JPH11153142A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JPH11153142A
JPH11153142A JP9321626A JP32162697A JPH11153142A JP H11153142 A JPH11153142 A JP H11153142A JP 9321626 A JP9321626 A JP 9321626A JP 32162697 A JP32162697 A JP 32162697A JP H11153142 A JPH11153142 A JP H11153142A
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JP
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zirconia
rolling
alumina
volume
less
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Application number
JP9321626A
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English (en)
Inventor
Kazuhisa Kitamura
和久 北村
Tomoya Hattori
智哉 服部
Shigetaka Wada
重孝 和田
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Koyo Seiko Co Ltd
Original Assignee
Koyo Seiko Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 窒化珪素製転がり軸受では対応できない非常
に強い腐蝕性を有する薬液中などでも長期にわたって良
好な軸受性能を発揮できる転がり軸受を提供する。 【解決手段】 内輪1と外輪2と転動体3との少なくと
も転走面を複合セラミック材料で形成する。上記複合セ
ラミック材料は、アルミナとジルコニアとからなる主要
構成部を備え、上記主要構成部においてアルミナ含有量
が40〜98体積%、ジルコニア含有量が60〜2体積
%であり、さらに、上記主要構成部に対する割合が1体
積%未満である非主要構成部を備えることができる。上
記複合セラミック材料はHIP焼結されたものである。
転走面の表面粗さは、最大表面粗さはRmaxが0.4
μm以下、平均表面粗さRaが0.1μm以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強い腐蝕性を有す
る薬液中などでの使用に適した転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミック材料である窒化珪素(Si3
4)が優れた転がり軸受材料であることは、従来から
知られている。窒化珪素の緻密な焼結体で形成した転動
体および内外輪は軽量であり、また、耐熱性、耐蝕性、
耐焼付性にも優れているため、高速回転や腐蝕環境等、
通常の鋼製軸受では対応できない用途で幅広く実用化さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな窒化珪素も、非常に強い酸やアルカリに対しては腐
蝕が発生するため、非常に強い腐蝕性を有する薬液中な
どで使用する転がり軸受の材料としては用いることがで
きない。
【0004】窒化珪素よりも耐蝕性に優れたセラミック
材料としては、アルミナ(Al23)、炭化珪素(Si
C)、ジルコニア(ZrO2)(特に、強度に優れた正
方晶ジルコニア)等が考えられる。
【0005】しかし、アルミナは、窒化珪素に比べると
機械的強度が低く、したがって窒化珪素よりも耐荷重性
に劣る。さらに、表面を滑らかに研磨することが困難で
あるため、アルミナ単体からなるセラミック材料を転が
り軸受材料として使用することはできない。
【0006】また、炭化珪素も、アルミナと同様、窒化
珪素に比べると機械的強度が低く、したがって窒化珪素
よりも耐荷重性に劣る。しかも、緻密に焼結することが
難しいので、表面の滑らかな転動体を形成するのが困難
である。このため、炭化珪素単体からなる材料も、転が
り軸受材料としては不向きである。
【0007】一方、ジルコニアは、機械的強度にも表面
加工性にも優れ、油を潤滑剤とする転がり軸受材料試験
では、窒化珪素に次ぐ優れた耐久性を有することも確か
められている。ところが、ジルコニアは、応力により、
または、水との反応により、結晶系が正方晶から単斜晶
に変化し、この結晶変態に伴う大きな体積変化により強
度が低下する不具合がある。このため、ジルコニアは、
