JPH11174703A - デジタル式電子写真装置 - Google Patents

デジタル式電子写真装置

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JPH11174703A
JPH11174703A JP34678097A JP34678097A JPH11174703A JP H11174703 A JPH11174703 A JP H11174703A JP 34678097 A JP34678097 A JP 34678097A JP 34678097 A JP34678097 A JP 34678097A JP H11174703 A JPH11174703 A JP H11174703A
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JP
Japan
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Application number
JP34678097A
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English (en)
Inventor
Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
Taketoshi Hoshizaki
武敏 星崎
Fumiaki Taho
文明 田甫
Masakazu Iijima
正和 飯島
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Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 S字型電子写真感光体を用い、高耐久、高速
であり、且つ高画質な画像を形成することができるデジ
タル式電子写真を提供する。 【解決手段】 少なくとも、50%電位減衰に要する露
光量(E50% )が10%電位減衰に要する露光量(E
10% )の5倍未満である電子写真感光体、帯電手段、デ
ジタル処理された画像信号に基づき露光を行う静電潜像
形成用の露光手段、現像手段、転写手段、および除電用
の露光手段、を備えたデジタル式電子写真装置におい
て、電子写真感光体のフラッシュ露光に対する90%電
位減衰時間が、静電潜像形成用の露光手段から現像手段
までの時間(露光−現像間時間)および除電用の露光手
段から帯電手段までの時間(除電−帯電間時間)のどち
らよりも短いことを特徴とするデジタル式電子写真装置
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速、高耐久であ
り、且つ高画質な画像を形成することができるデジタル
式電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真技術は、高速で、高印字
品質が得られる等の利点を有するために、複写機、プリ
ンター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を
果たしている。
【0003】従来の光学的に原稿を電子写真感光体(以
下、単に「感光体」という場合がある。)上に結像させ
て露光するアナログ方式の電子写真式複写機は、濃度階
調による中間調の再現性を良好にするために、図1に示
すような光誘起電位減衰特性を持つ感光体、即ち、露光
量に対し比例的に電位減衰する感光体(以下、「J字型
感光体」という。)を備えていることが要求される。
【0004】一方、近年の高画質化、高付加価値化、ネ
ットワーク化等の要請に伴い、盛んに研究開発が行われ
ているデジタル方式の電子写真装置では、一般にドット
等の面積率で階調を出す面積階調方式を採用するため、
むしろ図2に示すような、ある露光量に達するまでは光
誘起電位減衰(以下、単に「電位減衰」という場合があ
る。)せず、その露光量を越えると急峻な電位減衰が起
こる、いわゆるS字型の光誘起電位減衰特性を有する感
光体(以下、「S字型感光体」という。)を使用する方
が、画素の鮮鋭度が高められる等の点から望ましい。
【0005】このS字型光誘起電位減衰特性は、ZnO
等の無機顔料あるいはフタロシアニン等の有機顔料を樹
脂中に粒子分散した単層型感光体において公知の現象で
ある〔例えば、R.M.Schaffert:「Ele
ctrophotography」、Focal Pr
ess,p.344(1975)、J.W.Weig
l,J.Mammino,G.L.Whittake
r,R.W.Radler,J.F.Byrne;「C
urrent Problems in Electr
ophotography」,Walter de G
ruyter,p.287(1972)〕。特に、現在
多用されている半導体レーザーの発信波長である近赤外
域に光感度を有するフタロシアニン系顔料を、樹脂中に
分散したレーザ露光用単層型感光体が多数提案されてい
る〔例えば、グエン・チャン・ケー,相沢: 日本化学会
誌, P.393(1986)、特開平1−169454
号公報、同2−207258号公報、同3−31847
号公報、同5−313387号公報〕。
【0006】しかしながら、これらの単層型感光体で
は、単一材料で電荷発生と電荷輸送の両機能を担う必要
があるが、両機能共に優れた性能を有する材料は稀有で
あり、実用に耐え得るものは未だ得られていない。特に
顔料粒子は、一般的に多くのトラップレベルや暗電荷を
有するため、電荷輸送能が低くなり、電荷が残留し、繰
り返し安定性および帯電性が低下する等の欠点があり、
電荷輸送を担わせるには不適当である。この問題を根本
的に解決し、材料選択の自由度を上げ、ひいては総合的
な感光体特性を向上させるためには、S字型電子写真感
光体の設計において、光電導の素過程である光電荷発生
と電荷輸送との両機能をそれぞれ別の層に担わせる機能
分離構成の導入が不可欠である。
【0007】この問題に対し、D.M.Paiらは、電
荷発生層と電荷輸送層からなる積層型感光体において、
電荷輸送層として、少なくとも2つの電荷輸送領域およ
び1つの電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領域が互
いに接触して回旋状電荷輸送路を形成してなる不均一電
荷輸送層を用いることにより、任意の電荷発生層との組
合せでS字型光誘起電位減衰特性が実現できることを報
告している〔特開平6−83077号公報(米国特許第
5306586号明細書)〕。また本発明者らは、電荷
発生層、不均一電荷輸送層、及び均一電荷輸送層からな
る3層構成の感光体がS字型光誘起電位減衰特性を示す
ことを見出し(特開平9−96914号公報)、上記
D.M.Paiらの発明からさらに機能分離度を高める
ことに成功した。
【0008】これらの発明において鍵となる、感光体の
光誘起電位減衰特性をS字型にする機能(以下、「S字
化」という。)を担う不均一電荷輸送層の具体例として
は、特開平6−83077号公報にはフタロシアニン顔
料の樹脂分散膜およびポリ(ビニルカルバゾール−b−
ドデシルメタクリレート)相分離系ブロック共重合体が
開示されている。また、特開平9−96914号公報に
は、さらに六方晶セレン顔料の樹脂分散膜が開示されて
いる。Paiらおよび著者らが提示したこれらの不均一
電荷輸送層を有する感光体は、従来の単層構成のS字型
感光体に比べ、著しい安定性の向上を達成している。
【0009】しかし、ポリ(ビニルカルバゾール−b−
ドデシルメタクリレート)相分離系ブロック共重合体を
用いた不均一電荷輸送層は、応答速度が遅く、また電荷
発生層からの電荷注入性が悪く、さらに機械的強度が低
い等の欠点がある。そのため、このような不均一電荷輸
送層を有する感光体を備えた電子写真装置は、高速化、
高寿命化の要請に応えるためには、さらなる改良が望ま
れる。
【0010】また、顔料樹脂分散膜を不均一電荷輸送層
とした感光体を、不均一電荷輸送層に吸収のある露光お
よび/または除電光手段を有する電子写真装置に備えた
場合、感度の変動、繰り返し安定性の低下等の問題があ
り、該感光体を備えた電子写真装置は、必ずしも安定し
た印字画質を保証し得ない。
【0011】さらに、顔料樹脂分散膜を不均一電荷輸送
層とした場合は、塗布液の分散安定性の問題があり、塗
布液のポットライフが短く、また均質な膜が得難い等の
障害がある。したがって、それを備えた電子写真装置の
コストが著しく高くなると云う問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術
における上記のような実情に鑑みなされたものであっ
て、上記のような問題点を克服し得る高速且つ高寿命の
デジタル式電子写真装置を提供することを目的とするも
のである。
【0013】即ち、本発明の目的は、装置内に搭載した
S字型感光体のフラッシュ露光に対する90%電位減衰
時間を、静電潜像形成用の露光手段から現像手段までの
時間(露光−現像間時間)および除電用の露光手段から
帯電手段までの時間(除電−帯電間時間)との関係で規
定することにより、高耐久、高速であり、且つ高画質を
形成し得るデジタル式電子写真装置を提供することにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、デジタル
式電子写真装置の繰り返し安定性を確保し、またゴース
ト画像の発生を防止し、高耐久、高速であり、且つ高画
質を形成し得るデジタル式電子写真装置を提供するため
には、装置内に搭載した電子写真感光体の光誘起電位減
衰時間が、当該装置の露光−現像間時間および除電−帯
電間時間よりも短くなければならないことに着目した。
【0015】しかし、S字型感光体における光誘起電位
減衰時間は、従来のJ字型感光体における測定法(感光
層のドリフト移動度によって求める方法)では規定でき
ない。そこで、本発明者らは、S字型感光体の光誘起電
位減衰特性発現の機構を以下のように考察し、デジタル
式電子写真装置内での実際の露光に即した条件で、S字
型感光体の光誘起電位減衰時間を測定する方法を見出し
た。
【0016】S字型光誘起電位減衰特性発現の機構に関
しては、トラップ説〔例えば、北村, 小門: 電子写真学
会誌, Vol.20,p.60(1982)〕、D.
