JP2001335369A - 窒化ケイ素セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材 - Google Patents
窒化ケイ素セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材Info
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Abstract
ような電子機器用耐摩耗性部材に用いた際に優れた耐摩
耗性を示すと共に、摩擦熱の放熱性の良好な窒化ケイ素
セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材を
提供する。 【解決手段】 3a族化合物、2a族及び4a族化合物の
少なくとも1種以上を所定量含有させた窒化ケイ素焼結
体に、SiC等の炭化物を1〜5重量部含有させることに
より、窒化ケイ素結晶粒子の異常粒成長を抑制すると共
に熱伝導率の向上を図る。
Description
つ耐摩耗性に優れた窒化ケイ素セラミックス焼結体およ
びそれを用いた耐摩耗性部材に関する。
ルミニウムなどの酸化物系のセラミックスと比較し機械
的強度が高く、耐摩耗性に優れ、高信頼性が要求される
ベアリングボール、カムローラなどの自動車部品、ロー
ラなどの各種耐摩耗性部材に使用されている。耐摩耗性
部材の一種として、ハードディスクドライブ(HDD)等
を回転駆動させるスピンドルモータの軸受部を構成する
ベアリングボールにも適用されるようになっている。こ
のようなスピンドルモータにおいても窒化ケイ素セラミ
ックス焼結体からなるベアリングボールは優れた耐摩耗
性を示していた。しかしながら、近年、このハードディ
スクドライブ等の電子機器の高容量化に伴いスピンドル
モータを5000rpm、さらには8000rpm以上
と高速回転せねばならなくなっていた。このような高速
回転となった場合、従来の窒化ケイ素セラミックス焼結
体は熱伝導率が10〜30W/m・k程度であったためモ
ータの回転駆動に伴い発生する摩擦熱を効率よく発散す
ることができずにいた。熱の発散が十分でないとベアリ
ング部材が必要以上に熱を有してしまい電子回路の誤動
作等の不具合の原因となってしまう。
器に用いるベアリングボールは直径が3mm以下と小さ
く、窒化ケイ素セラミックス焼結体でこのような小さな
部材を作製した場合、耐摩耗性にバラツキが生じること
が多かった。通常、窒化ケイ素結晶粒子は所定のアスペ
クト比を持つ構造を有しているが、従来の窒化ケイ素セ
ラミックス焼結体はこの結晶粒子のサイズにバラツキが
大きく異常粒成長がみられ、これが耐摩耗性のバラツキ
の原因になっていた。一方、熱伝導率が60W/m・k以上と
高い窒化ケイ素焼結体として例えば特開平7−1495
88号公報のような粒界相を結晶化させたものが開発さ
れていた。
7−149588号公報に開示された高熱伝導性窒化ケ
イ素焼結体はあくまで半導体回路基板に用いることを主
体としたものであるため、例えばベアリングボールなど
の各種耐摩耗性部材に用いた場合、必ずしも耐摩耗性が
十分ではなかった。また、前述の通り、電子機器用耐摩
耗性部材で用いられる場合、従来の熱伝導率が10〜3
0W/m・k程度の窒化ケイ素では、熱伝導率が低く、電子
機器内での放熱性を妨げ、電子回路の誤動作の原因にな
り、信頼性を妨げていた。さらに、従来の熱伝導率が1
0〜30W/m・k程度の窒化ケイ素では窒化ケイ素結晶粒
子サイズのばらつきが大きく、耐摩耗特性のバラツキの
原因となっていた。従って、現状では耐摩耗性及び熱伝
導性の両方の特性に優れた窒化ケイ素セラミックス焼結
体の開発は十分であるとは言えなかった。特に、電子機
器用耐摩耗性部材であるハードディスクドライブ等の電
子機器用ベアリング部材の分野においては、耐摩耗性お
よび熱伝導性の良い窒化ケイ素セラミックス焼結体の要
望は強かった。そこで本発明では、熱伝導性および耐摩
耗性の両方の特性に優れた窒化ケイ素セラミックス焼結
