JP5035857B2 - 低抵抗ito薄膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は液晶ディスプレイ等の表示デバイスや太陽電池等の透明電極として使用できる透明電極とその製造方法等に関する。
透明電極材料にはITO(Indium Tin Oxide)、ATO(Antimony doped Tin Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)などがあり、液晶ディスプレイには主にITOが、太陽電池には主にATOが用いられている。
しかし、液晶ディスプレイの大型化と高精細化が進むに連れて、ITOの抵抗率を低く抑える必要性が生じている。
例えば、STN(Super Twisted Nematic)型液晶ディスプレイの場合、透明電極は信号電極を兼ねており、ストライプ状の形状をしている。ディスプレイの大型化はストライプが長くなることを意味し、高精細化はストライプが細くなることを意味する。このため、ストライプ端点間の抵抗値が大きくなり、電圧降下を生じるので、液晶分子の適切なスイッチングが困難になる。
また例えば、TFT(Thin Film Transistor)型液晶ディスプレイの場合、信号電極には金属材料を用いるのが通常であるが、素子構成の単純化により製造工程を単純化し、ひいては製造コストを低減するために、信号電極にも透明電極が用いられ始めている。しかしこの場合にもディスプレイが大型化し、または、高精細化するに連れて電極端点間の抵抗値が増大するので、現在のところ対角11インチ以下のディスプレイに対してのみ、透明電極を信号電極として用いることしかできない。
一方、太陽電池の場合には、高効率化が最大の課題である。効率の向上に寄与する主な要素は、(1)材料に入射した光エネルギーの有効な閉じこめ、(2)光生成キャリアの有効な収集と光起電力効果への寄与の増大、(3)光生成キャリアの再結合損失の軽減、(4)直列抵抗損失の軽減、(5)電圧因子損失の軽減、(6)より広い光エネルギースペクトルの収集などがある。透明電極の電気抵抗は電池の直列抵抗損失として作用し、特に大面積の素子に対してはその変換効率に大きく影響を与える。そこで、太陽電池の場合にも、透明電極の抵抗率を低下させることが求められている。
特にITOは、近年の液晶ディスプレイの急速な発展とともに、様々な成膜法によって低抵抗化の試みがなされてきた。例えば石橋らは、DCスパッタリング法においてプラズマインピーダンスを低下させ、低スパッタ電圧で成膜することにより、基板温度200℃において、1.5×10-4Ωcm以下のITO膜の形成に成功した(S.Isbibashi,Y.Higuchi,Y.Ota,and K.Nakamura,J.VaC.Sci.Technol.A8(1990)1403)。また、カソードの磁場強度を140Gから480Gに増加させることにより、プラズマインピーダンスが下がるため、放電電流を一定に保ったまま、スパッタ電圧を540Vから330Vに下げることが可能で、それに伴い抵抗率が低下することが報告されている(Y.Shigesato,S.Takaki,and T.Haranoh,J.Appl.Phys.,71(7)(1992)3356)。高電圧でスパッタする場合には、高エネルギー粒子が存在し、これらの粒子の照射を受けながら薄膜成長が進行するため、膜にはより大きな均一歪みと圧縮応力が導入される。これに対して低電圧でスパッタした場合には高エネルギー粒子が減るため、ITO膜の結晶性が向上し、ドナーを捕獲する欠陥が減少してキャリア密度が増加するとともに、格子欠陥密度が低下、中性散乱中心の密度が減少して移動度が上がり、電気抵抗率が低下すると考えられている(重里有三、「透明導電膜の技術」、112頁、オーム社、1999年)。
また例えば、山田らは大電流酸素クラスターイオンビーム援用蒸着装置を開発し、抵抗率8.4×10-5ΩcmのITO膜の作製に成功した(南英治、勝俣裕、福間剛士、松尾二郎、山田公、第46回応用物理学関係連合講演会、講演予稿集、第二分冊、665頁、1999年)。1×10-4Ωcm以下の抵抗率はこれまでにも何度か報告されているが、再現性があるものとしては初めてのものである。酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法は、薄膜形成中に酸素クラスターイオンを援用照射することで薄膜中に酸素を導入し、酸化物薄膜を形成する技術であって、例えば平均クラスターサイズ1000個の酸素クラスターイオンを10keVで加速して基板に照射する。このとき、酸素分子一個当たりの運動エネルギーは10eVに過ぎないので薄膜に損傷を与えることがなく、高品質のITO膜が得られて、抵抗率が低下する。
さらに例えば、大野らは特開平7−262829号公報において、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法を用い、アルゴンガスでなくキセノンやクリプトンガスを用いて結晶基板上に成膜することによって、1×10-4Ωcmを下回る抵抗率を有するITO薄膜を形成する方法を提案している。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、低電圧スパッタ法は、高エネルギー粒子数を低減するため、薄膜の損傷を小さくする点で優れているが、高エネルギー粒子を完全に取り除くことはできておらず、その結果、1×10-4Ωcm以下の低抵抗率は実現していない。
また、大電流酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法は、酸素分子一個当たりの運動エネルギーが小さいため、薄膜に損傷が起こらず、従来の璧であった1×10-4Ωcmを下回る抵抗率を再現させる点で極めて優れているが、大面積成膜が実現しておらず、実用に至っていない。
