JP4928997B2 - 耐摩耗性部材およびそれを用いた耐摩耗性機器 - Google Patents

耐摩耗性部材およびそれを用いた耐摩耗性機器 Download PDF

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本発明は、水潤滑下で使用される耐摩耗性部材およびそれを用いた耐摩耗性機器に関する。
耐摩耗性部材は、ねじ、ドリル等の工作具、ベアリングボール、シリンダ等のエンジン部品、半導体製造用冶工具など様々なものが挙げられる。例えば、ベアリングボールについては従来、軸受鋼(SUJ2)が用いられてきたが耐摩耗性が劣ることから近年はセラミックスが用いられるようになっている。
例えば、ベアリングボールはハードディスクドライブ等の精密電子機器から自動車等の動力機器などその使用分野は多岐に渡っている。精密電子機器や動力機器は一般にグリースや潤滑油等の潤滑剤を用いてベアリングボールと軸受けまたは軸との摺動をスムーズにしている。
一方、ベアリング(軸受け)部材としては潤滑剤を使用できない環境下で使われるものがある。例えば、海中で使われるベアリング部材や水ポンプなどの水が存在する環境下では潤滑油を用いると環境汚染または健康被害の原因となるおそれがある。これを防ぐにはベアリング部材の密閉構造が必要であり、コストアップの要因となる。そのため、水が存在する環境下(水潤滑下)で使用したとしても優れた耐摩耗性を示す部材が求められている。
水潤滑下では金属は腐食されやすいので、セラミックスを適用することが検討されている。例えば、特開2004−84873号公報(特許文献1)ではジルコニア(ZrO)を含有したアルミナ(Al)が開示されている。特許文献1によれば196Nの荷重下でアルミナ焼結体は優れた耐久性を示している。また、特開平9−30858号公報(特許文献2)でもアルミナ焼結体を用いることにより水潤滑下での耐摩耗性を得ている。
特開2004−84873号公報 特開平9−30858号公報 特開2001−328869号公報 特開2003−34581号公報
しかしながら、アルミナ焼結体では荷重が小さいうちは優れた耐久性を示すものの、荷重が大きくなると耐久性が不十分であった。特に荷重が200N以上と大きくなると耐久性は悪かった。
荷重が大きくなっても優れた耐摩耗性を示す材料として特開2001−328869号公報(特許文献3)にあるような窒化けい素焼結体が挙げられる。特許文献1では窒化けい素焼結体は耐久性が不十分との見解であったが、本発明では所定の条件を満たすことにより窒化けい素焼結体を用いたとしても水潤滑下で優れた耐摩耗性を有することを見出したものである。
本発明の耐摩耗性部材は、水潤滑下で使用される耐摩耗性部材において、前記耐摩耗性部材は、窒化けい素を75〜97質量%、Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の少なくとも1種を金属元素換算で0.2〜5質量%、残部をSi−R−Al−O−N化合物(ただし、Rは希土類元素)を主とする粒界相を有する窒化けい素焼結体を具備すると共に、前記Si−R−Al−O−N化合物の焼結体内部の存在比率M1と表面の存在比率M2との比M2/M1が0.9〜1.1の範囲内であることを特徴とする。
また、前記M2/M1が1.0〜1.1の範囲内であることが好ましい。また、前記Si−R−Al−O−N化合物が7〜15質量%であることが好ましい。また、耐摩耗性部材としてベアリングボールに好適である。
また、本発明の耐摩耗性機器は、本発明の耐摩耗性部材を用いたことを特徴とする。また、耐摩耗性部材に荷重がかかりながら稼動する使用環境下に好適である。また、荷重が200N以上であっても優れた特性を示す。また、耐摩耗性部材が水に触れている状態で稼動する環境下にも好適である。
本発明の耐摩耗性部材は水潤滑下においても優れた耐摩耗性を示す。また、荷重のかかる環境下においても優れた耐摩耗性を得ることができる。そのため、本発明の耐摩耗性機器は水潤滑下においても優れた耐摩耗性を示し長寿命を得ることができる。