体およびそれを用いた耐摩耗性部材の提供を目的とする
ものである。
ミックス焼結体は、焼結体の結晶粒子の成長のバラツキ
を低減し、耐摩耗性を向上させるだけでなく、高熱伝導
率により、電子機器用耐摩耗性部材に用いた場合の放熱
性を向上させることを可能とするものである。このよう
な窒化ケイ素セラミックス焼結体を為し得るために、本
発明では、3a族元素の酸化物または窒化物を少なくと
も1種類以上を5〜15重量部、2a族及び4a族の酸化
物または窒化物の少なくとも1種以上を0.5〜3.0重量
部、炭化物を1〜5重量部含有し、窒化ケイ素結晶およ
び粒界相からなる構成を具備することにより熱伝導率が
50W/m・K以上為し得た。また、炭化物が炭化珪素であ
ることが好ましい。また、 (3a族元素の酸化物また
は窒化物の量/2a族及び4a族の酸化物または窒化物の
量)の含有量比率、粒界相中における結晶化合物層の粒
界相全体に対する割合が20%以上であること、さらに
は窒化ケイ素セラミックス焼結体における窒化ケイ素結
晶粒子の最大径が10μm以下、最小径が3μm以下と
様々な項目を制御することにより熱伝導率の向上だけで
はなく、強度および耐摩耗性の向上をも為し得ることを
可能にしている。
熱伝導性および耐摩耗性に優れることから、例えばハー
ドディスクドライブ用ベアリングボールのような電子機
器用耐摩耗性部材に用いた場合に耐摩耗性のバラツキを
低減すると共に放熱性に優れることから摩擦熱による電
子機器への不具合を低減することを実現するものであ
る。
ックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材の実施の
形態について説明する。本発明によれば、窒化ケイ素
に、炭化物、好ましくは炭化ケイ素を1〜5重量部を加
えることにより、熱伝導率50W/m・k以上を達成すること
が可能となる。炭化物としては、炭化ケイ素の他に、周
期律表4a族、5a族、6a族、7a族元素の炭化物、
例えばニオブ、タングステン、クロム、タンタル、ジル
コニウム、マンガン、ハフニウム、チタン、モリブデン
が適用可能であり、さらには炭化ホウ素も適用可能であ
る。
良いし、2種以上を組合せて使用してもよい。本発明の
窒化ケイ素セラミックス焼結体は主として耐摩耗性部材
に用いるものであることから、そこに添加する炭化物と
しても耐摩耗性のある材料が好ましく、耐摩耗性を考慮
すると前述の炭化物、好ましくは炭化ケイ素となる。
ではないが、好ましくは最大径1μm以下である。前述
の通り本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体は主とし
て耐摩耗性部材に用いるものであるため、炭化物粒子の
一部は窒化ケイ素セラミックス焼結体の摺動表面にも存
在する状態となる。このとき表面に存在する炭化物粒子
が1μmを超えると窒化ケイ素セラミックス焼結体の摩
耗面において該炭化物粒子が主として摺動する個所がで
きてしまうことから摺動特性にバラツキができてしま
う。また、あまり炭化物粒子のサイズが大きいと後述す
る3a族元素化合物等からなる粒界相に悪影響を与え、
焼結性の阻害および機械的強度を低下させる原因となっ
てしまう。
カや繊維状のものではなく粉末粒子であることが好まし
い。例えば、ベアリングボールのような耐摩耗性部材に
適用する場合、添加した炭化物が繊維であると摩耗面に
炭化物繊維が存在する状態になってしまい相手部材への
攻撃性を高めてしまうため好ましくない。
は3〜5重量部である。含有量が1重量部未満である場
合、含有させる効果がなく、逆に5重量部を超えると添
加の効果が飽和状態になるだけでなく、窒化ケイ素セラ
ミックス焼結体の強度ばらつきの原因となる。また、こ
れら炭化物は熱伝導性を向上させる効果だけではなく、
窒化ケイ素焼結体の窒化ケイ素結晶粒子の異常粒成長を
抑制する効果も有している。従来の窒化ケイ素結晶粒子
はアスペクト比が1〜20程度の長楕円形状の粒子がラ
