JP2001089846A - 低抵抗ito薄膜及びその製造方法 - Google Patents
低抵抗ito薄膜及びその製造方法Info
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Abstract
抗ITO薄膜とその製造方法等を提供する。 【解決手段】 パルス・レーザー・蒸着法を用いて結晶
性基板(例えば、YSZ単結晶基板)上に基板温度50
0〜1000℃においてITO膜を形成する。
Description
の表示デバイスや太陽電池等の透明電極として使用でき
る透明電極とその製造方法等に関する。
xide)、ATO(Antimony doped TinOxide)、AZO
(Aluminum doped Zinc Oxide)などがあり、液晶ディ
スプレイには主にITOが、太陽電池には主にATOが
用いられている。しかし、液晶ディスプレイの大型化と
高精細化が進むに連れて、ITOの抵抗率を低く抑える
必要性が生じている。例えば、STN(Super Twisted
Nematic)型液晶ディスプレイの場合、透明電極は信号
電極を兼ねており、ストライプ状の形状をしている。デ
ィスプレイの大型化はストライプが長くなることを意味
し、高精細化はストライプが細くなることを意味する。
このため、ストライプ端点間の抵抗値が大きくなり、電
圧降下を生じるので、液晶分子の適切なスイッチングが
困難になる。また例えば、TFT(Thin Film Transist
or)型液晶ディスプレイの場合、信号電極には金属材料
を用いるのが通常であるが、素子構成の単純化により製
造工程を単純化し、ひいては製造コストを低減するため
に、信号電極にも透明電極が用いられ始めている。しか
しこの場合にもディスプレイが大型化し、または、高精
細化するに連れて電極端点間の抵抗値が増大するので、
現在のところ対角11インチ以下のディスプレイに対し
てのみ、透明電極を信号電極として用いることしかでき
ない。
大の課題である。効率の向上に寄与する主な要素は、
材料に入射した光エネルギーの有効な閉じこめ、光生
成キャリアの有効な収集と光起電力効果への寄与の増
大、光生成キャリアの再結合損失の軽減、直列抵抗
損失の軽減、電圧因子損失の軽減、より広い光エネ
ルギースペクトルの収集などがある。透明電極の電気抵
抗は電池の直列抵抗損失として作用し、特に大面積の素
子に対してはその変換効率に大きく影響を与える。そこ
で、太陽電池の場合にも、透明電極の抵抗率を低下させ
ることが求められている。
急速な発展とともに、様々な成膜法によって低抵抗化の
試みがなされてきた。例えば石橋らは、DCスパッタリ
ング法においてプラズマインピーダンスを低下させ、低
スパッタ電圧で成膜することにより、基板温度200℃
において、1.5×10-4Ωcm以下のITO膜の形成
に成功した(S.Isbibashi,Y.Higuchi,Y.Ota,and K.Naka
mura,J.VaC.Sci.Technol.A8(1990)1403)。また、カソ
ードの磁場強度を140Gから480Gに増加させるこ
とにより、プラズマインピーダンスが下がるため、放電
電流を一定に保ったまま、スパッタ電圧を540Vから
330Vに下げることが可能で、それに伴い抵抗率が低
下することが報告されている(Y.Shigesato,S.Takaki,a
nd T.Haranoh,J.Appl.Phys.,71(7)(1992)3356)。高電
圧でスパッタする場合には、高エネルギー粒子が存在
し、これらの粒子の照射を受けながら薄膜成長が進行す
るため、膜にはより大きな均一歪みと圧縮応力が導入さ
れる。これに対して低電圧でスパッタした場合には高エ
ネルギー粒子が減るため、ITO膜の結晶性が向上し、
ドナーを捕獲する欠陥が減少してキャリア密度が増加す
るとともに、格子欠陥密度が低下、中性散乱中心の密度
が減少して移動度が上がり、電気抵抗率が低下すると考
えられている(重里有三、「透明導電膜の技術」、112
頁、オーム社、1999年)。
ーイオンビーム援用蒸着装置を開発し、抵抗率8.4×
10-5ΩcmのITO膜の作製に成功した(南英治、勝
俣裕、福間剛士、松尾二郎、山田公、第46回応用物理
学関係連合講演会、講演予稿集、第二分冊、665頁、199
9年)。1×10-4Ωcm以下の抵抗率はこれまでにも
何度か報告されているが、再現性があるものとしては初
めてのものである。酸素クラスターイオンビーム援用蒸
着法は、薄膜形成中に酸素クラスターイオンを援用照射
することで薄膜中に酸素を導入し、酸化物薄膜を形成す
る技術であって、例えば平均クラスターサイズ1000
個の酸素クラスターイオンを10keVで加速して基板
に照射する。このとき、酸素分子一個当たりの運動エネ
ルギーは10eVに過ぎないので薄膜に損傷を与えるこ
とがなく、高品質のITO膜が得られて、抵抗率が低下
する。
829号公報において、直流スパッタリング法、高周波
スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法を用
い、アルゴンガスでなくキセノンやクリプトンガスを用
いて結晶基板上に成膜することによって、1×10-4Ω
cmを下回る抵抗率を有するITO薄膜を形成する方法
を提案している。
スパッタ法は、高エネルギー粒子数を低減するため、薄
膜の損傷を小さくする点で優れているが、高エネルギー
粒子を完全に取り除くことはできておらず、その結果、
1×10-4Ωcm以下の低抵抗率は実現していない。ま
た、大電流酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法は、
酸素分子一個当たりの運動エネルギーが小さいため、薄
膜に損傷が起こらず、従来の璧であった1×10-4Ωc
mを下回る抵抗率を再現させる点で極めて優れている
が、大面積成膜が実現しておらず、実用に至っていな
い。さらに、特開平7−262829号公報記載の方法
では、成膜法としてスパッタリング法を用いているの
で、清浄なプロセスでなくターゲット物質がチャンバー
壁等に付着してダストの原因となりやすいなどの問題が
