JP4567855B2 - 窒化珪素焼結体およびそれを用いた摺動部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、適度な電気抵抗値を有する窒化珪素焼結体、またはそれを用いた摺動部材並びにベアリングボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記録装置、光ディスク装置またはDVD、モバイル製品、各種ゲーム機器などの発達は目覚しいものがある。これらは通常、スピンドルモータ等の回転駆動装置により回転軸を高速回転させることにより各種ディスクドライブを機能させている。
従来、このような回転軸を支えるベアリング(軸受)部材、特にベアリングボールには軸受鋼等の金属が用いられていた。しかしながら、軸受鋼等の金属は耐摩耗性が十分ではないことから、例えば前記電子機器等のように5,000rpm以上の高速回転が要求される分野においては寿命のバラツキが大きく信頼性のある回転駆動を提供できずにいた。
このような不具合を解決するために近年はベアリングボールに窒化珪素を用いることが試みられるようになっていた。窒化珪素はセラミックスの中でも摺動特性に優れることから耐摩耗性は十分であり、高速回転を行ったとしても信頼性のある回転駆動を提供することができていることが確認されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、窒化珪素製ベアリングボールは電気的に絶縁物であることから高速回転を行った際に発生する静電気を軸受鋼等の金属部材により作製された回転軸部、ボール受け部(いわゆるベアリングボール以外のベアリング部材の構成要素)に上手く静電気が発散されないと言った問題が発生してしまうことが分かった。
このように静電気が上手く発散されず必要以上に帯電してしまうと電子機器、例えばハードディスクドライブ等のように磁気的信号を用いる記録媒体に悪影響を与えてしまい、その結果ハードディスク等の電子機器そのものを破壊してしまうと言った現象が起きていた。
さらに、ハードディスクドライブの小型化、高容量化に伴い回転数も8,000rpm、さらには10,000rpm以上とさらなる高速回転が要求されている。このような高速回転が行われるとベアリングボールは摺動により加熱される。このとき従来の窒化珪素製ベアリングボールでは熱伝導率が20W/m・k程度と低く摩擦熱を上手く発散できずにいた。この放熱性の観点は高速回転になればなるほど問題となり、特に高速回転を長時間行うこと対しての対応は十分ではなかった。
【0004】
一方、従来から電気抵抗値が10-3Ω・cm程度を示す低電気抵抗の窒化珪素焼結体は存在している。このような窒化珪素焼結体は主に切削工具などに使われているが、低電気抵抗を実現するために炭化物や鉄などの導電性付与粒子を微構造中に多量に分散させねばならない。多量の導電性付与粒子が分散された窒化珪素焼結体は確かに電気抵抗値は下がるものの、これら導電性付与粒子は窒化珪素と異なる材料、いわゆる異材として微構造中に存在することを意味し、重要な構造部材として使用される窒化珪素焼結体本来の信頼性を低下させることにもつながる。特に鉄成分は窒化珪素との化合物として微構造中に存在し得ず、機械的特性を低下させる欠陥として考えられるべきものである。
例えば、ベアリングボールのように常に全体から圧縮荷重を受けるような用途においては、このような異材が多く分布されていると異材あるいはその界面から亀裂が入り易く摺動特性が劣化してしまう。特に鉄の成分はそれが広く分布されていると、ころがり特性上、相手材(レース)である金属材料との間で凝着を引き起こし、ついには剥離を引き起こすことにもつながる。従って、ベアリングボールのように全体から圧縮荷重を受けながら使用されるものにおいては鉄の成分は導電性促進に役立つ一方で、摺動特性上、あまり多くない方が好ましい。
【0005】
本発明は上記したような問題を解決するためになされたものであって、優れた摺動特性を有しながら、所定の電気抵抗値を有し、導電性付与粒子の分散状態を制御した導電性を有する窒化珪素焼結体を提供することを目的とする。
さらにこのような導電性を有する窒化珪素焼結体を、ハードディスク等の電子機器用摺動部材、例えばベアリングボールに適用することにより必要以上に静電気が帯電することを防止することができる。また、熱伝導率が40W/m・k以上であるため摺動の際の熱を効率よく発散できることから電子機器用摺動部材に適している。従って、本発明においては導電性を有する窒化珪素焼結体を用いた摺動部材並びにベアリングボールを提供することも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記目的を為し得るために、窒化珪素焼結体中に存在する導電性付与粒子と焼結体中に存在する鉄成分の分散状態を特定している。具体的には、窒化珪素焼結体中に導電性付与粒子として炭化物粒子と窒化物粒子を分散含有し、焼結体中に存在する鉄成分の含有量が10ppm以上200ppm以下であり、電気抵抗値が102Ω・cm以上107Ω・cm以下である窒化珪素焼結体である。