ンダムに存在していたため、結果として耐摩耗性にバラ
ツキが生じ易かった。それに対し本発明では前述のよう
に炭化物を1〜5重量部含有させることにより、窒化ケ
イ素結晶粒子の最大径を10μm以下、好ましくは3〜
10μm、最小径を3μm以下の均一な結晶粒子のみに
制御することが可能となる。
長軸ものであり、最小径とはアスペクト比の短軸を示す
ものである。
御することにより耐摩耗性のバラツキを抑制することが
可能となる。例えば、最大径10μmを超えた異常粒成
長を無くすことにより、相手部材との摩擦係数を低減さ
せることができる。特に、電子機器用耐摩耗性部材であ
るハードディスクドライブ等のベアリングボールのよう
に直径が3mm以下と小さな耐摩耗性部材においてその
効果は顕著である。これは直径が3mm以下と小さくな
ることにより、窒化ケイ素セラミックス焼結体の摩耗面
に存在する個々の窒化ケイ素結晶粒子の影響が大きくな
るためであると考えられる。このような観点からすると
ベアリングボールの直径は小さい程本発明の効果を得易
く、ベアリングボールの直径は3mm以下、さらには2
mm以下と小さいものほど好ましいこととなる。
ことが可能となることから、ハードディスクドライブの
駆動に伴うノイズ発生量を低減することが可能となるた
め、結果的にハードディスクドライブの寿命を長くする
効果も有する。さらに、高熱伝導であるため、電子機器
内での放熱性にも優れ、回路の誤動作を防ぐことも可能
となる。
る。本発明の窒化ケイ素窒化ケイ素セラミックス焼結体
においては焼結助剤として、周期表3a族元素の酸化物
または窒化物の少なくとも1種類以上を5〜15重量部
含み、かつ2a及び4a族元素の酸化物または窒化物を
0.5〜3.0重量部含有するものである。これら3a族元素
の酸化物または窒化物は、焼結促進剤として機能するも
のであり、Y,Ho,Er,Yb,La,Sc,Pr,
Ce,Nd,Dy,Sm,Gdなどの酸化物または窒化
物の少なくとも1種が好ましく、2種以上を組合せるこ
とも可能である。含有量は5〜15重量部が好ましく、
5重量部未満では焼結性が劣化するため窒化ケイ素のα
→β転移が不十分になり、アスペクト比のばらつきがで
やすく、結果として熱伝導性及び強度の低い焼結体しか
得られなくなる。一方、15重量部を超えると、粒成長
し過ぎ異常粒成長を招き、また粒界相量が多くなりすぎ
るため、こちらも結果として熱伝導性、摩耗特性及び強
度が低い焼結体しか得られなくなる。
窒化物は、上記3a族元素化合物の焼結促進剤としての
効果をさらに促進させると共に低温での緻密化を可能に
する。したがって、窒化ケイ素結晶粒子の粒成長を抑制
することが可能となる。つまり、本発明の窒化ケイ素セ
ラミックス焼結体は、前述の炭化物および2a族または
4a族の酸化物または窒化物の両方を添加含有させるこ
とにより、相乗的に窒化ケイ素結晶粒子の異常粒成長を
無くすことを可能にしたものである。
としては、Mg,Ca,Sr,Ti,Zr,Hfの酸化
物または窒化物が好ましく、含有量は0.5〜3.0重量部が
好ましい。0.5重量部未満では添加の効果がなく、3.0重
量部を超えると添加の効果が飽和するだけでなく、粒界
相量が多くなりすぎ、結果として熱伝導性、摩耗特性及
び強度が低い焼結体しか得られなくなる。さらに、3a
族元素の酸化物または窒化物の合計量を合計量(1)、
2a族または4a族の酸化物または窒化物の合計量を合
計量(2)とした場合、[合計量(1)/合計量
(2)]の比率が少なくとも2以上、さらには3以上で
あることが好ましい。前述の通り、3a族並びに2a族
または4a族元素の化合物は、粒界相を形成するもので
あるが、[合計量(1)/合計量(2)]の比率が2未
満であると、後述する粒界相の結晶化を行い難いため好
ましい形態とは言えない。
クス焼結体は、3a族元素の酸化物または窒化物の少な
くとも1種類以上を5〜15重量部、2a族及び4a族の
酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を0.5〜3.0重
