JP2001305767A - 電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置

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JP2001305767A
JP2001305767A JP2000121156A JP2000121156A JP2001305767A JP 2001305767 A JP2001305767 A JP 2001305767A JP 2000121156 A JP2000121156 A JP 2000121156A JP 2000121156 A JP2000121156 A JP 2000121156A JP 2001305767 A JP2001305767 A JP 2001305767A
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Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
Taketoshi Azuma
武敏 東
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高性能且つ高寿命な単層型の電子写真感光
体を安価に提供すること。十分な機械的強度、およ
び、適切な不均一電荷輸送特性を有し、耐久性の高いS
字型の電子写真感光体を提供すること。上記電子写真
感光体を利用した、高画質かつ高耐久なプロセスカート
リッジおよび電子写真装置を提供すること。 【解決手段】 導電性支持体上に、少なくとも、電荷輸
送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷
輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重
合体を含有する感光層が少なくとも一層形成されてなる
電子写真感光体であって、前記電荷輸送活性ブロック
が、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体で
あり、且つ、電荷輸送不活性ブロックが、重縮合系重合
体または重付加系重合体であることを特徴とする電子写
真感光体、並びに、該電子写真感光体を利用したプロセ
スカートリッジ及び電子写真装置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真法に適用
される電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカ
ートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは、電荷
輸送性ならびに機械的特性に優れた単層型の電子写真感
光体、あるいは、デジタル式電子写真法に好適な積層型
の電子写真感光体と、それを用いたプロセスカートリッ
ジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真技術は、高速で、高印字品質が
得られる等の利点を有するために、近年、複写機、プリ
ンター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を
果たしている。電子写真技術の心臓部である電子写真感
光体(以下、単に「感光体」という場合がある。)の構
成材料としては、当初からセレン、セレン−テルル合
金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料が広く用い
られてきたが、これらの無機系感光体に比べ、コスト、
製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有する有機光導電
性材料を用いた電子写真感光体の研究開発が活発に行わ
れ、現在では無機系感光体を凌駕するに至っている。特
に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送をそれ
ぞれ別々の材料に担わせる機能分離設計の導入により材
料選択の自由度が増し、有機材料の持つ多様性を背景に
著しい性能の向上が達成され、現在では導電性支持体上
に電荷発生機能を担う薄膜の電荷発生層と電荷輸送機
能、帯電性、機械的強度を担う厚膜の電荷輸送層を積層
した機能分離積層型有機感光体が電子写真感光体の主流
となっている。
【0003】すなわち、電荷発生能と電荷輸送能の双方
に優れた材料は希有であり、またその様な材料の設計開
発も困難であったが、一方にのみ秀でた材料なら設計開
発も容易であり、各機能に秀でた材料を組合せて用い、
機能分離型積層構成を採用することで、高性能な電子写
真感光体を得ることが可能となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】(1)本発明の第1の
課題 しかしながら、機能分離積層型有機感光体は、その積層
構成に起因し以下に示すような欠点を有しており、それ
ら欠点を克服し得る感光体の開発が切望されている。
【0005】積層構成に起因する第1の欠点としては、
単層の感光体に比べ2層以上の層を形成しなければなら
ないため、生産性が低下しコストが高くなってしまうと
云う問題が挙げられる。
【0006】積層構成に起因する第2の欠点としては、
量産性が高く一般的に採用されている成膜法である浸漬
塗布法を用いた場合、上層塗布時に下層が侵されないよ
うにする必要があり、そのため下層材料に上層塗布溶剤
に対する耐性が要求されることとなりそれに伴う問題が
挙げられる。
【0007】即ち、一般的に下層となる電荷発生層は電
荷発生材料としての顔料と成膜性を担う結着樹脂からな
り、該結着樹脂として上層となる電荷輸送層の塗布溶剤
に侵されない材料を選択しなければならない。一般的に
電荷輸送材料は比較的極性が低く、トルエン、クロロベ
ンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメ
タン等の比較的極性の低い溶剤がその塗布溶剤として用
いられるため、電荷発生層の結着樹脂としては、該溶剤
に対する溶解性の低いアセタール変性ビニルアルコール
樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合
樹脂等の高極性の熱可塑性樹脂が採用されている。
【0008】しかしながら、高極性樹脂中では電荷輸送
性が低下することが知られており、また高極性樹脂は吸
湿性が高く環境変化に伴う光電特性の変動を引き起こす
場合があると云う問題がある。さらに、これら高極性の
熱可塑性樹脂は、完全には不溶ではないため、上層塗布
時の若干の荒れは避けがたく、光電特性、ひいては画像
の面内ムラを生起する場合があり、特にフルカラーの高
画質が要求される電子写真装置への利用においては改善
が望まれている。
【0009】この問題を回避する方法として電荷発生層
の結着樹脂に熱硬化性の樹脂を用いる提案もなされてい
るが、塗布液中で経時により硬化反応が進行し増粘/ゲ
ル化してしまうと云うポットライフの問題、成膜時に未
硬化サイトが残存してしまい光電特性に悪影響を及ぼす
と云う問題等があり、依然、本質的な問題解決には至っ
ていない。
【0010】積層構成に起因する第3の欠点としては、
露光光源としてレーザー等の可干渉光を用いる場合、電
荷発生層と電荷輸送層との界面での正反射により、一般
に干渉縞と呼ばれる切り株模様の画像欠陥が発生してし
まうと云う問題が挙げられる。
【0011】この問題を回避する方法としては、界面を
凹凸にし、光が散乱するようにすべく、基体表面を荒ら
したり、基体と感光層との間に荒い表面性の膜を設けた
りする方策が採られている。しかしながら、これらの方
策はそれを施すこと自体、コストアップをもたらすし、
また荒れた表面上に薄膜の電荷発生層を均一に成膜しな
ければならないと云う製造上の困難さが要求される。
【0012】ところで、上記のような積層構成に起因す
る問題点を払拭するものとしては、単層構成の電子写真
感光体(単層型感光体)が古くから知られている。しか
しながら、従来の単層型感光体は十分な機能分離設計が
なされておらず、実用に耐える特性を有するものはなか
った。即ち、従来の単層型感光体は絶縁性樹脂中に単純
に電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有させたものであ
り、輸送電荷極性の制約から表面近傍のみで光吸収が起
こるように電荷発生材料濃度を高くする必要があり、そ
の結果、暗減衰が大きい、繰り返し使用による光電特性
の変動が大きい等の問題があった(積層感光体では電荷
発生層の膜厚を薄くすることでこの問題を抑えてい
る)。
【0013】この問題に対し、最近、電荷発生材料とホ
ール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料と、の3者を
絶縁性樹脂中に含有させた単層型感光体が提案され、著
しい性能の改善が達成された(電子写真学会誌,Vol
30,p.274−281,1991)。即ち、従来の
ようにホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料
のどちらか一方だけではなく、ホール輸送性材料および
エレクトロン輸送性材料の両方を添加することで輸送電
荷極性の制約がなくなり、電子写真感光体の感光層内部
で電荷発生しても、両電荷がそれぞれの電荷輸送材料に
よって、対極に輸送されるため、電荷発生材料の添加量
を著しく減少させることが可能となり、上述の問題が解
消された。
【0014】しかしながら、ホール輸送性材料とエレク
トロン輸送性材料とを絶縁性樹脂中に分散させるこの系
では、十分なホール輸送能およびエレクトロン輸送能を
両立させるには、機械的強度を担う絶縁樹脂に対するこ
れら低分子量の電荷輸送材料の総濃度を高くする必要が
あり、膜全体としての機械的強度が低下してしまうとい
う問題があった。
【0015】この問題の改善策としては、特開平3−2
56050号公報、特開平5−249706号公報、特
開平5−150495号公報等においては、ホール輸送
性材料として、特定のホール輸送性高分子化合物を用い
ることにより、それに成膜性を担わせ絶縁性樹脂を不要
とする発明が開示されている。しかしながら、一般的に
エレクトロン輸送性材料は結晶性が高く、これらの発明
において用いられているホール輸送性高分子化合物と高
い相溶性を示すエレクトロン輸送性材料は少なく、特
に、高エレクトロン移動度を達成するためエレクトロン
輸送性材料を高濃度で含有させる場合においては、加熱
や経時によるエレクトロン輸送性材料の結晶化による特
性の劣化は避けられない。
【0016】また、前記文献における特定のホール輸送
性高分子化合物は、その主鎖中に電荷輸送構造を有する
ものであり、放電ガス等のストレスに晒されると、反応
性の高い電荷輸送構造部分が分解され、その部分で主鎖
が切断されるため、著しい強度の低下を引き起こす場合
があると云う欠点を有する。さらにまた、前記文献にお
ける特定のホール輸送性高分子化合物は、重縮合系また
は重付加系の重合体であり、モノマーの合成が困難であ
る、重合度を上げることが困難である等の製造上の問題
があった。
【0017】本発明は、電荷輸送性、機械的強度、製造
性等に優れた電荷輸送性高分子化合物を活用した、高性
能且つ高寿命な単層型の電子写真感光体を安価に提供す
ることを第1の課題とする。
【0018】(2)本発明の第2の課題 従来の光学的に原稿を電子写真感光体上に結像させて露
光するアナログ方式の電子写真式複写機は、濃度階調に
よる中間調の再現性を良好にするために、図1に示すよ
うな光誘起電位減衰特性を持つ感光体、即ち、露光量に
対し比例的に電位減衰する感光体(以下、「J字型感光
体」という。)を備えていることが要求される。
【0019】一方、近年の高画質化、高付加価値化、ネ
ットワーク化等の要請に伴い、盛んに研究開発が行われ
ているデジタル方式の電子写真装置では、一般にドット
等の面積率で階調を出す面積階調方式を採用するため、
むしろ図2に示すような、ある露光量に達するまでは光
誘起電位減衰(以下、単に「電位減衰」という場合があ
る。)せず、その露光量を越えると急峻な電位減衰が起
こる、いわゆるS字型の光誘起電位減衰特性を有する感
光体(以下、「S字型感光体」という。また、かかる感
光体の性質を「S字性」という。)を使用する方が、画
素の鮮鋭度が高められる等の点から望ましい。
【0020】このS字型光誘起電位減衰特性は、ZnO
等の無機顔料あるいはフタロシアニン等の有機顔料を樹
脂中に粒子分散した単層型感光体において公知の現象で
ある〔例えば、R.M.Schaffert:「Ele
ctrophotography」、Focal Pr
ess,p.344(1975)、J.W.Weig
l,J.Mammino,G.L.Whittake
r,R.W.Radler,J.F.Byrne;「C
urrent Problems in Electr
ophotography」,Walter de G
ruyter,p.287(1972)〕。特に、現在
多用されている半導体レーザーの発信波長である近赤外
域に光感度を有するフタロシアニン系顔料を、樹脂中に
分散したレーザー露光用単層型感光体が多数提案されて
いる〔例えば、グエン・チャン・ケー,相沢:日本化学
会誌,P.393(1986)、特開平1−16945
4号公報、同2−207258号公報、同3−3184
7号公報、同5−313387号公報〕。
【0021】しかしながら、これらの単層型感光体で
は、単一材料で電荷発生と電荷輸送の両機能を担う必要
があるが、両機能共に優れた性能を有する材料は稀有で
あり、実用に耐え得るものは未だ得られていない。特に
顔料粒子は、一般的に多くのトラップレベルや暗電荷を
有するため、電荷輸送能が低くなり、電荷が残留し、繰
り返し安定性および帯電性が低下する等の欠点があり、
電荷輸送を担わせるには不適当である。
【0022】この問題を根本的に解決し、材料選択の自
由度を上げ、ひいては総合的な感光体特性を向上させる
ためには、S字型電子写真感光体の設計において、光電
