JP4642971B2 - 窒化ケイ素セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材 - Google Patents

窒化ケイ素セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱伝導性に優れかつ耐摩耗性に優れた窒化ケイ素セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素セラミックス焼結体は酸化アルミニウムなどの酸化物系のセラミックスと比較し機械的強度が高く、耐摩耗性に優れ、高信頼性が要求されるベアリングボール、カムローラなどの自動車部品、ローラなどの各種耐摩耗性部材に使用されている。
耐摩耗性部材の一種として、ハードディスクドライブ(HDD)等を回転駆動させるスピンドルモータの軸受部を構成するベアリングボールにも適用されるようになっている。
このようなスピンドルモータにおいても窒化ケイ素セラミックス焼結体からなるベアリングボールは優れた耐摩耗性を示していた。
しかしながら、近年、このハードディスクドライブ等の電子機器の高容量化に伴いスピンドルモータを5000rpm、さらには8000rpm以上と高速回転せねばならなくなっていた。このような高速回転となった場合、従来の窒化ケイ素セラミックス焼結体は熱伝導率が10〜30W/m・k程度であったためモータの回転駆動に伴い発生する摩擦熱を効率よく発散することができずにいた。熱の発散が十分でないとベアリング部材が必要以上に熱を有してしまい電子回路の誤動作等の不具合の原因となってしまう。
【0003】
また、ハードディスクドライブ等の電子機器に用いるベアリングボールは直径が3mm以下と小さく、窒化ケイ素セラミックス焼結体でこのような小さな部材を作製した場合、耐摩耗性にバラツキが生じることが多かった。通常、窒化ケイ素結晶粒子は所定のアスペクト比を持つ構造を有しているが、従来の窒化ケイ素セラミックス焼結体はこの結晶粒子のサイズにバラツキが大きく異常粒成長がみられ、これが耐摩耗性のバラツキの原因になっていた。
一方、熱伝導率が60W/m・k以上と高い窒化ケイ素焼結体として例えば特開平7−149588号公報のような粒界相を結晶化させたものが開発されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−149588号公報に開示された高熱伝導性窒化ケイ素焼結体はあくまで半導体回路基板に用いることを主体としたものであるため、例えばベアリングボールなどの各種耐摩耗性部材に用いた場合、必ずしも耐摩耗性が十分ではなかった。
また、前述の通り、電子機器用耐摩耗性部材で用いられる場合、従来の熱伝導率が10〜30W/m・k程度の窒化ケイ素では、熱伝導率が低く、電子機器内での放熱性を妨げ、電子回路の誤動作の原因になり、信頼性を妨げていた。
さらに、従来の熱伝導率が10〜30W/m・k程度の窒化ケイ素では窒化ケイ素結晶粒子サイズのばらつきが大きく、耐摩耗特性のバラツキの原因となっていた。
従って、現状では耐摩耗性及び熱伝導性の両方の特性に優れた窒化ケイ素セラミックス焼結体の開発は十分であるとは言えなかった。特に、電子機器用耐摩耗性部材であるハードディスクドライブ等の電子機器用ベアリング部材の分野においては、耐摩耗性および熱伝導性の良い窒化ケイ素セラミックス焼結体の要望は強かった。
そこで本発明では、熱伝導性および耐摩耗性の両方の特性に優れた窒化ケイ素セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材の提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体は、焼結体の結晶粒子の成長のバラツキを低減し、耐摩耗性を向上させるだけでなく、高熱伝導率により、電子機器用耐摩耗性部材に用いた場合の放熱性を向上させることを可能とするものである。
このような窒化ケイ素セラミックス焼結体を為し得るために、本発明では、3a族元素の酸化物または窒化物を少なくとも1種類以上を5〜15重量部、2a族及び4a族の酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を0.5〜3.0重量部、炭化物を1〜5重量部含有し、窒化ケイ素結晶および粒界相からなる構成を具備することにより熱伝導率が50W/m・K以上為し得た。また、炭化物が炭化珪素であることが好ましい。
