JP2002037664A - 酸化ジルコニウム焼結体およびそれを用いた摺動部材、並びにその製造方法 - Google Patents

酸化ジルコニウム焼結体およびそれを用いた摺動部材、並びにその製造方法

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JP2002037664A
JP2002037664A JP2000226909A JP2000226909A JP2002037664A JP 2002037664 A JP2002037664 A JP 2002037664A JP 2000226909 A JP2000226909 A JP 2000226909A JP 2000226909 A JP2000226909 A JP 2000226909A JP 2002037664 A JP2002037664 A JP 2002037664A
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sintered body
oxide sintered
conductivity
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JP2000226909A
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Kazuo Kimura
村 和 生 木
Michiyasu Komatsu
松 通 泰 小
Yoshiyuki Fukuda
田 悦 幸 福
Hisao Yabe
部 久 雄 矢
Isao Ikeda
田 功 池
Kazuyuki Kondo
藤 和 行 近
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電性、強度、破壊靱性及び耐摩耗性、摺動
特性が良好な酸化ジルコニウム焼結体及びその製造法を
提供する。 【解決手段】 酸化ジルコニウムのマトリックス中に、
表面に酸素を含むアモルファス層を有する導電性付与粒
子が分散してなることを特徴とする、酸化ジルコニウム
焼結体、及び、導電性付与粒子を酸化雰囲気中で仮焼し
てその表面にアモルファスカーボン層を形成させ、これ
を酸化ジルコニウム粉体に混合し、成形し、焼結するこ
とを特徴とする、酸化ジルコニウム焼結体の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性を有する酸
化ジルコニウム焼結体およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化ジルコニウム焼結体は、強度および
破壊靱性が優れていることから、各種の構造部材、摺動
部材など多岐の用途において利用されている。例えば、
摺動部材の一用途として、ベアリングボール、ローラー
の他、自動車用エンジン部品、例えば燃料噴射装置用プ
ランジャー、シリンダー、カムローラなどの摺動部材に
利用されている。また、他の摺動部材としては、圧縮機
用べーン、タペットパッド、圧延用ロールなど挙げられ
る。
【0003】従来からこのような摺動部材にはSUJ2
などの軸受鋼、または、その表面に窒化処理を施して表
面を硬化させて耐摩耗性を向上させた材料が使用されて
いる。しかしながら、軸受鋼は、用途によっては耐摩耗
性が十分でない場合があって、使用温度の変化あるいは
摩耗による寸法変化などによって、相互の摺動部品のか
じり(スカッフィング)が生じたり、振動が生じる場合
があった。
【0004】耐摩耗性の観点から、近年は軸受鋼に代わ
りセラミックス、例えば酸化ジルコニウムや窒化珪素
等、が用いられるようになっている。特に、酸化ジルコ
ニウムは、線膨張係数が軸受鋼などの金属と近いことか
ら軸受鋼などの金属性部材と摺動させる部品、例えば特
開平11−157926号公報にあるような自動車部
品、精密機器、重電設備機器、航空機器部品、電子機器
などの各種摺動部品、に組み合わせて使用しても、摺動
に伴う摩擦加熱による熱歪量がほぼ同じになるために、
熱歪による部品の不具合を生じないという利点がある。
【0005】しかしながら、従来の酸化ジルコニウム焼
結体は、摺動特性のみしか着目していないことから導電
性を有しておらず、静電気による帯電が生じ、また必ず
しも加工性が十分ではなかった。金属製のベアリングボ
ールでは顕在化しない、静電気の問題が、特に電子機器
に用いられるベアリング部材において着目されるように
