JP3906537B2 - 電子写真感光体、その製造方法及び電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体、その製造方法及び電子写真装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層成膜性が良く、電気的特性に優れる、導電性基体と感光層を含む電子写真用感光体に関する。本発明はまた、これら電子写真感光体の製造方法に関する。本発明はまた、これら電子写真感光体を用いた電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真技術は、高速、高印字品質が得られる等の利点を有するために、複写機、プリンター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を果たしている。
電子写真技術において用いられる電子写真感光体としては、従来からセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料を用いたものが広く知られている。一方、これらの無機系感光体に比べ、コスト、製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有する有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の研究も活発化し、現在では無機系感光体を凌駕するに至っている。樹脂中にフタロシアニン系化合物などを電荷発生材料として分散した単層型の感光体の他、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送をそれぞれ別々の層に担わせる機能分離型積層構成のものが開発されたことにより、材料選択の自由度が増し、著しい性能の向上を遂げ、現在ではこの機能分離積層型の有機感光体が電子写真感光体の主流となっている。機能分離積層型有機感光体用の電荷発生層としては、キノン系顔料、ぺリレン系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、セレン等の電荷発生能を有する顔料を蒸着等により直接成膜したもの、あるいはこれらの顔料を高濃度で結着樹脂中に分散させたものが実用化されている。一方、電荷輸送層としては、ヒドラゾン系化合物、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、スチルベン系化合物等の電荷輸送能を有する低分子化合物を絶縁性樹脂中に分子分散したものが用いられている。
【0003】
ところで、電子写真感光体に要求される性能は年々厳しいものとなっており、さらなる機能分離が行われつつある。例えば、繰り返し使用による表面層の摩耗および傷等の問題に対して、感光層に表面保護層を積層し機械的特性と電気的特性を分離し設計する検討が多数行われている。また、電荷輸送層を複数層として、最表層の電荷輸送層に機械的特性を持たせ、下層の電荷輸送層に電気的な特性を持たせるという機能分離設計も検討されている。例えば、下層の電荷輸送層を不均一電荷輸送層とし光励起電位減衰曲線をS字型(図12を参照)とすることが提案されている(特開平9−96914号公報)さらにまた、電荷発生層から電荷輸送層への電荷の注入性の改善を目的に、電荷発生層と電荷輸送層の間に電荷輸送性材料よりなる中間層を積層する検討も行われている。感光体はこのような機能分離設計に基づく多層化が望まれているが、現在主流であるスプレー塗布、浸漬塗布などの湿式塗布法で積層成膜する場合、下層を溶解する、下層にクラックを発生させる、下層の低分子成分が拡散、混合するなどの問題があり、下層、上層ともに上記問題のない組合せを選択しなければならず、材料選択上の大きな制約となっていた。これに対し、絶縁性の中間層を挿入し下層が侵されることを防止しようとする試みがなされている(特開平4−171455号公報)。しかし、この場合は絶縁性の中間層であるため、光感度の低下、残留電位の上昇などの問題があった。また、特に下層を電荷輸送性材料を含む層とした場合、例えば、ヒドラゾン系化合物、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、スチルベン系化合物等の電荷輸送能を有する低分子化合物を絶縁性樹脂中に分子分散したものを下層とした場合は、低分子成分が拡散、混合しやすいという問題があった。これに対し、電荷輸送性材料を高分子化したものを下層とすることで低分子成分が拡散、混合するという問題は回避できるようになった。しかし、電荷輸送性材料を高分子化したのみでは溶解やクラックに対しての効果は期待できない。特に、クラックは殆どの有機溶剤系で発生するものが多い。これに対しては、電荷輸送性高分子材料の末端基を利用して架橋する方法などが提案されているが、末端基は数が少なく十分な硬化は行えなかった。また、電荷輸送性高分子の分子量を減らして末端基を増やしたり、電荷輸送性高分子の鎖中に反応性基を導入すると、電荷輸送性への悪影響が原因と思われる電気的特性の悪化、例えば光感度の低下、残留電位の悪化、繰り返し安定性の低下などの問題があった。
【0004】
これらとは別に、電荷輸送性を有するポリシランよりなる共重合体ブロックとアニオン共重合性モノマーの重合体ブロックよりなるブロック共重合体中の、アニオン共重合性モノマーの重合体ブロック中に架橋性基を導入して架橋することが提案されている(特開平2−133416号公報、特開平2−153359号公報)。しかし、ポリシランは紫外線による劣化が激しく、問題となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記のような事情に鑑みなされたものであって、電荷輸送性に優れ、積層成膜時に問題の発生がなく、積層成膜の材料設計上の自由度が高い電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電荷輸送材料および高分子材料に関して鋭意検討を重ねた結果、所望とする機能を有する複数のブロックを共有結合で連結させると云うブロックあるいはグラフト共重合化の手法により、各機能を損ねることなく、多機能を有する材料が得られ、架橋により分子構造が3次元化された、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックからなる共重合体が電荷輸送材料として優れた総合特性を有し、好適であることを見いだし本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題は少なくとも導電性基体上に、電荷発生材料と電荷輸送材料を含有する感光層を設けた電子写真感光体において、前記電荷輸送材料として架橋により分子構造が3次元化された共重合体を少なくとも含み、前記共重合体が絶縁性ブロックと電荷輸送性ブロックとを含み、前記電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有し、前記共重合体の架橋部位が主として絶縁性ブロックに存在し、前記共重合体は電荷輸送性の相と絶縁性の相に相分離しており、かつ前記共重合体を含む層の上に感光層、電荷発生層、電荷輸送層、または表面保護層のいずれかの層が設けられていることを特徴とする電子写真感光体を提供することによって解決される。
【0007】
本発明によれば、感光層を形成するマトリックス材料に共重合により電荷輸送性を持たせ、かつ、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの導入により電荷輸送性の相と絶縁性の相に相分離した構造とすることにより電荷輸送能を損なうことなく、架橋により分子構造を3次元化することにより耐溶剤性を高めることが可能となった。また、電荷輸送性ブロックは炭素原子を主鎖中に有するため、紫外線による劣化も少ない。
特に、前記相分離架橋高分子化合物の架橋部位が、主として絶縁性ブロックに存在するので、絶縁性ブロック中の架橋部位や架橋できずに残存する未架橋部位が、空間的に電荷輸送性部位から離れて存在するため、電荷輸送性能に与える悪影響を最小限に抑えることが可能となる。このため、電荷輸送性が悪化せず、光感度、残留電位、電荷輸送速度、繰り返し安定性に優れた電子写真感光体を提供することができる。さらにまた、電荷輸送性部位と架橋部位の設計の自由度が大きくなり、電子写真特性と耐溶剤性の両立を容易とすることができる。
【0008】
また、本発明の感光体は、前記架橋により分子構造が3次元化された共重合体中の前記電荷輸送性ブロックの繰り返し単位中に、少なくとも、下記一般式(1)または(2)で示されるトリアリールアミン構造を含む繰り返し単位を含有することにより、すぐれた電荷輸送性能を有することとなる。
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
さらにまた、前記絶縁性ブロックが、ビニル系モノマーの重合物を含むことにより、機械的強度、可撓性、可視光および赤外光透過性、化学的安定性、絶縁性等の点で好ましい。特に、該ビニル系モノマーが下記一般式(3)で示される化合物の少なくとも1種、および下記一般式(4)で示される架橋可能な官能基を有する化合物の少なくとも1種を含有するビニル系モノマーの共重合体であることが好ましい。
【0012】
【化7】
【0013】
【化8】
【0014】
また、本発明における前記共重合体は、架橋可能な官能基を有する絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含むブロック共重合体またはグラフト共重合体の架橋重合物であることが好ましく、これにより均一で良好な膜が形成される。
さらにまた、前記共重合体が、ヒドロキシ基を有する、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含む共重合体と、多価のイソシアネート化合物の架橋重合物であることが好ましい。
【0015】
さらにまた、前記共重合体が、絶縁性ブロックと電荷輸送性ブロックとを含み、前記電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有する共重合体中の官能性基同士の縮合反応による架橋重合物であることにより、架橋剤を添加する必要がなく、電荷輸送性の相に架橋剤が残留するために生じる電荷輸送性への悪影響をなくすことができる。特にアルコキシシリル基は、アルコキシシリル基同士の縮合反応による架橋が可能であり、適度な反応性を有しているため、合成や取扱いに有利であるとともに、容易に架橋反応を起こすことができ、さらに、縮合により生じるアルコールも気化するので、感光層中に残留せず好ましい官能性基である。