導の素過程である光電荷発生と電荷輸送との両機能をそ
れぞれ別の層に担わせる機能分離構成の導入が不可欠で
ある。
【0023】この問題に対し、D.M.Paiらは、電
荷発生層と電荷輸送層からなる積層型感光体において、
電荷輸送層として、少なくとも2つの電荷輸送領域およ
び1つの電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領域が互
いに接触して回旋状電荷輸送路を形成してなる不均一電
荷輸送層を用いることにより、任意の電荷発生層との組
合せでS字型光誘起電位減衰特性が実現できることを報
告している〔特開平6−83077号公報(米国特許第
5306586号明細書)〕。
【0024】また本発明者らは、電荷発生層、不均一電
荷輸送層、及び均一電荷輸送層からなる3層構成の感光
体がS字型光誘起電位減衰特性を示すことを見出し(特
開平9−96914号公報)、上記D.M.Paiらの
発明からさらに機能分離度を高めることに成功した。
【0025】しかしながら、これらの発明において鍵と
なる光誘起電位減衰特性をS字型にする機能(以下、
「S字化」という)を担う不均一電荷輸送層の具体例と
しては、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜、六方晶セレ
ンの樹脂分散膜、ポリビニルカルバゾール−ドデシルメ
タクリレート相分離系ブロック共重合体が開示されてい
るのみであり、しかもこれ等の材料には以下に示すよう
な問題点があり、上記発明を実用化するには、不均一電
荷輸送層材料の新たな開発が不可欠な課題であった。
【0026】すなわち、フタロシアニン顔料、六方晶セ
レン等の電荷発生能を有する着色顔料を不均一電荷輸送
層用電荷輸送材料として用いると、特に電荷輸送層側か
ら電荷発生層を露光する構成を採った場合、不均一電荷
輸送層での光吸収およびそれに伴う電荷発生により、光
感度や帯電性に悪影響がでたり、繰り返し安定性が低下
する等の問題が生じる場合がある。
【0027】この問題は、不均一電荷輸送層に吸収のな
い波長域に光感度を有する電荷発生層を用い、且つ該波
長域内のみの露光を行う露光装置を用いることにより回
避することができるが、材料や装置に制約が課されるこ
ととなり、根本的な改善策が望まれる。さらに、フタロ
シアニン顔料の樹脂分散膜や六方晶セレンの樹脂分散膜
の製造に当たっては、これら顔料の粉砕および/または
分散工程が必要であるが、粉砕には莫大なエネルギーを
要し、且つ不純物混入の危険性を伴う。さらにまた、安
定な分散液を得ることは一般的に困難であり、分散溶剤
やバインダー樹脂の探索に多大な労力を要すると共に、
材料選択に著しい制約を受ける。また、分散液中での結
晶成長や凝集化による分散液の変性は一般的に避けられ
ず、長期に亘る使用は不可能であり、コストアップをも
たらす。
【0028】一方、ポリビニルカルバゾール−ドデシル
メタクリレート相分離系ブロック共重合体には、機械的
強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低い等
の問題がある。しかしながら、相分離系ブロック共重合
体にあっては、塗布液は均一溶液であり、乾燥時に相分
離し所望とする不均一電荷輸送層を与えるため、上記の
ような粉砕/分散に係わる問題は根本的に解消されると
云う利点を有する。また、顔料ではないため本質的に、
上記の光暴露に係わる問題も発生しない。
【0029】ところで、電荷輸送性高分子としては、ポ
リビニルカルバゾールが電子写真感光体用の電荷輸送材
料として有効であることが古くから知られているが、機
械的強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低
い等の実用上の本質的な問題があった。この問題を解決
する手段として、電荷輸送層に要求される機能である電
荷輸送能と、成膜性、可撓性、強度等の機械的特性を分
離し、それぞれを別々の材料に担わせる機能分離の発想
に基づく材料開発が為され、前述のように現在では、高
い電荷輸送能を有する電荷輸送性低分子化合物と、成膜
性、可撓性、強度に優れたポリカーボネート系樹脂から
なる分子分散系複合材料が、電子写真用電荷輸送層材料
の主流となっている。しかしながら、このような分子分
散系複合材料では、分子分散された電荷輸送性低分子化
合物が経時および/または加熱で結晶化してしまい、特
性が劣化するという問題があり、特に高温下での使用や
あるいは発熱を伴うデバイスへの適用には制限があっ
た。また、高画質が得られる液体現像方式の電子写真装
置用の電子写真用感光体に用いた場合、現像液に触れる
ことで、電荷輸送性低分子化合物の溶解あるいは結晶化
等が起こり、電荷輸送層が変性あるいはクラックが生じ
る等の問題があった。さらにまた、十分な電荷輸送性を
確保するためには、電荷輸送性低分子化合物を樹脂中に
35〜60wt%の高濃度で分散する必要があり、可撓
性、強度等の機械的特性に優れた樹脂を用いても、複合
膜としての機械的特性には限界があった。
【0030】さらなる高寿命化、高耐久化、低コスト化
が要請される電子写真感光体をはじめ、有機電子デバイ
スに幅広く、有機電荷輸送材料を活用させるには、上記
のような問題の克服が不可欠であり、その手段として、
近年、ポリビニルカルバゾールに代わる高性能電荷輸送
性高分子の研究開発が、再び活発化している。現在まで
に、高い電荷輸送性を有する電荷輸送性低分子化合物と
同一の骨格を、主鎖あるいは側鎖に導入した電荷輸送性
高分子化合物が多数、開発されている(例えば、特開昭
63−187249号公報、特開昭64−13061号
公報、特開平2−151605号公報、特開平2−30
4456号公報、特開平4−11627号公報、特開平
4−225014号公報、特開平5−202135号公
報、特開平5−331238号公報等)。
【0031】しかし、これらの電荷輸送性高分子は、単
独重合体もしくは数種のモノマーを混合し共重合させた
ランダム共重合体であり、本質的に相分離性を示すこと
はなく、それら単独ではS字化のための不均一電荷輸送
層を形成することはできない。この問題に対し、本発明
者らは、それら電荷輸送性高分子に該電荷輸送性高分子
と非相溶な絶縁性高分子を加えた相分離性ポリマーブレ
ンドがS字化のための不均一電荷輸送層として有効に機
能し得ることを発明した(特開平10-69109号公
報等)。
【0032】しかしながら、ポリマーブレンドでは、一
般に相分離スケールが数μm以上の大きさであり、画像
の均質性が低下する場合があると云う問題があった。さ
らに、乾燥速度、乾燥温度等の成膜条件により、相分離
スケールが大きく変化し、それに伴い電子写真特性が大
きく変化してしまう場合があると云う製造再現性上の問
題もあった。また、上記いずれの不均一電荷輸送層にお
いても、十分な機械的強度、および、適切な不均一電荷
特性を満たすものは無かった。
【0033】したがって、本発明は、相分離スケールの
小さい電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グ
ラフト共重合体により不均一電荷輸送層が構成され、十
分な機械的強度、および、適切な不均一電荷特性を有
し、耐久性の高いS字型の電子写真感光体を提供するこ
とを第2の課題とする。
【0034】(3)本発明の第3の課題 さらに、本発明は、上記優れた特性を有する電子写真感
光体を利用した、高画質かつ高耐久なプロセスカートリ
ッジおよび電子写真装置を提供することを第3の課題と
する。
【0035】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電荷輸送
性高分子化合物に関し鋭意検討を重ねた結果、特定の構
造の電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合
体とすることで、上記の課題を解決し得ることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0036】すなわち、本発明は、導電性支持体上に、
少なくとも一層の感光層が形成されてなり、該感光層の
少なくとも一層が、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不
活性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体また
は電荷輸送性グラフト共重合体(以下、単に「ブロック
共重合体等」と略す場合がある。)を含有する電子写真
感光体であって、前記電荷輸送活性ブロックが、電荷輸
送活性基を有するビニルモノマーの重合体であり、且
つ、電荷輸送不活性ブロックが、重縮合系重合体または
重付加系重合体であることを特徴とする電子写真感光体
である(以下、当該発明を「基準発明」という場合があ
る。)。
【0037】特に、上記基準発明であって、前記電荷輸
送性ブロック共重合体等を含有する感光層が、さらに電
荷発生材料を含有する単層型感光層であることを特徴と
する第1の本発明の電子写真感光体は、前記本発明の第
1の課題を高い次元で達成することができる。
【0038】また、上記基準発明であって、前記電荷輸
送性ブロック共重合体等を含有する感光層が電荷輸送層
であり、さらに少なくとも一層の電荷発生層が形成さ
れ、全体として積層型感光層を構成していることを特徴
とする第2の本発明の電子写真感光体は、特に前記電荷
輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層を不均一電
荷輸送層とすることで、前記本発明の第2の課題を高い
次元で達成することができる。
【0039】これら第1の本発明および第2の本発明を
含む、基準発明の電子写真感光体は、電子写真感光体を
含む電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジに
おいて、前記電子写真感光体として、好ましく用いられ
る。また、同様に基準発明の電子写真感光体、あるい
は、上記プロセスカートリッジは、一般の電子写真装置
に好ましく用いられる。これらプロセスカートリッジお
よび電子写真装置により、上記第3の課題が達成され
る。
【0040】第1の本発明および第2の本発明を含む、
基準発明の電子写真感光体(以下、単に「感光体」とい
う場合がある。)において、特に、前記電荷輸送不活性
ブロックがポリエステル重合体、ポリカーボネート重合
体、ポリアミド重合体、ポリエーテル重合体、ポリイミ
ド重合体、ポリウレタン重合体、またはポリシロキサン
重合体の構造を有するブロックである電荷輸送性ブロッ
ク共重合体等は、製造性、機械的特性等に優れ、それを
活用した基準発明の感光体は、特に好ましい特性が発揮
される。
【0041】第1の本発明の感光体において、単層型感
光層としては、電荷発生材料に加えて、ホール輸送性材
料、およびエレクトロン輸送性材料を含有する機能分離
単層型感光層であることが、好ましい特性が顕著に発揮
される。このとき、勿論、ホール輸送性材料および/ま
たはエレクトロン輸送性材料は、前記電荷輸送性ブロッ
ク共重合体等として前記単層型感光層中に含有される
が、さらにこれらを単独で含有させてもよい。
【0042】第1の本発明の感光体において、前記単層
型感光層に含有させる前記電荷発生材料としては、有機
顔料であることが好ましく、また、前記単層型感光層中
に占める該有機顔料の割合としては、0.1〜10重量
%の範囲内にあることが好ましい。
【0043】一方、第2の本発明の感光体において、5
0%電位減衰に要する露光量が10%電位減衰に要する
露光量の5倍未満であることが望ましい。上記基準発明
における電荷輸送性ブロック共重合体等は、本発明で提
供する電子写真感光体の他、有機電界発光素子、有機フ
ォトリフラクティブ素子、有機光センサー、有機太陽電
池等の各種有機電子デバイスにも活用できる。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、基準発明、第1
の本発明、第2の本発明の順に説明し、さらに最後にこ
れら本発明を用いた本発明のプロセスカートリッジおよ
び電子写真装置について説明する。
【0045】A:基準発明の構成 基準発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、特定
の感光層が少なくとも一層形成されてなることを特徴と
するものである。前記特定の感光層とは、電荷輸送活性
ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性
ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体を
含有する感光層であって、前記電荷輸送活性ブロック
が、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体で
あり、且つ、電荷輸送不活性ブロックが、重縮合系重合
体または重付加系重合体であることを特徴とするもので
ある。
【0046】すなわち、本発明に不可欠な要素である電
荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、
電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体である
電荷輸送活性ブロックと、重縮合系重合体または重付加
系重合体である電荷輸送不活性ブロックと、を含むこと
を特徴とする。
【0047】一般の電荷輸送性ブロック共重合体または
グラフト共重合体としては、特開平10−182760
号公報等に、主鎖中に電荷輸送活性基を有する重縮合系
重合体または重付加系重合体が開示されているが、これ
らは主鎖中に電荷輸送活性基を有する電荷輸送性高分子
と同様の問題が生起する。ところで、電荷輸送性高分子
としては、主鎖中に電荷輸送活性基を有するもの(主鎖
型)以外にも、側鎖に電荷輸送活性基を有するもの(側
鎖型)が知られ(例えば、ポリビニルカルバゾール)、
反応性の高い電荷輸送活性基を主鎖中に含まないため、
たとえそれが化学分解しても、分子鎖が切断されること
がなく、主鎖中に電荷輸送活性基を有する場合に見られ