あり、酸素圧を高く設定できないので組成制御性に限界
があり、高真空とできないので酸素欠損を有効に作りに
くく、膜厚の制御性が悪いので原子層成長モードで成膜
を行うことが困難である。
のであり、10-4Ωcmオーダー以下の低抵抗ITO薄
膜とその製造方法の提供等を目的とし、特に1×10-4
Ωcm未満(10-5Ωcmオーダー)の抵抗率を有する
低抵抗ITO薄膜とその製造方法の提供等を目的とす
る。
する。
ー・蒸着法を用いて結晶性基板上に基板温度500〜1
000℃においてITO膜を堆積させることを特徴とす
る低抵抗ITO膜の製造方法。
配列が、In2O3の結晶構造と適合するものであること
を特徴とする構成1記載の低抵抗ITO薄膜の製造方
法。
晶、表面にc軸配向性のZnO薄膜を形成した基板、及
びサファイア基板のうちから選ばれる一であることを特
徴とする構成2記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
℃以上1500℃以下の温度域で熱処理することによっ
て基板表面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶
基板を用いることを特徴とする構成3に記載の低抵抗I
TO薄膜の製造方法。
YSZ単結晶基板上に、均一な膜厚を有するITO膜を
形成することを特徴とするITO膜の製造方法。
ャル成長させることを特徴とする構成2乃至5のいずれ
かに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
とを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の低抵抗
ITO薄膜の製造方法。
基板、又はシリコン単結晶基板であることを特徴とする
構成2記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
O3の焼結体もしくは圧粉体、高純度In金属、高純度
ITOの焼結体もしくは圧粉体、高純度In−Sn合金
のうちから選ばれる材料からなることを特徴とする構成
1乃至8のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方
法。
-3〜1×10-7Torrとすることを特徴とする構成1
乃至9のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方
法。
つ、基板を自転させて成膜を行うことを特徴とする構成
1乃至10のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造
方法。
さくし、酸化インジウムを一格子ずつ順次堆積させる原
子層成長モードで成膜を行うことを特徴とする構成1乃
至11のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方
法。
抗率を有することを特徴とする構成1乃至12のいずれ
かに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
含有率が2.8〜10.5モル%以下であることを特徴
とする構成1乃至13のいずれかに記載の低抵抗ITO
薄膜の製造方法。
C希土型In2O3結晶又はコランダム型In2O3結晶で
あることを特徴とする構成1乃至14のいずれかに記載
の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
タリング法、酸素クラスタービーム援用蒸着法、CVD
法、有機金属CVD法、有機金属CVD−原子層積層
法、及びMBE(分子線エピタキシー)法のうちから選
ばれる成膜法を用いて結晶性基板上に形成することを特
徴とする低抵抗ITO薄膜の製造方法。
℃においてITO膜を堆積させることを特徴とする構成
16記載の低抵抗ITO膜の製造方法。
性配列が、In2O3の結晶構造と適合するものであるこ
とを特徴とする構成16又は17に記載の低抵抗ITO
薄膜の製造方法。
晶、表面にc軸配向性のZnO薄膜を形成した基板、及
びサファイア基板のうちから選ばれる一であることを特
徴とする構成18記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
0℃以上1500℃以下の温度域で熱処理することによ
って基板表面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結
晶基板を用いることを特徴とする構成19に記載の低抵
抗ITO薄膜の製造方法。
シャル成長させることを特徴とする構成18乃至20の
いずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
晶基板、又はシリコン単結晶基板であることを特徴とす
る構成18記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
抗率を有することを特徴とする構成16乃至22のいず
れかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
含有率が2.8〜10.5モル%以下であることを特徴
とする構成16乃至23のいずれかに記載の低抵抗IT
O薄膜の製造方法。
C希土型In2O3結晶又はコランダム型In2O3結晶で
あることを特徴とする構成16乃至24のいずれかに記
載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
[(キャリア密度/ITO膜中に含まれるSnの密度
(個/cm3)×100]で定義されるSnドーパント
の活量が、80%以上である低抵抗ITO膜。
抗率を有することを特徴とする構成26記載の低抵抗I
TO薄膜。
に記載のITO薄膜の製造方法を用いて、結晶性基板上
にITO膜を堆積させたITO膜付き基板。
施されている構成28記載のITO膜付き基板。
低抵抗ITO薄膜を有するITO膜付き基板。
施されている構成30記載のITO膜付き基板。
用い結晶性基板上に所定の基板温度でITO薄膜を形成
