JP2010101382A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑油を不使用の転がり軸受おいて、樹脂皮膜を摩耗し難くし、またさらには転がり軸受の耐久性、すなわち軸受寿命の長いものとする。また、これらの作用効果を奏する優れたタッチダウン軸受とする。
【解決手段】内輪2と外輪1の間に複数のセラミックス製転動体である玉4を回転自在に保持器3で保持した転がり軸受において、保持器3の表面に、二硫化タングステン粉末10〜50体積%を含有し、バインダ樹脂としてフッ素樹脂またはポリアミドイミド樹脂を含有する膜厚40〜100μmの潤滑性樹脂皮膜3aを設けた転がり軸受、好ましくはタッチダウン軸受とする。セラミックス製転動体のセラミックスは、Si6-zAlzOzN8-zの組成式(但し、式中0.1≦z≦3.5)で表されるβサイアロンを主成分とし、ヤング率180〜270GPaの焼結体からなるセラミックスを採用する。
【選択図】図2
【解決手段】内輪2と外輪1の間に複数のセラミックス製転動体である玉4を回転自在に保持器3で保持した転がり軸受において、保持器3の表面に、二硫化タングステン粉末10〜50体積%を含有し、バインダ樹脂としてフッ素樹脂またはポリアミドイミド樹脂を含有する膜厚40〜100μmの潤滑性樹脂皮膜3aを設けた転がり軸受、好ましくはタッチダウン軸受とする。セラミックス製転動体のセラミックスは、Si6-zAlzOzN8-zの組成式(但し、式中0.1≦z≦3.5)で表されるβサイアロンを主成分とし、ヤング率180〜270GPaの焼結体からなるセラミックスを採用する。
【選択図】図2
Description
この発明は、真空環境等で適用できる転がり軸受およびその製造方法に関する。
一般に、潤滑油の供給が困難な真空環境などで使用される転がり軸受として、タッチダウン軸受と称されるものが知られている。
図4を利用して説明すると、タッチダウン軸受は、ターボ分子ポンプなどのように、磁気軸受8、9、10、11によって磁気浮上し、すなわち非接触の状態で回転しているロータ14を、その制御システムの異常時など磁気軸受8、9、10、11の磁気浮上機能が緊急停止した際に、ロータ14に接触して回転自在に保持する補助用の転がり軸受である。
図4を利用して説明すると、タッチダウン軸受は、ターボ分子ポンプなどのように、磁気軸受8、9、10、11によって磁気浮上し、すなわち非接触の状態で回転しているロータ14を、その制御システムの異常時など磁気軸受8、9、10、11の磁気浮上機能が緊急停止した際に、ロータ14に接触して回転自在に保持する補助用の転がり軸受である。
因みに磁気軸受は、例えばターボ分子ポンプの他、遠心圧縮機、電力貯蔵用フライホイールなどに利用されている大型の装置であり、またそれに保持されるロータなどの回転軸は高速に回転しているため、タッチダウン軸受には、急激に大きな負荷を受けながら回転軸を確実に保持できる耐久性が必要である。すなわち、タッチダウン軸受は、潤滑油が存在しない軸受使用環境でも急激な負荷と高速回転に耐え、かつ耐久性のよい特性が求められる。
従来のタッチダウン軸受に適した転がり軸受としては、転がり軸受の保持器の表面に、二硫化タングステン粉末を70〜98体積%含有する樹脂皮膜を形成したものが知られている(特許文献1)。
しかし、上記した従来の転がり軸受では、二硫化タングステン粉末を含む樹脂皮膜が摩耗しやすく、耐久性、すなわち軸受寿命が短いという問題点がある。
また、二硫化タングステン粉末を70〜98体積%含有する樹脂皮膜は、35μm以上の厚膜に均一な膜厚で形成することは困難であり、特に塗装効率の良い噴霧塗装(スプレーコーティング)によって、このような厚膜で均一な皮膜を形成することが容易でないという問題点がある。
ところで、もし二硫化タングステン粉末含有の潤滑性樹脂皮膜の厚さが不均一で膜厚の薄い箇所があると、その部分は初期の回転で二硫化タングステン粉末が消費されてしまい、潤滑不足を起こして耐久性が低下する。逆に不均一であって膜厚の厚い部分がある場合には、円滑な回転は望めず、初期トルクが大きくなって回転不良の生ずる原因にもなる。
二硫化タングステン粉末を含む樹脂皮膜が摩耗しやすい原因しては、転がり軸受に急激な負荷がかけられた際、転動体と樹脂皮膜との接触面が摩擦され、摩耗が進行すると考えられるが、その際に摩耗量を少なく摩擦係数を低くするために、二硫化タングステン粉末の含有量はできるだけ多くしていた。しかし、それでは膜厚が不均一となって前記の耐久性や回転不良の問題が生じた。
二硫化タングステン粉末を含む樹脂皮膜が摩耗しやすい原因しては、転がり軸受に急激な負荷がかけられた際、転動体と樹脂皮膜との接触面が摩擦され、摩耗が進行すると考えられるが、その際に摩耗量を少なく摩擦係数を低くするために、二硫化タングステン粉末の含有量はできるだけ多くしていた。しかし、それでは膜厚が不均一となって前記の耐久性や回転不良の問題が生じた。
また、転がり軸受に急激な負荷が生じる用途では、部品を摩耗量の小さい硬質のものにすればよいとも考えられるが、硬質な部品は脆くて却って損傷を招く場合があるので、充分な解決は望めない。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、潤滑油を不使用の転がり軸受おいて、その保持器の表面の樹脂皮膜を二硫化タングステン粉末を含む均一な膜厚で所定の厚膜に形成することにより、樹脂皮膜を摩耗し難くし、またさらには転がり軸受の耐久性、すなわち軸受寿命の長いものとすることである。また、これらの作用効果を奏する優れたタッチダウン軸受とすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、内輪と外輪の間に複数の転動体を回転自在に保持器で保持した転がり軸受において、前記保持器の表面に、二硫化タングステン粉末10〜50体積%を含有する潤滑性樹脂皮膜を設けた転がり軸受としたのである。
