JPH11237748A - 電子写真感光体及び電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体及び電子写真装置

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JPH11237748A
JPH11237748A JP10042292A JP4229298A JPH11237748A JP H11237748 A JPH11237748 A JP H11237748A JP 10042292 A JP10042292 A JP 10042292A JP 4229298 A JP4229298 A JP 4229298A JP H11237748 A JPH11237748 A JP H11237748A
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layer
charge transporting
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JP10042292A
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English (en)
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Taketoshi Azuma
武敏 東
Masakazu Iijima
正和 飯島
Taketoshi Hoshizaki
武敏 星崎
Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
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Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 デジタル式の電子写真法に好適で、高性能か
つ高寿命で実用性能に優れた電子写真感光体の提供。 【解決手段】 電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックと
を少なくとも有する電荷輸送性ブロック共重合体を含有
する感光層を有してなり、該電荷輸送性ブロック共重合
体の全量に対する、分子量が5,000以上の成分の量
が80重量%以上であることを特徴とする電子写真感光
体である。電荷輸送性ブロック共重合体の全量に対す
る、分子量が5,000以上の成分の量が80重量%以
上である態様、電荷輸送性ブロック共重合体における、
分子量が20,000以上である成分が、該電荷輸送性
ブロック共重合体全量に対する重量%の最高値を有する
態様、電荷輸送性ブロック共重合体の重量平均分子量
(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)
が3以下である態様が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタル式の電子
写真法に好適であり、高性能かつ高寿命で実用性能に優
れた電子写真感光体、及び該電子写真感光体を用いるこ
とにより、耐久性に優れ、高品質な画質を形成できるデ
ジタル式の電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真技術は、高速、高印字品
質が得られる等の利点を有するために、複写機、プリン
ター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を果
たしている。電子写真技術において用いられる電子写真
感光体としては、従来からセレン、セレン−テルル合
金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料を用いた無
機系電子写真感光体が広く知られている。一方、これら
の無機系電子写真感光体に比べ、コスト、製造性、廃棄
性等の点で優れた利点を有する有機光導電性材料を用い
た有機系電子写真感光体の研究も活発化し、現在では前
記無機系電子写真感光体を凌駕するに至っている。
【0003】特に、光電導の素過程である光電荷発生と
電荷輸送とをそれぞれ別々の層に担わせる機能分離型積
層構造の電子写真感光体が開発されたことにより、材料
選択の自由度が増し、著しい性能の向上を遂げ、現在で
はこの機能分離型積層構造の有機系電子写真感光体が主
流となっている。というのも、電荷発生能と電荷輸送能
との両方に優れた材料は希有であり、また、そのような
材料の設計開発も困難であったが、一方のみ優れた材料
ならば設計開発も容易であり、各機能に優れた材料を併
用して機能分離型積層構造とすることで、高性能な電子
写真感光体を得ることが可能となったからである。
【0004】前記機能分離型積層構造の電子写真感光体
は、電荷発生層と電荷輸送層とを有するが、前記電荷発
生層としては、例えば、キノン系顔料、ペリレン系顔
料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、セレン等の電
荷発生能に優れた顔料を蒸着等により直接成膜したも
の、あるいは高濃度で結着樹脂中に分散したものなどが
実用化されている。
【0005】一方、前記電荷輸送層に含まれる電荷輸送
材料としては、ポリビニルカルバゾールが古くから知ら
れているが、これは、機械的強度が弱い、電荷移動度が
小さい、電荷注入性が低い、等の実用面における本質的
な問題を有していた。この本質的な問題を解決するた
め、前記電荷輸送層に要求される機能である電荷輸送能
と、成膜性、可撓性、強度等の機械的特性とを機能的に
分離することが考えられている。具体的には、前記電荷
輸送能と前記機械的特性とを、それぞれ別々の材料に担
わせ、例えば、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾ
ン系化合物、ベンジジン系化合物、ベンジジン系化合
物、スチルベン系化合物等の高い電荷輸送能を有する電
荷輸送性低分子化合物と、成膜性、可撓性、強度党の機
械的特性に優れたポリカーボネート等のバインダー樹脂
とからなる分子分散樹脂系複合材料を前記電荷輸送層と
して用いるのである。このような機能分離型の複合材料
は、近時、前記電荷輸送層の主流となってきている。
【0006】しかしながら、前記分子分散樹脂系複合材
料では、分子分散された前記電荷輸送性低分子化合物
が、経時及び/又は加熱で結晶化してしまい、その特性
が劣化するという問題があり、特に高温下での使用ある
いは発熱を伴うデバイスへの適用には制限があった。ま
た、前記分子分散樹脂系複合材料を、高画質が得られる
液体現像方式の電子写真装置用の電子写真感光体に用い
た場合、現像液に触れると、該分子分散樹脂系複合材料
における電荷輸送性低分子化合物が溶解乃至結晶化等
し、その結果、電荷輸送層が変性乃至クラックが生じる
等の問題があった。更に、十分な電荷輸送性を確保する
ためには、前記電荷輸送性低分子化合物を樹脂中に35
〜60重量%の高濃度で分散させる必要があり、可撓
性、強度等の機械的特性に優れた樹脂を用いても、複合
膜とした場合の機械的特性には限界があった。
【0007】ところで、従来の光学的に原稿を電子写真
感光体上に結像させて露光するアナログ方式の電子写真
式複写機に用いる電子写真感光体としては、濃度階調に
よる中間調の再現性を良好にするために、図1に示すよ
うな光誘起電位減衰特性を有すること、即ち、露光量に
対し比例的に電位減衰を起こす特性を有することが必要
とされていた。なお、このような「J」字型の光誘起電
位減衰特性を有する電子写真感光体は、「J字型の電子
写真感光体」と称されることがある。上述の無機系電子
写真感光体、機能分離型積層構造の有機系電子写真感光
体などは、総てこの「J字型の電子写真感光体」の範疇
に属する光誘起電位減衰特性を示す。
【0008】しかしながら、近年の高画質化、高付加価
値化、ネットワーク化等の要請に伴い盛んに研究開発が
行われているデジタル方式の電子写真装置では、一般に
ドット等の面積率で階調を達成する面積階調方式を採用
するため、むしろ図2に示すような、ある露光量に達す
るまでは電位減衰せず、その露光量を越えると急峻な電
位減衰を示す光誘起電位減衰特性を有する電子写真感光
体を使用する方が、画素の鮮鋭度が高められる等の点か
ら好ましいと言える。なお、このような「S」字型の光
誘起電位減衰特性を有する電子写真感光体は、「S字型
の電子写真感光体」と称されることがある。
【0009】前記S字型の光誘起電位減衰特性は、Zn
O等の無機顔料あるいはフタロシアニン等の有機顔料を
樹脂中に粒子分散してなる単層構造の電子写真感光体に
おいては公知の現象である[例えば、R.M.Scha
ffert:「Electrophotograph
y」,Focal Press,p.344(197
5)、J.W.Weigl,J.Mammino,G.
L.Whittaker,R.W.Radler,J.
F.Byrne:「Current Problems
in Electrophotography」,W
alter deGruyter,p.287(197
2)]。特に、現在多用されている半導体レーザーの発
信波長である近赤外域に光感度を有するフタロシアニン
系顔料を、樹脂中に分散してなるレーザ露光用の単層構
造の電子写真感光体が、多数提案されている[例えば、
グエン・チャン・ケー、相沢;日本化学会誌、p.39
3(1986)、特開平1−169454号公報、同2
−207258、同3−31847、同5−31338
7]。
【0010】しかしながら、これらの単層構造の電子写
真感光体では、以下のような問題がある。即ち、単一の
材料で電荷発生と電荷輸送との両機能を担わなければな
らない。前記両機能が共に優れた材料は、稀有であり、
実用に耐え得るものは未だ得られていないのが現状であ
る。特に顔料粒子は、一般的に多くのトラップレベルを
有するため、電荷輸送能が低かったり、電荷が残留する
等の欠点があり、これに電荷輸送能を担わせるのは不適
当である。
【0011】唯一の例外的な実用例としては、ZnO樹
脂分散単層感光体であり、疎水性トナー付着の有無によ
る面積階調方式で版を形成するオフセット印刷用マスタ
ー版として、活用されている[例えば、河村「電子写真
技術の基礎と応用」、電子写真学会編、コロナ社、 p.4
24 (1988)]。しかしながら、この場合、電子写真特性に
おける高速性、耐刷性に対する要求の低い印刷用マスタ
ー版として用いた場合の成功例であり、複写機、プリン
ター、ファクシミリ等に用いる感光体としては実用に耐
えるレベルにはない。
【0012】したがって、これらの問題を根本的に解決
し、材料選択の自由度を上げ、ひいては総合的な電子写
真感光体の特性を向上させるためには、前記S字型の電
子写真感光体においても、機能分離型積層構造の導入が
不可欠である。
【0013】D.M.Pai等は、電荷発生層と電荷輸
送層とからなる積層構造の電子写真感光体において、前
記電荷輸送層として、少なくとも2つの電荷輸送領域及
び1つの電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領域が互
いに接触して回旋状電荷輸送路を形成してなる不均一電
荷輸送層を用いることにより、任意の電荷発生層との組
み合わせにおいても前記S字型の光誘起電位減衰特性を
実現できることを報告している(特開平6−83077
号公報(米国特許第5306586号明細書)参照)。
また、本発明者らは、電荷発生層、不均一電荷輸送層及
び均一電荷輸送層の3層構造の電子写真感光体が、前記
S字型の光誘起電位減衰特性を示すことを報告してい
る。
【0014】光誘起電位減衰特性をS字型にする(以下
「S字型化」と称することがある)機能を担う不均一電
荷輸送層の具体例としては、例えば、特開平6−830
77号公報において、フタロシアニン顔料による顔料樹
脂分散膜及びポリ(ビニルカルバゾール−ドデシルメタ
クリレート)相分離系ブロック共重合体が開示されてい
る。また、特開平9−96914号公報において、六方
晶セレン顔料による顔料樹脂分散膜が更に開示されてい
る。
【0015】D.M.Pai等及び本発明者等の発明の
ように、ポリ(ビニルカルバゾール−ドデシルメタクリ
レート)相分離系ブロック共重合体を、前記不均一電荷
輸送層とするもの、及び、顔料樹脂分散膜を前記不均一
電荷輸送層としかつ均一電荷輸送層を併設したものは、
従来における単層構造のS字型の光誘起電位減衰特性を
有する電子写真感光体に比べ、著しい安定性の向上を達
成しているのの、実用性能の更なる向上が望まれてい
る。しかも、ポリ(ビニルカルバゾール−ドデシルメタ
クリレート)相分離系ブロック共重合体等の材料には、
以下に示す問題があり、不均一電荷輸送層材料の新たな
開発が不可欠であった。即ち、フタロシアニン顔料、六
方晶セレン等の電荷発生能を有する着色顔料を前記不均
一電荷輸送層における電荷輸送材料として用いると、特
に電荷輸送層側から電荷発生層を露光する構成を採った
場合、前記不均一電荷輸送層での光吸収及びそれに伴う
電荷発生により、光感度や帯電性に悪影響が出たり、繰
り返し安定性が低下する等の問題である。
【0016】この問題は、前記不均一電荷輸送層が光吸
収しない波長域に光感度を有する電荷発生層を用い、か
つ該波長域内のみの露光を行う露光装置を用いることに
より回避することができるが、材料や装置に制約が課さ
れることとなるため、根本的な改善策が望まれる。更
に、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜や六方晶セレンの
樹脂分散膜の製造に当たっては、これら顔料の粉砕工程
及び/又は分散工程が必要であるが、前記粉砕工程には
莫大なエネルギーを要し、かつ不純物混入の危険性を伴
う。更に、安定な分散液を得ることは一般的に困難であ
り、分散溶剤やバインダー樹脂の探索に多大な労力を要
すると共に、選択材料に著しい制約を受ける。また、分