しているので、1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有する
低抵抗ITO薄膜が得られる。パルス・レーザー・蒸着
法は、極めて清浄なプロセスであり、酸素圧を高く設定
することができ、膜厚の制御性が良い点で優れているの
で、抵抗率、移動度、キャリア密度等の特性に優れ、結
晶性が高く、均一な膜厚を有する低抵抗ITO薄膜を実
現できる。なお、パルス・レーザー・蒸着法において
は、基板を自転させることや、レーザービームを並べる
等の手段によって、大面積化が図られる。
D法、有機金属CVD−原子層積層法、又はMBE(分
子線エピタキシー)法を用い結晶性基板上に所定の基板
温度でITO薄膜を形成しているので、1×10-4Ωc
m未満の抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。
また、大面積成膜を実現でき、工業的に有利である。た
だし、MBE法は大面積成膜は難しい。
低抵抗ITO薄膜とは、10-4Ωcmオーダー以下の低
抵抗ITO薄膜であり、特に1×10-4Ωcm未満の抵
抗率を有するITO膜である。ここでITOとは、酸化
インジウム(In2O3)にSnO2を添加し、固溶させ
た系であり、Snをドープした酸化インジウム(Tin Do
ped Indium Oxide)のことであるが、通常はIndium Tin
Oxideを略してITOと呼ばれている。In2O3はC希
土型結晶構造を有する酸化物であり、SnはInのサイ
トに置換固溶すると言われる。本発明の低抵抗ITO薄
膜中のSnO2含有率(添加量)は好ましくは5〜20
wt%以下であり、より好ましくは6〜15wt%の範
囲である。モル%で表すと、本発明の低抵抗ITO薄膜
中のSnO2含有率は好ましくは約2.8〜10.5モ
ル%以下であり、より好ましくは4〜8モル%の範囲で
ある。20wt%以上又は10.5モル%以上とすると
SnO2相が析出して低抵抗率が実現しない。5wt%
以下又は2.8モル%以下であるとSnイオンの固溶量
が少なく低抵抗率が実現しない。
膜の結晶構造は、コランダム型でも良い。コランダム型
結晶構造は、In2O3結晶の高圧相であるが、高圧を印
加しなくとも、適当な成膜法を選ぶことによって形成で
きる可能性がある。コランダム型In2O3結晶は、C希
土型In2O3結晶に比べてInイオン間の距離が短いた
め、より大きな移動度の発現を可能性にできる。そこ
で、コランダム型In2O3結晶にC希土型In2O3結晶
と同等程度のSnイオンを固溶できるならば、C希土型
In2O3結晶に比べてより低い抵抗率の実現を可能にで
きる。本明細書では特に断らない限り、In2O3結晶と
はC希土型In2O3結晶を指すものとする。
膜に用いる基板は、結晶性基板である。ここで結晶性基
板とは、基板の表面に原子またはイオンによる結晶性の
配列を有する基板であって、例えばイットリウムによっ
て安定化したジルコニア(YSZ:Yttrium Stabilized
Zirconia)単結晶基板が該当し、ガラス基板のように
基板の表面がガラス質であって、結晶性を持たないもの
は該当しない。もっとも、ガラス基板であっても、例え
ば表面にc軸配向性のZnO薄膜を形成したもののよう
に、基板の最表面が原子またはイオンによる結晶性の配
列を有するものは、本発明でいう結晶性基板に該当す
る。また、SiC単結晶基板や、シリコン単結晶基板な
ども本発明でいう結晶性基板に該当する。
2O3の結晶構造と適合するものが適している。例えば、
YSZはIn2O3と同じ立方晶に属し、格子定数の2倍
長がIn2O3の格子定数とほぼ等しいので、非常に適し
ている。YSZ単結晶を基板として用いるならば、基板
上にヘテロエピタキシャル成長したIn2O3膜が得られ
る。このIn2O3膜の結晶性は高く、低抵抗が得られ
る。なお、コランダム型ITO薄膜に用いる基板は、例
えばサファイア基板のように、コランダム型結晶構造と
適合するものが適している。各結晶性基板とITO(I
n2O3)との格子定数の適合率は、一方の格子定数の整
数倍と他方の格子定数の整数倍との差が最も小さくなる
値(公倍数を求めて計算した値)で表すと、ITO(1
00)の場合、YSZ(100)で1.8%(ITO格
子1個:YSZ格子2個)、Si(100)で0.2%
(ITO格子23個:Si格子25個)、3C−SiC
(100)で1.0%(ITO格子41個:3C−Si
C格子50個)、CaF2(100)で0.0%(IT
O格子27個:CaF2格子25個)、MgO(10
0)で3.8%(ITO格子20個:MgO格子25
個)である。ITO(111)の場合、6H−SiC
(0001)で0.6%(ITO格子43個:6H−S
iC格子50個)、ZnO(0001)で1.3%(I
TO格子23個:ZnO格子25個)である。酸化物で
は共有結合性が非常に小さく、イオン性結合が主である
ため、結合方向に関する限定がない。このため、格子定
数の適合性は、化合物半導体等の場合に比べ、非常に広
くなる。これは1格子ずつでは全く不適合に見えても、
何格子か進んだときに適合することができるからであ
る。
には、単結晶基板の結晶性は良好であることが好まし
く、In2O3結晶と対称性が合い、格子定数が合い、ヘ
テロエピタキシャル成長に適合するものであることが好
ましい。また、単結晶基板は、成膜前に、高温における
熱処理または酸によるエッチング処理によって、基板表
面を原子オーダーで超平坦化しておくことが好ましい。
例えば、YSZ単結晶基板の場合、熱処理によって超平
坦化することが可能であり、熱処理の温度域は1200
℃以上1500℃以下とすることが好ましい。1200
℃以下では、YSZの蒸気圧が低すぎて超平坦化が困難
であり、1500℃以上では、YSZの蒸気圧が高すぎ
て基板表面に突起が形成される。好ましくは1300℃
〜1400℃の範囲で処理することが適当である。基板
表面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶基板に