さらに、特開平7−262829号公報記載の方法では、成膜法としてスパッタリング法を用いているので、清浄なプロセスでなくターゲット物質がチャンバー壁等に付着してダストの原因となりやすいなどの問題があり、酸素圧を高く設定できないので組成制御性に限界があり、高真空とできないので酸素欠損を有効に作りにくく、膜厚の制御性が悪いので原子層成長モードで成膜を行うことが困難である。
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、10-4Ωcmオーダー以下の低抵抗ITO薄膜とその製造方法の提供等を目的とし、特に1×10-4Ωcm未満(10-5Ωcmオーダー)の抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜とその製造方法の提供等を目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明は以下の構成を有する。
(第一発明)
(構成1) パルス・レーザー・蒸着法を用いて結晶性基板上に基板温度500〜1000℃においてITO膜を堆積させることを特徴とする低抵抗ITO膜の製造方法。
(構成2) 結晶性基板の最表面の結晶性配列が、In23の結晶構造と適合するものであることを特徴とする構成1記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成3) 結晶性基板が、YSZ単結晶、表面にc軸配向性のZnO薄膜を形成した基板、及びサファイア基板のうちから選ばれる一であることを特徴とする構成2記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成4) 結晶性基板として、1200℃以上1500℃以下の温度域で熱処理することによって基板表面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶基板を用いることを特徴とする構成3に記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成5) 構成4に記載の超平坦化したYSZ単結晶基板上に、均一な膜厚を有するITO膜を形成することを特徴とするITO膜の製造方法。
(構成6) ITO膜をヘテロエピタキシャル成長させることを特徴とする構成2乃至5のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成7) 基板温度が600℃であることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成8) 結晶性基板が、SiC単結晶基板、又はシリコン単結晶基板であることを特徴とする構成2記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成9) ターゲットが、高純度In23の焼結体もしくは圧粉体、高純度In金属、高純度ITOの焼結体もしくは圧粉体、高純度In−Sn合金のうちから選ばれる材料からなることを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成10) 成膜時の真空度を1×10-3〜1×10-7Torrとすることを特徴とする構成1乃至9のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成11) ターゲットを自転させ、かつ、基板を自転させて成膜を行うことを特徴とする構成1乃至10のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成12) 薄膜の堆積速度を十分に小さくし、酸化インジウムを一格子ずつ順次堆積させる原子層成長モードで成膜を行うことを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成13) 1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有することを特徴とする構成1乃至12のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成14) ITO薄膜中のSnO2の含有率が2.8〜10.5モル%以下であることを特徴とする構成1乃至13のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成15) ITO薄膜の結晶構造が、C希土型In23結晶又はコランダム型In23結晶であることを特徴とする構成1乃至14のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(第二発明)
(構成16) 低電圧スパッタリング法、酸素クラスタービーム援用蒸着法、CVD法、有機金属CVD法、有機金属CVD−原子層積層法、及びMBE(分子線エピタキシー)法のうちから選ばれる成膜法を用いて結晶性基板上に形成することを特徴とする低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成17) 基板温度500〜1000℃においてITO膜を堆積させることを特徴とする構成16記載の低抵抗ITO膜の製造方法。