なっている。また、加工性については、酸化ジルコニウ
ムの精密形状加工のために、放電加工が望まれる。
【0006】このような問題点を解決するために、例え
ば特開平9−221352号公報のような導電性粒子を
含有した酸化ジルコニウムが開発されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
導電性酸化ジルコニウムは、放電加工性を良くする一方
で強度向上が犠牲になる傾向があった。
【0008】本発明は、上記したような問題を解決する
ためになされたものであって、炭化物を導電性付与粒子
とし、かつこの粒子とマトリックスである酸化ジルコニ
ムとの界面強度を高めることによって、高強度、高靱性
の酸化ジルコニウム焼結体を提供することを目的とする
ものである。同時に、本発明は、これを実現するための
製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明では、酸化ジルコ
ニウム焼結体中に存在する各種炭化物導電性付与粒子の
表面状態、即ち、該導電性付与粒子とマトリックスとの
界面状態を特定、具体的には炭化物表面に酸素を含むア
モルファスカーボン層を形成することによって、上記の
目的を達成しようとするものである。
【0010】従って、本発明による酸化ジルニウム焼結
体は、酸化ジルコニウムのマトリックス中に、表面に酸
素を含むアモルファス層を有する導電性付与粒子が分散
してなること、を特徴とするものである。
【0011】そして、本発明による酸化ジルコニウム焼
結体の製造法は、導電性付与粒子を酸化雰囲気中で仮焼
してその表面にアモルファスカーボン層を形成させ、こ
れを酸化ジルコニウム粉体に混合し、成形し、焼結する
こと、を特徴とするものである。
【0012】本発明において、優れた強度および高靱性
を有する導電性の酸化ジルコニウム焼結体が得られた理
由は、主として導電性付与粒子の変性(仮焼)により得
られた酸素を含有するアモルファス層が該導電性粒子と
酸化ジルコニウムマトリックス相との界面に所定の厚さ
で存在することによって、該導電性付与粒子と酸化ジル
コニウムマトリックス相との接合強度が向上したことに
よるものと考えられる。
【0013】このような本発明によれば、導電性を有す
るとともに強度および破壊靭性に優れた特性を持つ酸化
ジルコニウム焼結体を得ることが可能となる。このよう
な酸化ジルコニウム焼結体は、例えばベアリングボー
ル、燃料装置用プランジャー、回転式圧縮機用べーン、
シリンダー、カムローラ、タペットパッドなどの摺動部
材に適用すると特に効果的であり、その際摺動部材と接
する相手部材が軸受鋼等の金属で形成されていると摺動
部材を形成する酸化ジルコニウムと線膨張係数の差が少
ないので摺動に伴う熱歪による不具合を抑えることが可
能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0015】<酸化ジルコニウム焼結体>本発明による
酸化ジルコニウム焼結体は、酸化ジルコニウムのマトリ
ックス中に、表面に酸素を含むアモルファス層を有する
導電性付与粒子が分散してなること、を特徴とするもの
である。
【0016】ここで、導電性付与粒子は、好ましくは4
a族、5a族、6a族、7a族元素、ケイ素あるいはホ
ウ素の炭化物から選ばれた少なくとも1種であり、さら
に好ましくはケイ素、タンタル、チタン、ニオブあるい
はタングステンの炭化物から選ばれた少なくとも1種で
ある。本発明では、特にチタンの炭化物およびケイ素の
炭化物が好ましい。本発明による酸化ジルコニウム焼結
体を、摺動部材(例えば、ベアリングボール、カムロー
ラやプランジャー等)に使用する際には、そこに含有さ
れている導電性付与粒子も当然ながら酸化ジルコニウム
焼結体と共に摺動される。このため、導電性付与粒子に
もある程度の摺動特性は要求されることから前述の炭化
物が好適である。これらの炭化物は、化学的に安定であ
り、耐熱性も良好であることからも好ましい。
【0017】導電性付与粒子の表面に存在するアモルフ
ァスカーボン層の厚さは、好ましくは100〜500n
m、特に好ましくは200〜300nm、である。アモ
ルファスカーボン層の厚さが100nm未満ではアモル
ファスカーボン層を設ける効果が得られず、500nm
を超えるとアモルファスカーボン層が厚くなりすぎアモ
ルファスカーボン層自体が剥離等を起こして破壊起点と
なってしまい強度低下など、本発明の効果が十分に達成
されない。導電性付与粒子表面上のアモルファスカーボ