おける表面の平坦性を平均表面粗さRaで表すと、原子
間力顕微鏡で1μm角を走査したとき、Raは10オンク゛
ストローム以下である。YSZ単結晶の面方位は、(10
0)面でもよく、(111)面でもよく、また他の面で
もIn2O3格子と対称性と格子定数が合う面であればよ
い。(100)面を選ぶ場合には、立方形状のIn2O3
結晶子が緻密に整列する。(111)面を選ぶ場合に
は、In2O3結晶子は(111)方位を基板法線方向に
向け、(100)面を表面に露出した三角錐状の構造を
作り、緻密に整列する。この様子は原子間力顕微鏡や走
査型電子顕微鏡によって観察することができる。結晶面
の対称性は重要な要件であり、ITO(100)面は4
回対称であるから基板結晶面も4回対称でなくてはなら
ず、ITO(111)面は3回対称であるから基板結晶
面も3回対称でなくてはならない。
O膜を持つガラス基板を用いる場合には、In2O3の
(111)方位を向いた配向膜が得られる。ZnOのc
軸配向膜は、パルスレーザー蒸着法の他、スパッタ法、
CVD法によって作製することができ、市販もされてい
る。
方法として、特にパルス・レーザー・蒸着法(PLD
法:Pulsed Laser Deposition法)を用いる。PLD法
は、レーザー光を原料蒸発源とする物理的成膜法の一つ
であり、高出力パルスレーザー光をターゲット表面に集
光・照射し、光・固体相互作用により、ターゲット最表
面を瞬時に2000℃以上の高温に加熱する。そのとき
起こる表層部での構成元素の瞬間的な剥離(アブレーシ
ョン)を利用して、アブレートされた原子、分子、イオ
ンやクラスター(数個〜数百個程度の原子(分子)が緩
く結合した集団)を基板上に堆積させる。ターゲット上
でプラズマ発光柱(プルーム)の発生が観察されること
から、単なる熱的な過程だけでなく、光イオン化過程が
複雑に関与していると言われる。PLD法は、スパッタ
法や蒸着法などの他の物理的成膜法に比べて、極めて清
浄なプロセスであり、酸素圧を広く設定することがで
き、膜厚の制御性が良い点で優れている。
圧粉体、高純度In金属、高純度ITOの焼結体や圧粉
体、高純度In−Sn合金などを用いることができる。
圧粉体の場合には、ターゲットの調製が容易であるが、
真空容器内が粉体で汚れやすいという欠点がある。ま
た、金属の場合には、純度を非常に高くすることが可能
であるが、レーザー光を反射するために効率的に蒸発が
起こらないという欠点がある。焼結体については、近
年、緻密化の技術が進み、相対密度99%以上、純度9
9.99%程度のものが市販されるに至っており、真空
容器内を汚しにくく、レーザー光を反射しない点で優れ
ている。ターゲット中のSnO2含有率は好ましくは5
〜20wt%以下であり、より好ましくは6〜15wt
%の範囲である。20wt%以上とするとSnO2相が
析出して低抵抗率が実現しない。5wt%以下であると
Snイオンの固溶量が少なく低抵抗率が実現しない。
とも1×10-7Torrとすることが好ましい。これよ
り低い真空度であると、真空容器中のガスはH2Oが支
配的となり、ターゲットや基板の表面に多量に付着し
て、作製するIn2O3薄膜の特性を劣化させる恐れがあ
る。できれば、真空到達度が1×10-7〜1×10-10
Torrに至る、超高真空容器を用いることが好まし
い。排気用ポンプには、分子ターボポンプもしくはソー
プションポンプが適当である。成膜中にO2ガス等の酸
化性ガスを流すためである。真空容器内には、ターゲッ
トを設置し、これに対向する位置に基板を配置する。成
膜時の真空到達度(真空度)は、1×10-3〜1×10
-7Torr(広いO 2圧力域)とすることが好ましい。
数cmから10cm程度である。ターゲットは自転させ
ることが好ましい。レーザー光の照射によって照射部分
が蒸発するため、凹部が形成されるからである。また、
基板も自転させることが好ましい。レーザー光の照射に
よってターゲット表面から爆発的に蒸発する物質は、プ
ルームと呼ばれる気球形状の発光を伴うが、プルームの
径はせいぜい数cmから10cm程度に過ぎず、その範
囲内で物質が基板上に堆積するためである。より広い面
積に、均一に成膜することを意図するならば、基板を回
転させることが好ましいのである。
るように導入する。焦点の面積とレーザー光のエネルギ
ー値とから、ターゲットに入射するレーザー光のパワー
密度が求まる。パワー密度が低すぎれば、爆発的な蒸発
現象が起こらず、薄膜を作製することができない。パワ
ー密度が高すぎれば、成膜速度が大きくなりすぎて、良
好な膜質が得られなくなるなどの問題が生じる。そこで
適当なパワー密度が得られるように、レーザ光の焦点面
積とエネルギーとを調節する必要がある。具体的には、
レーザーパワー密度は、0.1J/cm2〜100J/
cm2とすることが好ましい。0.1J/cm2未満では
パワー密度が小さすぎて、ターゲット上にプルームが立
たず、基板上に物質を堆積できない。100J/cm2
を超えるとパワー密度が大きすぎて、ターゲット物質が
飛散しすぎ、有効に成膜できない。例えば、10mm角
の小基板上に200nm程度の膜を作製する場合のパワ
ー密度は、より好ましくは、1J/cm2〜10J/c
m2である。より大面積に成膜する場合、あるいは、レ
ーザーをターゲット上で走査する場合には、10J/c
m2よりも大きなパワー密度を用いることができる。レ
ーザーのパルス周波数はパルス・レーザー蒸着装置の構
成によるので一概に言えないが、例えば、数Hz〜数百
Hz程度が好ましい。
のが通常である。可視領域の光はターゲットに吸収され
ないので、爆発的な蒸発が起こらない。紫外レーザーと
しては通常、XeCl、KrF、ArF等のエキシマー
レーザーや、Nd:YAGレーザーの4倍波などを用い
る。Nd:YAGレーザーのように連続光を発振できる
ものは、連続光のまま入射させても良いが、モードロッ
ク方式やQスイッチ方式によってパルス状に発振させた
方が、エネルギーの尖塔値が高くなり、爆発的な蒸発現
象を、より効率的に誘起することができる。
選び、酸素分圧は0〜1kPaの間で選ぶ。200℃以
