JP4186030B2 - 無電解スズ−銀合金メッキ浴及び当該メッキ浴でスズ−銀合金皮膜を施したtabのフィルムキャリア等 - Google Patents
無電解スズ−銀合金メッキ浴及び当該メッキ浴でスズ−銀合金皮膜を施したtabのフィルムキャリア等 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無電解スズ−銀合金メッキ浴、並びに当該メッキ浴によりスズ−銀合金皮膜を形成したTABのフィルムキャリアやプリント基板に関し、浴の高温経時安定性に優れ、銀とスズを確実に共析化させて、スズ皮膜などに比べても遜色のない接合強度や外観を有するスズ−銀合金メッキ皮膜を形成できるものを提供する。
【0002】
【発明の背景】
一般に、銀は種々の化合物と不溶性の塩類を生成し易いので、メッキ浴中で銀イオンを安定化させることは容易でなく、浴が分解して銀が析出し易い。また、銀は電気化学的には貴な金属であるため、他の金属との合金メッキは容易でない。このような実情から、実用的な無電解スズ−銀合金メッキ浴はあまり知られておらず、この分野での優れたメッキ浴の開発が強く望まれている。
【0003】
【従来の技術】
特開昭62−77481号公報(以下、従来技術1という)には、無電解スズメッキ浴に銀塩を約50〜50000ppm(即ち、約0.05〜50g/L)、或はパラジウム塩を約5〜10000ppm(即ち、約0.005〜10g/L)の割合で含有させて、スズホイスカーの成長を防止する方法が記載されている(同公報の請求の範囲及び第5頁右上欄第3行〜第15行参照)。さらに、上記無電解スズメッキ浴の具体例としては、シプレー社製のテイン−ポシト(TIN−POSIT)及びLT−26が挙げられ、当該LT−26には塩化第一スズとチオ尿素などが含まれる(同公報の第5頁右下欄第3行〜第9行参照)。
また、同従来技術1の実施例3には、上記テイン−ポシト溶液60mlに硫酸銀の飽和水10ml(水100g当たり硫酸銀0.7g)を含有させた無電解メッキ浴が開示されている。
そして、このパラジウム塩を含有した無電解メッキ浴により形成された皮膜は、本質的にパラジウムを約0.1〜20重量%までの範囲で含み、残部はスズから成っており、また、浴に銀塩を含有させた場合には、皮膜に銀が含まれても良いことが記載されている(同公報の第6頁右下欄第7行〜第20行参照)。
【0004】
一方、特開平6−77292号公報(以下、従来技術2という)には、ホウフッ化スズとフェノールスルホン酸とチオ尿素と次亜リン酸ナトリウムなどから構成された、シプレイ・ファーイースト社製の無電解スズメッキ浴「TINPOSIT LT−34」が開示されている(同公報の第7段落参照)。
【0005】
従って、従来技術1の析出皮膜の共析率の数値、並びに従来技術2の記述を総合的に判断すると、上記従来技術1の実施例3に記載された銀塩を含有するテイン−ポシト溶液は、前記LT−26と同様に、実質的にチオ尿素を含有する無電解スズ−銀合金メッキ浴であると強く推定できる。
また、一方で、実際の無電解スズ−銀合金メッキ処理においては、析出速度を高く保持して生産性を向上する見地から、60〜70℃の浴温で、200時間、或はそれ以上の時間に亘って連続運転するのが一般的である。
そこで、この実際的な条件に基づいて、チオ尿素を含有(或は、これに界面活性剤を追加)しただけの無電解スズ−銀合金メッキ浴を用いてメッキ処理を試みたところ、高温経時安定性は不充分であり、長時間の連続運転では銀が析出して浴が分解してしまう弊害がある。
本発明は、浴の経時安定性が高く、接合強度などに優れたスズ−銀合金メッキ皮膜を形成できる実用性の高い無電解メッキ浴を開発することを技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、無電解スズ−銀合金メッキ浴中に、ジチオジアニリン、ジピリジルジスルフィドなどの塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物がチオ尿素などと共存すると、メッキ浴の経時安定性が大幅に改善されてスズと銀の共析化が円滑に達成されること、得られるスズ−銀合金皮膜の接合強度や外観も良好に改善されること、また、析出皮膜中の銀の組成比を低く抑制できることなどを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明1は、(A)第一スズ塩及び銀塩と、
(B)有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸より選ばれた有機酸、及びホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸より選ばれた無機酸の少なくとも一種と、
(C)チオ尿素類及びアミン類より選ばれた含窒素系化合物と、塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物との混合物よりなる錯化剤と
を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴である。
【0008】
本発明2は、上記本発明1において、(C)の錯化剤が、チオ尿素とジスルフィド化合物の混合物であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明3は、上記本発明1〜2のいずれかの無電解メッキ浴に、さらに還元剤を含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかの無電解メッキ浴に、さらに界面活性剤を含有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明5は、上記本発明4において、界面活性剤がノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤の少なくとも一種であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかの無電解メッキ浴に、さらに第一銅化合物を含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかの無電解スズ−銀合金メッキ浴を用いて、銅箔上にスズ−銀合金メッキ皮膜を施すことを特徴とするTABのフィルムキャリア又はプリント基板である。
