JP4480809B2 - 酸化インジウム薄膜及びその製造方法 - Google Patents

酸化インジウム薄膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は酸化インジウム薄膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化インジウム(In23)にスズをドープして1×1021/cm3程度の高密度のキャリアを生成させると、1×10-4Ωcm程度の金属的な電気抵抗率を発現し、同時に透明性が保たれるので、透明電極材料として好適であり、液晶ディスプレイの画素電極や太陽電池のキャリア捕集電極として広く用いられる。このときドープしたスズイオンによってキャリア電子が散乱されるので、移動度は30cm2/Vs程度に留まり、In23のバルク単結晶試料について報告された値160cm2/Vsに比べてかなり小さい値になるが、透明電極として用いる場合に重要である因子は電気抵抗率であるので、移動度の低下分をキャリア密度の増加分が補ってあまりあるので、問題とならない。
【0003】
ところが近年話題とされている酸化物エレクトロニクスの分野において、In23を半導体材料として用いる場合には、移動度が充分に高いことが好ましい。このとき、透明電極材料に求められるような低い電気抵抗率は必ずしも必要ないので、スズイオンはドープしなくて良く、できるだけ移動度を高める工夫を施すことになる。移動度を高める方法の一つは、In23の結晶性を高めることである。
【0004】
さらに、半導体デバイスを構成する場合には、高移動度を有する半導体膜の他に、絶縁膜が必要になることが多い。このときは、透明電極材料の場合とは全く反対に、電気抵抗率をできるだけ高めなくてはならない。スズイオンをドープしないことはもとより、不純物イオンをできるだけ取り除き、酸素欠陥をできるだけ作らない工夫を施すことになる。高移動度のIn23と絶縁性のIn23とが得られれば、これらを互いに積層することによって、例えばFET型トランジスタなどの電子デバイスを実現できることになる。
【0005】
FET型トランジスタの場合には、半導体膜の上に絶縁膜を積層し、更にその上に金属電極膜を形成して、デバイスとする。この金属電極膜をITOによって形成すれば、In23とこれにSnを高濃度ドープしたITOによる、単一材料系によってデバイスを形成できることになる。
【0006】
高結晶性のIn23膜を形成する試みは、これまでにもいくつかなされている。例えば、タルサ(Tarsa)はパルスレーザー蒸着法(Pulsed Laser Deposition method:PLD法)を用いて、InAs、MgOおよびYSZ単結晶基板上にIn23膜を形成した(E.J.Tarsa, J.H.English, and J.S.Speck, Appl.Phys.Lett. 62 (1993) 2332)。特にYSZ単結晶基板上に、400〜450℃の温度で成膜したIn23膜は、50cm2/Vsという比較的高い移動度を示した。また、亀井らはYSZ単結晶基板上にスパッタ法により200℃で高配向性のIn23膜を形成し、39cm2/Vsの移動度を得た(M.Kamei, T.Yagami, S.Takaki, and Y.Shigesato, Appl.Phys. Lett. 64 (1994) 2712)。さらに、Tagaらは、YSZ単結晶基板上に電子ビーム蒸着法により300℃で高配向性のIn23膜を形成し、73cm2/Vsの移動度を得ている。
【0007】