る問題が発生しないと言う利点を有する。
【0048】また、電荷輸送活性基を有するビニルモノ
マーは、比較的合成が容易であり、さらにラジカル重
合、カチオン重合、アニオン重合等の重合法によって容
易に高重合物が得られると云う製造上の利点を有する。
しかしながら、側鎖に電荷輸送活性基を有するものは、
一般的に機械的強度がもともと低い、可とう性が低く脆
い等、機械的特性等に重大な問題があった。
【0049】本発明は、側鎖型の電荷輸送性高分子の利
点を活かし、且つその欠点を解消するものであり、また
多方面で注目されている機械的強度の高い絶縁性エンジ
ニアリングプラスチックの構成を活用し得るものであ
る。
【0050】即ち、側鎖型の電荷輸送性高分子(電荷輸
送活性基を有するビニルモノマーの重合体)と、絶縁性
エンジニアリングプラスチック等の重縮合系重合体また
は重付加系重合体と、をブロック化またはグラフト化す
ることで共重合化させることによって、側鎖型の電荷輸
送性高分子の持つ上述の利点を保持したまま、その欠点
である機械的特性に関しては、重縮合系重合体または重
付加系重合体に担わせるものである。
【0051】尚、側鎖型の電荷輸送性高分子と、重縮合
系重合体または重付加系重合体とを単に混合しただけで
は、一般にマクロ相分離を起こしてしまい、均一な複合
膜を得ることが出来ない。これらをブロック共重合また
はグラフト共重合することで、相分離構造がサブミクロ
ンサイズ以下に規制され、実効的に均一な膜を得ること
が可能となる。
【0052】また、機械的強度は非常に高いものの、結
晶性であり、溶解性、透明性、相溶性の点で電子写真用
途には適さなかった、芳香族ポリイミド等のエンジニア
リングプラスチックも、溶解性、非晶性の高い電荷輸送
活性ブロックと共重合化することで、溶解性(ミセル
化)を付与でき、且つミクロ相分離により透明性と電荷
輸送性が確保されることとなり、利用が可能となる。逆
に、溶解性等に劣る電荷輸送性高分子も、溶解性に優れ
た電荷輸送不活性ブロックと共重合化することで、溶解
性(ミセル化)を改善することが可能となる。
【0053】電荷輸送不活性な重縮合系重合体または重
付加系重合体は、既述の如く、所謂絶縁性エンジニアリ
ングプラスチックとして、機械的強度、化学的安定性、
等に優れた多くの材料が開発されている。本発明におけ
る電荷輸送不活性ブロックとしては、それら重合体の構
成を利用することが可能であり、その中でもポリエステ
ル重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアミド重合
体、ポリエーテル重合体、ポリイミド重合体、ポリウレ
タン重合体、またはポリシロキサン重合体等が、製造
性、等の点で特に好ましい。また、電荷輸送不活性な重
縮合系重合体または重付加系重合体は、その重合機構か
ら本質的にその末端は反応性基であり、該反応性基を活
用し、容易にブロック共重合に誘導することが可能であ
る。
【0054】本発明における電荷輸送性ブロック共重合
体またはグラフト共重合体の合成方法としては、任意の
方法が適用可能であるが、まず電荷輸送不活性重縮合体
または重付加体を合成し、その末端および/または側鎖
にビニル重合開始基を導入し、該開始基から電荷輸送活
性基を有するビニルモノマーを重合させることによる方
法が、好ましい。
【0055】前記ビニル重合開始基としては、ATRP
ラジカルリビング重合を開始し得るハロゲン化アルキル
基等;SFRPラジカルリビング重合および通常のラジ
カル重合を開始し得るアゾ基、過酸化物基、パーオキシ
基等;アニオン重合を開始し得る金属アルキル基、金属
オキシアルキル基等;カチオン重合を開始し得るハロゲ
ン化アルキル基等;を挙げることができる。
【0056】本発明における電荷輸送性ブロックは、電
荷輸送活性基を有するビニルモノマーを重合させること
で形成される。また、可とう性の向上、重合度の向上等
の目的で、電荷輸送活性基を有さないビニルモノマーを
共重合してもよい。その場合、共重合の形式はランダ
ム、交互、ブロック、グラフト等如何なるものも可能で
ある。また、まず反応性基を側鎖に有するビニルモノマ
ーを重合させ、該反応性基の全てまたは一部に電荷輸送
活性基を有する化合物を結合させることによっても形成
可能である。
【0057】電荷輸送活性基を有するビニルモノマーお
よびその重合物の具体例としては、特開平4−3365
39号公報;特開平8−134019号公報;特開平9
−194535号公報;特開平10−10766号公
報;J.Imaging Sci.Technol.V
ol.40,p.164〜167,1996;有機非線
形光学材料による光波マニピュレーション第5回研究会
全体会議講演資料,p.156〜159,1996;有
機非線形光学材料による光波マニピュレーション第1回
研究会全体会議講演資料,p.17〜20,1996;
に記載のもの等のほか、ビニルカルバゾールおよびポリ
ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0058】本発明における電荷輸送性ブロック共重合
体等は、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であ
れば、その構成ブロックの連結形式は如何なるものでも
構わない。すなわち、電荷輸送活性ブロックをA、電荷
輸送不活性ブロックをBとした場合、AB型、ABA
型、BAB型、(AB)n型、(AB)nA型、およびB
(AB)n型のブロック共重合体、電荷輸送活性ブロッ
クを主鎖、電荷輸送不活性ブロックを側鎖とするグラフ
ト共重合体、電荷輸送不活性ブロックを主鎖、電荷輸送
活性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体、もしくは
ABA型等のブロック共重合体の側鎖にAおよび/また
はBをグラフト化したブロック−グラフト共重合体等が
挙げられる。
【0059】本発明における電荷輸送性ブロック共重合
体等中の、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロ
ックとの割合は、特に制限は無く、その目的に応じて設
定される。例えば、機械的強度をより一層高めたい場合
には、電荷輸送不活性ブロックの割合を高めることで目
的を達することができる。また、電荷輸送性をより一層
高めたい場合には、電荷輸送活性ブロック中の電荷輸送
活性基の割合を高めると共に、電荷輸送活性ブロックの
割合をある程度高めることで目的を達することができ
る。さらに、当該感光層を不均一電荷輸送層とし、S字
性を獲得するためには、両者のバランスを適切に取るこ
とで目的を達することができる。
【0060】本発明における電荷輸送性ブロック共重合
体等の重量平均分子量は、その目的に応じて、如何なる
値をも取り得るが、成膜性、相分離性等の高分子特性を
発揮するには、2000以上であることが望まれる。好
ましくは、1万以上であり、より好ましくは、2万以上
である。重量平均分子量の上限に関しては、電気的特性
上の制限は特にないが、湿式塗布法によって成膜を行う
場合には、適当な溶液粘度を与える範囲内にあることが
必要となり、一般的には、5000000以下であるこ
とが好ましい。
【0061】ポリマーブレンド、ポリマーアロイの分野
でよく知られているように、一般に、異なる高分子は互
いに非相溶性であり、それらの混合物およびブロック共
重合体またはグラフト共重合体は、相分離状態を取る。
一般に、単なる混合物、すなわち、ポリマーブレンドで
は、その相分離のスケールは数μm以上のマクロなもの
となる(マクロ相分離)。これに対し、各成分が共有結
合で連結されたブロック共重合体あるいはグラフト共重
合体では、サブミクロン以下の微細なドメインからなる
相分離状態を与える(ミクロ相分離)。ブロック共重合
体およびグラフト共重合体における相分離のスケール
は、一般的に各ブロックの平均長と同一次元であり、分
子量にほぼ比例することが知られている。
【0062】本発明に用いるブロック共重合体またはグ
ラフト共重合体も、一般的にミクロ相分離状態を取る。
しかしながら、本発明のブロック共重合体またはグラフ
ト共重合体は、必ずしもミクロ相分離状態を取るものば
かりではなく、各ブロックの組合せによっては、相溶性
を示し、相分離を起こさないものもあり得る。一般的
に、相溶性は、分子量が小さくなる程、また、互いの溶
解度パラメーター差が小さくなる程、高くなる。
【0063】基準発明における電荷輸送性ブロック共重
合体等は、高い電荷輸送能と優れた機械的特性等を兼ね
備えているため、種々の有機電子デバイスに好適に用い
られ、特に、機能分離型電子写真感光体(単層型、積層
型共)に好適に用いられる。例えば、高い電荷輸送性と
成膜性、顔料への吸着性および接着性を兼ね備えたもの
は、電荷発生能を有する顔料と併用することで、優れた
単層型感光体、および積層型感光体用の電荷発生層を与
える。また、高い電荷輸送性と機械的強度、化学的強度
および低表面エネルギーを兼ね備えたものは、電荷輸送
層または表面保護層用材料として有効である。特に、絶
縁性ブロックにヒドロキシル基、アルコキシシリル基等
の架橋サイトを導入したものは、それらにより架橋硬化
させることで、非常に強靭な電荷輸送性膜を与え、表面
保護層として、特に好ましい。さらに、電荷輸送性ブロ
ックがドメイン、絶縁性ブロックがマトリックスとなる
ミクロ相分離状態を与えるものは、機能分離S字型感光
体用の不均一電荷輸送層として、好適に用いられる。
【0064】基準発明の電子写真感光体は、以上の如き
特定の感光層が、導電性支持体上に、少なくとも一層形
成されてなるものである。本発明の電子写真感光体に用
いる導電性支持体の材料としては、当業界で電子写真感
光体に用いる導電性支持体として利用され得る任意の種
類から選択でき、不透明であっても透明であっても構わ
ない。前記導電性支持体の材料の具体例としては、アル
ミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属類;アルミ
ニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、
金、白金、ジルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化イ
ンジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラ
スおよびセラミックス等;導電性付与剤を塗布または含
浸させた紙、プラスチック、ガラスおよびセラミックス
等;が挙げられる。
【0065】本発明の電子写真感光体に用いる導電性支
持体の形状としては、ドラム状、シート状、プレート
状、ベルト状等、適宜の形状とすることができる。ま
た、本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の表
面には、必要に応じて、各種の処理を施すことができ
る。例えば、電解酸化処理;薬品処理;砂目立て、荒切
削、ホーニング等の機械的粗面化処理;切削、研磨等に
よる機械的鏡面化処理;等を施すことができる。
【0066】また、本発明においては、導電性支持体か
ら感光層への電荷の漏洩を阻止する目的および/または
感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめ
る目的等のために、導電性支持体と感光層との間に、下
引き層を設けることもできる。
【0067】下引き層としては、公知のものを用いるこ
とができ、例えば、エチレン樹脂、アクリル樹脂、メタ
クリル樹脂、アミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル
樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、塩
化ビニリデン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ビニルアル
コール樹脂、水溶性エステル樹脂、アルコール可溶性ナ
イロン樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル酸樹脂、
アクリルアミド樹脂等の樹脂およびこれらの共重合体、
あるいは、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンア
ルコキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性金
属有機化合物を、単独または2種以上混合して用い、形
成することができる。また、帯電極性と同極性の電荷の
みを輸送し得る材料も下引き層として有効である。
【0068】下引き層の形成方法としては、ブレード塗
布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布
法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布
法、リング塗布法等により塗布液を塗布および乾燥して
塗膜を形成する通常の湿式塗布法を用いることができ
る。かかる塗布液は、下引き層の構成成分を適当な溶剤
に溶解・分散させて調製することができる。下引き層の
膜厚は、0.005〜10μmが適当であり、より好ま
しくは0.01〜5μmの範囲である。
【0069】基準発明の電子写真感光の層構成として
は、図3に示す単層構成のほか、図4〜図7に示す積層
構成のものが挙げられる。図3に示す単層構成は、下記
第1の本発明における構成であり、図4〜図7に示す積
層構成は、後述の第2の本発明における構成でである。
【0070】B:第1の本発明の構成 第1の本発明は、前記基準発明における前記電荷輸送性
ブロック共重合体等を含有する感光層が、電荷発生材料
を含有する単層型感光層であることを特徴とするもので
あり、上述の如く図3に示す構成のものである。図3に
おいては、導電性支持体1表面に、単層型感光層3が設
けられ、その中に電荷発生材料からなる微粒子4が分散
されている。当該電子写真感光体には、さらに所望によ
り下引き層、ブロッキング層、保護層、単極性電荷輸送
層等を設けることができる。
【0071】第1の本発明の電子写真感光体における単
