JP4640558B2 - 無電解スズ−銀合金メッキ浴 - Google Patents

無電解スズ−銀合金メッキ浴 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は無電解スズ−銀合金メッキ浴に関し、浴の経時安定性に優れ、銀とスズの共析を確実に可能にし、スズ皮膜などに比べても遜色のない外観を有するスズ−銀合金メッキ皮膜を形成できるものを提供する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、銀の標準電極電位は極めて貴であるため、2価のスズイオンを含有するメッキ浴中で銀イオンを安定化させることは容易でなく、浴が分解して銀が析出し易い。また、電気化学的に貴な金属である銀は優先析出し易く、他の金属との合金メッキは容易でない。しかも、実際の無電解スズ−銀合金メッキの現場では、析出速度を増大させて生産性を向上する見地から、60〜70℃の加温下で長時間の連続運転を行っているため、当該加温状態によって銀イオンはより不安定化する。
このような理由から、実用的な無電解スズ−銀合金メッキ浴はあまり知られておらず、例えば、特開平10−245683号公報には、チオ尿素などを用いたスズ−銀合金等を含む無電解スズ合金メッキ浴が開示されているが、充分な実用レベルを達成するものではなく、この分野での優れたメッキ浴の開発が強く望まれている。
【0003】
【先行技術】
そこで、本出願人は、先に、特願平11−69473号で、チオ尿素類及びアミン類などの含窒素系化合物と、塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物との混合物を錯化剤として含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴を提案した。
上記チオ尿素類は、チオ尿素、或は、ジメチルチオ尿素、アリルチオ尿素などのチオ尿素誘導体である。
上記アミン類は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのアミノカルボン酸系化合物、エチレンジアミンなどのポリアミン系化合物などである。
上記スルフィド系化合物は、2,2′−ジチオジアニリン、2,2′−ジピペラジニルジスルフィド、2,2′−ジピリジルジスルフィドなどのような、分子内に1個以上の塩基性窒素原子を有する芳香族スルフィド系化合物を中心としたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記先行技術では、メッキ浴の安定性、スズと銀の共析化などの面は優れているが、本発明は、この先行技術とは別種の化合物を用いて、浴の経時安定性を向上し、もって、優れた外観のスズ−銀合金メッキ皮膜を形成できる無電解スズ−銀合金メッキ浴を開発することを技術的課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記先行技術で提案したジチオジアニリンなどの塩基性窒素原子を有する芳香族スルフィド系化合物を出発点として、他のスルフィド系化合物、特に、脂肪族のスルフィド系化合物を広く研究した結果、モノ又はジスルフィド結合の両側に隣接してオキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシ(ヒドロキシプロピレン)基を単数又は繰り返し分子内に有するオキシアルキレン型スルフィド系化合物などをスズ−銀合金メッキ浴に含有させると、浴の経時安定性が有効に高まること、また、スズと銀が確実に共析して、スズ−銀合金皮膜の外観も良好に向上することを見い出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明1は、モノ又はジスルフィド結合の両側に隣接してオキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシ(ヒドロキシプロピレン)基を単数又は繰り返し分子内に有するオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物と、チオ尿素類とを錯化剤として含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴である。
【0007】
本発明2は、上記本発明1のオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物に代えて、α−メルカプトプロピオン酸、並びにβ−メルカプトアルコール類よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプト系化合物の少なくとも一種を錯化剤として含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴である。
【0009】
本発明3は、上記本発明2のβ−メルカプトアルコール類がチオグリコールであることを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴である。
【0010】
本発明4は、本発明1〜3のいずれか1項の無電解メッキ浴に、さらに、界面活性剤、補助錯化剤より選ばれた添加剤を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴である。
【0011】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかのメッキ浴を用いて、被メッキ物に無電解スズ−銀合金メッキ皮膜を形成することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ方法である。
【0012】