(構成18) 結晶性基板の最表面の結晶性配列が、In23の結晶構造と適合するものであることを特徴とする構成16又は17に記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成19) 結晶性基板が、YSZ単結晶、表面にc軸配向性のZnO薄膜を形成した基板、及びサファイア基板のうちから選ばれる一であることを特徴とする構成18記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成20) 結晶性基板として、1200℃以上1500℃以下の温度域で熱処理することによって基板表面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶基板を用いることを特徴とする構成19に記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成21) ITO膜をヘテロエピタキシャル成長させることを特徴とする構成18乃至20のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成22) 結晶性基板が、SiC単結晶基板、又はシリコン単結晶基板であることを特徴とする構成18記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成23) 1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有することを特徴とする構成16乃至22のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成24) ITO薄膜中のSnO2の含有率が2.8〜10.5モル%以下であることを特徴とする構成16乃至23のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成25) ITO薄膜の結晶構造が、C希土型In23結晶又はコランダム型In23結晶であることを特徴とする構成16乃至24のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
(構成26) 結晶性基板上に形成され、[(キャリア密度/ITO膜中に含まれるSnの密度(個/cm3)×100]で定義されるSnドーパントの活量が、80%以上である低抵抗ITO膜。
(構成27) 1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有することを特徴とする構成26記載の低抵抗ITO薄膜。
(構成28) 構成1乃至25のいずれかに記載のITO薄膜の製造方法を用いて、結晶性基板上にITO膜を堆積させたITO膜付き基板。
(構成29) ITO膜にパターニングが施されている構成28記載のITO膜付き基板。
(構成30) 構成26又は27に記載の低抵抗ITO薄膜を有するITO膜付き基板。
(構成31) ITO膜にパターニングが施されている構成30記載のITO膜付き基板。
[作用]
本第一発明では、パルス・レーザー・蒸着法を用い結晶性基板上に所定の基板温度でITO薄膜を形成しているので、1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。パルス・レーザー・蒸着法は、極めて清浄なプロセスであり、酸素圧を高く設定することができ、膜厚の制御性が良い点で優れているので、抵抗率、移動度、キャリア密度等の特性に優れ、結晶性が高く、均一な膜厚を有する低抵抗ITO薄膜を実現できる。なお、パルス・レーザー・蒸着法においては、基板を自転させることや、レーザービームを並べる等の手段によって、大面積化が図られる。
本第二発明では、CVD法、有機金属CVD法、有機金属CVD−原子層積層法、又はMBE(分子線エピタキシー)法を用い結晶性基板上に所定の基板温度でITO薄膜を形成しているので、1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。また、大面積成膜を実現でき、工業的に有利である。ただし、MBE法は大面積成膜は難しい。
[発明の実施の形態]
本第一発明及び第二発明において低抵抗ITO薄膜とは、10-4Ωcmオーダー以下の低抵抗ITO薄膜であり、特に1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有するITO膜である。ここでITOとは、酸化インジウム(In23)にSnO2を添加し、固溶させた系であり、Snをドープした酸化インジウム(Tin Doped Indium Oxide)のことであるが、通常はIndium Tin Oxideを略してITOと呼ばれている。In23はC希土型結晶構造を有する酸化物であり、SnはInのサイトに置換固溶すると言われる。本発明の低抵抗ITO薄膜中のSnO2含有率(添加量)は好ましくは5〜20wt%以下であり、より好ましくは6〜15wt%の範囲である。モル%で表すと、本発明の低抵抗ITO薄膜中のSnO2含有率は好ましくは約2.8〜10.5モル%以下であり、より好ましくは4〜8モル%の範囲である。20wt%以上又は10.5モル%以上とするとSnO2相が析出して低抵抗率が実現しない。5wt%以下又は2.8モル%以下であるとSnイオンの固溶量が少なく低抵抗率が実現しない。
本第一発明及び第二発明の低抵抗ITO薄膜の結晶構造は、コランダム型でも良い。コランダム型結晶構造は、In23結晶の高圧相であるが、高圧を印加しなくとも、適当な成膜法を選ぶことによって形成できる可能性がある。コランダム型In23結晶は、C希土型In23結晶に比べてInイオン間の距離が短いため、より大きな移動度の発現を可能性にできる。そこで、コランダム型In23結晶にC希土型In23結晶と同等程度のSnイオンを固溶できるならば、C希土型In23結晶に比べてより低い抵抗率の実現を可能にできる。本明細書では特に断らない限り、In23結晶とはC希土型In23結晶を指すものとする。
