JP2002154877A - 窒化珪素焼結体およびそれを用いた摺動部材並びにベアリングボール - Google Patents

窒化珪素焼結体およびそれを用いた摺動部材並びにベアリングボール

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JP2002154877A
JP2002154877A JP2000343094A JP2000343094A JP2002154877A JP 2002154877 A JP2002154877 A JP 2002154877A JP 2000343094 A JP2000343094 A JP 2000343094A JP 2000343094 A JP2000343094 A JP 2000343094A JP 2002154877 A JP2002154877 A JP 2002154877A
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Yukihiro Takenami
幸宏 武浪
Minoru Takao
実 高尾
Michiyasu Komatsu
通泰 小松
Hisao Yabe
久雄 矢部
Kimiya Miyashita
公哉 宮下
Yoshiyuki Fukuda
悦幸 福田
Kazuhiro Shinosawa
和弘 篠澤
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハードディスクドライブ等の電子機器用摺動
部材並びにベアリングボールに用いた場合に、静電気に
よる不具合を無くすと共に高速回転を行った際の摩擦熱
を効率よく放熱することができる窒化珪素焼結体を提供
する。 【解決手段】 窒化珪素100重量部に対し、3a族元
素の酸化物または窒化物の少なくとも1種類以上を5重
量部以上15重量部以下、2a族及び4a族の酸化物ま
たは窒化物の少なくとも1種類以上を0.5重量部以上
3重量部以下、炭化物を15重量部以上40重量部以下
含有させることにより、窒化珪素結晶粒子の長径が4μ
m以下のものが全窒化珪素結晶粒子の90%以上、電気
抵抗値が102Ω・cm以上107Ω・cm以下の窒化珪素焼結
体を実現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、適度な電気抵抗値
を有する窒化珪素焼結体、またはそれを用いた摺動部材
並びにベアリングボールに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ハードディスクドライブ(HD
D)等の磁気記録装置、光ディスク装置またはDVD、
モバイル製品、各種ゲーム機器などの発達は目覚しいも
のがある。これらは通常、スピンドルモータ等の回転駆
動装置により回転軸を高速回転させることにより各種デ
ィスクドライブを機能させている。従来、このような回
転軸を支えるベアリング(軸受)部材、特にベアリング
ボールには軸受鋼等の金属が用いられていた。しかしな
がら、軸受鋼等の金属は耐摩耗性が十分ではないことか
ら、例えば前記電子機器等のように5,000rpm以上の高速
回転が要求される分野においては寿命のバラツキが大き
く信頼性のある回転駆動を提供できずにいた。このよう
な不具合を解決するために近年はベアリングボールに窒
化珪素を用いることが試みられるようになっていた。窒
化珪素はセラミックスの中でも摺動特性に優れることか
ら耐摩耗性は十分であり、高速回転を行ったとしても信
頼性のある回転駆動を提供することができていることが
確認されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、窒化珪
素製ベアリングボールは通常電気抵抗値が1011Ω・cm以
上と電気絶縁性の高い絶縁物であることから高速回転を
行った際に発生する静電気を軸受鋼等の金属部材により
作製された回転軸部、ボール受け部(いわゆるベアリン
グボール以外のベアリング部材の構成要素)に上手く静
電気が発散されないと言った問題が発生してしまうこと
が分かった。このように静電気が上手く発散されず必要
以上に帯電してしまうと電子機器、例えばハードディス
クドライブ等のように磁気的信号を用いる記録媒体に悪
影響を与えてしまい、その結果ハードディスク等の電子
機器そのものを破壊してしまうと言った現象が起きてい
た。さらに、ハードディスクドライブの小型化、高容量
化に伴い回転数も8,000rpm、さらには10,000rpm以上と
さらなる高速回転が要求されている。このような高速回
転が行われるとベアリングボールは摺動により摩擦熱が
発生する。このとき従来の窒化珪素製ベアリングボール
では熱伝導率が20W/m・k程度と低く摩擦熱を上手く発散
できずにいた。この放熱性の観点は高速回転になればな
るほど問題となり、特に高速回転を長時間行うことに対
しての対応は十分ではなかった。
【0004】一方、従来から電気抵抗値が10-3Ω・cm程
度を示す低電気抵抗の窒化珪素焼結体は存在している。
このような窒化珪素焼結体は主に放電加工により作製さ
れる切削工具などに使われているが、低電気抵抗を実現
するために炭化物などの導電性付与粒子を多量に添加さ
せねばならない。多量の導電性付与粒子を添加した窒化
珪素焼結体は確かに電気抵抗値は下がるものの、多量に
添加された導電性付与粒子同士が凝集し易く、凝集粒子
が多数窒化珪素焼結体中に分散され易くなってしまう。
例えば、ベアリングボールのように常に全体から圧縮荷