層構成は、単層故の製造コストの低さ、生産性の高さと
云う製造上の利点を有し、上述した積層型感光体におけ
る干渉縞の問題の回避に不可欠な導電性支持体表面の特
殊な加工や、下引き層を設ける必要もなく、この点でも
製造コストの低減が実現できる。
【0072】また、単層型感光層にホール輸送性材料お
よびエレクトロン輸送性材料を含有する構成は、電荷発
生材料にて発生したホールとエレクトロンの両者がそれ
ぞれホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料によっ
て分離輸送されるため、高い電荷分離効率(すなわち電
荷発生効率)が達成され、優れた繰り返し安定性が実現
されるため、特に好ましい。さらに、優れた両極性電荷
輸送能を有するため、電荷発生材料の添加量も必要最少
量で済み、電荷発生材料による輸送特性の劣化も抑えら
れ、併せて、機械的強度の低下も抑えられると云う卓越
した効果を奏する。加えて、電荷発生材料と両電荷輸送
材料が共存しており、光励起状態が速やかに電荷移動失
活されるため、通常の積層型感光体で見られるような光
暴露による電子写真感光体の光化学的な劣化が抑制され
ると云う利点をも有する。そして、単層構成の電子写真
感光体であるため、廃棄された電子写真感光体から電子
写真感光体材料を回収、再生することも容易であり、リ
サイクルによる資源の有効利用、廃棄物の低減、コスト
削減を可能とする。
【0073】第1の本発明において用いられる電荷発生
材料としては、電荷発生能を有するものなら如何なるも
のでも利用可能であり、例えば、非晶質セレン、六方晶
セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その
他セレン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタ
ン、a−シリコン、a−シリコンカーバイド等の無機系
光導電性材料;フタロシアニン系、スクアリウム系、ア
ントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、多環キノン
系、ピレン系、ピロロピロール系、ピリリウム塩系、チ
アピリリウム塩系等の有機顔料および染料等が挙げられ
る。また、これらの電荷発生材料は、単独あるいは2種
以上混合して用いることもできる。
【0074】これらの中でも有機顔料は安全性、堅牢性
等の点で好ましく、特に、フタロシアニン系顔料は、デ
ジタル式の電子写真装置に光源として現在広く使用され
ているLEDおよびレーザーダイオードの発信波長であ
る600〜850nmに優れた光感度を有するため、本
発明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0075】フタロシアニン系顔料としては、無金属フ
タロシアニン類、金属フタロシアニン類、及びそれらの
誘導体が利用できる。金属フタロシアニン類の中心金属
としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、
Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、L
i等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化
物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物誘導
体も有効である。具体的には、チタニルフタロシアニ
ン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウ
ムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロイ
ンジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、
ジメトキシ珪素フタロシアニン等を挙げることができ
る。また、フタロシアニン環に任意の置換基が導入され
た置換フタロシアニンも使用することができる。さらに
また、フタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子
で置換されたアザフタロシアニン類も有効である。
【0076】これらフタロシアニン系顔料の形態として
は、アモルファスまたは全ての結晶形のものが使用可能
である。これ等フタロシアニン系顔料の中でも、無金属
フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリ
ウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニ
ン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光
感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料として
特に好ましい。
【0077】また、アゾ系顔料、多環キノン系顔料およ
びペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、電荷発
生材料として好ましく使用できる。レーザー光のビーム
径は発信波長が短くなるほど小径化できるため、更なる
高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の検討が
なされているが、これらの顔料は、紫外域から可視域に
高い光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷発生
材料として特に好ましく用いることができる。
【0078】第1の本発明において、単層型感光層中の
前記電荷発生材料の含有量としては、0.05〜30重
量%の範囲内にあることが好ましく、0.1〜10重量
%の範囲内がより好ましく、さらに好ましくは0.3〜
5重量%の範囲内である。電荷発生材料の含有量が前記
範囲未満であると、感光層による吸光度が不足し、光感
度が不足したり、露光光源としてレーザー等の可干渉光
を用い、且つ散乱化処理を施していない導電性支持体を
使用した場合には干渉縞の問題が発生する。他方、電荷
発生材料の含有量が前記範囲を超えると、暗電荷の増
加、繰り返し安定性の低下、機械的強度の低下等の弊害
が顕著となる。
【0079】第1の本発明においては、単層型感光層
に、少なくとも上記電荷発生材料のほか、基準発明にお
いて不可欠な要素である既述の電荷輸送性ブロック共重
合体等を含有することが必須であり、さらにホール輸送
性材料とエレクトロン輸送性材料の両者を存在させるこ
とが好ましい。この場合、電荷輸送性ブロック共重合体
等をホール輸送性材料とし、別途任意のエレクトロン輸
送性材料を添加することも可能であり、電荷輸送性ブロ
ック共重合体等をエレクトロン輸送性材料とし、別途任
意のホール輸送性材料を添加することも可能であり、ま
た、エレクトロン輸送性ブロック共重合体等とホール輸
送性ブロック共重合体等とを共用することも可能であ
る。また、電荷輸送性ブロック共重合体等とは別にホー
ル輸送性材料および/またはエレクトロン輸送性材料を
併用することも可能である。また、絶縁性樹脂を添加す
ることも可能である。
【0080】これらの構成において、複数の高分子化合
物を用いる場合、それらはマクロ相分離しないことが望
まれ、電荷輸送性高分子を併用する場合には、電荷輸送
性ブロック共重合体またはグラフト共重合体の電荷輸送
活性ブロックと同一構造のものが好ましく、また、絶縁
性樹脂を併用する場合には、電荷輸送性ブロック共重合
体またはグラフト共重合体の電荷輸送不活性ブロックと
同一構造のものが好ましい。エレクトロン輸送性ブロッ
ク共重合体またはグラフト共重合体とホール輸送性ブロ
ック共重合体またはグラフト共重合体を共用する場合に
は、両者の電荷輸送不活性ブロックが同一構造であるこ
とが好ましい。
【0081】第1の本発明において、電荷輸送性ブロッ
ク共重合体等とは別に電荷輸送材料を用いる場合、その
電荷輸送材料としては、特に制約はないが、電荷輸送性
ブロック共重合体等の少なくとも一つのブロックと相溶
性を有するものであることが望ましい。
【0082】電荷輸送材料の内、ホール輸送性材料とし
ては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合
物、アントラセン系化合物、ブタジエン系化合物、スチ
ルベン系化合物等およびそれらの重合体等の公知の化合
物を用いることができる。一方、エレクトロン輸送性材
料としては、ジフェノキノン系化合物、フルオレノン系
化合物、フルオレニリデンマロノニトリル系化合物、フ
ルオレノイミン系化合物、芳香族イミド系化合物等およ
びそれらの重合物等の公知の化合物を用いることができ
る。
【0083】第1の本発明における単層型感光層の形成
方法としては、如何なる方法でも構わないが、コスト、
設備の簡便性、量産性等の点で、浸漬塗布法、ブレード
塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード
塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング
塗布法等の湿式塗布法により、単層型感光層形成用の塗
布液を塗布・乾燥させることにより形成する方法が好ま
しい。
【0084】前記塗布液は、構成材料の適量を適当な溶
剤中に溶解/分散させることによって調製される。前記
溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、
ジクロロベンゼン、クレゾール等の芳香族系溶剤、テト
ラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤、
ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤、
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロ
ヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸エチル
等のエステル系溶剤、シクロヘキサノール、ブタノール
等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルアセトアミド等のアミド系溶剤等を単独または複数混
合して用いることができる。
【0085】前記単層型感光層において、電荷発生材料
等として顔料等の不溶物を用いる場合、均一且つ安定な
前記単層型感光層形成用の塗布液を得るには、ボールミ
ル法、ペイントシェーク法、アトライター法、サンドミ
ル法、超音波法等の粉砕・分散法にて処理することによ
って調製することが好ましい。上記塗布液における溶剤
の量としては、一概には言えないが、塗布適性より、塗
布液中の全固形分が0.5〜50重量%の範囲になる量
とすることが望ましく、5〜30重量%の範囲になる量
とすることが望ましい。前記単層型感光層の膜厚として
は、5〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは1
0〜40μmの範囲であり、さらに好ましくは15〜3
5μmの範囲である。
【0086】第1の本発明の電子写真感光体において
は、単極性電荷輸送層を併設しても構わない。特に、図
3の構成において、導電性支持体1と両極性電荷輸送層
3との間に帯電極性と同極性の電荷を輸送する適当な単
極性電荷輸送層を設けると、帯電性や、導電性支持体1
と両極性電荷輸送層3との間の接着性等において、改善
効果がもたらされる場合がある。また、図3の構成にお
いて、その表面に帯電極性と逆極性の電荷を輸送する適
当な単極性電荷輸送層を設けると、耐磨耗性、転写性、
クリーニング性等において、改善効果がもたらされる場
合がある。
【0087】単極性電荷輸送層としては、特に限定され
ず、公知の電荷輸送層の構成をそのまま適用することが
できる。単極性電荷輸送層の形成方法としては、浸漬塗
布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー
塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン
塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布および乾燥
して塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗
布液は、単極性電荷輸送層の構成成分を適当な溶剤に溶
解・分散させて調製することができる。単極性電荷輸送
層の膜厚は、0.1〜40μmの範囲、好ましくは2〜
10μmの範囲に設定される。
【0088】本発明において、感光層の上に必要に応じ
て設けてもよい保護層としては、帯電部材から発生する
オゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化学的・光化
学的ストレス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部
材等との接触に起因する機械的ストレスから感光層を保
護し、電子写真感光体の実質的な寿命を改善するために
有効である。
【0089】前記保護層は、一般に導電性材料を適当な
結着樹脂中に含有させて形成される。該導電性材料とし
ては、ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化
アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、
ITO等の金属酸化物等の材料を用いることができる
が、これらに限定されるものではない。
【0090】前記保護層形成に用いることができる結着
樹脂としては、アミド樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹
脂、カーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリルアミド
樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹
脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂を用いることができ
る。また、アモルファスカーボン等の半導電性無機膜も
保護層として用いることができる。
【0091】前記保護層の形成方法としては、浸漬塗布
法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗
布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗
布法、リング塗布法等により塗布液を塗布および乾燥し
て塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布
液は、保護層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させ
て調製することができる。保護層の膜厚は0.5〜20
μmの範囲が適当であり、より好ましくは1〜10μm
の範囲に設定される。
【0092】また、保護層を設けた場合、必要に応じ
て、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電
荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができ
る。このブロッキング層としては、保護層の場合と同様
に公知のものを用いることができる。
【0093】本発明の電子写真感光体においては、オゾ
ンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による電子写真感光
体の劣化を防止する目的で、任意の層中に酸化防止剤、
光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができ
る。
【0094】酸化防止剤としては、公知のものを用いる
ことができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダー
ドアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、
スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導
体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0095】光安定剤としては、公知のものを用いるこ
とができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾー
ル、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の
誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは
電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子
供与性化合物等が挙げられる。
【0096】熱安定剤としては、公知のものを用いるこ
とができる。さらに、表面磨耗の低減、転写性の向上、
クリーニング性の向上等を目的として、表面層(保護
層、感光層のいずれの場合であっても構わない)にフッ
素樹脂等の微粒子を分散させてもよい。
【0097】C:第2の本発明の構成 第2の本発明は、前記基準発明における前記電荷輸送性
ブロック共重合体等を含有する感光層が電荷輸送層であ
り、さらに少なくとも一層の電荷発生層が形成され、全
体として積層型感光層を構成していることを特徴とす
る。第2の本発明における電荷輸送層としては、前記電
荷輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層である電
荷輸送層(以下、単に「特定の電荷輸送層」という場合
がある。)のほか、一般の電荷輸送層をも積層させるこ
とができる。
【0098】特定の電荷輸送層としては、構成上特に制
限は無いが、不均一電荷輸送層を為し、感光層全体とし
て、S字型の特性を持たせることができる。すなわち、
特定の電荷輸送層を不均一電荷輸送層とすることで、十
分な機械的強度、および、適切な不均一電荷輸送特性を
有し、耐久性の高いS字型の電子写真感光体を提供する
ことができる。具体的には、電荷輸送性ブロック共重合
体における電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロ
ックとの割合を適切に調整することにより、不均一電荷
輸送特性を発現させることができる。
【0099】ここで、S字型光誘起電位減衰特性発現の
機構について説明する。S字型光誘起電位減衰特性発現
の機構に関しては、トラップ説〔例えば、北村,小門:
電子写真学会誌,Vol.20,p.60(198
2)〕、D.M.Pai等が前記の文献で唱えている回
旋状電導説等幾つかの提案はあるものの、未だ確立され
た説はない。しかしながら、これまでにS字型感光体と
して報告されている上記の顔料樹脂分散型単層感光体、
D.M.Paiらの電荷発生層および不均一電荷輸送層
からなる積層感光体、および本発明者等の電荷発生層、
不均一電荷輸送層および均一電荷輸送層からなる積層感
光体においては、少なくとも電荷発生領域に隣接する電
荷輸送領域の電荷輸送路が電気的不活性マトリックス中
に電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一な構造を
有するものであるという共通点を認めることができる。
尚、ここでいう電気的不活性とは、その輸送エネルギー
レベルが、電荷輸送ドメインの輸送エネルギーレベルか
ら大きくかけ離れており、通常の電界強度では、実質的
に輸送電荷が注入されることがなく、輸送電荷にとって
事実上の電気的絶縁状態にあることを意味する。
【0100】第2の本発明における電荷輸送活性ブロッ
クと電荷輸送不活性ブロックとを含む共重合体を含有す
る相分離系不均一電荷輸送層を用いた積層型感光体が、
なぜS字型光誘起電位減衰特性を発揮し得るかは必ずし
も明らかではないが、Pai等の回旋状電導説によれ
ば、S字型光誘起電位減衰が起こる過程は、以下のよう
なものであると推定される。
【0101】まず、不均一電荷輸送層では、電気的不活
性マトリックス中に分散された電荷輸送性ドメインが互
いに接触し、回旋状の電荷輸送路を形成しているものと
考える。この場合、電子写真感光体が帯電され感光層に
高電界が印加されると、露光により電荷発生層で発生し
た電荷は電界によるクーロン力により電界に沿って、電
荷発生層から不均一電荷輸送層に注入され、電荷輸送性
ドメイン中を電界方向に移動する。しかし、電荷輸送性
ドメインの末端凸部に到達した所で、電気的不活性マト
リックスの障壁に出会い、電界により移動方向が規制さ
れているため、ここで該電荷の移動は一旦停止すること
になる。
【0102】この間の移動距離が感光層の全膜厚に対し
て充分小さければ、このときの電位減衰は無視できるも
のとなる。殆ど全ての表面電荷に相当する電荷が注入さ
れた後は、該注入電荷近傍での表面に垂直な局部的電界
は無視できるほど小さくなり、停止していた電荷は、電
界による束縛を逃れ表面に垂直な方向以外の方向に拡散
することが可能となり、回旋状に連なる連結路を辿って
最初に停止した所よりも深部に達する。この深部におい
て、先程と同様に電荷は再び十分な高電界に晒され電荷
輸送性ドメイン内を電界方向に沿って移動し、再び電気
的不活性マトリックスの障壁に出会い、移動を停止す
る。しかし、同様な他の電荷の移動で電界強度は低下し
ているので、より多くの電荷が回旋状電荷輸送路を通り
次の絶縁性障壁にまで達する。かくして、電荷の移動は
カスケード的に起こり、S字型の光誘起電位減衰とな
る。
【0103】尚、顔料樹脂分散型の単層S字感光体にお
いては、露光光は表面近傍で吸収されそこで電荷が発生
されるため、該光吸収/電荷発生の領域を電荷発生層、
それに続く残りの領域を電荷輸送層と見なすことがで
き、同様に上記説明が当てはまる。
【0104】本第2の本発明における電荷輸送活性ブロ
ックと電荷輸送不活性ブロックとを含む共重合体を含有
する相分離系不均一電荷輸送層を用いた積層型感光体
が、S字型の光誘起電位減衰挙動を呈するのも、電荷輸
送活性ブロックからなる相が電荷輸送性ドメインを、電
荷輸送不活性ブロックからなる相が電気的不活性マトリ
ックスをそれぞれ形成し、上記のような現象が起きてい
るためと推定されるが、本発明は、これら理論により拘
束されるものではない。
【0105】尚、光誘起電位減衰特性のS字性の尺度に
は、例えば、帯電電位を50%減衰させるのに要する露
光量E50%と10%減衰させるのに要する露光量E10%
の比(E50%/E10%値)を用いることができる。理想的
なJ字型感光体は、電位減衰が露光量に比例していて、
50%/E10%値は5となる。一般的なJ字型感光体で
は、電界強度の低下に伴い、電荷発生効率および/また
は電荷輸送能が低下するため、E50%/E10%値は5を越
える値を示す。一方、理想的なS字型感光体は、ある露
光量までは全く電位減衰せず、その露光量で一気に残留
電位レベルまで電位減衰する階段状の電位減衰曲線を示
すので、E50%/E10%値は1となる。したがって、S字
型感光体とはE50%/E10%値が1以上5未満の値を示す
ものとして規定され、E50%/E10%値が1に近づく程、
S字性が高いことを意味する。
【0106】好ましいデジタル特性を発揮するには、E
50%/E10%値は3未満の値であることが好ましく、より
好ましくは2未満の値である。但し、階調性を高める等
の理由で、アナログ特性を併用する場合には、E50%
10%値は、およそ1.5〜4の範囲内で好適な結果を
与える。第2の本発明のS字型電子写真感光体は、この
ような好ましいE50%/E10%値を与え得る。
【0107】図4ないし図7に、第2の本発明に好適に
適用される、電子写真用感光体の模式拡大断面図を示
す。図4においては、導電性支持体1上に、電荷発生層
2が設けられ、その上にS字化と電荷輸送を担う不均一
電荷輸送層5が設けられている。図5においては、導電
性支持体1上に電荷発生層2が設けられ、その上にS字
化を担う不均一電荷輸送層5が設けられ、さらにその上
に主な電荷輸送を担う均一電荷輸送層6が設けられてい
る。図6においては、導電性支持体1上に不均一電荷輸
送層3が設けられ、その上に電荷発生層2が設けられて
いる。図7においては、導電性支持体1上に均一電荷輸
送層6が設けられ、その上に不均一電荷輸送層5が設け
られ、さらにその上に電荷発生層2が設けられている。
これらの電子写真感光体は、さらに所望により下引き
層、ブロッキング層、保護層、中間層、および/または
乱反射層等を含むことができる。
【0108】前記のように、電荷発生層で発生した電荷
が不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの障害
に出会い最初に一時停止するまでの間の移動距離が感光
層の全膜厚に対して充分小さければ、その間の電位減衰
は無視できるものとなり、より理想的なS字性を示す。
つまり、電荷発生層とS字化のための不均一電荷輸送層
は近接している方がより高いS字性を与える。ただし、
電荷の注入や電荷の発生を助ける等の目的のために電荷
発生層と不均一電荷輸送層との間に適当な中間層を設け
ることもできる。また、電荷発生層と不均一電荷輸送層
との間に均一電荷輸送層を挿入し、該均一電荷輸送層の
膜厚を変えることにより、E50%/E10%値を1以上5未
満の範囲内の任意の値に設定することも可能である。
【0109】S字化を担う不均一電荷輸送層は、電気的
不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメインが分散され
てなる不均一構造を特徴とする電荷輸送路を形成する層
であって、第2の本発明では、上述のように絶縁性ブロ
ックである電荷輸送不活性ブロックと、電荷輸送活性ブ
ロックとからなるブロック共重合体またはグラフト共重
合体において、電荷輸送不活性ブロックがマトリック
ス、電荷輸送活性ブロックがドメインとなるミクロ相分
離状態を為すものである。
【0110】相分離性共重合体からなる不均一電荷輸送
層において、回旋状電荷輸送経路の形成は、電荷輸送活
性ドメイン同士の確率的な接触に依存する。その接触の
確率が大きすぎると、電荷輸送経路は回旋状とならずS
字性が低下し、またその接触の確率が小さすぎると、電
荷輸送層全体を貫き連続した電荷輸送経路が形成できな
くなり、残留電位の増大を招く。電荷輸送性ドメインの
互いの接触は必ずしも直接接触している必要はなく、電
荷輸送活性ドメイン間の非常に薄い絶縁層は、電荷がそ
のギャップを飛び越えることができ、且つそこでの捕獲
が無視できるならば、その存在は許容される。ここでい
う回旋状電荷輸送路とは、電荷の移動が膜厚方向に対し
て1回以上逆行するように形成されている電荷輸送路の
ことである。
【0111】第2の本発明に用いる電荷輸送活性ブロッ
クと電荷輸送不活性ブロックとを含むブロック共重合体
等は、両ブロックが非相溶性の時、S字化電荷輸送層と
して、有効に機能する。第2の本発明のS字型電子写真
感光体は、少なくとも電荷発生材料を有する電荷発生層
と、不均一電荷輸送層とを有する機能分離タイプのもの
であり、該不均一電荷輸送層の主要構成成分として、上
述の電荷輸送性ブロック共重合体等を含むことを特徴と
する。
【0112】電気的不活性マトリックスを形成する電荷
輸送不活性ブロックとしては、主輸送電荷に対し、電気
的に不活性であれば如何なるものでも構わないが、10
13Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものが好ましく、
より好ましくは1014Ω・cm以上の体積抵抗率を有す
るものである。体積抵抗率が1013Ω・cmより低い
と、電気的不活性マトリックスの電気的絶縁性が損なわ
れ、S字性が失われたり、暗減衰が増加する傾向にあ
る。
【0113】前記電荷輸送性ブロック共重合体等におけ
