JPH11167216A - 電子写真感光体及び電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体及び電子写真装置

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JPH11167216A
JPH11167216A JP33405797A JP33405797A JPH11167216A JP H11167216 A JPH11167216 A JP H11167216A JP 33405797 A JP33405797 A JP 33405797A JP 33405797 A JP33405797 A JP 33405797A JP H11167216 A JPH11167216 A JP H11167216A
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JP33405797A
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English (en)
Inventor
Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
Masahiro Iwasaki
真宏 岩崎
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Fujifilm Business Innovation Corp
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機械的強度、電荷輸送性等の基本特性に
優れ、光感度や帯電性に悪影響がでたり、繰り返し安定
性が低下する等の問題のない、高性能な電子写真感光
体、特に高性能なS字型電子写真感光体及び該電子写真
感光体を利用した高画質かつ高耐久な電子写真装置を提
供する。 【解決手段】 少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とを
備えた電子写真感光体において、該電荷輸送層を構成す
る電荷輸送材料に、繰り返し単位中に(a)アントラセ
ン構造、(b)ヒドラゾン構造、(c)トリアリールメ
タン構造、及び(d)イミダゾール構造の少なくとも1
つを有する電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含
むブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する
ことを特徴とする。この感光体が電荷発生層と均一電荷
輸送層と不均一電荷輸送層の積層構造を有する場合、電
荷輸送材料に、繰り返し単位中として(e)シリレン構
造を有する電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含
む共重合体を用いることもできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な電荷輸送性
共重合体を用いた電子写真用感光体に関し、特にデジタ
ル式電子写真法に好適な電子写真用感光体、ならびにそ
れを用いたデジタル式電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真技術は、高速で、高印字
品質が得られる等の利点を有するために、複写機、プリ
ンター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を
果たしている。電子写真技術において用いられる電子写
真感光体としては、従来からセレン、セレン−テルル合
金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料を用いたも
のが広く知られている。
【0003】一方、これらの無機系感光体に比べ、コス
ト、製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有する有機光
導電性材料を用いた電子写真感光体の研究も活発に行わ
れ、現在では無機系感光体を凌駕するに至っている。特
に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送をそれ
ぞれ別々の層に担わせる機能分離型積層構成のものが開
発されたことにより、材料選択の自由度が増し、著しい
性能の向上を遂げ、現在ではこの機能分離積層型の有機
感光体が電子写真感光体の主流となっている。すなわ
ち、電荷発生能と電荷輸送能の両方に優れた材の設計開
発は困難であったが、一方にに優れた材料は設計開発も
容易であり、各機能に秀でた材料を組合せ用い機能分離
型積層構成を採用することで、高性能な電子写真感光体
を得ることが可能となった。
【0004】ところで、従来の光学的に原稿を感光体上
に結像させて露光するアナログ方式の電子写真式複写機
に用いる感光体としては、濃度階調による中間調の再現
性を良好にするために、図1に示すような光誘起電位減
衰特性を持つ感光体、すなわち、露光量に対し比例的に
電位減衰を起こす感光体(以下、「J字型感光体」とい
う。)が要求される。上記の無機系感光体、機能分離型
の積層型有機感光体は全てこの範疇に入る光誘起電位減
衰特性を示す。しかしながら、近年の高画質化、高付加
価値化、ネットワーク化等の要請に伴い盛んに研究開発
が行われているデジタル方式の電子写真装置では、一般
にドット等の面積率で階調を出す面積階調方式を採用す
るため、むしろ図2に示すような、ある露光量に達する
までは電位減衰せず、その露光量を越えると急峻な電位
減衰が起こる、いわゆるS字型の光誘起電位減衰特性を
有する感光体(以下、「S字型感光体」という。)を使
用する方が、画素の鮮鋭度が高められる等の点から望ま
しい。
【0005】このS字型光誘起電位減衰特性は、ZnO
等の無機顔料あるいはフタロシアニン等の有機顔料を樹
脂中に粒子分散した単層型感光体において公知の現象で
ある{例えば、R.M.Schaffert:「Electrophotograph
y」, Focal Press, p.344(1975)、J.W.Weigl, J.Mammin
o, G.L.Whittaker, R.W.Radler, J.F.Byrne: 「Current
Problems in Electrophotography」, Walter de Gruyte
r, p.287(1972)}。特に、現在多用されている半導体レ
ーザーの発信波長である近赤外域に光感度を有するフタ
ロシアニン系顔料を樹脂中に分散したレーザ露光用単層
感光体が多数提案されている{例えば、グエン・チャン
・ケー, 相沢: 日本化学会誌, p.393(1986) 、特開平1-
169454号公報、同2-207258号公報、同3-31847号公報、
同5-313387号公報}。しかしながら、これらの単層型感
光体では単一材料で電荷発生と電荷輸送の両機能を担う
必要があるものの、上述したように両機能共に優れた性
能を有する材料は稀有であり、実用に耐え得るものは未
だ得られていない。特に顔料粒子は、一般的に多くのト
ラップレベルを有するため、電荷輸送能が低く、電荷が
残留する、繰り返し安定性が低い等の欠点があり、電荷
輸送を担わせるには不適当である。この問題を根本的に
解決し、材料選択の自由度を上げ、ひいては総合的な感
光体特性を向上させるためには、S字型感光体において
も、機能分離構成の導入が不可欠である。
【0006】この問題に対し、D. M. Pai 等は、電荷発
生層と電荷輸送層からなる積層型感光体において、電荷
輸送層として少なくとも2つの電荷輸送領域および1つ
の電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領域が互いに接
触して回旋状電荷輸送路を形成してなる不均一電荷輸送
層を用いることにより、任意の電荷発生層との組合せで
S字型光誘起電位減衰特性が実現できることを報告して
いる{特開平6-83077号公報(米国特許第5306586 号明
細書)}。また著者等は、電荷発生層、不均一電荷輸送
層、及び均一電荷輸送層から成る3層構成の感光体がS
字型光誘起電位減衰特性を示すことを発明し(特願平7-
208552)、上記D. M. Pai等の発明からさらに機能分離
度を高めることに成功した。
【0007】しかしながら、これらの発明において鍵と
なる光誘起電位減衰特性をS字型にする機能(以下、
「S字化」という)を担う不均一電荷輸送層の具体例と
しては、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜、六方晶セレ
ンの樹脂分散膜、ポリビニルカルバゾール−ドデシルメ
タクリレート相分離系ブロック共重合体が開示されてい
るのみであり、しかもこれ等の材料には以下に示すよう
な問題点があり、上記発明を実用化するには、不均一電
荷輸送層材料の新たな開発が不可欠な課題であった。
【0008】すなわち、フタロシアニン顔料、六方晶セ
レン等の電荷発生能を有する着色顔料を不均一電荷輸送
層用電荷輸送材料として用いると、特に電荷輸送層側か
ら電荷発生層を露光する構成を採った場合、不均一電荷
輸送層での光吸収およびそれに伴う電荷発生により、光
感度や帯電性に悪影響がでたり、繰り返し安定性が低下
する等の問題が生起した。この問題は、不均一電荷輸送
層に吸収のない波長域に光感度を有する電荷発生層を用
い且つ該波長域内のみの露光を行う露光装置を用いるこ
とにより回避することができるが、材料や装置に制約が
貸せられることとなり、根本的な改善策が望まれる。さ
らに、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜や六方晶セレン
の樹脂分散膜の製造に当たっては、これら顔料の粉砕お
よび/または分散工程が必要であるが、粉砕には莫大な
エネルギーを要し、且つ不純物混入の危険性を伴う。さ
らにまた、安定な分散液を得ることは一般的に困難であ
り、分散溶剤やバインダー樹脂の探索に多大な労力を要
すると共に、選択材料に著しい制約を受ける。また、分
散液中での結晶成長や凝集化による分散液の変性は一般
的に避けられず、長期に亘る使用は不可能であり、コス
トアップをもたらす。
【0009】一方、ポリビニルカルバゾール−ドデシル
メタクリレート相分離系ブロック共重合体には、機械的
強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低い等
の問題がある。しかしながら、相分離系ブロック共重合
体にあっては、塗布液は均一溶液であり、乾燥時に相分