量部、炭化物を1〜5重量部含有し、窒化けい素結晶お
よび粒界相からなる構成を有することにより、熱伝導率
が50W/m・K以上を為し得るものである。
粒界相の結晶化がある。窒化ケイ素セラミックス焼結体
中の全粒界相量に対して20%以上を結晶化させること
により熱伝導率を確実に70W/m・k以上さらには90W/m・k
以上とすることができる。従って、耐摩耗性部材の用途
に応じて、より高い熱伝導率が必要な場合は粒界相の結
晶化を行うことが望ましい。なお、粒界相の結晶化につ
いては必ずしも必須構成ではなく要求特性に応じ適宜選
択可能である。
が小さくなるため、繰り返し疲労特性が低下し、窒化ケ
イ素セラミックス焼結体の耐摩耗性が低下することが考
えられるが、例えばハードディスクドライブ等の電子機
器用耐摩耗性部材においては、通常の一般工作機械の耐
摩耗性部材と比較して耐摩耗性部材にかかる荷重が小さ
いこと、さらには一般工作機械のような激しい振動を伴
う環境で使用されるものではないことから粒界相の結晶
化に伴う若干の繰り返し疲労特性低下は特に問題とはな
らない。むしろ、熱伝導性の向上により摺動摩擦熱によ
る電子機器への悪影響を低減できることから電子機器の
長寿命化を為し得ることも可能である。例えば、ハード
ディスクドライブ等の電子機器に用いられる小型モータ
は、コンパクトに設計されているため摺動に伴う熱を効
率よく放熱するための放熱部材をさらに追加で設けるこ
とは難しい。そのため本発明のように放熱性のよい材料
を用いることにより放熱効果を上げることは重要なこと
である。
焼結体であれば熱伝導率50W/m・k以上と優れた熱伝導率
を有するだけでなく、窒化ケイ素結晶粒子の異常粒成長
を抑制していることから4点曲げ強度が600MPa以上かつ
無潤滑下での摩擦係数が0.3以下と優れた強度並びに耐
摩耗性をも具備することが可能となる。
ス焼結体を耐摩耗性部材、例えばベアリングボールに適
用した場合、その圧砕強度が200MPa以上と優れた特
性をも示す。そのため直径が3mm以下、さらには2m
m以下と小型のベアリングボールに用いた場合に、特に
有効である。なお、本発明の耐摩耗性部材として主にベ
アリングボールについて説明しているが、本発明の窒化
ケイ素セラミックス焼結体を他の耐摩耗性部材に適用し
てもよいことは言うまでもない。他の耐摩耗性部材とし
ては、ころベアリング、動圧軸受、カムローラなどの自
動車部品、圧延ローラなどの各種耐摩耗性部材が挙げら
れる。また、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体を
一般工作機械のベアリング部材として用いてもよいこと
は言うまでもない。
は特に限定されるものではないが、例えば以下のような
方法がある。
期律表3a族元素の酸化物或いは窒化物の粉末、2a族
及び4a族元素の酸化物或いは窒化物の粉末、炭化物粉
末を所定量添加混合し、原料混合体を調製する。
等の汎用の成形法によって、所定の形状の成形体(セラ
ミックス混合物成形体)とした後、この成形体を窒素ガ
スあるいはアルゴンガス等の非酸化雰囲気中で、140
0〜1900℃の温度で所定時間焼結する。焼結条件と
しては1400〜1700℃の間の加熱時間が1時間以
上かつ1700〜1900℃までの加熱時間が3時間以
上の2段階焼結が好ましい。1400℃〜1700℃の
範囲で窒化ケイ素はα→βへ転移するため、ある一定時
間以上加熱することにより、均一な組織を形成できる。
また、1700℃〜1900℃での加熱時間を最初の加
熱時間より長く設けることにより、緻密化が促進される
だけでなく、アスペクト比のバラツキを小さくできる。
ても、あるいはその他の焼結法、例えば、ホットプレス
法、雰囲気加圧焼結法、熱間静水圧焼結法(HIP)等
を適用して実施してもよい。特に、ボールベアリング用
では、上記のいずれかの焼結法により得られた焼結体を
さらに雰囲気加圧焼結法或いは熱間静水圧焼結法を再び