耐水性と耐蝕性とが同時に要求される用途、つまり、腐
蝕性薬液中での実用は困難となっている。
【0008】つまり、現在までのところ、窒化珪素製転
がり軸受では対応できない強い腐蝕性環境にも対応でき
る転がり軸受は開発されていない。
【0009】そこで、本発明の目的は、従来使用されて
いた窒化珪素よりも耐蝕性が高く、しかも十分な耐荷重
性を有し、したがって、非常に強い腐蝕性を有する薬液
中などでも長期にわたって良好な軸受性能を発揮できる
転がり軸受を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1の発明の転がり軸受は、内輪と外輪と転動
体との少なくとも転走面が複合セラミック材料で形成さ
れており、上記複合セラミック材料は、アルミナとジル
コニアとからなる主要構成部を備え、上記主要構成部に
おいてアルミナ含有量が40〜98体積%、ジルコニア
含有量が60〜2体積%であり、さらに、上記主要構成
部に対する割合が1体積%未満である非主要構成部を備
えることができることを特徴としている。
【0011】本明細書で使用している用語「転走面」
は、内輪および外輪においては、転動体が転動する軌道
面、また、転動体においては、上記軌道面に転がり接触
する転動体表面のことを言うものとする。
【0012】窒化珪素よりも共に耐蝕性に優れたアルミ
ナとジルコニアは、上記した理由で、いずれも単体では
転がり軸受材料として用いるには問題があるが、これら
の複合材料とすることで、両者の欠点を抑える一方、両
者の長所を生かしたものとすることが出来る。つまり、
このアルミナ/ジルコニア複合セラミック材料は、耐蝕
性に非常に優れ、表面加工性にも機械的強度にも優れ、
かつ、水中におけるジルコニアの結晶変態に起因する強
度低下も抑制される。したがって、転走面がこの材料か
らなる請求項1の転がり軸受は、非常に腐蝕性の強い薬
液中でも長期にわたって良好に作動する。
【0013】ここで、上記複合セラミック材料の主要構
成部に占めるアルミナ含有量の割合の上限を98体積%
およびジルコニア含有量の割合の下限を2体積%とする
理由は、複合化による強度向上の効果を確実に得るため
である。本発明者の行った試験結果によると、アルミナ
/ジルコニア複合セラミック材料におけるアルミナ含有
量が98体積パーセントよりも多くなり、機械的強度に
優れたジルコニア含有量が2体積パーセントよりも少な
くなると、複合化による強度向上の効果が低くなり、転
がり軸受として使用する際の絶対的な機械的強度が不足
し、良好な転動寿命を得ることができなかった。
【0014】また、上記複合セラミック材料の主要構成
部に占めるアルミナ含有量の割合の下限を40体積%お
よびジルコニア含有量の割合の上限を60体積%とする
理由は、水中におけるジルコニアの結晶変態に起因する
強度低下を抑制するためである。アルミナ含有量が40
体積%よりも少なく、ジルコニアの含有量が60体積%
よりも多い試料で、水中での転動試験を実施した結果、
ジルコニアと同程度の寿命しか得られなかった。ジルコ
ニアが水中で良好な転動寿命を得られない原因は、結晶
変態に起因する強度低下に起因すると考えられる。アル
ミナ含有量が40体積%よりも少なく、ジルコニアの含
有量が60体積%よりも多い場合、ジルコニアと同様に
水中での使用に対して、結晶変態に起因する強度低下が
発生すると考えられる。
【0015】一方、アルミナ含有量およびジルコニア含
有量が上記範囲内にあるときは、アルミナ単体の場合の
低強度という問題を回避し、また、ジルコニア単体の場
合に発生する水中での強度低下も抑えることができ、転
がり軸受として良好な耐久性を得ることができた。しか
も、主要成分であるアルミナとジルコニアは、いずれも
窒化珪素よりも基本的に耐蝕性に優れたものであること
から、請求項1の転がり軸受は耐蝕性に優れ、窒化珪素
では対応できない腐蝕性の強い薬液中などにおいても、
長期に使用することができる。
【0016】なお、ここでジルコニアとは、Y23,C
eO2,CaOなどを固溶した実質的に正方晶からなる
ジルコニアを言う。
【0017】請求項2の転がり軸受は、上記複合セラミ
ック材料が熱間静水圧プレス法で焼結されたものである
ことを特徴としている。
【0018】本発明者が行った試験結果によると、上記
複合セラミック材料を熱間静水圧プレス法で焼結したも
のと、しなかったものとでは、転がり性能に違いがあ
り、前者は後者に比べて良好な転がり性能したがって耐
久性を有することが分かった。したがって、請求項2の
転がり軸受は良好な転がり性能したがって耐久性を有す
ることができる。
【0019】請求項3の転がり軸受は、上記転走面の表
面粗さを、平均粗さRaで0.1μm以下かつ最大粗さR
maxで0.4μm以下としたものである。
【0020】特にセラミック材料の転がり寿命の低下
