JP3799139B2 - セラミックス複合部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、半導体製造工程で使用されるセラミックス部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体製造工程における、シリコンウエハーの搬送、保持には、ステンレス等の金属部材が用いられてきた。近年、半導体ウエハーの大口径化、回路パターンの高密度化に伴って、部材の変形の抑制、ウエハーに対する金属汚染の抑制、長期に亘る精度維持が要求されるようになり、セラミックス部材が多く使用されるようになってきた。使用されるセラミックスとしては、アルミナあるいは炭化けい素等があり、精度面での経時変化が小さく金属部材に比較して、長期間に亘る高精度維持が可能になってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ウエハーの大口径化、回路パターンの高密度化が急速に進む中で、上記の様なセラミックス部材を用いても、種々の不良が多発するという問題が発生してきている。半導体製造工程における不良原因としては、セラミックス部材の熱膨張に起因する精度低下、セラミックスとシリコンウエハーの摩擦によるシリコンウエハーの傷つきおよびそれによるパーティクルの発生、静電気によるパーティクルの付着等がある。従って、半導体製造工程に使用するセラミックス部材としては、寸法精度維持の面で、高剛性および低熱膨張性、シリコンウエハーへのダメージ抑制のために低硬度、パーティクル付着防止のために静電気除去可能な導電性が要求される。
【0004】
しかしながら、従来のセラミックス部材では、これらの要求の全てを満足することはできない。セラミックス部材の多くは、高剛性という点では共通して優れているが、例えばアルミナ部材では、絶縁体であるためパーティクルの付着が発生するばかりでなく、熱膨張係数も6×10-6/℃以上あり、熱変化に対する精度低下も大きい。炭化けい素は、106Ω・cm以下の抵抗率であるため、パーティクルの付着を抑制することはできる。しかしながら、ビッカース硬度は2000Kg/mm2以上あり、シリコンウエハーを傷つけやすく、熱膨張係数もアルミナに比べると小さいが2.5×10-6/℃以上あり、熱的安定性に関しても必ずしも満足できるものではない。本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、高い寸法精度を維持しつつ、シリコンウエハーへのダメージ、およびパーティクルの発生・付着を抑制し得るセラミックス部材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点の解決のために、部材構造について詳細に検討した結果、熱膨張係数の小さい窒化ケイ素またはサイアロン基材表面に酸素欠損を有する酸化チタン膜を形成することにより、温度変化に対しても高い寸法精度を維持でき、シリコンウエハーへのダメージおよびパーティクルの発生・付着を抑制し得る複合セラミックス部材が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、20℃から50℃の間の平均熱膨張係数が1.5×10-6/℃以下の窒化ケイ素またはサイアロンを基材とし、その基材表面にTiO2-x膜(2>x>0)を形成してなることを要旨とするものである。
【0006】
本発明のセラミックス複合部材においては、その製法は規定されるものではなく、部材の構成そのものが重要となる。
本発明におけるセラミックス基材に要求される性能としては、その目的から高剛性と低熱膨張性が挙げられる。低熱膨張性だけに着目すれば、石英ガラスやチタン酸アルミ等の低熱膨張材も優れているが、これら材料は概してヤング率が低く熱変化以前に応力に対する精度維持の面で問題がある。本発明では、基材を窒化ケイ素またはサイアロンとしたが、これは、ヤンク率が200GPa以上の高剛性セラミックスの中では、窒化ケイ素およびサイアロンが最も小さい熱膨張係数を有しているからである。
【0007】
本発明では、基材として用いる窒化ケイ素またはサイアロンの20℃から50℃の間の熱膨張係数が1.5×10-6/℃以下であることを要件としているが、これは、従来材料の中で比較的熱膨張係数の小さい炭化けい素に対しても十分な優位性が確保できる範囲を指定したものである。窒化ケイ素やサイアロンの熱膨張係数は、添加する焼結助剤や焼結条件により左右されるが、例えば、Y23、Al23、MgO等の焼結助剤を総量で15%未満添加して、常圧焼結、ガス圧焼結あるいはHIP焼結を行って得られた、相対密度で95%以上の緻密質焼結体であれば、20℃〜50℃の間の平均熱膨張係数は1.5×10-6/℃以下となり、本発明の基材として用いることができる。
【0008】
次に、表面膜については、シリコンウエハーのダメージ低減の目的から硬度が小さいことおよび静電気によるパーティクル付着防止のために導電性が要求される。導電性セラミックスとしては、炭化けい素や炭化チタンあるいは窒化チタン等があるが、これらは高硬度であり、シリコンウエハーとの接触時にシリコンウエハーを傷つけやすいため好ましくない。本発明では、酸素欠損を有する酸化チタン単独あるいは酸素欠損を有する酸化チタンと酸素欠損を有しない通常の酸化チタンの混合組成よりなるものとした。この場合、TiO2-x(2>x>0)とTiO2の比は0.6以上であることが好ましい。0.6以下であると導電性が急激に低くなり、パ−ティクルの付着を防止することができない。