M.Pai等が前記の文献で唱えている回旋状電導説等
幾つかの提案はあるものの、未だ確立された説はない。
しかしながら、これまでにS字型感光体として報告され
ている上記の顔料樹脂分散型単層感光体、D.M.Pa
iらの電荷発生層および不均一電荷輸送層からなる積層
感光体、および著者等の電荷発生層、不均一電荷輸送層
および均一電荷輸送層からなる積層感光体においては、
少なくとも電荷発生領域に隣接する電荷輸送領域の電荷
輸送路が電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメ
インが分散されてなる不均一な構造を有するものである
という共通点を認めることができる。尚、ここでいう電
気的不活性とは、その輸送エネルギーレベルが、電荷輸
送ドメインの輸送エネルギーレベルから大きくかけ離れ
ており、通常の電界強度では、実質的に輸送電荷が注入
されることがなく、輸送電荷にとって事実上の電気的絶
縁状態にあることを意味する。
【0017】Pai等の回旋状電導説によれば、S字型
光誘起電位減衰が起こる過程は、以下のようなものであ
ると推定されている。まず、不均一電荷輸送層では、電
気的不活性マトリックス中に分散された電荷輸送性ドメ
インが互いに接触し、回旋状の電荷輸送路を形成してい
るものと考える。この場合、電子写真感光体が帯電され
感光層に高電界が印加されると、露光により電荷発生層
で発生した電荷は電界によるクーロン力により電界に沿
って、電荷発生層から不均一電荷輸送層に注入され、電
荷輸送性ドメイン中を電界方向に移動する。しかし、電
荷輸送性ドメインの末端凸部に到達した所で、電気的不
活性マトリックスの障壁に出会い、電界により移動方向
が規制されているため、ここで該電荷の移動は一旦停止
することになる。
【0018】この間の移動距離が感光層の全膜厚に対し
て充分小さければ、このときの電位減衰は無視できるも
のとなる。殆ど全ての表面電荷に相当する電荷が注入さ
れた後は、該注入電荷近傍での表面に垂直な局部的電界
は無視できるほど小さくなり、停止していた電荷は、電
界による束縛を逃れ表面に垂直な方向以外の方向に拡散
することが可能となり、回旋状に連なる連結路を辿って
最初に停止した所よりも深部に達する。この深部におい
て、先程と同様に電荷は再び十分な高電界に晒され電荷
輸送性ドメイン内を電界方向に沿って移動し、再び電気
的不活性マトリックスの障壁に出会い、移動を停止す
る。しかし、同様な他の電荷の移動で電界強度は低下し
ているので、より多くの電荷が回旋状電荷輸送路を通り
次の絶縁性障壁にまで達する。かくして、電荷の移動は
カスケード的に起こり、S字型の光誘起電位減衰とな
る。
【0019】ここで、電界により移動方向が規制された
上記電荷輸送性ドメインの末端凸部は、一種のトラップ
と捉えることができる(以下、「構造的トラップ」とい
う。)。一般のエネルギーレベル差に起因するトラップ
(以下、「エネルギートラップ」という。)では、電界
強度の増大とともに該トラップからの脱出確率がプール
−フレンケル効果により増加するのに対し、構造的トラ
ップでは、上述の機構から、電界強度の低下とともに脱
出確率が増加するという特徴を有する。
【0020】また、上記の機構から明らかなように、不
均一電荷輸送層中での電荷のバルク輸送は、均一電荷輸
送層中で見られる単なる電界アシストのドリフト移動で
はなく、ドメイン内のドリフト移動と構造的トラップか
らの拡散的脱出からなる。したがって、光誘起電位減衰
速度は、不均一電荷輸送層を持たないJ字型感光体にあ
っては、光誘起電荷発生速度とドリフト移動度によって
規定されるのに対し、不均一電荷輸送層を有するS字型
感光体にあっては、光誘起電荷発生速度、ドリフト移動
度に加え、構造的トラップからの拡散的脱出速度によっ
て支配される。構造的トラップからの脱出は、電位ポテ
ンシャルを障壁とする熱拡散過程であるから、アインシ
ュタインのドリフト移動度と拡散係数の関係式から、脱
出速度は、近似的には、ドリフト移動度に比例すること
になる。
【0021】ところで、従来、電荷輸送層のドリフト移
動度は、該電荷輸送層を帯電(ゼログラフィックTOF
法)あるいは電圧印加(電極TOF法)し、電界強度に
比べ無視少の電荷をフラッシュ光(ここで、「フラッシ
ュ光」とは、ドリフト時間に比べ、無視短のパルス光を
指す)により表面近傍にシート状に光発生させ、該シー
ト電荷が対面まで移動する時間を求め、式(1)によっ
て、算出されてきた。 m=L/(t・F) 式(1) 式中、mはドリフト移動度、Lは電荷輸送層の膜厚、t
はドリフト時間、Fは電界強度を示す。尚、光発生電荷
量を電界強度に比べ無視少にするのは、該電荷の移動に
よる電界強度の変動を無視小に抑えるためである。
【0022】ここでもし、不均一電荷輸送層に上記のド
リフト移動度測定法を適用すると、電界強度に比べ無視
少の光発生電荷量では、構造的トラップから脱出できず
移動できないため、ドリフト時間が無限大となり、ドリ
フト移動度はゼロと云うことになってしまう。
【0023】フラッシュ光による電位減衰速度は、J字
型感光体にあっては、ドリフト移動度のみによって支配
され、露光量にはあまり依存しないのに対し(露光量が
多くなると、そのシールド効果により実効電界強度が低
下し、一般的に電位減衰速度は若干遅くなる傾向にあ
る。)、S字型感光体にあっては、構造的トラップから
の拡散的脱出速度が露光量に強く依存するため、該電位
減衰速度も露光量に強く依存することになる。即ち、電
位減衰速度は、露光量が少ない場合には、非常に遅く、
露光量の増加とともに、指数関数的に増速する。
【0024】本発明者等は鋭意検討した結果、S字型感
光体では、該感光体を帯電し、その後、帯電電界強度に
相当する量の電荷をフラッシュ光により光発生させ、該
光発生電荷により帯電電位を減衰させ、該感光体の表面
電位が帯電電位と残留電位との差の90%まで減衰する
時間(これを、フラッシュ光に対する90%電位減衰時
間と呼ぶ。)によって、上述の光誘起電位減衰時間を代
表できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】即ち本発明は、 (1)少なくとも、50%電位減衰に要する露光量(E
50% )が10%電位減衰に要する露光量(E10% )の5
倍未満である電子写真感光体、帯電手段、デジタル処理
された画像信号に基づき露光を行う静電潜像形成用の露
光手段、現像手段、転写手段、および除電用の露光手段
を備えたデジタル式電子写真装置において、電子写真感
光体のフラッシュ露光に対する90%電位減衰時間が、
静電潜像形成用の露光手段から現像手段までの時間(露
光−現像間時間)および除電用の露光手段から帯電手段
までの時間(除電−帯電間時間)のどちらよりも短い、
ことを特徴とするデジタル式電子写真装置である。本発
明により、高耐久、高速であり、且つ高画質な画像を形
成し得るデジタル式電子写真装置を提供することができ
る。
【0026】(2)静電潜像形成用の露光手段から現像
手段までの時間(露光−現像間時間)および除電用の露
光手段から帯電手段までの時間(除電−帯電間時間)
が、ともに0.4sec以下であることを特徴とする
(1)に記載のデジタル式電子写真装置である。露光−
現像間時間および除電−帯電間時間を短縮することで、
高速なデジタル式電子写真装置を提供することができ
る。
【0027】(3)前記電子写真感光体における50%
電位減衰に要する露光量が、10%電位減衰に要する露
光量の3倍以下であることを特徴とする(1)または
(2)に記載のデジタル式電子写真装置である。高いS
字性を有する感光体を用いることにより、さらに高画質
化を図ることができる。
【0028】(4)前記電子写真感光体のフラッシュ露
光に対する90%電位減衰時間が、0.2sec以下で
あることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに
記載のデジタル式電子写真装置である。フラッシュ露光
に対する90%電位減衰時間が0.2sec以下の感光
体を用いることにより、高速化、高画質化を図ることが
できる。
【0029】(5)前記電子写真感光体のフラッシュ露
光に対する90%電位減衰時間が、0.1sec以下で
あることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに
記載のデジタル式電子写真装置である。フラッシュ露光
に対する90%電位減衰時間が0.1sec以下の感光
体を用いることにより、さらに高速化、高画質化を図る
ことができる。
【0030】(6)前記電子写真感光体が、電荷発生層
と、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメイン
が分散されてなる不均一電荷輸送層とを設けたことを特
徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載のデジタ
ル式電子写真装置である。感光体をこのような構成にす
れば、(1)に記載の電子写真装置を容易に作製でき
る。また、このような構成の感光体は、高いS字性を有
するので、かかる構成とすることにより高画質となる。
【0031】(7)前記電気的不活性マトリックス中に
電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一電荷輸送層
が、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含む相分
離性のブロック共重合体またはグラフト共重合体から形
成されてなることを特徴とする(6)に記載のデジタル
式電子写真装置である。このような構成の不均一電荷輸
送層は、高いS字性を有するので、かかる構成とするこ
とによりさらに高画質となる。
【0032】(8)前記電子写真感光体が、前記電荷発
生層と前記不均一電荷輸送層とに加え、均一電荷輸送層
を設けたことを特徴とする(6)または(7)に記載の
デジタル式電子写真装置である。均一電荷輸送層を設け
ることにより、感光体の応答速度を律する不均一電荷輸
送層の膜厚を薄くすることができ、装置の高速化を図る
ことができる。
【0033】(9)前記不均一電荷輸送層の膜厚が0.
