JP2000265280A - 無電解スズ−銀合金メッキ浴及び当該メッキ浴でスズ−銀合金皮膜を施したtabのフィルムキャリア等 - Google Patents

無電解スズ−銀合金メッキ浴及び当該メッキ浴でスズ−銀合金皮膜を施したtabのフィルムキャリア等

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JP2000265280A
JP2000265280A JP11069473A JP6947399A JP2000265280A JP 2000265280 A JP2000265280 A JP 2000265280A JP 11069473 A JP11069473 A JP 11069473A JP 6947399 A JP6947399 A JP 6947399A JP 2000265280 A JP2000265280 A JP 2000265280A
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清貴 辻
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 無電解スズ−銀合金メッキ浴において、浴の
経時安定性を高めてスズと銀を確実に共析化させるとと
もに、皮膜中の銀の組成比を低く抑え、接合強度を向上
する。 【解決手段】 第一スズ塩及び銀塩と、有機スルホン酸
などの有機酸及び無機酸の少なくとも一種と、含窒素系
化合物(チオ尿素又はその誘導体、アミン類)と塩基性窒
素原子を有するスルフィド系化合物の混合物とを含有す
る。含窒素系化合物とスルフィド系化合物を錯化剤とし
て併用するため、その相乗効果によって浴中の銀イオン
が安定化し、スズも円滑に共析化する。このため、本発
明の無電解メッキ浴は高温経時安定性に優れ、スズ−銀
合金皮膜中の銀の組成比を低く抑えて、スズ皮膜などに
比べても遜色のない接合強度や皮膜外観を確保できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は無電解スズ−銀合金
メッキ浴、並びに当該メッキ浴によりスズ−銀合金皮膜
を形成したTABのフィルムキャリアやプリント基板に
関し、浴の高温経時安定性に優れ、銀とスズを確実に共
析化させて、スズ皮膜などに比べても遜色のない接合強
度や外観を有するスズ−銀合金メッキ皮膜を形成できる
ものを提供する。
【0002】
【発明の背景】一般に、銀は種々の化合物と不溶性の塩
類を生成し易いので、メッキ浴中で銀イオンを安定化さ
せることは容易でなく、浴が分解して銀が析出し易い。
また、銀は電気化学的には貴な金属であるため、他の金
属との合金メッキは容易でない。このような実情から、
実用的な無電解スズ−銀合金メッキ浴はあまり知られて
おらず、この分野での優れたメッキ浴の開発が強く望ま
れている。
【0003】
【従来の技術】特開昭62−77481号公報(以下、
従来技術1という)には、無電解スズメッキ浴に銀塩を
約50〜50000ppm(即ち、約0.05〜50g/
L)、或はパラジウム塩を約5〜10000ppm(即
ち、約0.005〜10g/L)の割合で含有させて、ス
ズホイスカーの成長を防止する方法が記載されている
(同公報の請求の範囲及び第5頁右上欄第3行〜第15
行参照)。さらに、上記無電解スズメッキ浴の具体例と
しては、シプレー社製のテイン−ポシト(TIN−POSIT)及
びLT−26が挙げられ、当該LT−26には塩化第一
スズとチオ尿素などが含まれる(同公報の第5頁右下欄
第3行〜第9行参照)。また、同従来技術1の実施例3
には、上記テイン−ポシト溶液60mlに硫酸銀の飽和
水10ml(水100g当たり硫酸銀0.7g)を含有さ
せた無電解メッキ浴が開示されている。そして、このパ
ラジウム塩を含有した無電解メッキ浴により形成された
皮膜は、本質的にパラジウムを約0.1〜20重量%ま
での範囲で含み、残部はスズから成っており、また、浴
に銀塩を含有させた場合には、皮膜に銀が含まれても良
いことが記載されている(同公報の第6頁右下欄第7行
〜第20行参照)。
【0004】一方、特開平6−77292号公報(以
下、従来技術2という)には、ホウフッ化スズとフェノ
ールスルホン酸とチオ尿素と次亜リン酸ナトリウムなど
から構成された、シプレイ・ファーイースト社製の無電
解スズメッキ浴「TINPOSIT LT−34」が開示されている
(同公報の第7段落参照)。
【0005】従って、従来技術1の析出皮膜の共析率の
数値、並びに従来技術2の記述を総合的に判断すると、
上記従来技術1の実施例3に記載された銀塩を含有する
テイン−ポシト溶液は、前記LT−26と同様に、実質
的にチオ尿素を含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴で
あると強く推定できる。また、一方で、実際の無電解ス
ズ−銀合金メッキ処理においては、析出速度を高く保持
して生産性を向上する見地から、60〜70℃の浴温
で、200時間、或はそれ以上の時間に亘って連続運転
するのが一般的である。そこで、この実際的な条件に基
づいて、チオ尿素を含有(或は、これに界面活性剤を追
加)しただけの無電解スズ−銀合金メッキ浴を用いてメ
ッキ処理を試みたところ、高温経時安定性は不充分であ
り、長時間の連続運転では銀が析出して浴が分解してし
まう弊害がある。本発明は、浴の経時安定性が高く、接
合強度などに優れたスズ−銀合金メッキ皮膜を形成でき
る実用性の高い無電解メッキ浴を開発することを技術的
課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、無電解ス
ズ−銀合金メッキ浴中に、ジチオジアニリン、ジピリジ
ルジスルフィドなどの塩基性窒素原子を有するスルフィ
ド系化合物がチオ尿素などと共存すると、メッキ浴の経
時安定性が大幅に改善されてスズと銀の共析化が円滑に
達成されること、得られるスズ−銀合金皮膜の接合強度
や外観も良好に改善されること、また、析出皮膜中の銀
の組成比を低く抑制できることなどを見い出し、本発明
を完成した。
【0007】即ち、本発明1は、(A)第一スズ塩及び銀
塩、(B)有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などの有機
酸、及びホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルフ
ァミン酸などの無機酸の少なくとも一種、(C)チオ尿素
類及びアミン類などの含窒素系化合物と、塩基性窒素原
子を有するスルフィド系化合物との混合物よりなる錯化
剤を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッ
キ浴である。
【0008】本発明2は、上記本発明1において、(C)
の錯化剤が、チオ尿素とジスルフィド化合物の混合物で
あることを特徴とするものである。
【0009】本発明3は、上記本発明1〜2のいずれか
の無電解メッキ浴に、さらに還元剤を含有することを特
徴とするものである。
【0010】本発明4は、上記本発明1〜3のいずれか
の無電解メッキ浴に、さらに界面活性剤を含有すること
を特徴とするものである。
【0011】本発明5は、上記本発明4において、界面
活性剤がノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤の少な
くとも一種であることを特徴とするものである。
【0012】本発明6は、上記本発明1〜5のいずれか
の無電解メッキ浴に、さらに第一銅化合物を含有するこ
とを特徴とするものである。
【0013】本発明7は、上記本発明1〜6のいずれか
の無電解スズ−銀合金メッキ浴を用いて、銅箔上にスズ
−銀合金メッキ皮膜を施すことを特徴とするTABのフ
ィルムキャリア又はプリント基板である。
【0014】
【発明の実施の形態】上記錯化剤は、チオ尿素類及びア
ミン類などの含窒素系化合物と、塩基性窒素原子を有す
るスルフィド系化合物との混合物よりなる。上記チオ尿
素類はチオ尿素とチオ尿素誘導体を包含する概念であ
る。当該チオ尿素誘導体は、基本的に、チオ尿素の窒素
原子或は硫黄原子の1個以上に各種の置換基が結合し
て、分子容がチオ尿素より大きい化合物をいい、具体的
には、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿
素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―
チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリル
チオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,
3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカ
ルバジドなどが挙げられる。一方、上記アミン類は、ア
ミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノ吉草酸、アミノ
酸などのアミノカルボン酸系化合物、エチレンジアミ
ン、テトラメチレンジアミンなどのポリアミン系化合
物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの
アミノアルコール系化合物などを包含する概念である。
上記アミン類のうちのアミノカルボン酸系化合物の具体
例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチ
レンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2N
a)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HED
TA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリ
エチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミ
ンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミ
ノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、メ
タフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロ
ヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピ
オン酸、グルタミン酸、オルニチン、システイン、N,
N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンなどが挙げら
れる。また、上記アミン類のうちのポリアミン系化合
物、アミノアルコール系化合物などの具体例としては、
エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレント
リアミンペンタメチレンリン酸、アミノトリメチレンリ
ン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、モノ
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノー
ルアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールア
ミン、トリプロパノールアミン、メチレンジアミン、エ
チレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチ
レンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレント
リアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレン
ヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルア
ミン、p―メトキシシンナミルアミンなどが挙げられ
る。尚、上記アミン類のうちでは、分子内にアミノ基を
複数個有するポリアミン系化合物、或はアミノカルボン
酸系化合物が好ましい。
【0015】また、上記スルフィド系化合物は分子内に
塩基性窒素原子とスルフィド結合、或はジスルフィド結
合とを有する化合物であり、その具体例は次の(1)〜(2)
の通りである。 (1)モノスルフィド化合物 C25SC25、(iso−C37)−S−(iso−C3
7)、C25S−(iso−C49)、C65SC65
65SCH3、2−エチルチオアニリン、2,2′−ジ
ピリジルスルフィド、HOOCCH2SCH2COOH、
HOOCCH2CH2SCH2CH2COOHなど。 (2)ジスルフィド化合物 CH3SSCH3、C25SSC25、C37SSC
37、C65SSC65、2,2′−ジベンゾチアゾリ
ルジスルフィド、2−(2−アミノエチルジチオ)ピリジ
ン、2,2′−ジチアジアゾリルジスルフィド、5,5′
−ジ(1,2,3−トリアゾリル)ジスルフィド、2,2′
−ジピラジニルジスルフィド、2,2′−ジピリジルジ
スルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、4,4′−ジ
ピリジルジスルフィド、2,2′−ジアミノ−4,4′−
ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2′−ジピリダ
ジニルジスルフィド、5,5′−ジピリミジニルジスル
フィド、2,2′−ジ(5−ジメチルアミノチアジアゾリ
ル)ジスルフィド、5,5′−ジ(1−メチルテトラゾリ
ル)ジスルフィド、2,2′−ジ(1−メチルピロリル)ジ
スルフィド、2−ピリジル−2−ヒドロキシフェニルジ
スルフィド、2,2′−ジピペリジルジスルフィド、2,
2′−ジピリジルジスルフィド、2,6−ジ(2−ピリジ
ルジチオ)ピリジン、2,2′−ジピペラジニルジスルフ
ィド、2,2′−ジ(3,5−ジヒドロキシピリミジニル)
ジスルフィド、2,2′−ジキノリルジスルフィド、2,
2′−α−ピコリルジスルフィド、2,2′−ジ(8−ヒ
ドロキシキノリル)ジスルフィド、5,5′−ジイミダゾ
リルジスルフィド、2,2′−ジチアゾリルジスルフィ
ド、2−ピリジル−2−アミノフェニルジスルフィド、
2−ピリジル−2−キノリルジスルフィド、2,2′−
ジチアゾリニルジスルフィド、2,2′−ジモルホリノ
ジスルフィド、2,2′−ジ(8−メトキシキノリル)ジ
スルフィド、4,4′−ジ(3−メトキシカルボニルピリ
ジル)ジスルフィド、2−ピリジル−4−メチルチオフ
ェニルジスルフィド、2−ピペラジル−4−エトキシメ
チルフェニルジスルフィド、2,2′−ジ{6-(2-ピリ
ジルジチオ)ピリジル}ジスルフィド、2,2′−ジキノ
キサリニルジスルフィド、2,2′−ジプテリジニルジ
スルフィド、3,3′−ジフラザニルジスルフィド、3,
3′−ジフェナントロリニルジスルフィド、8,8′−
ジキノリルジスルフィド、1,1′−ジフェナジニルジ
スルフィド、2,2′−ジピコリルジスルフィド、ジメ
チルアミノジエチルジスルフィド、2,2′−ジペルヒ
ドロインドリルジスルフィド、2−アミノエチル−2′
−ヒドロキシエチルジスルフィド、ジ(2−ピリジルチ
オ)メタンなど。
【0016】本発明の錯化剤である含窒素系化合物とス
ルフィド系化合物は任意に組み合わせることができ、含
窒素系化合物及びスルフィド系化合物は夫々単用又は併
用できる。従って、その錯化剤の組み合わせとしては、
例えば、チオ尿素とジチオジアニリン、チオ尿素とジピ
リジルジスルフィド、1,3−チオ尿素とジチオジアニ
リン、1,3−チオ尿素とジピリジルジスルフィド、チ
オ尿素と5,5′−ジ(1,2,3−トリアゾリル)ジスル
フィド、チオ尿素とDTPAとジチオジアニリン、チオ
尿素とエチレンジアミンとジピリジルジスルフィド、E
DTAとジピリジルスルフィド、チオ尿素とジチオジア
ニリンとジピリジルジスルフィド、アセチルチオ尿素と
DTPAとジピリジルスルフィド、チオ尿素とチオジア
ニリンなどが挙げられ、チオ尿素とジスルフィド化合物
の組み合わせなどが好ましい。上記含窒素系化合物とス
ルフィド系化合物の混合物よりなる錯化剤の添加量は、
合計で0.5〜300g/L、好ましくは20〜200
g/Lである。
【0017】上記第一スズ塩及び銀塩は夫々可溶性塩を
基本とするが、難溶性塩などを排除するものではなく、
任意の塩類を使用できる。なかでも、上記第一スズ塩と
しては、後述する有機スルホン酸との塩類が好ましく、
具体的には、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホ
ン酸第一スズ、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン
酸第一スズ、p−フェノールスルホン酸第一スズなどが
挙げられる。また、上記銀塩としては、硫酸銀、亜硫酸
銀、炭酸銀、スルホコハク酸銀、硝酸銀、有機スルホン
酸銀、ホウフッ化銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン
酸銀、シュウ酸銀、酸化銀などの可溶性塩が使用でき、
また、本来は難溶性であるが、スルフィド系化合物など
の作用によりある程度の溶解度を確保できる塩化銀など
も使用できる。銀塩の好ましい具体例としては、メタン
スルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、2−プロパノール
スルホン酸銀、フェノールスルホン酸銀、ホウフッ化銀
などが挙げられる。当該可溶性第一スズ塩或は可溶性銀
塩の金属塩としての換算添加量は、夫々0.0001〜