本発明6は、上記本発明1〜4のいずれかのメッキ浴を用いて、スズ−銀合金メッキ皮膜を形成した、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線より選ばれた電子部品である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、第一に、特定のオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物とチオ尿素類とを錯化剤として含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴であり、第二に、特定の脂肪族メルカプト系化合物とチオ尿素類とを錯化剤として含有する同無電解メッキ浴であり、第三に、これらのメッキ浴を用いる無電解スズ−銀合金メッキ方法であり、第四に、これらのメッキ浴を用いてスズ−銀合金メッキ皮膜を形成した物品である。
上記脂肪族スルフィド系化合物はメッキ浴中で銀イオンに錯化してこれを安定化する作用をし、後者の脂肪族メルカプト系化合物もこの脂肪族スルフィド系化合物に準じた作用をする。
上記チオ尿素類はメッキ浴中で銀イオンに錯化してこれを安定化する作用を期待できるとともに、被メッキ物である素地金属の銅に作用してスズと銅の酸化還元電位を逆転させる作用を奏する。
【0014】
上記特定のオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物は、モノ又はジスルフィド結合の両側に隣接してオキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシ(ヒドロキシプロピレン)基を単数又は繰り返し分子内に有するスルフィド系化合物であり、具体的には次の化合物などが挙げられる。
(1)H−(OCH2CH2)3−S−(CH2CH2O)3−Hで表されるビス(トリエチレングリコール)チオエーテル
(2)H−(OCH2CH2)6−S−(CH2CH2O)6−Hで表されるビス(ヘキサエチレングリコール)チオエーテル
(3)H−(OCH2CH2)10−S−(CH2CH2O)10−Hで表されるビス(デカエチレングリコール)チオエーテル
(4)H−(OCH2CH2)12−S−(CH2CH2O)12−Hで表されるビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル
(5)H−(OCH2CH2)15−S−(CH2CH2O)15−Hで表されるビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル
(6)H−(OCH2CH2)20−S−(CH2CH2O)20−Hで表されるビス(イコサエチレングリコール)チオエーテル
(7)H−(OCH2CH2)30−S−(CH2CH2O)30−Hで表されるビス(トリアコンタエチレングリコール)チオエーテル
(8)H−(OCH2CH2)40−S−(CH2CH2O)40−Hで表されるビス(テトラコンタエチレングリコール)チオエーテル
(9)H−(OCH2CH2)50−S−(CH2CH2O)50−Hで表されるビス(ペンタコンタエチレングリコール)チオエーテル
(10)HOCH2CH2−S−CH2CH2OHで表される2,2′−チオジグリコール
(11)HOCH2CH2CH2−S−CH2CH2CH2OHで表される3,3′−チオジプロパノール
(12)H−(OCH2CH2)5−S−S−(CH2CH2O)5−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシペンタエトキシ)ジスルフィド
(13)H−(OCH2CH2)12−S−S−(CH2CH2O)12−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシドデカエトキシ)ジスルフィド
(14)H−(OCH2CH2)20−S−S−(CH2CH2O)20−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシイコサエトキシ)ジスルフィド
(15)H−(OCH2CH2)50−S−S−(CH2CH2O)50−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシペンタコンタエトキシ)ジスルフィド
(16)H−(OCH2CH(OH)CH2)8−S−(CH2CH(OH)CH2O)8−Hで表されるビス(オクタグリセロール)チオエーテル
(17)H−(OC36)5−(OC24)15−S−(C24O)15−(C36O)5−Hで表されるビス(ペンタデカエチレングリコールペンタプロピレングリコール)チオエーテル
(18)H−OCH2CH(OH)CH2−(OC24)10−S−(C24O)10−CH2CH(OH)CH2O−Hで表されるビス(デカエチレングリコールモノグリセロール)チオエーテル
(19)H−(OC24)10−(OC36)3−S−(C36O)3−(C24O)10−Hで表されるビス(トリプロピレングリコールデカエチレングリコール)チオエーテル (20)H−(OC36)5−(OC24)15−S−S−(C24O)15−(C36O)5−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシペンタプロポキシペンタデカエトキシ)ジスルフィド
(21)H−OCH2CH(OH)CH2−(OC24)10−S−S−(C24O)10−CH2CH(OH)CH2O−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシモノグリセロキシデカエトキシ)ジスルフィド
(22)H−(OC24)20−(OC36)5−S−S−(C36O)5−(C24O)20−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシイコサエトキシペンタプロポキシ)ジスルフィド
(23)H−(OCH2CH2)2−S−(CH2CH2O)2−Hで表されるビス(ジエチレングリコール)チオエーテル
(24)HOCH2CH(OH)CH2−S−CH2CH(OH)CH2OHで表されるビス(モノグリセロール)チオエーテル