1μm以上10μm未満の範囲内にあることを特徴とす
る(6)ないし(8)のいずれかに記載のデジタル式電
子写真装置である。感光体の応答速度を律する不均一電
荷輸送層の膜厚を薄くすることにより、装置の高速化を
図ることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態を挙げ
て、本発明を詳細に説明する。
【0035】本発明に用いられる電子写真感光体は、そ
のフラッシュ光に対する90%電位減衰時間が、それを
搭載する電子写真装置の露光−現像間時間および除電−
帯電間時間のどちらよりも短かいものである。
【0036】図8に本発明における電子写真感光体の、
フラッシュ光に対する光誘起電位減衰時間分解測定の結
果の一例(後述の実施例1)を示す。感光体のフラッシ
ュ光に対する90%電位減衰時間の測定に際しては、ま
ず、感光体を所望の帯電電位に帯電させ、フラッシュ光
を照射する。その後、表面電位の変化を時間分解測定
し、所定時間経過後、莫大光量の光により除電する。該
測定操作を、フラッシュ光光量を増加させながら、繰り
返し行ってゆくと、フラッシュ光光量をそれ以上増加さ
せても電位減衰曲線が実質上変化しなくなる点がある。
この時点での、電位減衰曲線(図8において曲線)上
の帯電電位(図8において点a)と残留電位(図8にお
いて点b)との差の90%が減衰するまでに要する時間
が、フラッシュ露光に対する90%電位減衰時間とな
る。図8において、測定した電子写真感光体のフラッシ
ュ光に対する90%電位減衰時間は、0.06sec
(点c)と決定される。尚、電位減衰曲線における変曲
点の発生原因は不明であるが、上述したように、露光量
が増えるに従い、確かに減衰速度は増大している。
【0037】高速における安定的な使用を達成するとい
う観点から、本発明に用いられる電子写真感光体のフラ
ッシュ光に対する90%電位減衰時間は、好ましくは
0.2sec以下、さらに好ましくは0.1sec以下
であり、より一層好ましくは0.08sec以下であ
る。
【0038】本発明のデジタル式電子写真装置の露光−
現像間時間および除電−帯電間時間の上限については、
特に制約はないが、高速化の要請に応えるには、0.4
sec以下であることが好ましく、より好ましくは0.
3sec以下である。
【0039】本発明に用いられる電子写真感光体はS字
型であること、即ちE50% /E10%値が5未満の値であ
ることが必須である。
【0040】ここで、E50% とは感光体の表面電位が5
0%減衰するのに要する露光量であり、E10% とは感光
体の表面電位が10%減衰するのに要する露光量であ
る。E 50% /E10% 値は、本発明の電子写真装置内で実
際に現像される際に5未満であることが必要である。し
たがって、感光体のE50% およびE10% は、感光体を露
光後、装置の露光−現像間時間経過後に測定する必要が
ある。
【0041】E50% /E10% 値は、感光体が示す電位減
衰特性のS字性の尺度として用いている。理想的なJ字
型感光体は、電位減衰が露光量に比例していて、E50%
/E 10% 値は5となる。一般的なJ字型感光体では、電
界強度の低下に伴い、電荷発生効率および/または電荷
輸送能が低下するため、E50% /E10% 値は5を越える
値を示す。一方、理想的なS字型感光体は、ある露光量
までは全く電位減衰せず、その露光量で一気に残留電位
レベルまで電位減衰する階段状の電位減衰曲線を示すの
で、E50% /E10% 値は1となる。したがって、S字型
感光体とはE50 % /E10% 値が1以上5未満の値を示す
ものとして規定され、E50% /E10% 値が1に近づく
程、S字性が高いことを意味する。
【0042】本発明に用いられる電子写真感光体はS字
型感光体、即ちE50% /E10% 値が5未満であればよい
が、デジタル特性を十分に発揮し、細線の再現性を保証
する等の点で、E50% /E10% 値は3以下であることが
好ましく、さらに2以下であることがより好ましい。
【0043】本発明に用いられる電子写真感光体は、上
記条件を満たしていれば、構成に関しては何ら制限はな
く、単層型感光体、積層型感光体のいずれも使用でき
る。中でも、繰り返し安定性、環境安定性等の点で、電
荷発生層と、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性
ドメインが分散されてなる不均一電荷輸送層とを設けた
機能分離積層構成のものが、望ましい。さらに、前記電
荷発生層、前記不均一電荷輸送層に加え、均一電荷輸送
層を併設したものが、より好ましい。
【0044】図3ないし図6に、本発明に好適に用いら
れる、電子写真用感光体の断面を示す模式図を示す。図
3においては、導電性支持体1上に、電荷発生層2が設
けられ、その上にS字化と電荷輸送を担う不均一電荷輸
送層3が設けられている。図4においては、導電性支持
体1上に電荷発生層2が設けられ、その上にS字化を担
う不均一電荷輸送層3が設けられ、さらにその上に主な
電荷輸送を担う均一電荷輸送層4が設けられている。図
5においては、導電性支持体1上に不均一電荷輸送層3
が設けられ、その上に電荷発生層2が設けられている。
図6においては、導電性支持体1上に均一電荷輸送層4
が設けられ、その上に不均一電荷輸送層3が設けられ、
さらにその上に電荷発生層2が設けられている。
【0045】これらの電子写真感光体は、さらに所望に
より下引き層、保護層、中間層、および/または乱反射
層等を含むことができる。
【0046】前記のように、電荷発生層で発生した電荷
が不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの障害
に出会い最初に一時停止するまでの間の移動距離が感光
層の全膜厚に対して充分小さければ、その間の電位減衰
は無視できるものとなり、より理想的なS字性を示す。
つまり、電荷発生層とS字化のための不均一電荷輸送層
は近接している方がより高いS字性を与える。ただし、
電荷の注入や電荷の発生を助ける等の目的のために電荷
発生層と不均一電荷輸送層との間に適当な中間層を設け
ることもできる。また、電荷発生層と不均一電荷輸送層
との間に均一電荷輸送層を挿入し、該均一電荷輸送層の
膜厚を変えることにより、E50% /E10 % 値を1以上5
未満の範囲内の任意の値に設定することも可能である。
【0047】S字化を担う不均一電荷輸送層材料として
は、電荷輸送能を有する微粒子を結着樹脂中に分散した
ものや、互いに非相溶性である電荷輸送性ブロックと絶
縁性ブロックとを含む相分離性のブロック共重合体また
はグラフト共重合体から形成されているもの等が使用で
きるが、塗布液のポットライフ、塗膜の均質性等の点
で、相分離性のブロック共重合体またはグラフト共重合
体が特に好ましい。
【0048】相分離系電荷輸送性ブロック共重合体また
はグラフト共重合体としては、公知のポリ(ビニルカル
バゾール−b−ドデシルメタクリレート)等があるが、
総合性能向上の観点から、トリアリールアミン構造、ヒ
ドラゾン構造、アルコキシ置換縮合多環構造、テトラア
リールブタジエン構造、あるいはシリレン構造を主鎖ま
たは側鎖に有する電荷輸送性ブロックと、ビニル系重合
体からなる絶縁性ブロックを含有するブロックまたはグ
ラフト共重合体を、用いることが好ましい。
【0049】本発明において好適に用いられる互いに非
相溶性である電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを
含む相分離性のブロック共重合体またはグラフト共重合
体は、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であれ
ば、その構成ブロックの連結形式は如何なるものでも構
わない。即ち、電荷輸送性ブロックをA、絶縁性ブロッ
クをBとして、AB型、ABA型、BAB型、(AB)
n 型、(AB)n A型、およびB(AB)n 型のブロッ
ク共重合体;電荷輸送性ブロックを主鎖、絶縁性ブロッ
クを側鎖とするグラフト共重合体;絶縁性ブロックを主
鎖、電荷輸送性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体
等が挙げられる。さらに、上記共重合体にはブロック共
重合体であり且つグラフト共重合体であるものも含まれ
る。例えば、ABA型等のブロック共重合体の側鎖にA
および/またはBをグラフト化したブロック−グラフト
共重合体等が挙げられる。
【0050】本発明に用いる共重合体の合成方法として
は、”第4版実験化学講座28高分子合成(丸善、19
92)”、”マクロモノマーの化学と工業(アイピーシ
ー、1990)”、”高分子の相溶化と評価技術(技術
情報協会、1992)”、”高分子新素材 One P
oint 12 ポリマーアロイ(共立、198
8)”、”Angew.Macromol.Che
m.,143,pp.1−9(1986)”、”日本接
着学会誌,26,pp.112−118(199
0)”、Macromolecules,28,pp.
