JP2010209966A - 転がり支持装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電食を防止できる転がり支持装置として、低粘度の潤滑剤で潤滑する用途で問題なく使用でき、音響特性にも優れ、転がり疲労寿命が長いものを提供する。
【解決手段】転がり軸受の玉3として、次の方法で製造したものを使用する。原料粉末として、イットリア(Y2 3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分:アルミナ(Al2 3 )成分=80:20(質量比)で、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%である微粉末(粒径1μm以下)を用意し、冷間静水圧加圧成形法で玉の形に成形した後、大気炉に入れて酸素気流中で脱脂してから、熱間静水圧加圧焼結法で焼結し、鏡面研磨する。
【選択図】図1

Description

この発明は、転がり軸受、リニアガイド、ボールねじ等の転がり支持装置(互いに対向配置される軌道面を備えた第1部材および第2部材と、両部材の軌道面間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を少なくとも備え、転動体が転動することにより第1部材および第2部材の一方が他方に対して相対移動する装置)に関する。
インバータ制御モータや高速スイッチング等の、高周波電流が発生する装置の近くで使用されるモータには、軸電圧が発生して、ロータ軸とハウジングとの間に電位差が生じる場合がある。これに伴って、ハウジングやロータ軸からの漏れ電流が、転がり軸受の転動体と軌道輪との間に流れ、軌道輪の軌道面および転動体の転動面に電食(電気化学的腐食)が生じる恐れがある。この電食が生じると、軌道輪の軌道面および転動体の転動面の精度が低下し、振動が上昇して、軸受の寿命が短くなる。
この電食を防止するために様々な提案がなされており、軌道輪の軌道面に合成樹脂、熱可塑性エラストマ、合成ゴム、またはセラミックスからなる絶縁層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、セラミックス製の転動体を用いることで電食を防止できるが、窒化珪素(Si3 4 )製転動体を用いた転がり軸受には、音響特性およびトルク性能の点で改善の余地がある。すなわち、転がり軸受のトルクを低くするために低粘度の潤滑剤を用いると、転動体表面に形成される油膜の厚さが薄くなって油膜切れが生じ易くなる。また、窒化珪素製転動体の表面は、元々、油の濡れ性が悪いため油膜切れが生じ易い。
そのため、低粘度の潤滑剤を用いると、窒化珪素よりも硬度の低い金属(例えば、軸受鋼)製の軌道面に損傷が生じ易くなる。よって、潤滑剤の供給を定期的に行うなどのメンテナンスが行き届かない場合、窒化珪素製転動体を用いた転がり軸受は、低トルク化の要求があり低粘度の潤滑剤で潤滑することが望まれる用途(例えば、家庭用小型エアコンのインバータ制御ファンモータ等)には適さない。
下記の特許文献2には、イットリア(Y2 3 )を2〜5モル%含むジルコニア(ZrO2 )からなるジルコニア−イットリア成分と、アルミナ(Al2 3 )成分とからなり、質量比でジルコニア−イットリア成分:アルミナ成分=100:5〜40となる割合で含有する微粉末を原料とした、セラミックス製転動体が記載されている。しかし、このような組成のジルコニア−アルミナ−イットリア製転動体には、転がり疲労寿命を長くするという点で改善の余地がある。
特開平7−310748号公報 特開2002−106570号公報
この発明の課題は、電食を防止できる転がり支持装置として、低粘度の潤滑剤で潤滑する用途で問題なく使用でき、音響特性にも優れ、転がり疲労寿命が長いものを提供することである。
上記課題を解決するために、この発明の転がり支持装置は、互いに対向配置される軌道面を備えた第1部材および第2部材と、両部材の軌道面間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を少なくとも備え、転動体が転動することにより第1部材および第2部材の一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置において、前記転動体は、イットリア(Y2 3 )を1.5モル%以上5.0モル%以下の割合で含むジルコニア(ZrO2 )からなるジルコニア−イットリア成分と、アルミナ(Al2 3 )成分を、質量比でジルコニア−イットリア成分:アルミナ成分=50〜95:50〜5となる割合で含有し、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.30質量%以下の微粉末を、成形後に焼結して得られたものであることを特徴とする。
この発明の転がり支持装置によれば、転動体として、前述の組成の微粉末を成形後に焼結して得られたものを備えていることで、窒化珪素製転動体を備えた転がり支持装置と比較して、同等程度の電食防止性能が得られるとともに、低粘度の潤滑剤で潤滑する用途で問題なく使用でき、音響特性にも優れて、転がり疲労寿命が長い。