本第一発明及び第二発明の低抵抗ITO薄膜に用いる基板は、結晶性基板である。ここで結晶性基板とは、基板の表面に原子またはイオンによる結晶性の配列を有する基板であって、例えばイットリウムによって安定化したジルコニア(YSZ:Yttrium Stabilized Zirconia)単結晶基板が該当し、ガラス基板のように基板の表面がガラス質であって、結晶性を持たないものは該当しない。もっとも、ガラス基板であっても、例えば表面にc軸配向性のZnO薄膜を形成したもののように、基板の最表面が原子またはイオンによる結晶性の配列を有するものは、本発明でいう結晶性基板に該当する。また、SiC単結晶基板や、シリコン単結晶基板なども本発明でいう結晶性基板に該当する。
結晶性基板の最表面の結晶性配列は、In23の結晶構造と適合するものが適している。例えば、YSZはIn23と同じ立方晶に属し、格子定数の2倍長がIn23の格子定数とほぼ等しいので、非常に適している。YSZ単結晶を基板として用いるならば、基板上にヘテロエピタキシャル成長したIn23膜が得られる。このIn23膜の結晶性は高く、低抵抗が得られる。なお、コランダム型ITO薄膜に用いる基板は、例えばサファイア基板のように、コランダム型結晶構造と適合するものが適している。
各結晶性基板とITO(In23)との格子定数の適合率は、一方の格子定数の整数倍と他方の格子定数の整数倍との差が最も小さくなる値(公倍数を求めて計算した値)で表すと、ITO(100)の場合、YSZ(100)で1.8%(ITO格子1個:YSZ格子2個)、Si(100)で0.2%(ITO格子23個:Si格子25個)、3C−SiC(100)で1.0%(ITO格子41個:3C−SiC格子50個)、CaF2(100)で0.0%(ITO格子27個:CaF2格子25個)、MgO(100)で3.8%(ITO格子20個:MgO格子25個)である。ITO(111)の場合、6H−SiC(0001)で0.6%(ITO格子43個:6H−SiC格子50個)、ZnO(0001)で1.3%(ITO格子23個:ZnO格子25個)である。酸化物では共有結合性が非常に小さく、イオン性結合が主であるため、結合方向に関する限定がない。このため、格子定数の適合性は、化合物半導体等の場合に比べ、非常に広くなる。これは1格子ずつでは全く不適合に見えても、何格子か進んだときに適合することができるからである。
結晶性基板として単結晶基板を用いる場合には、単結晶基板の結晶性は良好であることが好ましく、In23結晶と対称性が合い、格子定数が合い、ヘテロエピタキシャル成長に適合するものであることが好ましい。
また、単結晶基板は、成膜前に、高温における熱処理または酸によるエッチング処理によって、基板表面を原子オーダーで超平坦化しておくことが好ましい。例えば、YSZ単結晶基板の場合、熱処理によって超平坦化することが可能であり、熱処理の温度域は1200℃以上1500℃以下とすることが好ましい。1200℃以下では、YSZの蒸気圧が低すぎて超平坦化が困難であり、1500℃以上では、YSZの蒸気圧が高すぎて基板表面に突起が形成される。好ましくは1300℃〜1400℃の範囲で処理することが適当である。基板表面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶基板における表面の平坦性を平均表面粗さRaで表すと、原子間力顕微鏡で1μm角を走査したとき、Raは10オンク゛ストローム以下である。
YSZ単結晶の面方位は、(100)面でもよく、(111)面でもよく、また他の面でもIn23格子と対称性と格子定数が合う面であればよい。(100)面を選ぶ場合には、立方形状のIn23結晶子が緻密に整列する。(111)面を選ぶ場合には、In23結晶子は(111)方位を基板法線方向に向け、(100)面を表面に露出した三角錐状の構造を作り、緻密に整列する。この様子は原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡によって観察することができる。結晶面の対称性は重要な要件であり、ITO(100)面は4回対称であるから基板結晶面も4回対称でなくてはならず、ITO(111)面は3回対称であるから基板結晶面も3回対称でなくてはならない。
また、結晶性基板としてc軸配向したZnO膜を持つガラス基板を用いる場合には、In23の(111)方位を向いた配向膜が得られる。ZnOのc軸配向膜は、パルスレーザー蒸着法の他、スパッタ法、CVD法によって作製することができ、市販もされている。
本第一発明では、低抵抗ITO薄膜の成膜方法として、特にパルス・レーザー・蒸着法(PLD法:Pulsed Laser Deposition法)を用いる。PLD法は、レーザー光を原料蒸発源とする物理的成膜法の一つであり、高出力パルスレーザー光をターゲット表面に集光・照射し、光・固体相互作用により、ターゲット最表面を瞬時に2000℃以上の高温に加熱する。そのとき起こる表層部での構成元素の瞬間的な剥離(アブレーション)を利用して、アブレートされた原子、分子、イオンやクラスター(数個〜数百個程度の原子(分子)が緩く結合した集団)を基板上に堆積させる。ターゲット上でプラズマ発光柱(プルーム)の発生が観察されることから、単なる熱的な過程だけでなく、光イオン化過程が複雑に関与していると言われる。PLD法は、スパッタ法や蒸着法などの他の物理的成膜法に比べて、極めて清浄なプロセスであり、酸素圧を広く設定することができ、膜厚の制御性が良い点で優れている。