4893−4898(1995)””J.Am.Che
m.Soc.,111,pp.7641−7643(1
989)”、”特開平6−83077号公報”、”新素
材, pp.37−41(1997)”等の文献に記載さ
れている、ブロック共重合体またはグラフト共重合体を
与え得る任意の適当な合成法を用いることができる。
【0051】例えば、予め電荷輸送性重合体と絶縁性重
合体とを別々に合成し、得られた重合体同士を反応結合
させることによって所望とするブロック共重合体が得ら
れる。また、電荷輸送性ブロックを形成するモノマーと
絶縁性ブロックを形成するモノマーの重合形式が同じで
あり、且つ両者の反応性が大きく異なる場合には、単に
それらモノマーの混合物を重合させることで、まず、反
応性の高い方のモノマーが重合し、該モノマーが消費さ
れた後、反応性の低い方のモノマーが重合し、所望とす
るブロック共重合体が得られる。
【0052】また、予め一方のモノマーの重合物を合成
し、該重合物の末端および/または側鎖にアゾ、過酸エ
ステル、パーオキシ、ジチオカルバマート、アルカリ金
属アルコラート、アルカリ金属アルキル等の重合開始能
を有する基を含む重合開始剤を導入し、該マクロ重合開
始剤により、他方のモノマーを重合させることによって
も、所望とするブロック共重合体またはグラフト共重合
体が得られる。この方法によれば、重縮合または重付加
系重合体と付加重合または開環重合系重合体からなるブ
ロック共重合体またはグラフト共重合体を容易に得るこ
とができる。
【0053】また、分子中にアゾ、過酸エステル、パー
オキシ等の重合開始能を有する基を複数含む化合物を用
い、まず、一部の重合開始基から、一方のモノマーを重
合させ、次に残りの重合開始基から、他方のモノマーを
重合させることによっても所望とするブロック共重合体
が得られる。この場合、特に重合開始温度が異なる重合
開始基を有するものは、まず一方のモノマー中で、より
低温で重合を開始する重合開始基によって、該モノマー
を重合させ、未反応モノマーを除去する。その後、他方
のモノマーを添加し、温度を上昇させ、より高温で重合
を開始する重合開始基によって、該他方のモノマーを重
合させ、所望とするブロック共重合体を制御よく得るこ
とができる。
【0054】また、カチオンリビング重合法、アニオン
リビング重合法、ラジカルリビング重合法等のリビング
重合法により、各モノマーを逐次重合させることによっ
ても所望とするブロック共重合体を得ることができる。
リビング重合法は、各ブロックの分子量を容易に制御で
き、且つ分子量分布の狭い重合体を与え得ると云う利点
を有する。また、イモータル重合法、Iniferte
r法等により、各モノマーを逐次重合させることによっ
ても所望とするブロック共重合体を得ることができる。
【0055】さらにまた、予め一方のモノマーの重合物
の末端に他方のモノマーを導入したマクロモノマーを合
成し、該マクロモノマーを重合することによって所望と
するグラフト共重合体を得ることができる。
【0056】本発明において好適に用いられる電荷輸送
性ブロックと絶縁性ブロックとを含む相分離性のブロッ
ク共重合体またはグラフト共重合体の分子量は、如何な
る値でも構わないが、成膜性、相分離性等の高分子特性
を発揮するには、2000以上であることが望まれる。
より好ましくは10,000以上であり、さらに好まし
くは20,000以上である。分子量の上限に関して
は、湿式塗布法によって成膜を行う場合には、適当な溶
液粘度を与える範囲内にあることが必要となり、一般的
には、5,000,000以下であることが好ましい。
【0057】本発明において相分離状態とは、一般的に
ポリマーブレンド、ポリマーアロイの分野でよく知られ
ているものであり、マクロ相分離(相分離スケールが数
μm以上のマクロな相分離)及びミクロ相分離(相分離
状態がサブミクロン以下の微細なドメインからなる相分
離)の双方を含むものである。一般に、異なる高分子は
互いに非相溶であり、それらの混合物やブロック共重合
体またはグラフト共重合体は相分離状態を取る。通常、
単なる混合物、即ち、ポリマーブレンドはマクロ相分離
となり、一方、各成分が共有結合で連結されたブロック
共重合体およびグラフト共重合体では、通常ミクロ相分
離となる。ブロック共重合体およびグラフト共重合体に
おける相分離のスケールは、一般的に各ブロックの平均
長と同程度であり、分子量にほぼ比例することが知られ
ている。尚、一般的に、相分離性は、分子量が大きいほ
ど、また互いの溶解度パラメーター差が大きいほど、高
い。
【0058】相分離性共重合体からなる不均一電荷輸送
層において、回旋状電荷輸送経路の形成は、電荷輸送性
ドメイン同士の確率的な接触に依存する。その接触の確
率が大きすぎると、電荷輸送経路は回旋状とならずS字
性が低下し、またその接触の確率が小さすぎると、輸送
層全体を貫き連続した電荷輸送経路が形成できなくな
り、残留電位の増大を招く。電荷輸送性ドメインの互い
の接触は必ずしも直接接触している必要はなく、電荷輸
送性ドメイン間の非常に薄い絶縁層は、電荷がそのギャ
ップを飛び越えることができ、且つそこでの捕獲が無視
できるならば、その存在は許容される。ここでいう回旋
状電荷輸送路とは、電荷の移動が膜厚方向に対して1回
以上逆行するように形成されている電荷輸送路のことで
ある。
【0059】不均一電荷輸送層が相分離性共重合体であ
る場合、共重合体中の電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロ
ックの組成比は、それらの相分離の結果として得られる
電荷輸送性ドメインと電気的不活性マトリックスの体積
比が10/1〜1/10となる範囲内で任意に設定さ
れ、より好ましくは2/1〜1/2の範囲である。電荷
輸送性ドメインの体積比率が上記範囲より大きいと、電
荷輸送性ドメインが密に接触、あるいは電荷輸送性ブロ
ックがマトリックスとなってしまい、実質的に均一な構
造の電荷輸送路を形成し、上記のS字型光誘起電位減衰
特性の発現に不可欠な電荷輸送路の不均一構造が消失
し、S字性が失われる傾向にある。他方、電荷輸送性ド
メインの体積比率が上記範囲より小さいと、電荷輸送路
が分断され、残留電位の増大、応答速度の低下等の障害
を招く傾向にある。
【0060】不均一電荷輸送層の相分離構造としては、
上述の回旋状電荷輸送路が形成されるものであれば如何
なる構造を取っても構わないが、電荷輸送性ブロックか
らなる相が球状もしくは棒状等の島、絶縁性ブロックか
らなる相が海となる相分離構造(海島構造)を取る場合
に、より良いS字性が得られる。また、スピノーダル分
解により得られる変調構造を取る場合にも、好ましいS
字性が得られる。また、入り組んだラメラ構造を取る場
合にも、好ましいS字性が得られる。
【0061】ここで、相分離状態を如何に制御するかが
課題となるが、相分離状態は構成ブロックの種類および
分子量により、熱力学的に最も安定な構造が存在し、一
般的には、Aブロック、Bブロックからなる共重合体で
は、連結形式には依らず、A/B組成比にのみ依存し、
A/B比の増加に伴い、Aが球状ドメインでBがマトリ
ックス、Aが棒状ドメインでBがマトリックス、A/B
交互層、Bが棒状ドメインでAがマトリックス、Bが球
状ドメインでAがマトリックスへと系統的に変化する。
【0062】しかしながら、湿式塗布法により、成膜す
る場合には、用いる溶媒および乾燥速度等により、相分
離状態を任意に制御することができる。例えば、A/B