一方、電気抵抗率の高いIn23結晶については、バルク単結晶試料について報告がある。例えば、De Witは化学気相輸送法によりIn23のバルク単結晶を作製し、電気抵抗率を測定、最大40kΩcmの値を得た(Journal of Crystal Growth, 12, (1972) 183)。De Witの方法は、直径1cm、長さ20cmの円筒形をした石英アンプルに、1gのIn23粉体を入れ、真空引きした後に、HCl蒸気を15torr導入し、封入する。これを温度勾配のある電気炉中に水平に置き、原料粉体部分の温度を950℃に設定し、アンプルの一端を680℃〜720℃に設定して、この部分にIn23単結晶が析出することを、数日間、待つものである。得られた単結晶は1mm立方のものであった。DeWitは、他に、フラックス法によって83kΩcmの試料も作製している。その他、水熱合成法などによってバルク単結晶試料を作製した例が報告されている。しかし、薄膜試料について、高抵抗率または絶縁性のIn23が作製された例は見あたらない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記タルサのIn23膜と亀井のIn23膜は、比較的高い移動度を有するが、In23結晶が本来有する潜在的移動度を充分に引き出したとは言えない。また、TagaのIn23膜は、In23のバルク単結晶試料について報告された値の40%程度の移動度を実現しており、かつ、X線回折法のロッキング・カーブ半値幅が0.046°と極めて高い結晶性が得られているが、走査電子顕微鏡写真に現れている膜表面のモフォロジーは多孔質であることを示しており、緻密性に欠けている。
【0009】
このように、緻密であり、結晶性が高く、高移動度を安定的に発現する酸化インジウム薄膜は、未だ得られていない。
また、緻密であり、結晶性が高く、高抵抗率を安定的に発現する酸化インジウム薄膜は、未だ得られていない。
【0010】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、緻密であり、結晶性が高く、高移動度を安定的に発現する酸化インジウム薄膜及びその製造方法の提供を第一の目的とする。
また、緻密であり、結晶性が高く、高抵抗率を安定的に発現する酸化インジウム薄膜及びその製造方法の提供を第二の目的とする。
さらに、これらの薄膜を応用した、半導体/絶縁体接合素子や電子デバイス、及びそれらの製造方法の提供を第三の目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は以下の構成としてある。
【0012】
(構成1)X線回折法のロッキング・カーブ半値幅が0.3°以下と高い結晶性(高配向性)を有し、膜表面の自乗平均平方根粗さ(Rms)が10nm以下であり、かつ、移動度70cm2/Vs以上を有することを特徴とする高移動度酸化インジウム薄膜。
【0013】
(構成2)X線回折法のロッキング・カーブ半値幅が0.3°以下と高い結晶性(高配向性)を有し、膜表面の自乗平均平方根粗さ(Rms)が10nm以下であり、かつ、1kΩcm以上の抵抗率を有することを特徴とする高抵抗酸化インジウム薄膜。
【0014】
(構成3)構成1記載の高配向性・高移動度酸化インジウム薄膜と構成2記載の高配向性・高抵抗酸化インジウム薄膜とを接合してなることを特徴とする半導体/絶縁体接合素子。
【0015】
(構成4)構成3記載の半導体/絶縁体接合素子にITO薄膜を接合することによって形成したことを特徴とする電子デバイス。
【0016】
(構成5)構成1記載の高移動度酸化インジウム薄膜と、請求項2記載の高抵抗酸化インジウム薄膜とを、パルスレーザー蒸着法における酸素分圧を制御することによって作り分け、かつ、酸素分圧を制御する際に、酸素分圧が増大するに連れて酸化インジウム薄膜の抵抗値が急激に増大する中間領域に入る酸素分圧を避けて成膜を行うことを特徴とする酸化インジウム薄膜の製造方法。
【0017】
(構成6)構成1記載の高移動度酸化インジウム薄膜を、酸素分圧を0〜1Paの範囲とし、基板温度を600〜1000℃としてパルスレーザー蒸着法により作製することを特徴とする高移動度酸化インジウム薄膜の製造方法。
【0018】
(構成7)構成2記載の高抵抗酸化インジウム薄膜を、酸素分圧を1Pa〜1kPaの範囲とし、パルスレーザー蒸着法により作製することを特徴とする高抵抗酸化インジウム薄膜の製造方法。
【0019】
