JP2000281973A - コーティング組成物 - Google Patents

コーティング組成物

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JP2000281973A
JP2000281973A JP11088446A JP8844699A JP2000281973A JP 2000281973 A JP2000281973 A JP 2000281973A JP 11088446 A JP11088446 A JP 11088446A JP 8844699 A JP8844699 A JP 8844699A JP 2000281973 A JP2000281973 A JP 2000281973A
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孝展 伊藤
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Motoko Iijima
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐擦傷性、耐湿性、耐候性などに優れると共
に、その上に無機酸化物の蒸着膜を施しても、上記特性
の低下がほとんどない硬化被膜を形成することができ、
特に光学部材用として好適なコーティング組成物を提供
すること。 【解決手段】 (A)酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
複合体コロイド粒子の表面の少なくとも一部を、酸化第
二スズ−酸化タングステン−酸化珪素複合体コロイド粒
子で被覆してなる変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
複合体コロイド粒子と、(B)有機珪素化合物とを含有
してなるコーティング組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規なコーティング
組成物に関し、さらに詳しくは、耐擦傷性、耐湿性、耐
候性などに優れると共に、その上に無機酸化物の蒸着膜
を施しても、上記特性の低下がほとんどない硬化被膜
(単に硬化膜と記載することがある。)を形成すること
ができ、特に光学部材用として好適なコーティング組成
物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、プラスチック成形品に耐擦傷性を
付与する方法として、一般にその表面に耐擦傷性を有す
るコーティング膜を設ける方法が用いられている。この
ようなコーティング膜を形成するのに用いられるコーテ
ィング組成物としては、例えばコロイド状に分散したシ
リカゾルを含むコーティング組成物(特開昭53−11
1336号公報)、酸化タングステン微粒子で被覆され
た酸化スズ微粒子を含むコーティング組成物(特開平3
−172369号公報)、酸化スズのコロイド粒子を酸
化スズ−酸化タングステン複合体のコロイド粒子で変性
したゾルを含むコーティング組成物(特開平6−256
03号公報)などが提案されている。
【0003】しかしながら、これらのコーティング組成
物においては、いずれも、例えば光学基材を被覆した場
合に、審美性(コーティング膜と基材との屈折率差によ
る干渉縞の発生がないこと)や耐候性を維持するととも
に、優れた耐擦傷性、耐湿性などを付与しうるコーティ
ング膜は得られず、またその上に蒸着膜を施しても、審
美性や耐候性を維持しながら、耐擦傷性、耐湿性を充分
に付与することができないという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、特に光学部材用として好適に用いられ、
光学基材を被覆した場合に、優れた審美性、耐候性、耐
擦傷性および耐湿性などを有すると共に、さらにその上
に蒸着膜を施しても上記物性の低下がほとんどない硬化
被膜を与えるコーティング組成物を提供することを目的
とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の優
れた機能を有するコーティング組成物を開発すべく鋭意
研究を重ねた結果、特定の変性酸化第二スズ−酸化ジル
コニウム複合体コロイド粒子と有機珪素化合物を含有す
るコーティング組成物がその目的に適合しうることを見
出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、(A)酸化第二スズ
−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の表面の少なく
とも一部を、酸化第二スズ−酸化タングステン−酸化珪
素複合体コロイド粒子で被覆してなる変性酸化第二スズ
−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子と、(B)有機
珪素化合物とを含有することを特徴とするコーティング
組成物を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のコーティング組成物にお
いては、(A)成分として、変性酸化第二スズ−酸化ジ
ルコニウム複合体コロイド粒子が用いられる。この変性
酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子
は、(イ)酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロ
イド粒子の表面の一部または全部を、(ロ)酸化第二ス
ズ−酸化タングステン−酸化珪素複合体コロイド粒子で
被覆したものである。上記(イ)成分のコロイド粒子
は、変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイ
ド粒子における核粒子となるものであって、酸化第二ス
ズコロイド粒子と酸化ジルコニウムコロイド粒子とが、
ZrO2/SnO2重量比として0.02〜1.0の割合
で結合し、かつ粒子径が4〜50nmの範囲にあるもの
が、得られるコーティング組成物の性能の点から好適で
ある。
【0008】一方、前記(イ)成分のコロイド粒子の表
面の一部又は全部を被覆する(ロ)成分の酸化第二スズ
−酸化タングステン−酸化珪素複合体コロイド粒子とし
ては、WO3/SnO2重量比およびSiO2/SnO2
量比が、それぞれ0.1〜100の範囲にあり、かつ粒
子径が2〜7nm、好ましくは2〜5nmの範囲にある
ものが、得られるコーティング組成物の性能の点から好
適である。この(A)成分の変性酸化第二スズ−酸化ジ
ルコニウム複合体コロイド粒子の粒子径は、得られるコ
ーティング組成物の安定性および性能の点から、4.5
〜60nmの範囲が好ましい。
【0009】本発明においては、前記(A)成分の変性
酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子
は、例えば以下に示す(a)工程、(b)工程、(c)
工程、(d)工程および(e)工程を施すことによっ
て、効率よく形成させることができる。
【0010】(a)工程:この(a)工程は、酸化第二
スズ水性ゾルとオキシジルコニウム塩の水性溶液または
水性懸濁液とを混合する工程である。上記酸化第二スズ
水性ゾルとしては、粒子径が4〜50nmの範囲にある
酸化第二スズコロイド粒子を、SnO2として0.5〜
50重量%、好ましくは1〜30重量%濃度で含有する
ものが好適に用いられる。このような酸化第二スズ水性
ゾルは、従来公知の方法、例えばイオン交換法、解膠
法、加水分解法、反応法などによって調製することがで
きる。
【0011】上記イオン交換法の例としては、スズ酸ナ
トリウムなどのスズ酸塩を水素型陽イオン交換樹脂で処
理する方法、あるいは塩化第二スズ、硝酸第二スズなど
の第二スズ塩を水酸基型陰イオン交換樹脂で処理する方
法などが挙げられる。上記解膠法の例としては、第二ス
ズ塩を塩基で中和するか、あるいはスズ酸を塩酸で中和
させることにより得られる水酸化第二スズゲルを洗浄し
た後、酸又は塩基で解膠する方法などが挙げられる。上
記加水分解法の例としては、スズアルコキシドを加水分
解する方法、あるいは塩化第二スズ塩基性塩を加熱下加
水分解した後、不要の酸を除去する方法などが挙げられ
る。さらに上記反応法の例としては、金属スズ粉末と酸
とを反応させる方法などが挙げられる。
【0012】これら酸化第二スズゾルの媒体は、水、親
水性有機溶剤、これらの混合物のいずれでもよいが、媒
体が水である水性ゾルが好ましい。また、ゾルのpHと
しては、ゾルの安定性の点から、通常、0.2〜11の
範囲がよい。また、本発明の目的が損なわれない範囲
で、この酸化第二スズゾルには、任意の成分、例えば、
ゾルの安定化のためのアルカリ性物質、酸性物質、オキ
シカルボン酸などを含有させることができる。
【0013】一方、オキシジルコニウム塩の水性溶液ま
たは水性懸濁液としては、オキシジルコニウム塩を、
0.5〜50重量%、好ましくは1〜30重量%濃度で
含有するものが好適に用いられる。上記オキシジルコニ
ウム塩としては、例えばオキシ塩化ジルコニウム、オキ
シ硝酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ
酢酸ジルコニウムのようなオキシ有機酸ジルコニウム、
オキシ炭酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらのオ
キシジルコニウム塩は、水性溶液の形態で用いるのが好
ましいが、混合する酸化第二スズ水性ゾルが酸性である
場合には、オキシ炭酸ジルコニウムのような水不溶性の
塩も、水性懸濁液の形態で用いることができる。
【0014】この(a)工程においては、前記の酸化第
二スズ水性ゾルとオキシジルコニウム塩の水性溶液また
は水性懸濁液が、ZrO2/SnO2重量比として0.0
2〜1.0になるように混合される。この際、酸化第二
スズゾルは、特にアミンなどの有機塩基で安定化された
アルカリ性のゾルを用いるのが好ましい。また、酸化第
二スズゾルとオキシジルコニウム塩の水性溶液または水
性懸濁液との混合は、通常0〜100℃、好ましくは室
温〜60℃の範囲の温度において行われる。そして、こ
の混合は、攪拌下で酸化第二スズゾルにオキシジルコニ
ウム塩の水性溶液または水性懸濁液を加えてもよいし、
オキシジルコニウム塩の水性溶液または水性懸濁液に酸
化第二スズゾルを加えてもよいが、後者の方が好まし
い。この混合は充分に行うことが肝要であり、0.5〜
3時間程度行うのが好ましい。
【0015】(b)工程:この(b)工程においては、
上記(a)工程で得られた混合液を加熱処理して、粒子
径4〜50nmの酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合
体水性ゾルを生成させる。この加熱処理は、60〜20
0℃の温度において、0.1〜50時間程度行うのが好
ましい。
【0016】(c)工程:この(c)工程は、酸化タン
グステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルを生成
させる工程である。まず、タングステン酸塩、スズ酸塩
および珪酸塩を、WO3/SnO2重量比およびSiO2
/SnO2重量比として、それぞれ通常0.1〜100
になるような割合で含有する水性溶液を調製する。この
際、媒体としては、水、親水性有機溶剤あるいはこれら
の混合物のいずれも用いることができる。
【0017】上記タングステン酸塩、スズ酸塩および珪
酸塩の塩としては、例えばアルカリ金属塩、アンモニウ
ム塩、アミン塩などがある。ここで、アルカリ金属塩の
例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、
ルビジウム塩、セシウム塩が挙げられる。また、アミン
塩の好ましい例としては、エチルアミン、トリエチルア
ミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン、イソ
ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルヘ
キシル)アミンなどのアルキルアミン塩、ベンジルアミ
ンなどのアラルキルアミン塩、ピペリジンなどの脂環式
アミン塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミ
ンなどのアルカノールアミン塩などが挙げられる。特
に、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H
2O)、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O)お
よび珪酸ナトリウム(水ガラス)が好ましい。また、酸
化タングステン、タングステン酸、スズ酸、珪酸などを
アルカリ金属水酸化物の水性溶液に溶解したものも使用
することができる。また珪酸塩として活性珪酸にエチル
アミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−
プロピルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミ
ン、ジ(2−エチルヘキシル)アミンなどのアルキルア
ミンを添加して得られるアミンシリケートや第四級アン
モニウムシリケートも使用することができる。
【0018】タングステン酸塩、スズ酸塩および珪酸塩
を含有する水性溶液の調製方法としては特に制限はな
く、例えばタングステン酸塩、スズ酸塩、珪酸塩の各粉
末を水性媒体に溶解させ水性溶液を調製する方法、タン
グステン酸塩水性溶液、スズ酸塩水性溶液、および珪酸
塩水性溶液を混合して水性溶液を調製する方法、タング
ステン酸塩とスズ酸塩の粉末および珪酸塩の水性溶液を
水性媒体に添加して水性溶液を調製する方法など、いず
れの方法も用いることができる。
【0019】各水性溶液を混合する方法においては、タ
ングステン酸塩の水性溶液は、WO3として0.1〜1
5重量%濃度のものが好ましく、スズ酸塩の水性溶液お
よび珪酸塩の水性溶液としては、それぞれSnO2およ
びSiO2として0.1〜30重量%濃度のものが好ま
しい。この(c)工程においては、タングステン酸塩、
スズ酸塩および珪酸塩を含有する水性溶液の調製は、攪
拌下に室温〜100℃、好ましくは室温〜60℃程度で
行うのがよい。
【0020】次に、このようにして調製された各塩を含
有する水性溶液中に存在する陽イオンを除去する。この
陽イオンを除去する方法としては、例えば水素型イオン
交換体と接触させる方法や塩析処理する方法などを用い
ることができる。上記水素型イオン交換体としては、特
に制限はなく、通常用いられているもの、例えば市販品
の水素型陽イオン交換樹脂を用いることができる。この
ようにして、粒子径が2〜7nm、好ましくは2〜5n
mの酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合
体コロイド粒子を含有する水性ゾルが得られる。このコ
ロイド粒子の粒子径は、電子顕微鏡により観測すること
ができる。
【0021】この水性ゾルにおけるWO3、SnO2およ
びSiO2の合計濃度は、通常40重量%以下である。
この濃度が40重量%を超えるとゾルの安定性が悪くな
るおそれがあるし、またあまり低すぎると実用的でない
ので、2重量%以上が好ましく、特に5〜30重量%の
範囲が好ましい。陽イオン除去処理後の水性ゾルは、濃
度が低い場合には、通常の濃縮方法、例えば蒸発法、限
外濾過法などにより、ゾルの濃度を高めることができ
る。特に限外濾過法は好ましい。この濃縮においても、
ゾルの温度は約100℃以下、特に60℃以下に保つこ
とが好ましい。
【0022】なお、濃縮法として限外濾過法を用いる
と、ゾル中に共存しているポリアニオン、極微小粒子な
どが水と一緒に限外濾過膜を通過するので、ゾルの不安
定化の原因であるこれらポリアニオン、極微小粒子など
をゾルから除去することができる。
【0023】この水性ゾルにおいては、酸化タングステ
ン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子は、
WO3/SnO2重量比およびSiO2/SnO2重量比と
して、それぞれ0.1〜100の範囲にあるものが好適
である。各重量比が上記範囲を逸脱するとゾルの安定性
が低下したり、所望の性能を有する変性複合体ゾルが得
られにくく、好ましくない。
【0024】また、この水性ゾルのpHは1〜9の範囲
が好適である。pHが1未満ではゾルの安定性が悪くな
るおそれがあるし、9を超えると酸化タングステン−酸
化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子が液中で溶
解しやすくなる。
【0025】このpHの調整は酸性物質またはアルカリ
性物質を用いて行われ、酸性物質としては、特に制限は
ないが、後で説明するオリガノゾルを作製する場合に
は、ゾルの安定性などの面から、オキシカルボン酸が好
ましい。このオキシカルボン酸の例としては、乳酸、酒
石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、グリコール酸
などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸は1種用
いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、
またその使用量は、ゾル中のWO3、SnO2およびSi
2の合計量に対して30重量%未満が好ましく、30
重量%以上では、そのゾルを用いて得られた変性複合体
ゾルの硬化被膜の耐水性が低下する原因となる。
【0026】一方、アルカリ性物質の例としては、L
i、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属水酸化物
やアンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、イソ
プロピルアミン、n−プロピルアミンなどのアルキルア
ミン、ベンジルアミンなどのアラルキルアミン、ピペリ
ジンなどの脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリ
エタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げ
