JP2000319064A - セラミック材料およびそれを用いた転がり軸受と切削工具およびセラミック材料の製造方法 - Google Patents

セラミック材料およびそれを用いた転がり軸受と切削工具およびセラミック材料の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 工具や転動体としての寿命が長いAl23-
ZrO2複合材からなるセラミック材料およびそれを用
いた転がり軸受および上記セラミック材料の製造方法を
提供する。 【解決手段】 このセラミック材料の製造方法は、ま
ず、平均粒子径0.3μmの単結晶Al23粉末と事前
にスラリー化して超音波分散した平均粒子径0.3μm
のZrO2粉末を所定量だけ秤量し、溶媒である純水と
一緒にボールミルで粉砕混合した。そして、図3の表に
示す試料No1〜13のように、Al23を99.5体
積%〜80体積%にし、ZrO2を0.5体積%〜20
体積%にしたセラミック材料を作製した。このセラミッ
ク材料は、10μmを越えるZrO2の凝集粒子が実質
的に無いことによって、低応力で破壊される破壊源(気
孔等)の発生を抑えることができ、耐久力や機械的強度
を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、Al23とZr
2を主成分とするAl23-ZrO2複合材からなり、
工具や転がり軸受の構成部品としての使用に適するセラ
ミック材料およびそれを用いた転がり軸受、および上記
セラミック材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、Al23を主成分としZrO
2を副成分とするAl23-ZrO2複合材は、安価だが
靱性に乏しいAl23セラミックスの強度をZrO2
高めた高強度部材であることが知られている。このAl
23-ZrO2複合材は、種々の耐摩耗部材,構造用部材
として実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このAl2
3-ZrO2複合材では、ZrO2が正方晶であることが
必要であった。
【0004】しかしながら、このAl23-ZrO2複合
材を、工具や転がり軸受の構成部品,例えば転動体とし
て用いた場合に、以下の2つの問題点があった。
【0005】 ZrO2が、製造工程において、十分
に分散せず、工具や転動体としての寿命が低下する。あ
るいは、10μmを越えるZrO2の凝集体が存在する
と、工具や転動体としての寿命が低下する。
【0006】 ZrO2の結晶系が正方晶である場合
において、10μm以上の凝集したZrO2が存在する
場合に、100℃程度以上の温度の水中、あるいは、2
00〜300℃の大気中で使用すると、正方晶系のZr
2が単斜晶に転移し、複合材料の強度が低下し、その
ために、工具や転動体としての寿命が低下する。
【0007】そこで、この発明の目的は、(1)工具や転
動体としての寿命が長いAl23-ZrO2複合材からな
るセラミック材料およびそれを用いた転がり軸受および
上記セラミック材料の製造方法を提供することにある。
【0008】また、この発明のもう1つの目的は、(2)
高温の水中や200〜300℃の大気中でも、工具や転
動体としての寿命が長いAl23-ZrO2複合材からな
るセラミック材料およびそれを用いた転がり軸受、およ
び上記セラミック材料の製造方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1の発明のセラミック材料は、Al23とZ
rO2を主成分とし、上記ZrO2の結晶系は、単斜晶,
正方晶,立方晶のうちの少なくとも1つであり、上記A
23が、99.5体積%〜80体積%、上記ZrO2
が、0.5体積%〜20体積%で、上記ZrO2の凝集
粒子サイズが10μm以下であることを特徴としてい
る。
【0010】また、請求項2の発明のセラミック材料
は、Al23とZrO2を主成分とし、上記ZrO2の結
晶系は、実質的に、単斜晶と立方晶とのうちのいずれか
または、単斜晶と立方晶との混合晶であり、上記Al2
3が、99.5体積%〜80体積%、上記ZrO2が、
0.5体積%〜20体積%で、上記ZrO2の凝集粒子
サイズが10μm以下であることを特徴としている。
【0011】ZrO2の結晶系が正方晶であると、この