適用することが好ましい。
後に主として焼結助剤からなる液相が凝固する温度まで
に至る焼結体の冷却速度を毎時100℃以下に徐冷する
ことにより粒界相の結晶化を促進することが可能とな
る。
ケイ素粉末及び焼結助剤を表1に示した割合で混合し、
窒化ケイ素製の容器とボールからなるボールミルで90
時間混合した。その後スラリーを適当な容器に移し数時
間乾燥させた。その後、PVA水溶液を加え、攪拌後、
500μmの篩で通篩することにより混合原料粉末を調
整した。得られた混合原料粉末は98MPaで金型プレ
スし、次いで300MPaの静水圧成形を行ない、成形
体を得た。得られた成形体を脱脂した後、その後窒素雰
囲気中で表1に示す焼結温度にて2時間焼結を行なうこ
とにより各実施例となる窒化ケイ素セラミックス焼結体
を得た。
れたサイズを用いた。また添加した炭化ケイ素の最大径
は1μm以下とした。
対し、室温4点曲げ強度(JISR1601)にて測定
を行なった。また、熱伝導率は、熱拡散率測定(JIS
R1611)により測定を行なった。摩耗試験はボール
オンディスク法による摩耗試験(JIS R1613)
に準じた方法で測定した。また、窒化ケイ素結晶粒子の
最大径および最小径を測定するために各実施例の試験片
の単位面積100μm×100μmについて任意の内部
2ヶ所、表面2ヶ所を測定し、その範囲における窒化ケ
イ素結晶粒子の最大径および最小径を測定した。
を具備する窒化ケイ素セラミックス焼結体を用意し、実
施例と同様の測定を行った。
化ケイ素セラミックス焼結体においては、4点曲げ強度
が600MPa以上、摩耗係数0.3以下、熱伝導率が50W/m
・k以上と優れた特性を示すことが分かった。それに対
し、比較例の4点曲げ強度、摩耗係数、熱伝導率のすべ
てを満たすものはなかった。また、表中には示さないが
各実施例の窒化ケイ素セラミックス焼結体において窒化
ケイ素結晶粒子の最大径は3〜10μm、最小径は3μ
m以下となっており異常粒成長は確認されなかった。そ
れに対し、炭化ケイ素の添加されていない比較例1およ
び比較例2については最大径18μmの異常粒成長した
粗大粒子が確認されており、これが摩耗係数の原因にな
ったものと考えられる。
次に、実施例1〜13および比較例1〜5と同様の組成
を用い、焼結条件を窒素雰囲気中1600℃×2時間の
常圧焼結を行った後、熱間静水圧プレスを1850℃×5時
間行うことにより直径2mmのベアリングボールを作製
した。このベアリングボールに対し、 圧砕試験を行っ
た結果を表2に示す。なお、各ベアリングボールの表面
はグレード3に相当する表面研磨を施したものとする。
また、圧砕荷重については、「旧JIS−B1501」
の測定法に準じ、インストロン型試験機で荷重をかけ、
破壊時の荷重を記録して圧砕荷重とした。
材であるベアリングボールは圧砕荷重200MPa以上と
優れていることが判明した。このように本発明のベアリ
ングボールは圧砕荷重についても優れた特性を示すこと
が判明した。なお、念のため窒化ケイ素結晶粒子の最大
径および最小径を測定したところ、いずれも最大径3〜
10μm、最小径3μm以下であった。
実施例15の窒化ケイ素セラミックス焼結体並びにベア
リングボールを用い焼結後の徐冷速度を変えることによ
り表3に示したように粒界相の結晶化率を変化させたも
のを作製し、実施例2および実施例15と同様の測定を
行った。その結果を表3に表示す。
上げることにより熱伝導率は向上することが分かった。
同様に摩耗係数および曲げ強度に関して若干の低下が確
認されたが、いずれも摩耗係数0.3以下、かつ4点曲げ
強度600MPa以上と優れた特性が確認された。
び実施例15の窒化ケイ素セラミックス焼結体並びにベ
アリングボールを用い、添加する炭化ケイ素粒子の最大
径を表4に示すように変えたものを作製し、実施例2お
よび実施例15と同様の測定を行った。その結果を表4
に示す。
が1μm以下のものが優れた特性を示すことが判明し
た。
施例14、実施例23、比較例9のベアリングボールを