また、 (3a族元素の酸化物または窒化物の量/2a族及び4a族の酸化物または窒化物の量)の含有量比率、粒界相中における結晶化合物層の粒界相全体に対する割合が20%以上であること、さらには窒化ケイ素セラミックス焼結体における窒化ケイ素結晶粒子の最大径が10μm以下、最小径が3μm以下と様々な項目を制御することにより熱伝導率の向上だけではなく、強度および耐摩耗性の向上をも為し得ることを可能にしている。
【0006】
本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体は熱伝導性および耐摩耗性に優れることから、例えばハードディスクドライブ用ベアリングボールのような電子機器用耐摩耗性部材に用いた場合に耐摩耗性のバラツキを低減すると共に放熱性に優れることから摩擦熱による電子機器への不具合を低減することを実現するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体およびそれを用いた耐摩耗性部材の実施の形態について説明する。
本発明によれば、窒化ケイ素に、炭化物、好ましくは炭化ケイ素を1〜5重量部を加えることにより、熱伝導率50W/m・k以上を達成することが可能となる。
炭化物としては、炭化ケイ素の他に、周期律表4a族、5a族、6a族、7a族元素の炭化物、例えばニオブ、タングステン、クロム、タンタル、ジルコニウム、マンガン、ハフニウム、チタン、モリブデンが適用可能であり、さらには炭化ホウ素も適用可能である。
【0008】
また、これら炭化物は1種のみであっても良いし、2種以上を組合せて使用してもよい。本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体は主として耐摩耗性部材に用いるものであることから、そこに添加する炭化物としても耐摩耗性のある材料が好ましく、耐摩耗性を考慮すると前述の炭化物、好ましくは炭化ケイ素となる。
【0009】
炭化物粒子のサイズは特に限定されるものではないが、好ましくは最大径1μm以下である。前述の通り本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体は主として耐摩耗性部材に用いるものであるため、炭化物粒子の一部は窒化ケイ素セラミックス焼結体の摺動表面にも存在する状態となる。このとき表面に存在する炭化物粒子が1μmを超えると窒化ケイ素セラミックス焼結体の摩耗面において該炭化物粒子が主として摺動する個所ができてしまうことから摺動特性にバラツキができてしまう。また、あまり炭化物粒子のサイズが大きいと後述する3a族元素化合物等からなる粒界相に悪影響を与え、焼結性の阻害および機械的強度を低下させる原因となってしまう。
【0010】
また、炭化物粒子の形態としては、ウイスカや繊維状のものではなく粉末粒子であることが好ましい。例えば、ベアリングボールのような耐摩耗性部材に適用する場合、添加した炭化物が繊維であると摩耗面に炭化物繊維が存在する状態になってしまい相手部材への攻撃性を高めてしまうため好ましくない。
【0011】
炭化物の含有量は1〜5重量部、好ましくは3〜5重量部である。含有量が1重量部未満である場合、含有させる効果がなく、逆に5重量部を超えると添加の効果が飽和状態になるだけでなく、窒化ケイ素セラミックス焼結体の強度ばらつきの原因となる。
また、これら炭化物は熱伝導性を向上させる効果だけではなく、窒化ケイ素焼結体の窒化ケイ素結晶粒子の異常粒成長を抑制する効果も有している。従来の窒化ケイ素結晶粒子はアスペクト比が1〜20程度の長楕円形状の粒子がランダムに存在していたため、結果として耐摩耗性にバラツキが生じ易かった。それに対し本発明では前述のように炭化物を1〜5重量部含有させることにより、窒化ケイ素結晶粒子の最大径を10μm以下、好ましくは3〜10μm、最小径を3μm以下の均一な結晶粒子のみに制御することが可能となる。
【0012】
なお、本発明の最大径とはアスペクト比の長軸ものであり、最小径とはアスペクト比の短軸を示すものである。
【0013】