(構成8)構成1記載の高移動度酸化インジウム薄膜と構成2記載の高抵抗酸化インジウム薄膜とを、同一装置内で同一ターゲットを用いてパルスレーザー蒸着法における酸素分圧を制御することによって作り分けて、半導体/絶縁体接合を作製することを特徴とする半導体/絶縁体接合素子の製造方法。
【0020】
(構成9)構成8記載の方法で作製した半導体/絶縁体接合素子に、ITO薄膜を接合することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【0021】
【作用】
本発明の高移動度酸化インジウム薄膜は、緻密であり、結晶性が高く、70cm2/Vs以上の移動度を安定的に発現することを特徴としている。本発明の高結晶性酸化インジウム薄膜は緻密であるので、半導体として利用するのに適しており、他物質の薄膜との積層が可能である。また、結晶性が高いため、他物質との積層を行う場合に、結晶軸を揃えたヘテロエピタキシャル成長が可能である。また、70cm2/Vs以上の高い移動度を再現性良く発現するため、半導体デバイスとしたときに良好な応答性を示す。
【0022】
また、本発明の高抵抗酸化インジウム薄膜は、緻密であり、結晶性が高く、数kΩ以上の高抵抗率を安定的に発現することを特徴としている。本発明の高結晶性酸化インジウム薄膜は緻密であるので、半導体と組み合わせた絶縁膜として利用するのに適している。また、結晶性が高いため、他物質との積層を行う場合に、結晶軸を揃えたヘテロエピタキシャル成長が可能である。特に、上述の高移動度酸化インジウム薄膜と交互に積層することにより、酸化インジウム系だけを用いて、FETなどの電子デバイスを構成することができる。
【0023】
本発明の高移動度酸化インジウム薄膜及び高抵抗酸化インジウム薄膜においては、膜表面の自乗平均平方根粗さ(Rms)を10nm以下に抑えることが重要である。これは、ディバイスを作る上で各層の表面粗さはその上の層との界面粗さとなり、特性に影響を与えるからである。同様の観点から、膜表面の自乗平均平方根粗さ(Rms)は、5nm以下に抑えることが好ましく、3nm以下に抑えることがさらに好ましい。
なお、本発明の高移動度酸化インジウム薄膜及び高抵抗酸化インジウム薄膜は、いずれも、走査電子顕微鏡写真に現れている膜表面のモフォロジーが緻密であることを示しており、また、いずれもX線回折法のロッキング・カーブ半値幅が0.3°以下と高い結晶性(高配向性)を有している。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、酸化インジウム薄膜とその製造方法に関するものである。
酸化インジウム薄膜は、YSZ(Yttrium Stabilized Zirconia:イットリウム安定化ジルコニア)単結晶基板やガラス基板等の上に形成する。単結晶基板の結晶性は良好であることが好ましく、In23結晶と対称性が合い、格子定数が合い、ヘテロエピタキシャル成長に適合するものであることが好ましい。単結晶基板は、成膜前に、高温における熱処理または酸によるエッチング処理によって、基板表面を原子オーダーで超平坦化しておくことが好ましい。YSZ単結晶基板の場合、熱処理によって超平坦化することが可能であり、熱処理の温度域は1200℃以上1500℃以下とすることが好ましい。1200℃以下では、YSZの蒸気圧が低すぎて超平坦化が困難であり、1500℃以上では、YSZの蒸気圧が高すぎて基板表面に突起が形成される。好ましくは1300℃〜1400℃の範囲で処理することが適当である。YSZ単結晶の面方位は、(100)面でもよく(111)面でもよく、また他の面でもIn23格子と対称性と格子定数が合う面であればよい。(100)面を選ぶ場合には、立方形状のIn23結晶子が緻密に整列する。(111)面を選ぶ場合には、In23結晶子は(111)方位を基板放線(法線)方向に向け、(100)面を表面に露出した三角錐状の構造を作り、緻密に整列する。このため、正三角形状の断面が原子間力顕微鏡や走査電子顕微鏡によって観察される。
【0025】