複合体を100℃あるいはそれ以上の温度の水分存在下
に長時間、たとえば、500時間程度浸漬しておくと、
5〜10μmの粒子は、単斜晶系に転移してしまう。ま
た、大気中でも、200〜300時間で同様な転移が生
じる。
【0012】ZrO2の粒子が正方晶系から単斜晶系に
転移すると、Al23-ZrO2複合体の中で、ZrO2
粒子は体積膨張し、周囲に歪みやクラックを与えること
によって、複合体の機械的性質を低下させるので、Zr
2の結晶系は単斜晶系、および、立方晶系であること
が望ましい。
【0013】しかし、原料に単斜晶系のZrO2を用い
ても、この単斜晶系のZrO2複合体を焼結する150
0℃以上の高温では、正方晶、または、立方晶になって
おり、焼結終了後、室温に戻った時には、単斜晶に一部
が転移した構造となっている。このため、複合体中に正
方晶系のZrO2が存在することは避けられない。
【0014】しかし、一般に使用されるY23やMgO
などでもって、部分的に安定化させた、いわゆる、部分
安定化ZrO2を添加したAl23-ZrO2複合体で
は、前述の使用条件下で単斜晶に転移し、複合体全体の
破壊を誘発する。
【0015】これに対し、本発明のように、単斜晶が多
いZrO2が分散したAl23-ZrO2複合体、もしく
は、立方晶の多いZrO2が分散したAl23-ZrO2
複合体では、同じ条件でも転移が起こりにくく、また、
以下に述べるように、その凝集体の大きさを10μm以
下にすれば、実用上、大きな問題は生じない。
【0016】ZrO2の体積%の下限を、0.5体積%
とする理由は、0.5体積%未満では、複合材の分散強
化で強度を高める効果が乏しい上に、Al23結晶の焼
結中の粒成長を抑制する効果が乏しいからからである。
また、ZrO2の体積%の上限を、20体積%とする理
由は、ZrO2の体積%が20体積%を越えると、10
μm以上のZrO2凝集粒子を実質的に無くすことが技
術的に困難になるからである。
【0017】ここで、図7(A)〜(C){(写真1)〜(写
真3)}を参照して、ZrO2凝集粒子が実質的に無いこ
とが必須である理由を説明する。
【0018】Al23が90体積%、ZrO2が10体
積%で、ZrO2が単斜晶系であって、ZrO2の1つ1
つの粒子は、1μm以下である複合体の転動試験を行っ
たところ、図7(A){(写真1)}に示すように、約30
0μm×600μmの大きな欠けを生じた。上記複合体
の欠けを拡大した様子を、図7(B){(写真2)}に示
す。図7(B)に示すように、ZrO2の凝集した白色部
分では、粒子が脱落しているが、この図中、小さい白色
に見える凝集していないZrO2粒子の近傍では、粒子
の脱落は見られない。なお、図7(C)に示すように、転
動試験を行っていない試料では、白色部に粒子の脱落が
無いことから、上述の粒子の脱落が転動試験によって起
こったことが分かる。図7(B)に示したような、粒子の
脱落が引き金になって、図7(A)に示すような、大きな
欠けが発生するから、複合体の寿命を長くするために
は、ZrO2の凝集を無くすことが必要である。
【0019】理想的には、ZrO2粒子が全く凝集して
おらず、1μm以下の単粒子がAl23粒子に挟まれた
微構造にすることが望ましい。しかし、それを実現する
ことは現実の集合体では困難であるから、寿命との関連
で、ZrO2の凝集粒子サイズが10μm以下であるこ
とが必要である。言い換えれば、10μmを越える凝集
粒子が実質的に無いことが必要である。なお、ここで、
実質的に無いとは、1mm×1mmの面積の中に、10
μm程度の凝集粒子が数個程度だけ存在することを含ん
でいる。より好ましくは、5μm程度を越える凝集粒子
が実質的に無いことが望ましい。
【0020】また、請求項3の発明のセラミック材料の
製造方法は、請求項1または2に記載のセラミック材料
を製造する方法であって、原料の一次粒子が、95体積
%以上のαアルミナの単結晶を含有していることを特徴
としている。
【0021】この請求項3の発明では、単結晶のアルミ
ナ原料粒子は、表面活性が均一で、粉末混合時に一次粒
子がほぐれやすくて、ZrO2との均一混合が可能とな
り、焼結時の焼結速度が均一であるので、異常粒成長の
ない均一粒子径の焼結複合体が得られる。
【0022】また、請求項4の発明のセラミック材料の
