JP3741844B2 - 耐蝕転がり軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強い腐食性を有する薬液中などでの使用に適した耐蝕転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミック材料である窒化珪素(Si3N4)が優れた転がり軸受材料であることは、従来から知られている。窒化珪素の緻密な焼結体で形成した転動体および内外輪は軽量であり、また、耐熱性、耐蝕性、耐焼付性にも優れているため、高速回転や腐食環境等、通常の鋼製軸受では対応できない用途で幅広く実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような窒化珪素も、非常に強い酸やアルカリに対しては腐蝕が発生するため、非常に強い腐蝕性を有する薬液中などで使用する転がり軸受の材料としては用いることができない。
【0004】
窒化珪素よりも耐蝕性に優れたセラミック材料としては、アルミナ(Al2O3)、炭化珪素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)(特に、強度に優れた正方晶ジルコニア)等が考えられる。
【0005】
しかし、アルミナは、窒化珪素に比べると機械的強度が低く、したがって窒化珪素よりも耐荷重性に劣る。さらに、表面を滑らかに研磨することが困難であるため、アルミナ単体からなるセラミック材料を転がり軸受材料として使用することはできない。
【0006】
また、炭化珪素も、アルミナと同様、窒化珪素に比べると機械的強度が低く、したがって窒化珪素よりも耐荷重性に劣る。しかも、緻密に焼結することが難しいので、表面の滑らかな転動体を形成するのが困難である。このため、炭化珪素単体からなる材料も、転がり軸受材料としては不向きである。
【0007】
一方、ジルコニアは、機械的強度にも表面加工性にも優れ、油を潤滑剤とする転がり軸受材料試験では、窒化珪素に次ぐ優れた耐久性を有することも確かめられている。ところが、ジルコニアは、応力により、または、水との反応により、結晶系が正方晶から単斜晶に変化し、この結晶変態に伴う大きな体積変化により強度が低下する不具合がある。このため、ジルコニアは、耐水性と耐蝕性とが同時に要求される用途、つまり、腐食性薬液中での実用は困難となっている。
【0008】
つまり、現在までのところ、窒化珪素製転がり軸受では対応できない強い腐蝕性環境にも対応できる転がり軸受は開発されていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、従来使用されていた窒化珪素よりも耐蝕性が高く、しかも十分な耐荷重性を有し、したがって、非常に強い腐蝕性を有する薬液中などでも長期にわたって良好な軸受性能を発揮できる耐蝕転がり軸受を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の耐蝕転がり軸受(以下、単に「転がり軸受」とも言う。)は、内輪と外輪と転動体との少なくとも転走面がセラミックからなり、
このセラミックは、主要構成部としてのアルミナ50〜90体積%と同じく主要構成部としての炭化チタン50〜10体積%とを有し、さらに焼結助剤と不可避不純物を、上記主要構成部の全てに対して5体積%未満含み、破壊靱性値が4 . 0MPa・m 1/2 以上であり、
上記転走面は、表面粗さが平均粗さRaで0 . 0 1 〜0 . 08μ m かつ最大粗さRmaxで0 . 08〜0 . 38μ m であり、
上記セラミックは、上記主要構成部の材料粉末と焼結助剤との混合粉体を焼結してなることを特徴としている。
【0011】
本明細書で使用している用語「転走面」は、内輪および外輪においては、転動体が転動する軌道面、また、転動体においては、上記軌道面に転がり接触する転動体表面のことを言うものとする。
【0012】
セラミック(以下、セラミック材料とも言う。)の全ての主要構成部に占めるアルミナ含有量の割合の上限を90体積%および炭化チタン含有量の割合の下限を10体積%とする理由は、滑らかな転走面を転がり軸受に付与すべく良好な研磨加工性を得るためである。転がり寿命は転走面の表面粗さと材料強度に依存する傾向がある。強度特性の中でも脆性材料であるセラミック材料では、破壊靭性値が転がり寿命に大きく影響する。したがって、セラミック材料を転がり軸受に用いる場合、転走面の表面が粗いか又は転走面における材料の破壊靭性値が低いと、寿命が短くなってしまう。ところが、本発明者が行った実験結果によると、アルミナ含有量が90体積%よりも多い(つまり、炭化チタン含有量が10体積%よりも少ない)と、最大表面粗さRmaxが0.4μm以下になるように焼結体を研磨することが難しかった。また、たとえ、表面を滑らにしても、転動試験でアルミナ粒子の脱落が生じた。このことから、アルミナ含有量が90体積%を超える転がり軸受は耐久性に劣ることが分かった。