重を受けるような用途においては、このような凝集粒子
が多数あるとそこから亀裂が入り易く破壊起点となり摺
動特性が劣化してしまう。従って、ベアリングボールの
ように全体から圧縮荷重を受けながら使用されるものに
おいては凝集粒子があまり多くない方が好ましい。本発
明は上記したような問題を解決するためになされたもの
であって、所定の電気抵抗値を有し、導電性付与粒子の
分散状態を制御した導電性を有する窒化珪素焼結体を提
供することを目的とする。さらに、このような導電性を
有する窒化珪素焼結体を、ハードディスクドライブ等の
電子機器用摺動部材、例えばベアリングボールに適用す
ることにより必要以上に静電気が帯電することを防止す
ることができる。また、熱伝導率が40W/m・k以上である
ため摺動の際の熱を効率よく発散できることからも電子
機器用摺動部材に適している。従って、本発明において
は導電性を有する窒化珪素焼結体を用いた摺動部材並び
にベアリングボールを提供することも目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では上記目的を為
し得るために、窒化珪素100重量部に対し、3a族元
素の酸化物または窒化物の少なくとも1種類以上を5重
量部以上15重量部以下、2a族及び4a族の酸化物また
は窒化物の少なくとも1種類以上を0.5重量部以上3重量
部以下、炭化物を15重量部以上40重量部以下含有し、窒
化珪素結晶粒子の長径が4μm以下のものが全窒化珪素
結晶粒子の90%以上であり、電気抵抗値が107〜102Ω
・cmである窒化珪素焼結体を見出した。
【0006】また、本発明の窒化珪素焼結体は3点曲げ
強度が650MPa以上にであることを特徴とするもので
ある。さらに、アルミニウム化合物を2重量部以上10
重量部以下含有させてもよい。また、炭化物としては炭
化珪素粒子であることが好ましく、さらには炭化珪素粒
子の最大径が1μm以下であることが好ましい。また、
窒化珪素焼結体における窒化珪素結晶粒子の短径が1μ
m以下であることが好ましく、さらには窒化珪素焼結体
の粒界相の幅が1μm以下であることが好ましい。ま
た、熱伝導率が40W/m・k以上であることが好ましい。
【0007】このような窒化珪素焼結体を、摺動部材、
例えばベアリングボールに適用すると特に効果的であ
る。特に電子機器用の摺動部材、例えばハードディスク
ドライブ等の電子機器の回転駆動に適用するベアリング
ボールの場合、回転駆動に伴い発生する静電気を必要以
上に帯電することを防止できると共に、熱伝導率が高い
ことから放熱性も優れている。また、窒化珪素結晶粒子
が微細であることから静的圧砕荷重が5000N以上と
強度が高く、10,000rpm以上の高速回転時においても優
れた摺動特性を示す。また、強度が高いことから直径3
mm以下のベアリングボールにも有効である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明の窒化珪素焼結体は、窒化珪素10
0重量部に対し、3a族元素の酸化物または窒化物の少
なくとも1種類以上を5重量部以上15重量部以下、2
a族及び4a族の酸化物または窒化物の少なくとも1種
類以上を0.5重量部以上3重量部以下、炭化物を15
重量部以上40重量部以下含有し、窒化珪素結晶粒子の
長径が4μm以下のものが全窒化珪素結晶粒子の90%
以上であり、電気抵抗値が102Ω・cm以上107Ω・cm以下
の特性を示すものである。
【0009】まず、3a族元素の酸化物または窒化物の
少なくとも1種類以上を5重量部以上15重量部以下含
有するものである。3a族元素の酸化物または窒化物と
しては、イットリウム等の希土類元素の酸化物または窒
化物を示すものであり、焼結後に酸化物または窒化物に
なる希土類元素化合物を適用してもよい。3a族元素の
酸化物等の化合物は粒界相を構成する成分として使用さ
れる。窒化珪素焼結体においては、この粒界相によって
窒化珪素結晶粒子を強固に結合し強度の高い窒化珪素焼
結体を構成することができる。3a族元素の酸化物また
は窒化物の含有量が5重量部未満では粒界相量が少ない
ことから強度の向上が見られず、15重量部を超えると
粒界相量が必要以上に増加してしまうため強度の低下並
びに熱伝導率の低下の原因になり易い。従って、3a族
元素の酸化物または窒化物の含有量は3重量部以上15
重量部以下が好ましく、さらに好ましくは4重量部以上
7重量部以下である。
【0010】また、粒界相による窒化珪素粒子の結合力
を強化するために窒化アルミニウム、酸化アルミニウム
などのアルミニウム化合物を2重量部以上10重量部以
下添加することも効果的である。アルミニウム化合物を
添加すると粒界相にAl含有化合物相が形成され、粒界
相の結合力の強化に繋がる。前述のアルミニウム化合物
は1種のみであってもよいし、2種以上を複合添加して
もよい。
【0011】また、2a族及び4a族の酸化物または窒
化物の少なくとも1種類以上を0.5重量部以上3重量部以
下含有するものである。2a族元素としてはマグネシウ
ムやカルシウム、4a族元素としてはチタン、ジルコニ
ウム、ハフニウムが好ましい元素として挙げられ、これ
ら元素の酸化物または窒化物を添加してもよいし、焼結
後に酸化物または窒化物になる化合物を添加してもよ
い。2a族元素及び4a族元素の酸化物または窒化物
は、更なる焼結性の向上に効果があるものであり、2a
族元素と4a族元素の両方の酸化物(または窒化物)を
含有させてもよい。