ン層の存在および該アモルファスカーボン層の厚さは、
例えばTEMによって確認することができる。
【0018】この表面にアモルファスカーボン層を有す
る導電性付与粒子は、酸化ジルコニウム焼結体中に存在
する状態において、最大径が10μm以下となるよにす
るのが好ましい。特に好ましくは5μm以下、さらに好
ましくは0.5〜3μm、となるようにする。
【0019】そして、この導電性付与粒子の含有量は、
酸化ジルコニウム焼結体のマトリックス相を構成する酸
化ジルコニウムに対して、好ましくは10〜40vol
%である。導電性付与粒子の含有量が10vol%未満
であると、焼結体の導電性を十分向上させることが困難
なことがあり、一方、分散量が40vol%超過である
と、酸化ジルコニウム焼結体の耐摩耗特性、強度、靱性
などが低下することがある。なお、導電性付与粒子の含
有量は、酸化ジルコニウム焼結体の全ての部分において
必ずしも同一ないし均一である必要はない。
【0020】導電性付与粒子の具体的な含有量は、酸化
ジルコニウム焼結体の具体的用途に応じ、その強度およ
び靱性ならびに導電性を考慮して、上記範囲内で決定す
ることができる。
【0021】本発明による酸化ジルコニウム焼結体は、
それを放電加工に付す場合には焼結体の電気抵抗値は1
−2Ω・cm以下であることが好ましい。このような
焼結体を得るための導電性付与粒子の配合量は、導電性
付与粒子の種類、粒径、具体的成形条件や焼成条件によ
って変化するが、一般に15〜40vol%である。
【0022】一方、本発明による焼成体を静電気帯電防
止などを目的として利用するときには、電気抵抗値が1
〜10Ω・cm程度であっても適用可能である。
このような焼結体を得るための導電性付与粒子の配合量
は、上記と同様に変化するが、一般に10〜30vol
%である。
【0023】本発明による酸化ジルコニウム焼結体のマ
トリックス相を構成する酸化ジルコニウムは、合目的的
な任意のものであり得る。例えば、各種の安定化剤(例
えば、酸化イットリウム等の希土類酸化物および酸化マ
グネシウム等の金属酸化物)を含有する部分安定化酸化
ジルコニウムは、本発明による焼結体のマトリックス相
を構成する酸化ジルコニウムの特に好ましい一具体例で
ある。安定化剤の量は、一般的に、酸化イットリウムで
あれば3〜6mol%、酸化マグネシウムであれば6〜
12mol%である。
【0024】<酸化ジルコニウム焼結体の製造法>本発
明による酸化ジルコニウム焼結体の製造法は、導電性付
与粒子を酸化雰囲気中で仮焼してその表面にアモルファ
スカーボン層を形成させ、これを酸化ジルコニウム粉体
に混合し、成形し、焼結すること、を特徴とするもので
ある。
【0025】アモルファスカーボン層の形成は、上記の
炭化物(即ち、4a族、5a族、6a族、7a族、ケイ
素あるいはホウ素の炭化物)の粉末を酸化雰囲気中で仮
焼することによって行うことができる。この酸化雰囲気
としては、酸素を5〜40vol含有する雰囲気あるい
は大気が典型的である。
【0026】上記炭化物粒子の表面に所定のアモルファ
スカーボン層を形成させるための仮焼条件は、本発明の
目的が達成される限りにおいて任意である。例えば本発
明では、大気中で、600〜1200℃、好ましくは8
00〜1000℃、の温度で、0.5時間から4時間、
好ましくは1〜2時間、仮焼することによって行うこと
ができる。この仮焼き工程においては、例えば耐熱性ボ
ートの上に導電性付与粒子を載せ攪拌しながら熱処理を
施すと膜厚の均一なアモルファスカーボン層を形成し易
い。
【0027】このような導電性付与粒子と酸化ジルコニ
ウム粉体との混合は、酸化ジルコニウム焼結体の製造に
おいて従来から採用されてきた方法に従って行うことが
できる。また、この混合の際には、各種の焼結助剤等、
好ましくは、例えば前記した安定化剤、を存在させるこ
とができる。
【0028】そして、本発明による酸化ジルコニウム焼
結体の製造法において採用される成形および焼結条件等
も、この種の酸化ジルコニウム焼結体の製造において従
来から採用されてきたものの中から適当なものを選択し
て用いることができる。例えば、本発明では、静水圧成
形(CIP)を採用することができる。この成形を2回
以上連続して行うことによってより強度が高い焼結体を
製造することができる。なお、成形に先だって、導電性
付与粒子と酸化ジルコニウム粉体との混合物を、必要に
応じて造粒することもできる。
【0029】成形体の焼成は、不活性雰囲気で1400