製造方法は、請求項3に記載のセラミック材料の製造方
法において、予め物理的分散,化学的分散,電気的分散の
うちの少なくとも1つを行った上記ZrO2を、上記9
5体積%以上のαアルミナの単結晶を含有している原料
の一次粒子に添加し、粉砕,混合、焼結を行うことを特
徴としている。
【0023】この請求項4の発明では、単斜晶,正方晶,
立方晶のうちの少なくとも1つのZrO2に予め物理的
分散,化学的分散,電気的分散のうちの少なくとも1つを
行うから、Al23中のZrO2の分散を促進できる。
したがって、焼結時の気孔発生を抑えることができ、機
械的寿命向上を図ることができる。
【0024】また、請求項5の発明の転がり軸受は、外
輪,内輪および転動体のうちの少なくとも1つを、請求
項1または2に記載のセラミック材料で作製したことを
特徴としている。
【0025】この請求項5の発明では、耐摩耗性が優
れ、耐久性が優れた転がり軸受を提供できる。
【0026】また、請求項6の発明の切削工具は、請求
項1または2に記載のセラミック材料で作製したことを
特徴としている。
【0027】この請求項6の発明では、耐摩耗性が優
れ、耐久性が優れた切削工具を提供できる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、この発明を図示の実施の形
態により詳細に説明する。
【0029】この発明の実施の形態としてのセラミック
材料の製造方法を説明する。まず、平均粒子径0.3μ
mの単結晶Al23粉末と事前にスラリー化して超音波
分散した平均粒子径0.3μmのZrO2粉末、また
は、Zr(OH)2粉末を、所定量だけ秤量し、溶媒であ
る純水とともにボールミルで粉砕混合した。
【0030】上記所定量とは、図3の表に示す試料No
1〜13のように、Al23が、99.5体積%〜80
体積%、ZrO2が、0.5体積%〜20体積%になる
量である。
【0031】次に、上記ボールミルから、上記粉砕混合
物を取り出した後、スプレードライヤーにて、乾燥造粒
した調整粉末を焼結した後に、50×50×5tmmと
なる金型を用いて、300kg/cm2で一軸加圧成形
し、さらに、1000kg/cm2で、静水圧加圧成形
し、平板状セラミック材料の試料を作製した。
【0032】そして、脱脂の後、上記試料を大気雰囲気
中で1550℃で1時間で予備焼結し、その後、Arガ
ス中,1800気圧,1400℃で1時間処理して焼結
を行った。
【0033】そして、得られた試料を、4×3×40m
mの曲げ試験片、および、50×50×5tmmの転動
試験用板に#240のダイヤモンドホイールを用いて加
工した。さらに、加工の傷による影響を防止するため
に、ダイヤモンド砥粒で研磨し、平均面粗さRa=0.
01μm以下、最大面粗さRmax=0.2μm以下と
し、各種評価テストに供した。
【0034】また、焼結体中のZrO2粒子分散状態
は、鏡面加工後に画像解析装置で解析し、粒子径、分散
状態を定量的に算出した。図3および図4に示す表に、
組成とその諸特性を示し、それについて、以下に説明す
る。
【0035】(1) 添加するZrO2粒子の粒子径の効
果 Al23に添加するZrO2の添加効果は、主として、
マトリックスであるAl23の分散強化および、粒成長
抑制効果によるAl23結晶粒子の微細化にあり、複合
材の強度,靱性,硬さを向上する効果である。
【0036】図5に示す比較品No23のようなAl2
3単体に比べ、図3に示す本発明品No1〜13で
は、機械的性質(強度,靱性,硬さ)が大幅に向上すること
が認められる。この効果は、ZrO2粒子がAl23
粒界に存在する数によって、決定されるので、添加量が
多いか、あるいは、ZrO2粒子が多い(いいかえれば、
細かい粒子)という条件が必要になる。
【0037】この発明の実施形態で作製されたセラミッ
ク材料(試料No1〜No13)のように、ZrO2粒子
の平均粒子径が1μm以下の場合には、ZrO2の添加
量が、0.5体積%からZrO2の添加効果が発現す
る。
【0038】しかし、ZrO2の添加量には、制限があ
り、ZrO2添加量の増加に伴い、強度や靱性が向上す
るものの、ZrO2の粒子数が増えることによって、Z
rO2粒子が凝集し、図5,図6に示す比較用の試料No
17〜No22のように、ZrO2が20体積%以上の
ものでは、ZrO2の性質がAl23の性質よりも優先