(25)H−(OCH2CH(OH)CH2)3−S−(CH2CH(OH)CH2O)3−Hで表されるビス(トリグリセロール)チオエーテル
(26)H−(OCH2CH2)41−S−S−(CH2CH2O)41−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシヘンテトラコンタエトキシ)ジスルフィド
(27)H−(OC36)5−(OC24)20−S−S−(C24O)20−(C36O)5−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシペンタプロポキシイコサエトキシ)ジスルフィド
(28)H−(OCH2CH(OH)CH2)3−S−S−(CH2CH(OH)CH2O)3−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシトリグリセロキシ)ジスルフィド
(29)H−(OCH2CH(OH)CH2)10−S−S−(CH2CH(OH)CH2O)10−Hで表されるビス(ω−ヒドロキシデカグリセロキシ)ジスルフィド
【0015】
上式(1)〜(9)では、モノスルフィド結合の両側の隣接位置にオキシエチレン基(C24O)の繰り返しを分子内に有し、上式(10)〜(11)では、モノスルフィド結合の両側の隣接位置にオキシエチレン基又はオキシプロピレン基(C36O)を単数分子内に有する。
上式(12)〜(15)では、ジスルフィド結合の両側の隣接位置にオキシエチレン基の繰り返しを分子内に有し、上式(16)では、モノスルフィド結合の両側の隣接位置にオキシ(ヒドロキシプロピレン)基(CH2CH(OH)CH2O)の繰り返しを分子内に有する。
上式(17)では、モノスルフィド結合の両側の隣接位置にオキシエチレン基の繰り返しとオキシプロピレン基の繰り返しを分子内に有し、上式(20)では、ジスルフィド結合の両側の隣接位置にオキシエチレン基の繰り返しとオキシプロピレン基の繰り返しを分子内に有し、上式(21)では、ジスルフィド結合の両側の隣接位置にオキシエチレン基の繰り返しとオキシ(ヒドロキシプロピレン)基の繰り返しを分子内に有する。
上式に列挙した化合物はモノ又はジスルフィド結合を中心に左右対称の分子構造が多いが、本発明のオキシアルキレン型スルフィド系化合物では、左右が異なる分子構造の化合物でも差し支えない。
上記脂肪族スルフィド系化合物は単用又は併用でき、中でも、2,2′−チオジグリコール、ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタンなどが好ましい。
【0016】
前記特定の脂肪族メルカプト系化合物は、カルボキシル基が結合するα位の炭素にメルカプト基を有するα−メルカプトモノカルボン酸類であり、本発明では、当該α−メルカプトモノカルボン酸類としてα−メルカプトプロピオン酸(即ち、メルカプト乳酸:CH 3 CH(SH)COOH)を選択する。
また、前記特定の脂肪族メルカプト系化合物は、分子内に水酸基とメルカプト基を有するメルカプトアルコール類であり、本発明では、当該メルカプトアルコール類として水酸基を基準としてβ位の炭素にメルカプト基を有するβ−メルカプトアルコール類を選択する。β−メルカプトアルコール類としては、β−メルカプトエタノール(即ち、チオグリコール:HSCH2CH2OH)などが挙げられる。
【0017】
上記脂肪族スルフィド系化合物、脂肪族メルカプト系化合物は夫々単用又は併用することができ、脂肪族スルフィド系化合物と脂肪族メルカプト系化合物を併用しても良い。
【0018】
上記チオ尿素類はチオ尿素とチオ尿素誘導体を包含する概念である。
当該チオ尿素誘導体は、基本的に、チオ尿素の窒素原子或は硫黄原子の1個以上に各種の置換基が結合して、分子容がチオ尿素より大きい化合物をいい、具体的には、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジドなどが挙げられる。
【0019】
上記脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メルカプト系化合物)の浴中での含有量は0.01〜100g/L、好ましくは1〜50g/Lである。
また、チオ尿素類の浴中での含有量は0.01〜500g/L、好ましくは1〜300g/Lである。
【0020】
スズ及び銀の供給源としてのスズ塩及び銀塩は、メッキ浴中に夫々スズイオン、銀イオンを供給可能な塩類であり、可溶性塩を基本とするが、難溶性塩などを排除するものではなく、任意の塩類を使用できる。
可溶性第一スズ塩としては、後述する有機スルホン酸の第一スズ塩を初め、ホウフッ化第一スズ、スルホコハク酸第一スズ、塩化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズなどが挙げられ、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸第一スズ、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸第一スズ、p−フェノールスルホン酸第一スズなどの有機スルホン酸の塩類が好ましい。
また、上記可溶性銀塩としては、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、スルホコハク酸銀、硝酸銀、有機スルホン酸銀、ホウフッ化銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、スルファミン酸、シュウ酸銀、酸化銀などの可溶性塩が使用でき、また、本来は難溶性であるが、スルフィド系化合物などの作用によりある程度の溶解性を確保できる塩化銀なども使用できる。銀塩の好ましい具体例としては、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、2−プロパノールスルホン酸銀、フェノールスルホン酸銀、クエン酸銀などが挙げられる。