また、前記架橋された共重合体を含む層と接する感光層、または、保護層が、電荷輸送性高分子化合物を含むことにより、前記共重合体中の絶縁性相への電荷輸送成分の侵入がなく、特性が良好となる。
【0016】
さらに本発明の電子写真感光体においては、帯電電位を50%減衰させるのに要する露光量E50% と、10%減衰させるのに要する露光量E10% との比E50% /E10% が5未満、すなわち、後述する光誘起電位減衰曲線がS字型の電子写真感光体とすることが可能であり、これは優れたデジタル特性を発揮するため、デジタル方式の電子写真装置への応用の点からみて好ましい。
このような電子写真感光体は、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含み、電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有し、架橋可能な官能基が主に絶縁性ブロックにある、分子構造が3次元化されていないブロック共重合体またはグラフト共重合体を結着樹脂の主な成分とする層を成膜したのち、架橋により該ブロック共重合体またはグラフト共重合体の分子構造を3次元化し、次いで上層を構成する成分を湿式塗布法により積層成膜する方法によって製造することができ、このような製造方法を採用することにより、低コストで電荷輸送性能に優れた電子写真感光体を得ることができる。
【0017】
さらにまた、前記製造方法において、架橋可能な官能基を主として絶縁性ブロックに存在させることにより、電荷輸送性の相に架橋部位や、未架橋部位を存在させないことが可能であり、電荷輸送性能が良好な電子写真感光体を得ることができる。
本発明はまた、電荷輸送能に優れたこれらの電子写真感光体を使用することによって、繰り返し安定性と信頼性に優れた、電子写真装置、及び装置ユニットを提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電子写真感光体を構成する各層についてさらに詳しく説明する。
なお、以下において、「架橋により分子構造が3次元化された、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含む共重合体」を「架橋された共重合体」と、「架橋可能な官能基を有する、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含む共重合体」を「架橋可能な官能基を有する共重合体」と、さらに「架橋可能な官能基を有する、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含む共重合体であって、未だ架橋が行われていない共重合体」を「架橋前の共重合体」と、略記する。
【0019】
また、本発明において「絶縁性」とは、その輸送エネルギーレベルが、主たる輸送電荷の輸送エネルギーレベルから大きくかけ離れており、通常の電界強度では、実質的に輸送電荷が注入されることがなく、主たる電荷にとって事実上の電気的絶縁状態にあることを意味する。また、分子構造が3次元化されていないとは、分子構造が100%3次元化されていないことではなく、その共重合体が塗工液中でほぼ均一に溶解し、塗布できうる程度の流動性が保たれる範囲であれば官能性基の一部が架橋していても構わない。
まず、本発明の架橋された共重合体を使用する電子写真感光体の例を図を用いて説明する。なお、図面において、感光体を構成する各層を斜めのハッチングで表しているが、本発明の架橋された共重合体を含有する層は、ハッチングに加え、点が書き加えられている。
【0020】
感光層は樹脂中に電荷発生物質を分散含有してなる単層型であっても電荷発生層と電荷輸送層よりなる積層型であってもよい。さらに電荷輸送層は2層以上であってもよい。さらにまた、表面保護層があってもよい。架橋された共重合体はどの層に含まれていてもよいが、最表層ではない。
図1及び図2は本発明の電子写真用感光体の断面を示す模式図である。図1は導電性支持体1の上に、架橋された共重合体と電荷発生材料を含む感光層2が設けられており、さらに表面保護層8が積層されている単層型の例である。図2においては、導電性支持体1と感光層2の間に、さらに下引き層3が設けられている。
図3および図4は、本発明の他の形態の電子写真用感光体の断面を示す模式図である。図3においては、導電性支持体1上に電荷発生層4が設けられ、架橋された共重合体を含む電荷輸送層5が設けられており、さらに表面保護層8が積層されている積層型の例である。図4においては、導電性支持体1と電荷発生層4の間に、さらに下引き層3が設けられている。
【0021】
図5および図6は、本発明の他の形態の電子写真用感光体の断面を示す模式図である。図5においては、導電性支持体1上に電荷発生層4が設けられ、更にその上に架橋された共重合体を含む第一の電荷輸送層6と第2の電荷輸送層7が設けられている。図6においては、導電性支持体1と電荷発生層4の間に、さらに下引き層3が設けられている。
図7および図8は、本発明の他の形態の電子写真用感光体の断面を示す模式図である。図7においては、導電性支持体1上に、架橋された共重合体を含む電荷輸送層5が設けられ、その上に電荷発生層4が設けられている。図8においては、さらに表面保護層8が設けられている。
図9および図10は、本発明の他の形態の電子写真用感光体の断面を示す模式図である。図9においては、導電性支持体1上に、架橋された共重合体を含む下引き層3が設けられ、その上に電荷発生材料を含む感光層2が設けられている。図10においては、導電性支持体1上に、架橋された共重合体を含む下引き層3が設けられ、その上に電荷発生層4と電荷輸送層5が設けられている。
【0022】
図1から図10で示されるように、本発明においては、電荷輸送性が優れている、分子構造が架橋により3次元化された、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含み、該ブロックが相分離した共重合体を含む層を、感光層、電荷輸送層、下引き層などとして形成し、この層の上に、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、又は表面保護層などを設けることを特徴とする。
【0023】
本発明の電子写真感光体には、さらに所望により乱反射層、下引き層、表面保護層等を含むことができる。
【0024】
架橋された共重合体を含む層は、分子構造が3次元化されていない架橋前の共重合体、すなわち、架橋可能な官能基を有する、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含む共重合体と、必要により架橋剤及び/または触媒を混合した塗工液より成膜し、架橋のための処理を行うことにより得られる。こうして作製された、架橋された本発明の共重合体の層の上に、上層としての感光層、電荷発生層、電荷輸送層、又は表面保護層などを同様に湿式塗布法により積層成膜する。本発明の前記架橋された共重合体は主として絶縁性ブロック部分が架橋されており耐溶剤性に優れているため、上層を積層成膜する際に溶解しない、クラックが発生しないなどの製造上の利点を有する。また、この際電荷輸送性が犠牲になることもない。
【0025】
架橋された共重合体を含む層には、結着樹脂の主な成分として該共重合体を30重量%以上含まれていることが好ましい。より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
【0026】
架橋可能な官能性基としては、「架橋剤ハンドブック」(大成社、昭和56年)、「反応性ポリマーの合成と応用」(シーエムシー、1989年)等の文献に記載されている架橋可能な官能基であれば如何なるものでも構わないが、ヒドロキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基、ハロゲン基、イソシアナート基、メルカプト基、クロルスルホン基、アミノ基、アミド基、第三級アミノ基、ニトリル基もしくは、ピリジン基、さらに、酸無水物構造を持つもの、二重結合を持つもの等が挙げられる。これら架橋可能な官能性基は主として絶縁性ブロック中に存在し、好ましくは絶縁性ブロック中にのみ存在している方が、電荷輸送ブロックより形成される電荷輸送性の相への影響を与えにくく、電気特性上有利である。
【0027】
架橋反応は、その反応に応じて、架橋剤、及び/または触媒、及び架橋条件が与えられる。架橋反応、架橋剤、触媒、及び架橋条件、及びその組合せとしては、架橋剤ハンドブック(大成社、昭和56年)、反応性ポリマーの合成と応用(シーエムシー、1989年)等の文献に記載されている架橋可能な官能基が架橋するものであれば如何なるものでも構わない。架橋剤としては、例えば硫黄系化合物、有機過酸化物、多価のフェノール樹脂、多価のアミノ樹脂、多価のハロゲン化合物、多価のアミン化合物、多価のアゾ化合物、多価のイソシアネート化合物、多価のシリルイソシアネート化合物、多価のエポキシ化合物、シラン化合物、チタネート化合物、多価のカルボン酸化合物、酸無水物などである。有機過酸化物としてはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートおよびt−ブチルパーオキシベンゾエイトなどのパーオキシエステル類、ケトンパーオキサド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、およびパーオキシジカーボネート類などを挙げることができる。これら架橋剤を上記共重合体と予め混合したものを塗布し架橋させたり、上記共重合体を予め塗布した上にこれらをスプレイや浸漬、蒸気への暴露にて接触させて架橋させる。
【0028】
架橋可能な官能性基がヒドロキシ基であり、且つ、架橋剤として多価のイソシアナート化合物とした場合はとくに好ましい。架橋可能な官能性基がヒドロキシ基であり、且つ、架橋剤として多価のイソシアナート化合物とした場合、触媒として酢酸金属塩、金属塩化物、硫酸銅、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどを加えることができる。また、架橋を促進するため、加熱することができる。多価のイソシアネート化合物としては、イソシアネート単量体から得られる誘導体やプレポリマなどのポリイソシアネート変性体を用いることがより望ましい。これらの例としては、官能基数3以上のポリオールにイソシアネートを付加したアダクト変性体、ウレア結合を有する化合物をイソシアネート化合物で変成したビュレット変性体、ウレタン基にイソシアネートを付加したアロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、などが好ましく、他にもカルボジイミド変性体などが用いられる。特に、構造式(1)および(2)で表されるものに代表される、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット変性体、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体は、機械的強度、電気特性の面で特に優れた特性を示す。