る電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの
組成比は、それらの相分離の結果として得られる電荷輸
送活性ドメインと電気的不活性マトリックスの体積比
(電荷輸送活性ドメイン/電気的不活性マトリックス)
が10/1〜1/10となる範囲内で任意に設定され、
より好ましくは2/1〜1/4の範囲である。
【0114】電荷輸送活性ドメインの体積比率が上記範
囲より大きいと、電荷輸送活性ドメインが密に接触、あ
るいは電荷輸送活性ブロックがマトリックスとなってし
まい、実質的に均一な構造の電荷輸送路を形成し、上記
のS字型光誘起電位減衰特性の発現に不可欠な電荷輸送
路の不均一構造が消失し、S字性が失われる傾向にあ
る。他方、電荷輸送活性ドメインの体積比率が上記範囲
より小さいと、電荷輸送路が分断され、残留電位の増
大、応答速度の低下等の障害を招く傾向にある。
【0115】不均一電荷輸送層の相分離構造としては、
上述の回旋状電荷輸送路が形成されるものであれば如何
なる構造を取っても構わないが、電荷輸送活性ブロック
からなる相が球状もしくは棒状等の島、電荷輸送不活性
ブロックからなる相が海となる相分離構造(海島構造)
を取る場合に、より良いS字性が得られる。また、スピ
ノーダル分解により得られる変調構造を取る場合にも、
好ましいS字性が得られる。また、入り組んだラメラ構
造を取る場合にも、好ましいS字性が得られる。
【0116】ここで、相分離状態を如何に制御するかが
課題となるが、相分離状態は構成ブロックの種類および
分子量により、熱力学的に最も安定な構造が存在し、一
般的には、Aブロック、Bブロックからなる共重合体で
は、連結形式には依らず、A/B組成比にのみ依存し、
A/B比の増加に伴い、Aが球状ドメインでBがマトリ
ックス、Aが棒状ドメインでBがマトリックス、A/B
交互層、Bが棒状ドメインでAがマトリックス、Bが球
状ドメインでAがマトリックスへと系統的に変化する。
【0117】しかしながら、湿式塗布法により、成膜す
る場合には、用いる溶媒および乾燥速度等により、相分
離状態を任意に制御することができる。例えば、A/B
比が大きく熱力学的にはB球Aマトリックスを取る場合
でも、塗布溶媒として、Bの良溶媒であり且つAの貧溶
媒である溶媒を選択すれば、A球Bマトリックス構造を
得ることができる。また、A、B両者の良溶媒を用い、
急速に溶媒を除去すると、スピノーダル分解状態で凍結
した相分離構造(変調構造)を得ることができる。ま
た、A/B比が大きく、熱力学的にはB球Aマトリック
スを取る共重合体に、Bのみと相溶性のある重合体を添
加すると、Aが球、BおよびBのみと相溶性のある重合
体がマトリックスとなる相分離構造を得ることもでき
る。
【0118】第2の本発明に用いる不均一電荷輸送層の
膜厚は0.1〜50μmが適当であるが、応答速度を高
速化するという観点から、0.2〜15μmの範囲が好
ましく、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲に設定
される。上記範囲より薄いとS字性が低下する傾向にあ
る。膜厚の上限に関しては、用いるS字化電荷輸送層の
電荷輸送能により制限され、応答速度、残留電位等が許
容される範囲内で設定される。
【0119】さらに、電荷輸送活性ドメインの平均径は
0.005〜3μmが好ましく、より好ましくは0.0
1〜1μm、特に好ましくは0.02〜0.5μmの範
囲である。電荷輸送活性ドメインの平均径が上記範囲よ
り大きいと、好ましい膜厚の範囲内でのS字化に必要な
電荷輸送路の不均一構造の形成が確率的に低くなり、S
字性が低下することになる。他方、電荷輸送活性ドメイ
ンの平均径が上記範囲より小さい場合には、電荷輸送路
が均一な構造に近付き、この場合もS字性が低下するこ
とになる。
【0120】電荷輸送活性ドメインの電荷移動度は、電
子写真感光体の応答速度を支配する一因子であり、移動
度が高いものほど、高速の電子写真装置に好適に用いら
れる。本発明の電子写真装置においては、少なくとも現
像に用いる電界強度域において、10-6cm2/Vs以
上であることが好ましい。より好ましくは5×10-6
2/Vs以上である。尚、電荷輸送活性ドメインの電
荷移動度を、直接測定することは困難であり、電荷輸送
活性ブロックと同一構造の電荷輸送性高分子の電荷移動
度で代用することができる。移動度の測定は、当業界に
おける常法である、Time−of−Flight法に
より行うことができる。
【0121】不均一電荷輸送層中には、主たる輸送電荷
と逆極性の電荷のみを輸送し得る化合物を添加すること
もできる。かかる化合物を添加することにより、残留電
位の低下、繰り返し安定性の向上等の効果を得ることが
できる。
【0122】不均一電荷輸送層の形成方法としては、ブ
レード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、
浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カー
テン塗布法、リング塗布法等により、不均一電荷輸送層
形成用の塗布液を塗布し乾燥する、通常の方法を適用す
ることができる。当該塗布液としては、高分子が均一に
溶解している溶液またはミセルを形成している溶液等を
用いることができる。かかる溶液を調製するための溶媒
としては、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、塩化
メチレン、トルエン、シクロヘキサノン等がある。
【0123】第2の本発明における電荷発生層に用いら
れる電荷発生材料は、J字型、S字型を問わず積層型電
子写真用感光体に電荷発生層として用いられ得る任意の
ものから選択することができる。例えば、非晶質セレ
ン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セ
レン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、
a−Si、a−SiC等の無機系光導電性材料;フタロ
シアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペ
リレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリ
リウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料および染
料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単
独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0124】特に、フタロシアニン系化合物は、デジタ
ル式の電子写真装置に光源として現在広く使用されてい
るLEDおよびレーザーダイオードの発信波長である、
600〜850mmに優れた光感度を有するので、第2
の本発明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0125】フタロシアニン系化合物としては、無金属
フタロシアニン、金属フタロシアニン、およびそれらの
誘導体が利用できる。金属フタロシアニンの中心金属と
しては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、A
l、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li
等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化
物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物等も
使用できる。具体的には、チタニルフタロシアニン、ク
ロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタ
ロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウ
ムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメト
キシケイ素フタロシアニン等を挙げることができる。
【0126】また、上記化合物のフタロシアニン環に任
意の置換基が導入された置換フタロシアニン類も使用す
ることができる。さらにまた、上記化合物のフタロシア
ニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたアザ
フタロシアニン類も有効である。これらフタロシアニン
系化合物の形態としては、アモルファスまたはすべての
結晶形のものが使用可能である。
【0127】これらフタロシアニン系化合物の中でも、
無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロ
ロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロ
シアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優
れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料
として特に好ましい。
【0128】また、殆どのフタロシアニン系化合物が正
孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有してい
るのに対し、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸引性基
を有するフタロシアニン類およびアザフタロシアニン類
は、電子を主たる輸送電荷とするn型半導体であるの
で、電荷発生材料としてこれらのフタロシアニン系化合
物を含む電荷発生層と、不均一電荷輸送層とを導電性支
持体上に順次積層してなるS字型感光体は、それを負帯
電で使用した場合、導電性支持体からのホールの注入が
抑えられ、暗減衰が小さく帯電性が高いと云う良好な電
子写真特性を示す。
【0129】また、六方晶セレン顔料、アントラキノン
系顔料、アゾ系顔料およびペリレン系顔料も電荷発生効
率に優れるため、電荷発生材料として好ましく使用でき
る。レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小
径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レー
ザーの短波長化の検討がなされているが、これらの顔料
は、紫外域から可視域に光感度を有するため、短波長レ
ーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いること
ができる。
【0130】電荷発生層は、前記電荷発生材料を真空蒸
着法により直接成膜する、または、前記電荷発生材料を
結着樹脂中に分散または溶解し、これを湿式塗布法にて
製膜することにより作製できる。電荷発生層に結着樹脂
を用いる場合、その結着樹脂の種類は特に限定されない
が、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホ
ルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポ
リカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹
脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニ
ルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、
シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルカルバゾ
ール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂はブロッ
ク、ランダムまたは交互共重合体いずれでもよく、ま
た、これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合し
て用いてもよい。また、既述の通り本発明における電荷
輸送性ブロック共重合体等も、電荷発生層用の結着樹脂
として有効である。
【0131】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(体積
比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。より好
ましくは、3:1〜1:1の範囲に設定される。電荷発
生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より大きい
と、暗減衰が増大し、また湿式塗布法では均質な膜を得
ることが困難になる。一方、前記範囲より小さいと光感
度の低下、残留電位の増大等の障害が起きる。
【0132】第2の本発明で用いる電荷発生層の膜厚
は、一般的には0.05〜5μmが適当であり、好まし
くは0.1〜2μmの範囲であり、さらに好ましくは
0.1〜〜1μmの範囲に設定される。膜厚が厚いと、
一般的に暗電荷量が増加する傾向にあり、暗電荷密度の
高い電荷発生材料を用いる場合、0.3μm以下に設定
されることが好ましい。
【0133】電荷発生層の形成方法としては、ブレード
塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗
布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗
布法、リング塗布法等により、電荷発生層形成用の塗布
液を塗布し乾燥する、通常の方法を適用することができ
る。
【0134】第2の本発明に用いられる電子写真感光体
には、さらに均一電荷輸送層を設けることもできる。均
一電荷輸送層を設けることにより、電荷輸送層全体とし
ては性能上十分な膜厚を維持しつつ、感光体の応答速度
を律する不均一電荷輸送層の膜厚を薄くすることができ
るので、装置の高速化の点でより好ましい。
【0135】均一電荷輸送層としては、当業界でJ字型