【0014】
【発明の実施の形態】
上記錯化剤は、チオ尿素類及びアミン類より選ばれた含窒素系化合物と、塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物との混合物よりなる。
上記チオ尿素類はチオ尿素とチオ尿素誘導体を包含する概念である。
当該チオ尿素誘導体は、基本的に、チオ尿素の窒素原子或は硫黄原子の1個以上に各種の置換基が結合して、分子容がチオ尿素より大きい化合物をいい、具体的には、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジドなどが挙げられる。
一方、上記アミン類は、アミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノ吉草酸、アミノ酸などのアミノカルボン酸系化合物、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどのポリアミン系化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノアルコール系化合物などを包含する概念である。
上記アミン類のうちのアミノカルボン酸系化合物の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンなどが挙げられる。
また、上記アミン類のうちのポリアミン系化合物、アミノアルコール系化合物などの具体例としては、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミンなどが挙げられる。
尚、上記アミン類のうちでは、分子内にアミノ基を複数個有するポリアミン系化合物、或はアミノカルボン酸系化合物が好ましい。
【0015】
また、上記スルフィド系化合物は分子内に塩基性窒素原子とスルフィド結合、或はジスルフィド結合とを有する化合物であり、その具体例は次の(1)〜(2)の通りである。
(1)モノスルフィド化合物
2−エチルチオアニリン、2 , 2′−ジピリジルスルフィドなど。
(2)ジスルフィド化合物
2 , 2′−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2−(2−アミノエチルジチオ)ピリジン、2,2′−ジチアジアゾリルジスルフィド、5,5′−ジ(1,2,3−トリアゾリル)ジスルフィド、2,2′−ジピラジニルジスルフィド、2,2′−ジピリジルジスルフィド、2,2′−ジチオジアニリン、4,4′−ジピリジルジスルフィド、2,2′−ジアミノ−4,4′−ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2′−ジピリダジニルジスルフィド、5,5′−ジピリミジニルジスルフィド、2,2′−ジ(5−ジメチルアミノチアジアゾリル)ジスルフィド、5,5′−ジ(1−メチルテトラゾリル)ジスルフィド、2,2′−ジ(1−メチルピロリル)ジスルフィド、2−ピリジル−2−ヒドロキシフェニルジスルフィド、2,2′−ジピペリジルジスルフィド、2,2′−ジピリジルジスルフィド、2,6−ジ(2−ピリジルジチオ)ピリジン、2,2′−ジピペラジニルジスルフィド、2,2′−ジ(3,5−ジヒドロキシピリミジニル)ジスルフィド、2,2′−ジキノリルジスルフィド、2,2′−α−ピコリルジスルフィド、2,2′−ジ(8−ヒドロキシキノリル)ジスルフィド、5,5′−ジイミダゾリルジスルフィド、2,2′−ジチアゾリルジスルフィド、2−ピリジル−2−アミノフェニルジスルフィド、2−ピリジル−2−キノリルジスルフィド、2,2′−ジチアゾリニルジスルフィド、2,2′−ジモルホリノジスルフィド、2,2′−ジ(8−メトキシキノリル)ジスルフィド、4,4′−ジ(3−メトキシカルボニルピリジル)ジスルフィド、2−ピリジル−4−メチルチオフェニルジスルフィド、2−ピペラジル−4−エトキシメチルフェニルジスルフィド、2,2′−ジ{6-(2-ピリジルジチオ)ピリジル}ジスルフィド、2,2′−ジキノキサリニルジスルフィド、2,2′−ジプテリジニルジスルフィド、3,3′−ジフラザニルジスルフィド、3,3′−ジフェナントロリニルジスルフィド、8,8′−ジキノリルジスルフィド、1,1′−ジフェナジニルジスルフィド、2,2′−ジピコリルジスルフィド、ジメチルアミノジエチルジスルフィド、2,2′−ジペルヒドロインドリルジスルフィド、2−アミノエチル−2′−ヒドロキシエチルジスルフィド、ジ(2−ピリジルチオ)メタンなど。
【0016】
本発明の錯化剤である含窒素系化合物とスルフィド系化合物は任意に組み合わせることができ、含窒素系化合物及びスルフィド系化合物は夫々単用又は併用できる。
従って、その錯化剤の組み合わせとしては、例えば、チオ尿素とジチオジアニリン、チオ尿素とジピリジルジスルフィド、1,3−チオ尿素とジチオジアニリン、1,3−チオ尿素とジピリジルジスルフィド、チオ尿素と5,5′−ジ(1,2,3−トリアゾリル)ジスルフィド、チオ尿素とDTPAとジチオジアニリン、チオ尿素とエチレンジアミンとジピリジルジスルフィド、EDTAとジピリジルスルフィド、チオ尿素とジチオジアニリンとジピリジルジスルフィド、アセチルチオ尿素とDTPAとジピリジルスルフィド、チオ尿素とチオジアニリンなどが挙げられ、チオ尿素とジスルフィド化合物の組み合わせなどが好ましい。
上記含窒素系化合物とスルフィド系化合物の混合物よりなる錯化剤の添加量は、合計で0.5〜300g/L、好ましくは20〜200g/Lである。
【0017】
上記第一スズ塩及び銀塩は夫々可溶性塩を基本とするが、難溶性塩などを排除するものではなく、任意の塩類を使用できる。
なかでも、上記第一スズ塩としては、後述する有機スルホン酸との塩類が好ましく、具体的には、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸第一スズ、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸第一スズ、p−フェノールスルホン酸第一スズなどが挙げられる。