また、該焼結体中に存在する鉄成分の最大径が20μm以下であることが好ましい。また、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離は0.5μm以上5μm以下で、任意の断面でこの位置関係を満たす粒子分布が80%以上を占めていることが好ましい。
該炭化物粒子は4a族,5a族,6a族,7a族元素、珪素、硼素の炭化物の少なくとも1種以上からなることが好ましく、該窒化物粒子は4a族の窒化物の少なくとも1種であることが好ましい。さらに、熱伝導率が40W/m・k以上であることが好ましい。
このような窒化珪素焼結体を、摺動部材、例えばベアリングボールに適用すると特に効果的である。特に電子機器用の摺動部材、例えばハードディスクドライブ等の電子機器の回転駆動に適用するベアリングボールの場合、回転駆動に伴い発生する静電気を必要以上に帯電することを防止できると共に、熱伝導率が高いことから放熱性も優れている。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の窒化珪素焼結体は、導電性付与粒子として炭化物粒子と窒化物粒子を含有し、焼結体中の鉄の成分含有量が10ppm以上200ppm以下であり、鉄成分及び導電性付与粒子の分散状態に関し、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離が0.5μm以上5μm以下で、任意の断面でこの位置関係を満たす粒子分布が80%以上を占めていることとしている。
【0008】
鉄成分とは、金属鉄元素、鉄の窒化物や酸化物などの鉄化合物のすべての鉄成分を示すものである。また、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離とは、鉄成分粒子同士の粒子間距離、導電性付与粒子同士の粒子間距離、鉄成分粒子と導電性付与粒子の粒子間距離のすべての粒子間距離の中で最も近い粒子間距離を示すものである。
この焼結体中の鉄成分の含有量の求め方は、まず、焼結体を微細に粉砕し粉状にした後にフッ硝酸を加え加圧容器中で180℃で加熱して溶液にした後に硫酸でフッ酸を洗い落とし、この溶液に対してICP発光分析を施し求めることが有効である。また、鉄成分および導電性付与粒子の分布状態の求め方は、焼結体表面もしくは断面に鏡面加工を施し(表面粗さRaで0.01μm以下)、その表面における単位面積30μm×30μm(もしくはそれ以上の面積)をEPMAによるカラーマップと走査型電子顕微鏡による2次電子像を撮り、2つの像の比較から鉄成分及び導電性付与粒子の分布を特定することが有効である。
【0009】
カラーマップ及び2次電子像撮影については倍率2000倍(50μmを10cmで表示)以上が好ましく、この程度もしくはそれ以上の倍率において窒化珪素焼結体の表面(もしくは断面)の鏡面部を観察することで粒子間距離測定のバラツキを小さくすることができる。また、その窒化珪素焼結体中の鉄成分及び導電性付与粒子の面積を求める上で単位面積30μm×30μmあれば、本材料中の鉄成分及び導電性付与粒子の分散状態を代表値として捉えることができることから本発明では単位面積30μm×30μmを適用した。
また、窒化珪素焼結体中の単位面積30μm×30μm中の鉄成分及び導電性付与粒子間距離の測定場所については後述する均一混合を用いているのであれば導電性付与粒子が均一混合されていることから簡易的に表面1ヶ所のみの測定であっても問題はないが、通常、焼結体の表面または断面の少なくとも計4ヶ所について任意の場所を、各測定個所のカラーマップ及び2次電子像に対して30μm×30μmに相当する面積中の粒子分布を測定し、その平均値で示すことが好ましい。
なお、EPMAカラーマップにて判断するときベアリングボールのように球面状をカラーマップにとるとカラーマップの端部が湾曲して写るため正確に表面の凝集した導電性付与粒子の存在状態を示さないことが考えられるが単位面積30μm×30μmのように微小な範囲を撮影する上ではこの問題は考慮しなくても実質的に問題はない。このような観点からも単位面積は30μm×30μm程度が好ましい。
【0010】
本発明においては、導電性付与粒子として炭化物粒子および窒化物粒子を含み、鉄成分の含有量は10ppm以上200ppm以下であるものであり、鉄成分の粒子径が20μm以下であることが好ましい。また、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離は、0.5μm以上5μm以下で、任意の断面でこの位置関係を満たす粒子分布が80%以上を占めていることが好ましい。
【0011】
窒化珪素焼結体を構成する窒化珪素結晶粒子は前述のように絶縁体であることから通常、電気抵抗値は1010Ω・cm以上である。そのため本発明では電気抵抗値を所定の値にするために導電性付与粒子を添加している。電気抵抗値を下げることのみに着目すれば導電性付与粒子を添加するだけで十分であるが、例えば電子機器用のベアリングボールに適用した場合、個々のベアリングボールの電気抵抗値にバラツキが存在すると静電気の帯電防止効果にバラツキが生じてしまう。静電気は基本的に電気抵抗値の高いところ(絶縁性の高いところ)に帯電することから、静電気の帯電防止効果にバラツキが生じてしまうとその中で最も電気抵抗値の高いところに静電気が集中してしまい電子機器に静電気による不具合を生じてしまうこともある。このような現象は回転数が5,000rpm程度ではさほど問題とはならないが、回転数が9,000rpm以上の高速回転になると少しずつ確認され始めている。特に、静電気の帯電による電子機器への不具合は瞬間的な帯電量によっても影響されるためベアリングボールのように複数のボールを組合せて使用する摺動部材においては個々のベアリングボールの電気抵抗値のバラツキを無くすことは重要なことである。