られる。これらのアルカリ性物質は1種用いてもよい
し、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また上記酸
性物質と併用することができる。
【0027】このようにして得られた酸化タングステン
−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルは、無色透明な
いしコロイド色を有する液である。そして、室温では3
ヶ月以上、60℃でも1ヶ月以上安定であり、このゾル
中に沈降物が生成することがなく、また、このゾルが増
粘したり、ゲル化を起すようなことはない。なお、この
(c)工程で得られた水性ゾルの水を親水性有機溶剤で
置換することによりオルガノゾルと呼ばれる親水性有機
溶媒ゾルが得られる。
【0028】また、(c)工程で得られた酸化タングス
テン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルは、酸化第
二スズと酸化タングステンと二酸化珪素が原子レベルで
均一に複合(固溶)して得られた酸化タングステン−酸
化第二スズ−二酸化珪素からなる複合体粒子を含有す
る。したがって、酸化タングステンゾル、酸化第二スズ
ゾル及び二酸化珪素ゾルの3種のゾルを単に混合して得
られるものではない。この酸化タングステン−酸化第二
スズ−二酸化珪素の複合体ゾルは、酸化タングステン−
酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体粒子が固溶体を形成
しているために、溶媒置換によっても酸化タングステン
粒子、酸化第二スズ粒子及び二酸化珪素粒子に分解する
ことはない。さらに、その酸化タングステン−酸化第二
スズ−二酸化珪素の複合体ゾルは、酸化タングステン−
酸化第二スズの複合ゾルに比べ、基材に被覆して被膜を
形成した際に、耐水性、耐湿性、及び耐候性が向上す
る。
【0029】(d)工程:この(d)工程は、前記
(b)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
複合体水性ゾルと(c)工程で得られた酸化タングステ
ン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルとを混合し
て、変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾ
ルを生成させる工程である。
【0030】この工程においては、(b)工程で得られ
た酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾル(核ゾ
ル)と、その金属酸化物(ZrO2+SnO2)として1
00重量部に対し、(c)工程で得られた酸化タングス
テン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾル(被覆ゾ
ル)をこのゾルのWO3、SnO2及びSiO2の合計と
して2〜100重量部になるような割合で混合する操作
が行われる。この混合は、強攪拌下で、通常0〜100
℃、好ましくは室温〜60℃の範囲の温度で行うのが有
利である。被覆ゾルの金属酸化物(WO3+SnO2+S
iO2)の合計量が、核ゾルの金属酸化物(ZrO2+S
nO2)の合計量100重量部に対し、2重量部未満で
は安定なゾルが得られないし、100重量部を超えると
変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾルと残存
核ゾルとの混合ゾルとなり、好ましくない。
【0031】これにより、酸化タングステン−酸化第二
スズ−二酸化珪素複合体ゾルのコロイド粒子を酸化第二
スズ−酸化ジルコニウム複合ゾルのコロイド粒子表面に
結合させて、該表面を上記酸化タングステン−酸化第二
スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子で被覆すること
によって、そのコロイド粒子を核として表面が酸化タン
グステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体の性質を有
するように変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウムの複合
コロイド粒子を生成させることができ、そしてこの変性
酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子が
液媒体に安定に分散したゾルとして得ることができる。
【0032】この(d)工程の混合によって得られたゾ
ル中の変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロ
イド粒子は、電子顕微鏡によって観察することができ、
通常4.5〜60nmの粒子径を有する。上記混合によ
って得られたゾルはpHほぼ1〜9を有しているが、改
質のために用いたオキシジルコニウム塩に由来するCl
-、NO3 -、CH3COO-などのアニオンを多く含有し
ているために、コロイド粒子はミクロ凝集を起こしてお
り、ゾルの透明性が低くなっている。
【0033】本発明による酸化タングステン−酸化第二
スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子によって表面が
被覆された変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
複合コロイド粒子はゾル中で負に帯電している。上記酸
化第二スズ−酸化ジルコニウム複合コロイド粒子は陽に
帯電しており、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸
化珪素複合体のコロイド粒子は負に帯電している。した
がって、(d)工程の混合によりこの陽に帯電している
酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合コロイド粒子の周
りに負に帯電している酸化タングステン−酸化第二スズ
−二酸化珪素複合体のコロイド粒子が電気的に引き寄せ
られ、そして陽帯電のコロイド粒子表面上に化学結合に
よって酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複
合体のコロイド粒子が結合し、この陽帯電の粒子を核と
してその表面を酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸
化珪素複合体が覆ってしまうことによって、変性された
酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合コロイド粒子が生
成したものと考えられる。
【0034】(e)工程:この(e)工程は、上記
(d)工程で得られた変性酸化第二スズ−酸化ジルコニ
ウム複合体水性ゾルを陰イオン交換体と接触させ、該ゾ
ル中に存在する陰イオンを除去する工程である。
【0035】陰イオン交換体との接触処理は、通常10
0℃以下、好ましくは室温〜60℃の範囲の温度で行わ
れる。該陰イオン交換体としては、市販品の水酸基型陰
イオン交換樹脂を用いることができるが、特にアンバー
ライト410のような強塩基型のものが好適である。ま
た、この陰イオン交換体による処理は、(d)工程での
混合により得られたゾルの金属酸化物濃度が1〜10重
量%の範囲で行うのが有利である。このようにして、ゾ
ル中の陰イオンを除去することにより、pH3〜11
で、透明性の良い、安定な変性酸化第二スズ−酸化ジル
コニウム複合体コロイド粒子のゾルを得ることができ
る。
【0036】また、このようにして得られた変性酸化第
二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾルの濃度を更に高め
たい場合には、最大約50重量%まで常法、例えば蒸発
法、限外濾過法などにより濃縮することができる。また
このゾルのpHを調整したい場合には、濃縮後に、前記
アルカリ金属水酸化物やアンモニア、前記アミン、オキ
シカルボン酸などをゾルに加えることによって行うこと
ができる。特に、上記金属酸化物(ZrO2+SnO2
と(WO3+SnO2+SiO2)の合計濃度が10〜4
0重量%であるゾルは実用的に好ましい。
【0037】この変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
複合体ゾルにおいては、pHが3未満ではゾルが不安定
になりやすいし、11を超えると、変性酸化第二スズ−
酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を覆っている酸化
タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体が液中
に溶解しやすい。更に変性酸化第二スズ−酸化ジルコニ
ウム複合体コロイド粒子のゾル中の金属酸化物(ZrO
2+SnO2)と(WO3+SnO2+SiO2)の合計濃
度が50重量%を超えるとゾルが不安定となり易い。
【0038】また、この変性酸化第二スズ−酸化ジルコ
ニウム複合体ゾルが水性ゾルである場合は、この水性ゾ
ルの水媒体を親水性有機溶剤で置換することによりオル