また、上記銀塩としては、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、スルホコハク酸銀、硝酸銀、有機スルホン酸銀、ホウフッ化銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、シュウ酸銀、酸化銀などの可溶性塩が使用でき、また、本来は難溶性であるが、スルフィド系化合物などの作用によりある程度の溶解度を確保できる塩化銀なども使用できる。銀塩の好ましい具体例としては、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、2−プロパノールスルホン酸銀、フェノールスルホン酸銀、ホウフッ化銀などが挙げられる。
当該可溶性第一スズ塩或は可溶性銀塩の金属塩としての換算添加量は、夫々0.0001〜200g/Lであり、好ましくは0.1〜80g/Lである。
【0018】
本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴のベースを構成する酸としては、排水処理が比較的容易なアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸より選ばれた有機酸が好ましいが、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸より選ばれた無機酸でも差し支えない。
上記の酸は単用又は併用でき、酸の添加量は0.1〜300g/Lであり、好ましくは20〜120g/Lである。
【0019】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式CnH2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0020】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0021】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0022】
上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0023】
上記還元剤は、前記金属塩の還元用、及びその析出速度や析出合金比率の調整用などに添加され、リン酸系化合物、アミンボラン類、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン誘導体などを単用又は併用できる。
上記リン酸系化合物としては、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、或はこれらのアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩が挙げられる。
上記アミンボラン類としては、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、イソプロピルアミンボラン、モルホリンボランなどが挙げられる。
上記水素化ホウ素化合物としては水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。
上記ヒドラジン誘導体としては、ヒドラジン水和物、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジンなどが挙げられる。
上記還元剤の添加量は0.1〜200g/Lであり、好ましくは10〜150g/Lである。
【0024】
本発明の無電解メッキ浴には上述の成分以外に、目的に応じて公知の界面活性剤、pH調整剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、安定化補助錯化剤、隠蔽錯化剤、酸化防止剤などの無電解メッキ浴に通常使用される添加剤を混合できることは勿論である。
【0025】
上記界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤が挙げられ、これら各種の活性剤を単用又は併用できる。
その添加量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0026】
当該ノニオン系界面活性剤の具体例としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
【0027】
上記エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。
同じく上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。
上記C1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。
上記アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。
上記C1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。
上記アルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられる。
【0028】
上記C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
【化1】
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
【0029】
上記ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記C1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。
上記C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙げられる。
【0030】
更に、上記ノニオン系界面活性剤としては、
R1N(R2)2→O
(上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異なるC1〜C5アルキルを示す。)
などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
【0031】
