JP4099684B2 - 無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴に関して、スズとビスマスを確実に共析化させて、スズ皮膜などに比べても遜色のない接合強度と外観を有するスズ−ビスマス合金皮膜を得るとともに、浴の高温経時安定性にも優れたものを提供する。
【0002】
【従来の技術】
米国特許第5435838号公報には、アルカンスルホン酸第一スズとアルカンスルホン酸ビスマスとチオ尿素を含有する酸水溶液であって、ビスマス塩濃度が0.2〜1.0g/Lであり、且つ、メッキ浴中のスズ対ビスマスの組成比率が30:1の比率よりもビスマス含有量が低く設定された無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴が開示されている。
【0003】
一般に、チオ尿素の存在下に、第一スズイオンとビスマスイオンを共存させた酸水溶液中に被メッキ物である銅板を浸漬すると、ビスマスの酸化還元電位はスズよりかなり貴であるために、銅の表面上にはビスマスが優先的に析出し、スズの共析化は容易でない。
このため、上記従来技術の無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴は、メッキ浴中の可溶性ビスマス塩の濃度、並びにスズに対するビスマスの組成比を所定以下に低く抑制して、スズ−ビスマス合金皮膜を析出させようとする(即ち、スズとビスマスを共析化させようとする)ものだと考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、メッキ浴中のビスマス塩の濃度、並びにスズに対するビスマス組成比を所定以下に低く抑制する必要があるため、メッキ操業中に絶えず(例えば、極端な場合、十数分おきに)ビスマス塩を補給しなければならず、浴の管理が煩雑であるばかりでなく、析出皮膜のSn/Bi組成比を所望する組成比に調整するのが容易でないという実情がある。
【0005】
一方、実際の無電解スズ−ビスマス合金メッキにおいては、析出速度を高く保持して生産性を向上する見地から、60〜70℃の浴温で、200時間、或はそれ以上の時間に亘って連続運転するのが一般的である。しかしながら、上記従来技術の無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴では、メッキ浴の高温経時安定性が低いうえ、得られるメッキ皮膜の外観はかなり黒ずみ、そのために皮膜の接合強度も無電解スズメッキ皮膜、或はスズ−鉛合金メッキ皮膜などに比べてかなり劣ってしまう。
本発明は、無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴において、スズとビスマスを確実に共析化させ、スズ皮膜などに比べても遜色のない接合強度と外観を有するメッキ皮膜を得ることを技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴中に、ジエチレントリアミン五酢酸やエチレンジアミン四酢酸などのアミノ酢酸系化合物を初めとするアミン系化合物がチオ尿素と共存すると、ビスマス塩濃度を低く抑制しなくても、スズとビスマスを円滑に共析化できること、また、この共存下において、チオ尿素とチオ尿素誘導体を併用すると、得られるメッキ皮膜の接合強度や外観がより向上することなどを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明1は、(A)可溶性第一スズ塩及び可溶性ビスマス塩、
(B)有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などの有機酸、及びホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などの無機酸の少なくとも一種、
(C)チオ尿素系化合物とアミン系化合物の混合物よりなる錯化剤
を含有し、上記錯化剤の合計含有量が5〜300g/Lであることを特徴とする無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴である。
【0008】
本発明2は、上記本発明1において、(C)のチオ尿素系化合物が、チオ尿素と、窒素原子或は硫黄原子の1個以上に置換基が結合した分子容がチオ尿素より大きいチオ尿素誘導体との混合物であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明3は、上記本発明1又は2の無電解メッキ浴に、さらに還元剤を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかの無電解メッキ浴に、さらにノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤を含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明5は、上記本発明4の界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤の混合物であることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の錯化剤は、チオ尿素系化合物とアミン系化合物との混合物をいう。
上記チオ尿素系化合物はチオ尿素とチオ尿素誘導体を包含する概念である。
当該チオ尿素誘導体は、基本的に、チオ尿素の窒素原子或は硫黄原子の1個以上に各種の置換基が結合して、分子容がチオ尿素より大きい化合物をいい、具体的には、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジドなどが挙げられる。
一方、上記アミン系化合物は、アミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノ吉草酸、アミノ酸などのアミノカルボン酸系化合物、エチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン類、アミノトリメチレンリン酸、ベンジルアミン、2−ナフチルアミン、イソブチルアミンなどのモノアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノアルコール類などを包含する概念である。