散液中での結晶成長や凝集化による分散液の変性は一般
的に避けられず、長期に亘る使用は不可能であり、コス
トアップをもたらす。また、ポリビニルカルバゾール−
ドデシルメタクリレート相分離系ブロック共重合体の場
合、特殊な2官能性開始剤を用いて合成されるため、製
造が困難である、コストが高い等の問題があり、更に、
機械的強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が
低い等の問題もある。
【0017】ところが一方、相分離系ブロック共重合体
の場合、塗布液としては均一溶液であり、乾燥時に相分
離し、所望の不均一電荷輸送層を与えるものであるた
め、上記のような粉砕工程及び/又は分散工程に関連す
る問題が、根本的に解消されるという利点がある。ま
た、顔料ではないため、上記の光暴露に関連する問題も
生じない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来に
おける諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課
題とする。即ち、本発明は、電荷輸送性ブロックと絶縁
性ブロックとを有する電荷輸送性ブロック共重合体を含
有し、デジタル式の電子写真法に好適であり、高性能か
つ高寿命で実用性能に優れた電子写真感光体を提供する
ことを目的とする。また、本発明は、該電子写真感光体
を用いることにより、耐久性に優れ、高品質な画質を形
成できるデジタル式の電子写真装置を提供することを目
的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段は以下の通りである。即ち、 <1> 電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを少な
くとも有する電荷輸送性ブロック共重合体を含有する感
光層を有してなり、該電荷輸送性ブロック共重合体の全
量に対する、分子量が5,000以上の成分の量が80
重量%以上であることを特徴とする電子写真感光体であ
る。 <2> 電荷輸送性ブロックの全量に対する、分子量が
5,000以上の成分の量が80重量%以上である前記
<1>に記載の電子写真感光体である。 <3> 電荷輸送性ブロック共重合体における、分子量
が20,000以上である成分が、該電荷輸送性ブロッ
ク共重合体全量に対する重量%の最高値を有する前記<
1>又は<2>に記載の電子写真感光体である。 <4> 電荷輸送性ブロック共重合体の重量平均分子量
(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)
が3以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載
の電子写真感光体である。 <5> 電荷輸送性ブロックが、繰り返し単位として、
下記一般式(1)で表される構造及び下記一般式(2)
で表される構造の少なくとも1つを含む前記<1>から
<4>のいずれかに記載の電子写真感光体である。 一般式(1)
【0020】
【化4】
【0021】一般式(1)中、Ar1及びAr2は、置換
又は未置換のアリール基を表す。X1は、芳香族環構造
を有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素
基を表す。X2及びX3は、置換又は未置換のアリーレン
基を表す。L1は、分枝構造若しくは環構造を含んでい
てもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素
基を表す。m及びnは、0又は1を表す。 一般式(2)
【0022】
【化5】
【0023】一般式(2)中、Ar3及びAr4は、置換
又は未置換のアリール基を表す。Yは、芳香族環構造を
有する3価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基
を表す。 <6> 一般式(1)におけるX1が、置換又は未置換
のビフェニレン基である前記<5>に記載の電子写真感
光体である。 <7> 絶縁性ブロックが、繰り返し単位として、下記
一般式(3)で表される構造の少なくとも1つを含む前
記<1>から<6>のいずれかに記載の電子写真感光体
である。 一般式(3)
【0024】
【化6】
【0025】一般式(3)中、R1〜R3は、水素原子、
ハロゲン原子、又は、置換若しくは未置換のアルキル基
若しくはアリール基を表す。R4は、水素原子、ハロゲ
ン原子、又は、置換若しくは未置換のアルキル基、アリ
ール基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基若し
くはアルコキシカルボニル基を表す。 <8> 電荷輸送性ブロック共重合体が、末端に反応性
官能基を有する電荷輸送性高分子と、該反応性官能基と
結合反応し得る官能基を有する低分子重合開始剤とから
得られた、末端に重合開始基を有する電荷輸送性高分子
開始剤を用いて、絶縁性モノマーを重合させてなる前記
<1>から<7>のいずれかに記載の電子写真感光体で
ある。 <9> 電荷輸送性高分子又は電荷輸送性高分子開始剤
が、再沈殿化処理により低分子量成分が除去されてなる
前記<8>に記載の電子写真感光体である。 <10> 感光層が、電荷発生材料を含有する電荷発生
層と、電荷輸送性ブロック共重合体を含有する電荷輸送
層とを有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の
電子写真感光体である。 <11> 電荷輸送層が2層以上からなり、該電荷輸送
層の少なくとも1層が電荷輸送性ブロック共重合体を含
有する前記<10>に記載の電子写真感光体である。 <12> 電荷発生材料としてフタロシアニン系化合物
を含有する前記<10>又は<11>に記載の電子写真
感光体である。 <13> 帯電電位を50%減衰させるのに要する露光
量(E50%)と10%減衰させるのに要する露光量
(E10%)との比(E50%/E10%)が5未満で
ある前記<1>から<12>のいずれかに記載の電子写
真感光体である。 <14> 前記<1>から<13>のいずれかに記載の
電子写真感光体と、デジタル処理された画像信号に基づ
き露光を行う露光手段とを少なくとも備えたことを特徴
とする電子写真装置である。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の電子写真感光体は、S字
型の光誘起電位減衰特性を有する電子写真感光体であ
る。
【0027】S字型の光誘起電位減衰特性が発現する機
構に関しては、トラップ説(例えば、北村、小門:電子
写真学会誌,Vol. 20, P.60(1982) )、回旋状電導説
(例えば、D.M.Pai 等の上記特許)等、幾つかの説が提
唱されているものの、未だ確立された説は存在しない。
これまでにS字型の光誘起電位減衰特性を有する電子写
真感光体として報告されている、前記従来における顔料
樹脂分散型単層構造の電子写真感光体、D.M.Pai 等の電
荷発生層及び均一電荷輸送層からなる積層構造の電子写
真感光体においては、少なくとも電荷発生領域に隣接す
る電荷輸送領域の電荷輸送路が電気的不活性マトリック
ス中に電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一な構
造を有するものであるという共通点がある。なお、ここ
でいう「電気的不活性」とは、その輸送エネルギーレベ
ルが、電荷輸送ドメインの輸送エネルギーレベルから大
きくかけ離れており、通常の電界強度で、実質的に輸送
電荷が注入されることがなく、輸送電荷にとって事実上
電気的絶縁状態にあることを意味する。
【0028】D.M.Pai 等の回旋状電導説によれば、S字
型の光誘起電位減衰が起こる過程は、以下のように推測
される。即ち、先ず、不均一電荷輸送層では、電気的不
活性マトリックス中に分散された電荷輸送性ドメインが
互いに接触し、回旋状の電荷輸送路を形成しているもの
と考える。この場合、電子写真感光体が帯電され感光層
に高電界が印加されると、露光により電荷発生層で発生
した電荷は、電界によるクーロン力により該電界に沿っ
て該電荷発生層から前記不均一電荷輸送層に注入され、
前記電荷輸送性ドメイン中を電界方向に移動する。
【0029】前記電荷は、電荷輸送性ドメインの末端凸
部に到達したところで、電気的不活性マトリックスの障
壁に出会い、電界により移動方向が規制されているた
め、ここで該電荷の移動は一端停止することになる。こ
の間の移動距離が感光層の全膜厚に対して十分小さけれ
ば、この間の電位減衰は無視できるものとなる。殆ど総
ての表面電荷に相当する電荷が注入された後は、該注入
電荷の近傍での表面に垂直な局部的電界は無視できる程
小さくなり、停止していた電荷は電界による束縛を逃
れ、表面に垂直な方向以外の方向に拡散することが可能
となり、回旋状に連なる連結路を辿って最初に電荷が停
止された所よりも深部に達する。この深部において、先
程と同様に電荷は、再び十分な高電界に晒され電荷輸送
性ドメイン内を電界方向に沿って電荷移動し、再び電気
的不活性マトリックスの障壁に出会い、移動を停止す
る。ところが、同様な他の電荷の移動で電界強度は低下
しているので、より多くの電荷が、回旋状電荷輸送路を
通り、次の障壁まで達する。このようにして、前記電荷
の移動は、カスケード的に起こり、S字型の光誘起電位
減衰特性が発現される。
【0030】なお、前記光誘起電位減衰特性のS字性の
尺度には、例えば、帯電電位を50%減衰させるのに要
する露光量(E50%)と、10%減衰させるのに要す
る露光量(E10%)との比(E50%/E10%)を
用いることができる。理想的なJ字型の電子写真感光体
では、電界強度の低下に伴い、電荷発生効率及び/又は
電荷輸送能が低下するため、前記比(E50%/E10
%)の値は、5を越える値を示す。一方、究極のS字型
の光誘起電位減衰曲線では、即ち、特定の露光量までは
全く電位減衰せず、該特定の露光量において一気に残留
電位レベルまで電位が減衰する階段状の光誘起電位減衰
曲線では、前記比(E50%/E10%)の値は1とな
る。したがって、S字型の光誘起電位減衰特性を有する
電子写真感光体は、前記比(E50%/E10%)の値
が1以上5未満であり、前記比(E50%/E10%)
の値が1に近づく程、S字性が高くなることを意味す
る。
【0031】本発明の電子写真感光体は、S字型の光誘
起電位減衰特性を有する電子写真感光体であるので、帯
電電位を50%減衰させるのに要する露光量(E50
%)と、10%減衰させるのに要する露光量(E10
%)との比(E50%/E10%)が5未満であること
が必要であり、3未満であるのが好ましい。
【0032】本発明の電子写真感光体は、電荷輸送性ブ
ロックと絶縁性ブロックとを少なくとも有する電荷輸送
性ブロック共重合体を含有する感光層を有してなり、該
電荷輸送性ブロックの全量に対する、分子量が5,00
0以上の成分の量が95重量%以上である限り、他の構
成等については特に制限はなく、本発明の目的を害しな
い範囲において適宜選択することができる。
【0033】本発明の電子写真感光体は、導電性支持体
上に前記感光層を有してなり、更に必要に応じて本発明
の目的を害しない範囲内において適宜選択した下引き
層、保護層、中間層等のその他の層を有してなる。前記
感光層は、単層構造であってもよいし、積層構造であっ
てもよいが、本発明においては機能分離型の積層構造の
方が好ましい。前記感光層が前記積層構造の場合、該感
光層は、電荷発生層と、不均一電荷輸送層とを少なくと
も有するのが好ましく、更に均一電荷輸送層を有してい
てもよい。
【0034】前記電荷輸送層(該電荷輸送層が積層構造
を有する場合には前記不均一電荷輸送層)の材料として
は、前記電荷発生層に含まれる電荷発生材料のイオン化
ポテンシャルに近いイオン化ポテンシャル値を有する、
相分離性の電荷輸送性ブロック共重合体及び/又はグラ
フト共重合体が好ましい。
【0035】前記相分離性の電荷輸送性ブロック共重合
体及びグラフト共重合体は、電荷輸送性ブロックと絶縁
性ブロックとを含む。なお、該相分離性の電荷輸送性ブ
ロック共重合体及びグラフト共重合体を電荷輸送層に用
いた電子写真感光体は、S字型の光誘起電位減衰挙動を
呈するが、これは、前記電荷輸送性ブロックが「電荷輸
送性ドメイン」を形成し、前記絶縁性ブロックが「電気
的不活性マトリックス」を形成し、既述のようなカスケ
ード的な電荷の移動現象が起きているためと推定され
る。
【0036】前記電荷輸送性ブロックと前記絶縁性ブロ
ックとは、互いに非相溶性であるのが好ましい。という
のは、一般に、低分子の前記電荷輸送性ブロックは、前
記絶縁性ブロックに相溶し易く、該絶縁性ブロックに相
溶し分子分散した該電荷輸送性ブロックは、トラップと
して働くため、電荷の輸送が悪くなり、応答速度の低
下、露光後の電位が高い、サイクル安定性が悪い、等の
問題が生じることがあるからである。低分子の前記絶縁
性ブロックも少ないことが望ましい。低分子の絶縁性ブ
ロックは電荷輸送性ブロックに相溶し易く、電荷輸送性
ブロックに相溶した場合には、電荷の輸送性が悪くな
り、応答速度の低下、露光後の電位が高い、サイクル安
定性が悪い等の問題点が生じることがあるからである。
電荷輸送性ブロック共重合体の低分子量成分をカットし
た場合には、電荷輸送性ブロック及び絶縁性ブロックに
おいて低分子量成分が少なくなっているため電気特性上
好ましい。また、分子分散した前記電荷輸送性ブロック
の量が多い場合、該電荷輸送性ブロックは、電荷のパス
として働く。光誘起電位減衰特性がS字型であるために
は、露光量が弱いところでは光減衰が小さく、ある露光
量から急峻に光減衰することが必要であるが、前記電荷
のパスが多くなってくると、露光量が弱いところでも光
減衰し、S字型が悪くなることがあるからである。
【0037】このため、本発明においては、前記相分離
性のブロック共重合体及びグラフト共重合体の中でも、