当該可溶性第一スズ塩或は可溶性銀塩の金属塩としての換算添加量は、夫々
0.0001〜200g/Lであり、好ましくは0.1〜80g/Lである。
【0021】
本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴は基本的に、有機酸浴、無機酸浴、或はその塩をベースとする浴である。有機酸としては、排水処理が比較的容易なアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸などが好ましいが、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸等の無機酸でも差し支えない。
上記の酸(又は塩)は単用又は併用でき、酸(又は塩)の添加量は0.1〜300g/Lであり、好ましくは20〜120g/Lである。
【0022】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる

【0023】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0024】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0025】
上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0026】
本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴には上述の成分以外に、目的に応じて公知の界面活性剤、還元剤、補助錯化剤、pH調整剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤などのメッキ浴に通常使用される添加剤を混合できることは勿論である。
【0027】
上記還元剤は、前記金属塩の還元用、及びその析出速度や析出合金比率の調整用などに添加され、リン酸系化合物、アミンボラン類、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン誘導体などを単用又は併用できる。
上記リン酸系化合物としては、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、或はこれらのアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩が挙げられる。
上記アミンボラン類としては、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、イソプロピルアミンボラン、モルホリンボランなどが挙げられる。
上記水素化ホウ素化合物としては水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。
上記ヒドラジン誘導体としては、ヒドラジン水和物、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジンなどが挙げられる。
上記還元剤の添加量は0.1〜200g/Lであり、好ましくは10〜150g/Lである。
【0028】
上記界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤が挙げられ、これら各種の活性剤を単用又は併用できる。
その添加量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0029】
上記ノニオン系界面活性剤は、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、スチレン化フェノール、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合したものである。
従って、所定のアルカノール、フェノール、ナフトールなどのEO単独の付加物、PO単独の付加物、或は、EOとPOが共存した付加物のいずれでも良く、具体的には、α−ナフトール又はβ−ナフトールのエチレンオキシド付加物(即ち、α−ナフトールポリエトキシレートなど)が好ましい。
【0030】
エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。
同じくビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。
アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェニルなどが挙げられる。
【0031】
1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。
1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
【0032】
ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。
1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。
1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などのアミドが挙げられる。
【0033】
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2及びR3は同一又は異なるC1〜C20アルキル、R4はC1〜C10アルキル又はベンジルを示す。)
或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