【0012】また、炭化物を15重量部以上40重量部
以下含有するものである。炭化物としては炭化珪素や、
W,Mo,Nb,Ti,Ta,Cr等の金属炭化物と言
った電気抵抗値が106Ω・cm以下のものが有効であ
り、各炭化物を1種または2種以上使用する。炭化物の
含有量が15重量部未満であると窒化珪素焼結体の電気
抵抗値を107Ω・cm以下にし難く、40重量部を超え
ると電気抵抗値は下がるものの窒化珪素焼結体中の炭化
物量が多すぎるため強度の低下が起こる。
【0013】電気抵抗値が107Ω・cmを超えると、ハー
ドディスクドライブ等の電子機器におけるベアリング部
材(ベアリングボール)のような摺動部材に適用した場
合に摺動時に発生する静電気を上手く周辺の金属部材に
発散できず、必要以上に帯電してしまいハードディスク
に不具合を生じてしまう。一方、102Ω・cm未満であれ
ば帯電の問題は生じないが、前述のように炭化物量を過
量にせねばならず強度や摺動特性の低下の原因になり易
い。
【0014】また、炭化物は粒子であることが好まし
い。炭化物は粒子、ウイスカ、繊維など様々な形態で適
用することが可能であるが窒化珪素焼結体を摺動部材に
適用する場合は、該炭化物も摺動面に存在することにな
り、当然ながら該炭化物も摺動される。このとき、ウイ
スカや繊維は表面にトゲのような凹凸があることからこ
のトゲ部が破壊起点になることが予測されるためであ
る。炭化物粒子の最大径は1μm以下のものが好まし
い。
【0015】炭化物としては炭化珪素を用いることが好
ましい。炭化珪素は、窒化珪素結晶粒子の粒成長を抑制
する働きがある。そのため、炭化珪素を所定量含有させ
た本発明の窒化珪素焼結体においては、電気抵抗値が10
7〜102Ω・cmになるだけでなく、窒化珪素結晶粒子の
長径が4μm以下のものが全窒化珪素結晶粒子中におい
て90%以上と微細結晶構造を具備することができる。
このような微細結晶構造を具備する窒化珪素焼結体は3
点曲げ強度が650MPa以上となる。また、本発明の窒
化珪素焼結体を用いたベアリングボールは静的圧砕荷重
が5000N以上になる。
【0016】また、窒化珪素結晶粒子の短径は1μm以
下のものが全窒化珪素粒子において90%以上であるこ
とが好ましい。本発明の窒化珪素焼結体は電気抵抗値が
107〜102Ω・cmを示すものである。電気抵抗値を所定
の値にするために炭化物を含有させているが、この炭化
物は実質的に粒界相に存在することになる。このとき、
窒化珪素結晶粒子の長径および短径があまり大きいと、
粒界相中に存在する炭化物粒子同士の距離が離れてしま
うことから電気抵抗値のバラツキの原因となる。つま
り、同様の組成であっても窒化珪素結晶粒子のサイズが
大きいものと小さいものでは窒化珪素焼結体中の炭化物
粒子同士の距離に違いがあるため電気抵抗値に違いが生
じてしまうのである。窒化珪素焼結体の窒化珪素結晶粒
子は、通常、アスペクト比(長径/短径)が1.2から
大きいもので10を超えるものまである。窒化珪素焼結
体は、このようなアスペクト比が異なる結晶粒子が実質
的に異方性を具備し、その窒化珪素結晶粒子間に粒界相
が存在する形態である。
【0017】本発明の窒化珪素焼結体は炭化物を所定量
含有させることにより、長径が4μm以下のものが全窒
化珪素結晶粒子中に90%以上、更には短径が1μm以
下のものを全窒化珪素結晶粒子中に90%以上と微細に
できる。特に、最大径1μm以下の炭化珪素粒子を含有
させることにより、窒化珪素結晶粒子間にほぼ均一な分
散状態を形成できることから長径4μm以下の窒化珪素
結晶粒子の90%以上を短径1μm以下にでき、長径お
よび短径が共に微細な窒化珪素結晶粒子とすることがで
きる。このような長径および短径が共に微細な窒化珪素
結晶粒子であれば3点曲げ強度を1000MPa以上とさらに
向上させることができると共に、電気抵抗値のバラツキ
を±10%/100個に改善できる。また、窒化珪素結
晶粒子の長軸が4μmを超えるものについても最大長径
を10μm以下にすることができる。
【0018】また、併せて粒界相の幅を1μm以下、さ
らには0.5μm以下にできる。粒界相の幅が1μm以
下と薄いことにより炭化珪素粒子による電気抵抗値の制
御効果をより得易くできる。前述のような所定の組成を
具備させると粒界相は主としてSi−希土類−O系化合
物、Si−Al−希土類−O系化合物、Si−Al−O
系化合物、 Si−希土類−O−N系化合物、Si−A
l−希土類−O−N系化合物、Si−Al−O−N系化
合物などの酸化物または酸窒化物により形成される。こ
れら粒界相を構成する化合物は電気抵抗値107Ω・cmを
超える絶縁物であることから、あまり粒界相の幅が厚い
と炭化物粒子を添加する効果が得難くなる。つまり、粒
界相が1μmを超えて厚いと炭化物粒子が実質的に絶縁
被膜に覆われている状態と同じになってしまうことから
電気抵抗値のバラツキの原因になり易い。なお、本発明
における粒界相の幅とは、窒化珪素結晶粒子同士、窒化
珪素結晶粒子と炭化物粒子の粒子間距離を示すものであ
る。
【0019】このような電気抵抗値のバラツキの改善
は、直径3mm以下の小型のベアリングボールにおいて
特に有効である。例えば、ハードディスクドライブのベ
アリング部材(摺動部材)ではベアリングボールを4〜
20個程度組合せて一つのベアリング部材を構成する。
5,000rpm程度の回転速度であればあまり問題とはならな
いが、8,000rpm以上の高速回転になると高速回転により
