とする
ブロック共重合体の電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロッ
クの重量組成比はおよそ35:65であった。また、絶縁性
ブロック中のスチレン単位とメタクリル酸単位の重量比
はおよそ90:10であった。
【0107】ここで、得られたブロック共重合体をブロ
ック共重合体2とした。合成例4 合成例2のN,N’-ビス(p,m-ジメチルフェニル)-N,N’-
ビス[p-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル]-[p-タ
ーフェニル]-4,4"-ジアミンを N,N’-ジフェニル-N,N’
-ビス[p-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル]-[p-
ターフェニル]-4,4"-ジアミンに変えた以外は合成例2と
同様にして、ブロック共重合体を合成した。トリフェニ
ルアミン構造を含む電荷輸送性プレポリマーの重量平均
分子量は4.1×103、最終的に得られたトリブロック共重
合体の重量平均分子量は7.5×103であり、両ブロックの
組成比はおよそ3:2と計算される。ここで、得られたブ
ロック共重合体をブロック共重合体3とした。合成例5 合成例2で得られた重合開始剤導入プレポリマー5gとイ
ソブチルアクリレート10gをテトラヒドロフラン50mlに
溶解し、窒素置換した後に混合物を60℃で65時間加熱し
た。この溶液をメタノールに滴下し、1時間撹拌した後
に沈降した固体を濾別した。得られた固体をn-ヘキサン
で十分に洗浄し、目的とするトリブロック共重合体8gを
得た。得られた共重合体の重量平均分子量は4.0×104
あり、トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性ブロッ
クとポリ(イソブチルアクリレート)からなる絶縁性ブロ
ックの組成比はおよそ1:1と計算される。ここで、得ら
れたブロック共重合体をブロック共重合体4とした。調整例1 合成例2のN,N’-ビス(p,m-ジメチルフェニル)-N,N’-ビ
ス[p-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル]-[p-ター
フェニル]-4,4"-ジアミンをN,N’-ビス(p,m-ジメチルフ
ェニル)-N,N’-ビス[p-(2-メトキシカルボニルエチル)
フェニル]-[3,3'-ジメチル-1,1’-ビフェニル]-4,4’-
ジアミンに変えた以外は合成例2と同様にしてブロック
共重合体を合成した。トリフェニルアミン構造を含む電
荷輸送性プレポリマーの重量平均分子量は3.9×103、最
終的に得られたトリブロック共重合体の重量平均分子量
は6.5×103であり、両ブロックの組成比はおよそ3:2と
計算される。ここで、得られたブロック共重合体をブロ
ック共重合体5とした。調整例2 合成例2のN,N’-ビス(p,m-ジメチルフェニル)-N,N’-ビ
ス[p-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル]-[p-ター
フェニル]-4,4"-ジアミンをN,N’-ビス(p,m-ジメチルフ
ェニル)-N,N’-ビス[p-(2-メトキシカルボニルエチル)
フェニル]-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミンに変え
た以外は合成例2と同様にしてブロック共重合体を合成
した。トリフェニルアミン構造を含む電荷輸送性プレポ
リマーの重量平均分子量は4.6×103、最終的に得られた
トリブロック共重合体の重量平均分子量は8.0×103であ
り、両ブロックの組成比はおよそ3:2と計算される。こ
こで、得られたブロック共重合体をブロック共重合体6
とした。実施例1 CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なく
とも、ブラッグ角度(2ι±0.2 )、8.3 、13.7 および2
8.3 に強い回折ピークを有するジクロロ錫フタロシアニ
ン結晶4重量部をポリビニルブチラール樹脂(商品名:エ
スレックスBM-S、積水化学社製)2重量部およびクロロベ
ンゼン100重量部と混合し、ガラスビーズと共にペイン
トシェーク法で2時間処理して分散した後、得られた分
散液を浸漬コーティング法で、アルミニウム基板上に塗
布し、115℃において10分間加熱乾燥して、膜厚0.5μm
の電荷発生層を形成した。
【0108】次に、合成例2で得られたブロック共重合
体1の10重量部をシクロヘキサノン90重量部に溶解させ
た溶液を、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法にて
塗布した後、115℃で10分間加熱乾燥させて、膜厚3μm
のS字化電荷輸送層を形成した。このS字化電荷輸送層を
ルテニウム酸染色法による透過型電子顕微鏡で観察した
ところ、変調構造と思われる相分離構造が観測された。
また、相分離構造のスケールはおよそ0.02μm、電荷輸
送性相の体積比率はおよそ60%であった。また、本電荷
輸送性ブロックと同一構造の電荷輸送性高分子の電荷移
動度は、5V/μmの電界強度下で、6×10-5cm2/Vsであっ
た。
【0109】次に、高分子電荷輸送材料である分子量8
万の下記構造式で示される繰り返し単位よりなる化合物
15重量部をクロロベンゼン85重量部に溶解した塗布液