離し所望とする不均一電荷輸送層を与えるため、上記の
ような粉砕/分散に係わる問題は根本的に解消されると
云う利点を有する。また、顔料ではないため本質的に、
上記の光暴露に係わる問題も発生しない。
【0010】ところで、電荷輸送性高分子としては、ポ
リビニルカルバゾールが電子写真感光体用の電荷輸送材
料として有効であることが古くから知られているが、機
械的強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低
い等の実用上の本質的な問題があった。この問題を解決
する手段として、電荷輸送層に要求される機能である電
荷輸送能と、成膜性、可撓性、強度等の機械的特性を分
離し、それぞれを別々の材料に担わせる機能分離の発想
に基づく材料開発が為され、前述のように現在では、高
い電荷輸送能を有する電荷輸送性低分子化合物と、成膜
性、可撓性、強度に優れたポリカーボネート系樹脂から
なる分子分散系複合材料が、電子写真用電荷輸送層材料
の主流となっている。
【0011】しかしながら、このような分子分散系複合
材料では、分子分散された電荷輸送性低分子化合物が経
時および/または加熱で結晶化してしまい、特性が劣化
するという問題があり、特に高温下での使用やあるいは
発熱を伴うデバイスへの適用には制限があった。また、
高画質が得られる液体現像方式の電子写真装置用の電子
写真用感光体に用いた場合、現像液に触れることで、電
荷輸送性低分子化合物の溶解あるいは結晶化等が起こ
り、電荷輸送層が変性あるいはクラックが生じる等の問
題があった。さらにまた、十分な電荷輸送性を確保する
ためには、電荷輸送性低分子化合物を樹脂中に35〜 60w
t%の高濃度で分散する必要があり、可撓性、強度等の機
械的特性に優れた樹脂を用いても、複合膜としての機械
的特性には限界があった。
【0012】さらなる高寿命化、高耐久化、低コスト化
が要請される電子写真感光体を初め、有機電子デバイス
に幅広く、有機電荷輸送材料が活用されるには、上記の
ような問題の克服が不可欠であり、その手段として、近
年、ポリビニルカルバゾールに代わる高性能電荷輸送性
高分子の研究開発が、再び活発化している。現在まで
に、高い電荷輸送性を有する電荷輸送性低分子化合物と
同一の骨格を、主鎖あるいは側鎖に導入した電荷輸送性
高分子化合物が多数、開発されている(例えば、特開昭
63-187249 号公報、特開昭64-13061号公報、特開平2-15
1605号公報、特開平2-304456号公報、特開平4-11627 号
公報、特開平4-225014号公報、特開平5-202135号公報、
特開平5-331238号公報)。
【0013】しかしながら、これらの電荷輸送性高分子
は、単独重合体もしくは数種のモノマーを混合し共重合
させたランダム共重合体であり、本質的に相分離性を示
すことはなく、それら単独ではS字化のための不均一電
荷輸送層を形成することはできない。この問題に対し、
本発明者らは、それら電荷輸送性高分子に該電荷輸送性
高分子と非相溶な絶縁性高分子を加えた相分離性ポリマ
ーブレンドがS字化のための不均一電荷輸送層として有
効に機能し得ることを発明した(FT96-00079 、FT96-001
39)。しかしながら、ポリマーブレンドでは、一般に相
分離スケールが数μm以上の大きさであり、画像の均質
性が低下すると云う問題があった。さらに、乾燥速度、
乾燥温度等の成膜条件により、相分離スケールが大きく
変化し、それに伴い電子写真特性が大きく変化してしま
うと云う製造再現性上の問題もあった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術
における上記のような実情に鑑みなされたものであっ
て、上記のような問題点を克服し得る、新規な電荷輸送
性高分子化合物を用いた電子写真感光体を提供すること
を目的とするものである。
【0015】すなわち、本発明の目的は、少なくとも電
荷発生材料と電荷輸送材料を含む機能分離型電子写真感
光体において、機械的強度、電荷輸送性等の基本特性に
優れ、光感度や帯電性に悪影響がでたり、繰り返し安定
性が低下する等の問題のない、高性能な電子写真感光
体、特に高性能なS字型電子写真感光体を提供すること
にある。また、本発明の他の目的は、該高性能電子写真
感光体を利用した高画質かつ高耐久な電子写真装置を提
供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電荷輸送
材料および高分子材料に関して鋭意検討を重ねた結果、
所望とする機能を有する複数のブロックを共有結合で連
結させたブロックあるいはグラフト共重合化の手法によ
り、各機能を損ねることなく、多機能を有する材料が得
られ、特に、特定の構造を有する電荷輸送性ブロックと
絶縁性ブロックとからなる共重合体が電荷輸送材料とし
て優れた総合特性を有し、特に該両ブロックが非相溶性
のものがS字型感光体用の不均一電荷輸送層材料とし
て、好適であることを見いだし本発明を完成するに至っ
た。
【0017】すなわち、本発明の請求項1に記載の電子
写真感光体は、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とを
備えた電子写真感光体において、該電荷輸送層を構成す
る電荷輸送材料に、繰り返し単位中に(a)アントラセ
ン構造、(b)ヒドラゾン構造、(c)トリアリールメ
タン構造、及び(d)イミダゾール構造の少なくとも1
つを有する電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含
むブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する
ことを特徴とする。
【0018】また、本発明の請求項2に記載の電子写真
感光体は、少なくとも電荷発生層と均一な電荷輸送性を
有する均一電荷輸送層と層内において電荷輸送性の不均
一な部分を有する不均一電荷輸送層とを備えた電子写真
感光体であって、不均一電荷輸送層を構成する電荷輸送
材料に、繰り返し単位中に(a)アントラセン構造、
(b)ヒドラゾン構造、(c)トリアリールメタン構
造、(d)イミダゾール構造、及び(e)シリレン構造
のうち少なくとも1つを有する電荷輸送性ブロックと絶
縁性ブロックとを含むブロック共重合体またはグラフト
共重合体を含有することを特徴とする。
【0019】ここで、前記電荷輸送性ブロックと前記絶
縁性ブロックとは互いに非相溶性であることが好まし
い。
【0020】本発明の電荷輸送性共重合体においては、
アントラセン構造、ヒドラゾン構造、トリアリールメタ
ン構造、イミダゾール構造、またはシリレン構造を含む
電荷輸送性ブロックにより高い電荷輸送能が保証される
と共に、絶縁性ブロックの導入と云うアロイ化の手法に
より、電荷輸送能を損ねることなく、機械的強度、ガラ
ス転移温度、結晶化度、屈折率、接着性、吸着性、可撓
性、溶解性、溶融性、相分離状態等の制御を行うことが
可能である。因みに、単なる単独重合体やランダム共重
合体ではこれらの特性を、輸送能に影響なく制御するこ
とは困難である。
【0021】さらに、このような材料は所望とする他の
特性を発揮する成分を共重合化することで、さらなる高
機能化材料への展開も可能である。本共重合化の手法
は、共有結合で各機能素材を連結させることにより、単
なる混合系でしばしば問題となる、マクロ相分離の問題
を、本質的に解消することができると云う利点を有す
る。
【0022】前記電荷輸送性ブロックが、その繰り返し
単位として下記一般式(1) で示す如く主鎖に、或いは下
記一般式(2) で示す如く側鎖に、(a)アントラセン構
造、(b)ヒドラゾン構造、(c)トリアリールメタン
構造、(d)イミダゾール構造、及び(e)シリレン構
造から選択される1種以上を有することが好ましい。
【0023】
【化6】
【0024】式中、L1 は枝分れもしくは環構造を含ん
でもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水
素基を示し、X1 は下記部分構造式(1) から選ばれる2
価の電荷輸送活性基を示し、rは0または1から選ばれ
る整数を意味する。
【0025】主鎖に有する場合、X1 は下記部分構造式
(1) から選ばれる2価の電荷輸送活性基を示す。
【0026】
【化7】
【0027】式中、R1 およびR2 はそれぞれ独立に水
素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、N-
アルキル-N- アリールアミノ基、または、N,N-ジアルキ
ルアミノ基を示し、R3 、R7 ないしR11はそれぞれ独
立にアルキル基、または、アリール基を示し、R4 ない
しR6 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アル
キル基、アリール基、アルコキシル基、N-アルキル-N-
アリールアミノ基、または、N,N-ジアルキルアミノ基を
示し、YはNまたはCHを示し、mおよびnはそれぞれ
独立に0ないし4から選ばれる整数を意味し、pおよび
qはそれぞれ独立に0ないし5から選ばれる整数を意味
する。
【0028】また、電荷輸送性ブロックが、その繰り返
し単位を側鎖に有する場合、X1 は下記部分構造式(2)
から選ばれる1価の電荷輸送活性基を示す。
【0029】
【化8】
【0030】式中、R1 およびR2 はそれぞれ独立に水
素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、N-
アルキル-N- アリールアミノ基、または、N,N-ジアルキ
ルアミノ基を示し、R3 、R7 ないしR11はそれぞれ独
立にアルキル基、または、アリール基を示し、R4 ない
しR6 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アル
キル基、アリール基、アルコキシル基、N-アルキル-N-
アリールアミノ基、または、N,N-ジアルキルアミノ基を
示し、YはNまたはCHを示し、mおよびnはそれぞれ
独立に0ないし4から選ばれる整数を意味し、pおよび
qはそれぞれ独立に0ないし5から選ばれる整数を意味
する。
【0031】なお、シリレン構造において十分な電荷輸
送活性が発揮されるには、シリレン単位が20以上連結
していることが望まれる。
【0032】一方、前記絶縁性ブロックは、ビニル系モ
ノマーの重合物からなることが機械的強度、可撓性、透
明性等の点から好ましく、さらに、下記一般式(3) で示
されるビニル系化合物の少なくとも1種を含有すること
が好ましい。
【0033】
【化9】