は、転走面の表面粗さに起因する。発明者がおこなった
試験によると、Raがたとえ0.1μm以下であっても
Rmaxが0.4μmよりも大きいと耐久性のばらつき
が大きくなり、Rmaxが0.4μm以下でも、Raが
0.1μmよりも大きいと、耐久性に劣った。これに対
して、RaとRmaxの両方がそれぞれ上記範囲内にあ
るときには、良好な耐久性が得られた。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態
により詳細に説明する。
【0022】図1は本発明の転がり軸受の一実施の形態
であるラジアル玉軸受を示した断面図であり、1は外周
面に軌道面1aを有する内輪、2は内周面に軌道面2a
を有する外輪、3は上記軌道面1aと2aの間に周方向
に一定間隔をあけて設けられた複数の転動体としての
玉、そして4は保持器である。上記ラジアル玉軸受の転
走面、つまり、上記両軌道面1a,2aおよび各玉3の
表面の表面粗さは、平均表面粗さRaで0.1μm以
下、最大表面粗さRmaxで0.4μm以下である。
【0023】上記内輪1、外輪2、および、玉3の各々
は、アルミナとジルコニアとからなる主要構成部を備え
た複合セラミック材料からなる。この複合セラミック材
料の主要構成部100体積%に占めるアルミナの含有量
の割合は40〜98体積%の範囲内にあり、ジルコニア
含有量の割合は60〜2体積%の範囲内にある。複合セ
ラミック材料は、この主要構成部のみで100体積%と
なるようにしてもよいが、アルミナの粒成長を抑制する
あるいは焼結を容易にする目的の焼結助剤成分を不可避
不純物と合わせて、アルミナとジルコニアのみで100
体積%とした上記主要構成部に対して1体積%程度加え
てもよい。焼結助剤としては、各種希土類酸化物、金属
酸化物、特に酸化マグネシウム等を用いることができ
る。
【0024】上記アルミナ/ジルコニア複合セラミック
製の内輪1と外輪2と玉3は、たとえば次のような方法
によって製造できる。
【0025】まず、アルミナの粉末とジルコニアの粉末
とを上記範囲内で所定の割合となるように秤量し、通常
の方法でボールミルで混合(このとき、上述した範囲内
で焼結助剤を加えてもよい。)、乾燥した後、その混合
粉体を内輪、外輪および玉に成形し、大気中で1400
℃〜1600℃で常圧焼結する。次いで、熱間静水圧プ
レス(HIP:Hot Isostatic Pressing)法による焼結
を行い、実質的に理論密度の複合焼結体を得る。そし
て、こうして得られた焼結体の表面を研磨加工によって
滑らかにすることにより、上記内輪1、外輪2、玉3を
得るのである。
【0026】上記混合粉体の成形法としては、乾燥した
粉末を所定の形状に合わせて一軸プレスする方法、静水
圧プレスする方法、スリップキャスト法、射出成形法等
を用い得る。また、上記常圧焼結の目的は、次いで行う
HIP焼結において実質的に理論密度の焼結体が得られ
るように、開気孔が実質的になくなるようにすることで
あり、通常、相対密度が95%以上となるように温度と
時間とを選ぶ。上記HIP焼結は大気またはアルゴン雰
囲気で行い、その温度は通常、常圧焼結時の温度より5
0℃程度低い温度に設定する。こうして得られた焼結体
は、殆ど気孔のない緻密なものなので、研磨加工によっ
て滑らかな表面に加工できる。
【0027】図2に示す試験装置を用いて油中、水中で
の転動疲労試験を行い、上記複合セラミック材料からな
る焼結体の転がり性能評価(耐荷重性評価)を行った。
この転動疲労試験は、図2に示すように、平板状の試験
片(試料)の上を3個の玉が転がる方式である。油中の
試験では、金属(SUJ2)製の玉を用い、250Kg
fの荷重でスピンドル油#60を用いて試験を実施し
た。水中の試験では、セラミック(窒化珪素)製の玉を
用い、100Kgfの荷重で水道水を用いて試験を実施
した。回転数は1200r.p.m.で、玉の破損が発生した
場合は、適宜交換し、試料平板の破損が発生するまで試
験を実施した。なお、保持器は黄銅製のものを用いた。
繰り返し応力によって、一定時間の後に、試料には剥離
が生じたり、摩耗が生じたりする。その結果、試験装置
の振動が大きくなる。そこで、その振動を検知し、振動
が検知されるまでの時間をその試料の寿命とした。
【0028】最初の試験では、アルミナとジルコニアの
混合割合をいろいろと変化させた試料No.1〜6を用
意し、それらの寿命を調べた。表1はこの試験結果を示
したものである。
【0029】
【表1】
【0030】試料No.1と試料No.6は比較例、試
料No.2〜5は本発明の実施例である。アルミナ含有
量が95体積%よりも多くジルコニア含有量が5体積%
よりも少ない試料1(比較例)の場合には、平均表面粗
さRaが0.05μm以下、最大表面粗さRmaxが0.
