JP2010209966A - 転がり支持装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転がり軸受の玉3として、次の方法で製造したものを使用する。原料粉末として、イットリア(Y2 O3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分:アルミナ(Al2 O3 )成分=80:20(質量比)で、不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%である微粉末(粒径1μm以下)を用意し、冷間静水圧加圧成形法で玉の形に成形した後、大気炉に入れて酸素気流中で脱脂してから、熱間静水圧加圧焼結法で焼結し、鏡面研磨する。
【選択図】図1
Description
また、セラミックス製の転動体を用いることで電食を防止できるが、窒化珪素(Si3 N4 )製転動体を用いた転がり軸受には、音響特性およびトルク性能の点で改善の余地がある。すなわち、転がり軸受のトルクを低くするために低粘度の潤滑剤を用いると、転動体表面に形成される油膜の厚さが薄くなって油膜切れが生じ易くなる。また、窒化珪素製転動体の表面は、元々、油の濡れ性が悪いため油膜切れが生じ易い。
特に、原料粉末として、不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.30質量%以下の微粉末を用いることにより、これらの不純物の含有率が0.30質量%を超える微粉末を用いた場合と比較して、転がり疲労寿命が大幅に向上する。
また、原料粉末を構成するジルコニア−イットリア成分中のイットリアの含有率は3.0モル%であることが好ましい。原料粉末を構成するジルコニア−イットリア成分とアルミナ成分の配合割合は、アルミナ成分の含有率が10〜30質量%の範囲となる割合であることが好ましく、20質量%となる割合であることがより好ましい。
前記転動体は、「JIS R 1601」で規定された3点曲げ強さ試験に準じた測定法により測定された曲げ強度が1000MPa以上であり、「JIS R 1610」で規定された測定法に準拠し、試験荷重198.1N、室温(25℃)の条件で測定されたビッカース硬さが1300〜1700であり、「JIS R 1607」で規定されたIF法に基づいてビッカース硬さを測定し、Niiharaの式により算出された破壊靱性値(KIC)が4.5MPa・√m以上であることが好ましい。
図1は、この発明の一実施形態に相当する転がり軸受を示す断面図である。
この転がり軸受は、呼び番号608ZZ(内径8mm、外径22mm、幅7mm、玉の直径:3.97mm(5/32インチ))の単列深溝玉軸受であり、内輪1、外輪2、玉(転動体)3と、保持器4と、シール5とで構成されている。内輪1の外周面には軌道溝1aが、外輪2の内周面には軌道溝2aがそれぞれ形成されている。これらの軌道溝1a,2aが対向配置され、その間に保持器4を介して玉3が転動自在に配設されている。
先ず、原料粉末として、イットリア(Y2 O3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分:アルミナ(Al2 O3 )成分=80:20(質量比)で、不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%である微粉末(粒径1μm以下)を用意した。この原料粉末を冷間静水圧加圧(CIP:Cold Isostatic Press)成形法で玉の形に成形した後、大気炉に入れて酸素気流中で脱脂し、予備焼結してから、熱間静水圧加圧(HIP:Hot Isostatic Press )焼結法で焼結した。
窒化珪素焼結体の微細構造は、図3に示すように、針状の窒化珪素結晶が絡み合った状態になっていて、結晶粒径は最大で30〜50μmであり、アスペクト比(短径に対する長径の比)は2程度であった。
このようにして得られたジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)と、窒化珪素焼結体を組み込んだ転がり軸受(b)と、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)を、図4に示す試験装置に組み込んで下記の条件で回転させ、軸受に流れる電流を調べた。
回転速度:1800min-1(内輪回転)
アキシャル荷重:29.4N(3kgf)
グリース:NS7(リチウム石けん−エステル油系)を160mmg封入
軸受への付与電流:14mA
回転時間:1500時間
その結果、転がり軸受に流れた電流の最大値は、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)と、窒化珪素焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(b)では0mAであり、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)では13mAであった。また、1500時間回転後に各転がり軸受に電食が生じているかどうかを確認したところ、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体および窒化珪素からなる玉を組み込んだ転がり軸受では電食は生じていなかったが、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受では電食が生じていた。
次に、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)とSUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)について、図6の試験装置を用いた回転試験を行った。
この試験装置は、試験軸受70の外輪に対して通電しながら回転を行うものであり、モータ71と、絶縁カップリング72と、鉄製ハウジング73と、給電用の予圧バネ74と、ブラシ75と、振動計76とで構成されている。この装置を用いて下記の条件で回転試験を行い、100時間毎に振動値を測定した。
回転速度:1500min-1(内輪回転)
予圧:3.7N
アキシャル荷重:20N
外輪への付与電流:10mA
雰囲気温度:室温
回転時間:500時間
その結果を図7にグラフで示す。このグラフから分かるように、SUJ2製の玉を組み込んだ転がり軸受(c)の振動値が試験時間の経過とともに上昇するのに対して、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)の振動値は500時間経過しても初期値から変化しない。
次に、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)と、窒化珪素焼結体を組み込んだ転がり軸受(b)を、図6の試験装置を用い、下記の条件で回転させた。回転試験の前後にアンデロメータを用いて音響特性を示す量(アンデロン値)を測定した。この試験は、回転速度が遅く、高温環境であるため、油膜が薄くなる環境での回転試験である。
回転速度:300min-1(内輪回転)
アキシャル荷重:29.4N
グリース:NS7(リチウム石けん−エステル油系、40℃での粘度27mm2 /s)を160mmg封入
雰囲気温度:100℃
回転時間:1400時間