を、上記S字化電荷輸送上に浸漬コーティング法で塗布
し、135℃において1時間加熱乾燥させて、膜厚20μmの
均一電荷輸送層を形成し、図4に示す層構成の電子写真
用感光体を作製した。
【0110】
【化5】
【0111】このようにして得られた電子写真用感光体
に対し、一部改造を加えた静電複写紙試験装置(エレク
トロスタティックアナライザーEPA-8100、川口電機製作
所社製)を用いて、常温常湿(20℃、40%RH)の環境下、電
子写真特性の評価を行った。コロナ放電電圧を調整し、
感光体表面を-750Vに帯電させた後、干渉フィルターを
通し750nmに単色化したハロゲンランプ光を感光体表面
上で1μW/cm2 の光強度になるように調整し、7秒間照射
したところ、E50% /E10% 値が2.2の図2のようなS字型の
光誘起電位減衰を示した。また、E50% 値は3μJ/cm2
残留電位は20Vであった。実施例2 アルミニウム基板上に、ジルコニウムアルコキシド化合
物(商品名:オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)10
重量部およびシラン化合物(商品名:A1110、日本ユニカ
ー社製)1重量部とイソプロパノール40重量部およびn-ブ
タノール20重量部からなる溶液を浸漬コーティング法で
塗布し、150℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.1μm
の下引き層を形成した。次にCuKαを線源とするX線回折
スペクトルにおいて少なくともブラッグ角度(2ι±0.2
)、7.4 、16.6 、25.5 、および28.3 に強い回折ピー
クを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶4重量
部を、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(商品名:UCARソ
リューションビニル樹脂VMCH、ユニオンカーバイド社
製)2重量部、キシレン67重量部、および酢酸ブチル33重
量部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーク
法で2時間処理して分散した後、得られた塗布液を浸漬
コーティング法で上記下引き層上に塗布し、100℃にお
いて10分間加熱乾燥し、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成
した。
【0112】次に、実施例1と同様にして、合成例2で得
られたブロック共重合体1の10重量部をシクロヘキサノ
ン90重量部に溶解させた溶液を、上記電荷発生層上に浸
漬コーティング法にて塗布した後、115℃で10分間加熱
乾燥させて、膜厚3μmのS字化電荷輸送層を形成した。
【0113】次に、高分子電荷輸送材料である分子量12
万の下記構造式で示される繰り返し単位よりなる化合物
15重量部をクロロベンゼン85重量部に溶解した塗布液
を、上記S字化電荷輸送上に浸漬コーティング法で塗布
し、135℃において1時間加熱乾燥させて、膜厚20μmの
均一電荷輸送層を形成し、図4に示す層構成の電子写真
用感光体を作製した。
【0114】
【化6】
【0115】このようにして得られた電子写真用感光体
を、実施例1と同様にして評価したところ、その光誘起
電位減衰特性は残留電位が10V、E50% 値が1μJ/cm2 、E
50%/E10% 値が2.0のS字型であった。比較例1 S字化電荷輸送層を塗布しない以外は、実施例2と同様に
電子写真用感光体を作製した。
【0116】このようにして得られた電子写真用感光体
の電子写真特性を、実施例1と同様の方法で評価したと
ころ、光誘起電位減衰曲線は図1のようなJ字形となっ
た。実施例3 クロロガリウムフタロシアニン微結晶の代わりにCuKα
を線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくとも
ブラッグ角度(2ι±0.2 )、7.5 、9.9 、12.5 、16.3
、18.6 、25.1 および28.3 に強い回折ピークを有する
ヒドロキシガリウムフタロシアニン微結晶を使用し、分
散時の溶剤としてキシレンおよび酢酸ブチルの代わりに
モノクロロベンゼンを使用し、S字化電荷輸送層の膜厚
を23μmとし、均一電荷輸送層を設けなかった以外は、
実施例2と同様にして、図3に示す層構成の電子写真用感
光体を作製した。
【0117】このようにして得られた電子写真用感光体
を、実施例1と同様にして評価したところ、その光誘起
電位減衰特性は残留電位が10V、E50% 値が0.5μJ/c
m2 、E50 % /E10% 値が2.4のS字型であった。実施例4 六方晶セレン12重量部を、塩化ビニル-酢酸ビニル共重
合樹脂(商品名:UCARソリューションビニル樹脂VMCH、ユ
ニオンカーバイド社製)1.8重量部および酢酸イソブチル
100重量部と混合し、ステンレス鋼ビーズとともにペイ
ントシェーカーで5時間処理して分散した後、得られた
塗布液を浸漬コーティング法でアルミニウム基板上に塗
布し、100℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.15μmの
電荷発生層を形成した。
【0118】次に、合成例2で得られたブロック共重合
体の代わりに合成例3で得られたブロック共重合体を用
い、膜厚を23μmにした以外は実施例1と同様にして、S