静電気が生じたとき、各ベアリングボールの電気抵抗値
にバラツキが生じていると最も電気抵抗値の高いベアリ
ングボールに静電気が瞬間的に集中してしまいハードデ
ィスクへ悪影響を与える原因となることが考えられる。
特にハードディスク等の電子機器への静電気の影響は瞬
間的な帯電量によっても影響されることから、電気抵抗
値のバラツキは高速回転になればなるほど小さい方が好
ましい。従って、本発明の電気抵抗値のバラツキの少な
い窒化珪素焼結体を直径3mm以下のベアリングボール
に適用することにより、8,000rpm以上の高速回転であっ
ても静電気による不具合を改善できる。
【0020】なお、窒化珪素結晶粒子の長径、短径の測
定は、窒化珪素焼結体の表面または断面において単位面
積30μm×30μmを任意の3ヶ所以上を拡大写真に
撮り、そこに写る窒化珪素結晶粒子の長径、短径を測定
し、その平均値で長径4μm以下および短径1μm以下
の割合を決める。また、炭化物粒子の最大径の測定にお
いても単位面積30μm×30μmを任意の3ヶ所以上
を拡大写真に撮り、その中に写る炭化物粒子の最も大き
な最大径を炭化物粒子の最大径とする。なお、最大径と
は個々の炭化物粒子の最も長い対角線を示すものであ
り、簡易的には前記拡大写真における最も長い対角線で
示されるものである。また、粒界相の幅についても同様
の拡大写真において判断し、窒化珪素結晶粒子同士の粒
子間距離、窒化珪素結晶粒子と炭化物粒子の粒子間距離
において最も近い粒子同士の粒子間距離において求める
ものとする。具体的には、測定対象の窒化珪素結晶粒子
を一つ決め、任意の測定点から結晶粒子の表面に対し垂
直に直線を延ばし窒化珪素結晶粒子または炭化物粒子に
到達するまでの距離を求めるものとする。
【0021】拡大写真については、窒化珪素結晶粒子の
長径、短径、炭化物粒子の最大径さらには粒界相の幅が
確認できるのであれば倍率については特に限定されるも
のではないが、好ましくは2000倍(50μmを10cmで表
示)以上である。
【0022】炭化物粒子の最大径が1μm以下であった
としても炭化物粒子同士の凝集部があまり大きいと窒化
珪素焼結体の強度並びに耐摩耗性(摺動特性)を低下さ
せてしまう。そのため炭化物粒子同士の凝集部の最大径
は5μm以下、さらには3μm以下であることが好まし
い。なお、炭化物粒子同士の凝集部とは、炭化物粒子が
直接接触しているものおよび炭化物粒子同士の距離が0.
1μm以下のものを示すものとする。
【0023】前述のように本発明では炭化物を含む所定
の組成を具備すると共に、窒化珪素結晶粒子が所定の微
細構造を具備するものである。このような形態を示す窒
化珪素焼結体の電気抵抗値が107〜102Ω・cmである。
本発明の窒化珪素焼結体は特に用途が限定されるもので
はないが、前述のようにハードディスクドライブなどの
電子機器を回転駆動させるためのモータ機器に具備され
る摺動部材、例えばベアリングボールに用いることが最
適である。
【0024】また、本発明の窒化珪素焼結体は熱伝導率
が窒化珪素より高い炭化物粒子を添加していることから
熱伝導率40W/m・k以上と向上させることができる。本発
明の窒化珪素焼結体は、主として電子機器用摺動部材に
用いると効果的なものである。電子機器においては、例
えば半導体装置用基板を見て分かる通り、熱の問題は非
情に重要である。このため、電子機器用の摺動部材であ
っても放熱性に優れていることは重要である。特に、ハ
ードディスク等の電子機器の回転駆動に用いるベアリン
グボールを熱伝導率が40W/m・k以上と放熱性に優れた本
発明の窒化珪素焼結体で形成すると、前述の静電気の帯
電を防止するだけでなく、回転駆動に伴う摩擦熱をも効
率よく発散できるようになり、静電気の帯電防止および
放熱性の両方の効果を得ることができる。
【0025】ベアリング部材の場合、回転軸およびボー
ル受け部は軸受鋼等の金属部材で形成されていることが
多く、摺動時の熱による変形等の問題は起き易い。特に
電子機器においては回転速度が8,000rpm以上、さらには
10,000rpm以上と高速回転化していく傾向にあり、従来
より放熱性の問題は起き易くなっている。従って、熱伝
導率の高い本発明の窒化珪素焼結体を用いたベアリング
ボールは電子機器に適しており、特に回転軸およびボー
ル受け部が軸受鋼等の金属部材からなるベアリング部材
に最適であると言える。さらに、ベアリングボールの直
径が3mm以下、さらには2mm以下であることが好ま
しい。本発明の窒化珪素焼結体は、熱伝導率が40W/m・k
以上と高いが、回転軸等を構成する金属部材と比較する
と熱伝導率という点では劣ってしまう。そのため、放熱
性という観点では窒化珪素製ベアリングボールは熱抵抗
体となってしまうことから、直径が3mm以下、さらに
は2mm以下と小さくすることによりベアリング部材と
しての熱抵抗を下げることができる。特に、本発明の窒
化珪素焼結体は窒化珪素結晶粒子が微細結晶構造を具備
していることから、直径3mm以下の小型のベアリング
ボールに適用したとしても摺動特性が優れている。
【0026】次に製造方法について説明する。所定の組
成を具備し、窒化珪素結晶粒子の長径が4μm以下のも
のが全窒化珪素結晶粒子の90%以上である窒化珪素焼
結体が得られるのであれば特に限定されるものではない
が、例えば次のような方法がある。まず、窒化珪素粉
末、焼結助剤、炭化物粒子粉末を所定量均一混合した
後、造粒、成形、脱脂、焼結する方法である。特に、炭
化物粒子の凝集を防ぎ、実質的な均一分散状態を得るこ