6−(C55N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、C55Nはピリジン環、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0034】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0035】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、(モノ、ジ、トリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO12)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、(モノ、ジ、トリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0036】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0037】
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインとしては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0038】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0039】
上記補助錯化剤は浴の安定性向上を目的として使用され、素地金属などから溶出した不純物金属イオンのメッキ浴への悪影響を防止する隠蔽錯化剤を含む概念であり、具体的には、EDTA、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、クエン酸、酒石酸、コハク酸、マロン酸、グリコール酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グリシン、ピロリン酸、トリポリリン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸などが挙げられる。
【0040】
上記無電解浴を用いたメッキ条件としては、浴温は45〜90℃であり、析出速度を増す見地からは50〜70℃が好ましい。
【0041】
本発明6は、上記本発明1〜のいずれかのメッキ浴を用いて、スズ−銀合金メッキ皮膜を形成した物品であり、具体的には、半導体集積回路(TABのフィルムキャリアなどを含む)、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、コネクタ、リード線、フープ材等の電子部品などが挙げられる。
【0042】
【作用】
本発明のメッキ浴には、錯化剤として脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メルカプト系化合物)とチオ尿素類が共存する。これらの両化合物、特に、脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メルカプト系化合物)は浴中の銀イオンに作用して、銀の酸化還元電位を卑の側に遷移させるため、スズと銀の間の酸化還元電位の差異が縮減するものと推定できる。また、錯化剤のうち、特に、チオ尿素類は、上記作用と同時に、被メッキ物の材質をなす銅(或は、銅合金)に作用して錯イオンを形成するため、この銅(或は、銅合金)と浴中のスズとの間で酸化還元電位の逆転が起こると考えられる。
この結果、浴中のスズ及び銀と被メッキ物の銅(銅合金)との間で化学置換反応が円滑に進行し、被メッキ物の表面にスズと銀の共析が確実に可能になる。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、錯化剤としてチオ尿素類と特定の脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メルカプト系化合物)を併用するため、後述の試験例に示すように、無電解スズ−銀合金メッキ浴の経時安定性に優れ、長時間に亘り浴が分解することはない。
この結果、銀とスズの共析を確実に可能にし、もって、浴から得られたスズ−銀合金メッキ皮膜の外観を良好に向上できる。特に、析出皮膜中の銀の組成比をスズ−銀の共晶合金の生成域を含む低い範囲に抑制できる。
また、前述したように、実際の無電解スズ−銀合金メッキ浴では、生産性の見地から、メッキ浴を60〜70℃程度の加温下で連続操業するのが一般的であるが、浴の経時安定性が高い本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴では、浴の分解を抑えて、実用水準の連続操業性を確保できる。
これに対して、後述の試験例に示すように、冒述の従来技術に準拠して、チオ尿素類のみを含み、特定の脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メッキ系化合物)を含まないメッキ浴(比較例1参照)では、浴が短時間に分解し、メッキ外観も不良であった。
また、チオ尿素類と公知の銀錯化剤であるヨウ素化合物を含有するメッキ浴(比較例2参照)では、浴の経時安定性や皮膜外観が不充分であり、析出皮膜中の銀の組成比も本発明の含有浴に比べて高かった。
尚、冒述の先行技術の比較例3には、チオ尿素とチオグリコール酸を併用した無電解スズ−銀合金メッキ浴が提案されているが、還元剤である次亜リン酸ナトリウムが含有されるため、その作用で銀組成比が増大し、メッキ皮膜に若干の色調ムラが発生したものと思われる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴の実施例を順次述べるとともに、各メッキ浴の経時安定性、メッキ浴から得られるスズ−銀合金皮膜の外観の各種試験例を説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例などに拘束されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0045】