積層感光体における電荷輸送層として知られている任意
のものから選択できる。例えば、ベンジジン系化合物、
トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ス
チルベン系化合物、カルバゾール系化合物、ジフェノキ
ノン系化合物等を、単独でまたは2種以上を混合して、
絶縁性樹脂(例えば、ポリカーボネート、ポリアリレー
ト、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリ
レート等)中に均一分子分散した固溶膜を用いることが
できる。あるいは、それ自身電荷輸送能を有する高分子
化合物等を用いることもできる。また、セレン、a−S
i、a−SiC等の電荷輸送能を有する無機物質を用い
ることもできる。
【0136】第2の本発明において形成可能な均一電荷
輸送層としては、特に製造上、電荷輸送性高分子化合物
を用いることが好ましい。上記電荷輸送性高分子化合物
としては、特開平2−304456号公報等に開示され
ているような電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子
化合物等、また、特開平5−232727号公報等に開
示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む
高分子化合物、例えばトリアリールアミン骨格を有する
ポリカーボネート等を用いることができ、さらに、ポリ
シリレン等を用いることができる。
【0137】不均一電荷輸送層と均一電荷輸送層を積層
成膜する場合、均一電荷輸送層に電荷輸送性低分子化合
物を用いると、電荷輸送性低分子化合物が不均一電荷輸
送層中に混入することがある。その結果、不均一電荷輸
送層の電気的不活性マトリックスの主たる電荷に対する
絶縁性が低下するために、S字性が損なわれたり、ある
いは不均一電荷輸送層中に混入した電荷輸送性低分子が
不均一電荷輸送層中で電荷トラップとなり、残留電位の
増大、輸送能の低下および光感度の低下等の障害が発生
する。この問題は、特に、湿式塗布法により各層を成膜
する場合に顕著になる(もちろん、これらの問題は、上
層の塗布溶剤として下層を溶解および膨潤し難いものを
選択する、または、不均一電荷輸送層を架橋硬化性のも
のとし、上層塗布溶剤による溶解および膨潤が起こらな
いようにする等により、回避することが可能である)。
【0138】ところが、上述したように、高分子同士は
相溶することなく相分離を起こすことが一般的に知られ
ており、均一電荷輸送層として、電荷輸送性高分子化合
物を用いた場合、不均一電荷輸送層樹脂と相溶すること
なく相分離するため、上記のような混入の問題は殆ど発
生せず、材料および製造法の選択に当たっての制約が解
消されるという利点を有する。
【0139】尚、均一電荷輸送層中には電荷輸送性マト
リックスに囲まれるような電気的不活性な領域が存在し
てもよい。例えば表面摩擦力の低減、磨耗の低減、また
は表面への異物付着の低減等を目的に低表面エネルギー
の絶縁性粒子等を含有させることができる。
【0140】均一電荷輸送層には電荷輸送能の向上等を
目的に、電荷輸送性微粒子を添加することもできる。ま
た、上述したように均一電荷輸送層中には電荷輸送性マ
トリックスに囲まれるような電気的不活性な領域が存在
してもよいため、電荷輸送活性ブロックがマトリック
ス、電荷輸送不活性ブロックがドメインとなるミクロ相
分離状態を取る共重合体も、均一電荷輸送層として用い
ることができる。
【0141】均一電荷輸送層は、上記材料を乾式または
湿式塗布することにより得られる。塗布方法としては、
ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布
法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、
カーテン塗布法、リング塗布法等の通常の方法を用いる
ことができる。また、セレン等の気相成膜可能なもの
は、真空蒸着法等により直接成膜することもできる。本
発明で用いる均一電荷輸送層の膜厚は50μm以下、好
ましくは30μm以下に設定される。
【0142】電荷輸送層(不均一・均一電荷輸送層の双
方を含む)が最表層となる構成においては、機械的強度
の観点から、架橋硬化性材料を用い形成される3次元架
橋型電荷輸送層を用いることが好ましい。
【0143】第2の本発明において、不均一電荷輸送層
および均一電荷輸送層を含む電荷輸送層全体の合計膜厚
は、5〜100μmが適当であり、好ましくは10〜4
0μmの範囲に設定される。さらに好ましくは、15〜
35μmの範囲である。
【0144】電荷輸送層が電荷発生層と露光光源の間に
存在する場合、実効の光感度の低下を防ぐ上で、電荷輸
送層は露光波長の光に対し事実上透明であることが望ま
しい。好ましくは、電荷輸送層における露光に用いる光
の透過率は50%以上である。より好ましくは70%以
上であり、さらに好ましくは90%以上である。しかし
ながら、低感度での使用が望まれる場合には、露光波長
の光に対し吸収のある物質を添加し、実効的な光感度を
調整することもできる。
【0145】第2の本発明においても、必要に応じて、
感光層の上に保護層を設けてもよい。保護層を設けるこ
とにより、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス
等、および紫外光等の化学的または光化学的ストレス、
あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に
起因する機械的ストレスから感光層を保護し、感光層の
実質の寿命を改善することができる。特に、薄層の電荷
発生層を上層に用いる層構成において、効果が顕著であ
る。当該保護層としては、第1の本発明において説明し
たものと同様である。また、第1の本発明において説明
した、保護層と同様のブロッキング層を設けることもで
きる。さらに、第1の本発明において説明した酸化防止
剤、光安定剤、熱安定剤等についても、各層または最上
層中に添加することができる。
【0146】D:本発明のプロセスカートリッジ プロセスカートリッジとは、電子写真装置の消耗部品を
適時交換する目的で、電子写真装置の構成部品のいくつ
かをカートリッジに組み込み、容易に交換作業を行える
ようにしたものである。プロセスカートリッジは、電子
写真装置の中に装着された状態で取引される他、交換部
品あるいは補修部品として、単体でも取引されている。
【0147】プロセスカートリッジに組み込まれ得る構
成部品としては、一般に、帯電手段、像露光手段、およ
びクリーニング手段が挙げられ、これらをその目的に応
じて任意に組み合わせることができる。
【0148】本発明のプロセスカートリッジは、少なく
とも電子写真感光体と、必要に応じて、帯電手段、像露
光手段、およびクリーニング手段からなる群より選ばれ
る少なくとも1つの手段と、を含み、かつ、該電子写真
感光体が前記本発明の電子写真感光体であることが特徴
となる。プロセスカートリッジに組み込まれ得る電子写
真感光体以外の構成部品については、特に制限は無く、
従来公知の物が問題無く採用され得る。
【0149】E:本発明の電子写真装置 本発明の電子写真感光体を搭載する電子写真装置として
は、電子写真法によるものであれば如何なるものでも構
わないが、特にデジタル処理された画像信号に基づき露
光を行う電子写真装置が好ましい。デジタル処理された
画像信号に基づき露光を行う電子写真装置とは、レーザ
ーまたはLED等の光源を用い、2値化またはパルス幅
変調や強度変調を行い多値化された信号に従い露光を行
う電子写真装置であり、例としてLEDプリンター、レ
ーザープリンター、レーザー露光式デジタル複写機など
を挙げることができる。本発明の電子写真装置として
は、電子写真感光体の表面を負に帯電させる帯電器と反
転現像方式の現像器を備えたものが、画質等の点で、特
に好ましい。
【0150】本発明の電子写真装置の一例を図8に模式
的に示す。図8の電子写真装置はレーザープリンターで
あり、電子写真感光体である円筒形の感光体ドラム11
の周りに、除電用光源である除電用LED12、帯電手
段である帯電用スコロトロン13、像露光手段である露
光用レーザー光学系14、現像器15、転写用接触帯電
ロール16、および、クリーニング手段であるブレード
式クリーニング器17が、この順序で配置されている。
露光用レーザー光学系14は、例えば発信波長780n
mの露光用レーザーダイオードを備えており、デジタル
処理された画像信号に基づき発光する。発光したレーザ
ー光14aはポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラーに
より走査されながら電子写真感光体表面を露光するよう
に構成されている。尚、18は用紙を示す。
【0151】本発明の電子写真装置においては、感光体
ドラム11が本発明の電子写真感光体である。勿論、感
光体ドラム11と、必要に応じて、帯電用スコロトロン
13、露光用レーザー光学系14、およびブレード式ク
リーニング器17からなる群より選ばれる少なくとも1
つの手段と、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本
発明の電子写真感光体であるプロセスカートリッジを含
む構成であっても構わない。
【0152】本発明の電子写真装置について、図面を以
って説明したが、本発明はかかる構成に限定されるもの
ではなく、電子写真感光体以外の構成部品については、
特に制限は無く、従来公知の物が問題無く採用され得
る。
【0153】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定され
るものではなく、当業者は公知の知見から、以下の実施
例に変更を加えることが可能である。
【0154】[合成例1]シクロヘキシリデンビスフェ
ノールとホスゲンとから常法にて重縮合された、末端に
フェノール由来のヒドロキシル基を有するポリカーボネ
ート(重量平均分子量4万)500gと、p−ピコリン
50gと、をテトラヒドロフラン2.0Lに溶解し、0
℃に冷却した。ここに、4,4’−アゾビス(4−シア
ノ吉草酸クロリド)100gを加え、35℃に昇温し6
時間反応させた。これをメタノール10リットルに滴下
し、1時間撹拌した後に沈降した固体を濾別した。さら
にテトラヒドロフラン/メタノールによる再沈殿化処理
を2回繰り返し、末端に重合開始基としてのアゾ基を有
するポリカーボネートを得た。
【0155】得られた末端にアゾ基を有するポリカーボ
ネート200gをテトラヒドロフラン4Lに溶解し、エ
レクトロン輸送活性基としてフルオレニリデンマロノニ
トリル構造を有する下記構造式(1)で示されるビニル
モノマー400gと、メタクリル酸メチル200gと、
を加え、脱気・窒素置換を充分に行った後に70℃で1
50時間加熱した。
【0156】
【化1】
【0157】これをメタノール20リットルに滴下し、
沈降した固体を濾別した。さらにテトラヒドロフラン/
メタノールによる再沈殿化処理を2回繰り返した。得ら
れた固体は、1H−NMRスペクトルとGPC分析の結
果、ポリカーボネート、上記構造式(1)で示されるビ
ニルモノマーの単独重合物、および、ポリカーボネート
ブロック(電荷輸送不活性ブロック)と上記構造式
(1)で示されるビニルモノマーの重合ブロック(電荷
輸送活性ブロック)とからなるブロック共重合体の混合
物(以下、「混合物A」と称する。)であることが判っ
た。
【0158】また、1H−NMRスペクトルの解析か
ら、混合物Aにおけるブロック共重合体の電荷輸送活性
ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの重量組成比は、
およそ2:3であった。
【0159】[合成例2]プロピリデンビスフェノール
とイソフタル酸クロリドとから界面重縮合法にて重合さ
れた、末端にフェノール由来のヒドロキシル基を有する
ポリエステル(重量平均分子量3.5万)500gと、
トリエチルアミン10gと、をテトラヒドロフラン2.
0Lに溶解し、0℃に冷却した。ここに、4,4’−ア
ゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)200gを加え、
35℃に昇温し6時間反応させた。これをメタノール1
0リットルに滴下し、1時間撹拌した後に沈降した固体
を濾別した。さらにテトラヒドロフラン/メタノールに
よる再沈殿化処理を2回繰り返し、末端に重合開始基と
してのアゾ基を有するポリエステルを得た。
【0160】得られた末端にアゾ基を有するポリエステ
ル200gをテトラヒドロフラン4Lに溶解し、ホール
輸送活性基としてテトラアリールベンジジン構造を有す
る下記構造式(2)で示されるビニルモノマー600g
を加え、脱気・窒素置換を充分に行った後に70℃で1
50時間加熱した。
【0161】
【化2】
【0162】これをメタノール20リットルに滴下し、
沈降した固体を濾別した。さらにテトラヒドロフラン/
メタノールによる再沈殿化処理を2回繰り返した。得ら
れた固体は、1H−NMRスペクトルとGPC分析の結
果、ポリエステル、上記構造式(2)で示されるビニル
モノマーの重合物、および、ポリエステルブロック(電
荷輸送不活性ブロック)と、構造式(2)で示されるビ
ニルモノマーの重合ブロック(電荷輸送活性ブロック)
とからなるブロック共重合体の混合物(以下、「混合物
B」と称する。)であることが判った。
【0163】また、1H−NMRスペクトルの解析か
ら、混合物Bにおけるブロック共重合体の電荷輸送活性
ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの重量組成比は、
およそ2:3であった。
【0164】I)第1の本発明の実施例および比較例 (実施例1)CuKαを線源とするX線回折スペクトル
において少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)
が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.