とが重要である。炭化物粒子の凝集が起きると、電気抵
抗値や窒化珪素結晶粒子の粒成長の抑制効果にバラツキ
が生じてしまう。そのため例えば、1ロット分(総量約
5kg)の原料粉末を混合するにあたり、各原料粉末を
それぞれ2分割以上、好ましくは3〜5分割して比較的
少量ずつ混合したものを最終的に1つに混ぜ合わせる方
法が有効である。1ロット分で炭化物粉末(炭化物粒
子)の凝集粒子の少ない混合粉末が得られれば特に問題
ではないが、このような場合において凝集粒子の少ない
均一混合を行おうとすると混合時間が必要以上に長くな
ってしまうことが多く、必ずしも製造性が良いとは言え
ない。また、1度に大量に各原料粉末を混ぜ合わせると
最終的な窒化珪素焼結体となったときに電気抵抗値や窒
化珪素結晶粒子の粒径について所望の特性が得られなく
なってしまう原因になり易い。
【0027】別の方法では、まず窒化珪素粉末および炭
化物以外の成分(焼結助剤)を混合する。その混合粉末
中に炭化物粉末を添加する際、添加する炭化物粉末を数
回に分けて添加する方法が有効である。例えば、炭化物
粉末の添加量を2分割以上、好ましくは3〜5分割し、
1回目の添加を行い所定時間経過した後(30分以上間
隔を空けることが好ましい)2回目以降を順に添加する
方法である。炭化物粉末を少量ずつ添加混合することに
より炭化物粒子同士の凝集を防ぐことが可能となる。こ
のような方法によって原料粉末を均一混合すれば炭化物
粉末同士の凝集を抑えることができるので、仮に凝集部
が存在したとしても窒化珪素焼結体中での炭化物粉末の
凝集部の最大径を5μm以下、好ましくは3μm以下に
することが可能となる。特に、直径3mm以下、さらに
は2mm以下の小型ベアリングボールを作製する場合
は、炭化物粒子の凝集粒子をできるだけなくすことが重
要である。ベアリングボールが小型になればなるほど凝
集部の影響を受け易いためである。
【0028】各原料粉末の大きさは特に限定されるもの
ではないが、窒化珪素粉末の平均粒径は0.2〜3μm、焼
結助剤は平均粒径3μm以下が好ましい。
【0029】また、炭化物粒子のサイズは平均粒径1μ
m以下、好ましくは0.3〜0.8μmである。炭化物粒子が
0.3μm未満であるとベアリングボールなどの摺動部材
に適用した場合、摺動中に表面から脱粒し易くなる。一
方、0.8μmを超えるとわずかな凝集だけで最大径が5
μmを超えてしまうので好ましくない。さらには前述の
炭化物粒子の最大径を1μm以下に制御し易いように平
均粒径のバラツキが少ない例えば標準偏差1.5μm以下
の粉末を用いることが好ましい。
【0030】成形方法については、窒化珪素製焼結体並
びにベアリングボールを製造するための公知の方法が適
用可能である。従って、通常の成形方法や静水圧成形
(CIP)などが適用可能であり、ベアリングボールを
製造する際は静水圧成形が好適である。焼結方法につい
ても窒化珪素製焼結体並びにベアリングボールを製造す
るための公知の方法が適用可能である。従って、常圧焼
結、加圧焼結、熱間静水圧プレス(HIP)焼結が適用
可能であり、ベアリングボールを製造する際は常圧焼結
または加圧焼結を行った後にHIP焼結を行うことが好
ましい。以上のような工程を経た後、ベアリングボール
として使用する場合はJIS規格で定められた表面粗さを
得るための表面研磨加工を施す。また、ベアリングボー
ル以外の摺動部材に使用する際も、必要に応じ表面加工
を施すものとする。
【0031】
【実施例】(実施例1〜4、比較例1〜3)炭化物粒子
として平均粒径0.7μm以下(最大径1μm以下)の炭
化珪素粒子粉末、焼結助剤として平均粒径0.8μmの酸
化イットリウム粉末を5重量部、平均粒径0.9μmの酸
化アルミニウム粉末を4重量部、残部平均粒径0.7μm
の窒化珪素粉末100重量部を用意した。これら原料粉
末をそれぞれ3分割して混合して3つの混合粉末を得た
後に、この3つの混合粉末を混合して混合原料粉末を製
造することにより炭化珪素粒子が凝集するのを防いだ。
この混合原料粉末をCIP法により成形し、不活性雰囲
気中1600〜1850℃常圧焼結、続いて1600〜1900℃の温度
でHIP焼結を行い表1に示した窒化珪素焼結体を作製
した。なお、各実施例は四角柱状の試料とし、さらにJI
S規格で認定されたベアリングボールのグレード3に相
当する表面研磨加工を施したものとする。このような各
実施例に対し、電気抵抗値、3点曲げ強度(室温)、熱
伝導率、長径4μm以下の窒化珪素結晶粒子の割合を測
定した結果を併せて表1に示した。電気抵抗値は各試料
の上下をラップ加工し同一平面上に2ヶ所電極を設置
し、室温にてその間の抵抗を絶縁抵抗計で測定した。3
点曲げ強度および熱伝導率(レーザーフレッシュ法)は
JIS規格に準じた方法により測定した。
【0032】また、各窒化珪素焼結体中の窒化珪素結晶
粒子の長径4μm以下の割合の測定は、焼結体の表面2
ヶ所、断面2ヶ所合計4ヶ所を任意(単位面積30μm
×30μmに相当する任意の面積)に選び、各測定個所
の拡大写真(2000倍)に対して長径を測定し、その
中で長径4μm以下のものの割合を測定し、4ヶ所の平
均値で示した。比較のために、炭化珪素粒子を含有しな
いものを比較例1、炭化珪素粒子を一度に過量添加した
ものを比較例2、炭化珪素粒子を一度に少量添加したも
のを比較例3として用意した。
【0033】
【表1】
【0034】表1から分かる通り、本発明の窒化珪素焼
結体は電気抵抗値が107〜102Ω・cm、3点曲げ強度は10