【0029】
【化9】
【0030】
【化10】
【0031】
また、他のイソシアネート化合物として、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソソアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、などの一般的なイソシアネート単量体があげられる。前記ポリイソシアネート変性体に含まれるが、イソシアネート基の活性を一時的にマスクするためのブロッキング剤を反応させたブロックイソシアネートも好ましく用いることができる。これは、塗布液のポットライフを延長させる点からも好ましいものである。
【0032】
また、架橋剤として使用できるシラン化合物、チタネート化合物の例としては以下に示すものを挙げることができる。その具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(β−メトキシエトキシ)ビニルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β- (3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルメタクリルイソステアロイルチタネート等の公知の化合物が挙げられる。
【0033】
また、架橋された共重合体が、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含む共重合体中の官能性基同士の縮合反応による架橋重合物である場合には、架橋剤を添加する必要がなく、電荷輸送性の相に架橋剤が残留するために生じる電荷輸送性への悪影響をなくすことができる。特に、架橋部位が主に絶縁性ブロックに存在する場合は、および、架橋可能な官能基が主に絶縁性ブロックにある共重合体の場合は、電荷輸送性の相中に架橋剤の残留が無い上に、電荷輸送性の相中に架橋部位、及び、未架橋部位も無いため、電荷輸送性を損なうことが無く、特に好ましい。官能性基同士の縮合反応できる官能基の例として、アルコキシシリル基同士、イソシアネート基同士、ヒドロキシル基とイソシアネート基などが挙げられる。特に、アルコキシシリル基は適度な反応性を有しているため、合成や取扱いに有利であるとともに、容易に架橋反応を起こすことができ、さらに、縮合により生じるアルコールも気化することにより感光層中に残留せず好ましい。架橋可能な官能性基がアルコキシシリル基の場合は触媒として、酢酸、塩酸などの酸、または、アルカリ、有機金属化合物等を加えることができ、さらに水を加えてもよい。また、架橋を促進するため、加熱することができる。
【0034】
本発明に用いる架橋前の共重合体は、その構成ブロックの連結形式は如何なるものでも構わない。すなわち、電荷輸送性ブロックをA、絶縁性ブロックをBとして、AB型、ABA型、BAB型、(AB)n 型、(AB)n A型、およびB(AB)n 型のブロック共重合体、電荷輸送性ブロックを主鎖、絶縁性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体、絶縁性ブロックを主鎖、電荷輸送性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体、もしくはABA型等のブロック共重合体の側鎖にAおよび/またはBをグラフト化したブロック−グラフト共重合体等のブロック共重合体、グラフト共重合体、ブロック−グラフト共重合体等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いる架橋前の共重合体の架橋可能な官能基は、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの両方、または、どちらか一方に含まれていればよい。絶縁性ブロックが、架橋可能な官能基を有する繰り返し単位を重合したブロックと架橋可能な官能基を有しない繰り返し単位を重合したブロックより形成されていてもよい。また、絶縁性ブロックが架橋可能な官能基を有する繰り返し単位を重合したブロックのみで形成されていても良い。特に、架橋可能な官能基が絶縁性ブロックのみに存在し、絶縁性ブロック中の架橋可能な官能基を有する繰り返し単位と架橋可能な官能基を有しない繰り返し単位の組成比は、1:20〜10:1の範囲が好ましく、さらに1:5〜3:1の範囲がより好ましい。架橋可能な官能基を有する繰り返し単位の組成比が前記上限値を上回ると、脆くなる傾向があり、架橋可能な官能基を有する繰り返し単位の組成比が前記下限値を下回ると、機械的強度が悪化する傾向にある。
【0036】
架橋前の共重合体は、電荷輸送ブロックと絶縁性ブロックを含むブロック共重合体またはグラフト共重合体の電荷輸送ブロックまたは絶縁性ブロックの生成の際に、架橋可能な官能基を有する繰り返し単位をブロック中にランダム共重合、または、ブロック共重合させることによって得られる。また、架橋可能な官能基を持たない電荷輸送ブロックと絶縁性ブロックよりなるブロック共重合体またはグラフト共重合体の末端に、架橋可能な官能基を有する繰り返し単位を重合させても得ることができる。
【0037】
ポリマーブレンド、ポリマーアロイの分野でよく知られているように、一般に、異なる高分子は互いに非相溶であり、それらの混合物およびブロック共重合体またはグラフト共重合体は相分離状態を取る。一般に、単なる混合物、すなわち、ポリマーブレンドではその相分離のスケールは数μm以上のマクロなものとなる(マクロ相分離)。これに対し、各成分が共有結合で連結されたブロック共重合体およびグラフト共重合体では、サブミクロン以下の微細なドメインからなる相分離状態を与える(ミクロ相分離)。ブロック共重合体およびグラフト共重合体における相分離のスケールは、一般的に各ブロックの平均長と同一次元であり、分子量にほぼ比例することが知られている。本発明に用いる電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックを含む共重合体も、一般的にミクロ相分離状態を取る。
【0038】
一般的に、相分離性ブロックまたはグラフト共重合体における相分離状態は構成ブロックの種類、分子量、および両ブロックの組成比等により、熱力学的に最も安定な構造が存在し、Aブロック、Bブロックからなる共重合体では、連結形式には依らず、A/B組成比にのみ依存し、A/B比の増加に伴い、Aが球状ドメインでBがマトリックス、Aが棒状ドメインでBがマトリックス、A/B交互層、Bが棒状ドメインでAがマトリックス、Bが球状ドメインでAがマトリックスへと系統的に変化する。但し、湿式塗布法により、成膜する場合には、用いる溶媒および乾燥速度等により、相分離状態を任意に制御することができる。例えば、A/B比が大きく熱力学的にはB球Aマトリックスを取る場合でも、塗布溶媒として、Bの良溶媒であり且つAの貧溶媒である溶媒を選択すれば、A球Bマトリックス構造を得ることができる。また、A、B両者の良溶媒を用い、急速に溶媒を除去すると、スピノーダル分解状態で凍結した相分離構造(変調構造)を得ることがである。また、A/B比が大きく熱力学的にはB球Aマトリックスを取る共重合体に、Bのみと相溶性のある重合体を添加すしていくと、添加量の増加に伴い、B球が肥大化し、最終的には、Aが球、BおよびBのみと相溶性のある重合体がマトリックスとなる相分離構造を与える。
【0039】
本発明に用いる架橋可能な官能基を有する共重合体の合成方法としては、例えば、「第4版実験化学講座28高分子合成」(丸善、1992)、マクロモノマーの化学と工業(アイピーシー、1990)、高分子の相溶化と評価技術(技術情報協会、1992)、高分子新素材One Point 12ポリマーアロイ(共立、1988)等の文献に記載されているブロック共重合体またはグラフト共重合体を与え得る任意の適当な合成法を用いることができる。
例えば、予め電荷輸送性重合体と絶縁性重合体を合成し、それら重合体同士を反応結合させることによって所望とするブロック共重合体が得られる。また、電荷輸送性ブロックを形成するモノマーと絶縁性ブロックを形成するモノマーの重合形式が同じであり且つ両者の反応性が大きく異なる場合には、単にそれらモノマーの混合物を重合させることで、まず、反応性の高い方のモノマーが重合し、該モノマーが消費された後、反応性の低い方のモノマーが重合し、所望とするブロック共重合体が得られる。また、予め一方のモノマーの重合物を合成し、該重合物の末端および/または側鎖にアゾ、過酸エステル、パーオキシ、ジチオカルバメート、アルカリ金属アルコラート、アルカリ金属アルキル等の重合開始能を有する基を含む重合開始剤を導入し、該重合開始剤により、他方のモノマーを重合させることによっても、所望とするブロック共重合体またはグラフト共重合体が得られる。この方法によれば、重縮合または重付加系重合体と付加重合または開環重合系重合体からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体を容易に得ることができる。また、分子中にアゾ、過酸エステル、パーオキシ等の重合開始能を有する基を複数含む化合物を用い、まず、一部の重合開始基から、一方のモノマーを重合させ、次に残りの重合開始基から、他方のモノマーを重合させることによっても所望とするブロック共重合体が得られる。また、カチオンリビング重合法、アニオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法等のリビング重合法により、各モノマーを逐次重合させることによっても所望とするブロック共重合体を得ることができる。リビング重合法は、各ブロックの分子量を容易に制御でき、且つ分子量分布の狭い重合体を与え得ると云う利点を有する。また、イモータル重合法、Iniferter 法等により、各モノマーを逐次重合させることによっても所望とするブロック共重合体を得ることができる。さらにまた、予め一方のモノマーの重合物の末端に他方のモノマーを導入したマクロモノマーを合成し、該マクロモノマーを重合することによって所望とするグラフト共重合体を得ることができる。