ターゲットには高純度In23の焼結体や圧粉体、高純度In金属、高純度ITOの焼結体や圧粉体、高純度In−Sn合金などを用いることができる。圧粉体の場合には、ターゲットの調製が容易であるが、真空容器内が粉体で汚れやすいという欠点がある。また、金属の場合には、純度を非常に高くすることが可能であるが、レーザー光を反射するために効率的に蒸発が起こらないという欠点がある。焼結体については、近年、緻密化の技術が進み、相対密度99%以上、純度99.99%程度のものが市販されるに至っており、真空容器内を汚しにくく、レーザー光を反射しない点で優れている。
ターゲット中のSnO2含有率は好ましくは5〜20wt%以下であり、より好ましくは6〜15wt%の範囲である。20wt%以上とするとSnO2相が析出して低抵抗率が実現しない。5wt%以下であるとSnイオンの固溶量が少なく低抵抗率が実現しない。
成膜前の真空容器の真空到達度は、少なくとも1×10-7Torrとすることが好ましい。これより低い真空度であると、真空容器中のガスはH2Oが支配的となり、ターゲットや基板の表面に多量に付着して、作製するIn23薄膜の特性を劣化させる恐れがある。できれば、真空到達度が1×10-7〜1×10-10Torrに至る、超高真空容器を用いることが好ましい。排気用ポンプには、分子ターボポンプもしくはソープションポンプが適当である。成膜中にO2ガス等の酸化性ガスを流すためである。真空容器内には、ターゲットを設置し、これに対向する位置に基板を配置する。
成膜時の真空到達度(真空度)は、1×10-3〜1×10-7Torr(広いO2圧力域)とすることが好ましい。
ターゲットと基板との間の距離は、通常、数cmから10cm程度である。ターゲットは自転させることが好ましい。レーザー光の照射によって照射部分が蒸発するため、凹部が形成されるからである。また、基板も自転させることが好ましい。レーザー光の照射によってターゲット表面から爆発的に蒸発する物質は、プルームと呼ばれる気球形状の発光を伴うが、プルームの径はせいぜい数cmから10cm程度に過ぎず、その範囲内で物質が基板上に堆積するためである。より広い面積に、均一に成膜することを意図するならば、基板を回転させることが好ましいのである。
レーザー光は、ターゲット表面に焦点を絞るように導入する。焦点の面積とレーザー光のエネルギー値とから、ターゲットに入射するレーザー光のパワー密度が求まる。パワー密度が低すぎれば、爆発的な蒸発現象が起こらず、薄膜を作製することができない。パワー密度が高すぎれば、成膜速度が大きくなりすぎて、良好な膜質が得られなくなるなどの問題が生じる。そこで適当なパワー密度が得られるように、レーザ光の焦点面積とエネルギーとを調節する必要がある。 具体的には、レーザーパワー密度は、0.1J/cm2〜100J/cm2とすることが好ましい。0.1J/cm2未満ではパワー密度が小さすぎて、ターゲット上にプルームが立たず、基板上に物質を堆積できない。100J/cm2を超えるとパワー密度が大きすぎて、ターゲット物質が飛散しすぎ、有効に成膜できない。例えば、10mm角の小基板上に200nm程度の膜を作製する場合のパワー密度は、より好ましくは、1J/cm2〜10J/cm2である。より大面積に成膜する場合、あるいは、レーザーをターゲット上で走査する場合には、10J/cm2よりも大きなパワー密度を用いることができる。レーザーのパルス周波数はパルス・レーザー蒸着装置の構成によるので一概に言えないが、例えば、数Hz〜数百Hz程度が好ましい。
レーザー光の波長は紫外領域のものを選ぶのが通常である。可視領域の光はターゲットに吸収されないので、爆発的な蒸発が起こらない。紫外レーザーとしては通常、XeCl、KrF、ArF等のエキシマーレーザーや、Nd:YAGレーザーの4倍波などを用いる。Nd:YAGレーザーのように連続光を発振できるものは、連続光のまま入射させても良いが、モードロック方式やQスイッチ方式によってパルス状に発振させた方が、エネルギーの尖塔値が高くなり、爆発的な蒸発現象を、より効率的に誘起することができる。
基板温度は200℃〜1000℃の範囲に選び、酸素分圧は0〜1kPaの間で選ぶ。200℃以下では、酸化インジウム相の結晶化が進行せず、1000℃以上では酸化インジウムの気化が進行して膜質が悪化する。この温度範囲内では、基板温度を高くするほど、酸化インジウム薄膜の結晶性は向上し、粒子径が大きくなる傾向がある。粒子形状は、200℃〜500℃の領域では球形であるが、500℃以上とすると、次第に酸化インジウムの結晶構造を反映して立方形に変化する。これらのことから、基板温度は500℃〜1000℃の範囲が好ましい。基板温度(実測温度)は500℃〜900℃の範囲がさらに好ましく、530℃〜720℃の範囲がより好ましく、実施例1に示すように600℃が最も好ましい。
パルスレーザー蒸着法における酸素分圧は、1×10-5Pa〜100Paの間とすることが好ましい。1×10-5Paより低くすると、膜中の酸素が少なくなりすぎ、In金属が析出する。100Paを超えると酸素圧が高くなりすぎて、レーザー光をターゲット表面に照射した際に生じるプルームが小さくなり、膜の堆積速度が著しく小さくなる。さらに酸素圧は、ITO膜中の酸素欠損量を介してキャリア密度に影響を与えるので、抵抗率が充分に小さくなるように、最適な値を選ぶことが好ましい。その値は、装置形状や基板温度によって異なるが、一般的には1×10-3Pa〜1Paの範囲である。
低抵抗ITO膜の厚みは、ターゲットに照射されるレーザー光のエネルギー密度や照射パルス数によって制御することができる。液晶ディスプレイ用透明電極膜として用いる場合には、通常100nmから500nmの範囲で膜厚を制御している。