下では、酸化インジウム相の結晶化が進行せず、100
0℃以上では酸化インジウムの気化が進行して膜質が悪
化する。この温度範囲内では、基板温度を高くするほ
ど、酸化インジウム薄膜の結晶性は向上し、粒子径が大
きくなる傾向がある。粒子形状は、200℃〜500℃
の領域では球形であるが、500℃以上とすると、次第
に酸化インジウムの結晶構造を反映して立方形に変化す
る。これらのことから、基板温度は500℃〜1000
℃の範囲が好ましい。基板温度(実測温度)は500℃
〜900℃の範囲がさらに好ましく、530℃〜720
℃の範囲がより好ましく、実施例1に示すように600
℃が最も好ましい。パルスレーザー蒸着法における酸素
分圧は、1×10-5Pa〜100Paの間とすることが
好ましい。1×10-5Paより低くすると、膜中の酸素
が少なくなりすぎ、In金属が析出する。100Paを
超えると酸素圧が高くなりすぎて、レーザー光をターゲ
ット表面に照射した際に生じるプルームが小さくなり、
膜の堆積速度が著しく小さくなる。さらに酸素圧は、I
TO膜中の酸素欠損量を介してキャリア密度に影響を与
えるので、抵抗率が充分に小さくなるように、最適な値
を選ぶことが好ましい。その値は、装置形状や基板温度
によって異なるが、一般的には1×10-3Pa〜1Pa
の範囲である。低抵抗ITO膜の厚みは、ターゲットに
照射されるレーザー光のエネルギー密度や照射パルス数
によって制御することができる。液晶ディスプレイ用透
明電極膜として用いる場合には、通常100nmから5
00nmの範囲で膜厚を制御している。
ット基板間距離を適切に制御することによって、薄膜の
堆積速度を十分に小さくすると、酸化インジウムが一格
子ずつ堆積して一つのテラスを作った後に、次のテラス
を作るべく、再び一格子ずつ堆積するという、いわゆる
原子層成長モードを達成することができる。このような
原子層成長モードが実際に実現しているか否かは、例え
ば成長途中の薄膜の表面モフォロジーを、原子間力顕微
鏡で観察したり、高速電子線による回折強度をモニタリ
ングすることによって判断することができる。原子層成
長モードでは、薄膜が一格子単位でテラス状に成長する
ために、基板全域にわたって、極めて結晶性良く薄膜を
成長でき、極めて良い精度で、均一な膜厚(例えば膜厚
10nm〜1μm程度で膜厚の変動が10%程度以下)
を実現することができる。このことは、ITO膜の結晶
性を高め、低い抵抗率を得る上で、有効な成長モードで
ある。
に、適当な成膜法によってITO薄膜を形成することに
よって、1×10-4Ωcm未満の低抵抗率を有する低抵
抗ITO薄膜が得られる。例えば低電圧スパッタリング
法や酸素クラスタービーム援用蒸着法を用いた場合に
も、通常のガラス基板ではなく、結晶性基板上に形成す
ることにより、ITO薄膜の結晶性を向上させるなら
ば、低抵抗率が発現することを本発明者らは見い出し
た。結晶性の高いITO薄膜の成膜法としては、その他
に、CVD法、有機金属CVD法、有機金属CVD−原
子層積層法、MBE(分子線エピタキシー)法等が挙げ
られ、これらの方法によって1×10-4Ωcm未満の低
抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。このよう
に多くの成膜法によって1×10-4Ωcm未満の低抵抗
率を有する低抵抗ITO薄膜が得られることで、各成膜
方法の特徴を生かした成膜を可能にでき、低抵抗ITO
薄膜の要求特性に応じた成膜を可能にできる。低抵抗I
TO薄膜中のSnO2添加量、低抵抗ITO薄膜の結晶
構造、及び結晶性基板に関しては、上述したとおりであ
る。成膜条件等は、成膜方法に応じて適宜調整される。
なお、本第二発明においても、ITO膜をヘテロエピタ
キシャル成長させることが好ましく、原子層成長モード
で一格子単位でITO膜の成膜を行うことが好ましい。
これらの方法において、基板温度(実測温度)は500
℃〜1000℃の範囲にすることが好ましく、500〜
800℃の範囲にすることがより好ましい。基板温度を
500℃以上とすることにより、ITO膜の結晶性を高
め、ドーパントであるSnイオンをIn2O3格子中に効
率良く固溶させることによって低抵抗率を実現できる。
なお、500℃より低いと充分に固溶が進行しない。1
000℃以上では酸化インジウムの気化が進行して膜質
が悪化するとともに、抵抗値が減少する傾向がある。こ
の温度範囲内では、基板温度を高くするほど、酸化イン
ジウム薄膜の結晶性は向上し、粒子径が大きくなる傾向
がある。粒子形状は、200℃〜500℃の領域では球
形であるが、500℃以上とすると、次第に酸化インジ
ウムの結晶構造を反映して立方形に変化する。基板は自
転させたり、基板ホルダーを回転させたりすることがで
きる。
は、1×10-5Pa〜100Paの間とすることが好ま
しい。1×10-5Paより低くすると、膜中の酸素が少
なくなりすぎ、In金属が析出する。100Paを超え
ると酸素圧が高くなりすぎる。さらに酸素圧は、ITO
膜中の酸素欠損量を介してキャリア密度に影響を与える
ので、抵抗率が充分に小さくなるように、最適な値を選
ぶことが好ましい。その値は、装置形状や基板温度によ
って異なるが、一般的には1×10-3Pa〜1Paの範
囲である。低電圧スパッタリング法の場合、この酸素分
圧の条件に加え、プラズマを有効に発生させることを考
慮に入れなければならない。通常は、ArとO2の混合
ガスを用いるが、Ar以外の希ガスを用いることもあ
る。混合ガスの全圧は、スパッタ粒子の飛行に影響を与
えて、膜質を変化させる。O2/Arの混合比が大きく
なりすぎると、プラズマが有効に発生しなくなる。スパ
ッタ電圧は540V〜330Vの範囲が抵抗率を下げる
ために好ましい。ターゲットに関しては、パルスレーザ
ー蒸着法と同様である。CVD法は、SnやInなどの
金属塩などを原料として、これを気化し、反応室内に導
入して、昇温した基板上に堆積させる方法である。適当
なIn系原料を用いることによって、高品質のITO膜
を安価に製造できる。InやSnの原料としてIn(C
H3)3やSn(H3)4などの有機金属を用いる有機金属