字化電荷輸送層を形成し、図3に示す層構成の電子写真
用感光体を作製した。尚、S字化電荷輸送層をルテニウ
ム酸染色法による透過型電子顕微鏡で観察したところ、
変調構造と思われる相分離構造が観測された。また、相
分離構造のスケールはおよそ0.01μm、電荷輸送性相の
体積比率はおよそ60%であった。また、本電荷輸送性ブ
ロックと同一構造の電荷輸送性高分子の電荷移動度は、
5V/μmの電界強度下で、8×10-6cm2/Vsであった。
【0119】このようにして得られた電子写真用感光体
を、露光波長を500nmに変更した以外は、実施例1と同様
に評価したところ、その光誘起電位減衰特性は残留電位
が5V、E50% 値が0.8μJ/cm2 であり、E50% /E10% 値が
2.3のS字型であった。実施例5 アルミニウム基板の代わりにアルミニウムドラムを使用
した以外は、実施例2と同様に電子写真用感光体を作製
し、レーザープリンター(Laser Press 4105、富士ゼ
ロックス社製)に搭載し、印字試験を行った。この際、
最適な露光量を得るため、レーザー光の光路にNDフィル
ターを入れた。尚、画質評価は、1枚目と2000枚連続印
字後の印字サンプルに対して、目視にて行った。比較例2 アルミニウム基板の代わりにアルミニムドラムを使用し
た以外は、比較例1と同様に電子写真用感光体を作製
し、実施例5と同様に印字試験を行った。比較例3 CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なく
ともブラッグ角度(2ι±0.2 )、8.3 、13.7 および28.3
に強い回折ピークを有するジクロロ錫フタロシアニン
結晶5重量部をビスフェノールZタイプポリカーボネート
樹脂(商品名:PC-Z、三菱瓦斯化学社製)10重量部および
クロロベンゼン100重量部と混合し、ステンレスビーズ
と共にペイントシェーク法で4時間処理して分散した
後、得られた分散液を浸漬コーティング法で、アルミニ
ウムドラム上に塗布し、115℃において60分間加熱乾燥
して、膜厚23μmの単層型電子写真感光体を形成した。
得られた単層感光体に対し、実施例5と同様にして印字
試験を行った。尚、アルミニウムドラムの代わりにアル
ミニム基板を使用した以外は、上記と同様にして電子写
真用感光体を作製し、実施例1と同様に評価したとこ
ろ、本比較例の単層感光体の光誘起電位減衰特性は残留
電位が5V、E50% 値が2.5μJ/cm2 であり、E50% /E1 0%
値が1.7のS字型であった。実施例5と比較例2で得られた
印字の品質を比べたところ、実施例5の方が細線の再現
性等の点で、印字品質が優れていた。
【0120】実施例5と比較例3で得られた印字の品質を
比べたところ、1枚目の印字品質は同等であったが、200
0枚目で比較すると、比較例3では地肌かぶりを生じ且つ
細線の再現性が著しく低下しているのに対し、実施例5
では1枚目と同等の印字品質が得られた。実施例6 実施例2のブロック共重合体1のかわりにブロック共重合
体2を用いた以外は実施例2と同様に電子写真用感光体を
作製した。このようにして得られた電子写真用感光体
を、実施例1と同様にして評価したところ、その光誘起
電位減衰特性は残留電位が15V、E50% 値が1.5μJ/c
m2 、E50% /E10% 値が2.1のS字型であった。 実施例7 実施例2のブロック共重合体1のかわりにブロック共重合
体3を用いた以外は実施例2と同様に電子写真用感光体を
作製した。このようにして得られた電子写真用感光体
を、実施例1と同様にして評価したところ、その光誘起
電位減衰特性は残留電位が18V、E50% 値が1.4μJ/c
m2 、E50% /E10% 値が1.9のS字型であった。 実施例8 実施例2のブロック共重合体1のかわりにブロック共重合
体4を用いた以外は実施例2と同様に電子写真用感光体を
作製した。このようにして得られた電子写真用感光体
を、実施例1と同様にして評価したところ、その光誘起
電位減衰特性は残留電位が20V、E50% 値が1.5μJ/c
m2 、E50% /E10% 値が1.8のS字型であった。 比較例4 実施例2のブロック共重合体1のかわりに調整例1のブロ
ック共重合体5を用いた以外は実施例2と同様に電子写真
用感光体を作製した。このようにして得られた電子写真
用感光体を、実施例1と同様にして評価したところ、そ
の光誘起電位減衰特性は残留電位が22V、E50% 値が0.6
μJ/cm2 、E50% /E10% 値が2.1のS字型であった。比較例5 実施例2のブロック共重合体1のかわりに調整例2のブロ
ック共重合体6を用いた以外は実施例2と同様に電子写真
用感光体を作製した。このようにして得られた電子写真
用感光体を、実施例1と同様にして評価したところ、そ
の光誘起電位減衰特性は残留電位が16V、E50% 値が1μJ
/cm2 、E50% /E10% 値が2.0のS字型であった。実施例2,
6,7,8,比較例4,5で作成した電子写真用感光体に対し、
実施例1と同じ評価方法で15000回の繰り返し試験を行っ
たところ、10000回まではこれらすべての電子写真用感
光体において光誘起電位減衰曲線に変化がみられなかっ
たが、13000回をこえると比較例4,5で作成した電子写真
用感光体においては光誘起電位減衰曲線は残留電位とE
50% /E10% 値に増加の傾向が見られた。しかし、実施例
2,6,7,8については、初期とほとんど変化がなかった。