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
【0032】
【化2】
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジルを示す。)
或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
【0033】
【化3】
(式(c)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0034】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0035】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0036】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0037】
上記カルボキシベタインは下記の一般式(d)で表されるものである。
【化4】
(式(d)中、R7はC1〜C20アルキル、R8及びR9は同一又は異なるC1〜C5アルキル、nは1〜3の整数を示す。)
【0038】
上記イミダゾリンベタインは下記の一般式(e)で表されるものである。
【化5】
(式(e)中、R10はC1〜C20アルキル、R11は(CH2)mOH又は(CH2)mOCH2CO2 -、R12は(CH2)nCO2 -、(CH2)nSO3 -、CH(OH)CH2SO3 -、m及びnは1〜4の整数を示す。)
【0039】
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0040】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0041】
また、本発明6に示すように、無電解スズ−銀合金メッキ浴には、第一銅化合物を添加することができる。第一銅化合物は基本的にメッキ浴に添加して第一銅イオン(Cu+)を生成する化合物をいい、具体的には下記のものが挙げられる。
(1)銅酸化物:Cu2O
(2)ハロゲン化銅:CuCl、CuBr、CuI
(3)その他の第一銅化合物:Cu3P、CuSCN、CuBr(S(CH3)2)
【0042】
上記第一銅化合物は単用又は併用でき、その添加量はメッキ浴全体に対して、一般に0.00001〜0.3mol/l、好ましくは0.0005〜0.003mol/lである。0.00001mol/lより少ないとメッキ皮膜の接合強度などに良好な効果を発揮できず、0.3mol/lより多くなると、均一なフィレット形成の支障になる場合があり、析出速度も不安定になる。
尚、当該第一銅化合物は独立成分としてメッキ浴に添加することを基本とするが、メッキ浴の他の構成成分、即ち、可溶性塩、酸、錯化剤、還元剤、或は他の添加剤などが第一銅塩を含んでいる場合、これらの成分は当該第一銅化合物と同様の作用を奏することが期待できる。
【0043】
上記無電解浴でメッキを施す条件としては、浴温は45〜90℃であり、析出速度を増す見地からは50〜70℃が好ましい。
【0044】
本発明7は上記無電解メッキ浴により電子部品にスズ−銀合金皮膜を形成したものであり、電子部品は、具体的には、TAB用のフィルムキャリア、通常のプリント基板である。通常、これらの電子部品は無電解メッキ浴に浸漬して、電子部品のリード(銅箔)上にスズ−銀合金皮膜を被覆する。
【0045】
【作用】
本発明1〜6のメッキ浴には、錯化剤として含窒素系化合物とスルフィド系化合物が共存する。これらの両化合物は浴中の銀イオンに作用して、銀の酸化還元電位を卑の側に変移させるため、スズと銀の間の酸化還元電位の差異が縮減するものと推定できる。とりわけ、本発明の塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物は、分子内のスルフィド結合と塩基性窒素原子との電子供与的な相乗効果により、銀に対する錯化作用に優れ、メッキ浴中で銀イオンを安定化させるのに大きく寄与するものと思われる。
一方、錯化剤のうちでも、チオ尿素を初めとする含窒素系化合物は、上記作用と同時に、被メッキ物の材質をなす銅、或は銅合金に作用して錯イオンを形成するため、この銅(或は、銅合金)と浴中のスズとの間で酸化還元電位の逆転が起こると考えられる。
この結果、浴中のスズ及び銀と被メッキ物の銅(銅合金)との間で化学置換反応が円滑に進行し、被メッキ物の表面に金属スズと金属銀が円滑に共析化する。
【0046】
【発明の効果】
(1)本発明は、錯化剤としてチオ尿素、エチレンジアミンなどを初めとする含窒素系化合物と塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物とを併用するため、後述の試験例に示すように、無電解スズ−銀合金メッキ浴の高温経時安定性に優れ、250時間の経過時点でも浴が分解することはない。
この結果、銀とスズを確実に共析化できるとともに、当該メッキ浴から得られたメッキ皮膜の外観、接合強度などにも優れる。特に、析出皮膜中の銀の組成比をスズ−銀の共晶合金の生成域を含む低い範囲に抑制できる。
これに対して、後述の試験例に示すように、上記含窒素系化合物とスルフィド系化合物の両錯化剤を含まないメッキ浴(比較例1参照)では、メッキ浴が短時間に分解して、スズと銀の共析化が困難であった。
また、チオ尿素だけを含みスルフィド系化合物を含まないメッキ浴(比較例2参照)は冒述の従来技術1〜2に基づく無電解スズ−銀合金メッキ浴と共通するが、本発明のメッキ浴に比べて高温経時安定性が低く、50〜250時間の範囲を超えると分解してしまった。しかも、析出皮膜中の銀の組成比が高く、メッキ皮膜の外観や接合強度なども本発明の浴に比べると劣っていた。
一方、スルフィド系化合物とメルカプタン類はイオウ結合が分子内に含まれる点で共通するが、メルカプタン類に属するチオグリコール酸を無電解スズ−銀合金メッキ浴にチオ尿素と共に併用添加したメッキ浴(比較例3参照)では、高温経時安定性、析出皮膜中の銀の組成比、皮膜の外観、接合強度などは上記チオ尿素を単独添加した場合に類似しており、本発明のメッキ浴の優位性が明らかになった。
さらに、チオ尿素などの含窒素系化合物を含まず、ジスルフィド化合物だけを含むメッキ浴(比較例4参照)では、浴中の銀イオンは安定化するが、スズの共析化は望めず、皮膜の接合強度も不良であった。