上記アミン系化合物のうちのアミノカルボン酸系化合物の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンなどが挙げられる。
また、上記アミン系化合物のうちのポリアミン類、モノアミン類、アミノアルコール類などの具体例としては、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、ベンジルアミン、2―ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミンなどが挙げられる。
【0015】
上記チオ尿素系化合物とアミン系化合物は夫々単用又は併用することにより、任意に組み合わせることができ、例えば、チオ尿素とDTPA、チオ尿素とNTA、チオ尿素とIDA、チオ尿素とDTPA、チオ尿素とTTHA、チオ尿素とEDTA、チオ尿素とエチレンジアミン、チオ尿素とエチレンジアミンテトラメチレンリン酸、チオ尿素とエタノールアミン、アリルチオ尿素などのチオ尿素誘導体とEDTA、1,3−ジメチルチオ尿素などのチオ尿素誘導体とTTHA、アセチルチオ尿素などのチオ尿素誘導体とHEDTA、ジエチルチオ尿素などのチオ尿素誘導体とTTHA、チオ尿素とエチレンチオ尿素とNTA、チオ尿素とアリルチオ尿素とHEDTA、チオ尿素と1,3−ジメチルチオ尿素とIDP、チオ尿素と二酸化チオ尿素とDTPAなどが挙げられる。
上記チオ尿素系化合物とアミン系化合物の混合物よりなる錯化剤の添加量は、合計で5〜300g/L、好ましくは50〜200g/Lである。
【0016】
上記可溶性第一スズ塩及び可溶性ビスマス塩としては、夫々限定されるものではなく、任意の可溶性の塩類を使用できる。なかでも、可溶性第一スズ塩としては、後述する有機スルホン酸との塩類が好ましく、具体的には、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸第一スズ、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸第一スズ、p−フェノールスルホン酸第一スズなどが挙げられる。また、可溶性ビスマス塩としては、上記有機スルホン酸、或は無機酸の塩類が好ましく、具体的には、メタンスルホン酸ビスマス、エタンスルホン酸ビスマス、p−フェノールスルホン酸ビスマス、硝酸ビスマス、塩化ビスマスなどが挙げられる。
当該可溶性第一スズ塩或は可溶性ビスマス塩の金属塩としての換算添加量は、夫々0.1〜200g/Lであり、好ましくは1〜80g/Lである。ちなみに、本発明では、前記従来技術のように、可溶性ビスマス塩の濃度や浴中のスズ塩に対するビスマス塩の含有比率を低く抑制する制限はない。
【0017】
本発明の無電解メッキ浴のベースを構成する酸としては、排水処理が比較的容易なアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸などの有機酸が好ましいが、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸でも差し支えない。
上記の酸は単用又は併用でき、酸の添加量は0.1〜300g/Lであり、好ましくは20〜120g/Lである。
【0018】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式CnH2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0019】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0020】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0021】
上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0022】
上記還元剤は、前記金属塩の還元用、及びその析出速度や析出合金比率の調整用などに添加され、リン酸系化合物、アミンボラン類、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン誘導体などを単用又は併用できる。
当該リン酸系化合物としては、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、或はこれらのアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩が挙げられる。
当該アミンボラン類としては、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、イソプロピルアミンボラン、モルホリンボランなどが挙げられる。
当該水素化ホウ素化合物としては水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。
当該ヒドラジン誘導体としては、ヒドラジン水和物、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジンなどが挙げられる。
上記還元剤の添加量は5〜200g/Lであり、好ましくは30〜150g/Lである。
【0023】
本発明の無電解メッキ浴には上述の成分以外に、目的に応じて公知の界面活性剤、pH調整剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、安定化補助錯化剤、隠蔽錯化剤、酸化防止剤などの無電解メッキ浴に通常使用される添加剤を混合できることは勿論である。
【0024】
上記界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤が挙げられ、これら各種の活性剤を単用又は併用できる。
