JP2001083133A - クロマトグラフ装置 - Google Patents

クロマトグラフ装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】クロマトグラムの波形計算精度を向上させたク
ロマトグラフ装置を提供する。 【解決手段】測定対象試料を分離する分離手段と、当該
カラムによって分離された成分を検出する検出手段と、
当該検出手段によって得られるクロマトグラムを基にデ
ータ処理を行うデータ処理手段とを有するクロマトグラ
フ装置において、前記データ処理手段は、前記クロマト
グラム中の各ピークに対して、ピーク面積,ピーク高
さ,ピーク位置を計算する際に、異なるクロマトグラム
波形計算処理アルゴリズムを所定の条件の基づき切り換
えながら計算を行う。 【効果】ピーク形状に最適なクロマトグラム波形計算処
理アルゴリズムを使用してピーク位置,ピーク面積,ピ
ーク高さを計算することで、波形計算精度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料をカラムによ
って分離して検出を行うクロマトグラフ装置に係り、特
に、クロマトグラムのピーク等の演算を行うデータ処理
装置を備えたクロマトグラフ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、試料をカラムにより分離して吸光
度等の検出を行う装置としては、液体クロマトグラフや
ガスクロマトグラフ等が一般的に使用されている。これ
らのクロマトグラフ装置においては、試料を分離・検出
して得られた結果であるクロマトグラムに対して、デー
タ処理装置を用いて、ピーク面積,ピーク高さ,ピーク
位置等を求める計算を行う。この計算処理は、計算のた
めのパラメータを切り換えることは行われるものの、通
常、クロマトグラム全体について1種類のクロマトグラ
ム波形計算処理アルゴリズムを用いて計算される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】クロマトグラム波形計
算処理アルゴリズムは「微分法」や「カーブフィッティ
ング法」など複数種類存在する。これらのアルゴリズム
によって同一のピークを処理した場合、各アルゴリズム
によって計算結果の精度が異なっている。即ち、ピーク
の形状によって計算結果の精度を向上させるに最適なア
ルゴリズムが存在するということである。
【0004】そのため、一つのクロマトグラム内にピー
ク形状の異なるピークが複数存在すると、1つのクロマ
トグラム波形計算処理アルゴリズムを用いるのみでは、
正しくピーク面積,ピーク高さ,ピーク位置を求めるこ
とが困難であった。
【0005】そこで、従来はオペレータがデータ処理装
置の演算結果を見て不適切な計算がされていると思われ
るピークを見つけ出し、その部分について再度マニュア
ル操作でピーク面積,ピーク高さ,ピーク位置を再計算
していた。
【0006】しかしながら、オペレータによる再計算
は、計算誤差が発生する場合が多く、計算精度が悪いと
いう問題があった。また、クロマトグラムのピーク数が
多い場合には、マニュアル操作でピーク面積,ピーク高
さ,ピーク位置の再計算を繰り返す必要があり、その操
作に時間がかかるという問題もあった。
【0007】本発明の目的は、クロマトグラムの波形処
理を複数のアルゴリズムを用いて行うことにより、計算
精度を向上させるクロマトグラフ装置を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の特徴は、測定対象試料を分離する分離手段
と、当該カラムによって分離された成分を検出する検出
手段と、当該検出手段によって得られるクロマトグラム
を基にデータ処理を行うデータ処理手段とを有するクロ
マトグラフ装置において、前記データ処理手段は、前記
クロマトグラム中の各ピークに対して、ピーク面積,ピ
ーク高さ,ピーク位置を計算する際に、異なるクロマト
グラム波形計算処理アルゴリズムを所定の条件に基づき
切り換えながら計算を行うことである。
【0009】これにより、クロマトグラムにピーク形状
の異なる複数ピークが存在する場合、ピーク形状に最適
なクロマトグラム波形計算処理アルゴリズムで、計算す
ることができるため、正しいピーク面積,ピーク高さ,
ピーク位置を得ることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明の実
施例について説明する。
【0011】まず、図1を用いて、本実施例の全体構成
について説明する。
【0012】ポンプ10は、溶離液30を定流量で、試