200g/Lであり、好ましくは0.1〜80g/Lで
ある。
【0018】本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴のベ
ースを構成する酸としては、排水処理が比較的容易なア
ルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族ス
ルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸
などの有機酸が好ましいが、ホウフッ化水素酸、ケイフ
ッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸な
どの無機酸でも差し支えない。上記の酸は単用又は併用
でき、酸の添加量は0.1〜300g/Lであり、好ま
しくは20〜120g/Lである。
【0019】上記アルカンスルホン酸としては、化学式
n2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜
3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンス
ルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン
酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、
2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、
ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスル
ホン酸などが挙げられる。
【0020】上記アルカノールスルホン酸としては、化
学式 Cm2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0
〜6、p=1〜5) で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキ
シエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―
1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン
酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの
外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒ
ドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブ
タン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―
スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、
2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げら
れる。
【0021】上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベン
ゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノ
ールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフ
タレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフ
タレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエ
ンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールス
ルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、
ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニ
ルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0022】上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、
炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、
酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコ
ン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げら
れる。
【0023】上記還元剤は、前記金属塩の還元用、及び
その析出速度や析出合金比率の調整用などに添加され、
リン酸系化合物、アミンボラン類、水素化ホウ素化合
物、ヒドラジン誘導体などを単用又は併用できる。上記
リン酸系化合物としては、次亜リン酸、亜リン酸、ピロ
リン酸、ポリリン酸、或はこれらのアンモニウム、リチ
ウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩が挙げ
られる。上記アミンボラン類としては、ジメチルアミン
ボラン、トリメチルアミンボラン、イソプロピルアミン
ボラン、モルホリンボランなどが挙げられる。上記水素
化ホウ素化合物としては水素化ホウ素ナトリウムなどが
挙げられる。上記ヒドラジン誘導体としては、ヒドラジ
ン水和物、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジンなど
が挙げられる。上記還元剤の添加量は0.1〜200g
/Lであり、好ましくは10〜150g/Lである。
【0024】本発明の無電解メッキ浴には上述の成分以
外に、目的に応じて公知の界面活性剤、pH調整剤、緩
衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、安定化
補助錯化剤、隠蔽錯化剤、酸化防止剤などの無電解メッ
キ浴に通常使用される添加剤を混合できることは勿論で
ある。
【0025】上記界面活性剤は、ノニオン系界面活性
剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニ
オン系界面活性剤が挙げられ、これら各種の活性剤を単
用又は併用できる。その添加量は0.01〜100g/
L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0026】当該ノニオン系界面活性剤の具体例として
は、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトー
ル、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノー
ル、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキル
ナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソ
ルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1
22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチ
レンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(P
O)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C2 5
アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
【0027】上記エチレンオキシド(EO)及び/又はプ
ロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20
ルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブ
タノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタ
ノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカ
ノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エ
イコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなど
が挙げられる。同じく上記ビスフェノール類としては、
ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノール
Fなどが挙げられる。上記C1〜C25アルキルフェノー
ルとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェ
ノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフ
ェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフ
ェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチル
フェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニ
ルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリル
フェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられ
る。上記アリールアルキルフェノールとしては、2−フ
ェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、
(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ
又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。上記
1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、
メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチ
ル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、
ナフタレン核の任意の位置にあって良い。上記アルキレ
ングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコー
ル、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチ
レンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられ
る。
【0028】上記C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)
は、下記の一般式(a)で表されるものである。
【化1】 (式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アル
キル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアル
カリ金属を示す。)
【0029】上記ソルビタンエステルとしては、モノ、
ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6
−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソル
ビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、
ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステ
ルなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミンとし
ては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミ
ン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、
ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミ
ン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミ
ンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられ
る。上記C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン
酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリ
スチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、
ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙
げられる。
【0030】更に、上記ノニオン系界面活性剤として
は、 R1N(R2)2→O (上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR
3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異
なるC1〜C5アルキルを示す。) などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
【0031】上記カチオン系界面活性剤としては、下記
の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
【0032】
【化2】 (式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アル
カンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一
又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジル
を示す。) 或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩など
が挙げられる。
【0033】
【化3】 (式(c)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アル
カンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R
6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0034】塩の形態のカチオン系界面活性剤の例とし
ては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリル
トリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルア
ンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウ
ム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチ
ルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメ
チルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアン
モニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメ
チルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェ
ニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラ
ウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステ
アリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、
オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0035】上記アニオン系界面活性剤としては、アル
キル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸
塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸
塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、ト
リ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられ
る。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウ
ム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオ
キシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオ
キシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、
ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナ
トリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキ
ルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレ
ン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げ
られる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデ
シルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホ
ン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナ
フタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸
ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0036】上記両性界面活性剤としては、カルボキシ
ベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、ア
ミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキ
シド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又
はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化
付加物も使用できる。
【0037】上記カルボキシベタインは下記の一般式
(d)で表されるものである。
【化4】 (式(d)中、R7はC1〜C20アルキル、R8及びR9は同
一又は異なるC1〜C5アルキル、nは1〜3の整数を示
す。)
【0038】上記イミダゾリンベタインは下記の一般式
(e)で表されるものである。
【化5】 (式(e)中、R10はC1〜C20アルキル、R11は(CH2)m
OH又は(CH2)mOCH2CO2 -、R12は(CH2)nCO2
-、(CH2)nSO3 -、CH(OH)CH2SO3 -、m及びn
は1〜4の整数を示す。)
【0039】代表的なカルボキシベタイン、或はイミダ
ゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイ
ン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリ
ルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプ
ロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−
1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾ
リニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチ
ル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインな
どが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としては
エトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸
化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0040】上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪
酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキ
シプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナ
トリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウム
などが挙げられる。アミノカルボン酸としては、ジオク
チルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピ
オン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム
塩などが挙げられる。
【0041】また、本発明6に示すように、無電解スズ
−銀合金メッキ浴には、第一銅化合物を添加することが
できる。第一銅化合物は基本的にメッキ浴に添加して第
一銅イオン(Cu+)を生成する化合物をいい、具体的に
は下記のものが挙げられる。 (1)銅酸化物:Cu2O (2)ハロゲン化銅:CuCl、CuBr、CuI (3)その他の第一銅化合物:Cu3P、CuSCN、Cu
Br(S(CH3)2)
【0042】上記第一銅化合物は単用又は併用でき、そ
の添加量はメッキ浴全体に対して、一般に0.0000
1〜0.3mol/l、好ましくは0.0005〜0.0
03mol/lである。0.00001mol/lより
少ないとメッキ皮膜の接合強度などに良好な効果を発揮
できず、0.3mol/lより多くなると、均一なフィ
レット形成の支障になる場合があり、析出速度も不安定
になる。尚、当該第一銅化合物は独立成分としてメッキ
浴に添加することを基本とするが、メッキ浴の他の構成
成分、即ち、可溶性塩、酸、錯化剤、還元剤、或は他の
添加剤などが第一銅塩を含んでいる場合、これらの成分
は当該第一銅化合物と同様の作用を奏することが期待で
きる。
【0043】上記無電解浴でメッキを施す条件として
は、浴温は45〜90℃であり、析出速度を増す見地か
らは50〜70℃が好ましい。
【0044】本発明7は上記無電解メッキ浴により電子
部品にスズ−銀合金皮膜を形成したものであり、電子部
品は、具体的には、TAB用のフィルムキャリア、通常
のプリント基板である。通常、これらの電子部品は無電
解メッキ浴に浸漬して、電子部品のリード(銅箔)上にス
ズ−銀合金皮膜を被覆する。
【0045】
【作用】本発明1〜6のメッキ浴には、錯化剤として含
窒素系化合物とスルフィド系化合物が共存する。これら
の両化合物は浴中の銀イオンに作用して、銀の酸化還元
電位を卑の側に変移させるため、スズと銀の間の酸化還
元電位の差異が縮減するものと推定できる。とりわけ、
本発明の塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物
は、分子内のスルフィド結合と塩基性窒素原子との電子
供与的な相乗効果により、銀に対する錯化作用に優れ、
メッキ浴中で銀イオンを安定化させるのに大きく寄与す
るものと思われる。一方、錯化剤のうちでも、チオ尿素
を初めとする含窒素系化合物は、上記作用と同時に、被
メッキ物の材質をなす銅、或は銅合金に作用して錯イオ
ンを形成するため、この銅(或は、銅合金)と浴中のスズ
との間で酸化還元電位の逆転が起こると考えられる。こ
の結果、浴中のスズ及び銀と被メッキ物の銅(銅合金)と
の間で化学置換反応が円滑に進行し、被メッキ物の表面
に金属スズと金属銀が円滑に共析化する。
【0046】
【発明の効果】(1)本発明は、錯化剤としてチオ尿素、
エチレンジアミンなどを初めとする含窒素系化合物と塩
基性窒素原子を有するスルフィド系化合物とを併用する
ため、後述の試験例に示すように、無電解スズ−銀合金
メッキ浴の高温経時安定性に優れ、250時間の経過時
点でも浴が分解することはない。この結果、銀とスズを
確実に共析化できるとともに、当該メッキ浴から得られ
たメッキ皮膜の外観、接合強度などにも優れる。特に、
析出皮膜中の銀の組成比をスズ−銀の共晶合金の生成域
を含む低い範囲に抑制できる。これに対して、後述の試
験例に示すように、上記含窒素系化合物とスルフィド系
化合物の両錯化剤を含まないメッキ浴(比較例1参照)で
は、メッキ浴が短時間に分解して、スズと銀の共析化が
困難であった。また、チオ尿素だけを含みスルフィド系
化合物を含まないメッキ浴(比較例2参照)は冒述の従来
技術1〜2に基づく無電解スズ−銀合金メッキ浴と共通
するが、本発明のメッキ浴に比べて高温経時安定性が低
く、50〜250時間の範囲を超えると分解してしまっ
た。しかも、析出皮膜中の銀の組成比が高く、メッキ皮
膜の外観や接合強度なども本発明の浴に比べると劣って
いた。一方、スルフィド系化合物とメルカプタン類はイ
オウ結合が分子内に含まれる点で共通するが、メルカプ
タン類に属するチオグリコール酸を無電解スズ−銀合金
メッキ浴にチオ尿素と共に併用添加したメッキ浴(比較
例3参照)では、高温経時安定性、析出皮膜中の銀の組