その添加量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0025】
当該ノニオン系界面活性剤の具体例としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
【0026】
上記エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。
同じく上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。
上記C1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。
上記アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。
上記C1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。
上記アルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられる。
【0027】
上記C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
【化1】
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
【0028】
上記ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記C1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。
上記C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙げられる。
【0029】
更に、上記ノニオン系界面活性剤としては、
R1N(R2)2→O
(上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異なるC1〜C5アルキルを示す。)
などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
【0030】
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
【0031】
【化2】
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジルを示す。)
或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
【0032】
【化3】
(式(c)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0033】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0034】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0035】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0036】
上記カルボキシベタインは下記の一般式(d)で表されるものである。
【化4】
(式(d)中、R7はC1〜C20アルキル、R8及びR9は同一又は異なるC1〜C5アルキル、nは1〜3の整数を示す。)
【0037】
上記イミダゾリンベタインは下記の一般式(e)で表されるものである。
【化5】
(式(e)中、R10はC1〜C20アルキル、R11は(CH2)mOH又は(CH2)mOCH2CO2 -、R12は(CH2)nCO2 -、(CH2)nSO3 -、CH(OH)CH2SO3 -、m及びnは1〜4の整数を示す。)
【0038】
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0039】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0040】
上記無電解浴でメッキを施す条件としては、浴温は45〜90℃であり、析出速度を増す見地からは50〜70℃が好ましい。
【0041】
【作用】
本発明1〜2のメッキ浴には、錯化剤であるチオ尿素系化合物とアミン系化合物が共存する。このうち、チオ尿素系化合物は被メッキ物の材質をなす銅、或は銅合金に作用して錯イオンを形成するため、この銅(或は、銅合金)と浴中のスズ、或はビスマスとの間で酸化還元電位の逆転が起こると考えられる。
一方、上記アミン系化合物(例えば、アミノカルボン酸系化合物やポリアミン類など)は浴中の主にビスマスイオンに作用して、ビスマスの酸化還元電位を卑の側に変移させるため、スズとビスマス間の酸化還元電位の差異が縮減すると推定できる。
また、チオ尿素誘導体はチオ尿素より分子容が大きいという立体的特性があるため、チオ尿素とは異なり、浴中のビスマスイオンに対して上記アミン系化合物に類する作用(即ち、ビスマスの酸化還元電位の変移機能)を奏するものと推定できる。
この結果、浴中のスズ及びビスマスと被メッキ物の銅(銅合金)との間で化学置換反応がスムーズに進行し、被メッキ物の表面に金属スズと金属ビスマスが円滑に共析化する。
【0042】
【発明の効果】
(1)錯化剤として、本発明1〜2ではチオ尿素系化合物とアミノカルボン酸系化合物を初めとする各種アミン系化合物を併用するため、従来技術のように、浴中のビスマス塩の濃度、並びにスズ塩に対するビスマス塩の組成比率を低く抑制する必要がなく、円滑にメッキ浴からスズとビスマスを共析化して、スズ−ビスマス合金皮膜を形成できる(後述の試験例参照)。
従って、従来技術とは異なり、絶えずメッキ液(特に、ビスマス塩)を補充する煩雑な手間が要らない。また、後述の試験例に示すように、チオ尿素とアミン系化合物のいずれかしか存在しない比較例では、スズ−ビスマス合金皮膜の組成比(即ち、皮膜中のビスマスの含有比率)はメッキ浴中のビスマス組成比とは掛け離れた数値になるが、本発明のメッキ浴では、相対的にメッキ浴と皮膜の組成比は比較的近い数値を示し、皮膜組成比の調整が容易になる。