上記したように構成されるこの発明の転がり軸受は、保持器の表面に設けた潤滑性樹脂皮膜における二硫化タングステン粉末量を10〜50体積%としたことにより、皮膜の密着性が良くなり40μm以上の所要の厚膜、例えば40〜100μmに均一な膜厚で形成することができる。所定膜厚で均一性のあることにより、偏った摩耗がなく、耐久性、すなわち軸受寿命の長い転がり軸受にすることができる。
また、潤滑性樹脂皮膜を構成する樹脂バインダ自体に、ある程度の潤滑性を持たせるために、樹脂バインダ成分としてフッ素樹脂またはポリアミドイミド樹脂を含有する潤滑性樹脂皮膜を採用することが、回転トルクの低減とそれによる潤滑性樹脂皮膜の摩耗量を低減するために好ましい。
また、前記した二硫化タングステン粉末としては、平均粒子径1〜50μmの二硫化タングステン粉末を採用することにより、均一な40〜100μm程度の膜厚を形成するために好ましい。
転がり軸受に用いる保持器は、その材質が銅合金、アルミニウム合金またはチタン合金であることにより、軟質金属による潤滑性があり、または切削加工性がよい。そのために保持器の複雑な形状に対応でき、そのような複雑な形状の保持器に対しても、前述のように潤滑性樹脂皮膜は均一な40〜100μm程度の膜厚を形成することができる。
また、転動体が、セラミックス製転動体であると、セラミックスが鋼材などに比べて低比重であるから、遠心力などの慣性力を受け難く、高速回転時に軸受外輪や保持器への玉の面圧が減少して適当な潤滑状態が得られやすく、すなわち比較的少ない二硫化タングステン量で適正な潤滑が可能になり、樹脂皮膜の摩耗速度も減じられ、転がり軸受の耐久性も向上する。その耐久性は、二硫化タングステン粉末量を10〜50体積%と少なくして所定膜厚で均一性のある樹脂皮膜を形成したことにより、更に向上する。
転がり軸受におけるそのような機能を充分に発揮できるようにするために、セラミックス製転動体のセラミックスが、Si6-zAlzOzN8-zの組成式(但し、式中0.1≦z≦3.5)で表されるβサイアロンを主成分とし、ヤング率180〜270GPaの焼結体からなるセラミックスであることが好ましい。
上述のβサイアロンは、燃焼合成を含む製造工程を採用することにより、上記zの値(以下、z値という)が0.1以上となる種々の組成を有するものが製造可能である。そして、一般に転動疲労寿命に大きな影響を与える硬度は、製造の容易なz値4.0以下の範囲において、ほとんど変化しない。しかしながら、βサイアロンを主成分とする焼結体からなる転動体の転動疲労寿命とz値との関係を詳細に調査したところ、z値が3.5を超えると転動体の転動疲労寿命が大幅に低下することが分かった。
より具体的には、z値が0.1以上3.5以下の範囲においては、転動疲労寿命はほぼ同等で、転がり軸受の運転時間が所定時間を超えると、転動体の表面に剥離が発生して破損する。これに対し、z値が3.5を超えると転動体が摩耗しやすくなり、これに起因して転動疲労寿命が大幅に低下する。つまり、z値が3.5となる組成を境界として、βサイアロンからなる転動体の破損モードが変化し、z値が3.5を超えると転動疲労寿命が大幅に低下するという現象が明らかとなった。したがって、βサイアロンからなる転動体において、安定して十分な寿命を確保するためには、z値を3.5以下とする必要がある。
一方、上述のように、βサイアロンは、燃焼合成を含む製造工程により製造することにより、安価に製造することができる。しかし、z値が0.1未満では、燃焼合成の実施が困難となることが分かった。そのため、βサイアロンを主成分とする焼結体からなる転動体を安価に製造するためには、z値を0.1以上とする必要がある。
また、転動体のヤング率が高くなると、転動体を構成する素材の強度が上昇する傾向にある。しかし、その反面、転動体のヤング率が高くなると、転動体が弾性変形しにくくなるため、転動体の接触面積が小さくなり、接触面圧が高くなる。その結果、負荷される荷重が急激に上昇した場合、転動体に損傷が発生しやすくなる。一方、転動体のヤング率が低くなると、転動体が弾性変形しやすくなるため、転動体の接触面積が大きくなり、接触面圧が低くなる。しかし、その反面、転動体のヤング率が低くなると、これに伴って転動体を構成する素材の強度が低下する傾向にある。そのため、転動体のヤング率は、転動体を構成する素材の強度と転動体の接触面圧の低減とのバランスを確保可能な範囲とすることが必要である。
より具体的には、βサイアロン焼結体からなる転動体のヤング率が180GPa未満の場合、転動体を構成する素材の強度低下の影響が接触面圧の低減の効果を上回り、転動体の転動疲労寿命が低下する。また、転動体の接触面積が増大することに伴い、転動体に作用する摩擦力が増加し、軸受トルクが上昇するという問題も発生する。
したがって、βサイアロン焼結体からなる転動体のヤング率は、180GPa以上であることが必要である。一方、βサイアロン焼結体からなる転動体のヤング率が270GPaを超えると、接触面圧の増加の影響が転動体を構成する素材の強度上昇の効果を上回り、負荷される荷重が増加した場合、転動体において、他の転動体と接触する面である転走面に変形などの損傷が発生しやすくなる。その結果、βサイアロン焼結体からなる転動体の転動疲労寿命が低下する。したがって、負荷される荷重が急激に変化するような用途に用いられる場合、βサイアロン焼結体からなる転動体のヤング率は、270GPa以下であることが必要である。
上記した焼結体からなるセラミックス製転動体が、転走面を含む表層部に内部より空孔率の低い緻密層が形成されたセラミックス製転動体であることが好ましい。
転走面を含む領域に内部よりも緻密性の高い層である緻密層が形成されていることにより、転動疲労寿命が向上する。その結果、十分な耐久性を安定して確保することが可能なβサイアロン焼結体からなる転動体を提供することができる。
ここで、緻密性の高い層とは、焼結体において空孔率の低い(密度の高い)層であって、その存在を、例えば以下のように調べることができる。