〜1850℃、好ましくは1500〜1700℃の温度
で、1〜6時間、好ましくは2〜4時間、成形体を保持
することによって行うことができる。焼成は、常圧焼
成、加圧焼成のいずれかを一回行うだけでも良いが、よ
り高強度の焼結体を製造するには焼成を複数回行うこと
が好ましい。例えば、常圧焼成または加圧焼成を行った
後、熱間静水圧プレス(HIP)またはアニール処理を
行うこともできる。
【0030】このような複数回の焼結によって気孔率の
低い焼結体が得られ、強度、破壊靭性ならびに耐摩耗
性、摺動特性がより向上した酸化ジルコニウム焼結体を
得ることが可能となる。
【0031】このようにして製造された本発明による酸
化ジルコニウム焼結体は、そのまま、あるいは必要に応
じて研磨、切削、放電加工などの二次加工に付した後、
各種の用途に利用することができる。
【0032】本発明による酸化ジルコニウム焼結体は、
特に用途が限定されるものではないが、各種の機械部品
あるいは電子機器部品、例えば自動車部品、精密機器、
重電設備機器、航空機部品、電子機器用の摺動材、具体
的には、ベアリング部材、燃料噴射装置用プランジャ
ー、回転式圧縮機用ベーン、シリンダー、カムローラ、
圧延ローラ、タペットパットなど、として特に有用なも
のである。
【0033】
【実施例】<実施例1〜4および比較例1〜2>平均粒
径2μmのTiC粒子を攪拌しながら大気中800〜9
00℃×1〜2時間で仮焼きして、酸素を含有するアモ
ルファス層の厚さが100nm、200nm、400n
m、500nmである4種の導電性付与粒子を得た。
【0034】平均粒径2μmのY粉体6mol%
と、平均粒径0.8μmの酸化ジルコニウム粉体と、上
記で得られた導電性付与粒子20vol%とを混合し
た。この混合物を、成形(成形条件:196MPa)
し、焼成(焼成条件:不活性雰囲気中1550℃×2時
間)して、酸化ジルコニウム焼結体を製造した(実施例
1〜4)。得られた焼結体の電気抵抗値および強度は、
表1に示される通りである。
【0035】一方、仮焼を行わないTiC粒子(アモル
ファス層の厚さは0nm)、あるいはアモルファス層の
厚さが1000nmである粒子、を使用したこと以外
は、上記と同様にして、酸化ジルコニウム焼結体を製造
した(比較例1〜2)。
【0036】このような実施例または比較例にかかる酸
化ジルコニウム焼結体に対し、電気抵抗値および3点曲
げ強度を測定した。なお、各実施例または比較例の試料
は3×3×10mmの四角柱形状とする。
【0037】
【表1】 表1から分かる通り、本実施例にかかる酸化ジルコニウ
ム焼結体は電気抵抗値が100Ω・cm以下かつ強度が
800MPa以上と優れていることが分かった。
【0038】<実施例5〜8および比較例3〜5>平均
粒径1μmのSiC粒子を攪拌しながら酸素を20vo
l%含有した窒素雰囲気中で800〜900℃×1〜2
時間仮焼きして、酸素を含有するアモルファス層の厚さ
が100nm、200nm、400nm、500nmで
ある4種の導電性付与粒子を得た。
【0039】平均粒径2μmのY粉体6mol%
と、平均粒径0.8μmの酸化ジルコニウム粉体と、上
記で得られた導電性付与粒子20vol%とを混合し
た。この混合物を、成形(成形条件:98MPa)し、
焼成(焼成条件:不活性雰囲気中1680℃×2時間の
常圧焼結後、1680℃×1時間のHIP処理)して、
酸化ジルコニウム焼結体を製造した(実施例5〜8)。
なお、各試料は電気抵抗値および3点曲げ強度を測定し
易くするために3×3×10mmの四角柱形状とした。
得られた焼結体の電気抵抗値および強度は、表2に示さ
れる通りである。
【0040】一方、仮焼を行わないSiC粒子(アモル
ファス層の厚さは0nm)、あるいはアモルファス層の
厚さが1000nmである粒子、を使用したこと以外
は、上記と同様にして、酸化ジルコニウム焼結体を製造
した(比較例3〜4)。
【0041】また、同様の製造方法を用い直径2mmの
ベアリングボールを作製した。こののようなベアリング
ボールを回転軸およびボール受部がSUJ2軸受鋼から
なるベアリング部材に組込んだハードディスクドライブ
用のスピンドルモータを用意した。このハードディスク
ドライブを連続100時間稼働させることにより静電気
の帯電による不具合の有無を検討した。
【0042】なお、静電気により不具合の有無は、仮に
静電気による不具合が発生すればハードディスクドライ
ブが通常通り稼働しなくなるので容易に判別はつく。さ
らに比較のために導電性付与粒子を全く添加しないこと