【0043】
(2)後述の試験例に示すように、チオ尿素とアミン系化合物のいずれかしか存在しない比較例では、得られる皮膜は黒色外観を呈し、皮膜の接合強度も劣るが、本発明のメッキ浴では、得られるスズ−ビスマス合金皮膜は金属光沢を具備した白色の良好な外観を呈する。また、スズ皮膜、或は錫−鉛合金皮膜に比べても遜色がない優れた接合強度を示すため、本発明の無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴は、最近の小型化、複雑化、多ピン化が急速に進む電子部品にも充分に対応でき、殊に、TABなどを初めとする高密度実装品にも有効である。
【0044】
(3)本発明2では、チオ尿素系化合物とアミン系化合物の共存下において、チオ尿素系化合物としてチオ尿素とチオ尿素誘導体を併用するため、得られるスズ−ビスマス合金皮膜の接合強度を一層強固に向上できる。
また、本発明5では、メッキ浴に界面活性剤としてノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤を併用添加するため、同様に、スズ−ビスマス合金皮膜の接合強度を一層強固に向上できる。
【0045】
(4)冒述したように、実際の無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴では、生産性の見地から、メッキ浴を60〜70℃程度の高温で200〜300時間に亘り連続加熱運転するのが一般的である。
このような状況下にあって、後述の試験例にも示すように、200時間経過した時点において、チオ尿素とアミン系化合物のいずれかしか存在しない比較例のメッキ浴では、メッキ浴に濁りや沈殿が生じて分解が起こるのに対して、本発明のメッキ浴では、浴が分解せずにきわめて安定であり、無電解メッキ浴の実用レベルを有効に確保できる。
【0046】
【実施例】
以下、無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴の実施例を順次説明するとともに、各メッキ浴の高温経時安定性、並びにメッキ浴から得られた皮膜の接合強度、外観などの各種試験例を述べる。
尚、本発明は下記の実施例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0047】
下記の実施例1〜14はメッキ浴中に錯化剤としてチオ尿素系化合物と、アミノカルボン酸系化合物、ポリアミン類、アミノアルコール類などのアミン系化合物を併用添加した例である。
上記実施例1〜14のうち、実施例9〜10は錯化剤としてのチオ尿素系化合物にチオ尿素とチオ尿素誘導体を併用した例、実施例11〜12は両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用添加した例、実施例13〜14はチオ尿素系化合物にチオ尿素とチオ尿素誘導体を併用し、且つ、両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用添加した例である。
また、下記の比較例1〜4は、メッキ浴中にチオ尿素系化合物又はアミン系化合物のいずれか一種のみを単独添加した例である。このうち、比較例4は錯化剤にチオ尿素のみを添加し、メッキ浴中のビスマス塩の濃度を1g/L、第一スズ塩に対するビスマス塩の金属塩換算としての含有比率(Bi/Sn)を1/30に設定したもので、冒述の従来技術に相当する例である。比較例1はこのビスマス塩の含有濃度を増大させた例、比較例2は錯化剤にアミン系化合物(具体的には、アミノカルボン酸系化合物)のみを単独添加した例、比較例3はチオ尿素を単独添加するとともに、両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用添加した例である。
【0048】
《実施例1》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 40g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 3g/L
・メタンスルホン酸 : 80g/L
・チオ尿素 :120g/L
・エチレンジアミンテトラメチレンリン酸 : 30g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
【0049】
《実施例2》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・エタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 1g/L
・2−ブタンスルホン酸 : 80g/L
・1,3−ジメチルチオ尿素 :100g/L
・トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA) : 40g/L
・オクチルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 15g/L
【0050】
《実施例3》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
【0051】
《実施例4》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 20g/L
・p−フェノールスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 5g/L
・メタンスルホン酸 :100g/L
・ジエチルチオ尿素 :120g/L
・トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA) : 30g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 45g/L
・ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 15g/L
【0052】