特にレーザー光のエネルギー密度やターゲット基板間距離を適切に制御することによって、薄膜の堆積速度を十分に小さくすると、酸化インジウムが一格子ずつ堆積して一つのテラスを作った後に、次のテラスを作るべく、再び一格子ずつ堆積するという、いわゆる原子層成長モードを達成することができる。このような原子層成長モードが実際に実現しているか否かは、例えば成長途中の薄膜の表面モフォロジーを、原子間力顕微鏡で観察したり、高速電子線による回折強度をモニタリングすることによって判断することができる。原子層成長モードでは、薄膜が一格子単位でテラス状に成長するために、基板全域にわたって、極めて結晶性良く薄膜を成長でき、極めて良い精度で、均一な膜厚(例えば膜厚10nm〜1μm程度で膜厚の変動が10%程度以下)を実現することができる。このことは、ITO膜の結晶性を高め、低い抵抗率を得る上で、有効な成長モードである。
本第二発明では、上述した結晶性基板上に、適当な成膜法によってITO薄膜を形成することによって、1×10-4Ωcm未満の低抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。例えば低電圧スパッタリング法や酸素クラスタービーム援用蒸着法を用いた場合にも、通常のガラス基板ではなく、結晶性基板上に形成することにより、ITO薄膜の結晶性を向上させるならば、低抵抗率が発現することを本発明者らは見い出した。結晶性の高いITO薄膜の成膜法としては、その他に、CVD法、有機金属CVD法、有機金属CVD−原子層積層法、MBE(分子線エピタキシー)法等が挙げられ、これらの方法によって1×10-4Ωcm未満の低抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。このように多くの成膜法によって1×10-4Ωcm未満の低抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られることで、各成膜方法の特徴を生かした成膜を可能にでき、低抵抗ITO薄膜の要求特性に応じた成膜を可能にできる。
低抵抗ITO薄膜中のSnO2添加量、低抵抗ITO薄膜の結晶構造、及び結晶性基板に関しては、上述したとおりである。成膜条件等は、成膜方法に応じて適宜調整される。なお、本第二発明においても、ITO膜をヘテロエピタキシャル成長させることが好ましく、原子層成長モードで一格子単位でITO膜の成膜を行うことが好ましい。
これらの方法において、基板温度(実測温度)は500℃〜1000℃の範囲にすることが好ましく、500〜800℃の範囲にすることがより好ましい。基板温度を500℃以上とすることにより、ITO膜の結晶性を高め、ドーパントであるSnイオンをIn23格子中に効率良く固溶させることによって低抵抗率を実現できる。なお、500℃より低いと充分に固溶が進行しない。1000℃以上では酸化インジウムの気化が進行して膜質が悪化するとともに、抵抗値が減少する傾向がある。この温度範囲内では、基板温度を高くするほど、酸化インジウム薄膜の結晶性は向上し、粒子径が大きくなる傾向がある。粒子形状は、200℃〜500℃の領域では球形であるが、500℃以上とすると、次第に酸化インジウムの結晶構造を反映して立方形に変化する。基板は自転させたり、基板ホルダーを回転させたりすることができる。
低電圧スパッタリング法の場合、酸素分圧は、1×10-5Pa〜100Paの間とすることが好ましい。1×10-5Paより低くすると、膜中の酸素が少なくなりすぎ、In金属が析出する。100Paを超えると酸素圧が高くなりすぎる。さらに酸素圧は、ITO膜中の酸素欠損量を介してキャリア密度に影響を与えるので、抵抗率が充分に小さくなるように、最適な値を選ぶことが好ましい。その値は、装置形状や基板温度によって異なるが、一般的には1×10-3Pa〜1Paの範囲である。低電圧スパッタリング法の場合、この酸素分圧の条件に加え、プラズマを有効に発生させることを考慮に入れなければならない。通常は、ArとO2の混合ガスを用いるが、Ar以外の希ガスを用いることもある。混合ガスの全圧は、スパッタ粒子の飛行に影響を与えて、膜質を変化させる。O2/Arの混合比が大きくなりすぎると、プラズマが有効に発生しなくなる。スパッタ電圧は540V〜330Vの範囲が抵抗率を下げるために好ましい。ターゲットに関しては、パルスレーザー蒸着法と同様である。
CVD法は、SnやInなどの金属塩などを原料として、これを気化し、反応室内に導入して、昇温した基板上に堆積させる方法である。適当なIn系原料を用いることによって、高品質のITO膜を安価に製造できる。
InやSnの原料としてIn(CH33やSn(H34などの有機金属を用いる有機金属CVD法では、原料ガスを反応室内に導入するタイミングを制御することによって、基板上に1原子層ずつ積層させることが可能になるため、高品質のITO膜を得ることができる。
MBE(分子線エピタキシー)法は、蒸着法の一種で、超高真空容器中の原料源から蒸発物質を分子線状にして基板表面に衝突させ、堆積させる方法である。例えば二つのKnudsenセル中のInとSnをそれぞれ加熱蒸発させ、O2ガスを分圧1.2×10-3Paまで容器中に導入して、基板上で反応させることにより、高品質が得られる。なお、MBE法では、基板温度は700℃〜1000℃の範囲にすることが低抵抗率実現のために好ましい。
[実施例]
以下、実施例により、本発明を説明する。
(実施例1)
レーザーアブレーション用超高真空容器(日本真空技術(株)社製)に、YSZ単結晶基板(001)面(フルウチ化学(株)社製、10mm角)を設置し、IRランプヒーターによって200〜800℃に加熱した。容器中に1.2×10-3Paの酸素を導入し、KrFエキシマーレーザー光(ラムダフィジクス(株)社製レーザー発光装置)を高純度ITO夕一ゲット(東ソー(株)社製、SnO2含有率10wt%)に照射、ターゲットから30mm離して対向させた基板上にITOを堆積させた。膜厚は200nmとした。