本発明の耐摩耗性部材は、水潤滑下で使用される耐摩耗性部材において、前記耐摩耗性部材は、窒化けい素を75〜97質量%、Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の少なくとも1種を金属元素換算で0.2〜5質量%、残部をSi−R−Al−O−N化合物(ただし、Rは希土類元素)を主とする粒界相を有する窒化けい素焼結体を具備すると共に、前記Si−R−Al−O−N化合物の焼結体内部の存在比率M1と表面の存在比率M2との比M2/M1が0.9〜1.1の範囲内であることを特徴とするものである。
まず、「水潤滑下で使用される」とは耐摩耗性部材の摺動面(摩耗面)に直接水が触れる環境のことを示す。直接触れる水は液体に関わらず蒸気であってもよい。また、直接触れる水は水道水、海水、純水や、有機物等を含んだ水溶液であってもよい。また、直接水に触れている環境は、常に触れている状態に限定されるものではなく、耐摩耗性機器が稼動している最中に一定時間のみ水に触れる環境も含まれるものとする。
次に、窒化けい素焼結体は、窒化けい素を75〜97質量%、Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の少なくとも1種を金属元素換算で0.2〜5質量%、残部をSi−R−Al−O−N化合物(ただし、Rは希土類元素)からなる粒界相を有する窒化けい素焼結体を具備すると共に、前記Si−R−Al−O−N化合物の焼結体内部の存在比率M1と表面の存在比率M2との比M2/M1が0.9〜1.1の範囲内であることを特徴とする。
窒化けい素は75〜97質量%含有するものである。75質量%未満では窒化けい素粒子の量が少なすぎて耐摩耗性が低下する。一方、97質量%を越えても粒界相が弱いので耐摩耗性が低下する。
Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の少なくとも1種を金属元素換算で0.2〜5質量%で含有するものである。Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moの化合物としては、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物が挙げられる。これら金属単体または化合物は、後述するSi−R−Al−O−N化合物と化合物を形成せず、粒界相中に金属単体または化合物として独立して存在するので粒界相を強化することができる。
Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の少なくとも1種の含有量は金属元素換算で0.2〜5質量%である。0.2質量%未満では添加の効果がなく、5質量%を超えるとそれ以上の効果が得られないだけでなく粒界相のつながりを破壊してしまうので返って強度が低下する。Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の中ではTiN、TiCNが好ましい。また、焼結時の反応によりTiN、TiCNになったものが好ましい。
Si−R−Al−O−N化合物(ただし、Rは希土類元素)を主成分とする粒界相において、R元素は希土類元素を示す。希土類元素としてはY、Er、Smなどが好ましい。Si−R−Al−O−N化合物は、Si(けい素)、R(希土類元素)、Al(アルミニウム)、O(酸素)、N(窒素)が複合的に化合物となったものを示すので係数は特に限定されるものではない。また、Si,R,Al,O,N以外の元素が化合物として含まれていても良い。
また、各構成成分はEPMAなどにより分析可能である。EPMAにより各元素のマッピングを行い、同じ場所に各元素が存在すれば化合物となっていると判断してよいものとする。
また、Si−R−Al−O−N化合物の含有量は、窒化けい素とTi,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物を除いた残部である。好ましくは7〜15質量%である。
