JP2001073469A - 柱の構造および耐震建物 - Google Patents

柱の構造および耐震建物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高剛性フレームを構成している柱に作用する
引抜力を軽減する。 【解決手段】 多層建物の柱4の少なくとも一カ所を軸
方向ダンパー8を介して離間可能に支持する。建物の内
部に上下方向に連続する高剛性フレーム1を設け、その
高剛性フレームを構成している柱に上記構造を採用す
る。柱脚部を離間可能とする。高剛性フレームを各層に
設けた一連の制震装置により構成し、その制震装置とし
て、鋼板の間に粘弾性体を挟み込んだ構成とされて建物
の層間変位により微小変形して大減衰力を発揮する高剛
性の粘弾性ダンパー3を採用する。建物の主架構を柱4
の曲げ剛性が梁20の曲げ剛性よりも小さい柱先行降伏
型の架構とする。柱4として充填鋼管コンクリート造の
細柱を採用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層建物の柱の構
造およびその構造を採用した耐震建物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、図6に示すように多層建物の内部
に上下方向に連続する高剛性フレーム1を設ける形態の
耐震建物が提案されている。その高剛性フレーム1とし
ては、各層に設けた耐震壁2を上下方向に連続させたい
わゆる連層耐震壁や、あるいは耐震壁2に代えて制震装
置たとえば鋼板の間に粘弾性体を挟み込んで建物の層間
変位により微小変形して大減衰力を発揮する高剛性の粘
弾性ダンパー3を設けるものが検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
な高剛性フレーム1を内部に設けた建物に地震力が作用
した場合、図6に示しているように各柱4には転倒モー
メントによる軸力が生じるが、その軸力は外周側の柱4
よりも高剛性フレーム1を構成している内周側の柱4に
おいて大きくなり、したがってそれらの柱4には過大な
圧縮力と引張力が作用し、特に引張力による杭に対する
引抜力が問題となり、その対策が必要とされている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記事情に鑑み、請求項
1の発明の柱の構造は、多層建物の柱の少なくとも一カ
所を軸方向ダンパーを介して離間可能に支持してなるも
のである。
【0005】請求項2の発明は、請求項1の発明の柱の
構造において、柱脚部を軸方向ダンパーを介して離間可
能に支持してなるものである。
【0006】請求項3の発明の耐震建物は、多層建物の
内部に上下方向に連続する高剛性フレームを設け、該高
剛性フレームを構成している柱に請求項1または2記載
の構造を採用したものである。
【0007】請求項4の発明は、請求項3の発明の耐震
建物において、前記高剛性フレームを各層に設けた一連
の制震装置により構成するとともに、該制震装置とし
て、鋼板の間に粘弾性体を挟み込んだ構成とされて建物
の層間変位により微小変形して大減衰力を発揮する高剛
性の粘弾性ダンパーを採用したものである。
【0008】請求項5の発明は、請求項4の発明の耐震
建物において、建物の主架構を、柱の曲げ剛性が梁の曲
げ剛性よりも小さい柱先行降伏型の架構としたものであ
る。
【0009】請求項6の発明は、請求項5の発明の耐震
建物において、前記柱を鋼管内にコンクリートを充填し
てなる充填鋼管コンクリート柱としたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態である
柱の構造を示す図である。本実施形態は図6に示したよ
うな高剛性フレーム1を有する多層の耐震建物に本発明
を適用したものであって、高剛性フレーム1を構成して
いる柱4の柱脚部を図1に示す構造としたものである。
【0011】本実施形態の柱4は鋼管5内にコンクリー
ト6を充填した充填鋼管コンクリート造とされ、その柱
脚部は分断線7の位置で柱下部4aと柱上部4bとに分
断されていて、通常時は(a)に示すように柱下部4a
と柱上部4bとが突き合わされて長期圧縮軸力(通常、
降伏圧縮荷重N0の0.3〜0.4倍程度である)を支
持しているが、長期圧縮軸力を越える引張力が作用した
際には(b)に示すように柱上部4bが柱下部4aに対
して上方へ離間つまり浮き上がることが可能とされてお
り、かつその分断部には柱上部4bが浮き上がった際に
作動する軸方向ダンパー8が設けられている。
【0012】軸方向ダンパー8は、この柱4よりもやや
大径の鋼管9を分断線7の周囲に同軸的に装着してその