まず、転動体の表面に垂直な断面において転動体を切断し、当該断面を鏡面ラッピングする。その後、鏡面ラッピングされた断面を光学顕微鏡の斜光(暗視野)にて、たとえば50〜100倍程度で撮影し、300DPI(Dot Per Inch)以上の画像として記録する。このとき、白色の領域として観察される白色領域は、空孔率の高い(密度の低い)領域に対応する。
したがって、白色領域の面積率が低い領域は、当該面積率が高い領域に比べて緻密性が高い。そして、画像処理装置を用いて記録された画像を輝度閾値により2値化処理した上で白色領域の面積率を測定し、当該面積率により、撮影された領域の緻密性を知ることができる。
つまり、上記転動体において好ましくは、転走面を含む領域に内部よりも白色領域の面積率の低い層である緻密層が形成されている。なお、上記撮影は、ランダムに5箇所以上で行ない、上記面積率は、その平均値で評価することが好ましい。また、転動体の内部における上記白色領域の面積率は、たとえば15%以上である。また、転動体の転動疲労寿命を一層向上させるためには、上記緻密層は100μm以上の厚みを有していることが好ましい。
上記転動体において好ましくは、緻密層の断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率は7%以下である。
白色領域の面積率が7%以下となる程度に上記緻密層の緻密性を向上させることで、転動体の転動疲労寿命がより向上する。したがって、上記構成により、本発明の転動体の転動疲労寿命を一層向上させることができる。
上記転動体において好ましくは、緻密層の表面を含む領域には、当該緻密層内の他の領域よりもさらに緻密性の高い層である高緻密層が形成されている。緻密性のさらに高い高緻密層が緻密層の表面を含む領域に形成されることにより、転動体の転動疲労に対する耐久性がより向上し、転動疲労寿命が一層向上する。
上記転動体において好ましくは、高緻密層の断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率は3.5%以下である。白色領域の面積率が3.5%以下となる程度に上記高緻密層の緻密性を向上させることで、転動体の転動疲労寿命がより向上する。したがって、上記構成により、本発明の転動体の転動疲労寿命を一層向上させることができる。
また、セラミックス製転動体のセラミックスが、20質量%以下の焼結助剤を含む焼結体からなるセラミックスであることが好ましい。焼結助剤の採用により、耐久性を安定して確保できるセラミックス製転動体になる。
そのような焼結助剤としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタンおよび希土類酸化物、希土類窒化物、希土類酸窒化物から選ばれる1種以上の焼結助剤を採用することができる。
以上述べた構成部品からなる転がり軸受は、真空中で使用される転がり軸受であるものとして適用できる。例えば、転がり軸受が、ターボ分子ポンプの磁気軸受に併設される補助軸受用のタッチダウン軸受として適用できる。
このような転がり軸受は、その保持器に、樹脂バインダ、溶剤および二硫化タングステン粉末を含有し、かつ二硫化タングステン粉末の配合割合が10〜50体積%である塗液を噴霧法により塗布し、保持器表面に形成された塗膜を乾燥して膜厚40μm以上の潤滑性樹脂皮膜を形成し、得られた保持器を内輪と外輪の間に複数の転動体を回転自在に保持するように組み付けて製造することができる。
この発明の転がり軸受は、保持器の表面に、二硫化タングステン粉末10〜50体積%を含有する潤滑性樹脂皮膜を設けたので、二硫化タングステン粉末を含む40〜100μmという所定の耐久性ある厚膜に形成することができ、この膜厚の均一性によって樹脂皮膜の摩耗速度を減少させ摩耗し難くするという利点がある。
また、転動体が、セラミックス製転動体であり、特にサイアロンを主成分とし、ヤング率180〜270GPaの焼結体からなるセラミックスからなる転動体を採用することにより、セラミックス製転動体の硬質による損傷もなく、セラミックスの低比重性により、遠心力などの慣性力を受け難く、高速回転時に軸受外輪への玉の面圧が減少して軸受機能を向上させ、耐久性、すなわち軸受寿命の長い転がり軸受とする利点がある。
このような転がり軸受は、ターボ分子ポンプの磁気軸受に併設される補助軸受用のタッチダウン軸受として適用できる。
この発明の実施形態について、以下に添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態の深溝玉軸受は、軌道部材としての環状の外輪1と、その内側に配置された軌道部材としての環状の内輪2と、外輪1と内輪2との間に配置され、円環状の保持器3に保持された転動体としての複数の玉4とを備えている。外輪1の内周面には外輪転走面1aが形成されており、内輪2の外周面には内輪転走面2aが形成されている。そして、内輪転走面2aと外輪転走面1aとが互いに対向するように、外輪1と内輪2とは配置されている。さらに、複数の玉4は、内輪転走面2aおよび外輪転走面1aに接触し、かつ保持器3により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。
図1に示すように、実施形態の深溝玉軸受は、軌道部材としての環状の外輪1と、その内側に配置された軌道部材としての環状の内輪2と、外輪1と内輪2との間に配置され、円環状の保持器3に保持された転動体としての複数の玉4とを備えている。外輪1の内周面には外輪転走面1aが形成されており、内輪2の外周面には内輪転走面2aが形成されている。そして、内輪転走面2aと外輪転走面1aとが互いに対向するように、外輪1と内輪2とは配置されている。さらに、複数の玉4は、内輪転走面2aおよび外輪転走面1aに接触し、かつ保持器3により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。