成比、皮膜の外観、接合強度などは上記チオ尿素を単独
添加した場合に類似しており、本発明のメッキ浴の優位
性が明らかになった。さらに、チオ尿素などの含窒素系
化合物を含まず、ジスルフィド化合物だけを含むメッキ
浴(比較例4参照)では、浴中の銀イオンは安定化する
が、スズの共析化は望めず、皮膜の接合強度も不良であ
った。
【0047】(2)冒述したように、実際の無電解スズ−
銀合金メッキ浴では、生産性の見地から、メッキ浴を6
0〜70℃程度の高温で200〜300時間に亘り連続
加熱運転するのが一般的である。上記(1)に示すよう
に、比較例1〜3のメッキ浴は短時間、或は250時間
以内に分解してしまったのに対して、本発明のメッキ浴
では、250時間経過時点でも浴が分解せずにきわめて
安定であり、無電解スズ−銀合金メッキ浴としての実用
性を高く保持できる。
【0048】(3)上記(1)に示すように、本発明のスズ−
銀合金メッキ皮膜は、銀の組成比を低く抑制でき、スズ
皮膜、或は錫−鉛合金皮膜に比べても遜色がない優れた
接合強度を示すため、プリント基板上にチップ部品を実
装する場合などの製品の信頼性を良好に向上できる。従
って、本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴は、最近の
小型化、複雑化、多ピン化が急速に進む電子部品にも充
分に対応でき、殊に、プリント基板、TABのフィルム
キャリアなどを初めとする高密度実装品にも好適であ
る。
【0049】(4)第一銅化合物を微量配合する本発明6
では、スズ−銀合金皮膜の接合強度を一層強固に向上で
きる。また、後述の試験例に示すように、浴中の銀塩の
含有率を低減し、第一スズ塩の含有率を増した場合、或
は、これらの金属塩の含有率が一定でも、スルフィド系
化合物の含有率が増した場合には、同様に、析出皮膜の
接合強度の向上に有効に寄与する。
【0050】(5)上記(1)に示すように、錯化剤としてチ
オ尿素を単用した比較例2、或は、チオ尿素とチオグリ
コール酸を併用した比較例3では、スズ−銀合金皮膜中
の銀の組成比は90〜70と高い数値を示して、スズの
共析が容易でないことを示すが、本発明のスズ−銀合金
メッキ浴では銀の組成比は低く抑制されており、スズが
銀と共に良好に共析でき、皮膜の接合強度、外観なども
有効に向上する。
【0051】
【実施例】以下、無電解スズ−銀合金メッキ浴の実施例
を順次述べるとともに、各メッキ浴の高温経時安定性、
並びにメッキ浴から得られた皮膜の外観、接合強度、皮
膜中の銀の組成比などの各種試験例を説明する。尚、本
発明は下記の実施例並びに試験例に拘束されるものでは
なく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし
得ることは勿論である。
【0052】本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴は錯
化剤としてチオ尿素などの含窒素系化合物と塩基性窒素
原子を有するスルフィド系化合物との混合物を使用する
ことを特徴とするが、下記の実施例1〜8及び実施例1
3〜15は含窒素化合物としてチオ尿素或はその誘導体
を単用した例、実施例11〜12は含窒素系化合物とし
てのアミノ酢酸の単用例、実施例9〜10はチオ尿素と
アミノ酢酸、或はポリアミン系化合物の併用例である。
実施例3はスルフィド系化合物の併用例、他の全ての実
施例はスルフィド系化合物の単用例である。還元剤を含
有しない実施例4、或は界面活性剤を含有しない実施例
10を除き、他の実施例は基本的に還元剤、或は界面活
性剤を含有している。実施例7は第一銅化合物を含有し
た例である。また、実施例1〜4及び実施例14〜15
は浴中での可溶性第一スズ塩、及び銀塩の含有率を統一
し、他の組成を変化させた例であり、特に、実施例14
〜15は実施例2を基本としてスルフィド系化合物の含
有率のみを変化させた例である。実施例5〜8も浴中で
の可溶性第一スズ塩、及び銀塩の含有率を統一し、他の
組成を変化させた例であるが、実施例1〜4に比べて可
溶性第一スズ塩の含有率を増し、銀塩の含有率を低減し
た。一方、下記の比較例1〜4のうち、比較例1は含窒
素系化合物とスルフィド系化合物との両方を含有しない
例、比較例2は含窒素系化合物のみを含有し、スルフィ
ド系化合物を含有しない例、逆に、比較例4はスルフィ
ド系化合物のみを含有し、含窒素系化合物を含有しない
例である。また、スルフィド系化合物とメルカプタン類
はイオウ化合物に属する点で共通するが、当該無電解ス
ズ−銀合金メッキ浴中における挙動の差異の有無を確認
するため、スルフィド系化合物に替えてメルカプタン類
(具体的には、チオグリコール酸)を含窒素系化合物と併
用した例を比較例3とした。
【0053】《実施例1》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0054】《実施例2》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L ・次亜リン酸 : 30g/L ・オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 15g/L
【0055】《実施例3》 下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L ・次亜リン酸 : 30g/L ・N−ラウリル−N,N−ジメチル −N−カルボキシメチルベタイン : 15g/L
【0056】《実施例4》 下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。 ・p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・p−フェノールスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・p−フェノールスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L ・ノニルフェノールポリエトキシレート(EO15) : 7g/L
【0057】《実施例5》 下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.15g/L ・メタンスルホン酸 : 70g/L ・1,3−ジメチルチオ尿素 : 150g/L ・2,2′−ジチオジアニリン : 15g/L ・次亜リン酸カリウム : 30g/L ・N−ミリスチル−N,N−ジメチル −N−カルボキシメチルベタイン : 6g/L
【0058】《実施例6》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・2−ヒドロキシプロパン −1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L ・p−フェノールスルホン酸(Ag+として) :0.15g/L ・2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 : 110g/L ・1,3−ジメチルチオ尿素 : 150g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 15g/L ・次亜リン酸 : 30g/L ・N−ステアリル−N,N−ジメチル −N−カルボキシメチルベタイン : 5g/L ・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 8g/L
【0059】《実施例7》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.15g/L ・メタンスルホン酸 : 70g/L ・チオ尿素 : 150g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・ラウリン酸アミドプロピルベタイン : 5g/L ・酸化第一銅 :0.05g/L
【0060】《実施例8》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L ・安息香酸銀(Ag+として) :0.15g/L ・エタンスルホン酸 : 70g/L ・チオ尿素 : 150g/L ・5,5′−ジ(1,2,3−トリアゾリル)ジスルフィド : 10g/L ・次亜リン酸アンモニウム : 30g/L ・ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0061】《実施例9》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・クエン酸銀(Ag+として) :0.05g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) : 10g/L ・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L ・次亜リン酸 : 30g/L ・ヤシ油脂肪酸アミドプロピル酢酸ベタイン : 3g/L