ガノゾルが得られる。この置換は、蒸留法、限外濾過法
など通常の方法により行うことができる。この親水性有
機溶剤の例としては、メチルアルコール、エチルアルコ
ール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール
類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトア
ミドなどの直鎖アミド類、N−メチル−2−ピロリドン
などの環状アミド類、エチルセロソルブ、エチレングリ
コールなどのグリコール類などが挙げられる。
【0039】本発明のコーティング組成物において、
(A)成分として用いられる変性酸化第二スズ−酸化ジ
ルコニウム複合体コロイド粒子を含む、前記(a)〜
(e)工程で得られたゾルは、室温では3ヶ月以上、6
0℃でも1ヶ月以上安定であり、このゾル中に沈降物が
生成することがなく、また、このゾルが増粘したり、ゲ
ル化を起すようなことはない。そして無色透明であっ
て、その硬化被膜は約1.7〜1.8の屈折率を示し、
また、結合強度、硬度のいずれも高く、耐光性、帯電防
止性、耐熱性、耐摩耗性なども良好である。また、特に
耐水性、耐湿性が従来のものに比べ格段に向上してい
る。これは、酸化タングステン−酸化第二スズ−酸化珪
素コロイド粒子中の二酸化珪素成分により硬化被膜中に
シロキサン結合が形成され、これにより、耐水性、耐湿
性が向上したものと推測される。
【0040】本発明のコーティング組成物においては、
(B)成分として有機珪素化合物が用いられる。この有
機珪素化合物としては、例えば一般式(I) R1nSi(OR24-n …(I) (式中、R1は官能基を有する若しくは有しない一価の
炭素数1〜20の炭化水素基、R2は炭素数1〜8のア
ルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基、
nは0、1または2を示し、R1が複数ある場合、複数
のR1はたがいに同一でも異なっていてもよいし、複数
のR2Oはたがいに同一でも異なっていてもよい。)で
表される化合物、一般式(II)
【化2】 (式中、R3およびR4は、それぞれ同一または異なる炭
素数1〜4のアルキル基またはアシル基、R5およびR6
は、それぞれ同一または異なる一価の炭素数1〜5の官
能基を有する若しくは有しない炭化水素基、Yは炭素数
2〜20の二価の炭化水素基、aおよびbは、それぞれ
0または1を示し、複数のOR3は、たがいに同一でも
異なっていてもよいし、複数のOR4はたがいに同一で
も異なっていてもよい。)で表される化合物およびそれ
らの加水分解物の中から選ばれる少なくとも1種が挙げ
られる。
【0041】前記一般式(I)において、R1で示され
る炭素数1〜20の一価の炭化水素基としては、炭素数
1〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数
2〜20の直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基、炭素
数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル
基を挙げることができる。ここで、炭素数1〜20のア
ルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、
例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル
基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オ
クチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが
挙げられる。また、炭素数2〜20のアルケニル基とし
ては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、例え
ばビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オ
クテニル基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリー
ル基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、例え
ばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基など
が挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基として
は、炭素数7〜10のものが好ましく、例えばベンジル
基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチ
ル基などが挙げられる。
【0042】これらの炭化水素基には官能基が導入され
ていてもよく、該官能基としては、例えばハロゲン原
子、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプ
ト基、シアノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが
挙げられる。これらの官能基を有する炭化水素基として
は、該官能基を有する炭素数1〜10のアルキル基が好
ましく、例えばγ−クロロプロピル基、3,3,3−ト
リクロロプロピル基、クロロメチル基、グリシドキシメ
チル基、α−グリシドキシエチル基、β−グリシドキシ
エチル基、α−グリシドキシプロピル基、β−グリシド
キシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、α−グ
リシドキシブチル基、β−グリシドキシブチル基、γ−
グリシドキシブチル基、δ−グリシドキシブチル基、
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル基、β−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、δ−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、N−
(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、γ−ア
ミノプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、β−シア
ノエチル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ
−アクリロイルオキシプロピル基などが挙げられる。
【0043】一方、R2のうちの炭素数1〜8のアルキ
ル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、
その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s
ec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘ
キシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが
挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、ト
リル基などが挙げられ、アラルキル基としては、例えば
ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。また、ア
シル基としては、例えばアセチル基などが挙げられる。
【0044】nは0、1または2であり、R1が複数あ
る場合、複数のR1はたがいに同一であってもよいし、
異なっていてもよく、また、複数のR2Oはたがいに同
一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】前記一般式(I)で表される化合物の例と
しては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プ
ロピルシリケート、イソプロピルシリケート、n−ブチ
ルシリケート、sec−ブチルシリケート、tert−
ブチルシリケート、テトラアセトキシシラン、メチルト
リメトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチ
ルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、
メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアミロキシシ
ラン、メチルトリフノキシシラン、メチルトリベンジル
オキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グ
リシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメ
チルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリ
メトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシ
シラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グ
リシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプ
ロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル
トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエ
トキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキ
シシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシ
ラン、α−グリシドキシブチルトリメト シシラン、α
−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシ
ドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブ
チルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリ
メトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシ
シラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4
−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラ
ン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエ
トキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシ
ル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキ
シシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポ
キシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)
エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシ
クロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメト
キシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)
プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシ
シクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−
(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキ
シシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラ
ン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−
グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリ
シドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシド
キシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシ
エチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロ
ピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピ
ルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピル
メチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメ
チルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチ
ルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチル
ジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジ
プロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシ
シラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシ
シラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラ
ン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキ
シシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメ
トキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニル
トリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキ
シシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシン、
3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−
メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−シアノエ
チルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシ
ラン、クロロメチルトリエトキシシラン、N−(β−ア
ミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメ
チルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメ
トキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノ
プロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエ
チル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、
ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシ
シラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジ
エトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシ
シラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、
ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリロイルオキ
シプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイ
ルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカ
プトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプト
プロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメト
キシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどが挙げ
られる。
【0046】一方、前記一般式(II)において、R3
よびR4のうちの炭素数1〜4のアルキル基としては、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル
基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、
tert−ブチル基が挙げられ、アシル基としては、ア
セチル基が好ましく挙げられる。このR3およびR4はた
がいに同一であってもよいし、異なっていてもよい。ま
た、R5およびR6で示される一価の炭素数1〜5の炭化
水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基および炭素
数2〜5のアルケニル基が挙げられる。これらは直鎖
状、分岐状のいずれであってもよく、アルキル基の例と
しては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプ
ロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert
−ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、アルケニル基