前記した保持器3の素材は、ステンレス鋼などの鋼材や、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などの耐熱性樹脂材料を採用することもできるが、銅合金、アルミニウム合金またはチタン合金などを採用すると、切削性がよく、加工効率のよいものになる。保持器3の表面には、二硫化タングステン粉末を含有する潤滑性樹脂皮膜3aが設けられている。
すなわち、保持器3の表面には、好ましくは平均粒子径1〜50μmの二硫化タングステン粉末10〜50体積%を含有し、残部にバインダ(結合剤)および溶剤または分散剤となる樹脂を配合した組成物を調製し、これを被覆するように塗装して潤滑性樹脂皮膜を形成している。バインダとしては、耐熱性および結着性を有する熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が好ましく、例えばエチレン−テトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等などを採用することができる。
保持器表面に皮膜を形成するには、前記組成物を浸漬、塗布など周知の塗装方法で塗布し、必要に応じて常温以上に加熱して乾燥し、皮膜を硬化させればよいが、好ましくは噴霧(スプレー)法を採用すれば、効率の良い作業で膜厚40μm以上に均一な膜厚で潤滑性皮膜を形成することができる。
ここで、ポリアミドイミド樹脂に対する二硫化タングステンの含有量と、噴霧法により形成可能な潤滑性樹脂皮膜の厚さを調べた結果を図3の図表に示した。図中丸付き数字1〜3は、試行回数3の試行番号を示している。
これにより、二硫化タングステン粉末の配合割合が10〜50体積%である塗液を噴霧法により塗布すれば、保持器表面に形成された塗膜を乾燥して膜厚40μm以上の潤滑性樹脂皮膜を確実に形成できることがわかる。
これにより、二硫化タングステン粉末の配合割合が10〜50体積%である塗液を噴霧法により塗布すれば、保持器表面に形成された塗膜を乾燥して膜厚40μm以上の潤滑性樹脂皮膜を確実に形成できることがわかる。
前述したように、転動体として例示の玉4は、軽量化のためにセラミックスで形成されたものが好ましい。より好ましい転動体の素材は、Si6−ZAlZOZN8−Zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンと呼ばれるセラミックス成分を主成分とし、残部不純物からなる焼結体から構成され、ヤング率が180GPa以上270GPa以下の素材からなるものである。
図2に示すように、玉4には、内部4cよりも緻密性の高い層である緻密層4bが形成されている。緻密層4bの断面を光学顕微鏡の斜光にて観察すると、白色の領域として観察される白色領域の面積率は7%以下である。
実施形態の深溝玉軸受は、耐久性を安定して確保することが可能であると共に、タッチダウン軸受のような負荷される荷重が急激に変化する用途に使用可能なβサイアロン焼結体からなる転動体(玉4)を備えた転がり軸受である。
玉4は、βサイアロンを主成分とし、残部焼結助剤および不純物からなる焼結体から構成することもできる。焼結助剤を含むことで、焼結体の気孔率を低下させやすくなり、十分な耐久性を安定して確保することが可能なβサイアロン焼結体からなる転動体を備えた転がり軸受を、容易に提供することができる。上記不純物は、原料に由来するか、または製造工程で混入するものを含む不可避的不純物が含まれる。
図2に示すように、緻密層4bの表面には、さらに緻密性の高い層である高緻密層4aが形成される。この高緻密層4aの断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率は3.5%以下となっている。これにより、玉4の転動疲労に対する耐久性がより向上し、転動疲労寿命が一層向上している。
実施形態における転動体の製造方法においては、まず、βサイアロンの粉末を準備するβサイアロン粉末準備工程が実施される。βサイアロン粉末準備工程においては、たとえば燃焼合成法を採用した製造工程により、安価にβサイアロンの粉末を製造することができる。
次に、βサイアロン粉末準備工程において準備されたβサイアロンの粉末に、焼結助剤を添加して混合する混合工程が実施される。この混合工程は、焼結助剤を添加しない場合には省略することができる。
上記βサイアロンの粉末またはβサイアロンの粉末と焼結助剤との混合物を、転動体の概略形状に成形する工程について説明する。具体的には、上記βサイアロンの粉末またはβサイアロンの粉末と焼結助剤との混合物に、プレス成形、鋳込み成形、押し出し成形、転動造粒などの成形手法を適用することにより、玉4に成形された成形体が作製される。
次に、上記成形体の表面が加工されることにより、当該成形体が焼結後に所望の転動体の形状により近い形状になるよう成形される焼結前加工工程が実施される。すなわち、グリーン体加工などの加工手法を適用することにより、上記成形体が焼結後に玉4の形状により近い形状になるように加工される。この焼結前加工工程は、成形工程において上記成形体が成形された段階で、焼結後に所望の転動体の形状に近い形状が得られる状態である場合には省略することができる。
成形体の焼結工程では、成形体が、たとえば1MPa以下の圧力下でヒータ加熱、マイクロ波やミリ波による電磁波加熱などの加熱方法により加熱されて焼結されることにより、玉4の概略形状を有する焼結体が作製される。
焼結は、不活性ガス雰囲気中または窒素と酸素との混合ガス雰囲気中において、1550℃以上1800℃以下の温度域に上記成形体が加熱されることにより実施される。不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素などが採用可能であるが、製造コスト低減の観点から、窒素が採用されることが好ましい。
次に、焼結工程において作製された焼結体の表面が加工され、当該表面を含む領域が除