的に現れ、硬さの低下や転動試験におけるZrO2粒子
の脱落,摩耗が進行するという特性の劣化が生じる。
【0039】このため、成分の凝集が性能の劣化を引き
起こすような用途では、ZrO2の添加量は、0.5〜
20体積%に限定される。
【0040】(2) 添加するZrO2の結晶系の効果 添加するZrO2の結晶系は、次の,,の3つの種
類が考えられる。
【0041】 粉末の状態では単結晶で、1000℃
で正方晶に転移する安定化剤の無い未安定化ZrO2、 3〜8モルのY23などで安定化し、1000℃で
一部は正方晶、残りが単斜晶で残る部分安定化Zr
2、 8モル以上のY23などで安定化し、立方晶のまま
安定化している完全安定化ZrO2
【0042】この発明の実施形態では、図3の試料No
1〜No13の欄に示すように、添加するZrO2は、
上記,,のいずれでも、0.5〜20体積%の範囲
内である。さらに、この発明の実施形態では、図4のZ
rO2凝集の欄に示すように、1mm×1mmの面積の
中に、φ5μm以上の凝集粒子が10個以下(◎印:試
料No1,2,3,6,7,10,11)、あるいは、100
個以下(○印:試料No4,5,8,9,12,13)存在す
る。
【0043】そして、この発明の実施形態で作製したセ
ラミック材料によれば、図3に示す優れた機械的特性
(硬さ,曲げ強度,破壊靱性)を示し、かつ、図4の転動試
験の欄に示すように100時間以上の転動試験寿命特性
を示すことが認められた。
【0044】上記転動試験とは、図2に示すように、ス
ラスト型転がり疲労試験機20を用い、上記実施形態で
作製した平板状セラミック材料21を台23上に載置
し、保持器25で保持されたボール22を、上記平板状
セラミック材料21と上側軌道輪26とで挟み、荷重9
80N,回転数1200回転/分で、寿命試験を行っ
た。上記荷重は、台23の下側凹部に配置したボール2
2と上記軌道輪26を回転させる回転軸27との間に加
えた。相手材としての上記ボール22は、窒化けい素製
とし、直径φ3/8”=9.525mmとした。また、
潤滑剤24としては、スピンドル油を用いた。そして、
寿命判定は、振動値が初期の3倍になった時点とし、そ
の時点でアラームにより試験機20が停止するようにし
た。
【0045】図4に示すように、この実施形態のセラミ
ック材料の製造方法でもって製造したセラミック材料
(試料No1〜13)によれば、上記転動試験寿命が、1
00時間以上であり、図6に示す発明外品(試料No1
4〜22)や比較品(No23,24)に比べて、優れた転
動寿命特性を示した。
【0046】さらには、この実施形態によるセラミック
材料(No1〜13)によれば、図3に示すように、硬
さ,曲げ強度,破壊靱性が、93.1〜94.2(HR
A),820〜1050(MPa),3.9〜4.9(MPa
・m1/2)であった。これに対し、図5に示す発明外品
(試料No14〜22)や比較品(No23〜25)では、
硬さ,曲げ強度,破壊靱性が、91.0〜94.3(HR
A),690〜1700(MPa),3.5〜7.8(MPa
・m1/2)であった。
【0047】すなわち、この発明の実施の形態で作製し
たセラミック材料によれば、機械的性質や転動特性が結
晶系に関与せず、優れた性質(硬さ,曲げ強度,破壊靱性)
と性能(転動寿命)の両方を得ることができることを実験
で確認できた。
【0048】(3)凝集ZrO2が諸特性に及ぼす影響と
その存在確率 凝集ZrO2の存在が摩耗特性、特に、転動摩耗特性に
及ぼす影響について以下に説明する。
【0049】ZrO2の凝集粒子が生じる第1の原因と
して、粉末混合時に一時粒子が電気的力(静電引力)、も
しくは、ファンデルワールス力による物理的な結合が原
因となって、数個の粒子から数万個以上の粒子塊となっ
て、ボールミルなどの物理的解砕や粉砕で一次粒子にな
らなかった場合がある。この凝集ZrO2は、プレス体
のように、一次粒子が密に充填されていない(圧粉体密
度が低い)ため、セラミック材料をなす複合体の焼結時
に同時に凝集ZrO2の単位で焼結が進行するときに内
部に気孔が残る。この気孔が存在する凝集ZrO2の部
分は、強度,靱性が低く、応力が加わった場合に応力集
中を生じ、低い応力で破壊する破壊源となる。曲げ応力
が低下したり、図6の試料No20〜22のように、転
動試験にて短い寿命となるのは、この凝集ZrO2に起