【0012】
従って、本発明では導電性付与粒子の均一分布に加え、導電性に影響を与える鉄成分の含有量及び大きさと分布を制御することにより摺動特性を劣化させることなく個々の窒化珪素焼結体の電気抵抗値のバラツキを改善させるものである。
鉄成分の含有量は10ppm以上200ppm以下であり、鉄成分の粒子径が20μm以下であることが好ましい。また、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離は、0.5μm以上5μm以下で、任意の断面でこの位置関係を満たす粒子分布が80%以上を占めている、このような形態にすることにより摺動特性を低下させることなく電気抵抗値のバラツキを±20%/100個に抑えることができる。
【0013】
鉄成分の含有量が10ppm未満である場合は、導電性付与粒子の分散状態に依存する電気抵抗値のバラツキを示すことになり、そのロット間あるいはロット内のバラツキが大きくなる傾向にある。また、このバラツキを軽減するためには粒度分布の小さい導電性付与粒子の均質混合処理が必要になり、製造コストが上がり商業上不利益になる。一方、鉄成分の含有量が200ppmを超える場合は、電気抵抗値のバラツキを抑えられるものの摺動部材として使用すると、欠陥すなわち破壊起点となるケースが増え、ベアリングボールの様なクリティカルな用途への適用は信頼性上不可能となる。
【0014】
また、鉄成分の最大径が20μmを超える場合は、欠陥すなわち破壊起点となるケースが増え、ベアリングボールの様なクリティカルな用途への適用は信頼性上不可能となる。従って、鉄成分の最大径は20μm以下、さらには2μm以下であることが好ましい。
前述のように窒化珪素焼結体は絶縁体であるから電気抵抗値を所定の値にするためには鉄成分及び導電性付与粒子の存在は必要である。しかしながら、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離があまり離れている分布をとる微構造の場合には電気抵抗値を下げる効果が十分ではなくなり、ロット間のバラツキも大きくなる。そのため、鉄成分及び導電性付与粒子同士の粒子間距離を適度に接近させ、またその分布も均一化させることにより電気抵抗値を所定の値の範囲内に安定させる(バラツキをなくす)ことが必要であり、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離は好ましくは5μm以下である。
【0015】
一方、鉄成分及び導電性付与粒子同士の粒子間距離が0.5μm未満になる場合には導電性付与粒子が過度に凝集しているのと同じことになることから、電気抵抗値のバラツキは小さくなるものの、この部位が破壊起点となってしまい強度の低下を招く。また、ベアリングボールなどの摺動部材においては転がり寿命を低下させてしまう。
【0016】
従って、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離は0.5μm以上5μm以下である。また、このような粒子間距離は、任意の断面でこの位置関係を満たす粒子分布が80%以上を占めることが好ましい。このような範囲であれば窒化珪素焼結体の本来持つ摺動特性を劣化させないで済むと共に、電気抵抗値のバラツキを±20%/100個とさらに向上させることが可能となる。言い換えれば20%以下は粒子間距離が0.5μm未満または5μmを超えていてもよいことになるが、特に粒子間距離が0.5μm未満のものは凝集部となりやすい。そのため凝集部を形成している鉄成分および/または導電性付与粒子は、その凝集部の最大径を5μm以下、さらには3μm以下にすることが好ましい。凝集部の最大径が5μmを超えるとその凝集部が破壊起点となることから摺動特性を低下させてしまう。
つまり、本発明では窒化珪素焼結体中の導電性付与粒子同士の粒子間距離に所定の形態を具備させることにより電気抵抗値のバラツキを抑制し、さらには破壊起点となる凝集部の大きさを制御したものである。
【0017】
以上のように、鉄成分の含有量が10ppm以上200ppm以下であって、鉄成分の最大径が20μm以下であり、また、鉄成分及び導電性付与粒子についてもあまり粒子間距離が離れてしまうと導電性付与効果が小さくなってしまうことから、粒子間距離は0.5μm以上5μm以下で、任意の断面でこの位置関係を満たす粒子分布が80%以上を占めることが好ましい。このような導電性付与粒子の分散状態を具備する窒化珪素焼結体は電気抵抗値を107〜102Ω・cmとなると共に、電気抵抗値のバラツキを±20%/100個に抑えることができる。
【0018】
さらに、本発明の窒化珪素焼結体は窒化珪素焼結体の持つ耐摩耗性や強度の良さをいかせることから摺動部材に適しており、特に電子機器用摺動部材、例えば電子機器用ベアリングボールに用いることにより回転駆動に伴う静電気を効率よく発散でき必要以上に帯電することを抑制することができると共に、優れた摺動特性を示すことが可能となる。