【0034】式中、R12ないしR14はそれぞれ独立に水
素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基
を示し、R15はハロゲン原子、アルキル基、アリール
基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基、また
はアルコキシルカルボニル基を示す。
【0035】また、電荷輸送性の点からは、絶縁性ブロ
ックとしては、その極性が低い物ほど好ましい。絶縁性
ブロックの極性は、ビニルモノマーの重合物にあって
は、該ビニルモノマーのビニル基への水素付加体の双極
子モーメントによって、支配され、該双極子モーメント
が2D以下のものが好ましい。より好ましくは1.5D以
下であり、さらに好ましくは1D以下である。
【0036】また、機械的強度、表面汚染耐性等の点か
らは、絶縁性ブロックのガラス転位温度は30℃以上で
あることが好ましく、より好ましくは、60℃以上であ
り、さらに好ましくは90℃以上である。
【0037】本発明の電子写真感光体は、導電性基体上
に電荷発生層と電荷輸送層を設けた積層型電子写真感光
体であって、前記ブロック共重合体またはグラフト共重
合体が該電荷輸送層中に含まれる態様が好ましく、さら
に、電荷輸送層が均一、不均一の二層構造であることが
さらに好ましい。
【0038】かかる共重合体は、有機電子写真感光体を
初め、有機EL素子、有機フォトリフラクティブ素子、有
機光センサー等の各種有機電子デバイス用の電荷輸送材
料としても、好適に利用できる。
【0039】特に、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロッ
クが非相溶性である共重合体は、サブミクロンスケール
のミクロ相分離構造を与え、それを不均一電荷輸送層と
して用いた積層型感光体は、S字型感光体として機能
し、しかも上述したような従来のS字型感光体が持つ課
題を根本的に解決することができる。
【0040】S字型光誘起電位減衰特性発現の機構に関
しては、トラップ説{例えば、北村, 小門: 電子写真学
会誌, Vol. 20, p. 60 (1982) }、D .M. Pai らが上記
の特許で唱えている回旋状電導説等幾つかの提案はある
ものの、未だ確立された説はない。しかしながら、これ
までにS字型感光体として報告されている上記の顔料樹
脂分散型単層感光体、D.M.Pai 等の電荷発生層および不
均一電荷輸送層からなる積層感光体、および著者等の電
荷発生層、不均一電荷輸送層および均一電荷輸送層から
なる積層感光体においては、少なくとも電荷発生領域に
隣接する電荷輸送領域の電荷輸送路が電気的不活性マト
リックス中に電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均
一な構造を有するものであるという共通点を認めること
ができる。尚、ここでいう電気的不活性とは、その輸送
エネルギーレベルが、電荷輸送ドメインの輸送エネルギ
ーレベルから大きくかけ離れており、通常の電界強度で
は、実質的に輸送電荷が注入されることがなく、輸送電
荷にとって事実上の電気的絶縁状態にあることを意味す
る。
【0041】本発明の非相溶性の電荷輸送性ブロックと
絶縁性ブロックからなる共重合体を含有する相分離系不
均一電荷輸送層を用いた積層型感光体がなぜS字型光誘
起電位減衰特性を発揮するかは必ずしも明らかではない
が、D. M. Pai らが唱える回旋状電導説によれば、S字
型光誘起電位減衰が起こる過程は、以下のようなもので
あると推定されている。
【0042】まず、不均一電荷輸送層では、電気的不活
性マトリックス中に分散された電荷輸送性ドメインが互
いに接触し、回旋状の電荷輸送路を形成しているものと
考えられている。この場合、電子写真感光体が帯電され
感光層に高電界が印加されると、露光により電荷発生層
で発生した電荷は電界によるクーロン力により電界に沿
って、電荷発生層から電荷輸送層に注入され、電荷輸送
性ドメイン中を電界方向に移動する。しかし、電荷輸送
性ドメインの末端凸部に到達した所で、電気的不活性マ
トリックスの障壁に出会い、電界により移動方向が規制
されているため、ここで該電荷の移動は一旦停止するこ
とになる。この間の移動距離が感光層の全膜厚に対して
充分小さければ、この間の電位減衰は無視できるものと
なる。殆ど全ての表面電荷に相当する電荷が注入された
後は、該注入電荷近傍での表面に垂直な局部的電界は無
視できるほど小さくなり、停止していた電荷は電界によ
る束縛を逃れ表面に垂直な方向以外の方向に拡散するこ
とが可能となり、回旋状に連なる連結路を辿って最初に
電荷が停止された所よりも深部に達する。この深部にお
いて、先程と同様に電荷は再び十分な高電界に晒されド
メイン内を電界方向に沿って移動し、再び電気的不活性
マトリックスの障壁に出会い、移動を停止する。しか
し、前の電荷の移動で電界強度は低下しているので、よ
り多くの電荷が回旋状電荷輸送路を通り次の絶縁性障壁
にまで達する。かくして、電荷の移動はカスケード的に
起こり、S字型の光誘起電位減衰となる、と云うのがD.
M.Pai 等による説明である。尚、顔料樹脂分散型の単層
S字感光体においては、露光光は表面近傍で吸収されそ
こで電荷が発生されるため、該光吸収/電荷発生の領域
を電荷発生層、それに続く残りの領域を電荷輸送層と見
なすことができ、同様に上記説明が当てはまる。
【0043】本発明の非相溶性の電荷輸送性ブロックと
絶縁性ブロックからなる共重合体を含有する相分離系不
均一電荷輸送層を用いた積層型感光体がS字型の光誘起
電位減衰挙動を呈するのも、電荷輸送性ブロックからな
る相が電荷輸送性ドメイン、絶縁性ブロックからなる相
が電気的不活性マトリックスを形成し、上記のような現
象が起きているためと推定されるが、本発明の最大範囲
は、理論により拘束されるものではない。
【0044】さらに、上記電子写真感光体を用いること
により、画質の良好で安定な、デジタル処理された画像
信号にもとづき露光を行う露光手段を有する電子写真装
置を提供することができる。
【0045】光誘起電位減衰曲線のS字型の尺度には、
例えば、帯電電位を50%減衰させるのに要する露光量
50% と10%減衰させるのに要する露光量E10% との
比E 50% /E10% を用いることができる。理想的なJ字
型感光体で電位減衰が露光量に比例している場合、E
50% /E10% 値は5となる。一般的なJ字型感光体で
は、電界強度の低下に伴い、電荷発生効率および/また
は電荷輸送能が低下し、E 50% /E10% は5を越える値
を示す。一方、S字型の究極である、ある露光量までは
全く電位減衰せず、その露光量で一気に残留電位レベル
まで電位減衰する階段状の光誘起電位減衰曲線では、E
50% /E10% 値は1となる。したがって、S字型とはE
50% /E10% 値が1〜5の範囲内にあるものとして規定
される。上述のような好ましいデジタル特性を発揮する
には、E50% /E10% 値は3未満の値であることが好ま
しく、より好ましくは2未満の値である。但し、階調性
を高める等の理由で、アナログ特性を併用する場合に
は、E50% /E10% 値は、およそ1.5 〜4の範囲内で好
適な結果を与える。本発明のS字型電子写真感光体はこ
のような好ましいE50% /E10% 値を与え得る。
【0046】また、以下、電荷輸送性の相と電気的不活
性の相よりなる変調構造をとる相分離状態にあり、電荷
輸送性ブロックと絶縁性ブロックよりなるブロック共重
合体またはグラフト共重合体を含む層を「不均一電荷輸
送層」と略記し、また電荷輸送性マトリックスを含む層
を「均一電荷輸送層」と略記する。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態によっ
て、さらに詳しく説明する。
【0048】本発明において好適に用いられる電荷輸送
性共重合体の電荷輸送性ブロックとしては、S字性の発
現と云う観点に立てば、電荷輸送性を有し、且つ絶縁性
ブロックと相分離するものであれば、如何なる構造の物
でも構わないが、電荷輸送性、電荷注入性等のデバイス
特性の点から、その繰り返し単位中に電荷輸送活性構造
として、(a)アントラセン構造、(b)ヒドラゾン構
造、(c)トリアリールメタン構造、及び(d)イミダ
ゾール構造、を含むものが望ましい。これらの構造を有
する前記共重合体は、優れたS字特性を発現し、また、
機械的強度、耐久性に優れる。
【0049】また、同じく電荷輸送活性を有するが、機
械的強度がやや低く、光劣化んじょ観点から耐久性に劣
る等の問題点のある(e)シリレン構造を有する前記共
重合体もまた、優れたS字特性を発現するので、電荷発
生層上に二つの電荷輸送層を有する積層構造感光体の不
均一電荷輸送層の構成材料としては好ましく使用しう
る。
【0050】これらの構造を有する共重合体において、
電荷寿命、可視光および赤外光透過性、化学的安定性等
の点で、これら特定の単位が特に上記一般式(1) または
(2)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位と
して含有するものが好ましい。
【0051】上記一般式(1) 中、L1 は枝分れもしくは
環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原
子含有炭化水素基を示し、X1 は上記部分構造式(1) か
ら選ばれる2価の電荷輸送活性基を示し、rは0または
1から選ばれる整数を意味する。
【0052】L1 としては、機械的強度等の点から、エ
ステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、シロキ
サン結合等の結合基を有する炭素原子数1〜20のヘテ
ロ原子含有炭化水素基が好ましい。その具体例として
は、以下のものが挙げられる。
【0053】
【化10】
【0054】上記一般式(2) 中、L2 は枝分れもしくは
環構造を含んでもよい3価の炭化水素基またはヘテロ原
子含有炭化水素基を示し、X2 は上記部分構造式(2) か
ら選ばれる1価の電荷輸送活性基を示す。L2 の具体例
としては、下記部分構造式(3)で示されるものが挙げ
られるがこれに限定されるものではない。
【0055】
【化11】
【0056】部分構造式(1) および部分構造式(2) 中、
1 およびR2 はそれぞれ独立に水素原子、置換もしく
は未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール
基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしく
は未置換のN-アルキル-N-アリールアミノ基、または、
置換もしくは未置換のN,N-ジアルキルアミノ基を示し、
3 、R7 ないしR11はそれぞれ独立に置換もしくは未
置換のアルキル基、または、置換もしくは未置換のアリ
ール基を示し、R4 ないしR6 はそれぞれ独立に水素原
子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換のアルキル基、
置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換
のアルコキシル基、置換もしくは未置換のN-アルキル-N
- アリールアミノ基、または、置換もしくは未置換のN,
N-ジアルキルアミノ基を示し、YはNまたはCHを示
し、mおよびnはそれぞれ独立に0ないし4から選ばれ
る整数を意味し、pおよびqはそれぞれ独立に0ないし
5から選ばれる整数を意味する。これらの基が置換基を
有する場合の置換基としては、フェニル基、メチル基、
エチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、ハロゲン原
子等が挙げられる。
【0057】R1 およびR2 の好ましい例は、炭素原子
数1〜8のアルコキシ基であり、R 3 の好ましい例は、
炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜9のア
リール基、およびベンジル基であり、R4 ないしR6
好ましい例は、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原
子数6〜9のアリール基、炭素原子数1〜8のアルコキ
シ基、炭素原子数1〜8のジアルキルアミノ基、および
ハロゲン原子であり、R7 ないしR10の好ましい例は、
炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数6〜9の
アリール基であり、R11の好ましい例は、炭素原子数1
〜8のアルキル基、炭素原子数6〜9のアリール基、お
よびハロゲン原子である。
【0058】また、機械的強度、表面汚染耐性等の点か
らは、電荷輸送性ブロックのガラス転位温度は30℃以上
であることが好ましく、より好ましくは、60℃以上であ
り、さらに好ましくは90℃以上である。
【0059】本発明の共重合体を形成する絶縁性ブロッ
クとしては、輸送電荷に対する輸送活性が無く、その分
子量が2000以上であれば、如何なるものでも構わない
が、機械的強度、可撓性、可視光および赤外光透過性、
化学的安定性、絶縁性等の点で、特に上記一般式(3) で
示されるビニルモノマーの少なくとも1種を重合し得ら
れるものが好ましい。
【0060】上記一般式(3) 中、R1 〜R3 はそれぞれ
独立に水素原子、ハロゲン原子、または置換もしくは未
置換のアルキル基またはアリール基から選ばれる。置換
もしくは未置換のアルキル基またはアリール基の具体的
としては、メチル基、エチル基、クロロメチル基、フェ
ニル基、トリル基等が挙げられる。
【0061】R4 は置換もしくは未置換のアルキル基、
アリール基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ
基、またはアルコキシカルボニル基から選ばれる。アル
キル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、お
よびアルコキシカルボニル基の炭素数は1〜18個が好ま
しく、またアリール基としてはフェニル基、ナフチル
基、ピレニル等が挙げられる。置換基としては、ハロゲ
ン原子、フェニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシ
アネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基等が挙げ
られる。R1 〜R3 及びR4 において例示したこれらの
基が置換基を有する場合の置換基としては、フェニル
基、メチル基、エチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ
基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0062】また、本発明の共重合体を形成する絶縁性
ブロックとしては、電荷輸送性等の観点からは、極性の
低いもの程、好ましい。絶縁性ブロックの極性は、ビニ
ルモノマーの重合物にあっては、該ビニルモノマーのビ
ニル基への水素付加体の双極子モーメントによって、支
配され、該双極子モーメントが2D以下のものが好まし
い。より好ましくは1.5 D以下であり、さらに好ましく
は1D以下である。
【0063】上記一般式(3) 中、R1 〜R3 が水素原子
またはアルキル基であり、且つR4がアルキル基、アリ
ール基、アルキル基置換アリール基、またはアリール基
置換アルキル基であるものは、その水素付加体の双極子
モーメントが1D以下であり、特に好ましい。
【0064】また、機械的強度、表面汚染耐性等の点か
らは、絶縁性ブロックのガラス転位温度は30℃以上であ
ることが好ましく、より好ましくは、60℃以上であり、
さらに好ましくは90℃以上である。
【0065】本発明に用いる共重合体はブロック共重合
体またはグラフト共重合体であれば、その構成ブロック
の連結形式は如何なるものでも構わない。すなわち、電
荷輸送性ブロックをA、絶縁性ブロックをBとして、A
B型、ABA型、BAB型、(AB)n 型、(AB)n
A型、およびB(AB)n 型のブロック共重合体、電荷
輸送性ブロックを主鎖、絶縁性ブロックを側鎖とするグ
ラフト共重合体、絶縁性ブロックを主鎖、電荷輸送性ブ
ロックを側鎖とするグラフト共重合体、もしくはABA
型等のブロック共重合体の側鎖にAおよび/またはBを
グラフト化したブロック−グラフト共重合体等が挙げら
れる。
【0066】本発明に用いる共重合体の合成方法として
は、”第4版実験化学講座28 高分子合成(丸善、199
2)”、”マクロモノマーの化学と工業(アイピーシ
ー、1990)”、”高分子の相溶化と評価技術(技術情報
協会、1992)”、”高分子新素材One Point 12 ポリマ
ーアロイ(共立、1988)"、"Angew. Macromol. Chem., 1
43, pp.1-9 (1986)"、”日本接着学会誌,26, pp.112-11
8 (1990)" 、"Macromolecules, 28, pp.4893-4898 (199
5)”、"J. Am. Chem. Soc., 111, pp.7641-7643 (198
9)”,”特開平6-83077 号公報" 等の文献に記載されて
いるブロック共重合体またはグラフト共重合体を与え得
る任意の適当な合成法を用いることができる。
【0067】例えば、予め電荷輸送性重合体と絶縁性重
合体を合成し、それら重合体同士を反応結合させること
によって所望とするブロック共重合体が得られる。ま
た、電荷輸送性ブロックを形成するモノマーと絶縁性ブ
ロックを形成するモノマーの重合形式が同じであり且つ
両者の反応性が大きく異なる場合には、単にそれらモノ
マーの混合物を重合させることで、まず、反応性の高い
方のモノマーが重合し、該モノマーが消費された後、反
応性の低い方のモノマーが重合し、所望とするブロック
共重合体が得られる。また、予め一方のモノマーの重合
物を合成し、該重合物の末端および/または側鎖にア
ゾ、過酸エステル、パーオキシ、ジチオカルバマート、
アルカリ金属アルコラート、アルカリ金属アルキル等の
重合開始能を有する基を含む重合開始剤を導入し、該マ
クロ重合開始剤により、他方のモノマーを重合させるこ
とによっても、所望とするブロック共重合体またはグラ
フト共重合体が得られる。この方法によれば、重縮合ま
たは重付加系重合体と付加重合または開環重合系重合体
からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体を容
易に得ることができる。また、分子中にアゾ、過酸エス
テル、パーオキシ等の重合開始能を有する基を複数含む
化合物を用い、まず、一部の重合開始基から、一方のモ
ノマーを重合させ、次に残りの重合開始基から、他方の
モノマーを重合させることによっても所望とするブロッ
ク共重合体が得られる。この場合、特に重合開始温度が
異なる重合開始基を有するものは、まず一方のモノマー
中で、より低温で重合を開始する重合開始基によって、
該モノマーを重合させ、未反応モノマーを除去した後、
次に他方のモノマーを添加し、温度を上昇させ、より高
温で重合を開始する重合開始基によって、該モノマーを
重合させることによって、所望とするブロック共重合体
を制御よく与えることができる。また、カチオンリビン
グ重合法、アニオンリビング重合法、ラジカルリビング
重合法等のリビング重合法により、各モノマーを逐次重
合させることによっても所望とするブロック共重合体を
得ることができる。リビング重合法は、各ブロックの分
子量を容易に制御でき、且つ分子量分布の狭い重合体を
与え得ると云う利点を有する。また、イモータル重合
法、Iniferter 法等により、各モノマーを逐次重合させ
ることによっても所望とするブロック共重合体を得るこ
とができる。さらにまた、予め一方のモノマーの重合物
の末端に他方のモノマーを導入したマクロモノマーを合
成し、該マクロモノマーを重合することによって所望と
するグラフト共重合体を得ることができる。
【0068】本発明の共重合体の分子量は如何なる値で
も構わないが、成膜性、相分離性等の高分子特性を発揮
するには、2000以上であることが望まれる。好ましく
は、1万以上であり、より好ましくは、2万以上であ
る。分子量の上限に関しては電気的特性上の制限は特に
ないが、湿式塗布法によって成膜を行う場合には、適当
な溶液粘度を与える範囲内にあることが必要となり、一
般的には、5000000 以下であることが好ましい。
【0069】ポリマーブレンド、ポリマーアロイの分野
でよく知られているように、一般に、異なる高分子は互
いに非相溶性であり、それらの混合物およびブロック共
重合体またはグラフト共重合体は相分離状態を取る。一
般に、単なる混合物、すなわち、ポリマーブレンドでは
その相分離のスケールは数μm以上のマクロなものとな
る(マクロ相分離)。此れに対し、各成分が共有結合で
連結されたブロック共重合体およびグラフト共重合体で
は、サブミクロン以下の微細なドメインからなる相分離
状態を与える(ミクロ相分離)。ブロック共重合体およ
びグラフト共重合体における相分離のスケールは、一般