ガラス基板の上に作製する場合には、YSZ単結晶基板の場合と異なって、基板に結晶性がないため、ヘテロエピタキシャル成長を実現することができない。このため、In23膜には配向性がなく、多結晶となり、移動度が小さくなる傾向がある。配向性が重要な場合には、例えばガラス基板上にZnOのc軸配向膜を作製し、その上にIn23膜を形成するならば、In23の(111)方位を向いた配向膜が得られる。ZnOのc軸配向膜は、パルスレーザー蒸着法の他、スパッタ法、CVD法によって作製することができ、市販もされている。
【0026】
YSZ単結晶基板やガラス基板等へのIn23膜の成膜には、パルスレーザー蒸着法(PLD法)を用いる。PLD法は、超高真空容器中で、焼結体等のターゲットにエキシマー・レーザー光等の高エネルギー・レーザー光をパルス状に照射し、ターゲット表面から爆発的に蒸発する物質を、対向する基板に堆積する方法であって、YBa2Cu37等の超伝導酸化物やBaTiO3等の強誘電体酸化物などの成膜方法として、広く用いられている方法である。
【0027】
ターゲットには高純度In23の焼結体や圧粉体、高純度In金属などを用いることができる。圧粉体の場合には、ターゲットの調製が容易であるが、真空容器内が粉体で汚れやすいという欠点がある。また、金属の場合には、純度を非常に高くすることが可能であるが、レーザー光を反射するために効率的に蒸発が起こらないという欠点がある。焼結体については、近年、緻密化の技術が進み、相対密度99%以上、純度99.99%程度のものが市販されるに至っており、真空容器を汚しにくく、レーザー光を反射しない点で優れている。
【0028】
真空容器の真空到達度は、少なくとも1×10-7Torr以下とすることが好ましい。これ以上の真空度であると、真空容器中のガスはH2Oが支配的となり、ターゲットや基板の表面に多量に付着して、作製するIn23薄膜の特性を劣化させる怖れがある。できれば、真空到達度が1×10-7〜1×10-10Torrに至る、超高真空容器を用いることが好ましい。排気用ポンプには、分子ターボポンプもしくはソープションポンプが適当である。成膜中にO2ガス等の酸化性ガスを流すためである。真空容器中には、ターゲットを設置し、これに対向する位置に基板を配置する。ターゲットと基板の間の距離は、通常、数cmから10cm程度である。ターゲットは自転させることが好ましい。レーザー光の照射によって照射部分が蒸発するため、凹部が形成されるからである。また、基板も自転させることが好ましい。レーザー光の照射によってターゲット表面から爆発的に蒸発する物質は、プルームと呼ばれる気球形状の発光を伴うが、プルームの径はせいぜい数cmから10cm程度に過ぎず、その範囲内で物質が基板上に堆積するためである。より広い面積に、均一に成膜することを意図するならば、基板を回転させることが好ましいのである。レーザー光は、ターゲット表面に焦点を絞るように導入する。焦点の面積とレーザー光のエネルギー値とから、ターゲットに入射するレーザー光のパワー密度が求まる。パワー密度が低すぎれば、爆発的な蒸発現象が起こらず、薄膜を作製することができない。パワー密度が高すぎれば、成膜速度が大きくなりすぎて、良好な膜質が得られなくなるなどの問題が生じる。そこで適当なパワー密度が得られるように、レーザ光の焦点面積とエネルギーとを調節する必要がある。レーザー光の波長は紫外領域のものを選ぶのが通常である。可視領域の光はターゲットに吸収されないので、爆発的な蒸発が起こらない。紫外レーザーとしては通常、XeCl、KrF、ArF等のエキシマーレーザーや、Nd:YAGレーザーの4倍波などを用いる。Nd:YAGレーザーの様に連続光を発振できるものは、連続光のまま入射させても良いが、モードロック方式やQスイッチ方式によってパルス状に発振させた方が、エネルギーの尖塔値が高くなり、爆発的な蒸発現象を、より効率的に誘起することができる。
【0029】