00MPa以上、熱伝導率は40W/m・k以上であることが分か
った。また、いずれも長径4μm以下の窒化珪素結晶粒
子が全窒化珪素結晶粒子に対して90%以上存在してい
た。なお、長径4μmを超えるものはいずれも長径10
μm以下であった。さらには、短径1μm以下のものは
90%以上存在し、粒界相の幅は1μm以下であった。
それに対して、炭化珪素粒子を添加していない比較例1
および添加量の少ない比較例3では電気抵抗値は107Ω
・cmを超えてしまうと共に、長径4μm以下の窒化珪
素結晶粒子の割合も90%未満であった。一方、炭化珪
素粒子を過量に添加した比較例2は長径4μm以下の窒
化珪素結晶粒子の割合は上がるものの強度が650MPa
未満と低下してしまった。これは炭化珪素粒子の含有量
が多すぎるため炭化珪素粒子の凝集部が多数できでしま
ったため、そこが破壊起点となり強度が低下したもので
ある。なお、実施例1〜4の窒化珪素焼結体中の炭化珪
素粒子の凝集部は最も大きいもので2.4μm以下であっ
た。これは添加した炭化珪素粒子粉末同士があまり凝集
していないこともしくは凝集していたとしても2〜4個
程度であることを意味するものである。それに対し、一
度に過量に添加した比較例2は凝集部が20μm以上とな
っている個所が複数発見されており、強度低下の原因と
なったと考えられる。
【0035】各最大径の測定については、前記4ヶ所の
単位面積30μm×30μmの拡大写真(2000倍)を用
い、その中で最も大きなものを最大径とした。そのた
め、炭化珪素粒子同士の凝集部の最大径が2.4μm以下
であったとしても全ての炭化珪素粒子が最大径2.4μm
の凝集部を形成しているわけではないことは付け加えて
おく。このような電気抵抗値等の特性を持つ窒化珪素焼
結体は後述するハードディスクドライブ等の電子機器用
ベアリングボールに用いると静電気による不具合を無く
すことが可能となる。
【0036】(実施例5〜8、比較例4〜6)次に、実
施例1〜4および比較例1〜3の窒化珪素焼結体と同じ
ものを用い直径2mmのベアリングボールを作製した。な
お、各ベアリングボールは表面研磨をグレード3のもの
とした。各ベアリングボールを10個一組にしてハード
ディスクドライブを回転駆動させるためのスピンドルモ
ータのベアリング部材に組込んだ。なお、その他のベア
リング部材として、軸受鋼SUJ2製の回転軸部並びにボー
ル受け部を用いた。該モータを回転速度6,000rpmで200
時間連続稼動させたときの静電気による不具合の有無を
調べた。静電気による不具合とは、200時間の連続稼動
後にハードディスクドライブが通常通り可動するか否か
により判定した。
【0037】また、各ベアリングボールの圧砕荷重につ
いても併せて測定した。圧砕荷重の測定は、個々のベア
リングボールを冶具で挟み荷重をかけた際に粉砕される
状態になったときの荷重を測定した。この圧砕荷重試験
は、ボールを回転させず冶具で挟んだ状態で行うことか
ら静的圧砕荷重試験とした。また、「粉砕される状態」
とはベアリングボールが粉々になる状態である。本実施
例のベアリングボールは主として直径3mm以下の小型
ベアリングボールであることから、このような圧砕荷重
試験を行うとボールにヒビが入るとほぼ同時に粉々に粉
砕される。そのため「粉砕される状態」になったときの
荷重を測定した。その結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】表2から分かる通り、本実施例にかかるベ
アリングボールを用いたものは静電気による不具合がな
いことが分かった。それに対し、比較例4および比較例
6は電気抵抗値が本発明より非情に高いことから静電気
による不具合を生じてしまった。また、比較例5は静電
気による不具合は発生しなかったが、ベアリングボール
の強度が不十分であることから200時間後のベアリング
ボールには若干の破損が確認され、摺動部材として長時
間の稼動には向かないことが確認された。また、静的圧
砕荷重に関しても本発明の窒化珪素からなるベアリング
ボールは5000N以上と優れていることが分かった。
【0040】(実施例9〜11、参考例1〜2)次に、
炭化珪素粒子の最大径の影響を調べた。平均粒径0.8μ
m以下の酸化イットリウム末を5重量部、平均粒径0.9
μmの酸化アルミニウム粉末および窒化アルミニウム粉
末を各4重量部、平均粒径0.7μmの窒化珪素粉末10
0重量部を用意した。これら原料粉末を混合した後、混
合工程を継続しながら表3に示した最大径を有する炭化
珪素粒子を3分割して合計30重量部添加混合した。炭
化珪素粒子の添加混合の際には、1回目と2回目および
2回目と3回目の添加の間隔は40〜100分間隔を空
けて添加混合することにより炭化珪素粒子同士が凝集す
るのを防いだ。
【0041】この混合原料粉末をCIP法により成形
し、不活性雰囲気中1600〜1850℃常圧焼結、続いて1600
〜1900℃の温度でHIP焼結を行い、直径2mmの窒化
珪素焼結体製ベアリングボールを作製した。なお、仕上
げ加工としてJIS規格で認定されたベアリングボールの
グレード3に相当する表面研磨加工を施すことにより各
実施例および参考例にかかるベアリングボールとした。
なお、各ベアリングボールの窒化珪素結晶粒子は、長径
4μm以下のもの90%以上、短径1μm以下のもの9
0%以上であった。各実施例および参考例にかかるベア
リングボールに対し、電気抵抗値、電気抵抗値のバラツ
キ、転がり寿命を測定した。