次に、導電性付与粒子の材質について説明する。導電性付与粒子の材質は窒化珪素焼結体の電気抵抗値を下げることができる炭化物および窒化物であれば特に限定されるものではないが、好ましくは炭化物粒子は4a族,5a族,6a族,7a族元素、珪素、硼素の炭化物の少なくとも1種以上からなる化合物であり、さらに好ましくはタンタル、チタン、ニオブ、タングステン、珪素、硼素の炭化物の少なくとも1種以上である。また、窒化物粒子は4a族元素の窒化物の少なくとも1種である。なお、導電性付与粒子としての窒化物粒子は窒化珪素焼結体の電気抵抗値を下げる効果を具備するものであるから窒化珪素粒子そのものは含まないものとする。
【0019】
本発明の窒化珪素焼結体は、例えばベアリングボールなどの摺動部材に使用されるため含有する導電性付与粒子も当然ながら窒化珪素焼結体と共に摺動される。
このため、導電性付与粒子にもある程度の摺動特性は要求されることから前述の炭化物が好適である。該炭化物は摺動特性が優れているだけでなく、熱伝導性にも優れていることから窒化珪素焼結体の熱伝導率を40W/m・k以上にし易い。
【0020】
また、窒化物粒子は4a族元素の窒化物が好ましく、特に好ましくは窒化チタンである。4a族元素の窒化物は導電性付与効果のみではなく焼結助剤としての効果も得られることから好ましく、特に窒化チタンはその効果が顕著であることから好ましい。さらに4a族元素の窒化物を分散含有させるときに、4a族元素の酸化物を含有させ、焼結時に窒化物へと析出させることにより焼結性を向上させることができる。
【0021】
炭化物粒子および窒化物粒子の含有量は所定量の凝集部を含有しているのであれば特に限定されるものではないが、炭化物粒子は10wt%以上35wt%以下、窒化物粒子は0.1wt%以上5wt%以下である。前述のように炭化物粒子は摺動特性に優れていることから10wt%以上35wt%以下含有させても窒化珪素焼結体の強度や摺動特性を必要以上に低下させることはないが、窒化物粒子自体は比較的強度が弱く脆性材料であることから5wt%を超えて含有させると窒化珪素焼結体の強度および摺動特性を低下させてしまう。
窒化珪素焼結体中に存在する導電性付与粒子の最大径2μm以下、好ましくは0.3〜1.2μmである。本発明の導電性付与粒子の最大径とは個々の導電性付与粒子のサイズであり、窒化珪素焼結体の表面鏡面部のEPMAにおけるカラーマップを見たときの導電性付与粒子粒子の最も長い対角線を最大径とする。
【0022】
また、炭化物粒子の平均粒径と窒化物粒子の平均粒径を比較した場合、炭化物粒子の平均粒径≦窒化物粒子の平均粒径であることが好ましい。具体的には、炭化物粒子の平均粒径は0.3μm以上1μm以下、窒化物粒子の平均粒径は1μm以上2μm以下であることが好ましい。炭化物粒子は窒化物粒子と比べて多く含有させることから凝集しやすいことから、粒径を窒化物粒子より小さくすることにより必要以上に凝集することを防ぐ必要がある。
【0023】
このような形態を示す窒化珪素焼結体の電気抵抗値が102Ω・cm以上107Ω・cmである。本発明の窒化珪素焼結体は特に用途が限定されるものではないが、ハードディスクドライブなどの電子機器を回転駆動させるためのモータ機器に具備される摺動部材、例えばベアリングボールに用いることが最適である。
このとき電気抵抗値が107Ω・cmを超えるようであるとベアリングボールの摺動時に発生する静電気の帯電を効率よく防ぐことが難しく、逆に102Ω・cm未満であると静電気の帯電を防ぐことは可能であるものの窒化珪素焼結体中に導電性付与粒子が大量に添加されている状態となり易くなるため窒化珪素焼結体が本来持つ耐摩耗性や強度の良さを十分いかせなくなるのであまり好ましくはない。
【0024】
また、本発明の窒化珪素焼結体は導電性付与粒子を添加していることから熱伝導率40W/m・k以上と向上させることができる。本発明の窒化珪素焼結体は、主として電子機器用摺動部材に用いるものである。電子機器は、例えば半導体装置用基板を見て分かる通り、熱の問題は非常に重要である。このため、電子機器用の摺動部材であっても放熱性に優れていることは重要である。特に、ハードディスク等の電子機器の回転駆動に用いるベアリングボールを熱伝導率が40W/m・k以上と放熱性に優れた本発明の窒化珪素焼結体で形成すると、前述の静電気の帯電を防止するだけでなく、回転駆動に伴う摩擦熱をも効率よく発散できるようになり、静電気の帯電防止および放熱性の両方の効果を得ることができる。
ベアリング部材の場合、回転軸およびボール受け部は軸受鋼等の金属部材で形成されていることが多く、摺動時の熱による変形等の問題は起き易い。特に電子機器においては回転速度が8,000rpm以上、さらには10,000rpm以上と高速回転化していく傾向にあり、従来より放熱性の問題は起き易くなっている。従って、熱伝導率の高い本発明の窒化珪素焼結体を用いたベアリングボールは電子機器に適しており、特に回転軸およびボール受け部が軸受鋼等の金属部材からなるベアリング部材に最適であると言える。
【0025】