【0040】
本発明の共重合体の電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの分子量は如何なる値でも構わないが、高分子特性を発揮するには、2000以上であることが望まれる。また、相分離しやすくするためにも電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの分子量は、2000以上、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは20000以上である。分子量の上限に関しては電気的特性上、また、機械特性上の制限は特にないが、湿式塗布法によって成膜を行う場合には、適当な溶液粘度を与える範囲内にあることが必要となり、一般的には、5000000以下であることが好ましい。
【0041】
本発明の共重合体中の電荷輸送ブロックと絶縁性ブロックの重量比率は、1:9〜9:1の間に設定される。とくに、2:8〜8:2が好ましく、さらに、3:7〜7:3が特に好ましい。電荷輸送ブロックの重量比率が上記範囲より小さいと電荷輸送性を十分に発揮することができず、光感度の低下、残留電位の上昇、繰り返し安定性の低下などの障害を起こす。また、電荷輸送ブロックの重量比率が上記範囲より大きいと、耐溶剤性が低くなる傾向にある。
本発明の架橋された共重合体、及び、架橋前の共重合体の電荷輸送ブロックとしては、その繰り返し単位中に電荷輸送性を有する構造を含み、且つ、炭素原子を主鎖中に有するものであれば、ポリビニカルバゾール等、如何なるものでも構わないが、その繰り返し単位中にトリアリールアミン構造を含むものは電荷移動度、電荷注入性、電荷寿命、可視光および赤外光透過性、化学的安定性等の点で好ましい。
特にトリアリールアミン構造として下記一般式(1)または(2)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位として含有するものが好ましい。
【0042】
【化11】
【0043】
上記一般式(1)中、Ar1 及びAr2 はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
X1 は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、メチレンジフェニル基、シクロヘキシレデンジフェニル基、オキシジフェニル基、チオジフェニル基等、およびこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、またはハロゲン置換体等が挙げられ、この中でも特に置換もしくは未置換のビフェニレン基が電荷輸送性の点で、特に好ましい。
【0044】
X2 及びX3 はそれぞれ独立に置換または未置換のアリーレン基から選ばれ、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基等、およびこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、またはハロゲン置換体等が挙げられる。
L1 は枝分れまたは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、シロキサン結合等から選ばれる結合基を含み、且つ炭素数が20以下であるものが好ましい。その具体例としては以下のものが上げられる。
【0045】
【化12】
【0046】
【化13】
【0047】
上記一般式(2)中、Ar3 及びAr4 はそれぞれ独立に置換または未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、炭素数1〜12個のアルキル基またはアルコキシ基、ジフェニルアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
L2 は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、炭素数が20以下のものが好ましい。その具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
本発明の共重合体中の絶縁性ブロックとしては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン等、如何なるものでも構わないが、機械的強度、可撓性、可視光および赤外光透過性、化学的安定性、絶縁性等の点で、ビニル系モノマーの重合物からなることが好ましい。
特にビニル系モノマーとして、下記一般式(3)で示されるビニルモノマーの少なくとも1種を重合し得られるものが好ましい。とりわけ、下記一般式(3)で示されるビニルモノマーの少なくとも1種、および下記一般式(4)で示される架橋可能な官能基を有するビニルモノマーを共重合して得られるものが好ましい。
【0051】
【化16】
【0052】
【化17】
【0053】
上記一般式(3)中、R1 〜R3 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または置換もしくは未置換のアルキル基またはアリール基から選ばれる。置換もしくは未置換のアルキル基またはアリール基の具体的としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、クロロメチル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
R4 は置換もしくは未置換のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基から選ばれる。アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、およびアルコキシカルボニル基の炭素数は1〜18個が好ましく、またアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ピレニル等が挙げられる。置換基としては、ハロゲン原子、フェニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
上記一般式(4)中、R5 〜R7 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または置換もしくは未置換のアルキル基またはアリール基から選ばれる。置換もしくは未置換のアルキル基またはアリール基の具体的としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、クロロメチル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
R8 はクロルスルホン基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトリル基、イソシアナート基、アミノ基、エポキシ基もしくはアルコキシシリル基で置換された置換アルキル基、置換アリール基、置換アルコキシ基、置換アシル基、置換アシルオキシ基、または置換アルコキシカルボニル基から選ばれる。該置換アルキル基としては、枝分かれもしくは環構造を含んでも良いが、炭素数が1〜20個のものが好ましく、また該置換アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ピレニル等が挙げられる。
【0054】
本発明の架橋可能な官能基を有する共重合体において、電荷輸送性ブロック中の繰り返し単位として含有する、上記一般式(1)で表される構造式の具体例を下記表1〜4に示し、上記一般式(2)で表される構造式の具体例を下記表5に示し、また、絶縁性ブロック中の繰り返し単位として含有する、上記一般式(3)で表されるモノマーの具体例を下記表6〜7に、上記一般式(4)で表される架橋可能な官能基を有するモノマーの具体例を下記表8〜10に示すが、本発明はこれらに限られるものではない。
本発明の電荷輸送性共重合体の具体例としては、下記表1〜5に示される構造から選ばれる任意のものを繰り返し単位とするブロックと下記表6〜10に示される構造から選ばれる任意のものを繰り返し単位とするブロックとからなるブロック共重合体が挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
本発明の共重合体中の絶縁性ブロックまたは絶縁性の相の抵抗値としては、1013Ωcm以上が好ましく、特に、1014Ωcm以上が好ましい。上記値より絶縁性ブロックの抵抗値が低くなると、絶縁性ブロック中に輸送電荷が侵入し、電荷輸送性の低下、光感度の低下、残留電位の上昇、繰り返し安定性の低下などの障害が起こる。尚、共重合体中の電気抵抗率を、直接測定することは困難であり、絶縁性ブロックまたは絶縁性の相と同一構造の高分子の電気抵抗率で代用することができる。
本発明の共重合体中の電荷輸送性ブロックまたは電荷輸送性の相の電荷移動度は、電子写真感光体の応答速度を支配する一因子であり、移動度が高いものほど、露光から現像までの時間の短い高速型、または小型の電子写真装置に好適に用いられる。本発明の電子写真装置においては、少なくとも現像に用いる電界強度域において、10-7cm2 /Vs以上であることが好ましい。より好ましくは10-6cm2 /Vs以上である。尚、電荷輸送性ブロックまたは電荷輸送性の相の電荷移動度を、直接測定することは困難であり、電荷輸送性ブロックまたは電荷輸送性の相と同一構造の電荷輸送性高分子の電荷移動度で代用することができる。移動度の測定は、当業界における常法である、Time-of-Flight法により行うことができ、電界強度5V/μmでの値で代表される。
本発明の架橋された共重合体の電荷輸送性の相と絶縁性の相の相分離構造は、海島構造、シリンダー型の構造ラメラ型の構造、変調構造等どのような相構造でも良い。共重合体中の相分離状態の直接的観察は、染色した切片を透過型電子顕微鏡で観察する方法などがある。しかし、前述の様に共重合体中の相の電気抵抗、及び電荷移動度の測定は困難であるため、直接的に電荷輸送性の相と絶縁性の相とに相分離しているかどうかを確認することは困難である。ところが、高分子の性質上、二種類以上の構成よりなるブロックの共重合体中で相分離構造が確認されれば、各々の相は、同種のブロックにより構成されるとみなすことができる。そのため、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックよりなる共重合体であり、且つ、相分離がなんらかの方法で確認できれば、電荷輸送性ブロックより構成される相と絶縁性ブロックより構成される相に相分離しているとみなせる。当然のことながら、電荷輸送性ブロックより構成される相は電荷輸送性の相であり、絶縁性ブロックより構成される相は絶縁性の相である。相分離の確認方法としては、顕微鏡法の他にも例えば、光散乱法、X線小角散乱法、熱分析などがある。