【0042】電気抵抗値は、各ベアリングボール100
個の平均値で示し、電気抵抗値のバラツキはその平均値
に対し最も小さな値と最も大きな値を示した値をパーセ
ント(%)で表示した。転がり寿命に関しては、スラス
ト型軸受試験機を用い、相手材としてSUJ2鋼製の平板上
を回転させる方法で荷重は一球あたり最大接触応力5.9G
Pa、回転数1200rpm、タービン油の油浴潤滑条件下で最
高400時間まで行いベアリングボールの表面が剥離する
までの時間を測定した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】表3から分かる通り、実施例9〜11にか
かるベアリングボールにおいては電気抵抗値のバラツキ
が±10%の範囲内かつ転がり寿命が400時間以上と
優れた摺動特性を示すことが確認された。それに対し、
参考例1のように微細な炭化珪素粒子を用いたものは電
気抵抗値のバラツキは小さいものの摺動特性が劣化して
しまった。これは摺動中に炭化珪素粒子が脱粒してしま
ったためである。また、参考例2のように炭化珪素粒子
の最大径が大きいものは電気抵抗値のバラツキが比較的
大きく、摺動特性(転がり寿命)も低下してしまった。
これは炭化珪素粒子が大きいためにわずかな凝集によ
り、最大径が5μmを超える大きな凝集部を形成してし
まうためであり、実質的な均一分散状態を得難いことが
分かる。
【0045】(実施例12〜14、参考例3〜4)次
に、実施例9〜11および参考例1〜2のベアリングボ
ールを用い実施例5と同様の方法により、ハードディス
クドライブ用のベアリング部材(回転軸およびボール受
け部は軸受鋼SUJ2により形成)に適用した際の静電気に
よる不具合の有無を確認した。このとき回転速度を5,00
0rpm、10,000rpmの2種類行った。また、各ベアリング
部材はベアリングボールを10個一組とした。その結果
を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】表4から分かる通り、回転速度5,000rpm程
度であれば静電気による不具合は確認されなかった。そ
れに対し、10,000rpmとさらに高速回転にした場合につ
いては、電気抵抗値のバラツキの大きい参考例4につい
ては静電気による不具合が確認された。このように電気
抵抗値が所定の値を示したとしても電気抵抗値のバラツ
キが±20%を超えると10,000rpm以上の高速回転を行
った際には静電気による不具合が生じる可能性があるこ
とが確認された。
【0048】(実施例15〜16、比較例7〜8)次
に、3a族化合物、2a族および4a族化合物、アルミ
ニウム化合物の含有量について検討した。炭化物として
炭化珪素粒子(最大径1μm以下)を20重量部、平均
粒径0.8μm以下の窒化珪素粉末100重量部に対し、
3a族化合物、2a族および4a族化合物、アルミニウ
ム化合物を表5のように変えた混合原料粉を用意した。
この混合原料粉末をCIP法により成形し、不活性雰囲
気中1600〜1850℃常圧焼結、続いて1600〜1900℃の温度
でHIP焼結を行い表5に示した窒化珪素焼結体を作製
した。
【0049】なお、各実施例は四角柱状の試料とし、さ
らにJIS規格で認定されたベアリングボールのグレード
3に相当する表面研磨加工を施したものとする。各試料
に対し、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表
6に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】表6から分かる通り、3a族化合物等の添
加物が本発明の範囲を外れているものは炭化物の添加量
が同じであっても、特性に影響違いがあることが確認さ
れた。これは粒界相を構成する3a族化合物量が多くな
りすぎると、絶縁体である粒界相量が必要以上に増えて
しまうことから炭化物を添加する効果が小さくなるため
であると言える。以上のことから本発明の窒化珪素焼結
体および摺動部材においては炭化物粒子の添加量のみな
らず、他の成分量についても配慮する必要がある。
【0053】
【発明の効果】以上のように本発明の窒化珪素焼結体
は、炭化物を含む所定の組成を具備させることにより、
電気抵抗値を102Ω・cm以上107Ω・cm以下、熱伝導率40
W/m・k以上かつ窒化珪素結晶粒子の長径4μm以下のも
のを90%以上と微細構造を有することができる。ま
た、炭化物として炭化珪素粒子を使用することにより短
径1μm以下のものが90%以上、さらには電気抵抗値
のバラツキを制御することができる。このような窒化珪
素焼結体は、所定の電気抵抗値を有するためハードディ
スクドライブ等の電子機器の摺動部材、例えば回転駆動
させるためのモータに搭載するベアリング部材のベアリ
ングボールに用いた場合、回転駆動に伴う静電気の帯電
を防止することが可能となる。さらに、炭化珪素粒子の
最大径を1μm以下にすることにより、回転速度10,000
rpm以上の高速回転においても静電気による不具合を低
減すると共に、摺動特性をも向上させることができる。
このような形態にすれば窒化珪素焼結体からなるベアリ
ングボールは窒化珪素が持つ摺動特性のよさを必要以上
に低減させずに済み、ハードディスクドライブなどの電
子機器に用いた場合、静電気による不具合を低減するこ
とが可能となると共に、熱伝導率が従来の窒化珪素焼結