【0047】
(2)冒述したように、実際の無電解スズ−銀合金メッキ浴では、生産性の見地から、メッキ浴を60〜70℃程度の高温で200〜300時間に亘り連続加熱運転するのが一般的である。
上記(1)に示すように、比較例1〜3のメッキ浴は短時間、或は250時間以内に分解してしまったのに対して、本発明のメッキ浴では、250時間経過時点でも浴が分解せずにきわめて安定であり、無電解スズ−銀合金メッキ浴としての実用性を高く保持できる。
【0048】
(3)上記(1)に示すように、本発明のスズ−銀合金メッキ皮膜は、銀の組成比を低く抑制でき、スズ皮膜、或は錫−鉛合金皮膜に比べても遜色がない優れた接合強度を示すため、プリント基板上にチップ部品を実装する場合などの製品の信頼性を良好に向上できる。
従って、本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴は、最近の小型化、複雑化、多ピン化が急速に進む電子部品にも充分に対応でき、殊に、プリント基板、TABのフィルムキャリアなどを初めとする高密度実装品にも好適である。
【0049】
(4)第一銅化合物を微量配合する本発明6では、スズ−銀合金皮膜の接合強度を一層強固に向上できる。
また、後述の試験例に示すように、浴中の銀塩の含有率を低減し、第一スズ塩の含有率を増した場合、或は、これらの金属塩の含有率が一定でも、スルフィド系化合物の含有率が増した場合には、同様に、析出皮膜の接合強度の向上に有効に寄与する。
【0050】
(5)上記(1)に示すように、錯化剤としてチオ尿素を単用した比較例2、或は、チオ尿素とチオグリコール酸を併用した比較例3では、スズ−銀合金皮膜中の銀の組成比は90〜70と高い数値を示して、スズの共析が容易でないことを示すが、本発明のスズ−銀合金メッキ浴では銀の組成比は低く抑制されており、スズが銀と共に良好に共析でき、皮膜の接合強度、外観なども有効に向上する。
【0051】
【実施例】
以下、無電解スズ−銀合金メッキ浴の実施例を順次述べるとともに、各メッキ浴の高温経時安定性、並びにメッキ浴から得られた皮膜の外観、接合強度、皮膜中の銀の組成比などの各種試験例を説明する。
尚、本発明は下記の実施例並びに試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0052】
本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴は錯化剤としてチオ尿素などの含窒素系化合物と塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物との混合物を使用することを特徴とするが、下記の実施例1〜8及び実施例13〜15は含窒素化合物としてチオ尿素或はその誘導体を単用した例、実施例11〜12は含窒素系化合物としてのアミノ酢酸の単用例、実施例9〜10はチオ尿素とアミノ酢酸、或はポリアミン系化合物の併用例である。実施例3はスルフィド系化合物の併用例、他の全ての実施例はスルフィド系化合物の単用例である。還元剤を含有しない実施例4、或は界面活性剤を含有しない実施例10を除き、他の実施例は基本的に還元剤、或は界面活性剤を含有している。実施例7は第一銅化合物を含有した例である。
また、実施例1〜4及び実施例14〜15は浴中での可溶性第一スズ塩、及び銀塩の含有率を統一し、他の組成を変化させた例であり、特に、実施例14〜15は実施例2を基本としてスルフィド系化合物の含有率のみを変化させた例である。実施例5〜8も浴中での可溶性第一スズ塩、及び銀塩の含有率を統一し、他の組成を変化させた例であるが、実施例1〜4に比べて可溶性第一スズ塩の含有率を増し、銀塩の含有率を低減した。
一方、下記の比較例1〜4のうち、比較例1は含窒素系化合物とスルフィド系化合物との両方を含有しない例、比較例2は含窒素系化合物のみを含有し、スルフィド系化合物を含有しない例、逆に、比較例4はスルフィド系化合物のみを含有し、含窒素系化合物を含有しない例である。また、スルフィド系化合物とメルカプタン類はイオウ化合物に属する点で共通するが、当該無電解スズ−銀合金メッキ浴中における挙動の差異の有無を確認するため、スルフィド系化合物に替えてメルカプタン類(具体的には、チオグリコール酸)を含窒素系化合物と併用した例を比較例3とした。
【0053】
《実施例1》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0054】
《実施例2》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 15g/L
【0055】
《実施例3》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・N−ラウリル−N,N−ジメチル
−N−カルボキシメチルベタイン : 15g/L
【0056】
《実施例4》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・p−フェノールスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・p−フェノールスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L
・ノニルフェノールポリエトキシレート(EO15) : 7g/L
【0057】
《実施例5》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.15g/L
・メタンスルホン酸 : 70g/L
・1,3−ジメチルチオ尿素 : 150g/L
・2,2′−ジチオジアニリン : 15g/L
・次亜リン酸カリウム : 30g/L
・N−ミリスチル−N,N−ジメチル
−N−カルボキシメチルベタイン : 6g/L
【0058】
《実施例6》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・2−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・p−フェノールスルホン酸(Ag+として) :0.15g/L