CVD法では、原料ガスを反応室内に導入するタイミン
グを制御することによって、基板上に1原子層ずつ積層
させることが可能になるため、高品質のITO膜を得る
ことができる。MBE(分子線エピタキシー)法は、蒸
着法の一種で、超高真空容器中の原料源から蒸発物質を
分子線状にして基板表面に衝突させ、堆積させる方法で
ある。例えば二つのKnudsenセル中のInとSn
をそれぞれ加熱蒸発させ、O2ガスを分圧1.2×10
-3Paまで容器中に導入して、基板上で反応させること
により、高品質が得られる。なお、MBE法では、基板
温度は700℃〜1000℃の範囲にすることが低抵抗
率実現のために好ましい。
高真空容器(日本真空技術(株)社製)に、YSZ単結
晶基板(001)面(フルウチ化学(株)社製、10m
m角)を設置し、IRランプヒーターによって200〜
800℃に加熱した。容器中に1.2×10-3Paの酸
素を導入し、KrFエキシマーレーザー光(ラムダフィ
ジクス(株)社製レーザー発光装置)を高純度ITO夕
一ゲット(東ソー(株)社製、SnO2含有率10wt
%)に照射、ターゲットから30mm離して対向させた
基板上にITOを堆積させた。膜厚は200nmとし
た。X線回折装置(理学電機製:ATX−E)により、
試料の回折パターンを測定し、高配向性の薄膜(結晶性
の高い薄膜)となっていることが明かとなった。ファン
デアパウ法により電気特性を測定した結果、基板温度を
上げるに従い移動度が増大し、600℃で極大となっ
た。抵抗率は7.7×10-5Ωcm、移動度は42cm
/Vs、キャリア密度は1.9×1021/cm3であっ
た(試料1〜4)。比較のために石英ガラス基板を用
い、同じ実験条件でITO膜を積層したが、最も低い抵
抗率は2×10-2Ωcmにすぎなかった(試料5〜
8)。以上の条件及び結果を表1及び図1に示す。
2に示すように変化させ、基板温度を600℃としたこ
と以外は実施例1と同じ条件でYSZ単結晶基板(試料
9〜13)及び石英ガラス基板(試料14〜17)上に
ITOを堆積させた。なお、レーザーパワー密度は5J
/cm2とし、レーザーのパルス周波数は10Hzとし
た。また、石英ガラス基板として溶融石英ガラス基板
(日本石英(株)社製:NP)を用いた。膜中のSn濃
度(モル%)、抵抗率、移動度、キャリア密度の測定結
果を表2に示す。なお、膜中のSn濃度は蛍光X線分析
法で測定した。また、抵抗率及びキャリア密度の測定は
ファン・デア・パウ(van der Pauw)法(河東田隆等、
「半導体評価技術」、222〜225頁、産業図書(株)、19
94年)で行った。なお、ファン・デア・パウ法は、エピ
タキシャル層のような薄膜状あるいは薄片状の半導体の
ホール効果を測定するのに適した方法である。具体的に
は、基板上に形成した10mm角の正方形のITO膜の
四隅の各端部近傍にオーム性電極A,B,C,DをA−
C、B−Dが対角に位置するように形成し、まず、磁界
を印加しないで電極A−B間に電流IABを流し電極C−
D間の電圧VCDを測定する。このとき抵抗RAB,CDを、
抵抗RAB,CD=VCD/IABのように定義する。次に、電
極B−C間に電流IBCを流し電極D−A間の電圧VDAを
測定する。このとき抵抗RBC,DAを、抵抗RBC,DA=VDA
/IBCのように定義する。次に、電極A−C間に電流I
A Cを流し、試料面に垂直に磁束密度Bの磁界を印加す
る。この時電極B−D間に生じる電圧をVBDとし、ΔR
AC,BD=VBD/IACとすると、抵抗率ρ、キャリア密度
n、キャリア移動度μは、それぞれ以下のように与えら
れる。 ρ=(πd/ln2)・[(RAB,CD+RBC,DA)/2]
・f(RAB,CD/RBC,DA) n=B/(e・d・ΔRAC,BD) μ=(d/B)・(ΔRAC,BD/ρ) ただし、eは電子の電荷、dはエピタキシャル層の厚さ
である。fはエピタキシャル層や試料の形状、電極の位
置などから生じる不均一性を補正するための係数で、R
AB,CD及びRBC,DAの次のような関数である。 (RAB,CD−RBC,DA)/(RAB,CD+RBC,DA)=(f/ln2)・a
rccosh[exp(ln2/f)/2] fの値はこの式を解けば得られるが、この式は解析的に
は解けず、実際には、RAB,CD/RBC,DA(=R)の関数
として計算機を用いて求められた数表(上記「半導体評
価技術」、巻末付表3に掲載)があるので、本実施例で
はそれを使用した。
5モル%が適当と考えられる。
3)について、膜中に含まれるSnの密度(個/c
m3)の測定結果、及び[(キャリア密度(cm-3)/
ITO膜中に含まれるSnの密度(個/cm3)×10
0]で定義されるSnドーパントの活量の値を計算した
結果を表2に示す。なお、膜中のSn密度はXRF法に
より測定したSn濃度から換算した。本発明のITO膜
は、YSZ単結晶基板上にヘテロエピタキシャル成長し
ているという特徴を有する。このことはX線回折法及び
透過型電子顕微鏡像により確認した。また、本発明のI
TO膜では、添加したSnドーパントのほぼ100%が
有効にキャリアを生成しているという特徴がある。Sn
ドーパントの活量が見かけ上100%を超える場合があ
るのは、結晶中に存在する酸素欠損もキャリア密度に寄
与するためである。Snによる寄与と、酸素欠損による
寄与を分離することはできないので、Snによる寄与と
酸素欠損による寄与とを示す指標としてSnドーパント
の活量は有益である。表2から、本発明方法によって結
晶性基板上に形成された低抵抗ITO膜においては、S
nドーパントの活量は、80%以上が好ましく、100
%を超えるとさらに好ましいことがわかる(試料10〜
12)。Snドーパントの活量が80%未満であると、
格子内に固溶しないSnドーパントの数が増えて、キャ
リア電子を散乱しやすくなり、移動度低下の原因となる
(試料13)。
パッタ電圧330V、基板温度300〜800℃の条件
の下、石英ガラス基板上にITO膜を成膜したが、1×
10-4Ωcm以下の低抵抗率は得られなかった。また、
特開平7−262829号公報記載の方法(直流スパッ