特に、原料粉末として、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.30質量%以下の微粉末を用いることにより、これらの不純物の含有率が0.30質量%を超える微粉末を用いた場合と比較して、転がり疲労寿命が大幅に向上する。
これらの不純物の含有率は0.10質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以下であることがより好ましい。
また、原料粉末を構成するジルコニア−イットリア成分中のイットリアの含有率は3.0モル%であることが好ましい。原料粉末を構成するジルコニア−イットリア成分とアルミナ成分の配合割合は、アルミナ成分の含有率が10〜30質量%の範囲となる割合であることが好ましく、20質量%となる割合であることがより好ましい。
また、原料粉末の粒径は、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましい。これにより、焼結体が2μm以下の微細粒で構成されるとともに、混合しやすく、焼結性に優れているため、製造コストを低く抑えることができる。
前記転動体は、「JIS R 1601」で規定された3点曲げ強さ試験に準じた測定法により測定された曲げ強度が1000MPa以上であり、「JIS R 1610」で規定された測定法に準拠し、試験荷重198.1N、室温(25℃)の条件で測定されたビッカース硬さが1300〜1700であり、「JIS R 1607」で規定されたIF法に基づいてビッカース硬さを測定し、Niiharaの式により算出された破壊靱性値(KIC)が4.5MPa・√m以上であることが好ましい。
この発明の転がり支持装置は、電食防止性能を有し、低粘度の潤滑剤で潤滑する用途で問題なく使用でき、音響特性にも優れ、転がり疲労寿命が長い。
本発明の一実施形態に相当する転がり軸受を示す断面図である。 ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなるセラミック材料の組織を示す写真である。 窒化珪素焼結体からなるセラミック材料の組織を示す写真である。 実施形態で使用した通電回転試験装置を示す図である。 SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受の通電回転試験後の内輪軌道面を示す写真である。 実施形態で使用した通電回転試験装置を示す図である。 実施形態で通電回転試験を行い、100時間毎に振動値を測定した結果を示すグラフである。 実施形態で、原料粉末中の不純物含有率が異なるジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を用いてスラスト軸受回転試験を行い、玉に剥離が生じるまでの回転時間を寿命として測定した寿命試験の結果を、ワイブル図表にプロットしたグラフである。 実施形態でスラスト軸受回転試験を行い、寿命となった玉の剥離部分を示す顕微鏡写真である。 実施形態で、原料粉末中のFe2 3 含有率が異なるジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を用いてスラスト軸受回転試験を行い、100時間毎に振動値を測定した結果を示すグラフである。 微粉末D(Fe2 3 含有率が0.50質量%)を原料粉末とした焼結体からなる玉の振動試験後の表面状態を示す顕微鏡写真である。 微粉末A(Fe2 3 含有率が0.10質量%)を原料粉末とした焼結体からなる玉の振動試験後の表面を示す顕微鏡写真である。 実施形態で、原料粉末中のアルミナ成分含有率が異なるジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる試験片を用い、曲げ強度を測定した結果を示すグラフである。 実施形態で、原料粉末中のアルミナ成分含有率が異なるジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる試験片を用い、ビッカース硬さを測定した結果を示すグラフである。 実施形態で、原料粉末中のアルミナ成分含有率が異なるジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる試験片を用い、破壊靱性値を測定した結果を示すグラフである。 実施形態で、原料粉末中のアルミナ成分含有率が異なるジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を用いてスラスト軸受回転試験を行い、玉に剥離が生じるまでの回転時間を寿命として測定した寿命試験の結果を、ワイブル図表にプロットしたグラフである。
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態に相当する転がり軸受を示す断面図である。