電荷輸送性ブロック共重合体の全量に対し、低分子量成
分の量のできるだけ少ないものが好ましく、また、電荷
輸送性ブロックの低分子量成分の量ができる限り少ない
ものが好ましい。具体的には、電荷輸送性ブロック共重
合体の全量に対する、分子量が5,000以上の成分の
量としては、80重量%以上であり、90重量%以上が
好ましく、95重量%以上がより好ましい。また、該電
荷輸送性ブロックの全量に対する、分子量が5,000
以上の成分の量としては、80重量%以上であり、90
重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好まし
い。
【0038】前記電荷輸送性ブロック及び電荷輸送性ブ
ロック共重合体における低分子量成分の量を少なくする
方法としては、溶解度差を利用して分種する方法、GP
C装置を利用して分種する方法などが挙げられる。低分
子量成分の少ない電荷輸送性ブロックを得るには、共重
合する前の電荷輸送性材料の低分子成分を除去してもよ
いし、共重合した後の電荷輸送性ブロックにおける低分
子成分を除去してもよいし、また、共重合した後の電荷
輸送性ブロック共重合体における低分子量成分を除去し
てもよい。
【0039】前記電荷輸送性ブロックとしては、電荷輸
送性を有し、かつ前記電荷発生層からの電荷注入に大き
な障壁がない限り特に制限はないが、繰り返し構造単位
中に、アリールアミン構造、アリールヒドラゾン構造、
アルコキシアントラセン構造、アリールブタジエン構
造、シリレン構造、フラーレン構造、ジフェノキノン構
造、ニトロフルオレノン構造、芳香族イミド構造、フル
オレノマロノニトリル構造等の電荷輸送活性を有する構
造を含むのが好ましい。これらの繰り返し構造単位は、
1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれて
いてもよい。これらの繰り返し構造単位の中でも、トリ
アリールアミン構造は高い電荷輸送能を有している点で
好ましい。
【0040】前記電荷輸送性ブロックは、繰り返し単位
として、下記一般式(1)で表される構造及び下記一般
式(2)で表される構造の少なくとも1つを含む。 一般式(1)
【0041】
【化7】
【0042】一般式(1)中、Ar1 及びAr2 は、置
換又は未置換のアリール基を表し、炭素数6〜16の置
換又は未置換のアリール基が好ましい。該アリール基の
具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル
基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基として
は、メチル基、エチル基、メトキシ基、ハロゲン原子等
が挙げられる。
【0043】X1 は、芳香族環構造を有する2価の炭化
水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表し、炭素数6
〜20の炭化水素基又は炭素数6〜20のヘテロ原子含
有炭化水素基が好ましい。具体例としては、フェニレン
基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン
基、メチレンジフェニル基、シクロヘキシレデンジフェ
ニル基、オキシジフェニル基及びチオジフェニル基等、
並びに、これらのメチル置換体、エチル置換体、メトキ
シ置換体及びハロゲン置換体等が挙げられ、これらの中
でも、置換又は未置換のビフェニレン基が電荷輸送性の
点で特に好ましい。
【0044】X2 及びX3 は、置換又は未置換のアリー
レン基を表し、炭素数6〜18の置換又は未置換のアリ
ーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン基、ビフ
ェニレン基、ターフェニレン基及びナフチレン基等、並
びに、これらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ
置換体及びハロゲン置換体等が挙げられる。
【0045】Lは、分枝若しくは環構造を含んでもよい
2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表
し、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮する限
り任意であるが、エーテル結合、エステル結合、カーボ
ネート結合、シロキサン結合等から選ばれる結合基を含
み、かつ炭素数が20以下であるものが好ましい。その
具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0046】
【化8】
【0047】m及びnは、0又は1を表す。前記一般式
(1)で表される構造の具体例としては、以下のものが
挙げられる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】一般式(2)
【化9】
【0051】一般式(2)中、Ar3 及びAr4 は、置
換又は未置換のアリール基を表し、炭素数6〜18の置
換又は未置換のアリール基が好ましく、該アリール基の
具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル
基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基として
は、炭素数1〜12個のアルキル基、炭素数1〜12個
のアルコキシ基、ジアリールアミノ基、ジアリールアミ
ノアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0052】Yは、芳香族環構造を有する3価の炭化水
素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表し、上記の好ま
しい特性の少なくとも1つを発揮する限り任意である
が、炭素数が20以下のものが好ましい。具体例として
は、以下のものが挙げられる。
【0053】
【化10】
【0054】前記一般式(2)で表される構造の具体例
としては、以下のものが挙げられる。
【0055】
【表3】
【0056】本発明においては、電荷輸送性ブロック共
重合体の全量に対する、その分子量の成分が占める量の
割合(重量%)を「重量存在比率」といい、例えば、電
荷輸送性ブロック共重合体の全量が100gであり、分
子量が1000である成分の量が10gである場合、該
電荷輸送性ブロック共重合体の全量に対する、分子量が
1000である成分が占める量の割合は、10重量%と
して表される。本発明においては、電荷輸送性ブロック
共重合体の全量に対する、分子量が5,000以上の成
分の量が95重量%以上であるので、分子量が5,00
0以上の成分の前記重量存在比率は95重量%以上とな
る。
【0057】また、本発明においては、前記重量存在比
率が最も大きいところを「最高重量存在率」といい、分
子量を横軸にとり、前記重量存在比率を縦軸にとった場
合、ピーク値を示す成分の分子量を、「最高重量存在率
を与える分子量」という。例えば、分子量が100であ
る成分の前記重量存在比率が、他の分子量成分の前記重
量存在比率よりも大きく、ピーク値を示す場合、前記最
高重量存在率を与える分子量は100となる。本発明に
おいては、電荷輸送性ブロック共重合体における、分子
量が20,000以上である成分が、該電荷輸送性ブロ
ック共重合体全量に対する重量%の最高値を有するの
で、前記最高重量存在率を与える分子量は20,000
以上となる。
【0058】前記電荷輸送性ブロック共重合体における
前記最高重量存在率を与える分子量としては、20,0
00以上が好ましく、30,000以上がより好まし
く、40,000以上が特に好ましい。前記最高重量存
在率を与える分子量が、20,000未満の場合には、
分子量5,000以下である成分の比率が高くなり易
く、そのため前記絶縁性ブロックに相溶する前記電荷輸
送性ブロックが多くなり、上述した問題が起こる。更
に、前記電荷輸送性ブロック自体の分子量が小さいため
に、S字化に必要な構造的トラップが浅くなるなどの問
題がある。
【0059】前記電荷輸送性ブロック共重合体の重量平
均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/
Mn)としては、3以下が好ましく、2.5以下がより
好ましく、2以下が特に好ましい。前記比(Mw/M
n)が小さくなると、前記電荷輸送性ブロック及び電荷
輸送性ブロック共重合体における低分子量成分の比率が
小さくなることによる効果があることはもちろん、その
他に前記電荷輸送性ドメインの平均粒径が揃うという利
点がある。前記電荷輸送性ドメインの平均粒径が揃うと
構造的なトラップの深さが制御し易くなり、電気特性の
向上が期待できる。
【0060】前記絶縁性ブロックとしては、輸送電荷に
対し、絶縁性である限り特に制限はないが、機械的強
度、可撓性、可視光及び赤外光透過性、化学的安定性、
絶縁性等の点で、特に下記一般式(3)で表されるビニ
ル系モノマーの少なくとも1種を重合して得られたもの
が好ましい。 一般式(3)
【0061】
【化11】
【0062】一般式(3)中、R1〜R3は、水素原子、
ハロゲン原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又
は、置換若しくは未置換のアリール基を表す。前記置換
若しくは未置換のアルキル基、及び、前記置換若しくは
未置換のアリール基の具体例としては、メチル基、エチ
ル基、トリル基、フェニル基などが挙げられる。
【0063】R4は、水素原子、ハロゲン原子、置換若
しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のアリ
ール基、置換若しくは未置換のアルコキシ基、置換若し
くは未置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは未
置換のアシル基、又は、置換若しくは未置換のアシルオ
キシ基を表す。前記アルキル基、前記アルコキシ基、前
記アルコキシカルボニル基、前記アシル基及び前記アシ
ルオキシ基の炭素数としては1〜18個が好ましい。前
記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピレ
ニル等が挙げられる。また、置換基としては、例えば、
メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、メトキシ
基、エトキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ
基、アルコキシシリル基などが挙げられる。
【0064】一般式(3)の中では、特に下記一般式
(4)で表されるビニルモノマーが好ましい。 一般式(4)
【0065】
【化12】
【0066】一般式(4)中、R1 〜R3 は、前記一般
式(3)中のR1 〜R3 と同じである。R5 は、置換若
しくは未置換のアルキル基、又は、置換若しくは未置換
のアリール基を表す。これらの中でも、炭素数1〜20
の置換若しくは未置換のアルキル基、又は、炭素数6〜
16の置換若しくは未置換のアリール基が好ましく、具
体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロ
ピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル
基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシ
ル基、ドデシル基、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、
(トリメトキシシリル)プロピル基、クロロメチル基、
フェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0067】前記一般式(4)で表されるビニルモノマ
ーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】以下に、前記一般式(3)で表されるビニ
ルモノマーの構造例とこのビニルモノマーの単独重合体
のガラス転移温度とを示す。
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】前記相分離性の電荷輸送性ブロック共重合
体及び/又はグラフト共重合体としては、例えば、特願
平9−155518号明細書に記載したもの、米国特許
第3,994,994号明細書に記載されているビニルカルバゾ
ールとドデシルメタクリレートとの共重合により製造さ
れたマルチブロック共重合体などが挙げられ、その他、
米国特許第4,618,551号、第4,806,443号、第4,818,650
号、第4,935,487号、及び第4,956,440号の各明細書に記
載されているもの、低分子量のポリシロキサン、脂肪族
及び芳香族ポリエステル、ポリウレタン単位を含み縮合
により製造されるブロック共重合体などが挙げられる。
【0079】前記相分離性のブロック共重合体はブロッ
ク共重合体でればよく、前記グラフト共重合体はグラフ
ト共重合体であればよく、これらの構成ブロックの連結
形式には特に制限はない。即ち、前記電荷輸送性ブロッ
クを「A」とし、前記絶縁性ブロックを「B」とする
と、前記ブロック共重合体の場合には、AB型、ABA
型、BAB型、(AB)n 型、(AB)n A型、B(A
B)n 型などのいずれであってもよいし、前記グラフト
共重合体の場合には、前記絶縁性ブロックを主鎖とし前
記電荷輸送性ブロックを側鎖とするもの、前記電荷輸送
性ブロックを主鎖とし前記絶縁性ブロックを側鎖とする
もの、前記ABA型のブロック共重合体にA及び/又は
Bをグラフト化したブロック−グラフト共重合体、など
が挙げられる。
【0080】前記相分離性のブロック共重合体及びグラ
フト共重合体の合成方法としては、例えば、「第4版