以外は実施例5と同様の酸化ジルコニウム焼結体を作製
して同様の測定を行った。その結果も併せて表2に示し
た。
【0043】
【表2】 表2から分かる通り、本実施例にかかるジルコニウム焼
結体はいずれも電気抵抗値が10〜10Ω・cmの
範囲内にあり、強度も900MPa以上と優れているこ
とが分かった。また、いずれのベアリングボールにおい
ても静電気の発生による不具合は起きなかったが、比較
例3および比較例4のベアリングボールは強度が低いこ
とからベアリングボールの転がり寿命が十分でないこと
が予測される。また、比較例5のものは強度は高いが導
電性付与粒子を全く含有していないことから静電気によ
る不具合が発生してしまった。
【0044】このような結果から、本発明の酸化ジルコ
ニウム焼結体はベアリングボールのような摺動部材にも
好適であることが分かる。
【0045】<実施例9〜11、比較例6>平均粒径
2.5μmのTiC粒子を攪拌しながら大気中で800
〜950℃×1〜2時間仮焼きして、酸素を含有するア
モルファス層の厚さが100nm、300nm、500
nmである3種の導電性付与粒子を得た。
【0046】平均粒径0.8μmのMgO粉体10mo
l%と、平均粒径0.8μmの酸化ジルコニウム粉体
と、上記で得られた導電性付与粒子30vol%とを混
合した。この混合物を、成形(成形条件:196MP
a)し、焼成(焼成条件:不活性雰囲気中1650℃×
2時間の常圧焼結)して、酸化ジルコニウム焼結体を製
造した(実施例9〜11)。
【0047】得られた焼結体の電気抵抗値および強度
は、表3に示される通りである。
【0048】また、放電加工性を調べるために直径1m
m×深さ2mmの穴を放電加工により作製した。比較の
ために導電性付与粒子を添加しないこと以外は実施例9
と同様の酸化ジルコニウム焼結体(比較例6)を作製
し、同様の放電加工を施した。なお、各試料のサイズは
3mm×3mm×10mmの四角柱とする。
【0049】
【表3】 表3から分かる通り、本発明の酸化ジルコニウム焼結体
は、強度も700MPa以上と高くかつ放電加工性も良
好であった。それに対し、比較例6の焼結体は強度は高
いものの、放電加工はできなかった。これは導電性付与
粒子を含有していないためである。
【0050】このように本発明の酸化ジルコニウム焼結
体は強度が高くかつ放電加工性も優れていることからプ
ランジャーやカムローラなどの複雑形状を持つ摺動部材
にも適用可能である。
【0051】<実施例12〜13、参考例1>次に、導
電性付与粒子の最大径を代えた以外は実施例6と同じベ
アリングボールを用い、転がり寿命を測定した。参考例
1として導電性付与粒子の粒径が本発明の好ましい範囲
以外のものを用意し、同様の測定を行った。なお、各ベ
アリングボールの表面粗さはJISで規定されたグレー
ド3以上のものを使用した。
【0052】転がり寿命の測定には、スラスト型軸受試
験機を用い、相手材がSUJ2鋼製の平板上を回転させ
る方法で、荷重は一球あたり最大接触応力5.9GP
a、回転数1200rpm、タービン油の油浴潤滑条件
下で最高400時間まで行い、ベアリングボールの表面
が剥離するまでの転がり寿命を測定した。その結果を表
4に示す。
【0053】
【表4】 表4から分かる通り、導電性付与粒子の最大径が10μ
mを超えると摺動特性(転がり寿命)が劣化することが
分かった。
【0054】<実施例14、参考例2>次に、アモルフ
ァスカーボン層を設ける際の仮焼き工程において、導電
性付与粒子の攪拌の有無によるアモルファスカーボン層
の膜厚の影響を確認した。
【0055】具体的には、最大径1μmの炭化ニオブ粉
末を0.5kg用いた。大気中900℃×1時間の仮焼
き工程において、実施例14は耐熱性ボード上にて攪拌
しながら行い、参考例2は攪拌を一切行わないで仮焼き
を行った。
【0056】この場合、アモルファスカーボン層の平均
膜厚を測定した。なお、平均膜厚の測定においては、仮
焼き工程後の炭化ニオブ粉末において、表面部、中間
部、底面部(耐熱ボートに接触していた粉末)の3個所
から任意の10粒ずつ取出し、その平均値を示した。そ
の結果を表5に示す。
【0057】
【表5】 表5から分かる通り、攪拌しながら仮焼き工程を行った
ものは平均膜厚が185〜200nmであり膜厚のバラ
ツキが30nm以下に抑えられた。それに対し攪拌を行
わない参考例2は平均膜圧が70〜300nmとかなり
バラツキが大きかった。
【0058】従って、攪拌を行わない仮焼き工程では好