基板温度は200℃〜1000℃の範囲に選び、酸素分圧は0〜1kPaの間で選ぶ。200℃以下では、酸化インジウム相の結晶化が進行せず、1000℃以上では酸化インジウムの気化が進行して膜質が悪化する。この温度範囲内では、基板温度を高くするほど、酸化インジウム薄膜の結晶性は向上し、粒子径が大きくなる傾向がある。粒子形状は、200℃〜500℃の領域では球形であるが、500℃以上とすると、次第に酸化インジウムの結晶構造を反映して立方形に変化する。
【0030】
本発明の第一の発明である高移動度酸化インジウム薄膜と、第二の発明である高抵抗酸化インジウム薄膜は、ともに上述したパルスレーザー蒸着法によって作製する。しかし、高移動度酸化インジウム薄膜と高抵抗酸化インジウム薄膜では、作製する際の雰囲気中の酸素分圧が異なる。
【0031】
本発明の第一の発明である高移動度酸化インジウム薄膜を作製する際には、酸素分圧は0〜1Paの間に設定する。酸素は全く導入しなくとも良いが、この場合には金属In相が混入する傾向があり、1Pa以上とすると抵抗率が高くなりすぎる。好ましくは1×10-5〜1×10-1Torrの範囲である。
また、成膜時の基板温度は600℃〜1000℃の範囲に設定することが好ましい。600℃より低いと高移動度の膜が得られ難く、1000℃以上では製造は困難である。なお、レーザーのエネルギー密度を下げるなどして成膜速度を下げる方法により、基板温度を600℃よりも低くすることが可能である。
【0032】
本発明の第二発明である高抵抗率酸化インジウム薄膜を作製する際には、酸素分圧は1Pa〜1kPaの間で選ぶ。1Pa以下では、高抵抗率が得られ難く、1kPa以上では爆発的に蒸発した物質が基板上に有効に堆積しにくくなる。酸素分圧は、好ましくは、5Pa以上、1kPa以下、さらに好ましくは、10Pa以上、100Pa以下である。10Pa以上とすると、絶縁性の酸化インジウム薄膜が得られやすい。ここで、絶縁性とは、1MΩcm以上の抵抗率を指す。
【0033】
上記のように、本発明の第一の発明である高移動度酸化インジウム薄膜と第二の発明である高抵抗率酸化インジウム薄膜は、酸素分圧を制御することによって、作り分けることができる。酸素分圧が0.1Pa〜2Paという中間領域にある場合には、酸素分圧が増大するに連れて、酸化インジウム薄膜の抵抗値が急激に増大する領域が存在する。このような領域では、高移動度もしくは高抵抗率を安定して得ることができない。中間領域の範囲は、基板温度によって変化し、その他の条件、例えばターゲットの密度、ターゲット−基板間距離、レーザー光の波長とパワー密度等の条件によっても変化する。そこで、種々の作製条件を決定した後に、酸素分圧を変えて成膜を行い、膜の抵抗率を測定して、中間領域の範囲を調べておくことが好ましい。高移動度酸化インジウム薄膜を作製する場合には、中間領域よりも充分に低い酸素分圧とし、高抵抗率酸化インジウム薄膜を作製する場合には、中間領域よりも充分に高い酸素分圧とする。
【0034】
高移動度酸化インジウム薄膜と高抵抗率酸化インジウム薄膜を、酸素分圧を制御することによって、作り分けることができることは、FETトランジスタなどの電子デバイスを形成する上で、非常に好都合である。例えば、FETトランジスタは、半導体の上に絶縁膜を形成して作製する。従来、酸化物材料を用いてFETトランジスタを作製しようと考えるならば、半導体材料として例えばSrTiO3を用い、絶縁体(積層)材料として例えばAl23を用いることによって作製する必要があった。この場合には、半導体材料と絶縁体材料とが異なる物質であるので、成膜に適した温度や酸素分圧が異なり、接合界面で拡散が起こる怖れがあった。また、作製方法として、例えばパルスレーザー蒸着法を選ぶならば、それぞれの材料によって作製した二種類のターゲットを準備しなくてはならず、成膜の途中でターゲットを交換する機構を作り込まねばならないなど、成膜装置が複雑になり、製造コストが上昇するといった課題があった。これに対して、本発明の高移動度酸化インジウム薄膜と高抵抗率酸化インジウム薄膜を使用して、半導体と絶縁体の接合を作製するならば、ターゲットは一つで足り、成膜装置は単純であり、製造コストは上昇しないだけでなく、成膜中に、単に酸素分圧を制御するだけで半導体と絶縁体の接合が作製できる。また、同一物質であるので、半導体と絶縁体の結晶構造は同一であり、完全にホモ・エピタキシャル成長をさせることができるので、極めて良好な接合特性を得ることができる。