このような窒化けい素焼結体において、前記Si−R−Al−O−N化合物の焼結体内部の存在比率M1と表面の存在比率M2との比M2/M1が0.9〜1.1の範囲内であることを特徴とするものである。
焼結体内部の存在比率M1を測定する際は、焼結体の中心部を測定するのが好ましい。また、表面の存在比率M2を測定する際は摺動面となる部位の存在比率を測定することが好ましい。例えば、ベアリングボールのように球体の場合は球体の中心部を測定点とする。また、板状または棒状の部材の場合は厚み方向の中心点付近を測定点とする。また、存在比率とは面積比で示すものでありSEMによる画像解析が有効である。
本発明に用いる窒化けい素焼結体はM2/M1が0.9〜1.1の範囲内である。M2/M1が0.9〜1.1の範囲内ということは焼結体内部と表面部において粒界相の存在比率にバラツキが無いことを意味するものである。窒化けい素焼結体の場合、焼結により粒界相が表面ににじみ出てくる。そのため、通常はM2/M1が1.3以上となる。水潤滑下では、Si−R−Al−O−N化合物が腐食され易く、従来の窒化けい素焼結体では長寿命が得られなかった。そこで本発明では粒界相の存在比率のバラツキを無くすことにより水潤滑下での耐久性を向上させることができることを見出したものである。M2/M1は好ましくは1.0〜1.1、さらには1.0〜1.05の範囲内である。
このような窒化けい素焼結体を具備した耐摩耗性部材は、様々な分野に使用可能である。特に、ベアリングボールのように焼結体の全面が摺動面となる部材に有効である。
本発明の耐摩耗性部材を用いた耐摩耗性機器は水潤滑下において優れた耐摩耗性を示し長寿命化を図ることができる。
また、本発明では窒化けい素焼結体を用いていることから耐摩耗性部材に荷重がかかりながら稼動する耐摩耗性機器であったとしても優れた耐久性を得ることができる。特に荷重が200N以上、さらには300N以上の高荷重下であったとしても優れた耐久性を得ることができる。また、耐摩耗性部材が水に触れている状態で稼動する環境下でも優れた特性を示す。

水潤滑下での耐摩耗性試験として、特許文献3(特開2001−328869号公報)や特許文献4(特開2003−34581号公報)に挙げられたスラスト型転がり疲労寿命試験を用いる。
図1にスラスト型転がり疲労寿命試験機の一例を示す。図中、1は試験装置本体、2および9は軸受鋼板(または板状耐摩耗性部材)、3および8はベアリングボール(または転動ボール)、4はガイド板、5は駆動回転軸、6は保持器、7は水である。
試験試料としてベアリングボール3を用いる場合は、相手材として軸受鋼SUJ2製の板状部材(軸受鋼板2)を使用する。一方、試験試料として板材(板状耐摩耗性部材9)を用いる場合は相手材として軸受鋼SUJ2製のベアリングボール(転動ボール8)を使用する。また、潤滑油としては水を使用する。本発明では試験環境として水道水を使用した。また、ベアリングボールとしては3/8インチ球を直径40mmの軌道上に3個配置し、回転数1200rpmにて耐摩耗性試験を行った。
本発明の耐摩耗性部材は、例えば3/8インチ窒化けい素焼結体製ベアリングボールにて1個あたり荷重500Nを負荷したとしても100時間以上の耐久性を得ることができる。
次に本発明の耐摩耗性部材の製造方法について説明する。本発明の耐摩耗性部材の製造方法は特に限定されるものではないが例えば次のような方法が挙げられる。
まず、窒化珪素粉末、焼結助剤を所定量均一混合した後、造粒、成形、脱脂、焼結する方法である。
各原料粉末の大きさは特に限定されるものではないが、窒化けい素粉末の平均粒径は0.2〜3μm、焼結助剤は平均粒径3μm以下が好ましい。
窒化けい素粉末は酸素含有量1.7質量%以下のα相窒化けい素粉末を90質量%以上含有したものが好ましい。また、窒化けい素粉末は、原料粉全体としては75〜97質量%の範囲となるように混合する。