体より優れることから摩擦熱の放熱性も改善できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小松 通泰 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 矢部 久雄 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 宮下 公哉 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 福田 悦幸 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 篠澤 和弘 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 Fターム(参考) 3J011 SD01 SE02 3J101 AA02 BA01 BA10 EA42 EA43 EA44 FA11 GA53 4G001 BA03 BA07 BA09 BA13 BA22 BA24 BA32 BA36 BB03 BB07 BB09 BB13 BB22 BB24 BB32 BB36 BC43 BC54 BC56 BC57 BD03 BD12 BD14 BD21

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化珪素100重量部に対し、3a族元
    素の酸化物または窒化物の少なくとも1種類以上を5重
    量部以上15重量部以下、2a族及び4a族の酸化物ま
    たは窒化物の少なくとも1種類以上を0.5重量部以上
    3重量部以下、炭化物を15重量部以上40重量部以下
    含有し、窒化珪素結晶粒子の長径が4μm以下のものが
    全窒化珪素結晶粒子の90%以上であり、電気抵抗値が
    102Ω・cm以上107Ω・cm以下であることを特徴とする
    窒化珪素焼結体。
  2. 【請求項2】 3点曲げ強度が650MPa以上であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の窒化珪素焼結体。
  3. 【請求項3】 アルミニウム化合物を2重量部以上10
    重量部以下含有することを特徴とする請求項1または請
    求項2記載の窒化珪素焼結体。
  4. 【請求項4】 炭化物が炭化珪素粒子であることを特徴
    とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の窒化
    珪素焼結体。
  5. 【請求項5】 炭化珪素粒子の最大径が1μm以下であ
    ることを特徴とする請求項4記載の窒化珪素焼結体。
  6. 【請求項6】 窒化珪素焼結体における窒化珪素結晶粒
    子の短径が1μm以下のものが全窒化珪素結晶粒子の9
    0%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項
    5のいずれかに記載の窒化珪素焼結体。
  7. 【請求項7】 窒化珪素焼結体における粒界相の幅が1
    μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項
    6のいずれかに記載の窒化珪素焼結体。
  8. 【請求項8】 熱伝導率が40W/m・k以上であることを特
    徴とする請求項1なし請求項7のいずれかに記載の窒化
    珪素焼結体。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし請求項8のいずれかに記
    載の窒化珪素焼結体を用いたことを特徴とする摺動部
    材。
  10. 【請求項10】 窒化珪素100重量部に対し、3a族
    元素の酸化物または窒化物の少なくとも1種類以上を5
    重量部以上15重量部以下、2a族及び4a族の酸化物
    または窒化物の少なくとも1種類以上を0.5重量部以
    上3重量部以下、炭化物粒子を15重量部以上14重量
    部以下含有し、窒化珪素結晶粒子の長径が4μm以下の
    ものが全窒化珪素結晶粒子の90%以上であり、電気抵
    抗値が102Ω・cm以上107Ω・cm以下である窒化珪素焼
    結体からなることを特徴とするベアリングボール。
  11. 【請求項11】 静的圧砕荷重が5000N以上である
    ことを特徴とする請求項10記載のベアリングボール。
  12. 【請求項12】 ベアリングボールが電子機器に用いる
    ためのものであることを特徴とする請求項10または請
    求項11に記載のベアリングボール。
  13. 【請求項13】 直径が3mm以下であることを特徴と
    する請求項10乃至請求項12のいずれかに記載のベア
    リングボール。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011144109A (ja) * 2011-04-12 2011-07-28 Toshiba Corp 窒化けい素焼結体
JP2015227727A (ja) * 2015-07-21 2015-12-17 株式会社東芝 転がり軸受
JP2017072263A (ja) * 2017-01-11 2017-04-13 株式会社東芝 転がり軸受
JP7074901B2 (ja) 2021-02-18 2022-05-24 株式会社東芝 鉄道車両の使用方法

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