【0035】
FETトランジスタの場合、半導体膜に接して絶縁体膜を形成するが、さらにこの絶縁体膜に接して金属膜を形成し、ドレイン電極とする。本発明の高移動度酸化インジウム膜と高抵抗率酸化インジウム膜を用いてFETを作製する場合には、金属膜に通常の金属材料を用いても良いが、スズを高濃度にドープしたITO膜を用いても良い。この場合には、半導体膜、絶縁体膜および金属膜のすべてがIn23結晶によって形成されるので、素子全体に置いて、ホモエピタキシャル成長を実現することができ、良好な素子特性を得ることができる。特に重要なことは、金属膜にITO膜を使用すると、素子全体が可視光に対して透明になることである。なぜなら、In23結晶は可視光に対して透明であり、スズのドープが適切になされるならば、ITO膜も透明だからである。一方、金属膜に通常の金属材料を用いるならば、半導体膜と絶縁体膜が透明であっても、金属膜が不透明であるので、素子全体にわたる透明性を実現することはできない。素子全体が透明なFETトランジスタは、例えば液晶ディスプレイのアクティブ・マトリックスを制御するTFTトランジスタとして用いるならば、実質的に画素の開口率が向上し、画面が明るくなり、消費電力が低減するなどの実用的な利点が多い。
【0036】
【実施例】
実施例1
日本真空技術(株)製レーザーアブレーション用超高真空容器にYSZ単結晶基板(001)面(フルウチ化学(株)製)を設置し、IRランプヒーターによって200℃〜800℃に加熱した。容器中に1.2×10-3Paの酸素を導入し、ラムダフィジクス(株)製KrFエキシマーレーザー光を高純度In23ターゲット(東ソー(株)製)に入射、ターゲットから30mm離して対向させた基板上にIn23を堆積させた。膜厚は200〜300nmとした。理学電機製X線回折装置により、試料の回折パターンを測定し、高配向性の薄膜となっていることが明かとなった。ファンデアパウ法により電気特性を測定した結果を表1に示す。基板温度を上げるに従い移動度が増大し、YSZ基板上でも石英ガラス基板上でも、700℃以上で70cm2/Vs以上の移動度を得た。基板温度が600℃以下であると移動度は50cm2/Vs以下にとどまる。なお、いずれの試料も抵抗率は1×10-2Ωcmよりも低かった。Rmsは最大で8nmであった。
【0037】
【表1】
Figure 0004480809
【0038】
実施例2
酸素圧を14Paとした他は実施例1と同じ方法でIn23膜をYSZ(100)単結晶基板面上に堆積した。膜厚は200〜300nmであった。試料のX線回折パターンは、高配向性の薄膜となっていることを示した。抵抗が高いためファンデアパウ法による測定ができなかったので、四端子抵抗計によって試料のシート抵抗を測定し、膜厚から抵抗率を算出した。その結果を表2に示す。400℃以上で1kΩの抵抗値が得られた。Rmsは最大で3nmであった。
【0039】
【表2】
Figure 0004480809
【0040】
実施例3
実施例1と同じ条件で、In23薄膜を100nm積層した.。ただし、基板温度は800℃とし、酸素圧は1.2 ×10-3Paとした。次に、基板温度を保ったまま、酸素圧を14Paまで増大させ、In23薄膜を100nm積層した。この二層膜のシート抵抗から求めた抵抗率は、6×104Ωcmであった。次に、HCl:H2O:HNO3=1:0.08:1の混合溶液を使用して、二層膜の表面を120nm湿式エッチングし、ホール測定を行ったところ、抵抗率は0.07Ωcm、移動度は72cm2/Vsの値が得られた。このようにして、高移動度In23膜の上に、高抵抗In23膜が形成できたことを確認した。
【0041】