としては、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基など
が挙げられる。
【0047】これらの炭化水素基には官能基が導入され
ていてもよく、該官能基および官能基を有する炭化水素
基としては、前記一般式(I)のR1の説明で例示した
ものと同じものを挙げることができる。このR5および
6はたがいに同一であってもよいし、異なっていても
よい。Yで示される炭素数2〜20の二価の炭化水素基
としては、炭素数2〜10のアルキレン基およびアルキ
リデン基が好ましく、例えばメチレン基、エチレン基、
プロピレン基、ブチレン基、エチリデン基、プロピリデ
ン基などが挙げられる。
【0048】aおよびbは、それぞれ0または1を示
し、複数のOR3は、たがいに同一でも異なっていても
よいし、複数のOR4はたがいに同一でも異なっていて
もよい。
【0049】前記一般式(II)で表される化合物の例と
しては、メチレンビス(メチルジメトキシシラン)、エ
チレンビス(エチルジメトキシシラン)、プロピレンビ
ス(エチルジエトキシシラン)、ブチレンビス(メチル
ジエトキシシラン)などが挙げられる。
【0050】本発明のコーティング組成物においては、
(B)成分の有機珪素化合物として、一般式(I)、
(II)で表される化合物およびその加水分解物の中から
適宜1種選択して用いてもよいし、2種以上を選択し、
組み合わせて用いてもよい。また、加水分解物は、一般
式(I)、(II)で表される有機珪素化合物に、水酸化
ナトリウムやアンモニアの水溶液などの塩基性水溶液、
酢酸水溶液やクエン酸水溶液などの酸性水溶液を添加
し、攪拌することにより調製することができる。
【0051】本発明のコーティング組成物における前記
(A)成分の変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合
体コロイド粒子と(B)成分の有機珪素化合物の含有割
合については、(B)成分100重量部当たり、(A)
成分を、固形分として1〜500重量部の割合で含有す
るのが好ましい。(A)成分の量が1重量部未満では硬
化被膜の屈折率が低くなり、基材への適用範囲が限定さ
れるおそれがあるし、500重量部を超えると硬化被膜
と基材との間にクラックなどが生じやすくなる上、硬化
被膜の透明性が低下する原因となる。
【0052】本発明のコーティング組成物は、光学基材
に適用するのが好ましく、この光学基材としては、例え
ばメチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレ
ートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする
共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネー
ト単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボ
ネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とす
る共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合
体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニ
ル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリウレタン、ポリチオウレタンなどのプラスチッ
ク基材を挙げることができる。審美性(すなわち、コー
ティング膜とレンズ基材との屈折率差による干渉縞の発
生がない)ことを考慮すると特に、屈折率が1.55〜
1.62であるプラスチックレンズが適している。
【0053】本発明のコーティング組成物には、所望に
より、反応を促進するために硬化剤を、種々の基材とな
るレンズとの屈折率をあわせるために微粒子金属酸化物
を、また塗布時における濡れ性を向上させ、硬化膜の平
滑性を向上させる目的で各種の有機溶剤や界面活性剤を
含有させることもできる。さらに、紫外線吸収剤、酸化
防止剤、光安定剤等も硬化膜の物性に影響を与えない限
り添加することも可能である。
【0054】前記硬化剤の例としては、アリルアミン、
エチルアミンなどのアミン類、またルイス酸やルイス塩
基を含む各種酸や塩基、例えば有機カルボン酸、クロム
酸、次亜塩素酸、ホウ酸、過塩素酸、臭素酸、亜セレン
酸、チオ硫酸、オルトケイ酸、チオシアン酸、亜硝酸、
アルミン酸、炭酸などを有する塩または金属塩、さらに
アルミニウム、ジルコニウム、チタニウムを有する金属
アルコキシドまたはこれらの金属キレート化合物などが
挙げられる。また、前記微粒子状金属酸化物としては、
従来公知のもの、例えば酸化アルミニウム、酸化チタ
ン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、
酸化セリウム、酸化鉄などの微粒子が挙げられる。
【0055】コーティング組成物の硬化は、通常熱風乾
燥または活性エネルギー線照射によって行われ、硬化条
件としては、70〜200℃の熱風中にて行うのがよ
く、特に好ましくは90〜150℃が望ましい。なお活
性エネルギー線としては遠赤外線などがあり、熱による
損傷を低く抑えることができる。
【0056】本発明のコーティング組成物を用い、その
硬化被膜を基材上に形成する方法としては、上述したコ
ーティング組成物を基材に塗布する方法が挙げられる。
塗布手段としてはディッピング法、スピンコーティング
法、スプレー法など通常行われる方法が適用できるが、
面精度の面からディッピング法、スピンコーティング法
が特に望ましい。
【0057】さらに上述したコーティング組成物を基材
に塗布する前に、基材に酸、アルカリ、各種有機溶剤に
よる化学的処理、プラズマ、紫外線などによる物理的処
理、各種洗剤を用いる洗剤処理、サンドブラスト処理、
更には各種樹脂を用いたプライマー処理を施すことによ
って、基材と硬化膜との密着性などを向上させることが
できる。
【0058】本発明のコーティング組成物を用いてなる
硬化被膜を有する光学部材は、眼鏡レンズの他、カメラ
用レンズ、自動車の窓ガラス、ワードプロッセサーのデ
ィスプレイに付設する光学フィルタなどに使用すること
ができる。
【0059】
【実施例】次に、本発明を実施例により、さらに詳細に
説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定
されるものではない。なお、各例で得られた硬化膜を有
する光学部材は、以下に示す方法により、諸物性を測定
した。
【0060】(1)初期物性試験 得られた硬化膜付き光学部材を、室温で1日間放置した
後、以下の(イ)〜(ニ)の評価を行った。 (イ)耐擦傷性評価 スチールウール#0000で硬化膜の表面を2kgの荷
重を掛けて前後に20往復擦すり、傷のつきにくさを目
視で判断した。判断基準は以下のとおりである。 ◎………ほとんど傷がつかない ○………5本未満の傷が入る △………5本以上10本未満の傷が入る ×………10本以上〜光学基板と同等の傷が入る
【0061】(ロ)干渉縞の評価 蛍光灯下で硬化膜を有する光学部材を目視で判断した。
判断基準は以下のとおりである。 ◎………干渉縞が見えない ○………干渉縞がほとんど見えない △………少し見える ×………かなり見える
【0062】(ハ)密着性評価 硬化膜に1.5mm間隔で100目クロスカットし、こ
のクロスカットした所に粘着テープ(商品名:セロテー
プ ニチバン(株)製品)を強く貼り付けた後、粘着テー
プを急速に剥がした後の硬化膜の剥離の有無を調べた。
判断基準は以下のとおりである。 ◎………剥離なし ○………剥離数1〜10目 △………剥離数11〜50目 ×………剥離数51〜100目
【0063】(ニ)透明性評価 暗室内、蛍光灯下で硬化膜に曇りがあるかどうかを目視
で調べた。判断基準は以下のとおりである。
【0064】 ◎………・曇りがみえない ○………・曇りがほとんどみえない △………・少し見える ×………・かなり見える
【0065】(2)耐湿性試験 40℃、90%RH条件下、恒温恒湿試験機(ヤマトエ
ンジニアリング社製)中に光学部材を1週間放置した
後、前述した(イ)〜(ニ)の評価を行った。
【0066】(3)耐光性試験 得られた光学部材にキセノンロングライフウエザーメー
ター(スガ試験機(株))にて200時間照射を行い、前
述した(イ)〜(ニ)の評価を行った。
【0067】製造例1 変性酸化第二スズ−酸化ジルコ
ニウム複合体ゾルの製造 <酸化第二スズゾルの調製>金属スズ粉末と塩酸水溶液
と過酸化水素水溶液との反応により得られた比重1.4
20、pH0.40、撹拌直後の粘度32mPa・s、
SnO2含量33.0重量%、HCl含量2.56重量
%、電子顕微鏡による紡錘状コロイド粒子径10nm以
下、BET法による粒子の比表面積120m2/g、こ
の比表面積からの換算粒子径7.2nm、米国コールタ
ー社製N4装置による動的光散乱法粒子径107nm、
淡黄色透明の酸化第二スズ水性ゾル1200gを水10
800gに分散させた後、これにイソプロピルアミン