的に各ブロックの平均長と同一次元であり、分子量にほ
ぼ比例することが知られている。
【0070】本発明に用いるブロック共重合体またはグ
ラフト共重合体も、一般的にミクロ相分離状態を取る。
しかしながら、本発明のブロック共重合体またはグラフ
ト共重合体は、必ずともミクロ相分離状態を取るものば
かりではなく、各ブロックの組合せによっては、相溶性
を示し、相分離を起こさないものも在る。
【0071】一般的に、相溶性は、分子量が小さくなる
程、また、互いの溶解度パラメーター差が小さくなる
程、高くなる。
【0072】本発明の共重合体は高い電荷輸送能と優れ
た機械的特性等を兼ね備えているため、種々の有機電子
デバイスに好適に用いられ、特に、機能分離型電子写真
感光体に好適に用いられる。例えば、高い電荷輸送性と
成膜性、顔料への吸着性および接着性を兼ね備えたもの
は、電荷発生能を有する顔料と併用することで、優れた
単層型感光体、および積層型感光体用の電荷発生層を与
える。また、高い電荷輸送性と機械的強度、化学的強度
および低表面エネルギーを兼ね備えたものは、電荷輸送
層または表面保護層用材料として有効である。特に、絶
縁性ブロックにヒドロキシル基、アルコキシシリル基等
の架橋サイトを導入したものは、それらにより架橋硬化
させることで、非常に強靭な電荷輸送性膜を与え、表面
保護層として、特に好ましい。さらにまた、電荷輸送性
ブロックがドメイン、絶縁性ブロックがマトリックスと
なるミクロ相分離状態を与えるものは、上述したよう
に、機能分離S字型感光体用の不均一電荷輸送層とし
て、好適に用いられる。
【0073】図3ないし図6は、本発明のS字型電子写
真用感光体の断面を示す模式図である。図3において
は、導電性支持体1上に、S字化と電荷輸送を担う不均
一電荷輸送層3が設けられている。図4においては、導
電性支持体1上に電荷発生層2が設けられ、その上にS
字化を担う不均一電荷輸送層3が設けられ、さらにその
上に主な電荷輸送を担う均一電荷輸送層4が設けられて
いる。図5においては、導電性支持体1上に不均一電荷
輸送層3が設けられ、その上に電荷発生層1が設けられ
ている。図6においては、導電性支持体1上に均一電荷
輸送層4が設けられ、その上に不均一電荷輸送層3が設
けられ、さらにその上に電荷発生層1が設けられてい
る。
【0074】これらの態様のすべてについて、電荷輸送
材料に、繰り返し単位中に(a)アントラセン構造、
(b)ヒドラゾン構造、(c)トリアリールメタン構
造、及び(d)イミダゾール構造のうち少なくとも1つ
を有する電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含む
ブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いること
ができ、また、図4に示すような構成の場合の不均一電
荷輸送層3としてこれらの構造に加えて、さらに(e)
シリレン構造を有する電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロ
ックとを含むブロック共重合体またはグラフト共重合体
を用いることができる。
【0075】これらの電子写真感光体は、さらに所望に
より下引き層、保護層、および/または乱反射層等を含
むことができる。
【0076】前記のように、電荷発生層で発生した電荷
が不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの障害
に出会い最初に一時停止するまでの間の移動距離が感光
層の全膜厚に対して充分小さければ、その間の電位減衰
は無視できるものとなり、より理想的なS字性を示す。
つまり、電荷発生層とS字化のための不均一電荷輸送層
は近接している方がより良いS字性を与える。ただし、
電荷の注入や電荷の発生を助ける等の目的のために電荷
発生層と不均一電荷輸送層の間に適当な中間層を設ける
こともできる。また、電荷発生層と不均一電荷輸送層の
間に均一電荷輸送層を挿入し、該均一電荷輸送層の膜厚
を変えることにより、E50% /E10% 値を1〜5の範囲
内の任意の値に設定することも可能である。
【0077】S字化電荷輸送層は、電気的不活性マトリ
ックス中に電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一
構造を特徴とする電荷輸送路を形成する層であって、そ
の作製のためには、任意の適当な方法を採用することが
できる。例えば、適当な溶剤中に絶縁性結着樹脂を溶解
させた溶液に、電荷輸送能を有するの微粒子(以下、電
荷輸送性微粒子という。)を分散させ、浸漬コーティン
グ法等により塗布した後、乾燥させることにより得るこ
とができる。また、予め電荷輸送性微粒子を熱硬化性樹
脂あるいはシランカップリング剤等の架橋性化合物によ
り被覆不溶化したものを、適当な溶剤中に絶縁性の結着
樹脂を溶解させた溶液に分散させ、浸漬コーティング法
等により塗布した後、乾燥させることによって得ること
もできる。また、絶縁性の結着樹脂中に電荷輸送性物質
を均一に分散させたものに加熱処理、溶剤処理等を施す
ことにより電荷輸送材料の微結晶を析出させることによ
っても得ることができる。さらにまた、上述のように絶
縁性ブロックと電荷輸送性ブロックからなるブロック共
重合体またはグラフト共重合体において、絶縁性ブロッ
クがマトリックス、電荷輸送性ブロックがドメインとな
るミクロ相分離状態を為す系も使用可能である。
【0078】これらのS字化電荷輸送層形成方法におい
て、回旋状電荷輸送経路の形成は、電荷輸送性ドメイン
同士の確率的な接触に依存する。その接触の確率が多す
ぎると、電荷輸送経路は回旋状とならずS字性が低下
し、またその接触の確率が少なすぎると輸送層全体を貫
き連続した電荷輸送経路が形成できなくなり、残留電位
の増大を招く。電荷輸送性ドメインの互いの接触は必ず
しも直接接触している必要はなく、電荷輸送性ドメイン
間の非常に薄い絶縁層は、電荷がそのギャップを飛び越
えることができ、且つそこでの捕獲が無視できるなら
ば、その存在は許容される。ここでいう回旋状電荷輸送
路とは、電荷の移動が膜厚方向に対して1回以上逆行す
るように形成されている電荷輸送路のことである。
【0079】本発明に用いる共重合体は、両ブロックが
非相溶性の時、S字化電荷輸送層として、有効に機能す
る。本発明のS字型電子写真感光体は、少なくとも電荷
発生材料と不均一電荷輸送層を有する機能分離タイプの
ものであり、該不均一電荷輸送層の主要構成成分とし
て、上述の電荷輸送性ブロックまたはグラフト共重合体
を含むことを特徴とする。
【0080】本発明の共重合体中の電気的不活性マトリ
ックスを形成する絶縁性ブロックの抵抗値としては、1
13Ωcm以上の体積抵抗率を有するものが好ましく、
特に、1014Ωcm以上の体積抵抗率を有するものがが
好ましい。上記体積抵抗率がこの範囲より低い絶縁性ブ
ロックを用いた場合、そのブロックによって形成される
電気的不活性の相の電気的絶縁性が損なわれS字性が失
われたり、暗減衰が増加する傾向にある。なお、共重合
体中の電気抵抗率を、直接測定することは困難であり、
絶縁性ブロックと同一構造の高分子の電気抵抗率で代用
することができる。
【0081】絶縁性ブロックの具体例としては、ポリビ
ニルアセタール、ポリアルキルメタクリレート、ポリア
ルキルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、
ポリ酢酸ビニル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリカ
ーボネート、ポリエステル、ポリシロキサン等、および
これらのブロック、グラフト、ランダムまたは交互共重
合体等が挙げられるが、特に、上記一般式(3) で示され
るビニル系モノマーから得られる重合体が、機械的強
度、可撓性、相分離性等の点から、特に好ましい。
【0082】本発明のS字型感光体に用いる共重合体中
の電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの組成比は、そ
れらの相分離の結果として得られる電荷輸送性ドメイン
と電気的不活性マトリックスの体積比が10/1〜1/
10となる範囲内で任意に設定される。電荷輸送性ドメ
インと電気的不活性マトリックスの体積比のより好まし
い範囲は2/1〜1/2である。電荷輸送性ドメインの
体積比率が上記範囲より多いと、電荷輸送性ドメインが
密に接触あるいは電荷輸送性ブロックがマトリックスと
なってしまい、実質的に均一な構造の電荷輸送路を形成
し、上記のS字型光誘起電位減衰特性発現に不可欠な電
荷輸送路の不均一構造が消失し、S字性が失われる傾向
にある。他方、電荷輸送性ドメインの体積比率が上記範
囲より少ないと、電荷輸送路が分断され、残留電位の増
大、応答速度の低下等の障害を招く傾向にある。
【0083】不均一電荷輸送層の相分離構造としては、
電荷輸送性ブロックがドメインとなり、絶縁性ブロック
がマトリックスとなるものであれば如何なる構造を取っ
ても構わないが、電荷輸送性ブロックからなる相が球状
もしくは棒状等の島、絶縁性ブロックからなる相が海と
なる相分離構造を取る場合に、より良いS字性が得られ
る。また、スピノーダル分解により得られる変調構造を
取る場合にも、好ましいS字性が得られる。
【0084】相分離状態は構成ブロックの種類および分
子量により、熱力学的に最も安定な構造が存在し、一般
的には、Aブロック、Bブロックからなる共重合体で
は、連結形式には依らず、A/B組成比にのみ依存し、
A/B比の増加に伴い、Aが球状ドメインでBがマトリ
ックス、Aが棒状ドメインでBがマトリックス、A/B
交互層、Bが棒状ドメインでAがマトリックス、Bが球
状ドメインでAがマトリックスへと系統的に変化する。
しかしながら、湿式塗布法により、成膜する場合には、
用いる溶媒および乾燥速度等により、相分離状態を任意
に制御することができる。例えば、A/B比が大きく熱
力学的にはB球Aマトリックスを取る場合でも、塗布溶
媒として、Bの良溶媒であり且つAの貧溶媒である溶媒
を選択すれば、A球Bマトリックス構造を得ることがで
きる。また、A、B両者の良溶媒を用い、急速に溶媒を
除去すると、スピノーダル分解状態で凍結した相分離構
造(変調構造)を得ることがである。また、A/B比が
大きく熱力学的にはB球Aマトリックスを取る共重合体
に、Bのみと相溶性のある重合体を添加すると、Aが
球、BおよびBのみと相溶性のある重合体がマトリック
スとなる相分離構造を得ることもできる。
【0085】また、本発明で用いるS字化電荷輸送層の
膜厚は0.1〜50μmが適当であり、好ましくは0.