ましいアモルファスカーボン層が得難いことが分かっ
た。
【0059】
【発明の効果】以上のように、本発明による酸化ジルコ
ニウム焼結体は、酸化ジルコニウム焼結体が本来有する
優れた強度、破壊靱性および耐摩耗性、摺動特性を維持
しながら所望の導電性が付与されたものである。従っ
て、このような本発明による酸化ジルコニウム焼結体
は、放電加工により所望の形状に容易に加工できるもの
であり、そして、静電気の帯電が有効に防止されたもの
である。
【0060】このような本発明による酸化ジルコニウム
焼結体から得られた摺動部材は、上記特性に加えて、酸
化ジルコニウムが持つ線膨張係数が軸受鋼等に近いとい
う利点をいかせるものであって、かつ放電加工性に優れ
るものである。よって、燃料噴射装置用プランジャー、
回転圧縮機用ベーン、シリンダー、カムローラなどの各
種摺動部材への加工が容易であり、特に前記のような一
方向性の摺動部材に用いると優れた摺動特性を示すこと
が可能となる。特に、酸化ジルコニウム焼結体中の導電
性付与粒子の最大径が10μm以下に制御されたもの
は、耐摩耗性が著しく改善されたものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福 田 悦 幸 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 矢 部 久 雄 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 池 田 功 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 近 藤 和 行 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 Fターム(参考) 3J011 AA06 QA11 RA01 SA05 SB19 4G031 AA12 AA37 AA40 BA02 BA18 BA20 GA03 GA05

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化ジルコニウムのマトリックス中に、表
    面に酸素を含むアモルファス層を有する導電性付与粒子
    が分散してなることを特徴とする、酸化ジルコニウム焼
    結体。
  2. 【請求項2】導電性付与粒子が、4a族、5a族、6a
    族、7a族、ケイ素あるいはホウ素の炭化物から選ばれ
    た少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に
    記載の酸化ジルコニウム焼結体。
  3. 【請求項3】導電性付与粒子が、ケイ素、タンタル、チ
    タン、ニオブあるいはタングスクテンの炭化物から選ば
    れた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1
    に記載の酸化ジルコニウム焼結体。
  4. 【請求項4】導電性付与粒子が、最大径が10μm以下
    のものであることを特徴とする、請求項1ないし請求項
    3のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム焼結体。
  5. 【請求項5】アモルファスカーボン層が、100〜50
    0nmの厚みを有することを特徴とする、請求項1ない
    し請求項4のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム焼
    結体。
  6. 【請求項6】導電性付与粒子が、10〜40vol%含
    有されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項
    5のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム焼結体。
  7. 【請求項7】請求項1ないし請求項6のいずれかに記載
    の酸化ジルコニウム焼結体を用いたことを特徴とする、
    摺動部材。
  8. 【請求項8】導電性付与粒子を酸化雰囲気中で仮焼して
    その表面にアモルファスカーボン層を形成させ、これを
    酸化ジルコニウム粉体に混合し、成形し、焼結すること
    を特徴とする、酸化ジルコニウム焼結体の製造法。
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