4μmと所定の値(Ra=0.1μm,Rmax=0.4
μm)以下であり、十分滑らかな表面を有するにも拘わ
らず、寿命は48時間と非常に短かった。これは、ジル
コニア含有量が余りにも少ないために、複合化による機
械的強度向上の効果が十分に得られないためだと考えら
れる。また、アルミナのみ、あるいはそれに近い状態で
は、たとえ焼結体が緻密になっていて滑らかな表面を有
していても、荷重下での玉の転動によって、アルミナ粒
子の脱落が生じるためと思われる。
【0031】また、アルミナの含有量が40体積%より
も少なくジルコニアの含有量が60体積%よりも多い試
料No.6(比較例)の場合には、油中の試験では実施
例に対する寿命の低下はわずかであったが、水中の試験
においては寿命の低下が顕著であった。この原因は、ジ
ルコニアの相変態に起因する母材の強度低下と考えられ
る。
【0032】これに対して、アルミナとジルコニアの含
有量(体積%)がそれぞれ95/5、80/20、60
/40、40/60である試料No.2〜5(実施例)
の場合には、表面粗さがRaで0.05以下、Rmax
で0.4以下の試料で油中での試験を行った結果、寿命
はそれぞれ、118時間、180時間、230時間、2
05時間と、両比較例に比べて格段に長く、中でも、ア
ルミナ含有量が40〜80体積%でジルコニア含有量が
60〜20体積%の複合体(試料No.3〜5)が特に
効果のあることが分かった。
【0033】次に、アルミナ80体積%とジルコニア2
0体積%の複合体の平均表面粗さRaを0.05μm以
下とし、最大表面粗さRmaxをいろいろ変化させるこ
とによって、転がり性能(耐荷重性能)に対する最大表
面粗さRmaxの影響を調べた。その結果を表2に示
す。
【0034】
【表2】
【0035】試料No.7〜9は本発明の実施例、試料
No.10は比較例であり、各試料No.についてそれ
ぞれ5個の試料を用意した。表2中、右側の欄には、5
個の試料中、耐久時間つまり寿命の最も長かった試料と
最も短かった試料の耐久時間とを記載している。両数値
の差が大きいほど、同一試料No.における耐久時間に
大きいばらつきがあることを示す。表2から、Rmax
が0.4μm以下である試料No.7〜9(実施例)の
場合には同一試料No.間のばらつきがわずか25〜3
5時間しかなく、したがって信頼性が高いのに対して、
Rmaxが0.4μmを超える試料No.10(比較
例)の場合には、最長寿命が140時間、最短寿命が4
5時間と、同一試料No.間で寿命が大きくばらついて
おり、信頼性に欠けることがわかった。さらに、全体的
傾向として、Rmaxが大きくなるにつれて軸受寿命が
短くなっていることが分かる。そして、Rmaxが0.
4μmを超えている試料No.10(比較例)の場合に
は、Rmaxが0.4μm以下の試料に比べると最長寿
命は100時間前後も短かく、また最短寿命について
は、わずか45時間しかなく、本発明の実施例である試
料No.7〜9の最短寿命が220〜195時間である
のに対して、非常に短い。このことから、最大表面粗さ
Rmaxが軸受の寿命に密接に関係しており、Rmax
が0.4μmを超えると十分な転がり性能を得られない
ばかりか、寿命にばらつきが出て信頼性にも欠けること
がわかった。
【0036】次に、アルミナ80体積%とジルコニア2
0体積%の複合体の最大表面粗さRmaxを0.4μm
以下とし、平均表面粗さRaをいろいろ変化させること
によって、転がり性能(耐荷重性能)に対する平均表面
粗さRaの影響を調べた。その結果を表3に示す。試料
No.11〜14は本発明の実施例、試料No.15は
比較例である。各試料No.についてそれぞれ3個の試
料を用意し、これら3個の寿命の平均をその試料No.