2〜15μm、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲
に設定される。上記範囲より薄いとS字性が低下する傾
向にある。膜厚の上限に関しては、用いるS字化電荷輸
送層の電荷輸送能により制限され、応答速度、残留電位
等が許容される範囲内で設定される。
【0086】電荷輸送性ドメインの平均粒子径は0.0
05〜3μmが好ましく、より好ましくは0.01〜
μm、特に好ましくは0.02〜0.5μmの範囲であ
る。電荷輸送性ドメインの平均粒子径が上記範囲より大
きいと、好ましい膜厚の範囲内でのS字化に必要な電荷
輸送路の不均一構造の形成が確率的に低くなり、S字性
が低下することになる。他方、電荷輸送性ドメインの平
均粒子径が上記範囲より小さい場合には、電荷輸送路が
均一な構造に近付き、またS字性が低下することにな
る。
【0087】電荷輸送性ドメインの電荷移動度は、電子
写真感光体の応答速度を支配する一因子であり、移動度
が高いものほど、高速の電子写真装置に好適に用いられ
る。本発明の電子写真装置においては、少なくとも現像
に用いる電界強度域において、10-6cm2 /Vs以上
であることが好ましい。より好ましくは5×10-6cm
2 /Vs以上である。尚、電荷輸送性ドメインの電荷移
動度を、直接測定することは困難であり、電荷輸送性ブ
ロックと同一構造の電荷輸送性高分子の電荷移動度で代
用することができる。移動度の測定は、当業界における
常法である、Time−of−Flight法により行
うことができる。
【0088】また、S字化電荷輸送層中に、主たる輸送
電荷と逆極性の電荷のみを輸送し得る化合物を添加する
ことにより、残留電位の低下、繰り返し安定性の向上等
の効果を得ることもできる。
【0089】また、S字化電荷輸送層中に、電荷輸送性
高分子および/または絶縁性高分子を添加することもで
きる。電荷輸送性高分子を添加する場合、本発明のブロ
ックまたはグラフト共重合体の電荷輸送性ブロックと相
溶性を有することが好ましい。また絶縁性高分子を添加
する場合には、本発明のブロックまたはグラフト共重合
体の絶縁性ブロックと相溶性を有することが好ましい。
【0090】不均一電荷輸送層の塗布方法としては、ブ
レードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、
スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコ
ーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテン
コーティング法、リングコーティング法等の通常の方法
を用いることができる。尚、塗布液は均一溶液またはミ
セル溶液であることができる。
【0091】本発明の電子写真感光体に用いる導電性支
持体としては、当業界でそのような支持体として利用さ
れうる任意の種類から選択でき、不透明または実質的に
透明であることができる。その例としては、アルミニウ
ム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属類、及び、アルミ
ニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、
金、白金、ジルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化イ
ンジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラ
スおよびセラミックス等、あるいは導電性付与剤を塗布
または含浸させた紙、プラスチック、ガラスおよびセラ
ミックス等が挙げられる。これらの導電性支持体は、ド
ラム状、シート状、プレート状等、適宜の形状のものと
して使用することができる。さらに必要に応じて導電性
支持体の表面には、各種の処理を行うことができる。例
えば、表面の酸化処理や薬品処理、および、着色処理
等、または、砂目立て、ホーニング等の機械的粗面化処
理等を行うことができる。支持体表面の酸化処理や機械
的粗面化処理は支持体表面を粗面化するのみならず、そ
の上に塗布される層の表面形状をも制御し、露光用光源
としてレーザー等の可干渉光源を用いた場合に問題とな
る支持体表面および/または積層界面での正反射による
干渉縞の発生を防止すると云う効果を発揮する。
【0092】また、導電性支持体と光導電層の間に、任
意的に設けられる一層または複数層の下引き層は、感光
層の帯電時において導電性支持体から感光層への電荷の
注入を阻止すると共に、感光層を導電性支持体に対して
一体的に接着保持せしめる接着層としての作用、あるい
は場合によっては干渉縞の原因となる光の正反射を防止
する作用等を示す。
【0093】上記下引き層としては、公知のものを用い
ることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹
脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹
脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹
脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニル
アセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポ
リエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニト
ロセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等
の樹脂およびこれらの共重合体、または、ジルコニウム
アルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シラ
ンカップリング剤等の硬化性金属有機化合物を、単独ま
たは2種以上を混合して用いることができる。また、帯
電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も使用可能
である。
【0094】下引き層の膜厚は、0.01〜10μmが
適当であり、好ましくは0.05〜5μmの範囲であ
る。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイ
ヤーバーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬
コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフ
コーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方
法を用いることができる。
【0095】本発明の積層型電子写真用感光体における
電荷発生層は、J字型、S字型を問わず積層感光体に電
荷発生層として用いられ得る任意のものから選択するこ
とができる。例えば、非晶質セレン、セレン−テルル合
金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレ
ン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、α−Si、α−SiC
等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、スクアリ
ウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、ア
ントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩系、チアピリ
リウム塩系等の有機顔料および染料等が挙げられる。ま
た、これらの電荷発生材料は、単独あるいは2種以上混
合して用いることができる。
【0096】フタロシアニン系化合物は、デジタル式の
電子写真装置に光源として現在広く使用されているLE
Dおよびレーザーダイオードの発信波長である600〜
850nmに優れた光感度を有するため、本発明におけ
る電荷発生材料として特に好ましい。フタロシアニン系
化合物としては、無金属フタロシアニン、金属フタロシ
アニン、及びそれらの誘導体が利用できる。金属フタロ
シアニンの中心金属としては、Cu、Ni、Zn、C
o、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、
Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、またこれら中心
金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化
物、アルコキシ化物等も使用できる。具体的には、チタ
ニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、
ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシ
アニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫
フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロシアニン等を挙
げることができる。また、上記化合物のフタロシアニン
環に任意の置換基が導入された置換フタロシアニン類も
使用することができる。さらにまた、上記化合物のフタ
ロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換され
たアザフタロシアニン類も有効である。これらフタロシ
アニン系化合物の形態としては、アルモルファスまたは
全ての結晶形のものが使用可能である。
【0097】これらフタロシアニン系化合物の中でも、
無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロ
ロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロ
シアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優
れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料
として特に好ましい。
【0098】また、殆どのフタロシアニン系化合物が正
孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有してい
るのに対し、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸引性基
を有するフタロシアニン類およびアザフタロシアニン類
は電子を主たる輸送電荷とするn型半導体であるため、
電荷発生材料としてこれらのフタロシアニン系化合物を
含み、導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層を順次積
層してなるS字型感光体は、それを負帯電で使用した場
合、高感度で且つ導電性支持体からの正電荷の注入が抑
えられ、暗減衰が小さく帯電性が高いと云う良好な電子
写真特性を示す。
【0099】また、六方晶セレン、アントラキノン系顔
料およびペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、
電荷発生材料として好ましく使用できる。レーザー光の
ビーム径は発信波長が短くなるほど小径化できるため、
更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の
検討がなされているが、これらの化合物は、紫外域から
可視域に光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷
発生材料として特に好ましく用いることができる。
【0100】電荷発生層は、前記電荷発生材料を真空蒸
着法により直接成膜する、または、前記電荷発生材料を
結着樹脂中に分散または溶解することにより作製でき
る。
【0101】電荷発生層に結着樹脂を用いる場合、その
結着樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリビ
ニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分
変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル
樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコン樹脂、フェ
ノール樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂等が用いられ
る。これらの結着樹脂はブロック、ランダムまたは交互
共重合体であることができ、また、これらの結着樹脂
は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。ま
た、前記したように、本発明の電荷輸送性ブロックまた
はグラフト共重合体も電荷発生層用の結着樹脂として有
効である。
【0102】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(体積
比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。より好
ましくは、3:1〜1:1の範囲に設定される。電荷発
生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より多い
と、暗減衰が増大し、また湿式塗布法では均質な膜を得
ることが困難になる。また、前記範囲より少ないと光感
度の低下、残留電位の増大等の障害が起きる。また、本
発明で用いる電荷発生層の膜厚は一般的には、0.05
〜5μmが適当であり、好ましくは0.1〜2.0μm
の範囲に設定される。塗布方法としては、ブレードコー
ティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコ
ティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング
法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティン
グ法等の通常の方法を用いることができる。
【0103】均一電荷輸送層を併設する場合、その均一
電荷輸送層は、当業界でJ字型積層感光体に電荷輸送層
として用いられている任意のものから選択できる。例え
ば、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、ヒドラゾン
系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合物