【0062】《実施例10》 下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・スルファミン酸銀(Ag+として) :0.05g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・エチレンジアミン : 15g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 15g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
【0063】《実施例11》下記の組成で無電解スズ−
銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L ・ヨウ化銀(Ag+として) :0.05g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・エチレンジアミン四酢酸(EDTA) : 100g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 20g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・スチレン化フェノールポリエトキシレート(EO18) : 8g/L
【0064】《実施例12》下記の組成で無電解スズ−
銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.05g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) : 100g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・N−ラウリル−N,N−ジメチル −N−カルボキシメチルベタイン : 8g/L
【0065】《実施例13》下記の組成で無電解スズ−
銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.10g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 120g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・ラウリルトリメチルアンモニウム塩 : 15g/L
【0066】《実施例14》下記の組成で無電解スズ−
銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 30g/L ・次亜リン酸 : 30g/L ・オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 15g/L
【0067】《実施例15》下記の組成で無電解スズ−
銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 50g/L ・次亜リン酸 : 30g/L ・オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 15g/L
【0068】《比較例1》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0069】《比較例2》 下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0070】《比較例3》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・チオ尿素 : 100g/L ・チオグリコール酸 : 10g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0071】《比較例4》下記の組成で無電解スズ−銀
合金メッキ浴を建浴した。 ・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L ・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L ・メタンスルホン酸 : 50g/L ・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L ・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L ・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0072】《無電解スズ−銀合金メッキ浴の高温経時
安定性に関する試験例》そこで、上記実施例1〜15並
びに比較例1〜4の各無電解スズ−銀合金メッキ液を1
Lビーカーに収容し、これを65℃に恒温設定したウォ
ーターバスに入れて夫々250時間に亘って高温保持
し、当該加熱条件下における250時間経過時点、或は
当該時間までのメッキ液の変化を観測し、各メッキ液の
劣化(分解)状態の度合を評価した。当該高温経時安定性
の評価基準は下記の通りである。 ○:250時間経過時点でメッキ浴が安定であって、透
明度が高く、初期建浴時に比べて何ら変化がなかった。 △:50時間から250時間までの間に濁りや沈殿が発
生し、メッキ浴が分解した。 ×:50時間までに濁りや沈殿が発生し、メッキ浴が分
解した。
【0073】図1の最左欄はその結果であり、実施例1
〜15は全て○の評価であった。これに対して、含窒素
系化合物とスルフィド系化合物の両方を含有しない比較
例1では、銀イオンがメッキ浴中で安定しないため、ご
く短時間でメッキ浴が分解してしまった。含窒素系化合
物を含有しない比較例4も50時間までに分解した。チ
オ尿素のみを含有し、スルフィド系化合物を含有しない
比較例2では、やはり銀イオンの浴中での安定化作用が
不充分であり、△の評価であった。チオ尿素とメルカプ
タン類(具体的には、チオグリコール酸)を併用した比較
例3でも、同様に△の評価であった。特に、スルフィド
系化合物とメルカプタン類はイオウ化合物に属する点で
共通するが、当該無電解スズ−銀合金メッキ浴中におけ
る挙動においては、メルカプタン類はスルフィド系化合
物ほどの銀イオンの安定化作用が望めない。このため、
スルフィド系化合物を使用した実施例1〜15では、浴
の安定性が良好であったのに対して、メルカプタン類を
使用した比較例3では、浴の安定性が各実施例より劣っ
たものと推定できる。これにより、スルフィド系化合物
を含窒素系化合物と併用した実施例1〜15では、両化
合物の一方を含有しない比較例2及び4に加えて、メル
カプタン類を含窒素系化合物と併用した比較例3との対
比においても、浴の高温経時安定性の点で明らかな優位
性が確認できた。
【0074】そこで、上記各実施例1〜15並びに比較
例1〜4の各無電解メッキ浴を65℃に保持し、VLP
(電解銅箔の一種)によりパターン形成したTABのフィ
ルムキャリアの試験片を10分間浸漬させて、無電解ス
ズ−銀合金メッキを施した。得られた各スズ−銀合金メ
ッキ皮膜に関して、その外観を目視で観察するととも
に、皮膜の膜厚(μm)並びに皮膜中の銀の組成比(%)を
機器で測定した。但し、前述したように、比較例1のメ
ッキ浴は短時間で分解したため、析出皮膜の外観、銀の
組成比、膜厚(或は、後述する接合強度)などの各種試験
は行えなかった。
【0075】《メッキ皮膜の外観評価試験例》スズ−銀
合金メッキ皮膜の外観は下記の基準に基づいて評価し
た。 ○:白色外観で、金属光沢を呈した。 △:白色外観を呈していたが、茶色、褐色などのシミ、
色ムラが見られた。 ×:黒色外観を呈した。
【0076】図1の左寄り2欄目はその結果であり、実
施例1〜15は全て○の評価であった。これに対して、
チオ尿素だけを含み、スルフィド系化合物を含まない比
較例2や、チオ尿素とメルカプタン類を併用した比較例
3は共に△であり、スルフィド系化合物だけを含み、チ
オ尿素を含まない比較例4は○の評価であった。比較例
2では、スルフィド系化合物の欠落によって銀イオンが
メッキ浴中で不安定になるため、或は、比較例3では、
前述したように、メルカプタン類はスルフィド系化合物
ほどの銀イオンの安定化効果が望めないために、共に皮
膜外観が劣ったものと推定できる。また、比較例4では
スルフィド系化合物の作用で円滑に金属銀が析出する
(即ち、スズ−銀合金皮膜ではなく銀皮膜が形成される)
ため、外観的には問題がなかった。
【0077】《メッキ皮膜の膜厚及び銀の組成比》図1
の右半部の欄には、上記メッキ皮膜の膜厚及び銀の組成
比を示した。同図によると、実施例1〜15では、スズ
と銀が確実に共析化して、得られた皮膜中の銀の組成比
は比較例2〜4に比べて低い水準を示した。これは、浴
中で銀イオンが安定に制御されていることを示唆するも