去される仕上げ加工が実施されることにより、転動体を完成させる仕上げ工程が実施される。具体的には、焼結工程において作製された焼結体の表面を研磨することにより、転動体としての玉4を完成させる。
去される仕上げ加工が実施されることにより、転動体を完成させる仕上げ工程が実施される。具体的には、焼結工程において作製された焼結体の表面を研磨することにより、転動体としての玉4を完成させる。
ここで、上記焼結工程における焼結により、焼結体の表面から厚み500μm程度の領域には、内部よりも緻密性が高く、断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率が7%以下である緻密層が形成される。さらに、焼結体の表面から厚み150μm程度の領域には、緻密層内の他の領域よりもさらに緻密性が高く、断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率が3.5%以下である高緻密層が形成されている。したがって、仕上げ工程においては、除去される焼結体の厚みは、150μm以下とすることが好ましい。
なお、上記焼結工程は、βサイアロンの分解を抑制するため、0.01MPa以上の圧力下で行なうことが好ましく、低コスト化を考慮すると大気圧以上の圧力下で行なうことがより好ましい。また、製造コストを抑制しつつ緻密層を形成するためには、焼結工程は1MPa以下の圧力下で行なうことが好ましい。また、製造される転動体のヤング率を180GPa以上270GPa以下の所望の値に調整するためには、たとえばβサイアロン粉末準備工程において準備されるβサイアロン粉末のz値を0.1≦z≦3.5の範囲で調節すればよい。より具体的には、z値を増加させることにより、製造される転動体のヤング率を低下させることができる。
次にターボ分子ポンプに用いられるタッチダウン転がり軸受の実施形態について説明する。図4に示すように、タッチダウン転がり軸受5、6は、高真空(>1×10−1Pa)を形成するためのターボ分子ポンプの軸受として、磁気軸受8、9、10、11と共に使用される。ターボ分子ポンプ7は、高真空を形成する系に吸気口12を接続し、モータ13により駆動されるロータ14の回転で、系内の気体を吸気口12から排気口15へ排出することによって系内を高真空に保つものである。
通常時は磁気軸受8、9、10、11の磁力によってロータ14とステータ16とが接触しない状態で運転されるが、停電時等で通電が遮断された場合、磁気軸受8、9、10、11の負荷能力が瞬時に失われ、ロータ14とステータ16が接触し、ターボ分子ポンプ7が損傷する危険がある。タッチダウン転がり軸受5、6は、このようなロータ14とステータ16との所定のクリアランスが減少した異常時に、最高回転状態から、ロータ14とステータ16とに接触・支持することによってロータ14とステータ16との接触を防止するものである。
タッチダウン転がり軸受5、6は、その保持器表面の少なくとも一箇所以上の面に、二硫化タングステン粉末10〜50体積%が配合された樹脂を被膜化しているので、高真空下、高速回転に対応することができる。
以下に、βサイアロン焼結体からなる転動体を有する転がり軸受を作製し、種々のz値を有するz値と転動疲労寿命(耐久性)との関係を調べる測定試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
[軸受寿命測定試験(z値と転動疲労との関係)]
まず、試験の対象となる試験軸受の作製方法について説明する。先ず、燃焼合成法でz値を0.1〜4の範囲で作製したβサイアロンの粉末を準備し、前述の実施形態において説明した製造工程と同様にして、z値が0.1〜4である転動体を作製した。より具体的な作製方法は以下のとおりである。
[軸受寿命測定試験(z値と転動疲労との関係)]
まず、試験の対象となる試験軸受の作製方法について説明する。先ず、燃焼合成法でz値を0.1〜4の範囲で作製したβサイアロンの粉末を準備し、前述の実施形態において説明した製造工程と同様にして、z値が0.1〜4である転動体を作製した。より具体的な作製方法は以下のとおりである。
まず、サブミクロンに微細化されたβサイアロン粉末と、焼結助剤としての酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP30)および酸化イットリウム(H.C.Starck社製、Yttriumoxide grade C)とをボールミルを用いて湿式混合により混合した。その後、スプレードライヤにて造粒を実施し、造粒粉を製造した。当該造粒粉を金型で球体に成形し、さらに冷間静水圧成形(CIP)で加圧を行ない、球状の成形体を得た。
引き続き当該成形体に対して1次焼結として常圧焼結を行なった後、圧力200MPaの窒素雰囲気中でHIP(Hot Isostatic Press;熱間静水圧焼結)処理することで、焼結球体を製造した。次に、当該焼結球体にラッピング加工を行ない、3/8インチセラミック球(JIS等級 G5)とした。そして、別途準備した軸受鋼(JIS規格SUJ2)製の軌道輪と組み合わせて、JIS規格6206型番の軸受を作製した(実験例A〜Hおよび比較例B〜C)。
また、比較のため、窒化珪素からなる転動体、すなわちz値が0である転動体も上記βサイアロンからなる転動体と同様の方法で作製し、同様に軸受に組立てた(比較例A)。
上述のように作製されたJIS規格6206型番の軸受に対し、最大接触面圧Pmax:3.2GPa、軸受回転数:2000rpm、潤滑:タービン油VG68(清浄油)の循環給油、試験温度:室温、の条件の下で運転する疲労試験を行なった。そして、振動検出装置により運転中の軸受の振動を監視し、転動体に破損が発生して軸受の振動が所定値を超えた時点で試験を中止するとともに、運転開始から中止までの時間を当該軸受の寿命として記録した。また、試験中止後、軸受を分解して転動体の破損状態を確認した。