この転がり軸受は、呼び番号608ZZ(内径8mm、外径22mm、幅7mm、玉の直径:3.97mm(5/32インチ))の単列深溝玉軸受であり、内輪1、外輪2、玉(転動体)3と、保持器4と、シール5とで構成されている。内輪1の外周面には軌道溝1aが、外輪2の内周面には軌道溝2aがそれぞれ形成されている。これらの軌道溝1a,2aが対向配置され、その間に保持器4を介して玉3が転動自在に配設されている。
内輪1および外輪2としては、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼2種)で形成し、通常の熱処理を行ったものを使用した。玉3としては、次の方法で製造したものを使用した。
先ず、原料粉末として、イットリア(Y2 3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分:アルミナ(Al2 3 )成分=80:20(質量比)で、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%である微粉末(粒径1μm以下)を用意した。この原料粉末を冷間静水圧加圧(CIP:Cold Isostatic Press)成形法で玉の形に成形した後、大気炉に入れて酸素気流中で脱脂し、予備焼結してから、熱間静水圧加圧(HIP:Hot Isostatic Press )焼結法で焼結した。
CIP成形条件は、約25℃、100MPa、約60秒、脱脂条件は、400〜700℃、101.33kPa(大気圧)、1〜3時間、予備焼結条件は、約101.33kPa(1気圧)の酸素気流下、1400〜1700℃、1〜2時間、HIP焼結条件は、アルゴン気流下、1300〜1600℃、151.995MPa(1500気圧)、1〜2時間とした。得られた球状の焼結体を鏡面研磨することにより、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を得た。
また、窒化珪素の微粉末(粒径1μm以下)に、焼結助剤として粒径1μm以下のイットリア(Y2 3 )を2質量%とアルミナ(Al2 3 )を2質量%の割合で含有させたものを、冷間静水圧加圧成形法で玉の形に成形した後、水素炉に入れて水素気流中で脱脂してから、予備焼結した後に、熱間静水圧加圧焼結法で焼結した。
CIP成形条件は、約25℃、100MPa、約60秒、脱脂条件は、約600℃、101.33kPa(大気圧)、約1時間、予備焼結条件は、約101.33kPa(1気圧)の窒素ガス雰囲気下、約1900℃、約2時間、HIP焼結条件は、アルゴン気流下、約1700℃、101.33MPa(1000気圧)、約1時間とした。得られた球状の焼結体を鏡面研磨することにより、窒化珪素焼結体からなる玉を得た。
ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体の微細構造は、図2に示すように、イットリアで部分安定化されたジルコニア粒子とアルミナ粒子からなり、各粒子は丸みを帯びた形状で、粒径は2μm以下であった。
窒化珪素焼結体の微細構造は、図3に示すように、針状の窒化珪素結晶が絡み合った状態になっていて、結晶粒径は最大で30〜50μmであり、アスペクト比(短径に対する長径の比)は2程度であった。
[電食防止性能を調べる試験]
このようにして得られたジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)と、窒化珪素焼結体を組み込んだ転がり軸受(b)と、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)を、図4に示す試験装置に組み込んで下記の条件で回転させ、軸受に流れる電流を調べた。
図4の試験装置は、インダクションモータ201,202と、両インダクションモータ201,202を回転させる3相200Vの電源203と、電源203とインダクションモータ202の間に接続されたインバータ204と、電流測定用CT205と、電流アンプ206と、電流計207とからなる。インダクションモータ201は転がり軸受105,106が取り付けられた回転軸104を回転させる。インダクションモータ202は、転がり軸受105,106の外輪と、配線208により電気的に接続されている。電流測定用CT205は、配線208を流れる電流(すなわち、転がり軸受105,106に流れた電流)を検出する。電流アンプ206は、電流測定用CT205で検出された電流を増幅する。
<試験条件>
回転速度:1800min-1(内輪回転)
アキシャル荷重:29.4N(3kgf)
グリース:NS7(リチウム石けん−エステル油系)を160mmg封入
軸受への付与電流:14mA
回転時間:1500時間