X線回折装置(理学電機製:ATX−E)により、試料の回折パターンを測定し、高配向性の薄膜(結晶性の高い薄膜)となっていることが明かとなった。ファンデアパウ法により電気特性を測定した結果、基板温度を上げるに従い移動度が増大し、600℃で極大となった。抵抗率は7.7×10-5Ωcm、移動度は42cm/Vs、キャリア密度は1.9×1021/cm3であった(試料1〜4)。
比較のために石英ガラス基板を用い、同じ実験条件でITO膜を積層したが、最も低い抵抗率は2×10-2Ωcmにすぎなかった(試料5〜8)。
以上の条件及び結果を表1及び図1に示す。
Figure 0005035857
(実施例2)
夕一ゲット中のSn濃度を表2に示すように変化させ、基板温度を600℃としたこと以外は実施例1と同じ条件でYSZ単結晶基板(試料9〜13)及び石英ガラス基板(試料14〜17)上にITOを堆積させた。なお、レーザーパワー密度は5J/cm2とし、レーザーのパルス周波数は10Hzとした。また、石英ガラス基板として溶融石英ガラス基板(日本石英(株)社製:NP)を用いた。
膜中のSn濃度(モル%)、抵抗率、移動度、キャリア密度の測定結果を表2に示す。なお、膜中のSn濃度は蛍光X線分析法で測定した。また、抵抗率及びキャリア密度の測定はファン・デア・パウ(van der Pauw)法(河東田隆等、「半導体評価技術」、222〜225頁、産業図書(株)、1994年)で行った。なお、ファン・デア・パウ法は、エピタキシャル層のような薄膜状あるいは薄片状の半導体のホール効果を測定するのに適した方法である。具体的には、基板上に形成した10mm角の正方形のITO膜の四隅の各端部近傍にオーム性電極A,B,C,DをA−C、B−Dが対角に位置するように形成し、まず、磁界を印加しないで電極A−B間に電流IABを流し電極C−D間の電圧VCDを測定する。このとき抵抗RAB,CDを、抵抗RAB,CD=VCD/IABのように定義する。次に、電極B−C間に電流IBCを流し電極D−A間の電圧VDAを測定する。このとき抵抗RBC,DAを、抵抗RBC,DA=VDA/IBCのように定義する。次に、電極A−C間に電流IACを流し、試料面に垂直に磁束密度Bの磁界を印加する。この時電極B−D間に生じる電圧をVBDとし、ΔRAC,BD=VBD/IACとすると、抵抗率ρ、キャリア密度n、キャリア移動度μは、それぞれ以下のように与えられる。
ρ=(πd/ln2)・[(RAB,CD+RBC,DA)/2]・f(RAB,CD/RBC,DA
n=B/(e・d・ΔRAC,BD
μ=(d/B)・(ΔRAC,BD/ρ)
ただし、eは電子の電荷、dはエピタキシャル層の厚さである。fはエピタキシャル層や試料の形状、電極の位置などから生じる不均一性を補正するための係数で、RAB,CD及びRBC,DAの次のような関数である。
(RAB,CD−RBC,DA)/(RAB,CD+RBC,DA)=(f/ln2)・arccosh[exp(ln2/f)/2]
fの値はこの式を解けば得られるが、この式は解析的には解けず、実際には、RAB,CD/RBC,DA(=R)の関数として計算機を用いて求められた数表(上記「半導体評価技術」、巻末付表3に掲載)があるので、本実施例ではそれを使用した。
Figure 0005035857
表2から膜中のSn濃度は2.8〜10.5モル%が適当と考えられる。
次に上記で得られたITO(試料10〜13)について、膜中に含まれるSnの密度(個/cm3)の測定結果、及び[(キャリア密度(cm-3)/ITO膜中に含まれるSnの密度(個/cm3)×100]で定義されるSnドーパントの活量の値を計算した結果を表2に示す。なお、膜中のSn密度はXRF法により測定したSn濃度から換算した。
本発明のITO膜は、YSZ単結晶基板上にヘテロエピタキシャル成長しているという特徴を有する。このことはX線回折法及び透過型電子顕微鏡像により確認した。また、本発明のITO膜では、添加したSnドーパントのほぼ100%が有効にキャリアを生成しているという特徴がある。Snドーパントの活量が見かけ上100%を超える場合があるのは、結晶中に存在する酸素欠損もキャリア密度に寄与するためである。Snによる寄与と、酸素欠損による寄与を分離することはできないので、Snによる寄与と酸素欠損による寄与とを示す指標としてSnドーパントの活量は有益である。表2から、本発明方法によって結晶性基板上に形成された低抵抗ITO膜においては、Snドーパントの活量は、80%以上が好ましく、100%を超えるとさらに好ましいことがわかる(試料10〜12)。Snドーパントの活量が80%未満であると、格子内に固溶しないSnドーパントの数が増えて、キャリア電子を散乱しやすくなり、移動度低下の原因となる(試料13)。
(比較例1)
低電圧スパッタ法を用い、スパッタ電圧330V、基板温度300〜800℃の条件の下、石英ガラス基板上にITO膜を成膜したが、1×10-4Ωcm以下の低抵抗率は得られなかった。
また、特開平7−262829号公報記載の方法(直流スパッタリング法)を用い、ArとO2の混合ガス圧:5×10-3Torr、直流320Wのスパッタ電力の条件の下、石英ガラス基板上にITO膜を成膜したが、清浄なプロセスでなく真空チャンバー壁にITOが付着し、酸素圧を低く設定できないので酸素欠損を有効に導入できず、膜厚の制御性が悪いので原子層成長モードが実現できる見込みがなかった。
(実施例3)
c軸配向したZnO膜を表面に形成したガラス基板を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてITO膜を成膜した。抵抗率は9×10-5Ωcm、移動度は 35cm/Vs、キャリア密度は2.0×1021/cm3であった。