焼結助剤は、希土類酸化物、酸化アルミニウム、Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の少なくとも1種などが挙げられる。希土類酸化物と酸化アルミニウムは焼結工程において窒化けい素粉末と反応してSi−R−Al−O−N化合物を形成する。希土類酸化物の添加量は0.5〜10質量%、酸化アルミニウムは0.1〜5質量%が好ましい。添加した希土類酸化物と酸化アルミニウムは90%以上がSi−R−Al−O−N化合物となることが好ましい。また、さらに好ましくは97〜100%の範囲でSi−R−Al−O−N化合物となることである。Si−R−Al−O−N化合物になるということは未反応の希土類酸化物や酸化アルミニウムが少ないことを示すものであり、水潤滑下での耐摩耗性の向上につながる。また、希土類酸化物や酸化アルミニウムは焼結時に酸化物となる化合物として添加しても良い。
また、Ti,Hf,Zr,Nb,W,Moまたはその化合物の少なくとも1種は金属元素換算で0.2〜5質量%添加する。
また、その他の焼結助剤としては、Mg、Ca等のアルカリ土類金属の化合物が挙げられ、添加量としては0.1〜3質量%の範囲内が好ましい。
窒化けい素粉末と各種焼結助剤粉末を混合し有機バインダや分散液と混合する。その後、成形する。
成形方法については、一軸プレスやラバープレスなど公知の方法を適用可能である。また、静水圧成形(CIP)も適用可能である。その後、必要に応じ、脱脂工程を行う。
次に、焼結を行う。焼結方法についても、常圧焼結、加圧焼結、熱間静水圧プレス(HIP)焼結が適用可能である。また、各焼結方法を組合せても良い。焼結温度は1600〜1900℃が好ましい。例えば、ベアリングボールのように全面が摺動面となる耐摩耗性部材に関しては、1600〜1900℃で一次焼結を行った後、一次焼結の80%以上の温度以上で2次焼結を行う方法が好ましく。特に2次焼結工程がHIP焼結法であることが好ましい。
また、例えば特許文献3(特開2001−328869号公報)に記載された1300〜1450℃における保持工程を採用してもよい。
焼結工程を経た窒化けい素焼結体は、粒界相が表面に滲み出ており、焼結体の中心部より表面部の方が粒界相が多くなっておりM2/M1が1.3以上となっている。
本発明では、焼結体の表面を研磨し、M2/M1が0.9〜1.1の範囲内となるように調整することが重要である。水により腐食し易い粒界相の量を均一化し、水潤滑下で優れた耐摩耗性を有する耐摩耗性部材を得ることができる。
なお、研磨工程は、例えばベアリングボールとして使用する場合はJIS規格で定められた表面粗さを得るための表面研磨加工を兼ねて行っても良い。
このような製造方法で得られた耐摩耗性部材は、窒化けい素系焼結体中の窒化けい素結晶粒のアスペクト比が5以上の針状結晶が全窒化けい素結晶中の10%以上となる。また、窒化けい素結晶粒の異常粒成長を40μm以下に抑えることができる。粒成長を抑えることができると粒界相のサイズも小さくできるので水潤滑下での耐摩耗性を向上させることができる。
また、粒界相のサイズを小さくできるので硬度HVが1300〜1500の焼結体を得ることができる。さらには、破壊靭性値が6.0MP・m1/2以上、3点曲げ試験における最低抗折強度が700MPa以上、平均抗折強度が900MPa以上、ヤング率が290GPa以上の窒化けい素焼結体を得ることができる。
このような耐摩耗性部材は、水潤滑性および強度に優れているので荷重がかかりながら摺動する耐摩耗性部材に好適である。このような耐摩耗性部材としては、ベアリングボール、エンジン部品、圧延ローラ、切削工具、水中で使われる工具類などが挙げられる。また、ベアリングボールに用いた場合は、2球圧砕強度が100N/mm2以上、さらには200N/mm2以上と優れた特性を得ることができる。また1球圧砕強度が800N/mm2以上と優れた特性を得ることができる。
(実施例)
(実施例1〜4、比較例1〜3)
酸素含有量1.2質量%以下、α相窒化けい素含有量95%以上、平均粒径1.0μm以下の窒化けい素粉末、焼結助剤として、平均粒径1.2μm以下の酸化イットリウム粉末を6質量%、平均粒径1.5μm以下の酸化アルミニウム粉末を4質量%、平均粒径1.0μm以下の酸化チタン粉末を1.5質量%用意した。