因するものである。
【0050】また、凝集ZrO2が生じる第2の原因と
して、ZrO2の添加量が多い場合が挙げられる。添加
するZrO2の分散状態が一次粒子のみの均一状態であ
っても、図5,6に示す試料No17〜22のように、
その添加量が25体積%を越えると、分散粒子が繋がっ
て、網状構造を生成することになる。すなわち、ZrO
2粒子が多いために、ZrO2の一次粒子どうしが繋が
り、数粒子の凝集体になることが認められた。Al23
中に一次粒子が独立して均一に存在するZrO2と比べ
て、この凝集粒子はZrO2多結晶体、つまり、ZrO2
の特性を示すことになる。
【0051】ZrO2凝集粒子の大きさと転動破壊との
関係について検討した結果、画像解析で測定し、不定形
を同一面積の円に面積換算した場合に、ZrO2凝集粒
子がφ10μm以下の面積、好ましくは、φ5μm以下
の凝集体であれば、転動試験時の破壊に影響し難いとい
う知見を得た。さらに、確率的な検討を加えた結果、1
000μm×1000μmの面積にφ5μmのZrO2
凝集体が10個以下、好ましくは、5個以下であれば、
さらに影響を受け難いことが認められた。一方、ZrO
2凝集粒子サイズがφ10μmを超えると、上記転動試
験で短寿命(100時間未満)になることが確認されてい
る。
【0052】この条件を満たすための分散方法として、
Al23,ZrO2の粉末を混合する時に、添加前にあら
かじめZrO2をスラリー化し、超音波分散,アンモニ
アによるゼータ電位およびPHの調整,ポリカルボシラ
ンによる表面処理の少なくとも1種または2種以上の処
理をすることによって、ZrO2の分散を飛躍的に促進
でき、ZrO2の凝集を抑制できる。
【0053】さらに、マトリックスであるアルミナは、
原料段階において、95体積%以上のαアルミナの単結
晶であることが必要になる。これは、5体積%以上のα
相以外のγ相もしくは非晶質のアルミナ原料粒子は活性
が高いために、焼結段階で異常粒成長を生じるからであ
る。また、5体積%以上の多結晶からなるアルミナ原料
粒子も異常粒成長を起こすからである。
【0054】これに対して、単結晶のαアルミナ原料粒
子は、表面活性が均一で、粉末混合時に一次粒子がほぐ
れやすくて、ZrO2との均一混合が可能となり、焼結
時の焼結速度が均一であるので、異常粒成長のない均一
粒子径の焼結複合体が得られる。
【0055】ところで、セラミックベアリングは、窒化
けい素製のものがすでに実用化されているが、窒化けい
素を構成する粒界のガラス相は酸などの薬品に侵されや
すいので、腐食環境下での窒化けい素製セラミックベア
リングの使用は制限されているのが実状である。
【0056】これに対し、上記実施形態で作製された本
発明の実施形態としてのセラミック材料は、図4の耐食
性の欄を参照すれば分かるように、浸漬試験における重
量減少率が(0.01mg/cm2・日)以下であって、硝
酸,硫酸,塩酸の各酸雰囲気中でも腐食による強度の低下
がなく、転がり軸受や耐摩耗、摺動材として使用できる
ことが分かった。
【0057】すなわち、図1に示すように、上記実施形
態で作製されたセラミック材料(試料No1〜13)で、
転がり軸受の外輪1,内輪2,玉3を作製すれば、耐摩耗
性に優れ、寿命,耐久性能を向上させることができる。
なお、保持器5は、フッ素樹脂で作製した。また、この
セラミック材料で切削工具を作製した場合には、粒子脱
落によるチッピングや破損の頻度が少なくなり、寿命が
向上することが認められた。
【0058】
【発明の効果】以上より明らかなように、この発明のセ
ラミック材料のように、ZrO2の凝集粒子サイズが1
0μm以下であることによって、耐久力や機械的強度を
向上させることができる。
【0059】また、この発明のセラミック材料の製造方
法は、原料の一次粒子が95体積%以上のαアルミナの
単結晶を含有しているので、異常粒成長のない均一粒子
径の焼結複合体が得られ、機械的寿命向上を図ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のセラミック材料の製造方法の実施
の形態で作製したセラミック材料で作製した転がり軸受
の断面図である。
【図2】 上記実施形態で作製したセラミック材料を試
料として、転動試験を行う様子を示す断面図である。