このように窒化ケイ素結晶粒子サイズを制御することにより耐摩耗性のバラツキを抑制することが可能となる。例えば、最大径10μmを超えた異常粒成長を無くすことにより、相手部材との摩擦係数を低減させることができる。特に、電子機器用耐摩耗性部材であるハードディスクドライブ等のベアリングボールのように直径が3mm以下と小さな耐摩耗性部材においてその効果は顕著である。これは直径が3mm以下と小さくなることにより、窒化ケイ素セラミックス焼結体の摩耗面に存在する個々の窒化ケイ素結晶粒子の影響が大きくなるためであると考えられる。このような観点からするとベアリングボールの直径は小さい程本発明の効果を得易く、ベアリングボールの直径は3mm以下、さらには2mm以下と小さいものほど好ましいこととなる。
【0014】
また、相手部材との摩擦係数を低減させることが可能となることから、ハードディスクドライブの駆動に伴うノイズ発生量を低減することが可能となるため、結果的にハードディスクドライブの寿命を長くする効果も有する。さらに、高熱伝導であるため、電子機器内での放熱性にも優れ、回路の誤動作を防ぐことも可能となる。
【0015】
次に、その他の含有成分について説明する。
本発明の窒化ケイ素窒化ケイ素セラミックス焼結体においては焼結助剤として、周期表3a族元素の酸化物または窒化物の少なくとも1種類以上を5〜15重量部含み、かつ2a及び4a族元素の酸化物または窒化物を0.5〜3.0重量部含有するものである。
これら3a族元素の酸化物または窒化物は、焼結促進剤として機能するものであり、Y,Ho,Er,Yb,La,Sc,Pr,Ce,Nd,Dy,Sm,Gdなどの酸化物または窒化物の少なくとも1種が好ましく、2種以上を組合せることも可能である。含有量は5〜15重量部が好ましく、5重量部未満では焼結性が劣化するため窒化ケイ素のα→β転移が不十分になり、アスペクト比のばらつきがでやすく、結果として熱伝導性及び強度の低い焼結体しか得られなくなる。
一方、15重量部を超えると、粒成長し過ぎ異常粒成長を招き、また粒界相量が多くなりすぎるため、こちらも結果として熱伝導性、摩耗特性及び強度が低い焼結体しか得られなくなる。
【0016】
また、2a族または4a族の酸化物または窒化物は、上記3a族元素化合物の焼結促進剤としての効果をさらに促進させると共に低温での緻密化を可能にする。したがって、窒化ケイ素結晶粒子の粒成長を抑制することが可能となる。つまり、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体は、前述の炭化物および2a族または4a族の酸化物または窒化物の両方を添加含有させることにより、相乗的に窒化ケイ素結晶粒子の異常粒成長を無くすことを可能にしたものである。
【0017】
2a族または4a族の酸化物または窒化物としては、Mg,Ca,Sr,Ti,Zr,Hfの酸化物または窒化物が好ましく、含有量は0.5〜3.0重量部が好ましい。0.5重量部未満では添加の効果がなく、3.0重量部を超えると添加の効果が飽和するだけでなく、粒界相量が多くなりすぎ、結果として熱伝導性、摩耗特性及び強度が低い焼結体しか得られなくなる。
さらに、3a族元素の酸化物または窒化物の合計量を合計量(1)、2a族または4a族の酸化物または窒化物の合計量を合計量(2)とした場合、[合計量(1)/合計量(2)]の比率が少なくとも2以上、さらには3以上であることが好ましい。前述の通り、3a族並びに2a族または4a族元素の化合物は、粒界相を形成するものであるが、[合計量(1)/合計量(2)]の比率が2未満であると、後述する粒界相の結晶化を行い難いため好ましい形態とは言えない。
【0018】
以上のように本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体は、3a族元素の酸化物または窒化物の少なくとも1種類以上を5〜15重量部、2a族及び4a族の酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を0.5〜3.0重量部、炭化物を1〜5重量部含有し、窒化けい素結晶および粒界相からなる構成を有することにより、熱伝導率が50W/m・K以上を為し得るものである。
【0019】