さらに、ベアリングボールの直径が3mm以下、さらには2mm以下であることが好ましい。本発明の窒化珪素焼結体は、熱伝導率が40W/m・k以上と高いが、回転軸等を構成する金属部材と比較すると熱伝導率という点では劣ってしまう。そのため、放熱性という観点では窒化珪素製ベアリングボールは熱抵抗体となってしまうことから、直径が3mm以下、さらには2mm以下と小さくすることによりベアリング部材としての熱抵抗を下げることができる。
【0026】
なお、ここまでは主に導電性付与粒子について説明してきたが本発明においては他の成分、例えば焼結助剤を添加してよいことは言うまでもない。焼結助剤としては一般的に使用されているものでよく、酸化イットリウム等の希土類化合物、酸化マグネシウム等の金属酸化物が好適である。また、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のアルミニウム化合物などを併用してもよい。添加量としては特に限定されるものではないが3wt%以上20wt%以下が好ましい。
【0027】
次に製造方法について説明する。製造方法は鉄成分及び導電性付与粒子の分散状態に関し、鉄成分の含有量が10ppm以上200ppm以下であり、分布している鉄の粒子径が20μm以下であって、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離が0.5μm以上5μm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば次のような方法がある。
【0028】
まず、窒化珪素粉末、焼結助剤、導電性付与粒子粉末を所定量均一混合した後、造粒、除鉄、成形、脱脂、焼結する方法である。
特に、導電性付与粒子粉末の均一混合と原料および原料処理工程中より生じる鉄成分の過度の混入を防ぐことが重要である。そのため例えば、各原料粉中の鉄成分量を管理し必要以上に含有させないことが重要である。また、鉄成分量が少ない場合は所定量添加するなどの処理も必要である。
また、鉄成分および導電性付与粒子の粒子間距離を所定の相対にするために、窒化珪素中に導電性付与粒子が均一分散できる様予め造粒し、所定の分散状態を満たすように必要量秤量した後に、窒化珪素粉末及び焼結助剤が含まれるスラリー中に添加し、所定時間混合する方法がある。
【0029】
添加混合する際に、均一分散を達成するために例えば次のような方法が有効である。まず、1ロット分の原料粉末を混合するにあたり、各原料粉末をそれぞれ2分割以上、好ましくは3から5分割して比較的少量ずつ混合したものを最終的に1つに混ぜ合わせる方法である。
また、上記の処理によって得られたスラリーにスプレー造粒処理を施し、得られた造粒粉に対して、乾式除鉄を施し、粉末中に含まれる鉄分を望ましい量になるまで除去する方法がある。マグネットローターが一定の間隔で対向した隙間に造粒粉を流し込み、対向点を結ぶ空間の磁界が例えば10000ガウス以上30000ガウス以下程度になる電流・電圧をローターにかけ、この強磁界中で鉄分を除去する。必要に応じて、粉末中に含まれる鉄成分が望ましい量になるまで、この処理を繰り返し施こす。特に磁界による鉄成分の除去は最大径が大きい鉄成分を積極的に除去できるので効果的である。
【0030】
このような方法によって粉末を生成すれば鉄成分の含有量、粒子径および粒子間距離を制御することができるので、鉄成分の含有量が10ppm以上200ppm以下、鉄成分の粒子径が20μm以下で、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離を0.5μm以上5μm以下にすることが可能となる。
【0031】
各原料粉末の大きさは特に限定されるものではないが、窒化珪素粉末の平均粒径は0.2μm以上3μm以下、焼結助剤は平均粒径2μm以下が好ましい。
また、導電性付与粒子粉末のサイズは平均粒径3μm以下、好ましくは0.2μm以上2μm以下である。導電性付与粒子粒子が0.2μm未満であるとベアリングボールに適用した場合、表面加工時または摺動時に表面から脱粒し易くなる。一方、3μmを超えるとわずかな凝集だけで最大径が5μmを超えてしまうので好ましくない。さらには前述の最大径を制御し易いように平均粒径のバラツキが少ない例えば標準偏差1.5μm以下の粉末を用いることが好ましい。
【0032】
さらにベアリングボールとしての摺動特性を損なわないためには前記サイズを満たしていたとしても導電性付与粒子粉末としてウイスカーや繊維を用いることは好ましくはなく、粒子状粉末を用いることが望ましい。ウイスカーや繊維は、その形状から表面にトゲのような凸部を有しておりベアリングボールの表面にこのようなものが存在していた場合耐摩耗性を劣化させてしまう。
【0033】
成形方法については、窒化珪素製焼結体またはベアリングボールを製造するための方法が適用可能である。従って、通常の成形方法や静水圧成形(CIP)などが適用可能であり、ベアリングボールを製造する際は静水圧成形が好適である。
焼結方法についても窒化珪素製焼結体並びにベアリングボールを製造するための方法が適用可能である。従って、常圧焼結、加圧焼結、熱間静水圧プレス(HIP)焼結が適用可能であり、ベアリングボールを製造する際は常圧焼結または加圧焼結を行った後にHIP焼結を行うことが好ましい。