これら原料粉を混合、成形した後、脱脂した。次に、窒素雰囲気中1700〜1850℃で3〜5時間常圧焼結した後、1700〜1800℃で0.5〜1.5時間HIP焼結した。
次に、表面を研磨することにより3/8インチ窒化けい素焼結体製ベアリングボールを製造した。研磨後の表面粗さはRa0.3μmに統一した。
各ベアリングボールに関し、表面のSi−Y−Al−O−N化合物の存在比率M1と内部の存在比率M2を測定した。内部の存在比率はベアリングボールを切断して中心部を測定した。また、測定方法としてはEPMAを採用した。
次に各ベアリングボールに対し、水潤滑下での耐摩耗性試験を行った。耐摩耗性試験としては、特許文献4(特開2003−34581号)の図1と同様の試験機を用い、相手材として軸受鋼SUJ2製の板、潤滑油としては水道水を使用する。ベアリングボールは直径40mmの軌道上に3個配置し、回転数1200rpmにて耐摩耗性試験を行った。その際のベアリングボール1個あたりにかかる荷重を0N(無荷重)、150N、300N、500Nと変えて100時間連続稼動させた際の耐摩耗性を調べた。100時間後にベアリングボール3個共に表面に割れ、カケ等の不具合の発生したものを「×」、ベアリングボール1〜2個に不具合が発生したものを「△」、不具合の発生しなかったものを「○」と表示した。
また、比較例3として、ジルコニアを10質量%含有したアルミナ焼結体を用いたものを用意し、同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0004928997
実施例から分かる通り、M2/M1が0.9〜1.1のものは荷重300Nまでは不具合が確認されなかった。また、M2/M1が1.0〜1.1のものは荷重500Nと高負荷の環境下でも優れた耐摩耗性を示した。
一方、比較例1〜2のように粒界相の分散状態にバラツキの多いものは荷重が大きくなると寿命が低下した。また、アルミナボールでは強度が不足しているため300Nの段階で不具合が発生した。この結果から、粒界相の存在比率を制御することが重要であることが分かる。
(実施例5〜8、比較例4〜7)
次に、酸素含有量1.2質量%以下、α相窒化けい素含有量95%以上、平均粒径0.7μm以下の窒化けい素粉末、焼結助剤として、平均粒径1.0μm以下の酸化イットリウム粉末を5質量%、平均粒径1.2μm以下の酸化アルミニウム粉末を5質量%、平均粒径1.0μm以下の酸化チタン粉末を3質量%用意した。
これら原料粉を混合、成形した後、脱脂した。次に、窒素雰囲気中1700〜1850℃で3〜5時間常圧焼結した後、1700〜1800℃で0.5〜1.5時間HIP焼結した。
このような工程を経た後、表面を研磨することによりM2/M1量を調整した縦70mm×横70mm×厚さ1mmの板材を製造した。
各板材に対して水潤滑下での耐摩耗性試験を行った。耐摩耗性試験としては、特許文献4(特開2003−34581号)の図1と同様の試験機を用い、相手材として軸受鋼SUJ2製のベアリングボール、潤滑油としては水道水を使用する。ベアリングボールは直径40mmの軌道上に3個配置し、回転数1200rpmにて耐摩耗性試験を行った。その際のベアリングボール1個あたりにかかる荷重を0N(無荷重)、150N、300N、500Nと変えて100時間連続稼動させた際の耐摩耗性を調べた。100時間後に板材の表面に表面に割れ、カケ等の不具合の発生したものを「×」、不具合の発生しなかったものを「○」と表示した。
また、比較例6として、ジルコニアを10質量%含有したアルミナ焼結体を用いたものを用意し、同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004928997
実施例から分かる通り、板材の場合はいずれも不具合が発生しなかった。一方、比較例4,5のように粒界相の存在比率にバラツキの大きいものは300N以上の荷重をかけると不具合が発生した。また、アルミナ(比較例6)も300N以上の高負荷下では不具合が生じた。