その結果、転がり軸受に流れた電流の最大値は、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)と、窒化珪素焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(b)では0mAであり、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)では13mAであった。また、1500時間回転後に各転がり軸受に電食が生じているかどうかを確認したところ、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体および窒化珪素からなる玉を組み込んだ転がり軸受では電食は生じていなかったが、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受では電食が生じていた。
図5は、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受の試験後の内輪軌道面を示す写真である。この図に示すように、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受の内輪軌道面には、電食特有の縞模様の凹凸(リッジマーク)が形成されていた。これに対して、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体および窒化珪素からなる玉を組み込んだ転がり軸受の内輪軌道面にはリッジマークは形成されていなかった。
[通電状態で回転させた時の振動値を調べる試験]
次に、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)とSUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)について、図6の試験装置を用いた回転試験を行った。
この試験装置は、試験軸受70の外輪に対して通電しながら回転を行うものであり、モータ71と、絶縁カップリング72と、鉄製ハウジング73と、給電用の予圧バネ74と、ブラシ75と、振動計76とで構成されている。この装置を用いて下記の条件で回転試験を行い、100時間毎に振動値を測定した。
<試験条件>
回転速度:1500min-1(内輪回転)
予圧:3.7N
アキシャル荷重:20N
外輪への付与電流:10mA
雰囲気温度:室温
回転時間:500時間
その結果を図7にグラフで示す。このグラフから分かるように、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)の振動値が試験時間の経過とともに上昇するのに対して、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)の振動値は500時間経過しても初期値から変化しない。
[低粘度の潤滑剤を用いて回転させた時の音響特性を調べる試験]
次に、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)と、窒化珪素焼結体を組み込んだ転がり軸受(b)を、図6の試験装置を用い、下記の条件で回転させた。回転試験の前後にアンデロメータを用いて音響特性を示す量(アンデロン値)を測定した。この試験は、回転速度が遅く、高温環境であるため、油膜が薄くなる環境での回転試験である。
<試験条件>
回転速度:300min-1(内輪回転)
アキシャル荷重:29.4N
グリース:NS7(リチウム石けん−エステル油系、40℃での粘度27mm2 /s)を160mmg封入
雰囲気温度:100℃
回転時間:1400時間
その結果、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)のアンデロン値(M.B)は、回転試験前の値(初期値)が0.9で回転試験後の値が1.5であった。窒化珪素焼結体を組み込んだ転がり軸受(b)のアンデロン値(M.B)は、回転試験前の値(初期値)が0.8で回転試験後の値が2.0であった。
通常、アンデロン値の上昇値が1.0以下であると通電状態での音響特性は良好であり、1.0を超えると不良と判定される。よって、この結果から、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)は、窒化珪素焼結体を組み込んだ転がり軸受(b)と比較して、高温且つ通電状態での音響特性に優れていることが分かる。
[不純物の含有率の影響を調べる試験]
次に、原料粉末として、イットリア(Y2 3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分:アルミナ(Al2 3 )成分=80:20(質量比)で、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%である微粉末A(粒径1μm以下)と、SiO2 およびNa2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%でFe2 3 の含有率が0.30質量%である微粉末(粒径1μm以下)Bと、SiO2 およびNa2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%でFe2 3 の含有率が0.35質量%である微粉末(粒径1μm以下)Cと、SiO2 およびNa2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%でFe2 3 の含有率が0.50質量%である微粉末(粒径1μm以下)Dを用意した。