のと思われる。特に、前述したように、実施例1〜4及
び実施例5〜8は、夫々浴中の可溶性第一スズ塩、及び
銀塩の含有率を統一し、他の組成を変化させた例であ
る。皮膜中の銀の組成比は、実施例1〜4では16.6
〜23.2%であり、実施例5〜8では3.3〜8.8%
であって、実施例1〜4より浴中の可溶性第一スズ塩の
含有率を増し、銀塩の含有率を低減した実施例5〜8の
方が、皮膜中の銀の組成比が低く抑制された。ちなみ
に、スズ−銀合金においては、銀の組成比が約2〜5%
の範囲内で共晶合金が生成するが、実施例の皮膜中の銀
の組成比はこの共晶合金の範囲を含む低い水準を確保で
きるため(特に、実施例11〜12では、銀の組成比は
1.1〜2.2%である)、この点でも実施例の析出皮膜
は実用度が高い。また、実施例14〜15は実施例2を
基本としてスルフィド系化合物の含有率のみを変化させ
た例であるが、浴中でのスルフィド系化合物の含有率が
増すと、皮膜中の銀の組成比が減少した。これは、スル
フィド系化合物の含有率が増すことにより、銀イオンが
浴中でより安定に制御されたためと推定できる。これに
対して、比較例2〜3では、皮膜中の銀の組成比が9
0.0〜70.0%と高く、スズの共析化が容易でないこ
とを示している。比較例4では、銀の組成比は100%
であった。一方、膜厚に関しては、相対的に実施例1〜
15が厚く、比較例2〜3は薄かった。
【0078】そこで、前記実施例1〜15並びに比較例
1〜4の各メッキ浴において、無電解スズ−銀合金メッ
キを施したTABを夫々銅板上にボンディングし、スズ
−銀合金皮膜の接合強度を調べた。
【0079】《接合強度試験例》即ち、ボンディングマ
シーン(アビオニクス社製TCW−115A)を使用
し、0.5μmの金メッキを施した銅板上に前記実施例
及び比較例の各メッキ浴によって無電解スズ−銀合金メ
ッキを施したTABの回路パターン(具体的には、イン
ナリード)を、荷重50g/単位インナリード、温度4
50℃、時間5秒の条件下でボンディングした。そし
て、ボンディング後のインナリードの一端を、上記銅板
に対して直角方向に破断するまで引っ張り、その破断モ
ードを調べることでリードのピーリング強度(引き剥が
し強度)の簡易試験を行った。
【0080】当該接合強度試験の評価基準は、接合強度
の強弱を主要な基準としながら、且つ、ボンディング後
のインナリード周辺のフィレットの形成状態(拡大鏡で
の俯瞰観察)を補足的な参考基準として、下記の通りに
設定した。 ◎:リード自体で破断し、且つ、フィレットはリードの
全周で均一な形状で連続形成されていた。 ○:リード自体で破断し、且つ、フィレットはリードの
全周でほぼ均一な形状で連続形成されていた。 ◇:フィレット形成は局部的に不充分であったが、リー
ド自体で破断しており、実用的な接合強度のレベルは保
持していた。 △:フィレットは不連続に形成され、リードと金メッキ
の界面で破断した。 ×:リードと金メッキの界面で破断し、フィレットは形
成されなかった。
【0081】図1の中央欄はその試験結果である。錯化
剤として含窒素系化合物とスルフィド系化合物を組み合
わせた実施例1〜15では、接合強度は全て◎〜◇の評
価、即ち、スズ皮膜、或はスズ−鉛合金皮膜に比べても
遜色のない実用レベルを具備していた。金メッキ上での
スズ−銀合金皮膜の接合強度は、界面での金スズ共晶合
金の生成に大きく影響されるため、前記皮膜中の銀の組
成比(即ち、スズの組成比)と関連性が強い。また、接合
強度は皮膜の緻密性や平滑性などにも関連する。これら
の観点から見ると、浴中の可溶性第一スズ塩の含有率を
増し、銀塩の含有率を低減した実施例5〜8や、浴中の
スルフィド系化合物の含有率を増した実施例15、或は
実施例9、実施例11〜12では、皮膜中の銀の組成比
が低く(逆に、スズの組成比が高く)、接合強度は夫々◎
の評価であった。また、実施例7では、第一銅化合物を
含有させたことも接合強度の向上に寄与したものと推定
できる。実施例3〜4では、皮膜中の銀の組成比が他の
実施例に比べてやや高く、評価は◇であった。界面活性
剤を含有しなかった実施例10では、界面活性剤を含有
した他の実施例に比べて皮膜の緻密性や平滑性などの点
が不充分であり、接合強度は実用度を満たしていたもの
の、◇の評価であった。また、カチオン系界面活性剤を
含有させた実施例13の評価も◇であって、両性又はノ
ニオン系界面活性剤の方が、カチオン系界面活性剤に比
べて、皮膜の接合強度の点では優位性があることが判っ
た。これに対して、チオ尿素だけ含み、スルフィド系化
合物を含まない比較例2、チオ尿素とメルカプタン類を
併用した比較例3では、皮膜中の銀の組成比が多く、評
価は△であった。従って、チオ尿素を含まず、スルフィ
ド系化合物だけを含む比較例4では、×の評価であっ
た。
【0082】以上の各種試験結果によると、無電解スズ
−銀合金メッキ浴に錯化剤として含窒素系化合物とスル
フィド系化合物を併用添加すると、スズと銀を確実に共
析化できるとともに、得られるスズ−銀合金皮膜の銀の
組成比を低く抑制でき、接合強度も実用レベル以上を確
保できることが確認できた。ちなみに、本実施例の各メ
ッキ浴では、主に、スルフィド系化合物が浴中で銀イオ
ンを安定化させ、且つ、含窒素系化合物がスズの共析化
を円滑にしているものと思われる。このため、含窒素系
化合物とスルフィド系化合物のいずれか一方しか含まな
い比較例2及び4や、含窒素系化合物とメルカプタン類
を併用した比較例3との対比において、各実施例1〜1
5は、スズ−銀合金皮膜の形成(スズと銀の共析化)、当
該皮膜の接合強度、並びに皮膜中の銀の組成比の抑制な
どの点で明らかな優位性が確認できた。また、上記両化
合物の併用添加に際して、両性界面活性剤とノニオン系
界面活性剤の少なくとも一種を添加し、或は、第一銅化
合物を添加すると、スズ−銀合金皮膜の接合強度などが
一層有効に改善されることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜15並びに比較例1〜4の各無電解
スズ−銀合金メッキ浴の高温経時安定性、各メッキ浴か
ら得られるスズ−銀合金皮膜の外観、接合強度、膜厚、
皮膜中の銀の組成比などの試験或は観察結果を示す図表
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K022 AA02 AA42 BA01 BA08 BA21 BA32 DA01 DB04 DB07 DB08 5E343 BB54 CC78 DD43 GG01 5F044 MM23 MM35 MM48

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)第一スズ塩及び銀塩、 (B)有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などの有機酸、
    及びホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミ
    ン酸などの無機酸の少なくとも一種、 (C)チオ尿素類及びアミン類などの含窒素系化合物と、
    塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物との混合物
    よりなる錯化剤を含有することを特徴とする無電解スズ
    −銀合金メッキ浴。
  2. 【請求項2】 (C)の錯化剤が、チオ尿素とジスルフィ
    ド化合物の混合物であることを特徴とする請求項1に記
    載の無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  3. 【請求項3】 請求項1〜2のいずれか1項に記載の無
    電解メッキ浴に、さらに還元剤を含有することを特徴と
    する無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の無
    電解メッキ浴に、さらに界面活性剤を含有することを特
    徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  5. 【請求項5】 界面活性剤がノニオン系界面活性剤と両
    性界面活性剤の少なくとも一種であることを特徴とする
    請求項4に記載の無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無
    電解メッキ浴に、さらに第一銅化合物を含有することを
    特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の無
    電解スズ−銀合金メッキ浴を用いて、銅箔上にスズ−銀
    合金メッキ皮膜を施すことを特徴とするTABのフィル
    ムキャリア又はプリント基板。
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