等を、単独でまたは2種以上を混合して、絶縁性樹脂
(例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエ
ステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート等)
中に均一分子分散した固溶膜を用いることができる。あ
るいは、それ自身電荷輸送能を有する高分子化合物等を
用いることができる。また、セレン、α−Si、α−S
iC等の電荷輸送能を有する無機物質を用いることもで
きる。上記電荷輸送性高分子化合物としては、ポリビニ
カルバゾール等の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高
分子化合物、特開平5-232727号公報等に開示されている
ような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合
物、およびポリシリレン等を挙げることができる。
【0104】本発明のS字型感光体における均一電荷輸
送層としては、特に製造上、電荷輸送性高分子化合物を
用いることが好ましい。すなわち、不均一電荷輸送層と
均一電荷輸送層を積層成膜する場合、均一電荷輸送層に
電荷輸送性低分子化合物を用いると、電荷輸送性低分子
化合物が不均一電荷輸送層中に混入してしまい、不均一
電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの主たる電荷に
対する絶縁性が低下することによりS字性が損なわれた
り、あるいは不均一電荷輸送層中に混入した電荷輸送性
低分子が不均一電荷輸送層中で電荷トラップとなり残留
電位の増大、輸送能の低下及び光感度の低下等の障害が
発生する。この問題は特に、湿式塗布法により、各層を
成膜する場合に顕著になる(もちろん、これらの問題
は、上層の塗布溶剤として下層を溶解および膨潤し難い
ものを選択する、または、不均一電荷輸送層を架橋硬化
性のものとし、上層塗布溶剤による溶解および膨潤が起
こらないようにする等により、回避することが可能であ
る)。ところが、上述したように高分子同士は相溶する
ことなく相分離を起こすことが一般的であることが知ら
れており、均一電荷輸送層として、電荷輸送性高分子化
合物を用いた場合、不均一電荷輸送層樹脂と相溶するこ
となく相分離するため、上記のような混入の問題は殆ど
発生せず、材料および製造法の選択に当たっての制約が
解消されるという利点を有する。
【0105】尚、均一電荷輸送層中に電荷輸送性マトリ
ックスに囲まれるような電気的不活性な領域が存在して
もよい。例えば表面摩擦力の低減、磨耗の低減、または
表面への異物付着の低減等を目的に低表面エネルギーの
絶縁性粒子等を含有させることができる。また、均一電
荷輸送層には電荷輸送能の向上等を目的に、電荷輸送性
微粒子等を添加こともできる。
【0106】また、本発明の共重合体の中で、電荷輸送
生ブロックと絶縁性ブロックが相溶性であるものは、均
一電荷輸送層として有効に利用できる。さらに、上述し
たように均一電荷輸送層中には電荷輸送性マトリックス
に囲まれるような電気的不活性な領域が存在してもよい
ため、本発明の共重合体の中で、電荷輸送生ブロックが
マトリックス、絶縁性ブロックがドメインとなるミクロ
相分離状態を取るものも、均一電荷輸送層として用いる
ことができる。
【0107】均一電荷輸送層が最表層となる構成におい
ては、機械的強度の観点から、架橋硬化性材料を用い、
形成される均一電荷輸送層を用いることが好ましい。
【0108】本発明で用いる均一電荷輸送層の膜厚は5
0μm以下、好ましくは30μm以下に設定される。塗
布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバ
ーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーテ
ィング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーテ
ィング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用
いることができる。また、セレン等の気相成膜可能なも
のは、真空蒸着法等により直接成膜することもできる。
【0109】本発明において、不均一電荷輸送層および
均一電荷輸送層を含む電荷輸送層全体の合計膜厚は、5
〜50μmが適当であり、好ましくは10〜40μmの
範囲に設定される。
【0110】電荷輸送層が電荷発生層と露光光源の間に
存在する場合、実効の光感度の低下を防ぐ上で、電荷輸
送層は露光波長の光に対し事実上透明であることが望ま
しい。好ましくは、電荷輸送層における露光に用いる光
の透過率は50%以上である。より好ましくは70%以
上であり、さらに好ましくは90%以上である。しかし
ながら、低感度での使用が望まれる場合には、露光波長
の光に対し吸収のある物質を添加し、実効的な光感度を
調整することもできる。
【0111】本発明において、感光層の上に必要に応じ
て設けてもよい前記保護層は、帯電部材から発生するオ
ゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化学的ストレ
ス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接
触に起因する機械的ストレスから感光層を保護し、感光
層の実質の寿命を改善するために有効である。特に、薄
層の電荷発生層を上層に用いる層構成において、効果が
顕著である。
【0112】保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中
に含有させて形成される。導電性材料としては、ジメチ
ルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、
酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金
属酸化物等の材料を用いることができるが、これらに限
定されるものではない。結着樹脂としては、ポリアミ
ド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、
ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコーン樹脂、
メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知
の樹脂を用いることができる。また、アモルファスカー
ボン等の半導電性無機膜も保護層として用いることがで
きる。
【0113】これらの抵抗制御型の保護層の電気抵抗は
109 〜1014Ω・cmの範囲内にあることが必要であ
る。電気抵抗がこの範囲以上になると残留電位が増加
し、他方、この範囲以下になると沿面方向での電荷漏洩
が無視できなくなり、解像度の低下が生じてしまう。
【0114】保護層の膜厚は0.5〜20μmが適当で
あり、好ましくは1〜10μmの範囲に設定される。
【0115】また、保護層を設けた場合、必要に応じ
て、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電
荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができ
る。このブロッキング層としては、保護層の場合と同様
に公知のものを用いることができる。
【0116】本発明の電子写真感光体においては、電子
写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは、
光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、各層また
は最上層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加
することができる。
【0117】酸化防止剤としては、公知のものを用いる
ことができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダー
ドアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、
スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導
体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0118】光安定剤としては、公知のものを用いるこ
とができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾー
ル、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の
誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは
電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子
供与性化合物等が挙げられる。
【0119】さらに、表面磨耗の低減、転写性の向上、
クリーニング性の向上等を目的として、最表面層にフッ
素樹脂等の低表面エネルギーの絶縁性粒子を分散させて
もよい。
【0120】本発明の電子写真感光体を搭載する電子写
真装置としては、電子写真法を用いるものであれば如何
なるものでも構わないが、特にデジタル処理された画像
信号に基づき露光を行う電子写真装置が好ましい。デジ
タル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装
置とは、レーザーまたはLED等の光源を用い、2値化
またはパルス幅変調や強度変調を行い多値化された光に
より露光を行う電子写真装置であり、例としてLEDプ
リンター、レーザープリンター、レーザー露光式デジタ
ル複写機などを挙げることができる。
【0121】登載する本発明の電子写真感光体のE50%
/E10% 値は5以下の値であることが好ましく、好まし
いデジタル特性を発揮するには、E50% /E10% 値が3
未満の値であることがより好ましい。より好ましくは2
未満の値である。
【0122】また、現像後の感光体の初期化あるいは電
子写真特性の安定化等の目的で、画像形成用の露光光源
とは別に、光源を併用することができ、その光源の発光
域としては、不均一電荷輸送層に吸収されるものであっ
ても吸収されないものであっても構わないが、少なくと
も電荷発生層まで光が届く方が好ましい。
【0123】本発明の電子写真装置は、前記した本発明
の電子写真感光体を登載してなることを特徴とするが、
その好ましい一例を図7に模式的に示す。この装置はレ
ーザープリンターであり、感光体ドラム11の周りに前
露光用光源(赤色LED)12、帯電用スコロトロン1
3、露光用レーザー光学系14、現像器15、転写用コ
ロトロン16およびクリーニングブレード17がプロセ
スの順序に順次配置されている。露光用レーザー光学系
14は、発信波長780nmの露光用レーザーダイオー
ドを備えており、デジタル処理された画像信号に基づき
発光する。発光したレーザー光14aはポリゴンミラー
と複数のレンズ、ミラーにより走査されながら感光体上
を露光するように構成されている。なお、18は用紙を
示す。
【0124】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定され
るものではなく、当業者は高分子合成化学および電子写
真技術の公知の知見から、以下の実施例に変更を加える
ことが可能である。 (実施例1)アルミニウム基板上に、ジルコニウムアル
コキシド化合物(商品名:オルガチックスZC540、
マツモト製薬社製)10重量部およびシラン化合物(商
品名:A1110、日本ユニカー社製)1重量部とイソ
プロパノール40重量部およびブタノール20重量部か
らなる溶液を浸漬コーティング法で塗布し、150℃に
おいて10分間加熱乾燥し、膜厚0.1μmの下引き層
を形成した。
【0125】次に、CuKαを線源とするX線回折スペ
クトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が、少なくと
も7.4°、16.6°、25.5°、および28.3
°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシア
ニン微結晶4重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体(商品名:UCARソリューションビニル樹脂VMC
H、ユニオンカーバイド社製)2重量部、キシレン67
重量部、および酢酸ブチル33重量部と混合し、ガラス
ビーズとともにペイントシェーク法で2時間処理して分
散した後、得られた塗布液を浸漬コーティング法で上記
下引き層上に塗布し、100℃において10分間加熱乾
燥し、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0126】次に、特開平6−83077号に記載の2
官能重合開始剤を用いて合成した下記の構造で示される
電荷輸送性ブロック共重合体(2)20重量部をトルエ
ン80重量部に溶解させた溶液を、上記電荷発生層上に
浸漬コーティング法にて塗布した後、115℃で10分
間加熱乾燥させて、膜厚20μmの不均一電荷輸送層を
形成し、図3に示す層構成の電子写真用感光体を作製し
た。
【0127】
【化12】
【0128】なお、GPCおよび1H−NMRより求め
た、(b)ヒドラゾン構造を繰り返し単位に含む電荷輸
送性ブロックと、ポリ(tert−ブチルメタクリレー
ト)からなる絶縁性ブロックの重量平均分子量は、それ
ぞれ、2.0×104 、1.3×104 であり、両者の重量
組成比はおよそ6:4であった。
【0129】このようにして得られた電子写真用感光体
に対し、一部改造を加えた静電複写紙試験装置(エレク
トロスタティックアナライザーEPA−8100、川口
電機製作所社製)を用いて、常温常湿(20℃、40%
RH)の環境下、電子写真特性の評価を行った。コロナ
放電電圧を調整し、感光体表面を−750Vに帯電させ
た後、干渉フィルターを通し750nmに単色化したハ
ロゲンランプ光を感光体表面上で1μW/cm2 の光強
度になるように調整し、7秒間照射したところ、E50%
/E10% 値は2.2と算出され、図2に示すようなS字
型の光誘起電位減衰を示した。 (実施例2)実施例1と同様にして、アルミニウム基板
の上に、下引き層と電荷発生層を形成した。
【0130】次に、”J.Am.Chem.Soc.,Vol.111,pp7641-
7643(1989)" に記載の方法に従って合成した下記の構造
で示される電荷輸送性ブロック共重合体(1)10重量部
をクロロベンゼン90重量部に溶解させた溶液を、上記電
荷発生層上に浸漬コーティング法にて塗布した後、11