比が大きく熱力学的にはB球Aマトリックスを取る場合
でも、塗布溶媒として、Bの良溶媒であり且つAの貧溶
媒である溶媒を選択すれば、A球Bマトリックス構造を
得ることができる。また、A、B両者の良溶媒を用い、
急速に溶媒を除去すると、スピノーダル分解状態で凍結
した相分離構造(変調構造)を得ることができる。ま
た、A/B比が大きく、熱力学的にはB球Aマトリック
スを取る共重合体に、Bのみと相溶性のある重合体を添
加すると、Aが球、BおよびBのみと相溶性のある重合
体がマトリックスとなる相分離構造を得ることもでき
る。
【0063】本発明に用いる不均一電荷輸送層の膜厚は
0.1〜50μmが適当であるが、応答速度を高速化す
るという観点から、0.1〜10μmの範囲が好まし
く、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲に設定され
る。上記範囲より薄いとS字性が低下する傾向にある。
膜厚の上限に関しては、用いるS字化電荷輸送層の電荷
輸送能により制限され、応答速度、残留電位等が許容さ
れる範囲内で設定される。
【0064】さらに、電荷輸送性ドメインの平均径は
0.005〜3μmが好ましく、より好ましくは0.0
1〜1μm、特に好ましくは0.02〜0.5μmの範
囲である。電荷輸送性ドメインの平均径が上記範囲より
大きいと、好ましい膜厚の範囲内でのS字化に必要な電
荷輸送路の不均一構造の形成が確率的に低くなり、S字
性が低下することになる。他方、電荷輸送性ドメインの
平均径が上記範囲より小さい場合には、電荷輸送路が均
一な構造に近付き、この場合もS字性が低下することに
なる。
【0065】不均一電荷輸送層中には、主たる輸送電荷
と逆極性の電荷のみを輸送し得る化合物を添加すること
もできる。かかる化合物を添加することにより、残留電
位の低下、繰り返し安定性の向上等の効果を得ることが
できる。
【0066】また、不均一電荷輸送層中に、電荷輸送性
高分子および/または絶縁性高分子を添加することもで
きる。電荷輸送性高分子を添加する場合、不均一電荷輸
送層中のブロックまたはグラフト共重合体の電荷輸送性
ブロックと、相溶性を有することが好ましい。また絶縁
性高分子を添加する場合には、ブロックまたはグラフト
共重合体の絶縁性ブロックと相溶性を有することが好ま
しい。
【0067】不均一電荷輸送層の塗布方法としては、ブ
レードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、
スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビード
コーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテ
ンコーティング法、リングコーティング法等の通常の方
法を用いることができる。尚、塗布液としては、高分子
が均一に溶解している溶液またはミセルを形成している
溶液等を用いることができる。かかる溶液を調整するた
めの溶媒としては、クロロベンゼン、テトラヒドロフラ
ン、塩化メチレン、トルエン、シクロヘキサノン等があ
る。
【0068】本発明の電子写真感光体の導電性支持体と
しては、当業界で導電性支持体として利用されている任
意の材料から選択でき、不透明または実質的に透明であ
るものが選択できる。その例としては、アルミニウム、
ニッケル、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チ
タン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、ジ
ルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、I
TO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラスおよびセラ
ミックス等;導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、
プラスチック、ガラスおよびセラミックス等が挙げられ
る。
【0069】これらの導電性支持体は、ドラム状、シー
ト状、プレート状、ベルト状等、適宜の形状のものとし
て使用することができる。
【0070】さらに必要に応じて導電性支持体の表面に
は、各種の処理を行うことができる。例えば、酸化処
理、薬品処理、着色処理、または、砂目立て、ホーニン
グ、荒切削等の機械的粗面化処理等を行うことができ
る。支持体表面の酸化処理や機械的粗面化処理は支持体
表面を粗面化するのみならず、その上に塗布される層の
表面形状をも制御し、露光用光源としてレーザー等の可
干渉光源を用いた場合に問題となる支持体表面および/
または積層界面での正反射による干渉縞の発生を防止す
ると云う効果を発揮する。
【0071】本発明における電子写真感光体には、一層
または複数層の下引き層を設けることもできる。該下引
き層は、感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保
持せしめる接着層としての作用、あるいは場合によって
は干渉縞の原因となる光の正反射を防止する作用等を示
すと共に、感光層の帯電時において導電性支持体から感
光層への電荷の注入を阻止する作用を示す。
【0072】上記下引き層としては、公知のものを用い
ることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹
脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹
脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹
脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニル
アセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポ
リエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニト
ロセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等
の樹脂およびこれらの共重合体、または、ジルコニウム
アルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シラ
ンカップリング剤等の硬化性金属有機化合物を、単独ま
たは2種以上を混合して用いることができる。また、帯
電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も下引き層
として使用可能である。
【0073】下引き層は、これら材料を適当な溶媒に溶
解もしくは分散し、または乾式で、導電性支持体上に塗
布することにより形成される。下引き層の塗布方法とし
ては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティ
ング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング
法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング
法、カーテンコーティング法、リングコーティング法等
の通常の方法を用いることができる。下引き層の膜厚
は、0.01〜10μmが適当であり、好ましくは0.