実験化学講座28 高分子合成(丸善、1992)」、「マ
クロモノマーの化学と工業(アイピーシー、1990) 」、
「高分子の相溶化と評価技術(技術情報協会、1992)
」、「高分子新素材 One Point 12 ポリマーアロイ
(共立、1988)」、「Angew. Macromol. Chem.,143,pp1
-9(1986)」、「日本接着学会誌,26. pp.112-118(1990)
」、「Macromolecules, 28, pp.4893-4898(1995)」、
「J. Am. Chem. Soc.,111,pp.7641-7643(1989)」、特開
平6−83077号公報、「新素材, pp.37-41(1987)」
などの文献に記載されているブロック共重合体又はグラ
フト共重合体の合成法などが挙げられる。
【0081】前記相分離性のブロック共重合体及びグラ
フト共重合体の具体的な合成としては、例えば、以下の
通りである。即ち、予め電荷輸送性重合体と絶縁性重合
体とを合成し、それらの重合体同士を反応させ結合させ
ることによって所望のブロック共重合体を得ることがで
きる。また、電荷輸送性ブロックを形成するモノマー
と、絶縁性ブロックを形成するモノマーとの重合形式が
同じであり、かつ両者の反応性が大きく異なる場合に
は、単にそれらのモノマー混合物を重合させることで、
まず、反応性が高い方のモノマーが重合し、該モノマー
が消費された後、反応性が低い方のモノマーが重合し、
所望のブロック共重合体を得ることができる。
【0082】また、末端に反応性官能基を有する電荷輸
送性高分子と、該反応性官能基と結合反応し得る官能基
を有する低分子重合開始剤とから得られた、末端に重合
開始基を有する電荷輸送性高分子開始剤を用いて、絶縁
性モノマーを重合させることにより所望の電荷輸送性ブ
ロック共重合体又はグラフト共重合体を得ることができ
る。より詳しくは、予め一方のモノマーの重合物を合成
し、該重合物の末端及び/又は側鎖にアゾ、過酸エステ
ル、パーオキシ、ジチオカルバメート、アルカリ金属ア
ルコラート、アルカリ金属アルカリ等の重合開始能を有
する基を含むマクロ重合開始剤を導入し、該マクロ重合
開始剤により、他方のモノマーを重合させることで所望
のブロック共重合体又はグラフト共重合体を得ることが
できる。この場合、重縮合又は重付加系重合体、付加重
合又は開環重合系重合体からなるブロック共重合体又は
グラフト共重合体が容易に得ることができる。なお、本
発明においては、前記電荷輸送性高分子又は前記電荷輸
送性高分子開始剤が、再沈殿化処理によりその低分子量
成分が除去されているのが、電気特性の点で好ましい。
前記再沈殿化処理は、例えば、前記電荷輸送性高分子を
テトラヒドロフランに溶解させ、この溶液をメチルエチ
ルケトン中に滴下して再沈殿させることにより行うこと
ができる。
【0083】また、分子中にアゾ、過酸エステル、パー
オキシ等の重合開始能を有する基を複数含む化合物を用
い、先ず一部の重合開始基から、一方のモノマーを重合
させ、次に残りの重合開始基から、他方のモノマーを重
合させることにより所望のブロック共重合体を得ること
ができる。この場合、特に重合開始温度が異なる重合開
始基を有するモノマーを重合させ、未反応のモノマーを
除去した後、次に他方のモノマーを添加し、温度を上昇
させ、より高温度で重合を開始する重合開始基によっ
て、該モノマーを重合させることによって所望のブロッ
ク共重合体を得ることができる。
【0084】また、カチオンリビング重合法、アニオン
リビング重合法、アジカルリビング重合法等のリビング
重合法により、各モノマーを逐次重合させることによっ
て所望のブロック共重合体を得ることができる。このリ
ビング重合法の場合、各ブロックの分子量を容易に制御
することができ、かつ分子量分布の狭い重合体を得るこ
とができる利点がある。また、イモータル重合法、Inif
erter 法等により、各モノマーを逐次重合させることに
よって所望のブロック共重合体を得ることができる。更
に、予め、一方のモノマーの重合物の末端に他方のモノ
マーを導入したマクロモノマーを合成し、該マクロモノ
マーを重合することによって所望のグラフト共重合体を
得ることができる。
【0085】前記相分離性のブロック共重合体及びグラ
フト共重合体の分子量(Mw)としては、本発明の目的
を害しない範囲内であれば特に制限はないが、通常1
0,000以上であり、成膜性、相分離性等の高分子特
性を発揮させる観点からは20,000以上が好まし
い。前記分子量の上限値としては、特に制限はないが、
湿式塗布法により成膜を行う場合には、塗布液に適当な
溶液粘度を付与する観点から5,000,000以下が
好ましい。
【0086】前記相分離性のブロック共重合体及びグラ
フト共重合体は、サブミクロン以下の微細なドメインか
らなる相分離状態になっている(ミクロ相分離)。これ
は、ポリマーブレンド、ポリマーアロイの分野において
よく知られているように、異なる高分子同士は一般に非
相溶であり、それらの混合物及びブロック共重合体又は
グラフト共重合体は、数μm以上のマクロなドメインか
らなる相分離状態になっている(マクロ相分離)ことと
同様である。前記相分離性のブロック共重合体及びグラ
フト共重合体における相分離のスケールは、一般的に前
記電荷輸送性ブロック及び前記絶縁性ブロックの平均長
と同程度であり、分子量にほぼ比例する。なお、相分離
性は、一般的に分子量が大きい程、また互いの溶解度パ
ラメーターの差が大きい程、高くなる。
【0087】本発明において、前記電荷輸送性ブロック
により形成される電荷輸送性ドメインの平均粒径として
は、0.001〜3μmが好ましく、0.005〜1μ
mがより好ましく、0.01〜0.5μmが特に好まし
い。前記平均粒径が、3μmより大きいと、好ましい膜
厚の範囲内でのS字化に必要な電荷輸送路の不均一構造
の形成ができなくなり、S字性が失われることになる。
一方、0.001μm未満であると、電荷輸送路が均一
な構造に近付き、またS字性が失われることになる。
【0088】なお、前記ドメインが、電荷輸送性ブロッ
クの微粒子の凝集体よりなる場合、前記ドメインの平均
粒径とは、前記凝集体の2次粒径を指す。但し、電荷輸
送性ブロックの微粒子が絶縁被覆されている場合には、
前記ドメインの平均粒径とは、たとえ絶縁被覆化した電
荷輸送性微粒子が凝集体を形成したとしても、電荷輸送
性ブロックの微粒子自身の平均粒径を指す。
【0089】本発明において、電気的不活性マトリック
スを形成する前記絶縁性ブロックの体積抵抗率として
は、1013Ω・cm以上が好ましく、1014Ω・cm以
上がより好ましい。前記体積抵抗率が、1013Ω・cm
未満であると、電気的不活性マトリックスの電気的絶縁
性が損なわれ、S字性が失われる傾向にある。
【0090】前記電荷輸送性ドメインと前記電気的不活
性マトリックスとの体積比(電荷輸送性ドメイン/電気
的不活性マトリックス)としては、通常9/1〜1/9
であり、4/1〜1/6が好ましく、7/3〜1/4が
より好ましい。前記体積比が9/1を越えると、電荷輸
送性ドメインが密に接触してしまい、実質的に均一な構
造の電荷輸送路を形成し、S字型の光誘起電位減衰特性
の発現に不可欠な電荷輸送路の不均一構造が消失し、S
字性が失われる傾向にあり、更に、暗減衰の増加、機械
的強度の低下等の障害を招く傾向にある。一方、前記体
積比が1/9未満であると、連続した電荷輸送路が形成
されず、残留電位の増大、光感度の低下、応答速度の低
下等の障害を招く傾向にある。
【0091】ただし、前者の問題に関しては、前記電荷
輸送性ドメインを形成する前記電荷輸送性ブロックの粒
子を予め絶縁性材料を用いて不完全に被覆しておくこと
等により、改善することができる。これは、絶縁性材料
を被覆することにより、前記電荷輸送性ドメイン同士の
電気的接触の確率が低下すると共に、絶縁材料による被
覆が不完全な部分により、回旋状電荷輸送経路の形成が
確保されるためである。また、後者の問題に関しては、
電荷輸送性ドメインとして、針状、柱状又は板状等の異
方性の高いものを用いること等により、改善できる。こ
れは、電荷輸送性ドメインとして異方性の高いものを用
いることにより、電荷輸送性ドメインの体積比が低くて
も電荷輸送性ドメイン同士が接触する確率を有効に保つ
ことができるからである。
【0092】図3〜図6は、本発明の電子写真感光体の
一例を示す断面概略説明図である。図3に示す電子写真
感光体は、導電性支持体1上に光電荷発生を担う電荷発
生層2を有し、電荷発生層2上に前記S字型化のための
不均一電荷輸送層3を有してなる。図4に示す電子写真
感光体は、導電性支持体1上に光電荷発生を担う電荷発
生層2を有し、電荷発生層2上に前記S字型化のための
不均一電荷輸送層3を有し、不均一電荷輸送層3上にス
ムーズな電荷輸送を担う均一電荷輸送層4を有してな
り、不均一電荷輸送層3と均一電荷輸送層4とによって
電荷輸送層が形成されている。
【0093】図5に示す電子写真感光体は、導電性支持
体1上に不均一電荷輸送層3を有し、不均一電荷輸送層
3上に電荷発生層2を有してなる。図6に示す電子写真
感光体は、導電性支持体1上に均一電荷輸送層4を有
し、均一電荷輸送層4上に不均一電荷輸送層3を有し、
不均一電荷輸送層3上に電荷発生層2を有してなり、均
一電荷輸送層4と不均一電荷輸送層3とによって電荷輸
送層が形成されている。
【0094】上述したように、前記電荷発生層で発生し
た電荷が不均一電荷輸送層における電気的不活性マトリ
ックスの障害に出会い最初に一時停止するまでの間の移
動距離が、前記感光層の全層厚に対して十分小さけれ
ば、その間の電位減衰は無視できるものとなり、より理
想的なS字型の光誘起電位減衰特性を有する電子写真感
光体となる。つまり、前記電荷発生層と前記S字型化の
ための不均一電荷輸送層とは、互いに近接している方が
より良いS字型の光誘起電位減衰特性が得られる。
【0095】ただし、本発明においては、電荷の注入や
電荷の発生を助ける等の目的のために、前記電荷発生層
と前記不均一電荷輸送層との間に中間層等を設けること
もできる。また、所望とする不完全なS字型の光誘起電
位減衰特性を得るために、前記電荷発生層と前記不均一
電荷輸送層との間に均一電荷輸送層を挿入することも可
能である。この場合、該均一電荷輸送層の厚みを変化さ
せることにより、前記比(E50%/E10%)を1以
上〜5未満の任意の値にすることができる。
【0096】前記不均一電荷輸送層は、ホール輸送性で
あり、前記S字型の光誘起電位減衰特性を有し、電気的
不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメインが分散され
てなる不均一構造を特長とする電荷輸送路を形成してい
る層である。
【0097】前記不均一電荷輸送層は、適宜選択した手
法を採用することができるが、例えば、以下のようにし
て形成することができる。即ち、適当な溶剤中に絶縁性
結着樹脂を溶解させた溶液に、電荷輸送能を有する微粒
子(以下「電荷輸送性微粒子」と称することがある)を
分散させ、浸漬コーティング法等により塗布した後、乾
燥させることにより形成することができる。また、予め
電荷輸送性微粒子を、熱硬化性樹脂あるいはシランカッ
プリング剤等の架橋性化合物により被覆し不溶化したも
のを、適当な溶剤中に絶縁性の結着樹脂を溶解させた溶
液に分散させ、浸漬コーティング法等により塗布した
後、乾燥させることにより形成することができる。ま
た、絶縁性の結着樹脂中に電荷輸送性物質を均一に分散
させたものに加熱処理、溶剤処理等を施すことにより電
荷輸送材料の微結晶を析出させることにより形成するこ
ともできる。更に、前記絶縁性ブロックと前記電荷輸送
性ブロックとからなるブロック共重合体又はグラフト共
重合体を用いて形成することもできる。この場合、前記
絶縁性ブロックが前記電気的不活性マトリックスにな
り、電荷輸送性ブロックが前記電荷輸送性ドメインにな
るミクロ相分離状態をなしている。
【0098】前記不均一電荷輸送層における回旋状電荷
輸送路は、前記電荷輸送性ドメイン同士の確率的な接触
に依存する。前記電荷輸送路は、前記確率が高すぎると
回旋状とならずS字性が低下し、一方、前記確率が低す
ぎると該不均一電荷輸送層全体を貫き、連続した電荷輸
送路が形成できなくなり、残留電位の増大を招く。前記
電荷輸送性ドメインの互いの接触は、必ずしも直接であ
る必要はなく、前記電荷輸送性ドメイン間の非常に薄い
絶縁層は、電荷がそのギャップを飛び越えることがで
き、かつそこでの捕獲が無視できるならば、その存在は
許容される。なお、ここでいう、回旋状電荷輸送路と
は、電荷の移動が層厚方向に対して1回以上逆行するよ
うに形成されている電荷輸送路を意味する。
【0099】前記不均一電荷輸送層における相分離構造
としては、前記回旋状電荷輸送路が形成されている限り
特に制限はないが、良好なS字性が得られる点で、前記
電荷輸送性ブロックからなる相が球状又は棒状等の島、
前記絶縁性ブロックからなる相が海、となる海島構造で
ある場合、スピノーダル分解により得られる変調構造で
ある場合、入り組んだラメラ構造である場合、などが好
ましい。
【0100】前記相分離構造は、前記電荷輸送性ブロッ
ク及び前記絶縁性ブロックの種類、分子量等に応じて、
熱力学的に最も安定な構造が存在し、一般的には、Aブ
ロック、Bブロックからなる共重合体では、連結形式に
は依らず、A/B比にのみ依存する。前記A/B比の増
加に伴い、Aが球状ドメインでBがマトリックス、Aが
棒状ドメインでBがマトリックス、A/B交互層、Bが
棒状ドメインでAがマトリックス、Bが球状ドメインで
Aがマトリッス、へと系統的に変化する。
【0101】ただし、前記相分離構造は、前記不均一電
荷輸送層を前記湿式塗布法により形成する場合には、用
いる溶媒の種類、乾燥速度等により制御することができ
る。例えば、前記A/B比が大きく、熱力学的にはBが
球状でAがマトリックスとなる場合であっても、塗布溶
媒としてBの良溶媒でありかつAの貧溶媒である溶媒を