これらの原料粉末を冷間静水圧加圧(CIP:Cold Isostatic Press)成形法で9.525mm(3/8インチ)の玉の形に成形した後、大気炉に入れて酸素気流中で脱脂し、予備焼結してから、熱間静水圧加圧(HIP:Hot Isostatic Press )焼結法で焼結した。
CIP成形条件は、約25℃、100MPa、約60秒、脱脂条件は、400〜700℃、101.33kPa(大気圧)、1〜3時間、予備焼結条件は、約101.33kPa(1気圧)の酸素気流下、1400〜1700℃、1〜2時間、HIP焼結条件は、アルゴン気流下、1300〜1600℃、151.995MPa(1500気圧)、1〜2時間とした。得られた球状の焼結体を鏡面研磨することにより、不純物の含有率のみが異なる3種類のジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を得た。
これらの玉を用いて呼び番号51305のスラスト軸受を組み立て、スラスト軸受回転試験装置を用い、下記の条件で回転させた。そして、玉に剥離が生じるまでの回転時間を寿命として測定した。また、回転試験を開始する前と回転試験を開始してから100時間毎に、スラスト軸受を振動試験機にかけて振動値を測定した。
<試験条件>
回転速度:1000min-1
面圧:3GPa(寿命試験)、1GPa(振動試験)
潤滑剤:トラクション油「VG68」
試験温度:60℃
寿命試験の結果をワイブル図表にプロットしたグラフを図8に示す。寿命試験後の玉(原料粉末が微粉末C)の剥離部分の顕微鏡写真を図9に示す。振動試験の結果を図10にグラフで示す。微粉末D(Fe2 3 含有率が0.50質量%)を原料粉末とした焼結体からなる玉の振動試験後の表面状態を示す顕微鏡写真を図11に示す。微粉末A(Fe2 3 含有率が0.10質量%)を用いた焼結体からなる玉の振動試験後の表面を示す顕微鏡写真を図12に示す。
図8のグラフから以下のことが分かる。微粉末AおよびB(Fe2 3 含有率が0.30質量%および0.10質量%)を用いた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受は、ほぼ全てが計算寿命(Lcal )を超える寿命となっていた。これに対して、微粉末D(Fe2 3 含有率が0.50質量%)を用いた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受は、ほぼ全てが計算寿命(Lcal )を下回る寿命となっていた。微粉末C(Fe2 3 含有率が0.35質量%)を用いた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受は、寿命のバラツキが大きかった。
図9の写真から、不純物であるFe2 3 が起点になって玉に剥離が生じていることが分かった。
図10のグラフから、微粉末D(Fe2 3 含有率0.50質量%)を用いた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受では、試験時間が200時間以上になると振動値が急に上昇しているのに対して、微粉末A〜Cを用いた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受では、試験時間が500時間以内では振動値がそれほど大きく変化しないことが分かる。
図11の写真と図12の写真を比較すると、原料粉末のFe2 3 含有率が0.50質量%の玉の場合(図11)、原料粉末のFe2 3 含有率が0.10質量%の玉(図12)と比較して、振動試験後の表面で結晶粒の脱落が多く、その結果、振動値が大きく上昇することが分かる。
以上のことから、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉(転動体)の原料粉末として、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.30質量%以下の微粉末を用いることにより、これらの不純物の含有率が0.30質量%を超える微粉末を原料粉末として用いた場合と比較して、転がり疲労寿命が大幅に向上し、振動値も低減できることが分かる。
[アルミナ成分の含有率の違いによる性能を調べる試験]
次に、原料粉末として、イットリア(Y2 3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分とアルミナ(Al2 3 )成分を、アルミナ成分含有率が5、10、20、30、40、50、60質量%となるように混合し、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%とされた微粉末(粒径1μm以下)と、ジルコニア−イットリア成分のみからなる不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%とされた微粉末(粒径1μm以下)と、アルミナ(Al2 3 )成分のみからなる不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%とされた微粉末(粒径1μm以下)を用意した。