料注入装置40およびカラム50に送液する。試料注入
装置40は、試料を流路に注入する。注入された試料
は、ポンプ10によって送られる溶離液によりカラム5
0に導入され、カラム50によって分離され、成分毎に
カラムから溶出される。溶出液中の各成分は、検出用流
路を備える検出器60によって吸光度等を検出される。
【0013】データ処理装置70は、検出器60によっ
て検出された信号を取り込んで、クロマトグラムとして
記憶し、クロマトグラムに対して計算処理を行う。クロ
マトグラムや計算結果のピーク面積,ピーク高さ,ピー
ク位置等はディスプレイ80やプリンタ81などの出力
装置に出力する。データ処理装置70は、例えば、パー
ソナルコンピュータによって構成されている。また、デ
ータ処理装置70には、キーボードやマウス等の入力装
置90が接続され、後述するように、クロマトグラム波
形計算処理アルゴリズムを切り換えるための条件の入力
に用いられる。次に、図2のフローチャートを用いて、
データ処理装置70における計算処理について説明す
る。
【0014】まず、アルゴリズム切り換え条件設定処理
100が行われる。この処理は、一つのクロマトグラム
に対して複数の異なるクロマトグラム波形計算処理アル
ゴリズムを用いて計算するための切り換え条件を設定す
る処理である。具体的には、ディスプレイ80にアルゴ
リズム切り換え条件設定画面を表示し、オペレータが表
示内容に沿って任意の条件を入力することで設定され、
決定した設定条件はデータ処理装置70に格納される。
【0015】次に、クロマトグラム波形計算処理110
が行われる。ここでは、アルゴリズム切り換え条件設定
処理100で設定された切り換え条件に従って、クロマ
トグラムの波形処理を行い、ピーク面積,ピーク高さ,
ピーク位置を計算する。
【0016】最後に、処理結果の出力120が行われ、
クロマトグラムと計算結果を、ディスプレイ80やプリ
ンタ81などの出力装置に出力する。
【0017】次に、図3にディスプレイ80に表示され
るアルゴリズム切り換え条件設定画面の表示例を示す。
【0018】アルゴリズム切り換え条件設定画面は、
「切り換え条件1」〜「切り換え条件6」の複数の条件
を同時に設定することができ、各条件毎に表示されてい
る□(チェックボックス)をチェックすることにより、
どの条件で切り換え計算を行うのかを指定できる。
【0019】以下に、設定条件についてのそれぞれにつ
いて説明する。
【0020】「切り換え条件1」は、指定した「保持容
量」位置でクロマトグラム波形計算処理アルゴリズムを
切り換える条件である。「保持容量」は、次のように計
算する。
【0021】保持容量=ポンプ流量×ピーク保持時間 図3で示す設定例は、保持容量0.00mlから保持容
量14.99mlまでのクロマトグラム波形計算処理ア
ルゴリズムには「微分法」を用い、保持容量15.00
mlから保持容量22.99mlまでを「カーブフィテ
ッィング法」を用い、保持容量23.00ml 以後を
「微分法」を用いるように設定したものである。
【0022】ここで、「微分法」とは、得られたクロマ
トグラムに沿って順次その傾きを計算し、傾きが予め設
定された値以上になったときをピーク開始位置とし、負
の傾きが予め設定された値以下となったときをピーク終
了位置とし、ピーク開始位置とピーク終了位置の間を成
分ピークとし、成分ピーク内の極大点をピーク位置とし
て、ピーク面積とピーク高さとを計算する方法である。
また、「カーブフィッティング法」とは、得られたクロ
マトグラムのピークのピーク関数から、成分ピークのピ
ーク面積とピーク高さとピーク位置を計算する方法であ
る。
【0023】尚、上記の条件1において、ポンプ流量が
一定の場合、保持容量の代わりにピーク保持時間を利用
しても良い。また、保持容量の設定値「23.00」の数
値は任意に変更可能である。
【0024】「切り換え条件2」は、「分離度」を基に
クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換えを
行う条件である。「分離度」は、隣接したピークからの
分離の程度を表すものであり、例えば、ピーク1とピー
ク2が存在する場合、次のように計算する。
【0025】 分離度=2×(ピーク2の保持時間−ピーク1の保持時間)/(ピーク1のベ ース幅+ピーク2のベース幅) または、 分離度=1.18×(ピーク2の保持時間−ピーク1の保持時間)/(ピーク1 の半値幅+ピーク2の半値幅) などである。他の方法で計算した値を分離度としても良
い。
【0026】図3で示した設定例は、分離度1.7を超
えるピークについては、「微分法」を用い、分離度1.