選択すれば、Aが球状でBがマトリックスとなる相分離
構造にすることができる。また、A及びBの両方に良溶
媒である溶媒を用い、急速に溶媒を除去すると、スピノ
ーダル分解状態で凍結した相分離構造(変調構造)を得
ることができる。また、前記A/B比が大きく、熱力学
的にはBが球状でAがマトリックスとなる相分離構造を
とる共重合体に、Bのみと相溶性のある重合体を添加す
ると、Aが球状でBがマトリックスとなる相分離構造に
することができる。
【0102】前記不均一電荷輸送層の厚みとしては、
0.1〜50μmが好ましく、0.2〜15μmがより
好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。前記厚み
は、0.1μm未満であるとS字性が低下する傾向にあ
る。前記厚みの上限値は、前記S字型の光誘起電位減衰
特性を有する電荷輸送層の電荷輸送能により制限され、
応答速度、残留電位等が許容される範囲内で設定される
が、50μm程度であれば問題はない。
【0103】本発明においては、前記不均一電荷輸送層
中に、主たる輸送電荷と逆極性の電荷のみを輸送し得る
化合物を添加することにより、残留電位の低下、繰り返
し安定性の向上等の効果を得ることもできる。また、前
記不均一電荷輸送層中に、電荷輸送性高分子及び/又は
絶縁性高分子を添加することもできる。前記電荷輸送性
高分子を添加する場合、前記相分離性のブロック共重合
体及びグラフト共重合体における前記電荷輸送性ブロッ
クが相溶性を有することが好ましい。また、前記絶縁性
高分子を添加する場合、前記相分離性のブロック共重合
体及びグラフト共重合体における前記絶縁性ブロックが
相溶性を有することが好ましい。
【0104】前記不均一電荷輸送層の前記湿式塗布法に
よる塗布の具体的な方法としては、ブレードコーティン
グ法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコティン
グ法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エ
アーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等
の通常の方法が挙げられる。なお、前記湿式塗布法によ
る塗布に用いる塗布液としては特に制限はないが、均一
溶液、ミセル溶液などが挙げられる。
【0105】なお、本発明においては、前記不均一電荷
輸送層として、特に、製造性、コスト等の点から、電荷
輸送性微粒子として難溶性の光導電性顔料を用い、該顔
料微粒子を絶縁性樹脂中に粒子分散させたものを用いる
こともできる。
【0106】前記光導電性顔料としては、例えば、六方
晶セレン、セレン化カドミウム、その他セレン化合物お
よびセレン合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタ
ン、a-Si、a-SiC等の無機顔料、フタロシアニン系、ス
クアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ
系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩系、チ
アピリリウム塩系等の有機顔料などが挙げられる。これ
らの光導電性微粒子は、1種単独で使用してもよいし、
2種以上を併用してもよい。
【0107】前記絶縁性樹脂としては、例えば、ポリビ
ニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分
変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル
樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、
ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ無水マレイン酸樹脂、シリコ
ーン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらの
絶縁性樹脂は、グラフト、ブロック、ランダム又は交互
共重合体であってもよい。これらの結着樹脂は、1種単
独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】−導電性支持体− 前記導電性支持体としては、電子写真感光体の導電性支
持体として公知のものの中から選択することができ、例
えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼
等の金属類、及び、アルミニウム、チタン、ニッケル、
クロム、ステンレス、金、バナジウム、酸化錫、酸化イ
ンジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィル
ム、ガラス等、あるいは導電性付与剤を塗布又は含浸さ
せた紙、プラスチックフィルム及びガラス等が挙げられ
る。
【0109】前記導電性支持体は、不透明であってもよ
いし、実質的に透明であってもよい。前記導電性支持体
の形状としては、特に制限はなく、例えば、ドラム状、
シート状、プレート状、ベルト状等の適宜の形状が挙げ
られる。
【0110】前記導電性支持体には、目的に応じてその
表面に、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うこと
ができる。前記処理としては、例えば、酸化処理、薬品
処理、着色処理、あるいは砂目立て処理、ホーニング処
理、荒切削処理等の機械的粗面化処理などが挙げられ
る。これらの処理を行うと、該導電性支持体を粗面化す
るのみならず、その上に塗布される層の表面形状をも制
御することができ、露光用光源としてレーザー等の可干
渉光源を用いた場合に問題となる導電性支持体表面及び
/又は積層界面での正反射による干渉縞の発生を防止す
ることができる点で有利である。
【0111】−下引き層− 本発明においては、前記導電性支持体と前記感光層との
間に、一層又は複数層の下引き層を設けてもよい。この
下引き層は、前記感光層の帯電時における、前記導電性
支持体から該感光層への電荷の注入を阻止すると共に、
該感光層を前記導電性支持体に対して一体的に接着保持
させる接着層としての作用、あるいは場合によっては干
渉縞の原因となる光の正反射を防止する作用等を示すと
共に、前記感光層の帯電時における、前記導電性支持体
から該感光層への電荷の注入を阻止する効果を有する。
【0112】前記下引き層としては、公知の材料で形成
することができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル
樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹
脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネー
ト樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニ
リデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−
酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶
性ポリエステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、
ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミ
ン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリア
クリル酸、ポリアクリルアミド等の樹脂及びこれらの共
重合体、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアル
コキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性金属
有機化合物などを用いて形成することができる。なお、
これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以
上を併用してもよい。また、本発明においては、前記下
引き層の材料としては、帯電極性と同極性の電荷のみを
輸送し得る材料を使用してもよい。
【0113】前記下引き層の厚みとしては、0.01〜
10μm程度が適当であり、0.05〜5μmが好まし
い。前記下引き層を塗布形成する場合の塗布方法として
は、例えば、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコ
ーティング法、スプレーコティング法、浸漬コーティン
グ法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティン
グ法、カーテンコーティング法等が挙げられる。
【0114】−電荷発生層− 前記電荷発生層は、電荷発生材料を少なくとも含有して
なる。前記電荷発生材料としては、特に制限はなく、従
来のJ字型の光誘起電位減衰特性を有する積層構造の電
子写真感光体に用いられている公知のものを使用するこ
とができる。具体的には、例えば、非晶質セレン、セレ
ン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合
物及びセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、α−Si、
α−SiC等の無機系光導電性材料、フタロシアニン
系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン
系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム
塩、チアピリリウム塩等の有機のn型顔料及び染料など
が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、
2種以上を併用してもよい。
【0115】本発明においては、これの電荷発生材料の
中でも、デジタル式の電子写真装置に光源として現在好
まれて使用されているLED及びレーザーダイオードの
発信波長である600〜850nmに優れた光感度を有
する点で、フタロシアニン系化合物が特に好ましい。前
記フタロシアニン系化合物としては、例えば、無金属フ
タロシアニン、金属フタロシアニン、及びそれらのダイ
マ−などが挙げられる。
【0116】前記金属フタロシアニンの中心金属として
は、例えば、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、S
i、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb
等が挙げられる。また、これら中心金属の酸化物、水酸
化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物等
も使用できる。具体的には、無金属フタロシアニン、チ
タニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニ
ン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、1,2−ジ
(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン、バナジル
フタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジ
クロロ錫フタロシアニン、銅フタロシアニンなどが挙げ
られる。また、これらのフタロシアニン環に任意の置換
基を含むものも使用することができる。更にまた、これ
らのフタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で
置換されたものも有効である。これらフタロシアニン系
化合物の形態としては、アルモルファス又は公知の総て
の結晶多形のものが使用可能である。これらフタロシア
ニン系化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以
上を併用してもよい。
【0117】これらフタロシアニン系化合物の中でも、
チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニ
ン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、1,2−ジ
(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン、無金属フ
タロシアニン、バナジルフタロシアニン、及びジクロロ
錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有している点
で特に好ましい。
【0118】更にこれらのフタロシアニン系化合物は、
以下に示す結晶形にて用いることが好ましい。即ち、無
金属フタロシアニンにおいてはX型が、バナジルフタロ
シアニンにおいてはα型が、それぞれ好ましい。チタニ
ルフタロシアニンにおいては、CuKαを線源とするX
線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度
(2θ±0.2゜)が、9.2 °、13.1°、20.7°、26.2
°及び27.1°に強い回折ピークを有するもの、少なくと
も7.6 °、12.3°、16.3°、25.3°及び28.7°に強い回
折ピークを有するもの、並びに、少なくとも9.5 °、1
1.7°、15.0°、23.5°及び27.3°に強い回折ピークを
有するものなどが挙げられる。クロロガリウムフタロシ
アニンにおいては、CuKαを線源とするX線回折スペ
クトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.