【0009】
酸化チタンのビッカース硬度は1000Kg/mm2程度であり、シリコンウエハーの硬度約900Kg/mm2と比較してもその差は小さい。また、TiO2組成で表される二酸化チタンは、絶縁性であるが、酸素欠損を生じたTiO2-x(2>x>0)は導電性を有するため、パーティクルの付着防止のための静電気除去が可能となる。この酸素欠損を有する酸化チタン表面膜を形成することの効果、即ちシリコンウエハーへのダメージ抑制および静電気除去効果についてだけであれば、基材の種類に拘わらないことはいうまでもない。
【0010】
酸化チタンの酸素欠損量の好ましい範囲としては、TiO2-xにおけるxの値が0.1〜0.4の範囲である。酸化チタンはTiO2組成が最も安定な組成ではあるが、導電性を有する酸素欠損型の酸化チタンの中では、TiO1.86あるいはTiO1.67等の準安定組成も存在する。これら準安定組成単独あるいは、準安定組成と安定組成の混合組成のものが長期に使用する膜組成としては好ましい。
【0011】
導電性酸化チタン膜の形成方法としては、酸素分圧を制御したイオンプレーティング、スパッタ、CVD等が挙げられる。本発明においては、この酸化チタン膜の厚みは特に規定しないが、必要以上に厚くすることは、経済的に不利になるばかりでなく、酸化チタンの熱膨張係数が大きいため部材全体としての熱膨張を大きくする方向に働き好ましくない。通常は、基材の厚みの1%以下程度であれば、部材全体の熱膨張は質基材の熱膨張そのものと考えて差し支えない範囲の影響しかなく、本発明の目的は達し得る。
【0012】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。
【実施例1】
市販の窒化ケイ素粉末にY23を6%、MgOを2%、Al23を2%添加した粉末をプレス成形後、窒素気流中1700℃で3時間常圧焼結した。得られた焼結体の20℃から50℃の間の平均熱膨張係数は1.2×10-6/℃であった。この焼結体を研削および研磨加工してφ2mm×20mmの円柱状の窒化ケイ素基材とし、ついで酸化チタンを蒸発源としてイオンプレーティング処理を行って、厚さ3μmの酸素欠損型の酸化チタン(TiO2-x)によりコ−ティングを施し試料とした。この試料の酸素欠損型の酸化チタンコ−ティングよりサンプルを採取しXの値を調べた結果0.3であることが判明した。この試料を用いて、20℃から50℃の間の平均熱膨張係数を測定した結果を表1に示す。また、酸素欠損型の酸化チタンコ−ティングの厚みを変化させ、4探針法によりそのときの抵抗率を測定し、その結果を表2に示した。
【0013】
次に、φ2mm×20mmのピン形状に加工した20℃から50℃の間の平均熱膨張係数が1.2×10-6/℃である窒化ケイ素基材に厚さ3μmの酸素欠損型の酸化チタン(TiO1.7)によりコ−ティングを施した試料及びシリコンウェハ−を用い、ピンオンディスク摩耗試験を行った。即ち、押しつけ加重5Kgfでピンをシリコンウェハ−に押しつけた状態で、シリコンウェハ−を回転させることにより、ピンとシリコンウェハ−板を摺動させた。摺動距離が1Kmに達した段階で摺動を停止し、摺動前後のシリコンウェハ−の重量測定から、シリコンウェハ−の摩耗量を測定し、その結果を表3に示した。
【0014】
【比較例1〜2】
酸素欠損型の酸化チタンコ−ティングが施されていない炭化けい素を比較例1とし、また酸素欠損型の酸化チタンコ−ティングが施されていないアルミナを比較例2とし、実施例1と同様に20℃から50℃の間の平均熱膨張係数を測定し、その結果を表1に示した。
また、同炭化けい素及びアルミナを実施例1と同様に、φ2mm×20mmのピン形状に加工し、シリコンウェハ−を用い、ピンオンディスク摩耗試験を行い、その結果を表3に示した。
【0015】
表1より、本発明の複合材料は従来材料に比べて20℃から50℃の間の平均熱膨張係数が小さく、温度変化に対する精度維持特性が優れていることが分かる。
また、表2より、酸素欠損型の酸化チタンコ−ティングの厚みは0.3μmでも十分な導電性が確保できることが分かる。
さらに、表3より、本発明の複合材料を用いた場合は、従来材料を用いた場合に比べ、シリコンウェハ−の摩耗量が少なく、したがってシリコンウェハ−の損傷量が少ないことが分かる。
【0016】
【発明の効果】
本発明の複合材料を半導体製造工程に用いるセラミック部材として用いた場合、応力及び温度変化に対する寸法維持精度、シリコンウェハ−のダメ−ジ抑制、パ−ティクル付着防止に極めて有効である
【表1】
Figure 0003799139
【表2】
Figure 0003799139
【表3】
Figure 0003799139

Claims (4)

  1. 20℃から50℃の間の平均熱膨張係数が1.5×10-6/℃以下である窒化ケイ素またはサイアロンを基材とし、該基材表面にTiO2-x(2>x>0)膜又はTiO2-x(2>x>0)とTiO2の混合組成よりなる膜を形成してなることを特徴とするセラミックス複合部材。
  2. TiO2-xのxが0.1〜0.4である請求項1記載のセラミックス複合部材。
  3. 膜の厚みが基材の厚みの1%以下である請求項1又は請求項2記載のセラミックス複合部材。
  4. TiO2-x(2>x>0)とTiO2の比が0.6以上である請求項1,2又は3記載のセラミックス複合部材。
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