【図3】 上記実施形態で作製した本発明のセラミック
材料の組成,機械的強度等を示す図表である。
【図4】 上記実施形態で作製した本発明のセラミック
材料の結晶構造,転動試験結果等を示す図表である。
【図5】 比較対象のセラミック材料の組成,機械的強
度等を示す図表である。
【図6】 比較対象のセラミック材料の結晶構造,転動
試験結果等を示す図表である。
【図7】 図7(A)は10μmを越えるZrO2の凝集
粒子が存在したために転動試験において欠けが生じた様
子を示す写真であり、図7(B)は上記欠けの箇所でZr
2粒子の脱落が起こっていることを示す拡大写真であ
り、図7(C)は10μmを越えるZrO2の凝集粒子が
存在するが転動試験を行っていないのでZrO2粒子の
脱落が起こっていない様子を示す拡大写真である。
【符号の説明】
1…外輪、2…内輪、3…玉、5…保持器、20…スラ
スト型転がり疲労試験機、21…平板状セラミック材
料、22…ボール、23…台、25…保持器、26…上
側軌道輪、27…回転軸。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B28B 3/00 102 B28B 3/00 102 (72)発明者 服部 智哉 大阪府大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内 (72)発明者 北村 和久 大阪府大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内 (72)発明者 和田 重孝 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 永野 光芳 福岡県福岡市博多区美野島1丁目2番8号 日本タングステン株式会社内 (72)発明者 松尾 繁 福岡県福岡市博多区美野島1丁目2番8号 日本タングステン株式会社内 Fターム(参考) 3C046 FF33 FF42 FF51 FF57 3J101 AA02 AA32 AA42 AA52 AA62 BA10 BA53 BA54 BA70 DA20 EA42 FA31 4G030 AA17 AA36 BA19 GA09 GA11 4G054 AA05 BE02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al23とZrO2を主成分とし、 上記ZrO2の結晶系は、単斜晶,正方晶,立方晶のうち
    の少なくとも1つであり、 上記Al23が、99.5体積%〜80体積%、 上記ZrO2が、0.5体積%〜20体積%で、 上記ZrO2の凝集粒子サイズが10μm以下であるこ
    とを特徴とするセラミック材料。
  2. 【請求項2】 Al23とZrO2を主成分とし、 上記ZrO2の結晶系は、実質的に、単斜晶と立方晶と
    のうちのいずれか、または、単斜晶と立方晶との混合晶
    であり、 上記Al23が、99.5体積%〜80体積%、 上記ZrO2が、0.5体積%〜20体積%で、 上記ZrO2の凝集粒子サイズが10μm以下であるこ
    とを特徴とするセラミック材料。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のセラミック材
    料を製造する方法であって、 原料の一次粒子が、95体積%以上のαアルミナの単結
    晶を含有していることを特徴とするセラミック材料の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載のセラミック材料の製造
    方法において、 予め物理的分散,化学的分散,電気的分散のうちの少なく
    とも1つを行った上記ZrO2を、上記95体積%以上
    のαアルミナの単結晶を含有している原料の一次粒子に
    添加し、 粉砕,混合、焼結を行うことを特徴とするセラミック材
    料の製造方法。
  5. 【請求項5】 外輪,内輪および転動体のうちの少なく
    とも1つを、請求項1または2に記載のセラミック材料
    で作製したことを特徴とする転がり軸受。
  6. 【請求項6】 請求項1または2に記載のセラミック材
    料で作製したことを特徴とする切削工具。
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