【0066】
また、通常の感光体の光誘起電位減衰曲線が図11に示すようなJ字型であるのに対し、本発明の感光体構成により光誘起電位減衰曲線が図12に示す様なS字型の電子写真感光体とすることができる。光誘起電位減衰曲線のS字型の尺度には、例えば、帯電電位を50%減衰させるのに要する露光量E50% と10%減衰させるのに要する露光量E10% との比E50% /E10% を用いることができる。理想的なJ字型感光体で電位減衰が露光量に比例している場合、E50% /E10% 値は5となる。一般的なJ字型感光体では、電界強度の低下に伴い、電荷発生効率および/または電荷輸送能が低下し、E50% /E10% は5を越える値を示す。一方、S字型の究極である、ある露光量までは全く電位減衰せず、その露光量で一気に残留電位レベルまで電位減衰する階段状の光誘起電位減衰曲線では、E50% /E10% 値は1となる。したがって、S字型とはE50% /E10% 値が1〜5の範囲内にあるものとして規定される。好ましいデジタル特性を発揮するには、E50% /E10% 値が3未満の値であることが好ましい。より好ましくは2未満の値である。
【0067】
電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、共重合体に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子供与性化合物等があげられる。
さらに、本発明の感光体において、主なマトリックスとして架橋された共重合体を含む層中には、各種の粒子を分散させ含有することができる。例えば、干渉縞の発生防止などの目的のため、有機フィラー、無機フィラー等の絶縁性粒子を分散させてもよい。
【0068】
導電性支持体としては、不透明または実質的に透明であることができ、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及び、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム、ガラス等、あるいは導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラスチックフィルムおよびガラス等があげられる。これらの導電性支持体は、ドラム状、シート状、プレート状等、適宜の形状のものとして使用されるが、これらに限定されるものではない。さらに必要に応じて導電性支持体の表面には、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。例えば、表面の酸化処理や薬品処理、および、着色処理等、または、砂目立てなどの乱反射処理等を行うことができる。
【0069】
また、導電性支持体と感光層の間に、一層または複数層の下引き層を設けてもよい。この下引き層は、感光層の帯電時において導電性支持体から感光層への電荷の注入を阻止すると共に、感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用、あるいは場合によっては導電性支持体からの光の反射防止作用等を示す。
上記下引き層としては、前記の本発明の架橋された共重合体の他、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の高分子化合物、または、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性金属有機化合物を、単独または2種以上を混合して用いることができる。また、帯電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も使用可能である。
本発明の架橋された共重合体を下引き層として用いる場合は、図9及び10で示すように、その上に感光層又は電荷発生層等が設けられる。
また、下引き層の膜厚は、0.01〜10μmが適当であり、好ましくは0.05〜5μmの範囲である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0070】
本発明の電子写真用感光体の感光層が単層型の場合は、結着樹脂中に電荷発生材料を分散、塗布することにより作製することができる。本発明の架橋前の共重合体を主な成分とする結着樹脂中に電荷発生材料を分散、塗布することにより作製することが好ましい(図1及び図2)。さらにまた、光感度の向上、残留電位の低下などの目的のために電子親和性を有する材料を含むことができる。さらにまた、化学的安定性を保つため、酸化防止剤、および、または、紫外線吸収剤を含むことができる。
本発明の単層型感光体における感光層中の電荷発生材料と結着樹脂との配合比(重量比)は、1:1〜1:100の範囲が好ましい。より好ましくは、1:3〜1:50の範囲に設定される。電荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より多いと、暗減衰を増大し機械的特性を悪化させる。また、前記範囲より少ないと光感度の低下、残留電位の増大等の障害が起きる。また、単層型における感光層の膜厚は一般的には、1〜100μmが適当であり、好ましくは5〜50μmの範囲に設定される。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0071】
本発明の電子写真用感光体の電荷発生層は、電荷発生材料を真空蒸着法により、または、電荷発生材料を結着樹脂中に分散または溶解したものを被覆することにより作製できる。また、該電荷発生層中に電荷輸送性低分子化合物、および、または、電荷輸送性高分子化合物を含むことができる。さらにまた、化学的安定性を保つため、酸化防止剤、および、または、紫外線吸収剤を含むことができる。
【0072】
本発明の積層型感光体の電荷発生層における電荷発生材料と結着樹脂との配合比(重量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。より好ましくは、3:1〜1:1の範囲に設定される。電荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より多いと、暗減衰を増大し機械的特性を悪化させる。また、前記範囲より少ないと光感度の低下、残留電位の増大等の障害が起きる。また、本発明で用いる電荷発生層の膜厚は一般的には、0.05〜5μmが適当であり、好ましくは0.1〜2.0μmの範囲に設定される。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0073】
本発明の電子写真用感光体における単層型の感光層および積層型の電荷発生層に用いる電荷発生材料としては、公知のものを使用することができる。例えば、非晶質セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−SiC等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の有機顔料および染料が使用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらの有機顔料および染料は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
フタロシアニン系化合物は、デジタル式の電子写真装置に光源として現在好まれて使用されているJEDおよびレーザーダイオードの発信波長である600〜850nmに優れた光感度を有するため、本発明の電荷発生材料として特に好ましい。詳しくは、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニンであり、金属フタロシアニンの中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb等があげられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物等も使用できる。具体的には、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニンなどをあげることができる。また、これらのフタロシアニン環に任意の置換基を含むものも使用することができる。さらにまた、これらのフタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたものも有効である。これらフタロシアニン系化合物の形態としては、アルモルファスまたは全ての結晶多形のものが使用可能である。
これ等フタロシアニン系化合物の中でも、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有しており、電荷発生材料として特に好ましい。
【0074】
本発明の電子写真用感光体での単層型および積層型での電荷発生層に用いる結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ポリ-N−ビニルカルバゾール樹脂等があげられるがこれらに限定されるものではない。これらの結着樹脂はブロック、ランダムまたは交互共重合体であることができる。また、これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0075】
本発明の感光層において複数の電荷輸送層を用いる場合、本発明の架橋された共重合体を主な成分として含まない電荷輸送層には、従来の積層感光体において電荷輸送層として用いられている公知のものを使用することができる。例えば、ベンジジン系化合物、アミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合物等のホール輸送性低分子化合物またはフルオレノン系化合物、マロノニトリル系化合物、ジフェノキノン系化合物等の電子輸送性低分子化合物を、単独でまたは2種以上を混合して、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート等の絶縁性樹脂中に均一分子分散した固溶膜、あるいは、それ自身電荷輸送能を有する高分子化合物等を用いることができる。また、セレン、アモルファスシリコン、アモルファスシリコンカーバイト等の電荷輸送能を有する無機物質を用いることもできる。電荷輸送性高分子化合物としては、ポリビニカルバゾール等の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、特開平5-232727号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物等をあげることができる。本発明で用いる電荷輸送層の膜厚は1〜100μm、好ましくは5〜50μmに設定される。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。また、気相成膜可能なものは、真空蒸着法等により直接成膜することもできる。