の寿命とした。
【0037】
【表3】
【0038】表3から、Raが大きくなるにつれて寿命
が短くなっていることが分かる。そして、Raが0.1
μmを超えている試料No.15(比較例)の場合に
は、寿命はわずか38時間しかなく、実用に耐えるもの
ではないことが分かった。このことから、Raは0.1
μm以下であるべきであることが分かった。また、Ra
が0.01〜0.05μmの範囲内にある試料No.11
〜13の場合に特に良好な結果(210〜235時間)
が得られたことから、Raは0.1μm以下の範囲の中
でも特に0.05μm以下において効果のあることがわ
かった。
【0039】以上の試験結果において、Raがたとえ
0.1μm以下であっても、Rmaxが0.4μmよりも
大きいと耐久性(寿命)のばらつきが大きくなり、Rm
axが0.4μm以下であっても、Raが0.1μmより
も大きいと平均的な耐久時間(寿命)が短くなったこと
から、Raの値とRmaxの値がそれぞれ、0.1μm
以下、0.4μm以下という条件を同時に満たす必要が
あることがわかった。
【0040】以上の試験結果は、アルミナを40〜98
体積%、ジルコニアを60〜2体積%含有したアルミナ
/ジルコニア複合セラミック材料が、緻密な焼結体を得
られる点、焼結体の表面を滑らかに加工できる点、ま
た、十分な機械的強度つまり耐荷重性を得られる点で優
れた転がり軸受材料であることを示した。また、転走面
の表面粗さがRaで0.1μm以下、Rmaxで0.4μ
m以下の場合に転がり軸受が耐久性を有することも示し
た。しかも、上記複合セラミック材料は、従来使用され
ていた窒化珪素よりも耐腐蝕性に優れたアルミナおよび
ジルコニアを含有したものである。したがって、本実施
の形態の玉軸受は強い耐蝕性を有する。
【0041】表1〜3に示した試験結果は、アルミナと
ジルコニアとからなる主要構成部のみで100体積%に
した試料に関するものであるが、アルミナの粒成長を抑
制するあるいは焼結を容易にする目的の焼結助剤成分を
不可避不純物と合わせて、100体積%の該主要構成部
に対して1体積%程度加えた場合も同様に、良好な結果
を得ることができた。
【0042】次に、複数種類のセラミック材料を試料と
して、図2に示す試験装置を用いて油中と水中での転動
疲労試験を行い、油中と水中での転がり性能評価(耐荷
重性評価)を行った。この転動疲労試験は、前述の試験
と同様に平板状の試験片(試料)の上を3個の金属製の
玉が転がる方式とし、これらの玉に荷重をかけて、油
(スピンドル油#60)と水道水の中でそれぞれ120
0r.p.m.の回転速度で回転させるもので、荷重の大き
さを100時間毎に40Kgf→100Kgf→250Kgf→
400Kgfと段階的に増加させた。なお、上記玉は、油
中試験ではSUJ2製のものを、水中試験ではSUS4
40C製のものを用いた。そして、保持器は油中試験に
おいても水中試験においても黄銅製のものを用いた。繰
り返し応力によって、一定時間の後に、試料には剥離が
生じたり、摩耗が生じたりする。その結果、試験装置の
振動が大きくなる。そこで、その振動を検知し、振動が
検知されるまでの時間をその試料の寿命とした。試料
は、本実施形態の転がり軸受に使用するHIP焼結され
たアルミナ/ジルコニア複合セラミック材料(Al23
−ZrO2 HIP材)のほか、比較例として、HIP焼
結していないアルミナ/ジルコニア複合セラミック材料
(Al23−ZrO2 非HIP材)、炭化珪素(Si
C)、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、
および窒化珪素(Si34)の計6種類を用いた。油中
での試験結果を図3に、水中での試験結果を図4に示
す。
【0043】図3に示すように、油中では、やはり窒化
珪素が最も優れた転がり性能を発揮し、荷重が400K
gfに変わって100時間を経過、つまり、試験開始か
ら400時間を経過しても異常は検知されなかった(図
中、○印はそこで試験が打ち切られたことを示す)。一
方、本実施の形態である転がり軸受の材料であるHIP
焼結されたアルミナ/ジルコニア複合セラミック材料
(以下、アルミナ/ジルコニアHIP材という)は、4
00Kgfの荷重には耐えられなかったものの、250
Kgfの荷重に対しては異常を示さず、耐久時間が30
0時間余りと、転がり軸受材料として満足の行くもので
あることを示した。このアルミナ/ジルコニアHIP材
の寿命は、優れた機械的強度を有するとされるジルコニ
ア単体が荷重250Kgf下で損傷してしまい200時
間余りの寿命しかなかったのに比べるとほぼ100時間
も長く、このことより、アルミナ/ジルコニアHIP材
がジルコニア単体からなるセラミックスよりも転がり軸
受材料として優れたものであることがわかる。
【0044】一方、水中での試験では、図4から明らか
なように、アルミナ/ジルコニアHIP材が最も優れた