タリング法)を用い、ArとO2の混合ガス圧:5×1
0-3Torr、直流320Wのスパッタ電力の条件の
下、石英ガラス基板上にITO膜を成膜したが、清浄な
プロセスでなく真空チャンバー壁にITOが付着し、酸
素圧を低く設定できないので酸素欠損を有効に導入でき
ず、膜厚の制御性が悪いので原子層成長モードが実現で
きる見込みがなかった。
に形成したガラス基板を用いたこと以外は、実施例1と
同様にしてITO膜を成膜した。抵抗率は9×10-5Ω
cm、移動度は35cm/Vs、キャリア密度は2.0
×1021/cm3であった。なお、実施例3では、スパ
ッタリング法を用い、石英ガラス基板上にc軸配向した
ZnO膜を作製した。この際、基板温度は350℃、O
2/Ar混合比は0.2、全圧は4mTorrとした。
作製した膜の結晶性をX線回折法により解析し、基板に
対してc軸を垂直に立てた配向をしていることを確認し
た。
やターゲット基板間距離を30mmに制御し堆積速度を
十分に小さくして、いわゆる原子層成長モードで成膜し
たこと以外は、実施例1と同様にしてITO膜を成膜し
た。抵抗率は7.5×10-5Ωcm、移動度は45cm
/Vs、キャリア密度は1.8×1021/cm3であっ
た。成長途中の薄膜の表面モフォロジーを、原子間力顕
微鏡で観察して、原子層成長モードが実際に実現してい
ることを確認した。また、基板全域にわたって、極めて
良い精度で、ITO膜の結晶性が高く、均一な膜厚を実
現することができた。さらに、大きさ20mm角の基板
上に均一に成膜できた。
ム型結晶構造のITO膜を成膜した。その結果、1×1
0-4Ωcm未満の抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得
られることを確認した。
素クラスタービーム援用蒸着法、CVD法、有機金属C
VD法、有機金属CVD−原子層積層法、MBE(分子
線エピタキシー)法を用い、YSZ単結晶基板上にIT
O膜を成膜した。その結果、1×10-4Ωcm以下の低
抵抗率が得られることを確認した。なお、MBE法以外
のCVD法では大面積成膜を実現できた。
い、300〜800℃の基板温度で、YSZ単結晶基板
上(試料18〜20)又は石英基板上(試料21〜2
3)に、ITO膜を成膜した。その際、O2/Ar混合
比は0.2、全圧は4mTorrとした。ITO膜の抵
抗率を表3に示す。
基板温度で、1×10-4Ωcm未満の抵抗率が得られ
た。
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
基板の種類、真空到達度、ターゲットと基板との距離、
レーザー光や、成膜条件等は、上記実施例に制限され
ず、適宜変更して実施できる。また、得られた透明電極
はエッチングなどによって任意のパターニングを施こす
ことができる。
結晶基板及びサファイヤ基板は、投写型液晶ディスプレ
イ、小型高精細液晶ディスプレイ、などの用途に適す
る。YSZ単結晶基板及びサファイヤ基板は、特殊用途
の有機ELディスプレイなどの用途に利用できる。表面
にc軸配向性のあるZnO等の結晶膜を形成したガラス
基板は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有
機ELディスプレイ、などの用途に適する。SiC単結
晶基板は、In2O3との格子整合性が高く、発光デバイ
ス等の電極付き基板、酸化物レーザー用電極付き基板、
などの用途に適する。シリコン単結晶基板は、デバイス
展開上の可能性が広く、他の結晶性基板に比べ格段に大
きい基板が得られているといった特徴を有し、発光デバ
イス等の電極付き基板、酸化物レーザー用電極付き基
板、などの用途に適する。
及びその製造方法によれば、1×10 -4Ωcm未満の抵
抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。特にパルス
・レーザー・蒸着法を用いた場合、極めて清浄なプロセ
スであり、酸素圧を高く設定することができ、膜厚の制
御性が良い点で優れているので、抵抗率、移動度、キャ
リア密度等の特性に優れ、結晶性が高く、均一な膜厚を
有する低抵抗ITO薄膜を実現できる。本発明の低抵抗
ITO薄膜は、液晶ディスプレイの大型化や高精細化に
寄与するばかりでなく、太陽電池の高効率化にも寄与
し、社会の情報化と省エネルギー化を進める上で重要な
技術を提供する。
の関係を示す図である。
Claims (31)
- 【請求項1】 パルス・レーザー・蒸着法を用いて結晶
性基板上に基板温度500〜1000℃においてITO
膜を堆積させることを特徴とする低抵抗ITO膜の製造
方法。 - 【請求項2】 結晶性基板の最表面の結晶性配列が、I
n2O3の結晶構造と適合するものであることを特徴とす
る請求項1記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項3】 結晶性基板が、YSZ単結晶、表面にc
軸配向性のZnO薄膜を形成した基板、及びサファイア
基板のうちから選ばれる一であることを特徴とする請求
項2記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項4】 結晶性基板として、1200℃以上15
00℃以下の温度域で熱処理することによって基板表面
を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶基板を用い
ることを特徴とする請求項3に記載の低抵抗ITO薄膜
の製造方法。 - 【請求項5】 請求項4に記載の超平坦化したYSZ単
結晶基板上に、均一な膜厚を有するITO膜を形成する
ことを特徴とするITO膜の製造方法。 - 【請求項6】 ITO膜をヘテロエピタキシャル成長さ
せることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載
の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項7】 基板温度が600℃であることを特徴と