【0076】
本発明の感光体において、架橋された共重合体を含む層と接する電荷輸送層に使用される電荷輸送性物質としては、特に製造上、電荷輸送性高分子化合物を用いることが望ましい。その理由は、感光体製造プロセスにおいて、電荷輸送層と共重合体を主なマトリックスの成分とする層を積層成膜する場合、共重合体と接する電荷輸送層中の電荷輸送性物質が低分子化合物であると、電荷輸送性低分子化合物が共重合体を主なマトリックスの成分とする層に混入してしまい、絶縁性の相の絶縁性が低下し、混入分子が電荷トラップとなり残留電位の増大、輸送能の低下及び光感度の低下等の障害が発生するからである。この問題は特に、湿式塗布法により、各層を成膜する場合に顕著になる。もちろん、これらの問題は、上層の塗布溶剤として下層を溶解および膨潤し難いものを選択するか、または、絶縁性ブロックとして電荷輸送性低分子化合物と相溶性の無いものを選択する等により、回避することが可能である。ところが、高分子同士は相溶することなく相分離を起こすことが一般的であることが知られており、架橋された共重合体と接する電荷輸送層として、電荷輸送性高分子化合物を用いた場合、架橋された共重合体中の絶縁性ブロックと相溶することなく相分離するため、上記のような混入の問題は殆ど発生せず、材料および製造法の選択に当たっての制約が解消されるという利点を有する。
【0077】
単層型の感光層、または、電荷発生層と電荷輸送層よりなる感光層の上には、保護層を設けてもよい。この保護層は、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化学的ストレス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機械的ストレスから感光層を保護し、感光層の実質の寿命を改善するために有効である。特に、薄層の電荷発生層を上層に用いる層構成において、効果が顕著である。
保護層の膜厚は0.5〜20μmが適当であり、好ましくは1〜10μmの範囲に設定される。
また、保護層を設けた場合、必要に応じて、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができる。このブロッキング層としては、公知のものを用いることができる。
【0078】
本発明の電子写真感光体においては、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、各層または最上層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子供与性化合物等があげられる。
さらに、表面磨耗の低減、転写性の向上、クリーニング性の向上等を目的として、最表面層にフッ素樹脂等の絶縁性粒子を分散させてもよい。
各層の形成方法としてはブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0079】
本発明の電子写真感光体をS字型感光体とする場合は、図5から図8の層構造とすることが好ましい。このような構成の感光体がS字型光有機電位減衰特性を示す理由は必ずしも明らかではないが、電荷輸送層の不均一性から電荷輸送経路が非直線的になっているためと推定されている(特開平9−96914)。S字型感光体とする場合は、架橋された共重合体を含む第一の電荷輸送層の膜厚は膜厚は0.1〜50μmが適当であり、好ましくは0.2〜15μm、さらに好ましくは0.5〜10μmの範囲に設定される。電荷輸送性の相のピッチは0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.02〜1μm、特に好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。
【0080】
本発明の電子写真感光体を搭載する電子写真装置としては、電子写真法を用いるものであれば如何なるものでも構わない。例えば、アナログ露光系の電子写真複写機、レーザー露光式デジタル電子写真複写機、電子写真式ファクシミリ、レーザービームプリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等である。また、電子写真感光体とともにクリーニング手段、帯電手段、現像手段などの1つ以上と組み合せて装置ユニットとしても良い。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、当業者は電子写真技術の公知の知見から、以下の実施例に変更を加えることが可能である。
<合成例1>反応性重合開始剤4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)
の合成
塩化チオニル220mlを氷冷し、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)100gを徐々に加えた。30℃で6時間加熱し、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去した。残留物をクロロホルムより再結晶化して42gの4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)結晶を得た。
【0082】
<合成例2>
N,N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−N,N’−ビス[p−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]−[3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン100g、エチレングリコール200gおよびテトラブトキシチタン5gを、窒素気流下で3時間加熱還流した。N,N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−N,N’−ビス[p−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]−[3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンが消費されたことを確認したのち、0.5mmHgに減圧しエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、さらに5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、塩化メチレンを加え不溶分を溶解させ、アセトンから再沈殿することにより、両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマー90gを得た。得られたプレポリマーの重量平均分子量は7.4×104 であった。
【0083】
上記ポリマー43gとトリエチルアミン0.5gをトルエン120mlに溶解し、0℃以下に冷却した。ここに、合成例1で得られた4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)5.6gをトルエン20mlに懸濁した液を滴下した。室温で1時間反応させた後に30℃で6時間反応させた。ここから溶媒を留去し、テトラヒドロフランを加えて溶解させ、メタノールに滴下し、1時間撹拌した後に濾別した。この再沈殿操作をさらに2回繰り返した。残った化合物を乾燥して両末端にアゾ型重合開始剤を有するポリマー41gを得た。
上記重合開始剤含有ポリマー6g、tert−ブチルメタクリレート6g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2gをトルエン120mlに溶解し、窒素置換した後に65℃で95時間加熱した。この溶液をメタノールに滴下し、1時間撹拌した後に濾別した。得られた固体ををシクロヘキサンで十分に洗浄し、下記構造式(3)で示される、トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性ブロックと架橋可能な官能基としてヒドロキシ基を有する絶縁性ブロックよりなるブロック共重合体6gを得た。得られた共重合体の重量平均分子量は12×104 であり、得られたブロック共重合体の1 H−NMRスペクトルの両ブロック固有のプロトンに対応するピークの積分比から、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの重量組成比はおよそ3:2と計算される。また、同様にして絶縁性ブロック中の架橋部位と非架橋部位の重量組成比はおよそ2:8と計算される。
【0084】
【化18】
【0085】
<合成例3>
N,N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−N,N’−ビス[p−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]−[3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンをN,N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−N−[p−(m,m’−ビスメトキシカルボニルエチル)フェニル]アミンに、また2−ヒドロキシエチルメタクリレートをトリメチルシリルプロピルメタクリレートに代えた以外は合成例2と同様にして、下記構造式(4)で示される、トリアリールアミン構造を含む電荷輸送性ブロックと架橋可能な官能基としてアルコキシシリル基を有する絶縁性ブロックよりなるブロック共重合体を合成した。電荷輸送性プレポリマーの重量平均分子量は3.1×103 、最終的に得られたブロック共重合体の重量平均分子量は5.5×103 であり、両ブロックの組成比はおよそ5:5と計算される。また、絶縁性ブロック中の架橋部位と非架橋部位の重量組成比はおよそ2:8と計算される。