【0121】
【発明の効果】本発明によれば優れた電荷輸送性と優れ
た機械的特性を兼ね備えた共重合体を使用することによ
り、高性能で且つ耐久性に優れた電子写真感光体を提供
できる。
【0122】また、前記共重合体を含む不均一電荷輸送
層を有する機能分離積層感光体は優れたS字性を示し、
それを使用したデジタル式電子写真装置は、優れた印字
品質および画質を実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 J字型電子写真感光体における露光量と表面電
位の関係を示すグラフである。
【図2】 S字型電子写真感光体における露光量と表面電
位の関係を示すグラフである。
【図3】 本発明の電子写真用感光体の一例を示す模式
的断面図である。
【図4】 本発明の電子写真用感光体の他の一例を示す
模式的断面図である。
【図5】 本発明の電子写真用感光体の他の一例を示す
模式的断面図である。
【図6】 本発明の電子写真用感光体の他の一例を示す
模式的断面図である。
【図7】 実施例に用いたデジタル処理された画像信号
に基づき露光を行う本発明の電子写真装置の概略を示す
構成図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体 2 電荷発生層 3 不均一電荷輸送層 4 均一電荷輸送層 11 感光体ドラム 12 前露光用光源 13 帯電用スコロトロン 14 露光用レーザー光学系 15 現像器 16 転写用コロトロン 17クリーニングブレード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田甫 文明 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内 (72)発明者 山口 康浩 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内 Fターム(参考) 2H068 AA20 BB44 BB61 BB62 FA03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも電荷発生材料と電荷輸送材料
    を含む電子写真感光体において、該電荷輸送材料として
    電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックを含むブロック共
    重合体またはグラフト共重合体を含有し、該電荷輸送性
    ブロックが下記一般式(1)で示される構造を繰り返し単
    位として有することを特徴とする電子写真感光体。 【化1】 (式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置
    換のアリール基を示し、X1及びX2はそれぞれ独立に置換
    もしくは未置換のアリーレン基を示し、Lは枝分れもし
    くは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテ
    ロ原子含有炭化水素基を示す。)
  2. 【請求項2】 前記絶縁性ブロックが、ビニル系モノマ
    ーの重合物からなることを特徴とする請求項1に記載の
    電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記ビニル系モノマーが下記一般式(2)
    で示される化合物を含有することを特徴とする請求項2
    に記載の電子写真感光体。 【化2】 (式中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原
    子、または置換もしくは未置換のアルキル基または置換
    もしくは未置換のアリール基を示し、R1とR2は置換基同
    士結合し環構造をとってもよい。R4はハロゲン原子、置
    換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換の
    アリール基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置
    換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のア
    シルオキシ基、または置換もしくは未置換のアルコキシ
    ルカルボニル基を示す。)
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記
    載の電子写真感光体とデジタル処理された画像信号に基
    づき露光を行う露光手段を有することを特徴とする電子
    写真装置
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005017579A (ja) * 2003-06-25 2005-01-20 Konica Minolta Business Technologies Inc 有機感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
US20120065432A1 (en) * 2007-11-19 2012-03-15 E.I Du Pont De Nemours And Company Electroactive materials

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