【0013】
また、セラミック材料の全主要構成部に占めるアルミナ含有量の割合の下限を50体積%および炭化チタン含有量の割合の上限を50体積%とする理由は、緻密な焼結体を得るためである。本発明者が行った実験結果によると、成形されたセラミック材料に常圧焼結と加圧焼結を施す場合、炭化チタン含有量が50体積%よりも多い、つまり、アルミナ含有量が50体積%よりも少ないと、常圧焼結工程において、開気孔を無くすように焼結することができず、従って、続く加圧焼結工程で、殆ど気孔の無い緻密な焼結体を得ることができなかった。その結果、研磨加工によって滑らかな転走面を得ることができず、このようにして得られた転がり軸受は耐久性に劣った。
【0014】
一方、アルミナ含有量および炭化チタン含有量が上記範囲内にあるときは、転走面の表面粗さを所定範囲(平均粗さRaで0 . 0 1 〜0 . 08μ m 、最大粗さRmaxを0 . 08〜0 . 38μ m )内に抑えることができ、また転走面における破壊靭性値も所定値(4 . 0MPa・m 1/2 )以上にすることができ、転がり軸受として良好な耐久性を得ることができた。しかも、成分の1つであるアルミナは窒化珪素よりも耐蝕性に優れたものであることから、請求項1の転がり軸受は耐蝕性に非常に優れ、窒化珪素では対応できない腐食性環境においても、長期に使用することができる。
【0015】
また、請求項2の耐蝕転がり軸受(以下、単に「転がり軸受」とも言う。)は、内輪と外輪と転動体との少なくとも転走面がセラミックからなり、
このセラミックは、主要構成部としてのアルミナと同じく主要構成部としての炭化チタンと同じく主要構成部としての炭化珪素とを有し、前記アルミナの含有量が50〜90体積%、炭化チタンと炭化珪素との合計含有量が50〜10体積%であり、さらに焼結助剤と不可避不純物を、上記主要構成部の全てに対して5体積%未満含み、破壊靱性値が4 . 0MPa・m 1/2 以上であり、
上記転走面は、表面粗さが平均粗さRaで0 . 0 1 〜0 . 08μ m かつ最大粗さRmaxで0 . 08〜0 . 38μ m であり、
上記セラミックは、上記主要構成部の材料粉末と焼結助剤との混合粉体を焼結してなることを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は、いわば、請求項1の転がり軸受の少なくとも転走面を形成するセラミック材料成分である炭化チタンの一部を、炭化珪素で置き換えたものである。炭化珪素は、前述したように窒化珪素に比べて耐蝕性に優れ、また機械的強度についても窒化珪素には劣るものの十分な強度を有しているものである。発明者の行った実験によって、請求項2の転がり軸受も、請求項1の転がり軸受と同程度の転がり軸受性能を有することが確かめられた。
【0017】
請求項3の耐蝕転がり軸受は、非常に強い酸またはアルカリ薬液中で使用されるものである。
【0018】
上述したように、成分の1つであるアルミナ、炭化珪素は窒化珪素よりも耐蝕性に優れたものであることから、本願発明の転がり軸受は耐蝕性に非常に優れ、窒化珪素では対応できない腐食性環境においても、長期に使用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の耐蝕転がり軸受の一実施の形態であるラジアル玉軸受を示した断面図であり、1は外周面に軌道面1aを有する内輪、2は内周面に軌道面2aを有する外輪、3は上記軌道面1aと2aの間に周方向に一定間隔をあけて設けられた複数の転動体としての玉、そして4は保持器である。上記ラジアル玉軸受の転走面、つまり、上記両軌道面1a,2aおよび各玉3の表面の表面粗さは、平均表面粗さRaで0.1μm以下、最大表面粗さRmaxで0.4μm以下である。
【0021】