表1に試験結果を示す。表1においては、各実験例および比較例における寿命が、比較例A(窒化珪素)における寿命を1とした寿命比で表されている。また、破損形態は、転動体の表面に剥離が発生した場合「剥離」、剥離が発生することなく表面が摩耗して試験が中止された場合「摩耗」と記載されている。
表1を参照して、z値が0.1以上3.5以下となっている実験例A〜Hでは、窒化珪素(比較例A)と比較して遜色ない寿命を有している。また、破損形態も窒化珪素の場合と同様に「剥離」となっている。これに対し、z値が3.5を超え、比較例Bでは、寿命が大幅に低下するとともに、転動体に摩耗が観察される。すなわち、z値が3.8である比較例Bでは、最終的には転動体に剥離が発生しているものの、転動体における摩耗が影響し、寿命が大幅に低下したものと考えられる。さらに、z値が4である比較例Cにおいては、極めて短時間に転動体の摩耗が進行し、転がり軸受の耐久性が著しく低下している。
以上のように、z値が0.1以上3.5以下の範囲においては、サイアロン焼結体からなる転動体を備えた転がり軸受の耐久性は、窒化珪素の焼結体からなる転動体を備えた転がり軸受とほぼ同等である。これに対し、z値が3.5を超えると転動体が摩耗しやすくなり、これに起因して転動疲労寿命が大幅に低下する。さらに、z値が大きくなると、βサイアロンからなる転動体の破損原因が「剥離」から「摩耗」に変化し、転動疲労寿命が著しく低下することが明らかとなった。このように、z値を0.1以上3.5以下とすることにより、安価でありながら、十分な耐久性を安定して確保することが可能なβサイアロン焼結体からなる転動体を備えた転がり軸受が提供可能であることが確認された。
なお、表1を参照して、z値が3を超える3.5の実験例Hにおいては、転動体には僅かな摩耗が発生しており、寿命も実験例A〜Gに比べて低下している。このことから、十分な耐久性をより安定して確保するためには、z値は3以下とすることが望ましいといえる。
また、上記実験結果より、窒化珪素からなる転動体と同等以上の耐久性(寿命)を得るには、z値は2以下とすることが好ましく、1.5以下とすることが、より好ましい。一方、燃焼合成を採用した製造工程による、βサイアロン粉体の作製の容易性を考慮すると、十分に自己発熱による反応が期待できるz値である0.5以上とすることが好ましい。
[緻密層および高緻密層の形成状態の調査]
転動体の断面における緻密層および高緻密層の形成状態を調査する試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
先ず、燃焼合成法で作製した組成がSi5AlON7であるβサイアロンの粉末(株式会社イスマンジェイ製、商品名メラミックス)を準備し、前述の実施形態において説明した転動体の製造方法と同様の方法で、一辺が約10mmの立方体試験片を作製した。
具体的な製造方法は次のとおりである。まず、サブミクロンに微細化されたβサイアロン粉末と、焼結助剤としての酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP30)および酸化イットリウム(H.C.Starck社製、Yttriumoxide grade C)とをボールミルを用いて湿式混合により混合した。その後、スプレードライヤにて造粒を実施し、造粒粉を製造した。当該造粒粉を金型で所定の形状に成形し、さらに冷間静水圧成形(CIP)で加圧を行ない、成形体を得た。引き続き当該成形体を圧力0.4MPaの窒素雰囲気中で1650℃に加熱して焼結することで、上記立方体試験片を製造した。
転動体の断面における緻密層および高緻密層の形成状態を調査する試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
先ず、燃焼合成法で作製した組成がSi5AlON7であるβサイアロンの粉末(株式会社イスマンジェイ製、商品名メラミックス)を準備し、前述の実施形態において説明した転動体の製造方法と同様の方法で、一辺が約10mmの立方体試験片を作製した。
具体的な製造方法は次のとおりである。まず、サブミクロンに微細化されたβサイアロン粉末と、焼結助剤としての酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP30)および酸化イットリウム(H.C.Starck社製、Yttriumoxide grade C)とをボールミルを用いて湿式混合により混合した。その後、スプレードライヤにて造粒を実施し、造粒粉を製造した。当該造粒粉を金型で所定の形状に成形し、さらに冷間静水圧成形(CIP)で加圧を行ない、成形体を得た。引き続き当該成形体を圧力0.4MPaの窒素雰囲気中で1650℃に加熱して焼結することで、上記立方体試験片を製造した。
その後、当該試験片を切断し、切断された面をダイヤモンドラップ盤でラッピングした後、酸化クロムラップ盤による鏡面ラッピングを実施することにより、立方体の中心を含む観察用の断面を形成した。そして、当該断面を光学顕微鏡(株式会社ニコン製、マイクロフォト−FXA)の斜光で観察し、倍率50倍のインスタント写真(フジフイルム株式会社製 FP−100B)を撮影した。その後、得られた写真の画像を、スキャナーを用いて(解像度300DPI)パーソナルコンピューターに取り込んだ。そして、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製 WinROOF)を用いて輝度閾値による2値化処理を行なって(実験例での2値化分離閾値:140)、白色領域の面積率を測定した。
次に、試験結果について説明する。図5は、試験片の上記観察用の断面を光学顕微鏡の斜光で撮影した写真である。また、図6は、図5の写真の画像を、画像処理ソフトを用いて輝度閾値により2値化処理した状態を示す一例である。また、図7は、図5の写真の画像を、画像処理ソフトを用いて輝度閾値により2値化処理して白色領域の面積率を測定する際に、画像処理を行なう領域(評価領域)を示す図である。図5において、写真上側が試験片の表面側であり、上端が表面である。