その結果、ジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を組み込んだ転がり軸受(a)のアンデロン値(M.B)は、回転試験前の値(初期値)が0.9で回転試験後の値が1.5であった。窒化珪素焼結体を組み込んだ転がり軸受(b)のアンデロン値(M.B)は、回転試験前の値(初期値)が0.8で回転試験後の値が2.0であった。
次に、原料粉末として、イットリア(Y2 O3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分:アルミナ(Al2 O3 )成分=80:20(質量比)で、不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%である微粉末A(粒径1μm以下)と、SiO2 およびNa2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%でFe2 O3 の含有率が0.30質量%である微粉末(粒径1μm以下)Bと、SiO2 およびNa2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%でFe2 O3 の含有率が0.35質量%である微粉末(粒径1μm以下)Cと、SiO2 およびNa2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%でFe2 O3 の含有率が0.50質量%である微粉末(粒径1μm以下)Dを用意した。
CIP成形条件は、約25℃、100MPa、約60秒、脱脂条件は、400〜700℃、101.33kPa(大気圧)、1〜3時間、予備焼結条件は、約101.33kPa(1気圧)の酸素気流下、1400〜1700℃、1〜2時間、HIP焼結条件は、アルゴン気流下、1300〜1600℃、151.995MPa(1500気圧)、1〜2時間とした。得られた球状の焼結体を鏡面研磨することにより、不純物の含有率のみが異なる3種類のジルコニア−アルミナ−イットリア焼結体からなる玉を得た。
回転速度:1000min-1
面圧:3GPa(寿命試験)、1GPa(振動試験)
潤滑剤:トラクション油「VG68」
試験温度:60℃
寿命試験の結果をワイブル図表にプロットしたグラフを図8に示す。寿命試験後の玉(原料粉末が微粉末C)の剥離部分の顕微鏡写真を図9に示す。振動試験の結果を図10にグラフで示す。微粉末D(Fe2 O3 含有率が0.50質量%)を原料粉末とした焼結体からなる玉の振動試験後の表面状態を示す顕微鏡写真を図11に示す。微粉末A(Fe2 O3 含有率が0.10質量%)を用いた焼結体からなる玉の振動試験後の表面を示す顕微鏡写真を図12に示す。
図10のグラフから、微粉末D(Fe2 O3 含有率0.50質量%)を用いた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受では、試験時間が200時間以上になると振動値が急に上昇しているのに対して、微粉末A〜Cを用いた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受では、試験時間が500時間以内では振動値がそれほど大きく変化しないことが分かる。
次に、原料粉末として、イットリア(Y2 O3 )の含有率が3.0モル%であるジルコニア−イットリア成分とアルミナ(Al2 O3 )成分を、アルミナ成分含有率が5、10、20、30、40、50、60質量%となるように混合し、不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%とされた微粉末(粒径1μm以下)と、ジルコニア−イットリア成分のみからなる不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%とされた微粉末(粒径1μm以下)と、アルミナ(Al2 O3 )成分のみからなる不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.10質量%とされた微粉末(粒径1μm以下)を用意した。
曲げ強度は、「JIS R 1601」で規定された3点曲げ強さ試験に準じた測定法により測定した。ビッカース硬さは、「JIS R 1610」で規定された測定法に準拠し、試験荷重198.1N、室温(25℃)の条件で測定した。破壊靱性値(KIC)は、「JIS R 1607」で規定されたIF法に基づいてビッカース硬さを測定し、Niiharaの式により算出した。
回転速度:1000min-1
面圧:3GPa(寿命試験)、1GPa(振動試験)
潤滑剤:トラクション油「VG68」
試験温度:60℃
図13〜15において「※」は、「ジルコニア−イットリア成分+アルミナ成分」におけるアルミナ成分含有率について、この発明の範囲を示す。「イ」は窒化珪素焼結体の曲げ強度を示す。「ロ」は窒化珪素焼結体のビッカース硬さ(Hv)を示す。「ハ」は窒化珪素焼結体の破壊靱性値を示す。
また、図16のグラフから、「ジルコニア−イットリア成分+アルミナ成分」におけるアルミナ成分含有率が、この発明の範囲(5〜50質量%)にある原料粉末を用いて得られた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受は、ほぼ全てが計算寿命(Lcal )を超える寿命となっていた。これに対して、前記アルミナ成分含有率が5〜50質量%を外れる原料粉末を用いて得られた焼結体からなる玉を備えたスラスト軸受は、全てが計算寿命(Lcal )を下回る寿命となっていた。
2 外輪
3 玉(転動体)
4 保持器
5 シール
70 試験軸受
71 モータ
72 絶縁カップリング
73 ハウジング
74 予圧バネ
75 ブラシ
76 振動計
104 回転軸
105 転がり軸受
106 転がり軸受
201,202 インダクションモータ
203 電源
204 インバータ
205 電流測定用CT
206 電流アンプ
207 電流計
208 配線
Claims (2)
- 互いに対向配置される軌道面を備えた第1部材および第2部材と、両部材の軌道面間に転動自在に配設された複数個の転動体と、を少なくとも備え、転動体が転動することにより第1部材および第2部材の一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置において、 前記転動体は、イットリア(Y2 O3 )を1.5モル%以上5.0モル%以下の割合で含むジルコニア(ZrO2 )からなるジルコニア−イットリア成分と、アルミナ(Al2 O3 )成分を、質量比でジルコニア−イットリア成分:アルミナ成分=50〜95:50〜5となる割合で含有し、不純物であるSiO2 、Fe2 O3 、Na2 Oの含有率がそれぞれ0.30質量%以下の微粉末を、成形後に焼結して得られたものであることを特徴とする転がり支持装置。
- 前記微粉末を構成するジルコニア−イットリア成分中のイットリアの含有率は3.0モル%である請求項1記載の転がり支持装置。
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JP2009054801A JP2010209966A (ja) | 2009-03-09 | 2009-03-09 | 転がり支持装置 |
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