(実施例9〜12)
実施例1〜4のベアリングボールを用いて圧砕強度を測定した。測定方法は2つのベアリングボールを縦に並べ上下から圧縮応力を加えた際にベアリングボールが破壊される応力を測定した2球圧砕強度と、1球の上下から圧縮応力をかけてベアリングボールが破壊される応力を測定した1球圧砕強度の両方について行った。圧砕強度の測定は旧JIS−B−1501に準じた測定法により、インストロン型試験機で圧縮加重をかけ、破壊時の荷重を測定することにより対応したものである。その結果を表3に示す。
Figure 0004928997
本実施例にかかるベアリングボールは1球および2球圧砕強度が優れていることが分かる。
(実施例13〜16)
実施例5〜8の窒化けい素焼結体製板材に関して、アスペクト比5以上の針状窒化けい素結晶粒の割合、異常粒成長の最大値を測定した。また、ビッカース硬度、破壊靱性値、3点曲げにおける最低抗折強度と平均抗折強度、ヤング率について測定した。
なお、アスペクト比および異常粒成長の最大値の測定は、任意の断面において50μm×50μmの拡大写真を測定し画像解析によりアスペクト比5以上の粒子の割合を面積比で求めた。また、異常粒成長の最大値は拡大写真に写る個々の結晶粒子の中で最も長い対角線を引き、その中で最も大きな値を示したものを最大値とした。このような作業を3箇所行い、アスペクト比5以上の粒子の割合は平均値、異常粒成長は最も大きな値を示したものを測定結果とした。
また、ビッカース硬度はJIS−R−1610で規定された測定で試験荷重198.1Nで試験を行った。また、破壊靭性値はJIS−R−1607で規定されたIF法に基づき測定しNiiharaの式により算出したものである。その結果を表4に示す。
Figure 0004928997
本実施例にかかる耐摩耗性部材は機械的強度も優れている。
以上のように本発明の耐摩耗性部材は水潤滑下での耐摩耗性に優れている。また、機械的強度も優れていることから水中でかつ負荷のかかる環境下で使用される耐摩耗性機器に特に有効である。
本発明の耐摩耗性試験機の一例を示す図である。
符号の説明
1…試験装置本体
2…軸受鋼板
3…ベアリングボール
4…ガイド板
5…駆動回転軸
6…保持器
7…水
8…転動ボール
9…板状耐摩耗性部材

Claims (7)

  1. 水潤滑下で使用される耐摩耗性部材において、前記耐摩耗性部材は、窒化けい素を75〜97質量%、Tiおよびその化合物の少なくとも1種を金属元素換算で0.2〜5質量%、残部をSi−R−Al−O−N化合物(ただし、Rは希土類元素)を主とする粒界相を有する窒化けい素焼結体を具備すると共に、前記Si−R−Al−O−N化合物の焼結体内部の存在比率M1と表面の存在比率M2との比M2/M1が0.9〜1.1の範囲内となるように表面研磨加工されたベアリングボールであることを特徴とする耐摩耗性部材。
  2. 前記M2/M1が1.0〜1.1の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の耐摩耗性部材。
  3. 前記Si−R−Al−O−N化合物が7〜15質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の耐摩耗性部材。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の耐摩耗性部材を用いたことを特徴とする耐摩耗性機器。
  5. 耐摩耗性部材に荷重がかかりながら稼動することを特徴とする請求項4記載の耐摩耗性機器。
  6. 前記荷重が200N以上であることを特徴とする請求項5記載の耐摩耗性機器。
  7. 耐摩耗性部材が水に触れている状態で稼動することを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の耐摩耗性機器。
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