実施例4
実施例1と同様の方法で、実施例3の方法で作製した二層膜の上に、ITO薄膜を作製した。ただし、In23ターゲットの変わりにITOターゲット(東ソー(株)製)を用い、基板温度を800℃に保ち、酸素分圧を1.2×10-3Paとした。この三層膜の抵抗率をファンデアパウ法で測定したところ、5×10-4Ωcmであった。このようにして、高移動度膜と高抵抗膜の積層膜上に金属的低抵抗率を有するITO膜が形成できたことを確認した。
【0042】
以上実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【0043】
例えば、ターゲットの種類や組成、レーザーアブレーションによる成膜条件、膜の厚さ、基板の種類等は、上記実施例に限定されず、適宜変更して実施できる。
また、得られた膜はエッチングなどによって任意のパターニングを施こすことができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、緻密であり、結晶性が高く、高移動度を安定的に発現する酸化インジウム薄膜及びその製造方法を提供できる。
また、 本発明によれば、緻密であり、結晶性が高く、高抵抗率を安定的に発現する酸化インジウム薄膜及びその製造方法を提供できる。
さらに、 本発明によれば、これらの薄膜を応用した、半導体/絶縁体接合素子や電子デバイス、及びそれらの製造方法を提供できる。本発明は、In23を用いた電子デバイスの設計を可能にするものであり、さらにITOを併用することにより、電子デバイスの設計範囲を格段に広げることができる。

Claims (9)

  1. X線回折法のロッキング・カーブ半値幅が0.3°以下と高い結晶性(高配向性)を有し、膜表面の自乗平均平方根粗さ(Rms)が10nm以下であり、かつ、移動度70cm2/Vs以上を有することを特徴とする高移動度酸化インジウム薄膜。
  2. X線回折法のロッキング・カーブ半値幅が0.3°以下と高い結晶性(高配向性)を有し、膜表面の自乗平均平方根粗さ(Rms)が10nm以下であり、かつ、1kΩcm以上の抵抗率を有することを特徴とする高抵抗酸化インジウム薄膜。
  3. 請求項1記載の高配向性・高移動度酸化インジウム薄膜と請求項2記載の高配向性・高抵抗酸化インジウム薄膜とを接合してなることを特徴とする半導体/絶縁体接合素子。
  4. 請求項3記載の半導体/絶縁体接合素子にITO薄膜を接合することによって形成したことを特徴とする電子デバイス。
  5. 請求項1記載の高移動度酸化インジウム薄膜と、請求項2記載の高抵抗酸化インジウム薄膜とを、パルスレーザー蒸着法における酸素分圧を制御することによって作り分け、かつ、酸素分圧を制御する際に、酸素分圧が増大するに連れて酸化インジウム薄膜の抵抗値が急激に増大する中間領域に入る酸素分圧を避けて成膜を行うことを特徴とする酸化インジウム薄膜の製造方法。
  6. 請求項1記載の高移動度酸化インジウム薄膜を、酸素分圧を0〜1Paの範囲とし、基板温度を600〜1000℃としてパルスレーザー蒸着法により作製することを特徴とする高移動度酸化インジウム薄膜の製造方法。
  7. 請求項2記載の高抵抗酸化インジウム薄膜を、酸素分圧を1Pa〜1kPaの範囲とし、パルスレーザー蒸着法により作製することを特徴とする高抵抗酸化インジウム薄膜の製造方法。
  8. 請求項1記載の高移動度酸化インジウム薄膜と請求項2記載の高抵抗酸化インジウム薄膜とを、同一装置内で同一ターゲットを用いてパルスレーザー蒸着法における酸素分圧を制御することによって作り分けて、半導体/絶縁体接合を作製することを特徴とする半導体/絶縁体接合素子の製造方法。
  9. 請求項8記載の方法で作製した半導体/絶縁体接合素子に、ITO薄膜を接合することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
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