上記内輪1、外輪2、および、玉3の各々は、アルミナと炭化チタンとからなる主要構成部を備えたセラミック材料からなる。このセラミック材料の全主要構成部100体積%に占めるアルミナ含有量の割合は50〜90体積%の範囲内にあり、炭化チタン含有量の割合は50〜10体積%の範囲内にある。セラミック材料は、この主要構成部のみで100体積%となるようにしてもよいが、焼結を促進するための焼結助剤となる成分を不可避不純物と合わせて、100体積%の該主要構成部に対して5体積%を超えない範囲で加えてもよい。焼結助剤としては、各種の希土類酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ等の金属酸化物を用いることができる。上記セラミック材料は破壊靭性値がおおむね4.0MPa・m1/2以上である。
【0022】
上記アルミナ/炭化チタンセラミック製の内輪1と外輪2と玉3は、たとえば次のような方法によって製造できる。
【0023】
まず、アルミナの粉末と炭化チタンの粉末とを上記範囲内で所定の割合となるように秤量し、通常の方法でボールミルで混合(このとき、上述した範囲内で焼結助剤を加えてもよい。)、乾燥した後、その混合粉体を内輪、外輪および玉に成形し、真空または不活性ガス、たとえばアルゴン雰囲気中で1600℃〜1800℃で常圧焼結する。次いで、熱間静水圧プレス(HIP:Hot Isostatic Pressing)法による焼結を行い、実質的に理論密度の複合焼結体を得る。そして、こうして得られた焼結体の表面を研磨加工によって滑らかにすることにより、上記内輪1、外輪2、玉3を得るのである。
【0024】
上記混合粉体の成形法としては、乾燥した粉末を所定の形状に合わせて一軸プレスする方法、静水圧プレスする方法、スリップキャスト法、射出成形法及びこれらの組み合せ等を用い得る。また、上記常圧焼結の目的は、次いで行うHIP焼結において実質的に理論密度の焼結体が得られるように、開気孔が実質的になくなるようにすることであり、通常、相対密度が95%以上となるように温度と時間とを選ぶ。その温度と時間は、複合体の成分の比率で変わり、アルミナの割合が高い場合には1600℃近くがよく、アルミナの割合が小さいほど1800℃に近い温度にする。上記HIP焼結は不活性雰囲気、通常、アルゴン雰囲気で行い、その温度は1500℃〜1700℃である。こうして得られた焼結体は、殆ど気孔のない緻密なものなので、研磨加工によって滑らかな表面に加工できる。
【0025】
図2に示す試験装置を用いて油中での転動疲労試験を行い、上記セラミック材料からなる焼結体の転がり性能評価(耐荷重性評価)を行った。この転動疲労試験は、図2に示すように、平板状の試験片(試料)の上を3個の金属(SUJ2)製の玉が転がる方式とし、これらの玉に160Kgfの荷重をかけて、油(スピンドル油#60)の中で1200r.p.m.の回転速度で回転させるものである。なお、保持器は黄銅製のものを用いた。繰り返し応力によって、一定時間の後に、試料には剥離が生じたり、摩耗が生じたりする。その結果、試験装置の振動が大きくなる。そこで、その振動を検知し、振動が検知されるまでの時間をその試料の寿命とした。
【0026】
最初の試験では、アルミナと炭化チタンの混合割合をいろいろと変化させた試料No.1〜7を用意し、それらの寿命を調べた。表1はこの試験結果を示したものである。
【0027】
【表1】
【0028】
試料No.1と試料No.7は比較例、試料No.2〜6は本発明の実施例である。アルミナの含有量が90体積%を超える試料1(比較例)の場合には、平均表面粗さRaが0.05μm以下、最大表面粗さRmaxが0.2μmと所定の値(Ra=0.1μm,Rmax=0.4μm)より小さく、十分滑らかな表面を有するにも拘わらず、寿命は45時間と非常に短かった。これは、アルミナのみ、あるいはそれに近い状態では、たとえ焼結体が緻密になっていて滑らかな表面を有していても、荷重下での玉の転動によって、アルミナ粒子の脱落が生じるためと思われる。
【0029】
また、炭化チタンの含有量が50体積%を超えている試料No.7(比較例)の場合には、常圧焼結で相対密度を95%以上にすることができず、その結果HIP焼結を行っても緻密にならず、研磨加工によって滑らかな面を得ることができなかった。つまり、Raは0.031μmと所定値(0.1μm)よりも小さかったが、Rmaxは0.44μmと所定値(0.4μm)よりも大きかった。この結果、わずか7時間の寿命しかなかった。
【0030】