図5および図6を参照して、この発明に用いる転動体と同様の製造方法により作製された試験片は、表面を含む領域に内部よりも白色領域の少ない層が形成されていることがわかる。そして、図7に示すように、撮影された写真の画像を試験片の最表面からの距離に応じて3つの領域(最表面からの距離が150μm以内の領域、150μmを超え500μm以内の領域、500μmを超え800μm以内の領域)に分け、領域毎に画像解析を行なって白色領域の面積率を算出したところ、表2に示す結果が得られた。表2においては、図7に示した各領域を1視野として、無作為に撮影された5枚の写真から得られる5視野における白色領域の面積率の、平均値と最大値とが示されている。
表2の結果からも明らかなように、実験例における白色領域の面積率は、内部において18.5%であったのに対し、表面からの深さが500μm以下である領域においては3.7%、表面からの深さが150μm以下の領域においては1.2%となっていた。このことから、実験例の転動体と同様の製造方法により作製された試験片は、表面を含む領域に内部よりも白色領域の少ない緻密層および高緻密層が形成されていることが確認された。
[転動体の転動疲労寿命(緻密層、高緻密層と転動疲労との関係)]
この発明に用いる転動体の転動疲労寿命を確認する試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
まず、試験の対象となる試験軸受の作製方法について説明する。はじめに、燃焼合成法
で作製した組成がSi5AlON7であるβサイアロンの粉末(株式会社イスマンジェイ
製、商品名メラミックス)を準備し、実施形態において説明した転動体の製造方法と同様の方法で直径9.525mmの3/8インチセラミック球を作製した。具体的な製造方法は次のとおりである。まず、サブミクロンに微細化されたβサイアロン粉末と、焼結助剤としての酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP30)および酸化イットリウム(H.C.Starck社製、Yttriumoxide grade C)とをボールミルを用いて湿式混合により混合した。その後、スプレードライヤにて造粒を実施し、造粒粉を製造した。当該造粒粉を金型で球体に成形し、さらに冷間静水圧成形(CIP)で加圧を行ない球状の成形体を得た。
この発明に用いる転動体の転動疲労寿命を確認する試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
まず、試験の対象となる試験軸受の作製方法について説明する。はじめに、燃焼合成法
で作製した組成がSi5AlON7であるβサイアロンの粉末(株式会社イスマンジェイ
製、商品名メラミックス)を準備し、実施形態において説明した転動体の製造方法と同様の方法で直径9.525mmの3/8インチセラミック球を作製した。具体的な製造方法は次のとおりである。まず、サブミクロンに微細化されたβサイアロン粉末と、焼結助剤としての酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP30)および酸化イットリウム(H.C.Starck社製、Yttriumoxide grade C)とをボールミルを用いて湿式混合により混合した。その後、スプレードライヤにて造粒を実施し、造粒粉を製造した。当該造粒粉を金型で球体に成形し、さらに冷間静水圧成形(CIP)で加圧を行ない球状の成形体を得た。
次に、当該成形体に対して焼結後の加工代が所定の寸法となるようにグリーン体加工を行ない、引き続き当該成形体を圧力0.4MPaの窒素雰囲気中で1650℃に加熱して焼結することで、焼結球体を製造した。次に、当該焼結球体にラッピング加工を行ない、3/8インチセラミック球(転動体;JIS等級 G5)とした。そして、別途準備した軸受鋼(JIS規格SUJ2)製の軌道輪と組み合わせて、JIS規格6206型番の軸受を作製した。ここで、上記焼結球体に対するラッピング加工により除去される焼結球体の厚み(加工代)を8段階に変化させ、8種類の軸受を作製した(実験例a〜h)。一方、比較のため、窒化珪素および焼結助剤からなる原料粉末を用いて加圧焼結法により焼結した焼結球体(日本特殊陶業株式会社製 EC141)に対して、上述と同様にラッピング加工を行ない、別途準備した軸受鋼(JIS規格SUJ2)製の軌道輪と組み合わせて、JIS規格6206型番の軸受を作製した(比較例a)。ラッピング加工による加工代は0.25mmとした。
次に、試験条件について説明する。上述のように作製されたJIS規格6206型番の軸受に対し、最大接触面圧Pmax:3.2GPa、軸受回転数:2000rpm、潤滑:タービン油VG68(清浄油)の循環給油、試験温度:室温、の条件の下で運転する疲労試験を行なった。そして、振動検出装置により運転中の軸受の振動を監視し、転動体に破損が発生して軸受の振動が所定値を超えた時点で試験を中止するとともに、運転開始から中止までの時間を当該軸受の寿命として記録した。なお、試験数は実験例、比較例ともに15個ずつとし、そのL10寿命を算出した上で、比較例aに対する寿命比で耐久性を評価した。
表3に実験例の試験結果を示す。表3を参照して、実験例の軸受の寿命は、その製造コスト等を考慮するといずれも良好であるといえる。そして、加工代を0.5mm以下とすることにより転動体の表面に緻密層を残存させた実験例d〜gの軸受の寿命は、比較例aの寿命の1.5〜2倍程度となっていた。さらに、加工代を0.15mm以下とすることにより転動体の表面に高緻密層を残存させた実験例a〜cの軸受の寿命は、比較例aの寿命の3倍程度となっていた。このことから、本発明の転動体を備えた転がり軸受は、耐久性において優れていることが確認された。そして、本発明の転動体を備えた転がり軸受は、転動体の加工代を0.5mm以下として、表面に緻密層を残存させることにより寿命が向上し、転動体の加工代を0.15mm以下として、表面に高緻密層を残存させることにより寿命がさらに向上することが分かった。