05〜5μmの範囲である。
【0074】本発明における電荷発生層は、J字型、S
字型を問わず積層型電子写真用感光体に電荷発生層とし
て用いられ得る任意のものから選択することができる。
例えば、非晶質セレン、セレン−テルル合金、セレン−
ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレン合金、酸化
亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−SiC等の無機系光
導電性材料;フタロシアニン系、スクアリウム系、アン
トアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン
系、ピレン系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等
の有機顔料および染料等が挙げられる。また、これらの
電荷発生材料は、単独あるいは2種以上混合して用いる
ことができる。
【0075】特に、フタロシアニン系化合物は、デジタ
ル式の電子写真装置に光源として現在広く使用されてい
るLEDおよびレーザーダイオードの発信波長である、
600〜850mmに優れた光感度を有するので、本発
明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0076】フタロシアニン系化合物としては、無金属
フタロシアニン、金属フタロシアニン、及びそれらの誘
導体が利用できる。金属フタロシアニンの中心金属とし
ては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、A
l、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li
等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化
物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物等も
使用できる。具体的には、チタニルフタロシアニン、ク
ロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタ
ロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウ
ムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメト
キシケイ素フタロシアニン等を挙げることができる。
【0077】また、上記化合物のフタロシアニン環に任
意の置換基が導入された置換フタロシアニン類も使用す
ることができる。さらにまた、上記化合物のフタロシア
ニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたアザ
フタロシアニン類も有効である。これらフタロシアニン
系化合物の形態としては、アモルファスまたはすべての
結晶形のものが使用可能である。これらフタロシアニン
系化合物の中でも、無金属フタロシアニン、チタニルフ
タロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロ
キシガリウムフタロシアニン、およびジクロロ錫フタロ
シアニンは、特に優れた光感度を有しており、本発明に
用いる電荷発生材料として特に好ましい。
【0078】また、殆どのフタロシアニン系化合物が正
孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有してい
るのに対し、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸引性基
を有するフタロシアニン類およびアザフタロシアニン類
は、電子を主たる輸送電荷とするn型半導体であるの
で、電荷発生材料としてこれらのフタロシアニン系化合
物を含む電荷発生層とホール輸送性の不均一電荷輸送層
を導電性基体上に順次積層してなるS字型感光体は、そ
れを負帯電で使用した場合、導電性支持体からのホール
の注入が抑えられ、暗電荷量が非常に低いレベルに抑え
られるという利点を有する。
【0079】また、六方晶セレン顔料、アントラキノン
系顔料、アゾ系顔料およびペリレン系顔料も電荷発生効
率に優れるため、電荷発生材料として好ましく使用でき
る。レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小
径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レー
ザーの短波長化の検討がなされているが、これらの顔料
は、紫外域から可視域に光感度を有するため、短波長レ
ーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いること
ができる。特に、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料お
よびペリレン系顔料は、n型半導体であり、電荷発生材
料としてこれらの顔料を含む電荷発生層とホール輸送性
の不均一電荷輸送層を導電性基体上に順次積層してなる
S字型感光体は、それを負帯電で使用した場合、導電性
支持体からのホールの注入が抑えられ、暗電荷量が非常
に低いレベルに抑えられるという利点を有する。
【0080】電荷発生層は、前記電荷発生材料を真空蒸
着法により直接成膜する、または、前記電荷発生材料を
結着樹脂中に分散または溶解し、これを湿式または乾式
で塗布することにより作製できる。電荷発生層に結着樹
脂を用いる場合、その結着樹脂の種類は特に限定されな
いが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニル
ホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、
ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹
脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニ
ルアセテート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹
脂、フェノール樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂等が
用いられる。これらの結着樹脂はブロック、ランダムま
たは交互共重合体いずれでもよく、また、これらの結着
樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
また、本発明における電荷輸送性ブロックまたはグラフ
ト共重合体も電荷発生層用の結着樹脂として有効であ
る。
【0081】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(体積
比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。より好
ましくは、3:1〜1:1の範囲に設定される。電荷発
生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より大き
い、湿式塗布法では均質な膜を得ることが困難になる。
また、前記範囲より小さいと光感度の低下、残留電位の
増大等の障害が起きる。
【0082】また、本発明で用いる電荷発生層の膜厚
は、一般的には0.05〜3μmが適当であり、好まし
くは0.1〜1μmの範囲であり、さらに好ましくは
0.1〜〜0.3μmの範囲に設定される。膜厚が厚い
と、一般的に暗電荷量が増加する傾向にあり、暗電荷密
度の高い電荷発生材料を用いる場合、0.3μm以下に
設定されることが好ましい。
【0083】電荷発生層の塗布方法としては、ブレード
コーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレ
ーコティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティ
ング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーテ
ィング法、リングコーティング法等の通常の方法を用い
ることができる。
【0084】本発明に用いられる電子写真感光体には、
さらに均一電荷輸送層を設けることもできる。均一電荷
輸送層を設けることにより、電荷輸送層全体としては性
能上十分な膜厚を維持しつつ、感光体の応答速度を律す
る不均一電荷輸送層の膜厚を薄くすることができるの
で、装置の高速化の点でより好ましい。
【0085】均一電荷輸送層としては、当業界でJ字型
積層感光体における電荷輸送層として知られている任意
のものから選択できる。例えば、ベンジジン系化合物、
トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ス
チルベン系化合物、ジフェノキノン系化合物等を、単独
でまたは2種以上を混合して、絶縁性樹脂(例えば、ポ
リカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリ
スルホン、ポリメチルメタクリレート等)中に均一分子
分散した固溶膜を用いることができる。あるいは、それ
自身電荷輸送能を有する高分子化合物等を用いることも
できる。また、セレン、a−Si、a−SiC等の電荷
輸送能を有する無機物質を用いることもできる。中で
も、それ自身電荷輸送能を有する高分子化合物を、均一
電荷輸送層として用いることが、製造上好ましい。上記
電荷輸送性高分子化合物としては、特開平2−3044
56号公報等に開示されているような電荷輸送能を有す
る基を側鎖に含む高分子化合物等、また、特開平5−2
32727号公報等に開示されているような電荷輸送能
を有する基を主鎖に含む高分子化合物、例えばトリアリ
ールアミン骨格を有するポリカーボネート等を用いるこ
とができ、さらに、ポリシリレン等を用いることができ
る。
【0086】不均一電荷輸送層と均一電荷輸送層を積層
成膜する場合、均一電荷輸送層に電荷輸送性低分子化合
物を用いると、電荷輸送性低分子化合物が不均一電荷輸
送層中に混入することがある。その結果、不均一電荷輸
送層の電気的不活性マトリックスの主たる電荷に対する
絶縁性が低下するために、S字性が損なわれたり、ある
いは不均一電荷輸送層中に混入した電荷輸送性低分子が
不均一電荷輸送層中で電荷トラップとなり、残留電位の
増大、輸送能の低下及び光感度の低下等の障害が発生す
る。この問題は、特に、湿式塗布法により各層を成膜す
る場合に顕著になる(もちろん、これらの問題は、上層
の塗布溶剤として下層を溶解および膨潤し難いものを選
択する、または、不均一電荷輸送層を架橋硬化性のもの
とし、上層塗布溶剤による溶解および膨潤が起こらない
ようにする等により、回避することが可能である)。と
ころが、上述したように、高分子同士は相溶することな
く相分離を起こすことが一般的に知られており、均一電
荷輸送層として、電荷輸送性高分子化合物を用いた場
合、不均一電荷輸送層樹脂と相溶することなく相分離す
るため、上記のような混入の問題は殆ど発生せず、材料
および製造法の選択に当たっての制約が解消されるとい
う利点を有する。
【0087】尚、均一電荷輸送層中には電荷輸送性マト
リックスに囲まれるような電気的不活性な領域が存在し
てもよい。例えば表面摩擦力の低減、磨耗の低減、また
は表面への異物付着の低減等を目的に低表面エネルギー