7 以下のピークについては、「ピークフィテッィング
法」を用いるものである。ここで、分離度の設定値「1.
7」の数値は任意に変更可能である。
【0027】「切り換え条件3」は、「理論段数」を基
にクロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換え
を行う条件である。「理論段数」は、ある成分に対する
カラム分離性能をあらわすものであり、例えば、次のよ
うに計算する。
【0028】 理論段数=16×(ピーク保持時間/ピークベース幅)2 または、 理論段数=5.55×(ピーク保持時間/ピーク半値幅)2 などである。他の方法で計算した値を理論段数としても
良い。
【0029】図3に示す設定例は、理論段数10000
を超えるピークについては、「微分法」を用い、理論段
数10000以下のピークについては、「カーブフィテ
ッィング法」を用いるものである。ここで、理論段数の
設定値「10000」の数値は任意に変更可能である。
【0030】「切り換え条件4」は、「S/N値」を基
にクロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換え
を行う条件である。「S/N値」は、あるピークの検出
感度を表すものであり、例えば、次のように計算する。
【0031】S/N値=2×ピーク高さ/ノイズ幅 また、他の方法で計算した値をS/N値としても良い。
【0032】図3に示す設定例は、S/N値100を超
えるピークについては、「微分法」を用い、S/N値1
00以下のピークについては、「カーブフィテッィング
法」を用いるものである。ここで、S/N値の設定値
「100」の数値は任意に変更可能である。
【0033】「切り換え条件5」は、「ピーク非対称
度」を基にクロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの
切り換えを行う条件である。「ピーク非対称度」は、あ
るピークのピーク形状の対称性を表すものであり、例え
ば、次のように計算する。
【0034】 ピーク非対称度=1/2×(1+ピーク位置から前の5%ピークベース幅/ ピーク位置から後の5%ピークベース幅) また、他の方法で計算した値をピーク非対称度としても
良い。
【0035】図3に示す設定例は、ピーク非対称度1.
1未満のピークについては、「微分法」を用い、ピーク
非対称度1.1 以上のピークについては、「ピークフィ
テッィング法」を用いるものである。ここで、ピーク非
対称度の設定値「1.1」の数値は任意に変更可能であ
る。
【0036】「切り換え条件6」は、「ピーク純度」を
基にクロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換
えを行う条件である。「ピーク純度」は、あるピークが
単一の成分から構成されている程度を表すものであり、
例えば、ピーク位置から前で1/2ピーク高さ位置のス
ペクトルをスペクトルAとし、ピーク位置から後で1/
2ピーク高さ位置のスペクトルをスペクトルBとすると
き、スペクトルAは、(a1,a2,…ai…an)で
あり、スペクトルBは、(b1,b2,…bi…bn)
である。aiおよびbiは、スペクトルAおよびスペク
トルBの波長iにおける吸光度である。ピーク純度は、
例えば次のように計算する。
【0037】
【0038】また、他の方法で計算した値をピーク純度
としても良い。
【0039】図3に示す設定例は、ピーク純度0.9を
超えるピークについては、「微分法」を用い、ピーク純度
0.9以下のピークについては、「カーブフィテッィング
法」を用いるものである。ここで、ピーク純度の設定値
「0.9」の数値は任意に変更可能である。
【0040】次に、図4に本実施例による複数のクロマ
トグラム波形計算処理アルゴリズムを切り換えて計算し
た結果のクロマトグラムの出力例を示す。図4の例は、
上記の各切換え条件の内の何れかの条件により、3回の
クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切換えが行
われた例であり、各アルゴリズムを波形処理A〜Cとし
て表している。ここで、各波形処理A〜Cには、前述の
アルゴリズム切り換え条件設定画面で設定可能なアルゴ
リズム(微分法等)の何れかがそれぞれ適用されてい
る。
【0041】尚、実際のディスプレイ80上、或いはプ
リンタ81からの出力では、クロマトグラム波形計算処
理アルゴリズムAを使用している成分ピークの保持時間
の出力色を赤,クロマトグラム波形計算処理アルゴリズ
ムBを使用している成分ピークの保持時間の出力色を青
色とし、クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムCを
使用している成分ピークの保持時間の出力色を黒色とし
ている。ここで、出力色は任意に変更可能である。
【0042】次に、図5に図4で示したクロマトグラム
のデータ処理結果の出力例について示す。図5で示すよ
うに、データ処理結果として、「波形処理」の項目を設
け、クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムAを使用
した項にはA、クロマトグラム波形計算処理アルゴリズ
ムAを使用した項にはB、クロマトグラム波形計算処理
アルゴリズムCを使用した項にはCとしている。これを