以上のような工程を経た後、ベアリングボールとして使用する場合はJIS規格で定められた表面粗さを得るための表面研磨加工を施す。
【0034】
【実施例】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
導電性付与粒子粉末として平均粒径0.7μm以下(標準偏差1.3μm以下)の炭化珪素粉末を20wt%、平均粒径0.9μm(標準偏差1.5μm以下)の酸化チタン粉末を1wt%、焼結助剤として平均粒径0.8μmの酸化イットリウム粉末を5wt%、平均粒径0.9μmの酸化アルミニウム粉末を4wt%、残部平均粒径0.7μmの窒化珪素粉末を用意した。各原料粉をそれぞれ3分割して混合して3つの混合粉末を得た後に、この3つの混合粉末を合せて混合して混合原料粉末を製造することにより混合原料粉末スラリーを用意した。
次に、混合原料粉スラリーを10000ガウス以上30000ガウス以下の磁界中で処理し、鉄成分量を変えた混合原料粉末を調整した。このとき混合原料粉末中の鉄成分量は10ppm以上100ppm以下の範囲であったので、必要に応じ金属鉄を添加して表1に示す鉄成分量の窒化珪素焼結体を得るための混合原料粉末を調整した。
この混合原料粉末をCIP法により成形し、不活性雰囲気中1600℃以上1900℃以下の常圧焼結、続いて1600℃以上1900℃以下の温度でHIP焼結を行い表1に示した窒化珪素焼結体を作製した。
【0035】
なお、各実施例はサイズ3×4×40mmの四角柱状の試料とし、さらにJIS規格で認定されたベアリングボールのグレード3に相当する表面研磨加工を施したものとする。また、鉄成分および導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離はいずれも0.5μm以上5μm以下であった。
このような各実施例に対し、電気抵抗値、電気抵抗値のバラツキ、3点曲げ強度(室温)、熱伝導率を測定した結果を併せて表1に示した。電気抵抗値は各試料の上下をラップ加工し同一平面上に2ヶ所電極を設置し、室温にてその間の抵抗を絶縁抵抗計で測定した。熱伝導率は試料を3×3×10mmに追加加工したものを用いレーザーフレッシュ法により測定した。各測定においては各実施例にかかる試料を100個用意し、その平均値にて示した。また、電気抵抗値のバラツキについては平均値に対して最も差の大きかった電気抵抗値を平均値に対する差としてパーセント(%)で表示した。
なお、各測定値において、本実施例では便宜的に試料形状を四角柱状としたが、例えば真球状のベアリングボールについて各特性を測定する場合でも同様にラップ加工を施すことにより対応可能である。
【0036】
また、各窒化珪素焼結体中の導電性付与粒子の凝集部の面積率の測定は、各試料を表面粗さRaが0.01μm以下まで研磨加工を施し研磨面の表面の任意の4ヶ所(単位面積30μm×30μmに相当する任意の面積)を選び、各測定個所のカラーマップ(倍率2000倍)を使用した。
比較のために鉄成分の量を過量にしたものを比較例1として用意した。また、導電性付与粒子を全く添加しないこと以外は実施例と同様の窒化珪素焼結体を比較例2とした。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から分かる通り、本発明の窒化珪素焼結体は電気抵抗値が107〜102Ω・cmの範囲において3点曲げ強度は1000MPa以上、熱伝導率は40W/m・k以上であることが分かった。
それに対して、比較例1は鉄成分量が多いことから電気抵抗値のバラツキは小さいものの強度は低下してしまった。一方、導電性付与粒子を添加しない比較例2は電気抵抗値が1010Ω・cm以上であり、熱伝導性も悪かった。
なお、実施例1〜4の窒化珪素焼結体中の鉄成分および導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離が0.5μm以上5μm以下のものはいずれも80%以上存在していた。また、粒子間距離が0.5μm以下のものは5%以上15%以下程度であり、凝集部の最大径はいずれも3μm以下であった。
それに対し、比較例1のものは60%程度であり、しかも粒子間距離0.5μm未満のものは20%程度あり、凝集部の最大径は5μmを超えているものもあった。
このような電気抵抗値等の特性を持つ窒化珪素焼結体は後述するハードディスクドライブ等の電子機器用ベアリングボールに用いると静電気による不具合を無くすことが可能となる。
【0039】
(実施例5〜8、比較例4〜6、参考例2)
次に、実施例1と同様の製造工程により電気抵抗値および鉄成分の割合を変えた窒化珪素焼結体からなる直径2mmのベアリングボールを作製した。各ベアリングボールは表面研磨をグレード3のものとした。
各ベアリングボールをハードディスクドライブを回転駆動させるためのスピンドルモータのベアリング部材に10個一組にして組込んだ。なお、その他のベアリング部材として、軸受鋼SUJ2製の回転軸部並びにボール受け部を用いた。
該モータを回転速度8,000rpmと11,000rpmで200時間連続稼動させたときの静電気による不具合の有無を調べた。静電気による不具合とは、200時間の連続稼動後にハードディスクドライブが通常通り可動するか否かにより判定した。なお、各静電気による不具合の有無はハードディスクドライブを各100台用意し測定を行った。