さらに熱伝導率を向上させる方法として、粒界相の結晶化がある。窒化ケイ素セラミックス焼結体中の全粒界相量に対して20%以上を結晶化させることにより熱伝導率を確実に70W/m・k以上さらには90W/m・k以上とすることができる。従って、耐摩耗性部材の用途に応じて、より高い熱伝導率が必要な場合は粒界相の結晶化を行うことが望ましい。
なお、粒界相の結晶化については必ずしも必須構成ではなく要求特性に応じ適宜選択可能である。
【0020】
粒界相の結晶化を行うと粒界相のヤング率が小さくなるため、繰り返し疲労特性が低下し、窒化ケイ素セラミックス焼結体の耐摩耗性が低下することが考えられるが、例えばハードディスクドライブ等の電子機器用耐摩耗性部材においては、通常の一般工作機械の耐摩耗性部材と比較して耐摩耗性部材にかかる荷重が小さいこと、さらには一般工作機械のような激しい振動を伴う環境で使用されるものではないことから粒界相の結晶化に伴う若干の繰り返し疲労特性低下は特に問題とはならない。むしろ、熱伝導性の向上により摺動摩擦熱による電子機器への悪影響を低減できることから電子機器の長寿命化を為し得ることも可能である。例えば、ハードディスクドライブ等の電子機器に用いられる小型モータは、コンパクトに設計されているため摺動に伴う熱を効率よく放熱するための放熱部材をさらに追加で設けることは難しい。そのため本発明のように放熱性のよい材料を用いることにより放熱効果を上げることは重要なことである。
【0021】
従って、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体であれば熱伝導率50W/m・k以上と優れた熱伝導率を有するだけでなく、窒化ケイ素結晶粒子の異常粒成長を抑制していることから4点曲げ強度が600MPa以上かつ無潤滑下での摩擦係数が0.3以下と優れた強度並びに耐摩耗性をも具備することが可能となる。
【0022】
さらには、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体を耐摩耗性部材、例えばベアリングボールに適用した場合、その圧砕強度が200MPa以上と優れた特性をも示す。そのため直径が3mm以下、さらには2mm以下と小型のベアリングボールに用いた場合に、特に有効である。
なお、本発明の耐摩耗性部材として主にベアリングボールについて説明しているが、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体を他の耐摩耗性部材に適用してもよいことは言うまでもない。他の耐摩耗性部材としては、ころベアリング、動圧軸受、カムローラなどの自動車部品、圧延ローラなどの各種耐摩耗性部材が挙げられる。また、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体を一般工作機械のベアリング部材として用いてもよいことは言うまでもない。
【0023】
次に製造方法について説明する。製造方法は特に限定されるものではないが、例えば以下のような方法がある。
【0024】
まず、原料粉として、窒化ケイ素粉末、周期律表3a族元素の酸化物或いは窒化物の粉末、2a族及び4a族元素の酸化物或いは窒化物の粉末、炭化物粉末を所定量添加混合し、原料混合体を調製する。
【0025】
次いで、得られた原料混合体を金型プレス等の汎用の成形法によって、所定の形状の成形体(セラミックス混合物成形体)とした後、この成形体を窒素ガスあるいはアルゴンガス等の非酸化雰囲気中で、1400〜1900℃の温度で所定時間焼結する。
焼結条件としては1400〜1700℃の間の加熱時間が1時間以上かつ1700〜1900℃までの加熱時間が3時間以上の2段階焼結が好ましい。
1400℃〜1700℃の範囲で窒化ケイ素はα→βへ転移するため、ある一定時間以上加熱することにより、均一な組織を形成できる。また、1700℃〜1900℃での加熱時間を最初の加熱時間より長く設けることにより、緻密化が促進されるだけでなく、アスペクト比のバラツキを小さくできる。
【0026】
なお、上記焼結操作は、常圧焼結法によっても、あるいはその他の焼結法、例えば、ホットプレス法、雰囲気加圧焼結法、熱間静水圧焼結法(HIP)等を適用して実施してもよい。特に、ボールベアリング用では、上記のいずれかの焼結法により得られた焼結体をさらに雰囲気加圧焼結法或いは熱間静水圧焼結法を再び適用することが好ましい。
【0027】