なお、実施例3では、スパッタリング法を用い、石英ガラス基板上にc軸配向したZnO膜を作製した。この際、基板温度は350℃、O2/Ar混合比は0.2、全圧は4mTorrとした。作製した膜の結晶性をX線回折法により解析し、基板に対してc軸を垂直に立てた配向をしていることを確認した。
(実施例4)
レーザー光のエネルギー密度やターゲット基板間距離を30mmに制御し堆積速度を十分に小さくして、いわゆる原子層成長モードで成膜したこと以外は、実施例1と同様にしてITO膜を成膜した。抵抗率は7.5×10-5Ωcm、移動度は45cm/Vs、キャリア密度は1.8×1021/cm3であった。成長途中の薄膜の表面モフォロジーを、原子間力顕微鏡で観察して、原子層成長モードが実際に実現していることを確認した。また、基板全域にわたって、極めて良い精度で、ITO膜の結晶性が高く、均一な膜厚を実現することができた。さらに、大きさ20mm角の基板上に均一に成膜できた。
(実施例5)
サファイア基板上にコランダム型結晶構造のITO膜を成膜した。その結果、1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られることを確認した。
(実施例6)
低電圧スパッタリング法、酸素クラスタービーム援用蒸着法、CVD法、有機金属CVD法、有機金属CVD−原子層積層法、MBE(分子線エピタキシー)法を用い、YSZ単結晶基板上にITO膜を成膜した。その結果、1×10-4Ωcm以下の低抵抗率が得られることを確認した。なお、MBE法以外のCVD法では大面積成膜を実現できた。
(実施例7)
低電圧スパッタリング法を用い、300〜800℃の基板温度で、YSZ単結晶基板上(試料18〜20)又は石英基板上(試料21〜23)に、ITO膜を成膜した。その際、O2/Ar混合比は0.2、全圧は4mTorrとした。ITO膜の抵抗率を表3に示す。
Figure 0005035857
YSZ単結晶基板上で600〜800℃の基板温度で、1×10-4Ωcm未満の抵抗率が得られた。
以上実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、ターゲットの組成、基板温度及び基板の種類、真空到達度、ターゲットと基板との距離、レーザー光や、成膜条件等は、上記実施例に制限されず、適宜変更して実施できる。
また、得られた透明電極はエッチングなどによって任意のパターニングを施こすことができる。
基板の種類に応じた用途を示す。
YSZ単結晶基板及びサファイヤ基板は、投写型液晶ディスプレイ、小型高精細液晶ディスプレイ、などの用途に適する。YSZ単結晶基板及びサファイヤ基板は、特殊用途の有機ELディスプレイなどの用途に利用できる。
表面にc軸配向性のあるZnO等の結晶膜を形成したガラス基板は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、などの用途に適する。
SiC単結晶基板は、In23との格子整合性が高く、発光デバイス等の電極付き基板、酸化物レーザー用電極付き基板、などの用途に適する。
シリコン単結晶基板は、デバイス展開上の可能性が広く、他の結晶性基板に比べ格段に大きい基板が得られているといった特徴を有し、発光デバイス等の電極付き基板、酸化物レーザー用電極付き基板、などの用途に適する。
[発明の効果]
本第一及び第二発明の低抵抗ITO薄膜及びその製造方法によれば、1×10-4Ωcm未満の抵抗率を有する低抵抗ITO薄膜が得られる。特にパルス・レーザー・蒸着法を用いた場合、極めて清浄なプロセスであり、酸素圧を高く設定することができ、膜厚の制御性が良い点で優れているので、抵抗率、移動度、キャリア密度等の特性に優れ、結晶性が高く、均一な膜厚を有する低抵抗ITO薄膜を実現できる。
本発明の低抵抗ITO薄膜は、液晶ディスプレイの大型化や高精細化に寄与するばかりでなく、太陽電池の高効率化にも寄与し、社会の情報化と省エネルギー化を進める上で重要な技術を提供する。
本発明の一実施例における基板温度と導電率との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 1200℃以上1500℃以下の温度域で熱処理することによって基板表面を原子オーダーで超平坦化したYSZ単結晶基板の上に、
    540V〜330Vの範囲内の電圧下でスパッタリングを行う低電圧スパッタリング法、酸素クラスタービーム援用蒸着法、CVD法、有機金属CVD法、有機金属CVD−原子層積層法、及びMBE(分子線エピタキシー)法のうちから選ばれる成膜法を用いて低抵抗ITO薄膜を形成する
    ことを特徴とする低抵抗ITO薄膜の製造方法。
  2. 基板温度500〜1000℃においてITO膜を堆積させることを特徴とする請求項1記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
  3. ITO膜をヘテロエピタキシャル成長させることを特徴とする請求項1又は2に記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
  4. 1×10−4Ωcm未満の抵抗率を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
  5. ITO薄膜中のSnOの含有率が2.8〜10.5モル%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
  6. ITO薄膜の結晶構造が、C希土型In結晶又はコランダム型In結晶であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の低抵抗ITO薄膜の製造方法。
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