比較のために比較例1の窒化珪素焼結体を持ちいたものを比較例4、比較例2の窒化珪素焼結体を用いたものを比較例5、電気抵抗値を小さくしたものを比較例6として同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から分かる通り、本実施例にかかるベアリングボールを用いたものは静電気による不具合がないことが分かった。それに対し、比較例5は電気抵抗値が本発明より非情に高いことから静電気による不具合を発祥してしまった(100台中3台)。
また、比較例4は静電気による不具合は発生しなかったが、ベアリングボールの強度が不十分であることから200時間後のベアリングボールには若干の破損が確認され、あまり長時間の稼動には向かないことが確認された。これは鉄成分の割合が多すぎたことためで、その鉄成分が破壊起点になってしまったものであると考えられる。
また、比較例6のものは8,000rpm程度の回転速度では静電気による不具合は確認されなかったが、11,000rpmではハードディスクドライブが完全に停止していないものの若干の不具合を示すもの(100台中1台)が確認されたので「ややあり」と表記した。これは、電気抵抗値のバラツキが大きいため電気抵抗値の最も大きなベアリングボールに静電気が瞬間的に集中してしまったためであると考えられる。また、比較例4同様に200時間後にはベアリングボールの破損が確認され長時間の摺動には向かないことが分かった。
【0042】
(実施例9〜13、比較例7〜9)
次に、実施例5〜8および比較例4〜6のベアリングボールを用いベアリングボールの転がり寿命の測定を行った。なお、本実施例にかかるベアリングボールは鉄成分および導電性付与粒子の凝集部の最大径はいずれも5μm以下であった。また、比較例4のベアリングボールを用いた比較例7の鉄成分および導電性付与粒子の凝集部の最大径は9μmであり、比較例6のベアリングボールを用いた比較例9の鉄成分および導電性付与粒子の凝集部の最大径は23μmであった。
転がり寿命の測定に関しては、スラスト型軸受試験機を用い、相手材としてSUJ2鋼製の平板上を回転させる方法で荷重は一球あたり最大接触応力5.9GPa、回転数1200rpm、タービン油の油浴潤滑条件下で最高400時間まで行いベアリングボールの表面が剥離するまでの時間を測定した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
表3から分かる通り、本実施例にかかるベアリングボールにおいて鉄成分が本発明の範囲内のものは導電性付与粒子のを添加していない比較例8と同等の優れた転がり寿命を示すことが分かった。
それに対し、比較例7および比較例9のように本発明の範囲外になると摺動特性は劣化することが分かった。これは、結果として窒化珪素マトリックス中に鉄成分または導電性付与粒子が多くなりすぎてしまい窒化珪素焼結体の持つ摺動特性の良さをいかせなくなってしまっためであると言える。また、鉄成分および導電性付与粒子の凝集部の最大径が5μmを超えているため凝集部が破壊起点となってしまったものと考える。
【0045】
(実施例13〜14、比較例10)
鉄成分の粒子径の影響を調べるため、鉄成分の粒子径を変えた以外は実施例11と同様のベアリングボールを用意した。各ベアリングボールに対し、実施例11と同様の転がり寿命試験を行った。また、併せて圧砕強度、3点曲げ強度(室温)の測定も行った。
圧砕強度の測定は、旧JIS規格B1501に準じた測定法により、インストロン型試験機で圧縮加重をかけ、破壊時の荷重を測定することにより対応した。その結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
表4から分かる通り、鉄成分の粒子径が20μm以下、さらには5μm以下のものは転がり寿命に優れ、かつ圧砕強度も210MPa以上と優れた特性を示すことが分かった。
それに対し、本発明の好ましい範囲を外れている比較例10のものは鉄成分の含有量が本発明の範囲内であるにも関わらず各特性が劣化することが分かった。
これは大きな鉄成分粒子の粒子径が大きすぎるためこの鉄成分粒子が破壊起点になってしまったためであると考えられる。
言い換えると、鉄成分の含有量が本発明の範囲内であっても鉄成分の粒子径が20μmを超えるようなものは、ベアリングボールに適したものとは言えないと言える。
【0048】
(実施例15〜16)
導電性付与粒子粉末として平均粒径0.8μm以下(標準偏差1.5μm以下)の炭化珪素粉末、平均粒径0.9μm(標準偏差1.5μm以下)の酸化チタン粉末、焼結助剤として平均粒径1.5μm以下の酸化イットリウム粉末を5wt%、平均粒径0.8μm以下の酸化アルミニウム粉末を3wt%、残部を平均粒径0.5μmの窒化珪素粉末を用意した。
次に、実施例15として窒化珪素粉末と焼結助剤粉末を混合し、所定量の炭化珪素粉末および酸化チタン粉末を3回に分割して1時間間隔を空けて添加混合し、最後に導電性付与粒子が均一混合された混合原料粉末スラリーを作製した。
【0049】
実施例16として、各原料粉末を3分割し、それぞれ混合した後、全体を混ぜ合わせた混合原料粉末スラリーを用意した。参考例5として、一度に全ての原料粉末を混合した混合原料粉末スラリーを用意した。