ディスプレイ表示および印刷物として出力する。ここ
で、A,B,Cなどの名称は任意に変更可能である。例
えば、微分法,カーブフィッティング法などを表すよう
にしても良い。
【0043】以上に説明したように、本実施例において
は、クロマトグラム中のピークに対して、複数の異なる
クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムを切り換え
て、ピーク面積,ピーク高さ,ピーク位置を計算するよ
うにしているため、クロマトグラムにピーク形状の異な
る複数ピークが存在する場合、ピーク形状に最適なクロ
マトグラム波形計算処理アルゴリズムに自動的に切り換
えながら計算することができ、正しいピーク面積,ピー
ク高さ,ピーク位置を得られる。また、クロマトグラム
波形計算処理結果の出力には、ピーク計算で使用したク
ロマトグラム波形計算処理アルゴリズムを明示すること
で、クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの確認を
簡単に行うこともできる。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、ピーク形状に最適なク
ロマトグラム波形計算処理アルゴリズムで計算すること
ができ、より正しいピーク面積,ピーク高さ,ピーク位
置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるクロマトグラフ装置の概要
構成図である。
【図2】本発明の処理フローを示す図である。
【図3】アルゴリズム切り換え条件設定画面の例を示す
図である。
【図4】本発明におけるクロマトグラムの出力例を示す
図である。
【図5】本発明におけるクロマトグラムの計算結果例を
示す図である。
【符号の説明】
10…ポンプ、30…溶離液、40…試料注入装置、5
0…カラム、60…検出器、70…データ処理装置、8
0…ディスプレイ、81…プリンタ、90…入力装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 正人 茨城県ひたちなか市大字市毛882番地 株 式会社日立製作所計測器グループ内 (72)発明者 滝 正弘 茨城県ひたちなか市大字市毛882番地 株 式会社日立製作所計測器グループ内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】測定対象試料を分離する分離手段と、当該
    カラムによって分離された成分を検出する検出手段と、
    当該検出手段によって得られるクロマトグラムを基にデ
    ータ処理を行うデータ処理手段とを有するクロマトグラ
    フ装置において、 前記データ処理手段は、前記クロマトグラム中の各ピー
    クに対して、ピーク面積,ピーク高さ,ピーク位置を計
    算する際に、異なるクロマトグラム波形計算処理アルゴ
    リズムを所定の条件の基づき切り換えながら計算を行う
    ことを特徴とするクロマトグラフ装置。
  2. 【請求項2】請求項1において、 上記クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムは、微分
    法或いはカーブフィッティング法の何れかであることを
    特徴とするクロマトグラフ装置。
  3. 【請求項3】請求項1において、 上記クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換
    えは、予め設定された保持容量の位置で行うことを特徴
    とするクロマトグラフ装置。
  4. 【請求項4】請求項1において、 上記クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換
    えは、予め設定された分離度に基づき行うことを特徴と
    するクロマトグラフ装置。
  5. 【請求項5】請求項1において、 上記クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換
    えは、予め設定された理論段数に基づき行うことを特徴
    とするクロマトグラフ装置。
  6. 【請求項6】請求項1において、 上記クロマトグラム波形計算処理アルゴリズムの切り換
    えは、予め設定されたS/N値に基づき行うことを特徴
    とするクロマトグラフ装置。
  7. 【請求項7】請求項1において上記クロマトグラム波形
    計算処理アルゴリズムの切り換えは、予め設定されたピ
    ーク非対称度に基づき行うことを特徴とするクロマトグ
    ラフ装置。
  8. 【請求項8】請求項1において上記クロマトグラム波形
    計算処理アルゴリズムの切り換えは、予め設定されたピ
    ーク純度に基づき行うことを特徴とするクロマトグラフ
    装置。
  9. 【請求項9】請求項1において、 前記データ処理手段における計算結果を表示する出力手
    段を有し、当該出力手段によって表示される前記計算結
    果に、計算に使用したクロマトグラム波形計算処理アル
    ゴリズムを識別する表記を合わせて表示することを特徴
    とするクロマトグラフ装置。
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