の絶縁性粒子等を含有させることができる。
【0088】均一電荷輸送層には電荷輸送能の向上等を
目的に、電荷輸送性微粒子を添加することもできる。ま
た、均一電荷輸送層として、相溶性であれば、電荷輸送
性ブロックと絶縁性ブロックからなる電荷輸送性共重合
体も利用できる。さらに、上述したように均一電荷輸送
層中には電荷輸送性マトリックスに囲まれるような電気
的不活性な領域が存在してもよいため、電荷輸送性ブロ
ックがマトリックス、絶縁性ブロックがドメインとなる
ミクロ相分離状態を取る共重合体も、均一電荷輸送層と
して用いることができる。
【0089】均一電荷輸送層は、上記材料を乾式または
湿式塗布することにより得られる。塗布方法としては、
ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング
法、スプレーコティング法、浸漬コーティング法、ビー
ドコーティング法、エアーナイフコーティング法、カー
テンコーティング法、リングコーティング法等の通常の
方法を用いることができる。また、セレン等の気相成膜
可能なものは、真空蒸着法等により直接成膜することも
できる。本発明で用いる均一電荷輸送層の膜厚は50μ
m以下、好ましくは30μm以下に設定される。
【0090】電荷輸送層(不均一・均一電荷輸送層の双
方を含む)が最表層となる構成においては、機械的強度
の観点から、架橋硬化性材料を用い形成される3次元架
橋型電荷輸送層を用いることが好ましい。
【0091】本発明において、不均一電荷輸送層および
均一電荷輸送層を含む電荷輸送層全体の合計膜厚は、5
〜100μmが適当であり、好ましくは10〜40μm
の範囲に設定される。さらに好ましくは、15〜35μ
mの範囲である。
【0092】電荷輸送層が電荷発生層と露光光源の間に
存在する場合、実効の光感度の低下を防ぐ上で、電荷輸
送層は露光波長の光に対し事実上透明であることが望ま
しい。好ましくは、電荷輸送層における露光に用いる光
の透過率は50%以上である。より好ましくは70%以
上であり、さらに好ましくは90%以上である。しかし
ながら、低感度での使用が望まれる場合には、露光波長
の光に対し吸収のある物質を添加し、実効的な光感度を
調整することもできる。
【0093】本発明において、感光層の上に前記保護層
を設けることは、帯電部材から発生するオゾンや酸化性
ガス等、および紫外光等の化学的ストレス、あるいは、
現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機
械的ストレスから感光層を保護し、感光層の実質の寿命
を改善するために有効である。特に、薄層の電荷発生層
を上層に用いる層構成において、効果が顕著である。
【0094】保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中
に含有させて、それを塗布することにより形成される。
導電性材料としては、ジメチルフェロセン等のメタロセ
ン化合物、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸
化インジウム、ITO等の金属酸化物等の材料を用いる
ことができるが、これらに限定されるものではない。結
着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエス
テル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリル
アミド、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹
脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂を用いることができ
る。また、アモルファスカーボン等の半導電性無機膜も
保護層として用いることができる。
【0095】これらの抵抗制御型の保護層の電気抵抗は
10〜1014Ω・cmの範囲内にあることが必要であ
る。電気抵抗がこの範囲より大きくなると残留電位が増
加し、他方、この範囲以下になると沿面方向での電荷漏
洩が無視できなくなり、解像度の低下が生じてしまう。
保護層の膜厚は0.5〜20μmが適当であり、好まし
くは1〜10μmの範囲に設定される。また、保護層を
設けた場合、必要に応じて、感光層と保護層との間に、
保護層から感光層への電荷の漏洩を阻止するブロッキン
グ層を設けることができる。このブロッキング層として
は、保護層の場合と同様に公知のものを用いることがで
きる。
【0096】本発明に用いられる電子写真感光体におい
ては、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、
あるいは、光、熱による感光体の劣化を防止する目的
で、各層または最上層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安
定剤等を添加することができる。これらの添加剤は、単
に添加混合する以外に、本発明における共重合体の絶縁
性ブロックの構成成分として組み込んでもよい。
【0097】酸化防止剤としては、公知のものを用いる
ことができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダー
ドアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、
スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導
体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。光
安定剤としては、公知のものを用いることができ、例え
ば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカル
バメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体、およ
び、光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動によ
り失活し得る電子吸引性化合物または電子供与性化合物
等が挙げられる。さらに、表面磨耗の低減、転写性の向
上、クリーニング性の向上等を目的として、最表面層に
フッ素樹脂等の低表面エネルギーの絶縁性粒子を分散さ
せてもよい。
【0098】本発明のデジタル式電子写真装置は、前記
S字型感光体に加え、少なくとも、該感光体を所定の電
位に帯電させるための帯電手段、帯電された感光体に対
しデジタル処理された画像信号に基づき露光を行い静電
潜像を形成するための露光手段、該静電潜像を顕像化す
るための現像手段、該像を記録紙等に転写する転写手
段、感光体を除電し初期化するための露光手段、とを備
えていることが必要である。
【0099】デジタル処理された画像信号に基づき露光
を行う露光手段とは、レーザーまたはLED等の光源を
用い、2値化またはパルス幅変調や強度変調を行い多値
化された光により露光を行う露光手段であり、それを備
えた電子写真装置の例としてLEDプリンター、レーザ
ープリンター、レーザー露光式デジタル複写機などを挙
げることができる。
【0100】本発明のデジタル式電子写真装置の好まし
い一例を図7に模式的に示す。この装置はレーザー露光
式デジタル複写機であり、感光体ドラム11の周りに除
電用露光手段としての光源(赤色LED)12、帯電手
段としてのスコロトロン13、デジタル処理された画像
信号に基づき露光を行う静電潜像形成用の露光手段とし
てのレーザー光学系14、現像手段としての現像器1
5、転写手段としての転写用ロ−ラー16、およびクリ
ーニングブレード17が、プロセスの順序に順次配置さ
れている。レーザー光学系14は、発信波長780mm
の露光用レーザーダイオードを備えており、デジタル処
理された画像信号に基づき発光する。発光したレーザー
光14aはポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラーによ
り走査されながら感光体上を露光するように構成されて
いる。尚、18は用紙を示す。
【0101】図7に示すデジタル式電子写真装置によ
り、像が形成されるまでの過程を以下に示す。まず、ス
コロトロン13で感光体ドラム11が均一に帯電され
る。つぎに、感光体ドラム11には、レーザー光学系1
4において、デジタル処理された画像信号により、所定
の位置に光が照射される(露光)。露光部分の帯電電荷
は除去され、電荷残留部分に静電潜像が形成される。つ
づいて、この静電潜像は、現像器15にてトナーに曝さ
れ、静電力によりトナーが潜像に付着し、可視像とな
る。つぎに、可視像は転写用ロ−ラ−16でトナ−の帯
電極性とは逆極性の電荷を与えられた用紙18と対向
し、静電力により用紙に転写される。転写後の感光体ド
ラム11上に残留したトナーは、クリ−ニングブレ−ド
17により除去される。さらに感光体11は光源12に
より除電される。
【0102】尚、帯電手段、静電潜像形成用の露光手
段、現像手段、転写手段、除電用の露光手段は、上記構
成に限定されず、従来使用されている如何なる構成をも
用いることができる。
【0103】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定され
るものではなく、当業者は高分子化学および電子写真技
術等の公知の知見から、以下の実施例に変更を加えるこ
とが可能である。
【0104】実施例1 <合成例1> 反応性重合開始剤4,4’−アゾビス
(4−シアノ吉草酸クロリド)の合成 塩化チオニル140mlを氷冷し、4,4’−アゾビス
(4−シアノ吉草酸)48gを徐々に加えた。30℃で
6時間加熱し、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去し
た。残留物をクロロホルムより再結晶して22gの4,
4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)結晶を得
た。
【0105】<合成例2> 両末端にヒドロキシ基を有
する電荷輸送性重合体(1)の合成 3,3’−ジメチル−N,N’−ビス(p,m−ジメチ
ルフェニル)−N,N’−ビス〔4−(2−メトキシカ
ルボニルエチル)フェニル〕−〔1,1’−ビフェニ
ル〕−4,4’−ジアミン100g、エチレングリコー
ル200gおよびテトラブトキシチタン5gを、窒素気
流下で4時間加熱還流した。3,3’−ジメチル−N,
N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−N,N’−
ビス〔4−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニ
ル〕−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン
が消費されたことを確認したのち、0.5mmHgに減
圧しエチレングリコールを留去しながら240℃に加熱
し、さらに4時間反応を続けた。その後、室温まで冷却
し、塩化メチレンを加え不溶分を溶解させ、アセトンか
ら再沈殿することにより、下記の構造式で表される両末
端にヒドロキシ基を有する電荷輸送性重合体90gを得
た。得られた重合体の重量平均分子量は5×10 4 であ
った。
【0106】
【化1】
【0107】<合成例3> 下記構造式で表される電荷
輸送性ブロック共重合体(1)の合成 上記合成例2で得られた両末端にヒドロキシ基を有する
電荷輸送性重合体(1)43gとトリエチルアミン0.