する請求項1乃至6のいずれかに記載の低抵抗ITO薄
膜の製造方法。 - 【請求項8】 結晶性基板が、SiC単結晶基板、又は
シリコン単結晶基板であることを特徴とする請求項2記
載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項9】 ターゲットが、高純度In2O3の焼結体
もしくは圧粉体、高純度In金属、高純度ITOの焼結
体もしくは圧粉体、高純度In−Sn合金のうちから選
ばれる材料からなることを特徴とする請求項1乃至8の
いずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項10】 成膜時の真空度を1×10-3〜1×1
0-7Torrとすることを特徴とする請求項1乃至9の
いずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項11】 ターゲットを自転させ、かつ、基板を
自転させて成膜を行うことを特徴とする請求項1乃至1
0のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項12】 薄膜の堆積速度を十分に小さくし、酸
化インジウムを一格子ずつ順次堆積させる原子層成長モ
ードで成膜を行うことを特徴とする請求項1乃至11の
いずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項13】 1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有す
ることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載
の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項14】 ITO薄膜中のSnO2の含有率が
2.8〜10.5モル%以下であることを特徴とする請
求項1乃至13のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の
製造方法。 - 【請求項15】 ITO薄膜の結晶構造が、C希土型I
n2O3結晶又はコランダム型In2O3結晶であることを
特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の低抵抗
ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項16】 低電圧スパッタリング法、酸素クラス
タービーム援用蒸着法、CVD法、有機金属CVD法、
有機金属CVD−原子層積層法、及びMBE(分子線エ
ピタキシー)法のうちから選ばれる成膜法を用いて結晶
性基板上に形成することを特徴とする低抵抗ITO薄膜
の製造方法。 - 【請求項17】 基板温度500〜1000℃において
ITO膜を堆積させることを特徴とする請求項16記載
の低抵抗ITO膜の製造方法。 - 【請求項18】 結晶性基板の最表面の結晶性配列が、
In2O3の結晶構造と適合するものであることを特徴と
する請求項16又は17に記載の低抵抗ITO薄膜の製
造方法。 - 【請求項19】 結晶性基板が、YSZ単結晶、表面に
c軸配向性のZnO薄膜を形成した基板、及びサファイ
ア基板のうちから選ばれる一であることを特徴とする請
求項18記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項20】 結晶性基板として、1200℃以上1
500℃以下の温度域で熱処理することによって基板表
面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶基板を用
いることを特徴とする請求項19に記載の低抵抗ITO
薄膜の製造方法。 - 【請求項21】 ITO膜をヘテロエピタキシャル成長
させることを特徴とする請求項18乃至20のいずれか
に記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項22】 結晶性基板が、SiC単結晶基板、又
はシリコン単結晶基板であることを特徴とする請求項1
8記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項23】 1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有す
ることを特徴とする請求項16乃至22のいずれかに記
載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項24】 ITO薄膜中のSnO2の含有率が
2.8〜10.5モル%以下であることを特徴とする請
求項16乃至23のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜
の製造方法。 - 【請求項25】 ITO薄膜の結晶構造が、C希土型I
n2O3結晶又はコランダム型In2O3結晶であることを
特徴とする請求項16乃至24のいずれかに記載の低抵
抗ITO薄膜の製造方法。 - 【請求項26】 結晶性基板上に形成され、[(キャリ
ア密度/ITO膜中に含まれるSnの密度(個/c
m3)×100]で定義されるSnドーパントの活量
が、80%以上である低抵抗ITO膜。 - 【請求項27】 1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有す
ることを特徴とする請求項26記載の低抵抗ITO薄
膜。 - 【請求項28】 請求項1乃至25のいずれかに記載の
ITO薄膜の製造方法を用いて、結晶性基板上にITO
膜を堆積させたITO膜付き基板。 - 【請求項29】 ITO膜にパターニングが施されてい
る請求項28記載のITO膜付き基板。 - 【請求項30】 請求項26又は27に記載の低抵抗I
TO薄膜を有するITO膜付き基板。 - 【請求項31】 ITO膜にパターニングが施されてい
る請求項30記載のITO膜付き基板。
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