また、粒界相の結晶化を行う場合は、焼結後に主として焼結助剤からなる液相が凝固する温度までに至る焼結体の冷却速度を毎時100℃以下に徐冷することにより粒界相の結晶化を促進することが可能となる。
【0028】
【実施例】
(実施例1 〜13及び比較例1〜5)
窒化ケイ素粉末及び焼結助剤を表1に示した割合で混合し、窒化ケイ素製の容器とボールからなるボールミルで90時間混合した。その後スラリーを適当な容器に移し数時間乾燥させた。その後、PVA水溶液を加え、攪拌後、500μmの篩で通篩することにより混合原料粉末を調整した。
得られた混合原料粉末は98MPaで金型プレスし、次いで300MPaの静水圧成形を行ない、成形体を得た。得られた成形体を脱脂した後、その後窒素雰囲気中で表1に示す焼結温度にて2時間焼結を行なうことにより各実施例となる窒化ケイ素セラミックス焼結体を得た。
【0029】
なお、各実施例の試験片は各JISで指定されたサイズを用いた。また添加した炭化ケイ素の最大径は1μm以下とした。
【0030】
得られた窒化ケイ素セラミックス焼結体に対し、室温4点曲げ強度(JIS R1601)にて測定を行なった。また、熱伝導率は、熱拡散率測定(JIS R1611)により測定を行なった。摩耗試験はボールオンディスク法による摩耗試験(JIS R1613)に準じた方法で測定した。
また、窒化ケイ素結晶粒子の最大径および最小径を測定するために各実施例の試験片の単位面積100μm×100μmについて任意の内部2ヶ所、表面2ヶ所を測定し、その範囲における窒化ケイ素結晶粒子の最大径および最小径を測定した。
【0031】
比較のために、本発明の範囲外である組成を具備する窒化ケイ素セラミックス焼結体を用意し、実施例と同様の測定を行った。
【0032】
【表1】
Figure 0004642971
【0033】
表1から分かる通り、本発明の実施例の窒化ケイ素セラミックス焼結体においては、4点曲げ強度が600MPa以上、摩耗係数0.3以下、熱伝導率が50W/m・k以上と優れた特性を示すことが分かった。
それに対し、比較例の4点曲げ強度、摩耗係数、熱伝導率のすべてを満たすものはなかった。
また、表中には示さないが各実施例の窒化ケイ素セラミックス焼結体において窒化ケイ素結晶粒子の最大径は3〜10μm、最小径は3μm以下となっており異常粒成長は確認されなかった。それに対し、炭化ケイ素の添加されていない比較例1および比較例2については最大径18μmの異常粒成長した粗大粒子が確認されており、これが摩耗係数の原因になったものと考えられる。
【0034】
(実施例14〜26及び比較例6〜10)
次に、実施例1〜13および比較例1〜5と同様の組成を用い、焼結条件を窒素雰囲気中1600℃×2時間の常圧焼結を行った後、熱間静水圧プレスを1850℃×5時間行うことにより直径2mmのベアリングボールを作製した。
このベアリングボールに対し、 圧砕試験を行った結果を表2に示す。なお、各ベアリングボールの表面はグレード3に相当する表面研磨を施したものとする。また、圧砕荷重については、「旧JIS−B1501」の測定法に準じ、インストロン型試験機で荷重をかけ、破壊時の荷重を記録して圧砕荷重とした。
【0035】
【表2】
Figure 0004642971
【0036】
表2から分かる通り、本発明の耐摩耗性部材であるベアリングボールは圧砕荷重200MPa以上と優れていることが判明した。このように本発明のベアリングボールは圧砕荷重についても優れた特性を示すことが判明した。
なお、念のため窒化ケイ素結晶粒子の最大径および最小径を測定したところ、いずれも最大径3〜10μm、最小径3μm以下であった。
【0037】
(実施例27〜30)
次に実施例2および実施例15の窒化ケイ素セラミックス焼結体並びにベアリングボールを用い焼結後の徐冷速度を変えることにより表3に示したように粒界相の結晶化率を変化させたものを作製し、実施例2および実施例15と同様の測定を行った。その結果を表3に表示す。
【0038】
【表3】
Figure 0004642971
【0039】
表3から分かる通り、粒界相の結晶化率を上げることにより熱伝導率は向上することが分かった。同様に摩耗係数および曲げ強度に関して若干の低下が確認されたが、いずれも摩耗係数0.3以下、かつ4点曲げ強度600MPa以上と優れた特性が確認された。