下端部を柱下部4aに対して溶接等により固定し、その
鋼管9の内面と柱4外周面との間の環状の空隙に粘弾性
材10を充填し、その粘弾性材10によって鋼管9内面
と柱4外面とを接着した構成とされている。この軸方向
ダンパー8は、(b)に示すように柱上部4bが浮き上
がる際には粘弾性材10が剪断変形を受け、その粘性抵
抗力により浮き上がりを制動するとともにエネルギーを
有効に吸収し得るものである。
【0013】図2は上記構造による柱4の軸荷重−歪線
図である。これから明らかなように、長期圧縮荷重を越
える引張荷重が柱4に作用した際には柱上部4bが浮き
上がって上方へ変位するから、このような構造の柱4で
は図2に破線で示す通常の柱のように引張荷重を受ける
ことがなく、そのため杭に対する引抜力も問題とならな
い。なお、柱4の浮き上がり変位量はレベル2クラスの
地震時においても些少である。図2に例示しているよう
に、長期圧縮荷重が0.3N0、転倒軸力が±0.4
0、したがって最大引抜荷重が−0.1N0、固有周期
が2秒、最大入力エネルギー速度が120cm/sec
の場合における試算によれば、柱4の最大浮き上がり量
2δ0は3.67cmに過ぎない。
【0014】図3は本発明の柱の構造の他の実施形態を
示すものである。これは軸方向ダンパー8として鋼材の
塑性変形を利用する鋼材ダンパーを採用したもので、柱
下部4aに固定した鋼管12と柱上部4bとの間に低降
伏点鋼からなる曲げ降伏材13を3段にわたって介装
し、それを曲げ降伏させることで柱上部4bの浮き上が
りを許容せしめ、かつエネルギー吸収を行うものであ
る。
【0015】図4は本発明の柱の構造のさらに他の実施
形態を示すものである。これは軸方向ダンパー8として
柱下部4aに固定した容器体15内にオリフィス16を
設けて高粘性体17を充填したオリフィスダンパーを採
用し、高粘性体17の粘性抵抗力により柱上部4bの浮
き上がりを許容せしめ、かつその際にエネルギー吸収を
行うものである。
【0016】図5は本発明の実施形態である耐震建物の
概要を示す。これは、図6に示した従来の耐震建物と同
様に内部に上下方向に連続する一連の高剛性フレーム1
を有するものであり、その高剛性フレーム1を構成して
いる柱4の柱脚部に上記のような構造を採用したもので
ある。本実施形態の耐震建物は、高剛性フレーム1の各
層に上述したような鋼板の間に粘弾性体を挟み込んだ構
成の粘弾性ダンパー3を設け、かつそれら粘弾性ダンパ
ー3の性能を最大限に発揮するべく、この建物全体の主
架構を柱4の曲げ剛性が梁20の曲げ剛性に先行する柱
先行降伏型の架構としたものである。
【0017】すなわち、上記の粘弾性ダンパー3は高剛
性で微小変形により大減衰力を発揮するものであるが、
このような粘弾性ダンパー3の性能を十分に発揮させる
ためには、理論上、建物全体が減衰しやすいものとなる
ように主架構の剛性を小さくすることが好ましい。しか
し、梁先行降伏を前提としている従来一般の建物では主
架構全体の剛性を小さくすることは自ずと限界があり、
したがって粘弾性ダンパー3の性能を必ずしも有効に活
用し得るものとはならない場合がある。そこで、本実施
形態の耐震建物では、梁20の曲げ剛性よりも柱4の曲
げ剛性を相対的に小さくする柱先行降伏型の主架構を採
用し、それにより層剛性を小さくして建物全体を減衰し
やすいものとし、それによって粘弾性ダンパー3の減衰
力を最大限に発揮せしめて優れた減衰性能を得られるも
のである。
【0018】そして、本実施形態の耐震建物では、柱4
の曲げ剛性を小さくするために、柱4としては長期圧縮
軸力に対する耐力を確保できる程度の小断面の細柱を採
用し、かつその細柱として上記各実施形態の構造におい
て採用していた充填鋼管コンクリート造を採用し、これ
により柱4を十分に小径で高軸耐力を有し、かつその曲
げ剛性を梁の曲げ剛性よりも1/2〜1/10程度にま
で小さくすることが可能である。しかも、柱4を充填鋼
管コンクリート造の細柱とすることで弾性変形性能が向
上するとともに、その柱4の採用により建物全体が長周
期化するという利点も生じ、さらにはこのような柱4の
採用により主架構の所要鋼材量が削減されてコストダウ
ンを図ることもできる。
【0019】このように、本実施形態の耐震建物は、高
剛性フレーム1を構成している柱4の柱脚部を軸方向ダ
ンパー8を介して浮き上がり可能に支持し、かつその柱
4を充填鋼管コンクリート造の細柱として柱先行降伏型
の主架構を採用したことにより、減衰性能、変形性能、
地震応答を十分に改善でき、大地震時においても建物の
応答を微小に抑制して無損傷とできるという究極の制震
構造ともいえるものである。
【0020】なお、本発明の耐震建物は、高剛性フレー