1 外輪
1a 外輪転走面
2 内輪
2a 内輪転走面
3 保持器
3a 潤滑性樹脂皮膜
4 玉
4a 高緻密層
4b 緻密層
4c 内部
5、6 タッチダウン軸受
7 ターボ分子ポンプ
8、9、10、11 磁気軸受
12 吸気口
13 モータ
14 ロータ
15 排気口
16 ステータ
1a 外輪転走面
2 内輪
2a 内輪転走面
3 保持器
3a 潤滑性樹脂皮膜
4 玉
4a 高緻密層
4b 緻密層
4c 内部
5、6 タッチダウン軸受
7 ターボ分子ポンプ
8、9、10、11 磁気軸受
12 吸気口
13 モータ
14 ロータ
15 排気口
16 ステータ
Claims (16)
- 内輪と外輪の間に複数の転動体を回転自在に保持器で保持した転がり軸受において、
前記保持器の表面に、二硫化タングステン粉末10〜50体積%を含有する潤滑性樹脂皮膜を設けたことを特徴とする転がり軸受。 - 潤滑性樹脂皮膜が、膜厚40〜100μmの樹脂皮膜である請求項1に記載の転がり軸受。
- 潤滑性樹脂皮膜が、バインダ樹脂としてフッ素樹脂またはポリアミドイミド樹脂を含有する潤滑性樹脂皮膜である請求項1または2に記載の転がり軸受。
- 二硫化タングステン粉末が、平均粒子径1〜50μmの二硫化タングステン粉末である請求項1〜3のいずれかに記載の転がり軸受。
- 保持器が、銅合金、アルミニウム合金またはチタン合金で形成された保持器である請求項1〜4のいずれかに記載の転がり軸受。
- 転動体が、セラミックス製転動体である請求項1〜5のいずれかに記載の転がり軸受。
- セラミックス製転動体のセラミックスが、Si6-zAlzOzN8-zの組成式(但し、式中0.1≦z≦3.5)で表されるβサイアロンを主成分とし、ヤング率180〜270GPaの焼結体からなるセラミックスである請求項6に記載の転がり軸受。
- 焼結体からなるセラミックス製転動体が、転走面を含む表層部に内部より空孔率の低い緻密層が形成されたセラミックス製転動体である請求項7に記載の転がり軸受。
- 緻密層が、光学顕微鏡の斜光で観察される白色領域を7%以下の面積率で有する緻密層である請求項8に記載の転がり軸受。
- 緻密層が、その表面に同層内部に比べて空孔率の低い高緻密層が形成された緻密層である請求項9に記載の転がり軸受。
- 高緻密層が、光学顕微鏡の斜光で観察される白色領域を3.5%以下の面積率で有する高緻密層である請求項10に記載の転がり軸受。
- セラミックス製転動体のセラミックスが、20質量%以下の焼結助剤を含む焼結体からなるセラミックスである請求項6〜11のいずれかに記載の転がり軸受。
- 焼結助剤が、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタンおよび希土類酸化物、希土類窒化物、希土類酸窒化物から選ばれる1種以上の焼結助剤である請求項12に記載の転がり軸受。
- 転がり軸受が、真空中で使用される転がり軸受である請求項1〜13のいずれかに記載の転がり軸受。
- 転がり軸受が、ターボ分子ポンプの磁気軸受に併設される補助軸受用のタッチダウン軸受である請求項14に記載の転がり軸受。
- 転がり軸受の保持器に、樹脂バインダ、溶剤および二硫化タングステン粉末を含有し、かつ二硫化タングステン粉末の配合割合が10〜50体積%である塗液を噴霧法により塗布し、保持器表面に形成された塗膜を乾燥して膜厚40μm以上の潤滑性樹脂皮膜を形成し、得られた保持器を内輪と外輪の間に複数の転動体を回転自在に保持するように組み付ける転がり軸受の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008272211A JP2010101382A (ja) | 2008-10-22 | 2008-10-22 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008272211A JP2010101382A (ja) | 2008-10-22 | 2008-10-22 | 転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010101382A true JP2010101382A (ja) | 2010-05-06 |
Family
ID=42292205
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JP2008272211A Pending JP2010101382A (ja) | 2008-10-22 | 2008-10-22 | 転がり軸受 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2010101382A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2640990B1 (de) | 2010-11-20 | 2016-06-29 | Schaeffler Technologies AG & Co. KG | Lagervorrichtung mit einem fanglager |
CN113266647A (zh) * | 2021-06-22 | 2021-08-17 | 河南科技大学 | 一种高速电机用绝缘轴承及其制备方法 |
CN113550980A (zh) * | 2021-06-22 | 2021-10-26 | 河南科技大学 | 喷涂于滚动轴承表面的高性能复合绝缘涂层及其制备方法 |
-
2008
- 2008-10-22 JP JP2008272211A patent/JP2010101382A/ja active Pending
Cited By (3)
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