・2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 : 110g/L
・1,3−ジメチルチオ尿素 : 150g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 15g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・N−ステアリル−N,N−ジメチル
−N−カルボキシメチルベタイン : 5g/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 8g/L
【0059】
《実施例7》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.15g/L
・メタンスルホン酸 : 70g/L
・チオ尿素 : 150g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・ラウリン酸アミドプロピルベタイン : 5g/L
・酸化第一銅 :0.05g/L
【0060】
《実施例8》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・安息香酸銀(Ag+として) :0.15g/L
・エタンスルホン酸 : 70g/L
・チオ尿素 : 150g/L
・5,5′−ジ(1,2,3−トリアゾリル)ジスルフィド : 10g/L
・次亜リン酸アンモニウム : 30g/L
・ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0061】
《実施例9》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・クエン酸銀(Ag+として) :0.05g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) : 10g/L
・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・ヤシ油脂肪酸アミドプロピル酢酸ベタイン : 3g/L
【0062】
《実施例10》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・スルファミン酸銀(Ag+として) :0.05g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・エチレンジアミン : 15g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 15g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
【0063】
《実施例11》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・ヨウ化銀(Ag+として) :0.05g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・エチレンジアミン四酢酸(EDTA) : 100g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 20g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・スチレン化フェノールポリエトキシレート(EO18) : 8g/L
【0064】
《実施例12》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.05g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) : 100g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・N−ラウリル−N,N−ジメチル
−N−カルボキシメチルベタイン : 8g/L
【0065】
《実施例13》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.10g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 120g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 10g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・ラウリルトリメチルアンモニウム塩 : 15g/L
【0066】
《実施例14》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 30g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 15g/L
【0067】
《実施例15》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・2,2′−ジピリジルジスルフィド : 50g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 15g/L
【0068】
《比較例1》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0069】
《比較例2》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0070】
《比較例3》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 100g/L
・チオグリコール酸 : 10g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0071】
《比較例4》
下記の組成で無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.25g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・2,2′−ジチオジアニリン : 10g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 30g/L
・ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0072】
《無電解スズ−銀合金メッキ浴の高温経時安定性に関する試験例》
そこで、上記実施例1〜15並びに比較例1〜4の各無電解スズ−銀合金メッキ液を1Lビーカーに収容し、これを65℃に恒温設定したウォーターバスに入れて夫々250時間に亘って高温保持し、当該加熱条件下における250時間経過時点、或は当該時間までのメッキ液の変化を観測し、各メッキ液の劣化(分解)状態の度合を評価した。
当該高温経時安定性の評価基準は下記の通りである。
○:250時間経過時点でメッキ浴が安定であって、透明度が高く、初期建浴時に比べて何ら変化がなかった。
△:50時間から250時間までの間に濁りや沈殿が発生し、メッキ浴が分解した。
×:50時間までに濁りや沈殿が発生し、メッキ浴が分解した。
【0073】
図1の最左欄はその結果であり、実施例1〜15は全て○の評価であった。
これに対して、含窒素系化合物とスルフィド系化合物の両方を含有しない比較例1では、銀イオンがメッキ浴中で安定しないため、ごく短時間でメッキ浴が分解してしまった。含窒素系化合物を含有しない比較例4も50時間までに分解した。
チオ尿素のみを含有し、スルフィド系化合物を含有しない比較例2では、やはり銀イオンの浴中での安定化作用が不充分であり、△の評価であった。チオ尿素とメルカプタン類(具体的には、チオグリコール酸)を併用した比較例3でも、同様に△の評価であった。
特に、スルフィド系化合物とメルカプタン類はイオウ化合物に属する点で共通するが、当該無電解スズ−銀合金メッキ浴中における挙動においては、メルカプタン類はスルフィド系化合物ほどの銀イオンの安定化作用が望めない。このため、スルフィド系化合物を使用した実施例1〜15では、浴の安定性が良好であったのに対して、メルカプタン類を使用した比較例3では、浴の安定性が各実施例より劣ったものと推定できる。これにより、スルフィド系化合物を含窒素系化合物と併用した実施例1〜15では、両化合物の一方を含有しない比較例2及び4に加えて、メルカプタン類を含窒素系化合物と併用した比較例3との対比においても、浴の高温経時安定性の点で明らかな優位性が確認できた。
【0074】
そこで、上記各実施例1〜15並びに比較例1〜4の各無電解メッキ浴を65℃に保持し、VLP(電解銅箔の一種)によりパターン形成したTABのフィルムキャリアの試験片を10分間浸漬させて、無電解スズ−銀合金メッキを施した。
得られた各スズ−銀合金メッキ皮膜に関して、その外観を目視で観察するとともに、皮膜の膜厚(μm)並びに皮膜中の銀の組成比(%)を機器で測定した。
但し、前述したように、比較例1のメッキ浴は短時間で分解したため、析出皮膜の外観、銀の組成比、膜厚(或は、後述する接合強度)などの各種試験は行えなかった。
【0075】
《メッキ皮膜の外観評価試験例》
スズ−銀合金メッキ皮膜の外観は下記の基準に基づいて評価した。
○:白色外観で、金属光沢を呈した。
△:白色外観を呈していたが、茶色、褐色などのシミ、色ムラが見られた。
×:黒色外観を呈した。
【0076】
図1の左寄り2欄目はその結果であり、実施例1〜15は全て○の評価であった。
これに対して、チオ尿素だけを含み、スルフィド系化合物を含まない比較例2や、チオ尿素とメルカプタン類を併用した比較例3は共に△であり、スルフィド系化合物だけを含み、チオ尿素を含まない比較例4は○の評価であった。
比較例2では、スルフィド系化合物の欠落によって銀イオンがメッキ浴中で不安定になるため、或は、比較例3では、前述したように、メルカプタン類はスルフィド系化合物ほどの銀イオンの安定化効果が望めないために、共に皮膜外観が劣ったものと推定できる。また、比較例4ではスルフィド系化合物の作用で円滑に金属銀が析出する(即ち、スズ−銀合金皮膜ではなく銀皮膜が形成される)ため、外観的には問題がなかった。
【0077】
《メッキ皮膜の膜厚及び銀の組成比》
図1の右半部の欄には、上記メッキ皮膜の膜厚及び銀の組成比を示した。
同図によると、実施例1〜15では、スズと銀が確実に共析化して、得られた皮膜中の銀の組成比は比較例2〜4に比べて低い水準を示した。これは、浴中で銀イオンが安定に制御されていることを示唆するものと思われる。
特に、前述したように、実施例1〜4及び実施例5〜8は、夫々浴中の可溶性第一スズ塩、及び銀塩の含有率を統一し、他の組成を変化させた例である。皮膜中の銀の組成比は、実施例1〜4では16.6〜23.2%であり、実施例5〜8では3.3〜8.8%であって、実施例1〜4より浴中の可溶性第一スズ塩の含有率を増し、銀塩の含有率を低減した実施例5〜8の方が、皮膜中の銀の組成比が低く抑制された。
ちなみに、スズ−銀合金においては、銀の組成比が約2〜5%の範囲内で共晶合金が生成するが、実施例の皮膜中の銀の組成比はこの共晶合金の範囲を含む低い水準を確保できるため(特に、実施例11〜12では、銀の組成比は1.1〜2.2%である)、この点でも実施例の析出皮膜は実用度が高い。
また、実施例14〜15は実施例2を基本としてスルフィド系化合物の含有率のみを変化させた例であるが、浴中でのスルフィド系化合物の含有率が増すと、皮膜中の銀の組成比が減少した。これは、スルフィド系化合物の含有率が増すことにより、銀イオンが浴中でより安定に制御されたためと推定できる。
これに対して、比較例2〜3では、皮膜中の銀の組成比が90.0〜70.0%と高く、スズの共析化が容易でないことを示している。比較例4では、銀の組成比は100%であった。
一方、膜厚に関しては、相対的に実施例1〜15が厚く、比較例2〜3は薄かった。
【0078】
そこで、前記実施例1〜15並びに比較例1〜4の各メッキ浴において、無電解スズ−銀合金メッキを施したTABを夫々銅板上にボンディングし、スズ−銀合金皮膜の接合強度を調べた。
【0079】
《接合強度試験例》
即ち、ボンディングマシーン(アビオニクス社製TCW−115A)を使用し、0.5μmの金メッキを施した銅板上に前記実施例及び比較例の各メッキ浴によって無電解スズ−銀合金メッキを施したTABの回路パターン(具体的には、インナリード)を、荷重50g/単位インナリード、温度450℃、時間5秒の条件下でボンディングした。