ム1を構成している柱4の構造としてたとえば図1、図
3、図4に示したような構造を採用すれば良いのであ
り、その限りにおいて高剛性フレーム1としては粘弾性
ダンパー3に代えて通常の耐震壁2からなる連層耐震壁
によるものとしたり、あるいは粘弾性ダンパー3に代わ
る他の制震装置を組み込むものであっても良い。また、
上記実施形態のように主架構を柱先行降伏型とすること
が好ましいがそれに限るものではなく、柱4の構造も充
填鋼管コンクリート造に限るものではない。さらに、本
発明は柱の少なくとも一カ所を軸方向ダンパーを介して
離間可能に支持すれば良く、上記実施形態のように柱脚
部に適用することに限らず任意の一カ所あるいは任意の
複数箇所に同様の構造を採用して良い。
【0021】
【発明の効果】請求項1の発明の柱の構造は、多層建物
の柱の少なくとも一カ所を軸方向ダンパーを介して離間
可能に支持するので、杭に過大な引抜力が作用すること
を防止することができ、かつ軸方向ダンパーにより地震
エネルギーを有効に吸収することができる。
【0022】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て柱脚部を離間可能としたので、建物全体の引張荷重が
杭に伝達されることを確実に防止でき合理的である。
【0023】請求項3の発明の耐震建物は、高剛性フレ
ームを構成している柱に請求項1または2の発明の構造
を採用したので、高剛性フレームにより周辺フレームの
損傷を回避することができ、かつ高剛性フレームに過大
な引抜力が作用することを防止することができる。
【0024】請求項4の発明は、請求項3の発明におい
て、微小変形で大減衰力を得ることができる一連の粘弾
性ダンパーにより高剛性フレームを構成したので、それ
ら粘弾性ダンパーにより優れた制震効果を得ることがで
きる。
【0025】請求項5の発明は、請求項4の発明におい
て、建物の主架構を柱の曲げ剛性が梁の曲げ剛性よりも
小さい柱先行降伏型の架構としたので、建物の層剛性を
十分に小さくし得て減衰性能を高めることができ、した
がって粘弾性ダンパーの性能を最大限に発揮させて優れ
た制震構造の耐震建物を実現することができる。
【0026】請求項6の発明は、請求項5の発明におい
て、柱を充填鋼管コンクリート柱としたので、小断面で
高軸剛性かつ低曲げ剛性しかも弾性変形性能に優れた柱
とすることができ、柱先行降伏型の架構を容易に実現す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の柱の構造の一実施形態を示す概略構
成図である。
【図2】 同、軸荷重−歪線図である。
【図3】 本発明の柱の構造の他の実施形態を示す概略
構成図である。
【図4】 同、さらに他の実施形態を示す概略構成図で
ある。
【図5】 本発明の耐震建物の実施形態を示す概要図で
ある。
【図6】 内部に高剛性フレームを設けた耐震建物の概
要図である。
【符号の説明】
1 高剛性フレーム 2 耐震壁 3 粘弾性ダンパー 4 柱 5 鋼管 6 コンクリート 8 軸方向ダンパー 9 鋼管 10 粘弾性材 12 鋼管 13 曲げ降伏材 15 容器体 16 オリフィス 17 高粘性体 20 梁

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多層建物の柱の少なくとも一カ所を軸方
    向ダンパーを介して離間可能に支持してなることを特徴
    とする柱の構造。
  2. 【請求項2】 柱脚部を軸方向ダンパーを介して離間可
    能に支持してなることを特徴とする請求項1記載の柱の
    構造。
  3. 【請求項3】 多層建物の内部に上下方向に連続する高
    剛性フレームを設け、該高剛性フレームを構成している
    柱に請求項1または2記載の構造を採用してなることを
    特徴とする耐震建物。
  4. 【請求項4】 前記高剛性フレームを各層に設けた一連
    の制震装置により構成するとともに、該制震装置とし
    て、鋼板の間に粘弾性体を挟み込んだ構成とされて建物
    の層間変位により微小変形して大減衰力を発揮する高剛
    性の粘弾性ダンパーを採用してなることを特徴とする請
    求項3記載の耐震建物。
  5. 【請求項5】 建物の主架構を、柱の曲げ剛性が梁の曲
    げ剛性よりも小さい柱先行降伏型の架構としたことを特
    徴とする請求項4記載の耐震建物。
  6. 【請求項6】 前記柱を鋼管内にコンクリートを充填し
    てなる充填鋼管コンクリート柱としたことを特徴とする
    請求項5記載の耐震建物。
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