これに対して、アルミナと炭化チタンの含有量(体積%)がそれぞれ90/10、80/20、70/30、60/40、50/50である試料No.2〜6(実施例)の場合には、寿命はそれぞれ、150時間、290時間、310時間、220時間、130時間と、比較例に比べて格段に長く、中でも、アルミナ80体積%と炭化チタン20体積%との複合体(試料No.3)とアルミナ70体積%と炭化チタン30体積%との複合体(試料No.4)と、アルミナ60体積%と炭化チタン40体積%との複合体(試料No.5)が特に効果のあることが分かった。このことから、アルミナ含有量は80〜60体積%、炭化チタンは20〜40体積%の範囲内にあるのが一層好ましいと言える。
【0031】
次に、アルミナ70体積%と炭化チタン30体積%の複合体の平均表面粗さRaを0.05μm以下とし、最大表面粗さRmaxをいろいろ変化させることによって、転がり性能(耐荷重性能)に対する最大表面粗さRmaxの影響を調べた。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
試料No.8〜11は本発明の実施例、試料No.12〜13は比較例であり、各試料No.についてそれぞれ5個の試料を用意した。表2中、右側の欄には、5個の試料中、耐久時間の最も長かった試料と最も短かった試料の耐久時間とを記載している。両数値の差が大きいほど、同一試料No.における耐久時間に大きいばらつきがあることを示す。表2から、Rmaxが0.4μm以下、より正確には、0 . 08〜0.38μmである試料No.8〜11(実施例)の場合にはばらつきが50〜80時間であるのに対して、Rmaxが0.4μmを超える試料12〜13(比較例)の場合には耐久時間が120〜147時間と大きくばらついており、信頼性に欠けることがわかった。さらに、試料No.9は試料No.8よりもRmaxが大きいにも拘らず寿命は若干延びているという例外はあるものの、総じて、Rmaxが大きくなるにつれて軸受寿命が短くなっていることが分かる。そして、Rmaxが0.4μmを超えている試料No.12〜13(比較例)の場合には、最短寿命がそれぞれ120時間〜63時間しかなく、本発明の実施例である試料No.8〜11の最短寿命が280〜200時間であるのに対して、非常に短い。このことから、最大表面粗さRmaxが軸受の寿命に密接に関係しており、Rmaxが0.4μmを超えると十分な転がり性能を得られないばかりか、寿命にばらつきが出て信頼性にも欠けることがわかった。
【0034】
次に、アルミナ70体積%と炭化チタン30体積%の複合体の最大表面粗さRmaxを0.4μm以下とし、平均表面粗さRaをいろいろ変化させることによって、転がり性能(耐荷重性能)に対する平均表面粗さRaの影響を調べた。その結果を表3に示す。試料No.14〜19は本発明の実施例、試料No.20は比較例である。各試料No.についてそれぞれ3個の試料を用意し、これら3個の寿命の平均をその試料No.の寿命とした。
【0035】
【表3】
【0036】
表3から、試料No.15は試料No.14よりもRaが大きいにも拘らず寿命は若干延びているという例外はあるものの、総じて、Raが大きくなるにつれて寿命が短くなっていることが分かる。そして、Raが0.1μmを超えている試料No.20(比較例)の場合には、寿命はわずか21時間しかなく、実用に耐えるものではないことが分かった。このことから、Raは0.1μm以下、より正確には0.01〜0.08μmであるべきであることが分かった。また、Raが0.01〜0.05μmの範囲内にある試料No.14〜17の場合に特に良好な結果が得られたことから、Raは0.08μm以下の範囲の中でも特に0.05μm以下において効果のあることがわかった。
【0037】
以上の試験結果において、Raがたとえ0.1μm以下であっても、Rmaxが0.4μmよりも大きいと耐久性のばらつきが大きくなり、Rmaxが0.4μm以下であっても、Raが0.1μmよりも大きいと平均的な耐久時間が短くなったことから、Raの値とRmaxの値がそれぞれ、0.1μm以下、0.4μm以下、より好ましくは、Raの値とRmaxの値がそれぞれ、それぞれ、0.01〜0.08μm、0.08〜0.38μmという条件を同時に満たす必要があることがわかった。
【0038】