そして、ボンディング後のインナリードの一端を、上記銅板に対して直角方向に破断するまで引っ張り、その破断モードを調べることでリードのピーリング強度(引き剥がし強度)の簡易試験を行った。
【0080】
当該接合強度試験の評価基準は、接合強度の強弱を主要な基準としながら、且つ、ボンディング後のインナリード周辺のフィレットの形成状態(拡大鏡での俯瞰観察)を補足的な参考基準として、下記の通りに設定した。
◎:リード自体で破断し、且つ、フィレットはリードの全周で均一な形状で連続形成されていた。
○:リード自体で破断し、且つ、フィレットはリードの全周でほぼ均一な形状で連続形成されていた。
◇:フィレット形成は局部的に不充分であったが、リード自体で破断しており、実用的な接合強度のレベルは保持していた。
△:フィレットは不連続に形成され、リードと金メッキの界面で破断した。
×:リードと金メッキの界面で破断し、フィレットは形成されなかった。
【0081】
図1の中央欄はその試験結果である。
錯化剤として含窒素系化合物とスルフィド系化合物を組み合わせた実施例1〜15では、接合強度は全て◎〜◇の評価、即ち、スズ皮膜、或はスズ−鉛合金皮膜に比べても遜色のない実用レベルを具備していた。
金メッキ上でのスズ−銀合金皮膜の接合強度は、界面での金スズ共晶合金の生成に大きく影響されるため、前記皮膜中の銀の組成比(即ち、スズの組成比)と関連性が強い。また、接合強度は皮膜の緻密性や平滑性などにも関連する。
これらの観点から見ると、浴中の可溶性第一スズ塩の含有率を増し、銀塩の含有率を低減した実施例5〜8や、浴中のスルフィド系化合物の含有率を増した実施例15、或は実施例9、実施例11〜12では、皮膜中の銀の組成比が低く(逆に、スズの組成比が高く)、接合強度は夫々◎の評価であった。また、実施例7では、第一銅化合物を含有させたことも接合強度の向上に寄与したものと推定できる。
実施例3〜4では、皮膜中の銀の組成比が他の実施例に比べてやや高く、評価は◇であった。
界面活性剤を含有しなかった実施例10では、界面活性剤を含有した他の実施例に比べて皮膜の緻密性や平滑性などの点が不充分であり、接合強度は実用度を満たしていたものの、◇の評価であった。また、カチオン系界面活性剤を含有させた実施例13の評価も◇であって、両性又はノニオン系界面活性剤の方が、カチオン系界面活性剤に比べて、皮膜の接合強度の点では優位性があることが判った。
これに対して、チオ尿素だけ含み、スルフィド系化合物を含まない比較例2、チオ尿素とメルカプタン類を併用した比較例3では、皮膜中の銀の組成比が多く、評価は△であった。従って、チオ尿素を含まず、スルフィド系化合物だけを含む比較例4では、×の評価であった。
【0082】
以上の各種試験結果によると、無電解スズ−銀合金メッキ浴に錯化剤として含窒素系化合物とスルフィド系化合物を併用添加すると、スズと銀を確実に共析化できるとともに、得られるスズ−銀合金皮膜の銀の組成比を低く抑制でき、接合強度も実用レベル以上を確保できることが確認できた。
ちなみに、本実施例の各メッキ浴では、主に、スルフィド系化合物が浴中で銀イオンを安定化させ、且つ、含窒素系化合物がスズの共析化を円滑にしているものと思われる。このため、含窒素系化合物とスルフィド系化合物のいずれか一方しか含まない比較例2及び4や、含窒素系化合物とメルカプタン類を併用した比較例3との対比において、各実施例1〜15は、スズ−銀合金皮膜の形成(スズと銀の共析化)、当該皮膜の接合強度、並びに皮膜中の銀の組成比の抑制などの点で明らかな優位性が確認できた。
また、上記両化合物の併用添加に際して、両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤の少なくとも一種を添加し、或は、第一銅化合物を添加すると、スズ−銀合金皮膜の接合強度などが一層有効に改善されることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜15並びに比較例1〜4の各無電解スズ−銀合金メッキ浴の高温経時安定性、各メッキ浴から得られるスズ−銀合金皮膜の外観、接合強度、膜厚、皮膜中の銀の組成比などの試験或は観察結果を示す図表である。
Claims (7)
- (A)第一スズ塩及び銀塩と、
(B)有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸より選ばれた有機酸、及びホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸より選ばれた無機酸の少なくとも一種と、
(C)チオ尿素類及びアミン類より選ばれた含窒素系化合物と、塩基性窒素原子を有するスルフィド系化合物との混合物よりなる錯化剤と
を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。 - (C)の錯化剤が、チオ尿素とジスルフィド化合物の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の無電解スズ−銀合金メッキ浴。
- 請求項1〜2のいずれか1項に記載の無電解メッキ浴に、さらに還元剤を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の無電解メッキ浴に、さらに界面活性剤を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。
- 界面活性剤がノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤の少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載の無電解スズ−銀合金メッキ浴。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無電解メッキ浴に、さらに第一銅化合物を含有することを特徴とする無電解スズ−銀合金メッキ浴。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の無電解スズ−銀合金メッキ浴を用いて、銅箔上にスズ−銀合金メッキ皮膜を施すことを特徴とするTABのフィルムキャリア又はプリント基板。
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