《実施例5》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 20g/L
・硝酸ビスマス(Bi3+として) : 2g/L
・メタンスルホン酸 : 40g/L
・チオ尿素 :120g/L
・ニトリロ三酢酸(NTA) : 50g/L
・次亜リン酸アンモニウム : 60g/L
【0053】
《実施例6》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 15g/L
・塩化ビスマス(Bi3+として) : 2g/L
・エタンスルホン酸 : 70g/L
・チオ尿素 :150g/L
・イミノ二酢酸(IDA) : 20g/L
・次亜リン酸カリウム : 35g/L
【0054】
《実施例7》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 40g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 3g/L
・メタンスルホン酸 : 75g/L
・チオ尿素 :120g/L
・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) : 30g/L
・次亜リン酸カリウム : 30g/L
・ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0055】
《実施例8》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・エタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 3g/L
・エタンスルホン酸 : 65g/L
・チオ尿素 : 95g/L
・トリエタノールアミン : 25g/L
・次亜リン酸アンモニウム : 40g/L
・ラウリルアルコールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0056】
《実施例9》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 8g/L
・p−フェノールスルホン酸 : 95g/L
・チオ尿素 :120g/L
・アリルチオ尿素 : 30g/L
・ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA): 30g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 6g/L
【0057】
《実施例10》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 12g/L
・2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 : 75g/L
・チオ尿素 :100g/L
・エチレンチオ尿素 : 30g/L
・ニトリロ三酢酸(NTA) : 20g/L
・次亜リン酸ナトリウム : 50g/L
・ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 8g/L
【0058】
《実施例11》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 40g/L
・塩化ビスマス(Bi3+として) : 3g/L
・p−フェノールスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 75g/L
・エチレンジアミン : 40g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 7g/L
・ノニルフェノールポリエトキシレート(EO15) : 7g/L
【0059】
《実施例12》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 35g/L
・p−フェノールスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 10g/L
・クレゾールスルホン酸 : 20g/L
・チオ尿素 : 90g/L
・エチレンジアミン四酢酸(EDTA) : 30g/L
・次亜リン酸カルシウム : 40g/L
・ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 8g/L
・オクチルアミンポリエトキシレート(EO8) : 5g/L
【0060】
《実施例13》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 25g/L
・p−フェノールスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 3g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 : 85g/L
・1,3−ジメチルチオ尿素 : 35g/L
・イミノジプロピオン酸(IDP) : 20g/L
・次亜リン酸 : 40g/L
・ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 5g/L
・β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 8g/L
【0061】
《実施例14》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・p−フェノールスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 40g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 2g/L
・2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 : 15g/L
・チオ尿素 :100g/L
・二酸化チオ尿素 : 25g/L
・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA) : 30g/L