【0086】
【化19】
【0087】
<合成例4>
合成例3の各材料の混合比率を変更した以外は同様にして、組成比の異なる共重合体を合成した。電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの組成比はおよそ1:4と計算される。また、絶縁性ブロック中の架橋部位と非架橋部位の重量組成比はおよそ2:8と計算される。
【0088】
<合成例5>
合成例2の2−ヒドロキシエチルメタクリレートを加えなかった以外は、合成例2と同様に合成した。得られた共重合体の重量平均分子量は11×104 であり、得られたブロック共重合体の1H−NMRスペクトルの両ブロック固有のプロトンに対応するピークの積分比から電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックの重量組成比はおよそ1:1と計算される。
【0089】
実施例1
合成例4で得られたブロック共重合体8重量部を予めトルエン90部に溶解した溶液に、クロロガリウムフタロシアニン2重量部を加え、ステンレスビーズと共にボールミル法で48時間分散処理した後、さらに酢酸0.1重量部を加え塗工液を調製した。この塗工液を浸漬コーティング法でアルミニウムプレート上に塗布し、135℃において60分間加熱硬化させて、膜厚20μmの感光層を作製した。この上に、ポリウレタン樹脂(レタン4000、関西ペイント社製)100重量部、酸化アンチモン15重量部、酸化錫粉末30重量部、酢酸セロソルブ100重量部を90時間ボールミルにて混合分散させた塗布液を浸漬塗布にて5μmの表面保護層を形成し、図1に示す構造の電子写真感光体を作製した。
表面保護層を形成した後も感光層はクラックなど発生せず、また、表面保護層の膜厚も均一で良好な膜であった。この感光層をルテニウム酸染色法による透過型電子顕微鏡で観察したところ、相分離構造が観測された。また、相分離構造のスケールはおよそ0.03μmであった。
このようにして得られた電子写真用感光体に対し、静電複写紙試験装置(エレクトロスタティックアナライザーEPA−8100、川口電機製作所社製)を用いて、常温常湿(20℃、40%RH)の環境下、電子写真特性の評価を行った。コロナ放電電圧を調整し、感光体表面を750Vに帯電させた後、干渉フィルターを通し750nmに単色化したハロゲンランプ光を感光体表面上で2mW/m2 の光強度になるように調整し、7秒間照射し、光誘起電位減衰曲線より半減露光量E50% を求めた。また、露光開始より7秒後の電位を残留電位とした。E50% は4.2mJ/m2 、残留電位は50Vであった。
【0090】
比較例1
ポリカーボネートZ樹脂(ユーピロンZ−400、三菱ガス化学(株)製)8重量部と低分子電荷輸送材として構造式(5)で示される化合物5重量部を予めトルエン85部に溶解した溶液に、クロロガリウムフタロシアニン2重量部を加え、ステンレスビーズと共にボールミル法で48時間分散処理し、塗工液を調製した。得られた塗工液をアルミニウムプレートおよびアルミニウムドラム上に浸漬塗布し、100℃にて1時間加熱乾燥し、膜厚20μmの感光層を形成した。この上に実施例1と同様に表面保護層を形成したところ感光層にクラックが入り、良好な塗膜は得られなかった。
【0091】
【化20】
【0092】
実施例2
アルミニウムプレート、及び、ホーニング処理されたアルミニウムドラム上に、ジルコニウムアルコキシド化合物(商品名:オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)20重量部およびγーアミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A1100、日本ユニカー社製)2重量部とポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学(株)製)1.5重量部とn−ブタノール70重量部からなる溶液を浸漬コーティング法で塗布し、170℃において10分間加熱乾燥し、膜厚1.0μmの下引き層を形成した。次にクロロガリウムフタロシアニン微結晶4重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(商品名:UCARソリューションビニル樹脂VMCH、ユニオンカーバイド社製)2重量部、キシレン67重量部、および酢酸ブチル33重量部と混合し、1mmφガラスビーズとともにサンドグラインダーで2時間処理して分散した後、得られた塗布液を浸漬コーティング法で上記下引き層上に塗布し、100℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、合成例2で得られたブロック共重合体10重量部と架橋剤として下記構造式(6)で示される三価のイソシアネート化合物1重量部をシクロヘキサノン90重量部に溶解させた溶液を、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法にて塗布した後、150℃で60分間加熱硬化させて、膜厚10μmの第一の電荷輸送層を形成した。次に、高分子電荷輸送材料である分子量8万の下記構造式(7)で示される繰り返し単位よりなる化合物20重量部をモノクロロベンゼン80重量部に溶解し、上記第一の電荷輸送層上に浸漬コーティング法で塗布し、135℃において1時間加熱乾燥させて、膜厚15μmの第二の電荷輸送層を形成し、図5で示される電子写真用感光体を作製した。
【0093】
【化21】
【0094】
【化22】
【0095】
第二の電荷輸送層を形成した後も第一の電荷輸送層にはクラックなど発生せず、また、第二の電荷輸送層の膜厚も均一で良好な膜であった。この第一の電荷輸送層をルテニウム酸染色法による透過型電子顕微鏡で観察したところ、相分離構造が観測された。また、相分離構造のスケールはおよそ0.06μmであった。このようにして得られた電子写真用感光体を帯電極性を負にしたこと以外は実施例1と同様に評価を行った。E50% は4.5mJ/m2 、残留電位は−60V、E50% /E10% 値が2.2のS字型であった。
【0096】
比較例2
イソシアネート化合物を加えなかった以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
電荷輸送層は膜厚の不均一な膜であった。イソシアネート化合物がないために、第一の電荷輸送層が架橋により分子構造が3次元化されず、第二の電荷輸送層を塗布する際に膨潤、溶解などが起こったためと思われる。
【0097】
比較例3
実施例2と同様に電荷発生層まで形成した。その上に、高分子電荷輸送材料である分子量8万の上記構造式(7)で示される繰り返し単位よりなる化合物20重量部をモノクロロベンゼン80重量部に溶解し、上記第一の電荷輸送層上に浸漬コーティング法で塗布し、135℃において1時間加熱乾燥させて、膜厚25μmの1層よりなる電荷輸送層を形成し、電子写真用感光体を作製した。
このようにして得られた電子写真用感光体を実施例2と同様に評価を行った。E50% は4.2mJ/m2 、残留電位は−30V、E50% /E10% 値が5.2のJ字型であった。
【0098】
実施例3
実施例2と同様に電荷発生層まで形成した。次に、合成例4で得られたブロック共重合体10重量部をトルエン90重量部に溶解し、酢酸0.1重量部を加え、上記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し135℃において1時間加熱し、3μmの第一の電荷輸送層を形成した。さらに、高分子電荷輸送材料である分子量8万の上記構造式(7)で示される繰り返し単位よりなる化合物20重量部をモノクロロベンゼン80重量部に溶解し、上記第一の電荷輸送層上に浸漬コーティング法で塗布し、135℃において1時間加熱乾燥させて、膜厚20μmの第二の電荷輸送層を形成し、図5で示される電子写真用感光体を作製した。
【0099】
第二の電荷輸送層を形成した後も第一の電荷輸送層にはクラックなど発生せず、また、第二の電荷輸送層の膜厚も均一で良好な膜であった。この第一の電荷輸送層をルテニウム酸染色法による透過型電子顕微鏡で観察したところ、相分離構造が観測された。また、相分離構造のスケールはおよそ0.05μmであった。このようにして得られた電子写真用感光体を実施例2と同様に評価を行った。E50% は4.9mJ/m2 、残留電位は−50V、E50% /E10% 値が1.8のS字型であった。
【0100】
実施例4
合成例4で得られたブロック共重合体5重量部を予めトルエン95部に溶解し、酢酸0.1重量部を加え、浸漬コーティング法でアルミニウムプレート上に塗布し、135℃において60分間加熱硬化させて、0.8μmの下引き層を形成した。次にポリカーボネートZ樹脂(ユーピロンZ−400、三菱ガス化学(株)製)8重量部と、前記構造式(5)で示される低分子電荷輸送物質5重量部を予めトルエン85部に溶解した溶液に、クロロガリウムフタロシアニン2重量部を加え、ステンレスビーズと共にボールミル法で48時間分散処理した。この塗工液を浸漬コーティング法でアルミニウムプレート上に塗布し、135℃において60分間加熱乾燥して、膜厚20μmの感光層を形成し、図9に示す構造の電子写真感光体を作製した。
感光層を形成した後も下引き層はクラックなど発生せず、また、感光層の膜厚も均一で良好な膜であった。
このようにして得られた電子写真用感光体を実施例1と同様に評価を行った。E50% は6.8mJ/m2 、残留電位は−60V、E50% /E10% 値が5.5のJ字型であった。
【0101】
実施例5
アルミニウム基板の代わりに表面を粗面化したアルミニウムドラムを使用した以外は、実施例1と同様に電子写真用感光体を作製し、レーザープリンター(Laser Press 4105、富士ゼロックス社製)に搭載し、印字試験を行った。この際、最適な露光量を得るため、レーザー光の光路にNDフィルターを入れた。このレーザプリンターの概略の構成図を図13に示す。
感光体ドラム11の周りに前露光用光源(赤色LED)12、帯電用スコロトロン13、露光用レーザー光学系14、現像器15、転写用コロトロン16およびクリーニングブレード17がプロセスの順序に順次配置されている。露光用レーザー光学系14は、発信波長780nmの露光用レーザーダイオードを備えており、デジタル処理された画像信号に基づき発光する。発光したレーザー光14はポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラーによりスキャンされながら感光体上を露光するように構成されている。なお、18は用紙を示す。