5gをジクロロメタン120mlに溶解し、0℃に冷却
した。ここに、上記合成例1で得られた4,4’−アゾ
ビス(4−シアノ吉草酸クロリド)5.6gをジクロロ
メタン20mlに溶解した溶液を滴下した。室温で1時
間反応させた後に30℃に加温し、さらに4時間反応さ
せた。ここから溶媒を留去し、テトラヒドロフランを加
えて溶解させ、メタノールに滴下し、1時間攪拌した後
に濾別した。この再沈殿操作をさらに2回繰り返した。
残さを乾燥して末端にアゾ型重合開始剤を有する電荷輸
送性重合体41gを得た。この末端にアゾ型重合開始剤
を有する電荷輸送性重合体6gとフェニルメタクリレー
ト18gをトルエン120mlに溶解し、窒素置換した
後に67℃で65時間加熱した。ここから溶媒を除去
し、テトラヒドロフランを加えて、この溶液をメタノー
ルに滴下し、1時間攪拌した後に濾別した。得られた固
体は、目的とするブロック共重合体とポリ(フェニルメ
タクリレート)単独重合体の混合物であり、溶解度差を
利用した、以下の精製法により、ポリ(フェニルメタク
リレート)単独重合体を除去し、目的のブロック共重合
体を得た。すなわち、合成例2の電荷輸送性重合体は不
溶であり、且つポリ(フェニルメタクリレート)が易溶
である溶剤メチルエチルケトンにより、上記混合物を洗
浄することで、目的とする電荷輸送性ブロック共重合体
(1)11gを得た。得られたブロック共重合体の 1
H−NMRスペクトルから、電荷輸送性ブロックとポリ
(フェニルメタクリレート)からなる絶縁性ブロックの
重量組成比はおよそ4:6と計算された。
【0108】
【化2】
【0109】<下引き層の作製>30mm径のアルミニ
ウムドラム上に、ジルコニウムアルコキシド化合物
(「オルガチックスZC540」、マツモト製薬社製)
20重量部、シランカップリング剤(「A1100」、
日本ユニカー社製)2重量部、ポリビニルブチラール樹
脂(「エスレックBM−S」、積水化学社製)0.5重
量部、イソプロパノール20重量部、およびn−ブタノ
ール30重量部からなる溶液を浸漬コーティング法で、
塗布し、170℃において15分間加熱乾燥し、膜厚
0.6μmの下引き層を形成した。
【0110】<電荷発生層の作製>次に、ヒドロキシガ
リウムフタロシアニン微結晶7重量部をポリビニルブチ
ラール樹脂(エスレックBS−S、積水化学社製)3重
量部およびクロロベンゼン190重量部と混合し、ステ
ンレスビーズと共にペイントシェーク法で6時間分散処
理して得られた塗工液を浸漬コーティング法で、上記下
引き層上に塗布し、100℃において10分間加熱乾燥
して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0111】<不均一電荷輸送層の作製>次に、上記合
成例3で得られた電荷輸送性ブロック共重合体(1)10
重量部をクロロベンゼン90重量部に溶解させた溶液を、
上記電荷発生層上に浸漬コーティング法にて塗布した
後、115℃で10分間加熱乾燥させて、膜厚5μmの
不均一電荷輸送層を形成した。
【0112】<均一電荷輸送層の作製>次に、合成例2
で得られた両末端にヒドロキシ基を有する電荷輸送性重
合体(1)15重量部を、トルエン85重量部に溶解し
た塗布駅を、リングコーティング法で塗布し、135℃
において60分間加熱乾燥させて、膜厚15μmの均一
電荷輸送層を形成し、図4に示す層構成の電子写真用感
光体を作製した。
【0113】このようにして得られた電子写真用感光体
を、一部改良を加えたレーザー露光式複写機(「Ab1
e1401a」 富士ゼロックス社製)に搭載し、印字
試験を行い、E50% /E10% 値およびフラッシュ光誘起
電位減衰時間分解測定した。印字試験に際して、最適な
露光量を得るため、レーザー光の光路にNDフィルター
を入れた。
【0114】尚、画質評価は、1枚目と5,000枚連
続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った。ま
た、本レーザー露光式複写機のドラム回転速度は110
rpm、除電用光源は中心波長630nmのLED、潜
像形成用光源は発振波長780nmのレーザーダイオー
ド、帯電器はスコロトロンであり、露光−現像間時間並
びに除電−帯電間時間は0.2secである。また、本
実施例の電子写真感光体のフラッシュ光誘起電位減衰時
間分解測定の結果を図8に示す。図8から、90%電位
減衰時間は0.06secと求まる。また、E50% /E
10% は1.9であった。
【0115】比較例1 不均一電荷輸送層材料を上記の構造で示される電荷輸送
性ブロック共重合体(1)から、ポリ(ビニルカルバゾ
ール−b−ラウリルメタクリレート)に変更し、且つ不
均一電荷輸送層の膜厚を10μmとし、さらに均一電荷
輸送層の膜厚を10μmとした以外は、実施例1と同様
にして、S字型感光体を作製し、実施例1と同様に評価
した。90%電位減衰時間は0.3secであった。ま
た、E50 % /E10% 値は2.4であった。
【0116】比較例2 不均一電荷輸送層を設けず、均一電荷輸送層の膜厚を2
0μmとした以外は、実施例1と同様にして、J字型感
光体を作製し、実施例1と同様に評価した。E 50% /E
10% は5.2であった。
【0117】実施例1と比較例2で得られた印字の品質
を比べたところ、実施例2の方が細線の再現性等の点
で、印字品質が優れていた。実施例1と比較例1で得ら
れた印字の品質を比べたところ、1枚目の印字品質は同
等であったが、5,000枚目で比較すると、比較例1
では地肌かぶりを生じ、細線の再現性が著しく低下し、
且つゴースト画像が発生したのに対し、実施例1では1
枚目と同等の印字品質が得られた。
【0118】
【発明の効果】本発明によるS字型電子写真感光体を搭
載した電子写真装置は、電子写真感光体のフラッシュ光
に対する90%電位減衰時間を露光−帯電間時間および
除電−帯電間時間との関係で規定することにより、高
速、高画質を保証し、且つ耐久性に優れたものになると
いう卓越した効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】J字型電子写真感光体における露光量と表面電
位の関係を示すグラフである。
【図2】S字型電子写真感光体における露光量と表面電
位の関係を示すグラフである。
【図3】本発明における電子写真用感光体の一例を示す
模式的断面図である。
【図4】本発明における電子写真用感光体の他の一例を
示す模式的断面図である。
【図5】本発明におけるの電子写真用感光体の他の一例
を示す模式的断面図である。
【図6】本発明における電子写真用感光体の他の一例を
示す模式的断面図である。
【図7】デジタル処理された画像信号に基づき露光を行
う本発明の電子写真装置の一例を示す概略構成図であ
る。
【図8】実施例1の感光体に対するフラッシュ光に対す
る光誘起電位減衰の時間分解測定結果である。
【符号の説明】
1 導電性支持体 2 電荷発生層 3 不均一電荷輸送層(S字化電荷輸送層) 4 均一電荷輸送層 11 感光体ドラム 12 除電用光源 13 帯電用スコロトロン 14 露光用レーザー光学系 15 現像器 16 転写用ロール 17 クリーニングブレード 18 用紙
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯島 正和 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス 株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、50%電位減衰に要する露
    光量(E50% )が10%電位減衰に要する露光量(E
    10% )の5倍未満である電子写真感光体、帯電手段、デ
    ジタル処理された画像信号に基づき露光を行う静電潜像
    形成用の露光手段、現像手段、転写手段、および除電用
    の露光手段、を備えたデジタル式電子写真装置におい
    て、 電子写真感光体のフラッシュ露光に対する90%電位減
    衰時間が、静電潜像形成用の露光手段から現像手段まで
    の時間(露光−現像間時間)および除電用の露光手段か
    ら帯電手段までの時間(除電−帯電間時間)のどちらよ
    りも短いことを特徴とするデジタル式電子写真装置。
  2. 【請求項2】 静電潜像形成用の露光手段から現像手段
    までの時間(露光−現像間時間)および除電用の露光手
    段から帯電手段までの時間(除電−帯電間時間)が、と
    もに0.4sec以下であることを特徴とする請求項1
    に記載のデジタル式電子写真装置。
  3. 【請求項3】 前記電子写真感光体における50%電位
    減衰に要する露光量が、10%電位減衰に要する露光量
    の3倍以下であることを特徴とする請求項1または2に
    記載のデジタル式電子写真装置。
  4. 【請求項4】 前記電子写真感光体のフラッシュ露光に
    対する90%電位減衰時間が、0.2sec以下である
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の
    デジタル式電子写真装置。
  5. 【請求項5】 前記電子写真感光体のフラッシュ露光に
    対する90%電位減衰時間が、0.1sec以下である
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の
    デジタル式電子写真装置。
  6. 【請求項6】 前記電子写真感光体が、導電性支持体の
    表面に、電荷発生層と、電気的不活性マトリックス中に
    電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一電荷輸送層
    と、を設けてなることを特徴とする請求項1ないし5の
    いずれかに記載のデジタル式電子写真装置。
  7. 【請求項7】 前記電気的不活性マトリックス中に電荷
    輸送性ドメインが分散されてなる不均一電荷輸送層が、
    電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを含む相分離性
    のブロック共重合体またはグラフト共重合体から形成さ
    れてなることを特徴とする請求項6に記載のデジタル式
    電子写真装置。
  8. 【請求項8】 前記電子写真感光体が、導電性支持体の
    表面に、前記電荷発生層と前記不均一電荷輸送層とに加
    え、均一電荷輸送層を設けたことを特徴とする請求項6
    または7に記載のデジタル式電子写真装置。
  9. 【請求項9】 前記不均一電荷輸送層の膜厚が、0.1
    μm以上10μm未満の範囲内にあることを特徴とする
    請求項6ないし8のいずれかに記載のデジタル式電子写
    真装置。
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