2゜)が、13.4°及び27.0°に強い回折ピークを有する
もの、並びに、少なくとも7.4 °、16.6°、25.5°及び
28.3°に強い回折ピークを有するものなどが挙げられ
る。ヒドロキシガリウムフタロシアニンにおいては、C
uKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少な
くともブラッグ角度(2θ±0.2゜)が、7.5 °、9.
9 °、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強
い回折ピークを有するものなどが挙げられる。1,2-ジ
(オキソガリウムフタロシアニニル)エタンにおいては、
CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少
なくともブラッグ角度(2θ±0.2゜)が、6.9 °、
13.0°、15.9°、25.6°及び26.1°に強い回折ピークを
有するものなどが挙げられる。ジクロロ錫フタロシアニ
ン結晶においては、CuKαを線源とするX線回折スペ
クトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.
2゜)が、8.3 °、13.7°及び28.3°に強い回折ピーク
を有するもの、少なくとも8.5°、11.2°、14.5°及び2
7.2°に強い回折ピークを有するもの、並びに、少なく
とも9.2 °、12.2°、13.4°、14.6°、17.0°及び25.3
°に強い回折ピークを有するものなどが挙げられる。
【0119】また、殆どのフタロシアニン系化合物が正
孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有してい
るのに対し、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸引基を
有するフタロシアニン類及びアザフタロシアニン類は、
電子を主たる輸送電荷とするn型半導体である性質を有
している。そのため、前記電荷発生材料として、これら
のフタロシアニン系化合物を含む電荷発生層と、ホール
輸送性の不均一電荷輸送層とを、導電性基体上に順次積
層してなるS字型の光誘起電位減衰特性を有する電子写
真感光体は、それを負帯電で使用した場合、高感度でか
つ導電性支持体からのホールの注入が抑えられ、暗減衰
が小さく帯電性が高いという良好な電子写真特性を示す
利点がある。
【0120】また、六方晶セレン、アントラキノン系顔
料、アゾ系顔料及びペリレン系顔料も電荷発生効率に優
れるため、電荷発生材料として好ましく使用できる。レ
ーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小径化で
きるため、更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの
短波長化の検討がなされているが、これらの化合物は、
紫外域から可視域に高い光感度を有するため、短波長レ
ーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いること
ができる。
【0121】前記電荷発生層は、前記電荷発生材料を導
電性支持体上に真空蒸着法により層形成するか、あるい
は、前記電荷発生材料を結着樹脂中に分散乃至溶解して
前記導電性支持体上に塗布し、乾燥することににより形
成することができる。
【0122】前記電荷発生層に結着樹脂を用いる場合、
該結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリ
ビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部
分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル
樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、
ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹
脂、ポリビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これ
らの結着樹脂は、ブロック共重合体、ランダム共重合体
又は交互共重合体であってもよく、また、1種単独で使
用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前
記相分離性のブロック共重合体及びグラフト共重合体
を、前記電荷発生層用の結着樹脂として使用してもよ
い。
【0123】前記電荷発生材料と前記結着樹脂との配合
比(体積比)としては、10:1〜1:10が好まし
く、3:1〜1:1がより好ましい。前記電荷発生材料
の前記結着樹脂に対する配合比が、前記範囲より多い
と、前記湿式塗布法では均質な層を形成することが困難
になり、前記範囲より少ないと、光感度の低下、残留電
位の増大等の障害が起きる。
【0124】前記電荷発生層の厚みとしては、0.05
〜5μm程度が適当であり、0.1〜2.0μmが好ま
しい。前記厚みが、5μmよりも厚いと、一般的に暗電
荷量が増加する傾向にある。このため、暗電荷密度の高
い電荷発生材料を用いる場合、前記厚みを0.3μm以
下にするのが好ましい。
【0125】前記電荷発生層を前記湿式塗布法により形
成する場合における塗布方法としては、特に制限はない
が、例えば、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコ
ーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティ
ング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティ
ング法、カーテンコーティング法、リングコーティング
法等の通常の方法が挙げられる。
【0126】−均一電荷輸送層− なお、本発明においては、均一電荷輸送層を前記不均一
電荷輸送層と併用することができる。前記均一電荷輸送
層としては、当業界でJ字型の光誘起電位減衰特性を有
する積層構造の電子写真感光体における電荷輸送層とし
て知られている公知のものが挙げられる。該均一電荷輸
送層は、例えば、ベンジジン系化合物、トリアリールア
ミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合
物、ジフェノキノン系化合物等の電荷輸送材料を用いて
形成することができる。これらの電荷輸送材料は、1種
単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0127】前記均一電荷輸送層は、例えば、絶縁性樹
脂(例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ
エステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート
等)中に前記電荷輸送材料が均一に分子分散した固溶膜
として形成され、あるいは、それ自身電荷輸送能を有す
る高分子化合物等により形成される。また、前記均一電
荷輸送層は、例えば、セレン、a−Si、a−SiC等
の電荷輸送能を有する無機物質を用いて形成することも
できる。なお、前記電荷輸送能を有する高分子化合物と
しては、例えば、特開平2−304456号公報等に開
示されているような、電荷輸送能を有する基を主鎖に含
む高分子化合物、ポリシリレン等が挙げられる。
【0128】本発明のS字型の光誘起電位減衰特性を有
する電子写真感光体における均一電荷輸送層としては、
特に製造上、前記電荷輸送能を有する高分子化合物を用
いるのが好ましい。前記不均一電荷輸送層と前記均一電
荷輸送層とを積層して形成する場合、該均一電荷輸送層
に前記電荷輸送性低分子化合物を用いると、該電荷輸送
性低分子化合物が前記不均一電荷輸送層中に混入してし
まい、前記不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリック
スの主たる電荷に対する絶縁性が低下することによりS
字性が損なわれたり、あるいは前記不均一電荷輸送層中
に混入した前記電荷輸送性低分子が不均一電荷輸送層中
で電荷トラップとなり、残留電位の増大、輸送能の低下
及び光感度の低下等の障害が発生する。この問題は、特
に前記湿式塗布法により、各層を形成する場合に顕著に
なる(もちろん、これらの問題は、上層の塗布溶剤とし
て下層を溶解乃至膨潤し難いものを選択する、あるい
は、前記不均一電荷輸送層を架橋硬化性のものとし、上
層塗布溶剤による溶解乃至膨潤が起こらないようにする
等により、回避することが可能である)。
【0129】ところが、上述したように高分子同士は相
溶することなく相分離を起こすことが一般的であること
が知られており、前記均一電荷輸送層として、前記電荷
輸送能を有する高分子化合物を用いた場合、前記不均一
電荷輸送層樹脂と相溶することなく相分離するため、上
記のような混入の問題は殆ど発生せず、材料及び製造方
法の選択に当たっての制約が解消されるという利点を有
する。
【0130】更に、前記均一電荷輸送層に用いる、前記
電荷輸送能を有する高分子化合物としては、下記一般式
(4)で表される構造の少なくとも1種を繰り返し単位
として有する電荷輸送性樹脂が、高い電荷輸送能を有
し、かつ可撓性、強度等の機械的特性にも優れているの
で特に好ましい。 一般式(4)
【0131】
【化13】
【0132】一般式(4)中、A1 及びA2 は、置換又
は未置換のアリール基を表す。X1は、芳香族環構造を
有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基
を表す。X2 及びX3 は、置換又は未置換のアリーレン
基を表す。Lは、分枝若しくは環構造を含んでもよい2
価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
m及びnは、0又は1を表す。
【0133】なお、前記均一電荷輸送層中には、電荷輸
送性マトリックスに囲まれるような電気的不活性な領域
が存在してもよい。例えば、表面摩擦力の低減、磨耗の
低減、表面への異物付着の低減等を目的として低表面エ
ネルギーの絶縁性粒子等を含有させることができる。ま
た、前記均一電荷輸送層には、電荷輸送能の向上等を目
的に、電荷輸送性微粒子などを添加することもできる。
【0134】また、電荷輸送性共重合体の中でも、電荷
輸送性ブロックと絶縁性ブロックとが相溶性であるもの
は、前記均一電荷輸送層として有効に利用できる。更
に、上述したように、前記均一電荷輸送層中には、電荷
輸送性マトリックスに囲まれるような電気的不活性な領
域が存在してもよいため、本発明においては、これらの
中でも、前記電荷輸送性ブロックがマトリックスとな
り、前記絶縁性ブロックがドメインとなるミクロ相分離
状態であるものも、前記均一電荷輸送層として用いるこ
とができる。
【0135】本発明の電子写真感光体において、前記均
一電荷輸送層が最表層となる場合には、機械的強度の観
点から、該均一電荷輸送層を架橋硬化性材料を用いて形
成するのが好ましい。前記均一電荷輸送層の厚みとし
て、5〜50μmが好ましく、7〜40μmがより好ま
しく、10〜30μmが特に好ましい。前記均一電荷輸
送層を前記湿式塗布方法により塗布形成する場合、該塗
布の方法としては、特に制限はなく、ブレードコーティ
ング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーテ
ィング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング
法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティン
グ法、リングコーティング法等の通常の方法が挙げられ
る。また、セレン等の気相成膜可能なものを用いて前記
均一電荷輸送層を形成する場合には、真空蒸着法等によ
り直接成膜することもできる。
【0136】本発明において、前記不均一電荷輸送層及
び前記均一電荷輸送層を含む感光層全体の厚みとして
は、5〜50μmが適当であり、10〜40μmが好ま
しく、15〜35μmがより好ましい。
【0137】前記電荷輸送層が、前記電荷発生層と露光
光源との間に存在する場合、実効の光感度の低下を防ぐ
上で、該電荷輸送層は、露光波長の光に対し事実上透明
であることが好ましい。具体的には、該電荷輸送層にお
ける露光に用いる光の透過率は50%以上であるのが好
ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以
上であるのが特に好ましい。但し、低感度での使用が望
まれる場合には、露光波長の光に対し吸収のある物質を
添加し、実効的な光感度を調製することもできる。
【0138】−保護層− 本発明の電子写真感光体は、前記感光層の上に、必要に
応じて保護層を有していてもよく、該保護層は、帯電部
材から発生するオゾンや酸化性ガス等、紫外光等の化学
的ストレス、あるいは現像剤、紙、クリーニング部材等
との接触に起因する機械的ストレス、などから感光層を
保護し、該感光層の実質の寿命を改善するために有効で
ある。特に、薄膜の電荷発生層を上層に用いる層構成を
有する電子写真感光体において、その効果が顕著であ
る。
【0139】前記保護層は、前記導電性材料を適当な結
着樹脂中に含有させて形成することができる。前記導電
性材料としては、特に制限はないが、例えば、ジメチル
フェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、酸
化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金属
酸化物等の材料を用いることができる。前記結着樹脂と
しては、特に制限はないが、例えば、ポリアミド、ポリ
ウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチ
レン、ポリアクリルアミド、シリコーン樹脂、メラミン
樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂を
用いることができる。また、アモルファスカーボン等の
半導電性無機膜も前記保護層として用いることができ
る。
【0140】これらの抵抗制御型の保護層の電気抵抗値
としては、109 〜1014Ω・cmの範囲内にあること
が必要である。前記電気抵抗値が、前記数値範囲の上限
を超えると残留電位が増加し、他方、前記数値範囲の下
限値を下回ると沿面方向での電荷漏洩が無視できなくな
り、解像度の低下が生じてしまう。前記保護層の厚みと
しては、0.5〜20μmが適当であり、1〜10μm
が好ましい。
【0141】本発明においては、前記保護層を設けた場
合、必要に応じて、前記感光層と該保護層との間に、該
保護層から前記感光層への電荷の漏洩を阻止するブロッ
キング層を設けることができる。このブロッキング層と
しては、保護層の場合と同様に公知のものを用いること
ができる。
【0142】本発明の電子写真感光体においては、電子
写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは、
光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、各層又は
最上層中に、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を添加
することができる。これらの添加剤は、単に添加混合す
る以外に、前記相分離性のブロック共重合体及びグラフ
ト共重合体における絶縁性ブロックの構成成分として組
み込んでもよい。
【0143】前記酸化防止剤としては、公知のものを用
いることができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒン
ダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノ
ン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの
誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられ
る。前記光安定剤としては、公知のものを用いることが
でき、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、
ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導
体、及び光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動
により失活し得る電子吸引性化合物又は電子供与性化合
物等が挙げられる。
【0144】更に、本発明においては、表面磨耗の低
減、転与性の向上、クリーニング性の向上等を目的とし
て、最表面層にフッ素樹脂等の低表面エネルギーの絶縁
性粒子を分散させてもよい。
【0145】−電子写真装置− 本発明の電子写真装置は、前記本発明の電子写真感光体
を搭載することを必須とする外は、電子写真法を用いる
ものであれば特に制限はなく、公知の電子写真装置と同
様の構成にすることができるが、特にデジタル処理され
た画像信号に基づき露光を行う電子写真装置が好まし
い。前記デジタル処理された画像信号に基づき露光を行
う電子写真装置とは、レーザー又はLED等の光源を用
い、2値化又はパルス幅変調や強度変調を行い多値化さ
れた光により露光を行う電子写真装置を意味し、その例
としては、LEDプリンター、レーザープリンター、レ
ザー露光式デジタル複写機などが挙げられる。
【0146】また、本発明の電子写真装置は、現像後の
感光体の初期化あるいは電子写真特性の安定化等の目的
で、画像形成用の露光光源とは別に、光源を併用するこ
とができ、その光源の発光域としては、少なくとも前記
電荷発生層まで光が届く方が好ましい。
【0147】また、本発明の電子写真装置においては、
現像後の感光体の初期化、即ち除電を目的として、画像
形成用の露光手段とは別に、露光手段を併設することが
好ましい。該除電用の露光光としては、電荷輸送層に吸
収されるものであってもよいし、吸収されないものであ
ってもよいが、少なくとも電荷発生層での光電荷発生を
生起することが必要である。なお、前記電荷輸送層が、
電荷発生能を有しかつ輸送電荷と逆極性の電荷を輸送し
得ない場合には、除電用の露光光としては、電荷輸送層
の感光域を避ける方が好ましい。即ち、電荷発生能を有
しかつ輸送電荷と逆極性の電荷を輸送し得ない電荷輸送
層を用いた場合に、電荷輸送層の感光域にある除電光を
使用すると、電荷輸送層で電荷が光発生し、該電荷の
内、輸送電荷と逆極性の電荷が輸送されず蓄積されるた
め、電気特性の不安定化を招く。ただし、電荷輸送層で
電荷発生があっても、その発生電荷を上回る電荷が電荷
発生発生層で発生されれば、電荷輸送層で発生した輸送
電荷と逆極性の電荷は、電荷発生層から電荷輸送層に注
入される電荷によって中和されるため、上記の問題は顕
在化しない。
【0148】本発明の電子写真装置の好ましい一例を図
7に模式的に示した。この電子写真装置は、デジタルレ
ーザープリンターであり、この電子写真感光体には、本
発明の電子写真感光体による感光体ドラム6の周りに露
光用光源(赤色LED)7、帯電用スコロトロン8、露
光用レーザー光学系9、現像器10、転写用コロトロン
11、及びクリーニングブレード12がプロセスの順序
に順次配置されている。露光用レーザー光学系9は、発
信波長780nmの露光用レーザーダイオードを備えて
おり、デジタル処理された画像信号に基づき発光する。
発光したレーザー光は、ポリゴンミラーと複数のレン
ズ、ミラー等とにより走査されながら感光体ドラム6を
露光するよう設計されている。なお、ここで13は用紙
を示す。
【0149】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明するが、
本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではな
い。
【0150】<合成例1> 反応性重合開始剤:4,4' −アゾビス(4−シアノ吉
草酸クロリド)の合成 塩化チオニル220mlを氷冷し、4,4' −アゾビス
(4−シアノ吉草酸)100gを徐々に加えた。30℃
で6時間加熱し、過剰の塩化チオニルを減圧下で留去し
た。残留物をクロロホルムより再結晶して42gの4,
4' −アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)結晶を得
た。
【0151】<合成例2> 反応性官能基を両末端に有する電荷輸送性高分子(電荷
輸送性ブロック)の合成 N,N’−ビス(m,p−ジメチルフェニル)−N,
N’−ビス[p−(2−メトキシカルボニルエチル)フ
ェニル]−[3,3' −ジメチル−1,1’−ビフェニ
ル」−4、4’−ジアミンと過剰量のエチレングリコー
ルとを、テトラブトキシチタンを触媒とし反応させ、
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[p−(2−メ
トキシカルボニルエチル)フェニル]−[1,1’−ビ
フェニル]−4,4’−ジアミンの両末端のメトキシ基
を2−ヒドロキシエトキシ基で置換した後、脱エチレン
グリコールによる重縮合反応により、両末端に反応性官
能基(ヒドロキシ基)を有する電荷輸送性ポリエステル
を得た。なお、該ポリエステルの分子量は反応温度及び
反応時間により制御することができ、およそ2,000
〜200,000の範囲で任意の重要平均分子量のもの
を合成することが可能である。
【0152】この時に得られた電荷輸送性高分子(電荷
輸送性ブロック)の分子量を、GPC装置(TOYO SODA社
製 HLC-802A、Colume:TSKgel Multipore HXL-M)でスチ
レン換算した場合の分子量として測定した。その結果、
重量平均分子量(Mw)は2.01×105であり、数
平均分子量(Mn)は4.32×104であり、Mw/
Mnは4.65であった。分子量5,000以上の重量
存在比率は72%であった。
【0153】<合成例3> 低分子をカットした電荷輸送性高分子(電荷輸送性ブロ
ック)の合成 前記合成例2で得られた電荷輸送性材料50gを室温で
THF250ml中に溶解し、これにメチルエチルケト
ン2500mlを滴下した。1時間放置後に上ずみ液を
デカンテーションし、ポリマー残渣を得た。得られた残
渣にTHF250mlを加えてこれを溶解し、n−ヘキ
サン2500ml中に滴下して、ポリマーを析出させ
た。溶媒をろ別後に得られたポリマーを減圧乾燥して目
的とするポリマーを得た。
【0154】この時に得られた電荷輸送性高分子(電荷
輸送性ブロック)の分子量を、GPC装置(TOYO SODA社
製 HLC-802A、Colume:TSKgel Multipore HXL-M)でスチ
レン換算した場合の分子量として測定した。その結果、
重量平均分子量(Mw)は2.16×105であり、数
平均分子量(Mn)は1.12×105であり、Mw/
Mnは1.93であった。分子量5,000以上の重量
存在比率は96.5%であった。
【0155】<合成例4> 構造式(1)で表される電荷輸送性ブロック共重合体の
合成 前記合成例3で得られた両末端にヒドロキシ基を有する
電荷輸送性重合体72gとトリエチルアミン1.8gを
トルエン140mlに溶解し、10℃に冷却した。ここ
に、前記合成例1で得られた4,4’−アゾビス(4−
シアノ吉草酸クロリド)9.5gをトルエン25mlに
懸濁した液を滴下した。室温で30分間反応させた後に
30℃に加温し、更に6時間反応させた。この反応液を
メタノールに滴下し、1時間撹拌した後に濾別した。こ
の再沈殿操作を更に2回繰り返した。残渣を乾燥して末
端にアゾ型重合開始剤を有する電荷輸送性重合体68g
を得た。 構造式(1)
【0156】
【化14】
【0157】この末端にアゾ型重合開始剤を有する電荷
輸送性重合体1.65g、tert−ブチルメタクリレート
2.7gをトルエン39.2mlに溶解し、窒素置換し
た後に65℃で95時間加熱した。この溶液をn−ヘキ
サン470mlに滴下し、1時間撹拌した後に濾別し
た。得られた固体をトルエン39.2mlに溶解し、前
記構造式(1)の電荷輸送性ブロック共重合体を溶解し
ない溶媒であるシクロヘキサン392mlへ滴下し、1
時間撹拌した。溶解成分から目的とする電荷輸送性重合
体を含有しない電荷輸送性ブロック共重合体2.2gを
得た。得られた電荷輸送性ブロック共重合体の1H−N
MRスペクトルの両ブロック固有のプロトンに対応する
ピークの積分比から、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロ
ックとの重量組成比は、およそ3:2と計算された。こ
のときに得られた電荷輸送性ブロック共重合体の分子量
を既述のGPC装置でスチレン換算した場合の分子量と
して測定した。その結果、重量平均分子量(Mw)は
3.68×105 であり、数平均分子量(Mn)は1.