下記の実施例1〜のうち、実施例1、及びは脂肪族メルカプト系化合物の使用例、実施例2、4〜5及び7はオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物の使用例、実施例は当該脂肪族スルフィド系化合物同士の併用例、実施例は当該脂肪族スルフィド系化合物と脂肪族メルカプト系化合物の併用例である。
一方、比較例1はチオ尿素類のみを使用し、脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メルカプト系化合物)を含有しない例、比較例2はチオ尿素類と公知の銀錯化剤であるヨウ素系化合物の含有例である。
また、実施例1〜及び比較例1〜2では、メッキ浴中の可溶性第一スズ塩と銀塩の含有量は統一した。
【0046】
《実施例1》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 60g/L
チオ尿素 100g/L
チオグリコール 6g/L
次亜リン酸 30g/L
【0047】
《実施例2》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
p−フェノールスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
p−フェノールスルホン酸 50g/L
ジエチルチオ尿素 130g/L
2,2′−チオジグリコール 12g/L
ノニルフェノールポリエトキシレート(EO15モル) 7g/L
【0049】
実施例3
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
2−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
p−フェノールスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 110g/L
1,3−ジメチルチオ尿素 150g/L
α−メルカプトプロピオン酸 15g/L
次亜リン酸 30g/L
N−ステアリル−N,N−ジメチル
−N−カルボキシメチルベタイン 5g/L
【0050】
実施例4
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオ尿素 180g/L
ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル 10g/L
次亜リン酸ナトリウム 15g/L
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10モル) 10g/L
【0051】
実施例5
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオ尿素 100g/L
ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル 7g/L
ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15モル) 10g/L
【0052】
実施例6
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
クエン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 70g/L
チオ尿素 160g/L
チオグリコール 6g/L
【0053】
実施例7
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
スルファミン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 75g/L
チオ尿素 120g/L
ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル 5g/L
次亜リン酸ナトリウム 15g/L
ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15モル) 10g/L
【0054】
実施例8
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 90g/L
アリルチオ尿素 150g/L
ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル 5g/L
チオグリコール 3g/L
ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15モル) 8g/L
【0055】
実施例9
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
エタンスルホン酸 70g/L
チオ尿素 150g/L
ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル 7g/L
2,2′−チオジグリコール 2g/L
次亜リン酸アンモニウム 20g/L
【0057】
《比較例1》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 50g/L
チオ尿素 100g/L
次亜リン酸ナトリウム 15g/L
【0058】
《比較例2》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.05g/L
メタンスルホン酸 50g/L
チオ尿素 100g/L
ヨウ化カリウム 80g/L
【0059】
前述したように、無電解スズ−銀合金メッキは、生産性を高める見地から、60〜70℃の加温下で長時間に亘り連続処理するのが基本である。そこで、上記実施例と比較例の各スズ−銀合金メッキ浴を加温下に長時間保持して、メッキ浴の経時安定性を評価した。
《無電解スズ−銀合金メッキ浴の経時安定性試験例》
即ち、上記実施例1〜並びに比較例1〜2の各無電解スズ−銀合金メッキ液を1Lビーカーに収容し、これを65℃に恒温設定したウォーターバスに入れて250時間に亘って高温保持し、各メッキ液の劣化(分解)状態の度合を観測することによって、経時安定性を目視評価した。