5℃で10分間加熱乾燥させて、膜厚5μmの不均一電
荷輸送層を形成した。
【0131】次に、高分子電荷輸送材料である重量平均
分子量8万の下記構造式(4)で示される繰り返し単位
よりなる化合物15重量部をクロロベンゼン85重量部
に溶解した塗布液を、ブレードコーティング法で塗布
し、135℃において1時間加熱乾燥させて、膜厚15
μmの均一電荷輸送層を形成し、図4に示す如き層構成
の電子写真用感光体を作製した。
【0132】
【化13】
【0133】このようにして得られた電子写真用感光体
を、実施例1と同様にして評価したところ、E50% /E
10% 値は2.0と算出され、図2に示すようなS字型の
光誘起電位減衰を示した。 (実施例3)電荷輸送性ブロック共重合体(2)に代え
て、一方のモノマーからなる重合物を作り、該重合物の
末端にアゾ型重合開始剤を連結させ、該マクロ開始剤か
ら他方のモノマーを重合させる方法によって合成した下
記の構造で示される電荷輸送性ブロック共重合体(3)
を用いた以外は実施例2と同様にして、図4に示す層構
成の電子写真用感光体を作製した。
【0134】
【化14】
【0135】このようにして得られた電子写真用感光体
を、実施例1と同様にして評価したところ、E50% /E
10% 値は2.0と算出され、図2に示すようなS字型の
光誘起電位減衰を示した。 (比較例1)不均一電荷輸送層を塗布しない以外は、実
施例2と同様に電子写真用感光体を作製した。
【0136】このようにして得られた電子写真用感光体
の電子写真特性を、実施例1と同様の方法で評価したと
ころ、E50% /E10% 値は5.2と算出され、図1に示
すようなJ字型の光誘起電位減衰を示した。 (比較例2)電荷発生層を塗布しない以外は、実施例2
と同様に電子写真用感光体を作製した。
【0137】このようにして得られた電子写真用感光体
の電子写真特性を、実施例1と同様の方法で評価したと
ころ、全く光感度を示さなかった。 (実施例4)アルミニウム基板の代わりにアルミニウム
ドラムを使用した以外は、実施例2と同様にして、同じ
層構成を有するドラム型の電子写真用感光体を作製し、
レーザープリンター(Laser Press 410
5、富士ゼロックス社製)に搭載し、印字試験を行っ
た。この際、最適な露光量を得るため、レーザー光の光
路にNDフィルターを入れた。なお、画質評価は、1枚
目と2000枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視に
て行った。 (比較例3)アルミニウム基板の代わりにアルミニムド
ラムを使用した以外は、比較例1と同様にしてドラム型
の電子写真用感光体を作製し、実施例4と同様にレーザ
ープリンターに搭載し、印字試験を行った。 (比較例4)次に、CuKαを線源とするX線回折スペ
クトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が、少なくと
も8.3°、13.7°および28.3°に強い回折ピ
ークを有するジクロロ錫フタロシアニン微結晶5重量部
を、ビスフェノールZタイプポリカーボネート樹脂(商
品名:PC−Z、三菱瓦斯化学社製)10重量部および
クロロベンゼン100重量部と混合し、ステンレスビー
ズととともにペイントシェーク法で4時間処理して分散
した後、得られた塗布液を浸漬コーティング法でアルミ
ニウムドラム上にに塗布し、115℃において60分間
加熱乾燥し、膜厚20μmの単層型電子写真感光体を形
成した。得られた単層感光体に対し、実施例4と同様に
レーザープリンターに搭載して印字試験を行った。
【0138】なお、アルミニウムドラムの代わりにアル
ミニム基板を使用した以外は、上記と同様にして電子写
真用感光体を作製し、実施例1と同様に評価したとこ
ろ、本比較例の単層型感光体の光誘起電位減衰特性はE
50% /E10% 値は1.7のS字型であった。
【0139】実施例4と比較例3で得られた印字の品質
を比べたところ、実施例4の方が細線の再現性等の点
で、印字品質が優れていた。
【0140】実施例4と比較例4で得られた印字の品質
を比べたところ、1枚目の印字品質は同等であったが、
2000枚目で比較すると、比較例4では地肌かぶりを生じ
且つ細線の再現性が低下しているのに対し、実施例4で
は1枚目と同等の印字品質が得られた。
【0141】
【発明の効果】本発明による共重合体は、優れた電荷輸
送性と優れた機械的特性を兼ね備えており、それを用い
た電子写真感光体は、高性能で且つ耐久性に優れたもの
となるという卓越した効果を奏する。
【0142】また、本発明の共重合体を含む不均一電荷
輸送層を有する機能分離積層感光体は優れたS字性を示
し、それを使用したデジタル式電子写真装置は、優れた
印字品質および画質を実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 J字型電子写真感光体における露光量と表面
電位の関係を示すグラフである。
【図2】 S字型電子写真感光体における露光量と表面
電位の関係を示すグラフである。
【図3】 支持体上に電荷発生層、不均一電荷輸送層を
順次設けた本発明の電子写真用感光体の例を示す模式的
断面図である。
【図4】 支持体上に電荷発生層、不均一電荷輸送層と
均一電荷輸送層とからなる電荷輸送層を順次設けた本発
明の電子写真用感光体の例を示す模式的断面図である。
【図5】 支持体と電荷発生層との間に下引き層を設け
た本発明の電子写真用感光体の例を示す模式的断面図で
ある。
【図6】 支持体上に電荷発生層、下引き層、不均一電
荷輸送層と均一電荷輸送層とからなる電荷輸送層を順次
設けた本発明の電子写真用感光体の例を示す模式的断面
図である。
【図7】 実施例に用いたデジタル処理された画像信号
に基づき露光を行う本発明の電子写真装置の概略を示す
構成図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体 2 電荷発生層 3 不均一電荷輸送層(S字化電荷輸送層) 4 均一電荷輸送層 11 感光体ドラム 12 前露光用光源 13 帯電用スコロトロン 14 露光用レーザー光学系 15 現像器 16 転写用コロトロン 17 クリーニングブレード 18 用紙
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G03G 5/06 321 G03G 5/06 321

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とを
    備えた電子写真感光体において、該電荷輸送層を構成す
    る電荷輸送材料に、繰り返し単位中に(a)アントラセ
    ン構造、(b)ヒドラゾン構造、(c)トリアリールメ
    タン構造、及び(d)イミダゾール構造の少なくとも1
    つを有する電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含
    むブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 少なくとも電荷発生層と均一な電荷輸送
    性を有する均一電荷輸送層と層内において電荷輸送性の
    不均一な部分を有する不均一電荷輸送層とを備えた電子
    写真感光体であって、不均一電荷輸送層を構成する電荷
    輸送材料に、繰り返し単位中に(a)アントラセン構
    造、(b)ヒドラゾン構造、(c)トリアリールメタン
    構造、(d)イミダゾール構造、及び(e)シリレン構
    造のうち少なくとも1つを有する電荷輸送性ブロックと
    絶縁性ブロックとを含むブロック共重合体またはグラフ
    ト共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光
    体。
  3. 【請求項3】 前記電荷輸送性ブロックと前記絶縁性ブ
    ロックとが互いに非相溶性であることを特徴とする請求
    項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 前記電荷輸送性ブロックが、その繰り返
    し単位として下記一般式(1) で示す如く、主鎖に(a)
    アントラセン構造、(b)ヒドラゾン構造、(c)トリ
    アリールメタン構造、及び(e)シリレン構造から選択
    される1種以上を有することを特徴とする請求項2又は
    3に記載の電子写真感光体。 【化1】 式中、L1 は枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価
    の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、
    1 は下記部分構造式(1) から選ばれる2価の電荷輸送
    活性基を示し、rは0または1から選ばれる整数を意味
    する。 【化2】 式中、R1 およびR2 はそれぞれ独立に水素原子、アル
    キル基、アリール基、アルコキシル基、N−アルキル−
    N−アリールアミノ基、または、N,N−ジアルキルア
    ミノ基を示し、R3 、R7 ないしR11はそれぞれ独立に
    アルキル基、または、アリール基を示し、R4 ないしR
    6 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル
    基、アリール基、アルコキシル基、N−アルキル−N−
    アリールアミノ基、または、N,N−ジアルキルアミノ
    基を示し、YはNまたはCHを示し、mおよびnはそれ
    ぞれ独立に0ないし4から選ばれる整数を意味し、pお
    よびqはそれぞれ独立に0ないし5から選ばれる整数を
    意味する。
  5. 【請求項5】 前記電荷輸送性ブロックが、その繰り返
    し単位として下記一般式(2) で示す如く、側鎖に(a)
    アントラセン構造、(b)ヒドラゾン構造、(c)トリ
    アリールメタン構造、(d)イミダゾール構造、及び
    (e)シリレン構造から選択される1種以上を有するこ
    とを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    電子写真感光体。 【化3】 式中、L2 は枝分れもしくは環構造を含んでもよい3価
    の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、
    2 は下記部分構造式(2) から選ばれる1価の電荷輸送
    活性基を示す。 【化4】 式中、R1 およびR2 はそれぞれ独立に水素原子、アル
    キル基、アリール基、アルコキシル基、N−アルキル−
    N−アリールアミノ基、または、N,N−ジアルキルア
    ミノ基を示し、R3 、R7 ないしR11はそれぞれ独立に
    アルキル基、または、アリール基を示し、R4 ないしR
    6 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル
    基、アリール基、アルコキシル基、N−アルキル−N−
    アリールアミノ基、または、N,N−ジアルキルアミノ
    基を示し、YはNまたはCHを示し、mおよびnはそれ
    ぞれ独立に0ないし4から選ばれる整数を意味し、pお
    よびqはそれぞれ独立に0ないし5から選ばれる整数を
    意味する。
  6. 【請求項6】 前記絶縁性ブロックが、ビニル系モノマ
    ーの重合物からなることを特徴とする請求項1ないし5
    のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  7. 【請求項7】 前記ビニル系モノマーが下記一般式(3)
    で示される化合物の少なくとも1種を含有することを特
    徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。 【化5】 式中、R12ないしR14はそれぞれ独立に水素原子、ハロ
    ゲン原子、アルキル基、またはアリール基を示し、R15
    はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ
    ル基、アシル基、アシルオキシ基、またはアルコキシル
    カルボニル基を示す。
  8. 【請求項8】 前記電子写真感光体が、導電性基体上に
    電荷発生層と電荷輸送層を設けた積層型電子写真感光体
    であって、前記ブロック共重合体またはグラフト共重合
    体が該電荷輸送層中に含まれることを特徴とする請求項
    1ないし7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  9. 【請求項9】 前記電荷輸送層が2以上の層からなり、
    該電荷輸送層の少なくとも1層が前記電荷輸送性ブロッ
    ク共重合体またはグラフト共重合体を含有することを特
    徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
  10. 【請求項10】 50% 電位減衰に要する露光量が10% 電
    位減衰に要する露光量の5倍未満であることを特徴とす
    る請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の電子
    写真感光体。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし10のいずれか1項に
    記載の電子写真感光体と、デジタル処理された画像信号
    に基づき露光を行う露光手段と、を備えたことを特徴と
    する電子写真装置
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6537468B1 (en) 1999-03-23 2003-03-25 Nisshinbo Industries, Inc. Composition for ionically conductive solid polymer, ionically conductive solid polyelectrolyte, binder resin, and secondary battery

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US6537468B1 (en) 1999-03-23 2003-03-25 Nisshinbo Industries, Inc. Composition for ionically conductive solid polymer, ionically conductive solid polyelectrolyte, binder resin, and secondary battery

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