94×105 であり、(Mw/Mn)は1.90であっ
た。分子量5,000以上の成分の重量存在比率は9
7.4%であった。
【0158】<合成例5>前記合成例3で得られた電荷
輸送性ブロック共重合体の代わりに前記合成例2で得ら
れた電荷輸送性ブロック共重合体を用いた外は、前記合
成例4と同様にしてブロック共重合体を合成した。
【0159】(実施例1) −電荷発生層の形成− 次に、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおい
て、ブラッグ角度(2θ±0.2°)、8.3°、1
3.7°及び28.3°に強い回折ピークを有するジク
ロロ錫フタロシアニン結晶4重量部を、ポリビニルブチ
ラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)2重
量部及びクロロベンゼン100重量部と混合し、ガラス
ビーズと共にペイントシューク法に従って2時間分散処
理することにより、電荷発生層用液を調製した。こうし
て得られた電荷発生層用液を浸漬コーティング法に従っ
て、ドラム状のアルミニウム製支持体上に浸漬塗布し
た。その後、115℃で10分間加熱乾燥し、厚みが
0.5μmの電荷発生層を前記アルミニウム製支持体上
に形成した。
【0160】−不均一電荷輸送層の形成− 次に、前記合成例4で得られた共重合体10重量部をシ
クロヘキサノン90重量部に溶解させた溶液を、前記電
荷発生層上に浸漬コーティング法にて塗布した後、11
5℃で10分間加熱乾燥させて、膜厚3μmの不均一電
荷輸送層(S字化電荷輸送層)を形成した。この不均一
電荷輸送層(S字化電荷輸送層)をルテニウム酸染色法
による透過型電子顕微鏡で観察したところ、変調構造と
思われる相分離構造が観測された。また、相分離構造の
スケールはおよそ0.02μm、電荷輸送性ブロックの
相の体積比率はおよそ60%であった。また、この電荷
輸送性ブロックと同一構造の電荷輸送性高分子の電荷移
動度は、5V/μmの電界強度下で、5×10-5cm 2
/Vsであった。
【0161】−均一電荷輸送層の形成− 次に、前記合成例2と反応時間を変えた外は同様の方法
で合成した高分子電荷輸送材料である、重量平均分子量
が12万の下記構造式(2)で表される繰り返し単位を
有する電荷輸送性ブロック共重合体15重量部を、クロ
ロベンゼン85重量部に溶解した均一電荷輸送層用塗布
液を、ブレードコーティング法に従って塗布し、135
℃で60分間加熱乾燥させて、厚みが15μmの均一電
荷輸送層を前記不均一電荷輸送層上に形成した。 構造式(2)
【0162】
【化15】
【0163】以上により、図4に示す層構成を有する電
子写真用感光体を製造した。得られた電子写真用感光体
の特性及び耐久性について、常温常湿(20℃、40%
RH)の環境下で、一部改造を加えた静電複写紙試験装
置(エレクトロスタティックアナライザーEPA−81
00、川口電機製作所社製)を用いて評価した。具体的
には、コロナ放電電圧を調整し、前記電子写真感光体の
表面を−1300Vに帯電させた後、干渉フィルターを
通し、750nmに単色化したハロゲンランプ光を露光
光源として光減衰特性を測定したところ、図2に示すS
字型の光誘起電位減衰を示した。このときの前記比(E
50%/E10%)の値は1.59であり、残留電位は
−172Vであった。また、耐久性について上記と同じ
条件での帯電・除電を10万回繰り返した後の帯電電
位、除電後の残留電位は、それぞれ−1290V、−1
86Vであった。更に、得られた電子写真感光体を用い
て初期の印字品質及び10万枚繰り返し印字後の印字品
質について常温常湿(20℃、40%)の環境下で、A
−Color 935(富士ゼロックス(株)製)に搭
載し、評価した。その結果、印字初期及び10万枚印字
後のいずれにおいても画質に変化は観られなかった。実
施例1の電子写真感光体における、露光量と表面電位と
の関係を図8に示した(実線で示した)。
【0164】(比較例1)実施例1において、前記合成
例4で得られた共重合体を前記合成例5で得られた電荷
輸送性ブロック共重合体に代えた外は、実施例1と同様
にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様な方法
でその電子写真特性で評価したところ、図2に示すS字
型の光誘起電位減衰曲線を示した。この時の前記比(E
50%/E10%)の値は1.98であった。初期の残
留電位は−296Vであり、帯電・除電を10万回繰り
返した後の帯電電位、除電後の残留電位は、それぞれ−
1285V、−452Vであった。比較例1の電子写真
感光体における、露光量と表面電位との関係を図8に示
した(点線で示した)。
【0165】このときに得た電荷輸送性ブロック共重合
体の分子量を既述のGPC装置でスチレン換算した場合
の分子量として測定した。その結果、重量平均分子量
(Mw)は3.40×105 であり、数平均分子量(M
n)は7.58×104 であり、(Mw/Mn)は4.
49であった。分子量5,000以上の成分の重量存在
比率は76%であった。更に、得られた電子写真感光体
を用いて実施例1と同様に初期の印字品質及び10万枚
繰り返し印字後の印字品質について評価したところ、印
字初期においては良好であったが、10万枚印字後にお
いてはベタ黒画像の濃度の低下が観られた。
【0166】
【発明の効果】本発明によると、前記従来における諸問
題を解決することができる。また、本発明によると、電
荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックとを有する電荷輸送
性ブロック共重合体を含有し、デジタル式の電子写真法
に好適であり、高性能かつ高寿命で実用性能に優れた電
子写真感光体を提供することができる。また、本発明に
よると、該電子写真感光体を用いることにより、耐久性
に優れ、高品質な画質を形成できるデジタル式の電子写
真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、J字型の光誘起電位減衰特性を有する
電子写真感光体における、露光量と表面電位との関係を
示すグラフである。
【図2】図2は、S字型の光誘起電位減衰特性を有する
電子写真感光体における、露光量と表面電位との関係を
示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の電子写真感光体の一例を示す
断面概略説明図である。
【図4】図4は、本発明の電子写真感光体の一例を示す
断面概略説明図である。
【図5】図5は、本発明の電子写真感光体の一例を示す
断面概略説明図である。
【図6】図6は、本発明の電子写真感光体の一例を示す
断面概略説明図である。
【図7】図7は、本発明の電子写真装置の一例を示す概
略説明図である。
【図8】図8は、実施例1及び比較例1の電子写真感光
体における、露光量と表面電位との関係を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
1 導電性支持体 2 電荷発生層 3 不均一電荷輸送層(S字型光誘起電位減衰特性を
示す電荷輸送層) 4 均一電荷輸送層 6 感光体ドラム 7 露光用光源(赤色LED) 8 帯電用スコロトロン 9 露光用レーザー光学系 10 現像器 11 転写用コロトロン 12 クリーニングブレード 13 用紙
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 康浩 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックと
    を少なくとも有する電荷輸送性ブロック共重合体を含有
    する感光層を有してなり、該電荷輸送性ブロック共重合
    体の全量に対する、分子量が5,000以上の成分の量
    が80重量%以上であることを特徴とする電子写真感光
    体。
  2. 【請求項2】 電荷輸送性ブロックの全量に対する、分
    子量が5,000以上の成分の量が80重量%以上であ
    る請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 電荷輸送性ブロック共重合体における、
    分子量が20,000以上である成分が、該電荷輸送性
    ブロック共重合体全量に対する重量%の最高値を有する
    請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 電荷輸送性ブロック共重合体の重量平均
    分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/
    Mn)が3以下である請求項1から3のいずれかに記載
    の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】 電荷輸送性ブロックが、繰り返し単位と
    して、下記一般式(1)で表される構造及び下記一般式
    (2)で表される構造の少なくとも1つを含む請求項1
    から4のいずれかに記載の電子写真感光体。 一般式(1) 【化1】 一般式(1)中、Ar1及びAr2は、置換又は未置換の
    アリール基を表す。X1は、芳香族環構造を有する2価
    の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。X
    2及びX3は、置換又は未置換のアリーレン基を表す。L
    1は、分枝構造若しくは環構造を含んでいてもよい2価
    の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。m
    及びnは、0又は1を表す。 一般式(2) 【化2】 一般式(2)中、Ar3及びAr4は、置換又は未置換の
    アリール基を表す。Yは、芳香族環構造を有する3価の
    炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
  6. 【請求項6】 一般式(1)におけるX1が、置換又は
    未置換のビフェニレン基である請求項5に記載の電子写
    真感光体。
  7. 【請求項7】 絶縁性ブロックが、繰り返し単位とし
    て、下記一般式(3)で表される構造の少なくとも1つ
    を含む請求項1から6のいずれかに記載の電子写真感光
    体。 一般式(3) 【化3】 一般式(3)中、R1〜R3は、水素原子、ハロゲン原
    子、又は、置換若しくは未置換のアルキル基若しくはア
    リール基を表す。R4は、水素原子、ハロゲン原子、又
    は、置換若しくは未置換のアルキル基、アリール基、ア
    ルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基若しくはアルコ
    キシカルボニル基を表す。
  8. 【請求項8】 電荷輸送性ブロック共重合体が、末端に
    反応性官能基を有する電荷輸送性高分子と、該反応性官
    能基と結合反応し得る官能基を有する低分子重合開始剤
    とから得られた、末端に重合開始基を有する電荷輸送性
    高分子開始剤を用いて、絶縁性モノマーを重合させてな
    る請求項1から7のいずれかに記載の電子写真感光体。
  9. 【請求項9】 電荷輸送性高分子又は電荷輸送性高分子
    開始剤が、再沈殿化処理により低分子量成分が除去され
    てなる請求項8に記載の電子写真感光体。
  10. 【請求項10】 感光層が、電荷発生材料を含有する電
    荷発生層と、電荷輸送性ブロック共重合体を含有する電
    荷輸送層とを有する請求項1から9のいずれかに記載の
    電子写真感光体。
  11. 【請求項11】 電荷輸送層が2層以上からなり、該電
    荷輸送層の少なくとも1層が電荷輸送性ブロック共重合
    体を含有する請求項10に記載の電子写真感光体。
  12. 【請求項12】 電荷発生材料としてフタロシアニン系
    化合物を含有する請求項10又は11に記載の電子写真
    感光体。
  13. 【請求項13】 帯電電位を50%減衰させるのに要す
    る露光量(E50%)と10%減衰させるのに要する露
    光量(E10%)との比(E50%/E10%)が5未
    満である請求項1から12のいずれかに記載の電子写真
    感光体。
  14. 【請求項14】 請求項1から13のいずれかに記載の
    電子写真感光体と、デジタル処理された画像信号に基づ
    き露光を行う露光手段とを少なくとも備えたことを特徴
    とする電子写真装置。
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JP2004093810A (ja) * 2002-08-30 2004-03-25 Canon Inc 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
CN109557776A (zh) * 2017-09-27 2019-04-02 富士施乐株式会社 电子照相感光体、处理盒和图像形成装置

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