【0060】
当該経時安定性の評価基準は下記の通りである。
○:250時間経過時点でメッキ浴が安定であって、透明度が高く、初期建浴時に比べて何ら変化がなかった。
△:50時間から250時間までの間に濁りや沈殿が発生し、メッキ浴が分解した。
×:50時間までに濁りや沈殿が発生し、メッキ浴が分解した。
【0061】
図1の最左欄はその試験結果であり、実施例1〜は全て○の評価であった。即ち、浴の経時安定性の面では、本発明の脂肪族スルフィド系化合物と脂肪族メルカプト系化合物のいずれにおいても、メッキ浴を250時間以上の長時間に亘り安定させることが確認できた。一般に、還元剤が含まれメッキ浴では、銀イオンが不安定になって析出し易いが、還元剤を含む実施例1、3〜などにおいても、優れた浴の経時安定性が明らかになった。
これに対して、チオ尿素のみを含有し、本発明の脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メルカプト化合物)を含有しない比較例1は、冒述の従来技術に類した例であるが、当該比較例1では、銀イオンがメッキ浴中で安定しないため、50時間が経過するまでにメッキ浴が分解してしまった。チオ尿素とヨウ素系化合物を含有した比較例2では、50時間〜250時間の間に浴が分解し、ある程度の安定性を示したが、実施例1〜11の各メッキ浴の方に明らかな優位性があった。
【0062】
そこで、上記各実施例1〜並びに比較例1〜2の各無電解メッキ浴を65℃に保持し、VLP(電解銅箔の一種)によりパターン形成したTABのフィルムキャリアの試験片を10分間浸漬させて、無電解スズ−銀合金メッキを施した。 得られた各スズ−銀合金メッキ皮膜に関して、その外観を目視観察するとともに、皮膜の膜厚(μm)並びに皮膜中の銀の組成比(%)を機器で測定した。
【0063】
《メッキ皮膜の外観評価試験例》
スズ−銀合金メッキ皮膜の外観は下記の基準に基づいて評価した。
○:白色外観で、金属光沢を呈した。
×:茶色、褐色などのシミ、色ムラが見られた。
【0064】
図1の左寄りの第2欄はその結果であり、実施例1〜は全て○の評価であった。上述のように、実施例のメッキ浴は経時安定性が高いことから、この安定性が優れた皮膜外観の形成に寄与したことは明らかである。
これに対して、比較例1は外観不良であり、また、比較例2についても、ヨウ素系化合物は本発明の脂肪族スルフィド系化合物(又は脂肪族メルカプト系化合物)ほどの銀イオンの安定化効果が望めないため、外観不良になったものと推定できる。
【0065】
《メッキ皮膜の膜厚及び銀の組成比》
図1の右半部の欄には、上記メッキ皮膜の膜厚及び銀の組成比を示した。
前述したように、実施例1〜及び比較例1〜2では、浴中の可溶性第一スズ塩と銀塩の含有率を全て統一したが、同図によると、実施例1〜では、スズと銀の共析が確実になり、且つ、得られた皮膜中の銀の組成比は比較例1〜2に比べて低い水準を示した。これは、浴中で銀イオンが安定に制御されていることを示唆するものと思われる。この傾向は還元剤の含有の有無を問わず、観察された。
また、実施例1〜にあっては、概ね、脂肪族スルフィド系化合物を使用した浴の方が、脂肪族メルカプト系化合物の含有浴より、スズ−銀合金皮膜中の銀の組成比が若干低い傾向にあった。
ちなみに、スズ−銀合金においては、銀の組成比が約2〜5%の範囲内で共晶合金が生成するが、実施例の皮膜中の銀の組成比はこの共晶合金の範囲を含む低い水準を確保できるため、この点でも実施例の析出皮膜は実用度が高い。
一方、膜厚についても、概ね、実施例1〜は比較例1〜2より厚く形成されていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1〜並びに比較例1〜2の各無電解スズ−銀合金メッキ浴の経時安定性、各メッキ浴から得られたスズ−銀合金皮膜の外観、膜厚、皮膜中の銀の組成比の試験結果を夫々示す図表である。

Claims (6)

  1. モノ又はジスルフィド結合の両側に隣接してオキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシ(ヒドロキシプロピレン)基を単数又は繰り返し分子内に有するオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物と、チオ尿素類とを錯化剤として含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  2. 請求項1のオキシアルキレン型脂肪族スルフィド系化合物に代えて、α−メルカプトプロピオン酸、並びにβ−メルカプトアルコール類よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプト系化合物の少なくとも一種を錯化剤として含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  3. 請求項2のβ−メルカプトアルコール類がチオグリコールであることを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項の無電解メッキ浴に、さらに、界面活性剤、補助錯化剤より選ばれた添加剤を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。
  5. 請求項1〜4のいずれかのメッキ浴を用いて、被メッキ物に無電解スズ−銀合金メッキ皮膜を形成することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかのメッキ浴を用いて、スズ−銀合金メッキ皮膜を形成した、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線より選ばれた電子部品
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