【0102】
比較例4
アルミニウム基板の代わりに表面を粗面化したアルミニムドラムを使用した以外は、比較例3と同様に電子写真用感光体を作製し、実施例5と同様に印字試験を行った。
実施例5と比較例4で得られた印字の品質を比べたところ、実施例5の方が細線の再現性等の点で、印字品質が優れていた。
【0103】
実施例6
第一の電荷輸送層を下記のように形成した以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。第一の電荷輸送層は、合成例5で得られたブロック共重合体15重量部と架橋剤として過酸化物であるt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート1重量部をトルエン84重量部に溶解させた溶液を、電荷発生層上に浸漬コーティング法にて塗布した後、150℃で30分加熱硬化させて、膜厚10μmの層を形成した。
第二の電荷輸送層を形成した後も第一の電荷輸送層はクラックなど発生せず、また、第二の電荷輸送層の膜厚も均一で良好な膜であった。この第一の電荷輸送層をルテニウム酸染色法による透過型電子顕微鏡で観察したところ、相分離構造が観察された。また、相分離構造のスケールはおよそ0.05μmであった。
このようにして得られた電子写真感光体を実施例2と同様に評価を行った。E50% は4.9mJ/m2 、残留電位は−90V、E50% /E10% 値が2.6のS字型であった。
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、少なくとも導電性基体上に電荷発生材料と電荷輸送材料を含有する感光層を設けた電子写真感光体において、該電荷輸送材料として少なくとも架橋により分子構造が3次元化された、絶縁性ブロックと電荷輸送性ブロックを含み、前記電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有し、架橋部位が主として絶縁性ブロックに存在している共重合体を含有し、且つ、該共重合体が電荷輸送性の相と絶縁性の相に相分離しており、且つ、前記共重合体をマトリックスの主な成分として含む層の上に感光層、電荷発生層、電荷輸送層、または表面保護層を有するため、積層成膜しても良好な塗膜をえられるとともに、残留電位の少ない、高速応答性に優れた、さらに紫外線による劣化も少ない電子写真感光体を提供することが可能である。
また、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含み、電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有し、架橋可能な官能基が主に絶縁性ブロックにある、分子構造が3次元化されていないブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する塗工液を塗布した後、または塗布と同時に、架橋により該ブロック共重合体またはグラフト共重合体の分子構造を3次元化したのち、上層を湿式塗布法により積層成膜することを特徴とする製造法を採用することができるため、電荷輸送性の優れた感光体を低コストで提供することが可能である。
さらにまた、電荷輸送能に優れ電気的特性に優れた、これらの電子写真感光体を使用ことによって、繰り返し安定性と信頼性に優れた、電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単層型感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図2】下引き層を有する単層型感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図3】積層型感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図4】下引き層を有する積層型感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図5】2層の電荷輸送層を有する積層型感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図6】 図5の積層型感光体においてさらに下引き層を有するものの模式的断面図である。
【図7】積層型感光体の他の一例を示す模式的断面図である。
【図8】図7の積層感光体においてさらに保護層を有するものの模式的断面図である。
【図9】下引き層に架橋された共重合体を含む単層型感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図10】下引き層に架橋された共重合体を含む積層型感光体の一例を示す模式的断面図である。
【図11】J字型電子写真感光体における露光量と表面電位の関係を示すグラフである。
【図12】S字型電子写真感光体における露光量と表面電位の関係を示すグラフである。
【図13】電子写真装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:導電性支持体
2:感光層
3:下引き層
4:電荷発生層
5:電荷輸送層
6:第一の電荷輸送層
7:第二の電荷輸送層
8:表面保護層
Claims (16)
- 少なくとも導電性基体上に電荷発生材料と電荷輸送材料を含有する感光層を設けた電子写真感光体において、
前記電荷輸送材料として架橋により分子構造が3次元化された共重合体を少なくとも含み、前記共重合体が絶縁性ブロックと電荷輸送性ブロックとを含み、前記電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有し、前記共重合体の架橋部位が主として絶縁性ブロックに存在し、前記共重合体は電荷輸送性の相と絶縁性の相に相分離しており、かつ、前記共重合体を含む層の上に感光層、電荷発生層、電荷輸送層、または表面保護層のいずれかの層が設けられていることを特徴とする電子写真感光体。 - 架橋により分子構造が3次元化された、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含み、架橋部位が、主として絶縁性ブロックに存在している共重合体中の電荷輸送性ブロックの繰り返し単位中に、少なくとも、トリアリールアミン構造を含む繰り返し単位が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 一般式(1)中のX1 が、置換または未置換のビフェニレン基であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
- 絶縁性ブロックが、ビニル系モノマーの重合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- ビニル系モノマーが下記一般式(3)で示される化合物の少なくとも1種、および下記一般式(4)で示される架橋可能な官能基を有する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
- 共重合体が、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含み、架橋可能な官能基が主に絶縁性ブロックにあるブロック共重合体またはグラフト共重合体の架橋重合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 共重合体が、ヒドロキシ基を有する絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含む共重合体と、多価のイソシアネート化合物との架橋重合物であることを特徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
- 共重合体が、絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含み、架橋可能な官能基が主に絶縁性ブロックにある共重合体中の官能性基同士の縮合反応による架橋重合物であることを特徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
- 共重合体が、アルコキシシリル基を有する絶縁性ブロックと炭素原子を主鎖中に有する電荷輸送性ブロックを含む共重合体の架橋重合物であることを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
- 共重合体を含む層と接する感光層または保護層が、電荷輸送性高分子化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 50%電位減衰に要する露光量が10%電位減衰に要する露光量の5倍未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含み、電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有し、架橋可能な官能基が主に絶縁性ブロックにある、分子構造が3次元化されていないブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する塗工液を塗布した後、または塗布と同時に、架橋により前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の分子構造を3次元化したのち、上層を湿式塗布法により積層成膜することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか1に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする電子写真装置。
- 少なくとも導電性基体上に電荷発生材料と電荷輸送材料を含有する感光層を設けた電子写真感光体において、前記電荷輸送材料として架橋により分子構造が3次元化された共重合体を少なくとも含み、前記共重合体が絶縁性ブロックと電荷輸送性ブロックとを含み、前記電荷輸送性ブロックが炭素原子を主鎖中に有し、前記共重合体の架橋部位が主として絶縁性ブロックに存在し、前記共重合体は電荷輸送性の相と絶縁性の相に相分離しており、かつ、前記共重合体を含む層の上に感光層、電荷発生層、電荷輸送層、または表面保護層のいずれかの層が設けられており、なおかつ、50%電位減衰に要する露光量が10%電位減衰に要する露光量の5倍未満であることを特徴とする電子写真感光体。
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