4.8gを加え、次いで、この液を水酸基型陰イオン交
換樹脂充填のカラムに通すことにより、アルカリ性の酸
化第二スズ水性ゾル13440gを得た。このゾルは、
安定であり、コロイド色を呈しているが、透明性が非常
に高く、比重1.029、pH9.80、粘度1.4m
Pa・s、SnO2含量2.95重量%、イソプロピル
アミン含量0.036重量%であった。
【0068】(a)工程 試薬のオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H
2O)を水に溶解して調製したオキシ塩化ジルコニウム
水溶液(ZrO2として2.0重量%)3043g(Z
rO2として60.87g含有する。)に撹拌下に、室
温で、上記調製したアルカリ性の酸化第二スズ水性ゾル
10791g(SnO2として409.5g)を添加
し、二時間撹拌を続行した。混合液はZrO2/SnO2
重量比0.15、pH1.50でコロイド色を有する透
明性の良好なゾルであった。
【0069】(b)工程(酸化第二スズ−酸化ジルコニ
ウム複合体ゾルの作製) (a)工程で調製した混合液を撹拌下に、90℃で5時
間加熱処理を行い、酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複
合体ゾル13834gを得た。このゾルはSnO2とし
て2.96重量%、ZrO2として0.44重量%、S
nO2+ZrO2として3.40重量%、pH1.45
で、粒子径9.0nm、コロイド色を有するが、透明性
は良好であった。
【0070】(c)工程(酸化タングステン−酸化第二
スズ−二酸化珪素複合体ゾルの作製) 3号珪そう(SiO2として29.0重量%含有す
る。)113gを水2353.7gに溶解し、次いでタ
ングステン酸ナトリウムNa2WO4・2H2O(WO3
して71重量%含有する。)33.3gおよびスズ酸ナ
トリウムNaSnO3・H2O(SnO2として55重量
%含有する。)42.45gを溶解する。次いでこれを
水素型陽イオン交換樹脂のカラムに通すことにより酸性
の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体
ゾル(pH2.1、WO3として0.75重量%、Sn
2として0.75重量%、SiO2として1.00重量
%を含有し、WO3/SnO2重量比1.0、SiO2
SnO2重量比1.33であり、粒子径2.5nmであ
った。)3150gを得た。
【0071】(d)工程 (c)工程で調製した酸化タングステン−酸化第二スズ
−二酸化珪素複合体ゾル3150g(WO3+SnO2
SiO2として78.83gを含有する。)に撹拌下
に、室温で(b)工程で調製した酸化第二スズ−酸化ジ
ルコニウム複合体ゾル11592.6g(ZrO2+S
nO2として394.1g含有する。)を20分で添加
し、30分間撹拌を続行した。得られた混合液は酸化第
二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド(ZrO2
SnO2)と酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化
珪素複合体コロイド(WO3+SnO2+SiO2)の比
は(WO3+SnO2+SiO2)/(ZrO2+Sn
2)重量比0.20、pH2.26、全金属酸化物
3.2重量%であり、コロイド粒子のミクロ凝集による
白濁傾向を示した。
【0072】(e)工程(変性酸化第二スズ−酸化ジル
コニウム複合体ゾルの作製) (d)工程で得た混合液14742.6gにジイソブチ
ルアミンを9.5g添加し、次いで水酸基型陰イオン交
換樹脂(アンバーライト410)を充填したカラムに室
温で通液、次いで80℃で1時間加熱熟成することによ
り変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾル
(希薄液)16288gを得た。このゾルは全金属酸化
物2.90重量%、pH10.43で、コロイド色は呈
するが透明性は良好であった。
【0073】(e)工程で得られた変性酸化第二スズ−
酸化ジルコニウム複合体水性ゾル(希薄液)を、分画分
子量5万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、
高濃度の変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水
性ゾル2182gを得た。このゾルはpH8.71、全
金属酸化物(ZrO2+SnO2+WO3+SiO2)1
8.3重量%で、安定であった。
【0074】上記高濃度の変性酸化第二スズ−酸化ジル
コニウム複合体水性ゾル2182gに撹拌下に、室温で
酒石酸4.0g、ジイソブチルアミン6.0g、消泡剤
(サンノプコ社製SNディフォーマー483)1滴を加
え、1時間撹拌した。このゾルを攪拌機付き反応フラス
コで常圧下、メタノール20リットルを少しずつ加えな
がら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノー
ルで置換した変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合
体メタノールゾル1171gを得た。このゾルは比重
1.124、pH7.45(水との等重量混合物)、粘
度2.3mPa・s、全金属酸化物(ZrO2+SnO2
+WO3+SiO2)32.7重量%、水分0.47重量
%、電子顕微鏡観察による粒子径は10〜15nmであ
った。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室
温で3ケ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘などの異
常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の
屈折率は1.76であった。
【0075】実施例1 (1)コーティング組成物の調製 回転子を備えた反応器に、γ−グリシドキシプロピルト
リメトキシシラン15重量部と、製造例1で得られた変
性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体メタノールゾ
ル49重量部を仕込み、4℃で3時間攪拌したのち、
0.001規定の塩酸3.5重量部を徐々に反応器中に
滴下し、4℃で48時間攪拌した。次に、これにプロピ
レングリコールモノメチルエーテル30重量部およびシ
リコーン系界面活性剤0.04重量部を添加混合し、4
℃で3時間攪拌したのちアルミニウムアセチルアセトネ
ート0.60重量部および過塩素酸アルミニウム(アル
ドリッチ社製)0.05重量部を添加混合した。4℃で
3日間攪拌したのち、4℃で2日間静置することによ
り、コーティング組成物を調製した。
【0076】(2)硬化膜の形成および評価 10重量%のNaOH水溶液で前処理したプラスチック
レンズ基材(HOYA(株)製、眼鏡用プラスチックレ
ンズ、屈折率1.60)を、上記(1)で作製したコー
ティング組成物中に5秒間浸漬させ、浸漬終了後引き上
げ速度20cm/分で引き上げたプラスチックレンズを
120℃で1時間加熱して硬化膜を形成した。得られた
硬化膜付きプラスチックレンズの評価結果を表1に示
す。
【0077】実施例2 実施例1で得られた硬化膜を施したプラスチックレンズ
基材を蒸着装置に入れ、排気しながら85℃に加熱し、
2x10-5torrまで排気した後、電子ビーム加熱法
にて蒸着原料を蒸着させて、SiO2からなる膜厚0.
6λの下地層、この下地層の上にTa25、ZrO2
23からなる混合層(nd=2.05、nλ=0.0
75λ)とSiO2層(nd=1.46、nλ=0.0
56λ)からなる第一屈折層、Ta25、ZrO2、Y2
3からなる混合層(nd=2.05、nλ=0.07
5λ)とSiO2層からなる第2低屈折率層(nd=
1.46、nλ=0.25λ)を形成して反射防止膜を
施した。このプラスチックレンズの評価結果を表1に示
す。
【0078】実施例3 実施例1(1)において、γ−グリシドキシプロピルト
リメトキシシラン15重量部の代わりに、β−(3,4
−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
15重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実施し
た。評価結果を表1に示す。
【0079】実施例4 実施例2において、実施例1で得られたものの代わりに
実施例3で得られた硬化膜を施したプラスチックレンズ
基材を用いた以外は、実施例2と同様に実施した。評価
結果を表1に示す。
【0080】実施例5 実施例1(1)において、γ−グリシドキシプロピルト
リメトキシシラン15重量部の代わりに、テトラメトキ
シシラン(メチルシリケート)15重量部を用い、硬化
剤としてアルミニウムアセチルアセトネート0.60重
量部の代わりに、無水トリメリット酸0.60重量部を
用いた以外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を
表1に示す。
【0081】実施例6 実施例2において、実施例1で得られたものの代わりに