この各混合原料スラリーを10000ガウス以上30000ガウス以下の磁界中で処理し、鉄成分量を10〜200ppmの範囲内にした混合原料粉末を調整した。
この各混合原料粉末をCIP法により成形し、不活性雰囲気中1740℃常圧焼結、続いて1000気圧1700℃でHIP焼結を行い直径2mmの窒化珪素製ベアリングボールおよび3×4×40mmの四角柱状の試料を作製した。
このような各試料を100個ずつ作製し、鉄成分および/または導電性付与粒子からなるの凝集部の面積率および凝集部の最大径を測定した。凝集部の最大径は任意の30μm×30μmを4ヶ所測定し、その中にあった最も大きな凝集部の最大径を示した。その結果を表5に示す。なお、ここで凝集部とは2000倍の拡大写真で観察したときに粒子間距離が0(ゼロ)μm以上0.5μm未満の範囲内にあるものとした。
【0050】
【表5】
【0051】
表5から分かる通り、実施例15または実施例16の添加混合方法によれば本発明の好ましい形態を具備する窒化珪素焼結体を作製できることが分かった。
それに対し、参考例5では導電性付与粒子の凝集部が3μm以上20μm以下と一部本発明の好ましい範囲に入るものもできているが、相対的には大きな凝集部ができてしまい易いことが分かった。このような窒化珪素焼結体では、強度が低下すると共に転がり寿命も低下してしまうことは前述の実施例の通りである。
【0052】
(実施例17〜26)
次に、導電性付与粒子を表6にある材質に変える以外は実施例2と同一の窒化珪素焼結体を作製した。作製した各窒化珪素焼結体に対し、実施例2と同様の測定を行った。
【0053】
【表6】
【0054】
表5から分かる通り、導電性付与粒子の材質を変えたとしても電気抵抗値、3点曲げ強度、熱伝導率はいずれもすぐれた特性を示すことが分かった。
【0055】
(実施例27〜42)
実施例17〜26の窒化珪素焼結体を用いた以外は実施例10と同じベアリングボールを作製し、実施例13と同様の方法により圧砕強度および転がり寿命特性を測定した。
測定した結果、いずれのべアリングボールも圧砕強度は210MPa以上、転がり寿命は400時間以上と優れた特性を示すことが分かった。
以上のことから本発明の窒化珪素および摺動部材においては導電性付与粒子の材質を変えたとしても優れた特性を示すと言える。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明の窒化珪素焼結体は、導電性付与粒子として炭化物粒子および窒化物粒子を含み、鉄成分の含有量を10ppm以上200ppm以下に特定することにより、所定の電気抵抗値を具備するものである。このような窒化珪素焼結体はハードディスクドライブ等の電子機器の摺動部材、例えば回転駆動させるためのモータに搭載するベアリング部材のベアリングボールに用いた場合、回転駆動に伴う静電気の帯電を防止することが可能となる。
また、導電性付与粒子として炭化物等を用いることにより焼結体自体の熱伝導率を向上させることができるため回転駆動に伴う摩擦熱を効率よく放熱することも可能となる。さらに電気抵抗値のバラツキを抑えていることから、回転速度が8000rpm以上、さらには10000rpm以上と高速回転を行ったとしても静電気による不具合の発生を効率的に抑制することができる。
さらに、鉄成分および/または導電性付与粒子の凝集を防ぐことにより摺動特性等を向上させることができる。
このような形態にすれば窒化珪素焼結体からなるベアリングボールは窒化珪素が持つ摺動特性のよさを必要以上に低減させずに済み、ハードディスクドライブなどの電子機器に用いた場合、優れた摺動特性を示す。
Claims (5)
- 導電性付与粒子として炭化物粒子を10wt%以上35wt%以下およびチタン窒化物粒子を0.1wt%以上5wt%以下含む窒化珪素焼結体において、鉄成分の含有量が10ppm以上200ppm以下であり、鉄成分の最大径が20μm以下であり、鉄成分及び導電性付与粒子同士の最も近い粒子間距離が0.5μm以上5μm以下で、任意の断面でこの位置関係を満たす粒子分布が80%以上を占め、3点曲げ強度1000MPa以上、熱伝導率40W/m/K以上、電気抵抗値が102Ω・cm以上107Ω・cm以下であることを特徴とする窒化珪素焼結体。
- 該炭化物粒子が4a族,5a族,6a族,7a族元素、珪素、硼素の炭化物の少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項1記載の窒化珪素焼結体。
- 該炭化物粒子の平均粒径と該チタン窒化物粒子の平均粒径の比が、炭化物粒子の平均粒径≦窒化物粒子の平均粒径であることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の窒化珪素焼結体。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の窒化珪素焼結体を用いたことを特徴とする摺動部材。
- 摺動部材が、電子機器に用いるためのベアリングボールであることを特徴とする請求項4記載の摺動部材。
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