各微粉末を、前述の呼び番号51305のスラスト軸受用のジルコニア−アルミナ−イットリア製焼結体からなる玉を製造する方法と同じ方法で、成形(CIP)、脱脂、予備焼結、焼結(HIP)、研磨を行うことにより、アルミナ成分含有率のみが異なるジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる、曲げ強度測定用試験片、ビッカース硬さ(Hv)測定用試験片、破壊靱性値測定用試験片、呼び番号51305のスラスト軸受用の9.525mm(3/8インチ)の玉を得た。
得られた各試験片を用いて曲げ強度、ビッカース硬さ、および破壊靱性値を測定した。その結果を、図13〜15のグラフに示す。
曲げ強度は、「JIS R 1601」で規定された3点曲げ強さ試験に準じた測定法により測定した。ビッカース硬さは、「JIS R 1610」で規定された測定法に準拠し、試験荷重198.1N、室温(25℃)の条件で測定した。破壊靱性値(KIC)は、「JIS R 1607」で規定されたIF法に基づいてビッカース硬さを測定し、Niiharaの式により算出した。
また、呼び番号51305のスラスト軸受用の内輪および外輪をSUJ2で形成し、通常の熱処理を行うことで得た。このようにして得られた玉、内輪、および外輪を用いて呼び番号51305のスラスト軸受を組み立て、スラスト軸受回転試験装置を用い、下記の条件で回転させた。そして、玉に剥離が生じるまでの回転時間を寿命として測定した。その結果をワイブル図表にプロットしたグラフを図16に示す。
<試験条件>
回転速度:1000min-1
面圧:3GPa(寿命試験)、1GPa(振動試験)
潤滑剤:トラクション油「VG68」
試験温度:60℃
図13〜15において「※」は、「ジルコニア−イットリア成分+アルミナ成分」におけるアルミナ成分含有率について、この発明の範囲を示す。「イ」は窒化珪素焼結体の曲げ強度を示す。「ロ」は窒化珪素焼結体のビッカース硬さ(Hv)を示す。「ハ」は窒化珪素焼結体の破壊靱性値を示す。
これらの結果から、「ジルコニア−イットリア成分+アルミナ成分」におけるアルミナ成分含有率がこの発明の範囲(5〜50質量%)にある原料粉末を用いることで、窒化珪素焼結体と同等以上の曲げ強度、ビッカース硬さ、および破壊靱性値が得られることが分かる。
また、図16のグラフから、「ジルコニア−イットリア成分+アルミナ成分」におけるアルミナ成分含有率が、この発明の範囲(5〜50質量%)にある原料粉末を用いて得られた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受は、ほぼ全てが計算寿命(Lcal )を超える寿命となっていた。これに対して、前記アルミナ成分含有率が5〜50質量%を外れる原料粉末を用いて得られた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受は、全てが計算寿命(Lcal )を下回る寿命となっていた。
1 内輪
2 外輪
3 玉(転動体)
4 保持器
5 シール
70 試験軸受
71 モータ
72 絶縁カップリング
73 ハウジング
74 予圧バネ
75 ブラシ
76 振動計
104 回転軸
105 転がり軸受
106 転がり軸受
201,202 インダクションモータ
203 電源
204 インバータ
205 電流測定用CT
206 電流アンプ
207 電流計
208 配線

Claims (2)

  1. 互いに対向配置される軌道面を備えた第1部材および第2部材と、両部材の軌道面間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を少なくとも備え、転動体が転動することにより第1部材および第2部材の一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置において、 前記転動体は、イットリア(Y2 3 )を1.5モル%以上5.0モル%以下の割合で含むジルコニア(ZrO2 )からなるジルコニア−イットリア成分と、アルミナ(Al2 3 )成分を、質量比でジルコニア−イットリア成分:アルミナ成分=50〜95:50〜5となる割合で含有し、不純物であるSiO2 、Fe2 3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.30質量%以下の微粉末を、成形後に焼結して得られたものであることを特徴とする転がり支持装置。
  2. 前記微粉末を構成するジルコニア−イットリア成分中のイットリアの含有率は3.0モル%である請求項1記載の転がり支持装置。
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