実施例5で得られた硬化膜を施したプラスチックレンズ
基材を用いた以外は、実施例2と同様に実施した。評価
結果を表1に示す。
【0082】比較例1 実施例1(1)において、製造例1で得た変性酸化第二
スズ−酸化ジルコニウム複合体メタノールゾル49重量
部の代わりに、特開平6−27301号公報に記載され
ている変性酸化第二スズ−酸化タングステン複合体ゾル
49重量部を用いた以外は、実施例1と同様に実施し
た。評価結果を表1に示す。
【0083】比較例2 実施例2において、実施例1で得られたものの代わりに
比較例1で得られた硬化膜を施したプラスチックレンズ
基材を用いた以外は、実施例2と同様に実施した。評価
結果を表1に示す。
【0084】比較例3 実施例1(1)において、製造例1で得た変性酸化第二
スズ−酸化ジルコニウム複合体メタノールゾル49重量
部の代わりに、特開平6−27301号公報に記載され
ている酸化タングステン−酸化第二スズ複合体ゾル49
重量部およびメタノール分散シリカゾル(粒子径10〜
20nm、固形分20重量%)10重量部を用いた以外
は、実施例1と同様に実施した。評価結果を表1に示
す。
【0085】比較例4 実施例2において、実施例1で得られたものの代わりに
比較例3で得られた硬化膜を施したプラスチックレンズ
基材を用いた以外は、実施例2と同様に実施した。評価
結果を表1に示す。
【0086】比較例5 実施例1(1)において、製造例1で得た変性酸化第二
スズ−酸化ジルコニウム複合体メタノールゾル49重量
部の代わりに、メタノール分散シリカゾル(粒子径10
〜20nm、固形分20重量%)49重量部を用いた以
外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を表1に示
す。
【0087】比較例6 実施例2において、実施例1で得られたものの代わりに
比較例5で得られた硬化膜を施したプラスチックレンズ
基材を用いた以外は、実施例2と同様に実施した。評価
結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】表1から分かるように、実施例1〜6の硬
化膜を有する光学部材は、耐擦傷性、密着性、干渉縞、
透明性、耐湿性、耐候性のいずれも良好である。これに
対し、比較例1、2のものは耐湿性、耐候性が不十分で
あり、比較例3、4のものは耐擦傷性、透明性、耐湿
性、耐候性に劣る。比較例5、6のものは干渉縞が観察
され、審美上問題を有していた。
【0090】
【発明の効果】本発明のコーティング組成物は、耐擦傷
性、耐湿性、耐候性などに優れると共に、その上に無機
酸化膜の蒸着膜を施しても上記特性の低下がほとんどな
い硬化被膜を形成することができ、しかも高屈折率プラ
スチックレンズ上に硬化被膜を設けた場合でも干渉縞の
発生が認められず、特に光学部材用として好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 啓太郎 千葉県袖ヶ浦市北袖11番1 日産化学工業 株式会社袖ヶ浦工場内 (72)発明者 小山 欣也 千葉県船橋市坪井町722番地1 日産化学 工業株式会社中央研究所内 (72)発明者 飯島 根子 千葉県船橋市坪井町722番地1 日産化学 工業株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4F006 AA11 AA15 AA22 AA31 AA35 AA36 AA37 AA40 AB67 AB74 BA02 BA03 BA05 CA05 DA01 4J038 AA011 DL032 GA15 HA211 HA216 JC32 KA15 KA20 MA14 PC08

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
    複合体コロイド粒子の表面の少なくとも一部を、酸化第
    二スズ−酸化タングステン−酸化珪素複合体コロイド粒
    子で被覆してなる変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
    複合体コロイド粒子と、(B)有機珪素化合物とを含有
    することを特徴とするコーティング組成物。
  2. 【請求項2】 (A)成分の変性酸化第二スズ−酸化ジ
    ルコニウム複合体コロイド粒子が、酸化第二スズコロイ
    ド粒子と酸化ジルコニウムコロイド粒子とが、ZrO2
    /SnO2重量比として0.02〜1.0の割合で結合
    してなる粒子径4〜50nmの酸化第二スズ−酸化ジル
    コニウム複合体コロイド粒子の表面の少なくとも一部
    を、WO3/SnO2重量比およびSiO2/SnO2重量
    比が、それぞれ0.1〜100である粒子径2〜7nm
    の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体
    コロイド粒子で被覆してなる粒子径4.5〜60nmの
    ものである請求項1に記載のコーティング組成物。
  3. 【請求項3】 (A)成分の変性酸化第二スズ−酸化ジ
    ルコニウム複合体コロイド粒子が、 (a)粒子径4〜50nmの酸化第二スズコロイド粒子
    を、SnO2として0.5〜50重量%濃度で含有する
    酸化第二スズ水性ゾルと、ZrO2として0.5〜50
    重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水性溶液または水
    性懸濁液とを、ZrO2/SnO2重量比として0.02
    〜1.0になるように混合する工程、 (b)上記(a)工程で得られた混合液を加熱処理し、
    粒子径4〜50nmの酸化第二スズ−酸化ジルコニウム
    複合体水性ゾルを生成させる工程、 (c)タングステン酸塩、スズ酸塩および珪酸塩を、W
    3/SnO2重量比およびSiO2/SnO2重量比とし
    て、それぞれ0.1〜100になるような割合で含有す
    る水性溶液を調製し、その水性溶液中の陽イオンを除去
    することにより、粒子径2〜7nmの酸化タングステン
    −酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルを生成させる工
    程、 (d)上記(b)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジ
    ルコニウム複合体水性ゾルと(c)工程で得られた酸化
    タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルと
    を、ZrO2とSnO2の合計として100重量部に対
    し、WO3とSnO2とSiO2の合計として2〜100
    重量部になるような割合で混合して、粒子径4.5〜6
    0nmの変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水
    性ゾルを生成させる工程、 および (e)上記(d)工程で得られた変性酸化第二スズ−酸
    化ジルコニウム複合体水性ゾルを陰イオン交換体と接触
    させ、該ゾル中に存在する陰イオンを除去する工程、を
    施すことにより、得られたものである請求項1または2
    に記載のコーティング組成物。
  4. 【請求項4】 (B)成分の有機珪素化合物が、一般式
    (I) R1nSi(OR24-n …(I) (式中、R1は官能基を有する若しくは有しない一価の
    炭素数1〜20の炭化水素基、R2は炭素数1〜8のア
    ルキル基、アリール基、アラルキル基またはアシル基、
    nは0、1または2を示し、R1が複数ある場合、複数
    のR1はたがいに同一でも異なっていてもよいし、複数
    のR2Oはたがいに同一でも異なっていてもよい。)で
    表される化合物、一般式(II) 【化1】 (式中、R3およびR4は、それぞれ同一または異なる炭
    素数1〜4のアルキル基またはアシル基、R5およびR6
    は、それぞれ同一または異なる一価の炭素数1〜5の官
    能基を有する若しくは有しない炭化水素基、Yは炭素数
    2〜20の二価の炭化水素基、aおよびbは、それぞれ
    0または1を示し、複数のOR3は、たがいに同一でも
    異なっていてもよいし、複数のOR4はたがいに同一で
    も異なっていてもよい。)で表される化合物およびそれ
    らの加水分解物の中から選ばれる少なくとも1種である
    請求項1、2または3に記載のコーティング組成物。
  5. 【請求項5】 (B)成分の有機珪素化合物100重量
    部当たり、(A)成分のコロイド粒子を固形分として1
    〜500重量部の割合で含有する請求項1〜4のいずれ
    か1項に記載のコーティング組成物。
  6. 【請求項6】 媒体が、水および/または親水性有機溶
    剤である請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティ
    ング組成物。
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