3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシ
アニン微結晶3重量部、キシレン100重量部、および
テトラヒドロフラン300重量部とを混合し、SUS製
ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理し
た後、合成例1で得られた混合物A67重量部と、トリ
フェニルアミン構造を有する下記構造式(3)で示され
るホール輸送性低分子化合物30重量部を添加し、さら
にボールミル法で2時間溶解分散処理し、単層型感光体
用の感光層形成塗布液を調製した。
【0165】
【化3】
【0166】得られた感光層形成塗布液を、表面を鏡面
処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支
持体)上に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において6
0分間加熱乾燥し、図3に示す構成の単層型の電子写真
感光体を作製した。尚、感光層の膜厚は15μmであっ
た。
【0167】このようにして得られた電子写真感光体を
市販のレーザープリンター(Laser Press4
150、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温常湿環境
(25℃、50%RH)下にて、A4横方向に1万枚連
続で画出しし、プリント試験を行った。1枚目と1万枚
連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評
価結果を下記表1にまとめて示す。尚、評価に供した上
記レーザープリンターは、図8に示される構成であり、
負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器を備えてい
る。
【0168】(実施例2)アルミニウム製ドラムとし
て、ポリメタクリル酸メチル粒子による湿式ホーニング
処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.2μ
m)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以
外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、
実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1に
まとめて示す。
【0169】(実施例3)アルミニウム製ドラムとし
て、ポリメタクリル酸メチル粒子による湿式ホーニング
処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.2μ
m)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用い、エ
レクトロン輸送性ブロック共重合体67重量部、およ
び、上記構造式(3)で示されるホール輸送性低分子化
合物30重量部の代わりに、合成例2で得られた混合物
B57重量部、および、3,5−ジメチル−3',5'−
ジ−tert−ブチルジフェノキノン40重量部を用い
た以外は、実施例1と同様にして感光体を作製し、実施
例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまと
めて示す。
【0170】(実施例4)導電性支持体として、84m
m径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例3
と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子
写真感光体を市販のフルカラーレーザー複写機(A−C
olor935、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温
常湿環境(25℃、50%RH)下にて、A4横方向に
1万枚連続で画出しし、プリント試験を行った。1枚目
と1万枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて
行った評価結果を下記表1にまとめて示す。尚、評価に
供した上記レーザープリンターは、図8に示される構成
であり、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器を備
えている。
【0171】(比較例1)実施例1において、合成例1
で得られた混合物Aの代わりに、合成例1の中途で得ら
れたポリカーボネートを用いた以外は、実施例1と同様
にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして
評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0172】(比較例2)CuKαを線源とするX線回
折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ
±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、
および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリ
ウムフタロシアニン微結晶3重量部を、塩化ビニル−酢
酸ビニル−マレイン酸共重合体(VMCH、ユニオンカ
ーバイド社製)3重量部、キシレン60重量部、およ
び、酢酸ブチル40重量部と混合し、SUS製ビーズと
ともにペイントシェーク法で5時間分散処理して、電荷
発生層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、
表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム
(導電性支持体)上に浸漬塗布法にて塗布し、135℃
において5分間加熱乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生
層を形成した。
【0173】次に、前記構造式(2)で示されるビニル
モノマーの単独重合物100重量部、キシレン100重
量部、および、テトラヒドロフラン300重量部を混合
して電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた塗
布液を、浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、13
5℃において60分間加熱乾燥し、膜厚15μmの電荷
輸送層を形成し、積層型の電子写真感光体を作製した。
得られた電子写真感光体を実施例1と同様にして評価し
た。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0174】(比較例3)アルミニウム製ドラムとし
て、ポリメタクリル酸メチル粒子による湿式ホーニング
処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.2μ
m)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以
外は、比較例2と同様にして電子写真感光体を作製し、
実施例1と同様にして評価した。ただし、当初から画質
が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断し
た。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0175】
【表1】
【0176】表1に示すように、第1の本発明の電子写
真感光体は、優れた繰り返し安定性並びに機械的強度を
有し、長期に亘って安定な高画質を提供するものである
ことがわかる。さらに、導電性支持体の表面性状にかか
わらず干渉縞の発生が無く、また荒れた導電性支持体を
用い、且つ下引き層を形成しなくとも濃度ムラが生じな
いと云う優れた特質を有し、既述の如き積層型の電子写
真感光体における問題点が払拭されていることがわか
る。
【0177】II)第2の本発明の実施例および比較例 (実施例5)ジルコニウムアルコキシド化合物(商品
名:オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)1
0重量部、シラン化合物(商品名:A1110、日本ユ
ニカー社製)1重量部、イソプロパノール40重量部、
および、n−ブタノール20重量部を混合し、下引き層
形成用塗布液を調製した。得られた下引き層形成用塗布
液を、アルミニウム基板(25×80×2mm、導電性
基板)上に浸漬塗布法で塗布し、150℃において10
分間加熱乾燥し、膜厚0.1μmの下引き層を形成し
た。
【0178】次に、CuKαを線源とするX線回折スペ
クトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が、
7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°
に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニ
ン微結晶4重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
(商品名:UCARソリューションビニル樹脂VMC
H、ユニオンカーバイド社製)2重量部、キシレン67
重量部、および酢酸ブチル33重量部と混合し、ガラス
ビーズとともにペイントシェーク法で2時間処理して分
散して、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。得られ
た塗布液を浸漬塗布法で前記下引き層上に塗布し、10
0℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.3μmの電
荷発生層を形成した。
【0179】さらに、合成例2で得られた混合物B20
重量部をトルエン80重量部に溶解させて電荷輸送層形
成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、上記電荷
発生層上に浸漬塗布法にて塗布した後、115℃で10
分間加熱乾燥させて、膜厚15μmの不均一電荷輸送層
を形成し、図4に示す層構成の電子写真用感光体を作製
した。
【0180】このようにして得られた電子写真用感光体
に対し、静電複写紙試験装置(エレクトロスタティック
アナライザーEPA−8100、川口電機製作所社製)
を用いて、常温高湿(25℃、85%RH)の環境下、
電子写真特性の評価を行った。コロナ放電電圧を調整
し、感光体表面を−750Vに帯電させた後、干渉フィ
ルターを通し750nmに単色化したハロゲンランプ光
を感光体表面上で1μW/cm2の光強度になるように
調整し、7秒間照射したところ、E50%/E10%値は2.
2であり、図2のグラフに示す如きS字型の光誘起電位
減衰を示した。
【0181】(比較例4)不均一電荷輸送層を形成しな
かったこと以外は、実施例5と同様にして電子写真用感
光体を作製した。得られた電子写真用感光体の電子写真
特性を、実施例5と同様にして評価したところ、その光
誘起電位減衰曲線は図1のようなE50%/E10%値は5.
2であり、図1のグラフに示す如きJ字型の光誘起電位
減衰を示した。
【0182】(比較例5)電荷発生層を形成しなかった
こと以外は、実施例5と同様にして電子写真用感光体を
作製した。得られた電子写真用感光体の電子写真特性
を、実施例5と同様にして評価したところ、全く光感度
を示さなかった。
【0183】(実施例6)導電性支持体として、アルミ
ニウム基板の代わりに30mm径のアルミニウムドラム
を用いた以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体
を作製した。得られた電子写真感光体を市販のレーザー
プリンター(Laser Press 4105、富士
ゼロックス社製)に搭載し、常温高湿環境(25℃、8
5%RH)下にて、A4横方向に1万枚連続で画出し
し、プリント試験を行った。この際、最適な露光量を得
るため、レーザー光の光路にNDフィルターを入れた。
【0184】画質評価は、1枚目と1万枚連続印字後の
印字サンプルに対して、目視にて行った。その結果、1
枚目においても、1万枚連続印字後においても、細線再
現性、階調性等いずれも良好で、優れた印字品質であ
り、第2の本発明の電子写真感光体が耐久性にも優れた
ものであることがわかる。
【0185】(比較例6)導電性支持体として、アルミ
ニウム基板の代わりに30mm径のアルミニムドラムを
使用した以外は、比較例4と同様に電子写真用感光体を
作製し、実施例6と同様に印字試験を行った。その結
果、1枚目において細線再現性の点で実施例6に比べ劣
っており、1万枚連続印字後においては、若干の黒点の
発生が認められた。
【0186】
【発明の効果】基準発明の電子写真感光体は、優れた特
性を有する電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト
共重合体を備えているため、高性能で且つ耐久性に優れ
たものとなるという卓越した効果を奏する。その結果、
本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置は、優れ
た画質を長期に亘り実現することができる。また、第1
の本発明の電子写真感光体は、従来の積層構成の電子写
真感光体における問題を払拭するものであり、低コスト
で、高性能で、且つ耐久性に優れている。
【0187】一方、第2の本発明の電子写真感光体は、
優れた特性を有する電荷輸送性ブロック共重合体または
グラフト共重合体を電荷輸送層に含むものであり、特に
当該電荷輸送層を不均一電荷輸送層とすることで、得ら
れる機能分離積層感光体は、優れたS字性を示し、それ
を使用したデジタル式電子写真装置は、優れた印字品質
および耐久性を実現する。
【0188】そして、これら優れた性能を有する本発明
の電子写真感光体を含むプロセスカートリッジおよび電
子写真装置は、優れた画質を長期に亘り実現することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 J字型電子写真感光体における露光量と表面
電位の関係を示すグラフである。
【図2】 S字型電子写真感光体における露光量と表面
電位の関係を示すグラフである。
【図3】 第1の本発明の一例である電子写真感光体の
表面近傍の一部を示す模式拡大断面図である。
【図4】 第2の本発明の一例である電子写真感光体の
表面近傍の一部を示す模式拡大断面図である。
【図5】 第2の本発明の他の一例である電子写真感光
体の表面近傍の一部を示す模式拡大断面図である。
【図6】 第2の本発明の他の一例である電子写真感光
体の表面近傍の一部を示す模式拡大断面図である。
【図7】 第2の本発明の他の一例である電子写真感光
体の表面近傍の一部を示す模式拡大断面図である。
【図8】 本発明の電子写真装置の一例を示す模式構成
図である。
【符号の説明】
1:導電性支持体 2:電荷発生層 3:両極性電荷輸送層 4:微粒子 5:不均一電荷輸送層(S字化電荷輸送層) 6:均一電荷輸送層 11:感光体ドラム(電子写真感光体) 12:除電用LED(除電用光源) 13:帯電用スコロトロン(帯電手段) 14:露光用レーザー光学系(像露光手段) 15:現像器 16:転写用接触帯電ロール 17:クリーニングブレード(クリーニング手段) 18:用紙

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性支持体上に、少なくとも一層の感
    光層が形成されてなり、該感光層の少なくとも一層が、
    電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含
    む電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフ
    ト共重合体を含有する電子写真感光体であって、前記電
    荷輸送活性ブロックが、電荷輸送活性基を有するビニル
    モノマーの重合体であり、且つ、電荷輸送不活性ブロッ
    クが、重縮合系重合体または重付加系重合体であること
    を特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記電荷輸送性ブロック共重合体または
    電荷輸送性グラフト共重合体を含有する感光層が、さら
    に電荷発生材料を含有する単層型感光層であることを特
    徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記電荷輸送性ブロック共重合体または
    電荷輸送性グラフト共重合体を含有する感光層が電荷輸
    送層であり、さらに少なくとも一層の電荷発生層が形成
    され、全体として積層型感光層を構成していることを特
    徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1に記載の電子
    写真感光体を含むことを特徴とする、電子写真装置に着
    脱自在なプロセスカートリッジ。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1に記載の電子
    写真感光体、あるいは、請求項4に記載のプロセスカー
    トリッジを含むことを特徴とする電子写真装置。
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