用い、回転軸およびボール受け部をSUJ2鋼からなるベア
リング部材を作製し、高速回転させた場合の外輪の温度
上昇を測定した。測定条件は、グリース潤滑下で200
0rpm、5000rpm、10000rpm、150
00rpmでそれぞれ回転させた場合の、最初の1時間
における温度と、10時間後の温度を比較し、[(10
時間後の外輪の温度)−(1時間後の外輪の温度)]の
温度差を測定した。その結果を図1に示す。
セラミックス焼結体を用いたベアリングボールは熱伝導
性が良いことから放熱性に優れ、外輪の温度上昇を防ぐ
ことが可能となる。なお、実施例においてはベアリング
ボールについてのみ検討したが、例えば、ころや動圧軸
受等の各種電子機器用ベアリング部材に用いても優れた
特性を示すことは言うまでもない。
成を満たす窒化ケイ素セラミックス焼結体は、熱伝導
率、曲げ強度、摩擦係数に優れることから耐摩耗性部
材、例えばハードディスクドライブ用ベアリング部材に
用いた場合に優れた耐摩耗性を示す。また、熱伝導性に
優れることから放熱性にも優れ、摩擦熱による影響を抑
制しなければならない電子機器用耐摩耗性部材に用いた
場合に摩擦熱による不具合を無くすことが可能となる。
ベアリングボールを用いた際の外輪の温度上昇の一例を
示す図である。
Claims (11)
- 【請求項1】 3a族元素の酸化物または窒化物を
少なくとも1種類以上を5〜15重量部、2a族及び4a
族の酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を0.5〜
3.0重量部、炭化物を1〜5重量部含有し、窒化けい素
結晶および粒界相からなると共に、熱伝導率が50W/m
・K以上であることを特徴とする窒化ケイ素セラミック
ス焼結体。 - 【請求項2】 炭化物が炭化珪素であることを特徴とす
る請求項1に記載の窒化ケイ素セラミックス焼結体。 - 【請求項3】 (3a族元素の酸化物または窒化物の量
/2a族及び4a族の酸化物または窒化物の量)の比が2
以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に
記載の窒化ケイ素セラミックス焼結体。 - 【請求項4】 粒界相中における結晶化合物層の粒界相
全体に対する割合が20%以上であることを特徴とする
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の窒化ケイ素
セラミックス焼結体。 - 【請求項5】 窒化ケイ素セラミックス焼結体における
窒化ケイ素結晶粒子の最大径が10μm以下、最小径が
3μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求
項4のいずれかに記載の窒化ケイ素セラミックス焼結
体。 - 【請求項6】 4点曲げ強度が600MPa以上かつ無潤滑下
での摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする請求項
1ないし請求項5のいずれかに記載の窒化ケイ素セラミ
ックス焼結体。 - 【請求項7】 炭化物の最大径が1μm以下であるこ
とを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記
載の窒化ケイ素セラミックス焼結体。 - 【請求項8】 請求項1ないし請求項7のいずれかに記
載の窒化ケイ素セラミックス焼結体を用いたことを特徴
とする耐摩耗性部材。 - 【請求項9】 耐摩耗性部材がベアリングボールである
ことを特徴とする請求項8記載の耐摩耗性部材。 - 【請求項10】 ベアリングボールの圧砕強度が200
MPa以上であることを特徴とする請求項9記載の耐摩耗
性部材。 - 【請求項11】 ベアリングボールの直径が3mm以下
であることを特徴とする請求項9または請求項10に記
載の耐摩耗性部材。
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