耐久性を示した。ジルコニア単体では、水との反応によ
り結晶系が正方晶から単斜晶に変化し、このときの体積
変化により機械的強度が低下してしまうが、アルミナと
の複合体の場合には100Kgfの荷重下において窒化
珪素よりも60時間以上も耐久時間が長かった。アルミ
ナ/ジルコニアHIP材は、その成分であるアルミナも
ジルコニアも窒化珪素よりも高い耐蝕性を有することか
ら、それ自身高い耐蝕性を有する上、油中では窒化珪素
には劣るものの、水中においては窒化珪素よりも優れた
耐久性を有する。したがって、この材料で形成した本実
施の形態の転がり軸受は、窒化珪素では対応できない強
い腐蝕性を有する薬液の中においても、長期にわたって
良好に機能できる。なお、この場合、複合セラミック材
料の主要構成部においてアルミナの含有量は40〜98
体積%、ジルコニアの含有量は60〜2体積%の範囲に
する必要がある。ジルコニアの含有量が、60体積%を
越えると表1に示したように水中での寿命が極端に低下
する。
【0045】なお、アルミナ/ジルコニアHIP材が水
中において良好な耐久性を有する理由は必ずしも明らか
でないが、HIP処理によりアルミナ/ジルコニア材の
機械強度が向上することと、水中においては、非酸化物
である窒化珪素より酸化物であるアルミナ/ジルコニア
HIP材の方が水となじみ易く、摩擦係数も小さいため
ではないかと考えられる。
【0046】以上、内輪1と外輪2と玉3の全体を上記
アルミナ/ジルコニア複合セラミック材料で形成した実
施の形態について説明したが、内輪1と外輪2と玉3の
それぞれの転走面のみ、つまり、軌道面1a,2aと玉
3の表面のみをこの材料で形成するようにし、その他の
部分は他の成分からなるセラミックで形成してもよい。
あるいは、上記と同一の成分を用いるが、転走面とその
他の部分とで混合比のみを変えるようにしてもよい。ま
た、内外輪1、2の表面部分全体を上記アルミナ/ジル
コニア複合セラミック材料で形成し、内部を金属で形成
することもできる。
【0047】なお、上記説明はラジアル玉軸受について
行ったが、本発明はそれ以外のあらゆる転がり軸受に適
用できることは言うまでもない。
【0048】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1の転
がり軸受の転走面を形成しているアルミナとジルコニア
との複合セラミック材料は、耐蝕性に非常に優れ、表面
加工性にも機械的強度にも優れ、かつ、水中におけるジ
ルコニアの結晶変態に起因する強度低下も少ないので、
請求項1の転がり軸受は、窒化珪素製の転がり軸受では
対応できないような非常に腐蝕性の強い薬液中でも長期
にわたって良好に作動することができる。
【0049】また、上記複合セラミック材料がHIP焼
結されたものである請求項2の転がり軸受は、HIP焼
結されていない同様の材料に比べて、良好な転がり性能
したがって耐久性を有することができる。
【0050】また、請求項3の転がり軸受は、上記転走
面の表面粗さが、平均粗さRaで0.1μm以下かつ最
大粗さRmaxで0.4μm以下であるので、ばらつき
のない優れた耐久性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態であるラジアル玉軸受
の断面図である。
【図2】 転動疲労試験を行うための試験装置を示す図
である。
【図3】 油中での試験結果を示したグラフである。
【図4】 水中での試験結果を示したグラフである。
【符号の説明】
1…内輪、1a…内輪の軌道面、2…外輪、2a…外輪
の軌道面、3…転動体、4…保持器。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内輪と外輪と転動体との少なくとも転走
    面が複合セラミック材料で形成されており、上記複合セ
    ラミック材料は、アルミナとジルコニアとからなる主要
    構成部を備え、上記主要構成部においてアルミナ含有量
    が40〜98体積%、ジルコニア含有量が60〜2体積
    %であり、さらに、上記主要構成部に対する割合が1体
    積%未満である非主要構成部を備えることができること
    を特徴とする転がり軸受。
  2. 【請求項2】 上記複合セラミック材料は熱間静水圧プ
    レス法で焼結されたものであることを特徴とする請求項
    1に記載の転がり軸受。
  3. 【請求項3】上記転走面は、表面粗さが平均粗さRaで
    0.1μm以下かつ最大粗さRmaxで0.4μm以下であ
    ることを特徴とする請求項1また2に記載の転がり軸
    受。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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