・次亜リン酸 : 30g/L
・ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン : 5g/L
・クミルフェノールポリエトキシレート(EO10) : 5g/L
【0066】
《比較例1》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 50g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 5g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 :100g/L
【0067】
《比較例2》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 10g/L
・メタンスルホン酸 : 90g/L
・トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA) : 50g/L
・次亜リン酸アンモニウム : 30g/L
【0068】
《比較例3》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 45g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 8g/L
・メタンスルホン酸 : 60g/L
・チオ尿素 : 70g/L
・ラウリルジメチルアミンオキシド : 5g/L
・β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) : 10g/L
【0069】
《比較例4》
下記の組成で無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
・メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) : 30g/L
・メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) : 1g/L
・メタンスルホン酸 : 50g/L
・チオ尿素 :100g/L
【0070】
《無電解メッキ浴の高温経時安定性に関する試験例》
そこで、上記実施例1〜14並びに比較例1〜4の各無電解スズ−ビスマス合金メッキ液を1Lビーカーに収容し、これを65℃に恒温設定したウォーターバスに入れて夫々200時間に亘って高温保持し、当該加熱条件下における200時間経過時点でのメッキ液の変化を観測し、各メッキ液の劣化(分解)状態の度合を評価した。
但し、当該高温経時安定性の評価基準は下記の通りである。
○:メッキ浴に濁りや沈殿が認められず、浴が分解せずに透明度が高く、初期建浴時の浴状態となんら変化がない。
×:メッキ浴に濁りや沈殿が生じて、浴が分解状態にあった。
【0071】
図1の中央左寄りの欄はその試験結果である。錯化剤としてチオ尿素系化合物とアミン系化合物とを組み合わせた実施例1〜14では、全て○の評価であった。これに対して、錯化剤にチオ尿素を単独使用した比較例4(冒述の従来技術に相当する例)、比較例1及び比較例3、或はアミノカルボン酸系化合物を単独使用した比較例2では、共に評価は×であった。
即ち、チオ尿素系化合物とアミン系化合物を併用した実施例では、チオ尿素とアミン系化合物のいずれか一方のみを使用した比較例との対比において、高温経時安定性の点で明らかな優位性が確認できた。
【0072】
そこで、上記各実施例1〜14並びに比較例1〜4の各無電解メッキ浴を65℃に保持し、VLP(電解銅箔の一種)によりパターン形成したTABのフィルムキャリアの試験片を5分間浸漬させて、無電解スズ−ビスマス合金メッキを施した。
得られた各スズ−ビスマス合金メッキ皮膜に関して、その外観を目視で観察するとともに、皮膜の膜厚(μm)並びに皮膜中のビスマス組成比(%)を機器で測定した。
【0073】
《メッキ皮膜の膜厚及びビスマス組成比》
図1の右半部の欄には、上記メッキ皮膜の膜厚及びビスマス組成比を示した。 同図によると、実施例1〜14では、スズとビスマスが確実に共析化して、得られた皮膜中のビスマス組成比も所望の数値を示した。また、膜厚も実用レベル或はそれ以上を示した。
特に、皮膜中のビスマス組成比とメッキ浴中のビスマス組成比を対比すると、比較例1〜4ではその差異が大きいのに対して、実施例1〜14では相対的にその差異が縮小する傾向を示した。
【0074】
《メッキ皮膜の外観評価試験例》
スズ−ビスマス合金メッキ皮膜の外観は下記の基準に基づいて評価した。
○:白色外観で、金属光沢を呈した。
△:白色外観を呈していたが、茶色、褐色などのシミ、ムラが見られた。
×:黒色外観を呈した。
【0075】
図1の最左欄はその結果である。実施例1〜14は全て○の評価であったが、比較例1〜4は共に×の評価であった。特に、冒述の従来技術に相当する比較例4では、スズとビスマスの共析化は達成されるが、メッキ皮膜が黒色外観を呈して、実用レベルの具備には問題が多いことが判った。
【0076】
そこで、前記実施例1〜14並びに比較例1〜4の各メッキ浴において、無電解スズ−ビスマス合金メッキを施したTABを夫々銅板上にボンディングし、スズ−ビスマス合金皮膜の接合強度を調べた。
【0077】
《接合強度試験例》
即ち、ボンディングマシーン(アビオニクス社製TCW−115A)を使用し、0.5μmの金メッキを施した銅板上に前記実施例及び比較例の各メッキ浴によって無電解スズ−ビスマス合金メッキを施したTABの回路パターン(具体的には、インナリード)を、荷重50g/単位インナリード、温度450℃、時間5秒の条件下でボンディングした。
そして、ボンディング後のインナリードの一端を、上記銅板に対して直角方向に破断するまで引っ張り、その破断モードを調べることでリードのピーリング強度(引き剥がし強度)の簡易試験を行った。
【0078】
但し、当該接合強度試験の評価基準は、接合強度の強弱を主要な基準としながら、且つ、ボンディング後のインナリード周辺のフィレットの形成状態(拡大鏡での俯瞰観察)を補足的な参考基準として、下記の通りに設定した。