【0040】
(実施例31〜33)
次に、実施例2および実施例15の窒化ケイ素セラミックス焼結体並びにベアリングボールを用い、添加する炭化ケイ素粒子の最大径を表4に示すように変えたものを作製し、実施例2および実施例15と同様の測定を行った。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
Figure 0004642971
【0042】
表4から分かる通り、炭化物粒子の最大径が1μm以下のものが優れた特性を示すことが判明した。
【0043】
(実施例34〜35および比較例11)
実施例14、実施例23、比較例9のベアリングボールを用い、回転軸およびボール受け部をSUJ2鋼からなるベアリング部材を作製し、高速回転させた場合の外輪の温度上昇を測定した。
測定条件は、グリース潤滑下で2000rpm、5000rpm、10000rpm、15000rpmでそれぞれ回転させた場合の、最初の1時間における温度と、10時間後の温度を比較し、[(10時間後の外輪の温度)−(1時間後の外輪の温度)]の温度差を測定した。その結果を図1に示す。
【0044】
図1から分かる通り、本発明の窒化ケイ素セラミックス焼結体を用いたベアリングボールは熱伝導性が良いことから放熱性に優れ、外輪の温度上昇を防ぐことが可能となる。
なお、実施例においてはベアリングボールについてのみ検討したが、例えば、ころや動圧軸受等の各種電子機器用ベアリング部材に用いても優れた特性を示すことは言うまでもない。
【0045】
【発明の効果】
本発明のように炭化物を有した所定の組成を満たす窒化ケイ素セラミックス焼結体は、熱伝導率、曲げ強度、摩擦係数に優れることから耐摩耗性部材、例えばハードディスクドライブ用ベアリング部材に用いた場合に優れた耐摩耗性を示す。
また、熱伝導性に優れることから放熱性にも優れ、摩擦熱による影響を抑制しなければならない電子機器用耐摩耗性部材に用いた場合に摩擦熱による不具合を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例34、実施例35および比較例11のベアリングボールを用いた際の外輪の温度上昇の一例を示す図である。

Claims (7)

  1. 3a族元素の酸化物または窒化物を少なくとも1種類以上を5〜15重量部、2a族及び4a族の酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を0.5〜3.0重量部、炭化珪素を1〜5重量部含有し、窒化けい素結晶および粒界相からなると共に、
    窒化ケイ素セラミックス焼結体における窒化ケイ素結晶粒子の最大径が10μm以下、最小径が3μm以下であり、炭化珪素の最大径が1μm以下、熱伝導率が50W/m・K以上、4点曲げ強度が600MPa以上かつ無潤滑下での摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする窒化ケイ素セラミックス焼結体。
  2. (3a族元素の酸化物または窒化物の量/2a族及び4a族の酸化物または窒化物の量)の比が2以上であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素セラミックス焼結体。
  3. 粒界相中における結晶化合物層の粒界相全体に対する割合が20%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の窒化ケイ素セラミックス焼結体。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の窒化ケイ素セラミックス焼結体を用いたことを特徴とする耐摩耗性部材。
  5. 耐摩耗性部材がベアリングボールであることを特徴とする請求項4記載の耐摩耗性部材。
  6. ベアリングボールの圧砕強度が200MPa以上であることを特徴とする請求項5記載の耐摩耗性部材。
  7. ベアリングボールの直径が3mm以下であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の耐摩耗性部材。
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