以上の試験結果は、アルミナを90〜50体積%、炭化チタンを10〜50体積%含有したアルミナ/炭化チタンセラミックが、緻密な焼結体を得られる点、焼結体の表面を滑らかに加工できる点、また、十分な機械的強度つまり耐荷重性を得られる点で優れた転がり軸受材料であることを示した。また、転走面の表面粗さがRaで0.1μm以下、Rmaxで0.4μm以下の場合に転がり軸受が耐久性を有することも示した。しかも、上記セラミック材料は、従来使用されていた窒化珪素よりも耐腐食性に優れたアルミナを含有したものである。したがって、本実施の形態の玉軸受は、強い腐食性の薬液中などでも長期間にわたって使用することができる。
【0039】
表1〜3に示した試験結果は、アルミナと炭化チタンとからなる主要構成部のみで100体積%にした試料に関するものであるが、焼結助剤や不可避不純物が100体積%の該主要構成部に対し多くても5体積%未満まで加わった場合も、同様に良好な結果を得ることができた。
【0040】
以上、内輪1と外輪2と玉3の全体を上記アルミナ/炭化チタンセラミックで形成した実施の形態について説明したが、内輪1と外輪2と玉3のそれぞれの転走面のみ、つまり、軌道面1a,2aと玉3の表面のみをこの材料で形成するようにし、その他の部分は他の成分からなるセラミックで形成してもよい。あるいは、上記と同一の成分を用いるが、転走面とその他の部分とで混合比のみを変えるようにしてもよい。また、内外輪1、2の表面部分全体を上記アルミナ/炭化チタンセラミックで形成し、内部を金属で形成することもできる。
【0041】
また、上記セラミック材料の成分である炭化チタンの一部を炭化珪素で置き換えて、炭化チタンと炭化珪素との合計含有量が主要構成部全体の10〜50体積%となるようにしてもよい。ここでは、試験結果を示していないが、この場合にも、上記実施の形態と同様の試験結果を得ることができ、その有効性を確認することができた。
【0042】
なお、上記説明はラジアル玉軸受について行ったが、本発明はそれ以外のあらゆる転がり軸受に適用できることは言うまでもない。
【0043】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1および2の耐蝕転がり軸受は、従来使用されていた窒化珪素よりも耐蝕性に優れる上、破壊靱性値が4 . 0MPa・m 1/2 以上であり、転がり軸受として十分な耐荷重性を有することができるので、窒化珪素製の転がり軸受では対応できないような強い腐食性の薬液中でも使用することができる。
【0044】
さらに、上記転走面の表面粗さが、平均粗さRaで0 . 0 1 〜0 . 08μ mかつ最大粗さRmaxで0 . 08〜0 . 38μ mであるので、ばらつきのない優れた耐久性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態であるラジアル玉軸受の断面図である。
【図2】 転動疲労試験を行うための試験装置を示す図である。
【符号の説明】
1…内輪、1a…内輪の軌道面、2…外輪、2a…外輪の軌道面、3…転動体、4…保持器。
Claims (3)
- 内輪と外輪と転動体との少なくとも転走面がセラミックからなり、
このセラミックは、主要構成部としてのアルミナ50〜90体積%と同じく主要構成部としての炭化チタン50〜10体積%とを有し、さらに焼結助剤と不可避不純物を、上記主要構成部の全てに対して5体積%未満含み、破壊靱性値が4 . 0MPa・m 1/2 以上であり、
上記転走面は、表面粗さが平均粗さRaで0 . 0 1 〜0 . 08μ m かつ最大粗さRmaxで0 . 08〜0 . 38μ m であり、
上記セラミックは、上記主要構成部の材料粉末と焼結助剤との混合粉体を焼結してなることを特徴とする耐蝕転がり軸受。 - 内輪と外輪と転動体との少なくとも転走面がセラミックからなり、
このセラミックは、主要構成部としてのアルミナと同じく主要構成部としての炭化チタンと同じく主要構成部としての炭化珪素とを有し、前記アルミナの含有量が50〜90体積%、炭化チタンと炭化珪素との合計含有量が50〜10体積%であり、さらに焼結助剤と不可避不純物を、上記主要構成部の全てに対して5体積%未満含み、破壊靱性値が4 . 0MPa・m 1/2 以上であり、
上記転走面は、表面粗さが平均粗さRaで0 . 0 1 〜0 . 08μ m かつ最大粗さRmaxで0 . 08〜0 . 38μ m であり、
上記セラミックは、上記主要構成部の材料粉末と焼結助剤との混合粉体を焼結してなることを特徴とする耐蝕転がり軸受。 - 非常に強い酸またはアルカリ薬液中で使用される請求項1または2に記載の耐蝕転がり軸受。
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