◎:リード自体で破断し、且つ、フィレットはリードの全周で均一な形状で連続形成されていた。
○:リード自体で破断し、且つ、フィレットはリードの全周でほぼ均一な形状で連続形成されていた。
◇:フィレット形成は局部的に不充分であったが、リード自体で破断しており、実用的な接合強度のレベルは保持していた。
△:フィレットは不連続に形成され、リードと金メッキの界面で破断した。
×:リードと金メッキの界面で破断し、フィレットは形成されなかった。
【0079】
図1の左寄り欄はその試験結果である。
錯化剤としてチオ尿素系化合物とアミノカルボン酸系化合物を組み合わせた実施例1〜14では、接合強度は全て◎〜◇の評価、即ち、スズ皮膜、或はスズ−鉛合金皮膜に比べても遜色のない実用レベルを具備していた。
特に、チオ尿素系化合物とアミノカルボン酸系化合物の共存下において、チオ尿素系化合物としてチオ尿素とチオ尿素誘導体を併用した実施例9〜10、或は、両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用添加した実施例11〜12では接合強度は夫々○の評価であり、また、チオ尿素系化合物としてチオ尿素とチオ尿素誘導体を併用し、且つ、両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用添加した実施例13〜14では接合強度は◎の評価に向上した。
これに対して、アミン系化合物を使用せず、チオ尿素のみを単独使用した比較例1及び比較例4、或は、チオ尿素系化合物を使用せず、アミン系化合物(具体的には、アミノカルボン酸系化合物)のみを単独使用した比較例2では接合強度は共に×の評価であった。また、チオ尿素のみを単独使用し、且つ、両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用添加した比較例3では接合強度は△の評価であった。
【0080】
以上の各種試験結果によると、無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴に錯化剤としてチオ尿素系化合物とアミン系化合物を併用添加すると、スズとビスマスを確実に共析化できるとともに、得られるスズ−ビスマス合金皮膜の接合強度も実用レベル以上を確保できることが確認できた。
即ち、チオ尿素系化合物とアミン系化合物を併用した実施例では、チオ尿素とアミン系化合物のいずれか一方のみを使用した比較例との対比において、スズ−ビスマス合金皮膜の形成(スズとビスマスの共析化)と当該皮膜の接合強度の点で明らかな優位性が確認できた。
殊に、チオ尿素系化合物とアミン系化合物の共存下において、チオ尿素系化合物としてチオ尿素とチオ尿素誘導体を併用すると、接合強度がさらに向上することが確認できた。チオ尿素誘導体はチオ尿素の窒素原子或は硫黄原子の1個以上に置換基が結合し、分子容がチオ尿素より大きいため、これらの特性がチオ尿素との併用下では接合強度の向上に寄与するものと考えられる。
また、上記共存下において、無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴に添加する界面活性剤として、両性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用添加すると、やはりメッキ皮膜の接合強度の向上に寄与することが確認できた。
これに対して、チオ尿素とアミン系化合物のいずれか一方のみを含有させた場合には、皮膜の接合強度は不充分であり、特に、冒述の従来技術に相当するメッキ皮膜(比較例4参照)は、接合強度の面でも実用性に大きな問題があることが再確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1〜14並びに比較例1〜4の各無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴の高温経時安定性、各メッキ浴から得られるスズ−ビスマス合金皮膜の外観、接合強度、膜厚、ビスマス組成比などの試験或は観察結果を示す図表である。
Claims (5)
- (A)可溶性第一スズ塩及び可溶性ビスマス塩、
(B)有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などの有機酸、及びホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などの無機酸の少なくとも一種、
(C)チオ尿素系化合物とアミン系化合物の混合物よりなる錯化剤
を含有し、上記錯化剤の合計含有量が5〜300g/Lであることを特徴とする無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴。 - (C)のチオ尿素系化合物が、チオ尿素と、窒素原子或は硫黄原子の1個以上に置換基が結合した分子容がチオ尿素より大きいチオ尿素誘導体との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴。
- 請求項1又は2に記載の無電解メッキ浴に、さらに還元剤を含有することを特徴とする無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載した無電解メッキ浴に、さらにノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤を含有することを特徴とする無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴。
- 請求項4に記載の界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤の混合物であることを特徴とする無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴。
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