JP2000191810A - 耐熱性フィルムの表面改質方法および表面改質された耐熱性フィルム - Google Patents

耐熱性フィルムの表面改質方法および表面改質された耐熱性フィルム

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JP2000191810A
JP2000191810A JP10369481A JP36948198A JP2000191810A JP 2000191810 A JP2000191810 A JP 2000191810A JP 10369481 A JP10369481 A JP 10369481A JP 36948198 A JP36948198 A JP 36948198A JP 2000191810 A JP2000191810 A JP 2000191810A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィルム搬送性が安定しており、帯電量が抑
制された、接着性の高い耐熱性フィルムを提供する。 【解決手段】 耐熱性フィルムに、無機微細粒子の作用
によって微細な突起を形成させ、次いでプラズマ放電処
理し、接着性および耐熱性の高いフィルムを得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性フィルムの
表面改質方法および表面改質された耐熱性フィルムに関
する。
【0002】
【従来の技術】耐熱性フィルムは、電子部品などのフレ
キシブルプリント配線板(FPC)に用いる基材とし
て; TAB(Tape Automated Bonding)の基材絶縁フ
ィルムとして; あるいは半導体装置における支持部材
などの種々の材料と半導体素子等との接合材の絶縁基材
であるLOC用テープなどとして、用いられている。こ
のような用途では、基材となるフィルムの接着性が大き
いことが望まれる。特に近年の高密度配線や微細加工と
いった細密化に伴い、その要求レベルは益々厳しくなっ
てきている。
【0003】耐熱性フィルムはまた、磁気記録媒体のベ
ース材料としても用いられる。このような場合において
も、フィルムの耐熱性と共に、高い接着性が求められ
る。
【0004】これまでに、耐熱性フィルムの接着性を向
上させる表面改質方法として、コロナ放電処理、アルカ
リ処理、サンドブラスト処理等の種々の技術が提案され
実施されている。
【0005】提案されている方法のうち、プラズマ放電
処理方法は、例えばポリイミドフィルムに対してコロナ
放電処理と比較して良好な改質効果を発現させ得る。プ
ラズマ放電処理とはいわゆるグロー放電処理であり、コ
ロナ放電処理と比較して強い電力パワーを与えることが
可能であるからである。より具体的には、コロナ放電処
理に際しては、通常20〜500W・min/m2 程度
の電力密度で処理されるのが通常であるのに対し、グロ
ー放電処理では数千W・min/m2 の電力密度での放
電が可能であることにより、耐熱性フィルム表面の改質
効果が大きく向上するためと推定される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、プラズマ放
電処理では、長尺のフィルムを連続的に処理するに際し
ては、コロナ放電処理と比較して均一処理が難しい、あ
るいは欠陥を生じさせやすいという問題点があった。プ
ラズマ放電処理を行う場合は、高電力密度で連続処理さ
れるため、均質かつ安定的に表面処理するためには処理
されるフィルムが安定的に走行することが必須となる。
即ちロールツーロールでフィルムが搬送される際に、プ
ラズマチャンバー内はもちろんのこと、チャンバー前後
での安定した搬送性を確保する必要がある。
【0007】ところが高電力密度でプラズマ放電処理さ
れ、高度に表面改質されたフィルムは、安定的な搬送性
を確保できなかった。高電力密度であるが故に、処理さ
れたフィルムが高度に帯電し、あるいは高度に表面処理
され、ロールとの密着性が向上して、ロールとの抵抗が
大きくなり、ロールへの巻き付きが発生するためと推定
される。
【0008】さらに処理後のフィルムをロール状に巻き
取るとフィルム同士が強く密着して繰り出しが安定的に
できなかったり、あるいは繰り出そうとしてフィルムが
破けて繰り出しができなかったりする問題が発生してい
た。また、フィルム同士が密着してしまう結果、フィル
ムの部分的あるいは全面で表面改質効果が失われるある
いは低下するという問題も生じていた。
【0009】そこで、本発明者はかかる問題を解決し、
安価かつ簡便に、しかも安定的にプラズマ放電処理する
方法を鋭意検討した結果、本発明に至ったのである。
【0010】即ち、安定的に均一処理ができない、ある
いは欠陥を生じさせる原因について鋭意検討した結果、
プラズマ放電処理では大きな放電電力密度で処理される
ため、長尺のフィルムを連続的に処理するに際しては、
安定的にフィルムを走行させることや異物等の付着が無
い状態が必須要件であるとの結論に至ったのである。そ
して、フィルム表面に微細な突起を形成させることによ
り、フィルムが安定的に走行することが可能となり、そ
の結果、連続的にかつ安定的な製造が可能となり、かつ
均質な改質効果が得られ、また欠陥、破壊(穴が空く
等)が抑制されることを見出した。さらに処理後に巻き
取られたフィルムは次工程に使用する際安定的に繰り出
すことが可能となる。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の耐熱性フィルム
の表面改質方法の要旨とするところは、無機微細粒子に
よって耐熱性フィルムの表面に微細な突起を形成させた
後、プラズマ放電処理を施してなることにある。
【0012】かかる耐熱性フィルムの表面改質方法にお
いて、上記無機微細粒子が、SiO 2 、TiO2 、Ca
HPO4 、およびCa2 2 7 からなる群より選択さ
れる少なくとも1種であることにある。
【0013】本発明の表面改質された耐熱性フィルムの
要旨とするところは、上記のいずれかに記載の耐熱性フ
ィルムの表面改質方法によって表面改質されたことにあ
る。
【0014】かかる表面改質された耐熱性フィルムの要
旨とするところは、すべり摩擦係数が0.1以上1以
下、静摩擦係数が0.2以上2以下、および表面粗さ
(Ra値)が1nm以上200nm以下、好ましくは、
1nm以上100nm以下、より好ましくは1nm以上
50nm以下であることにある。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の用語「耐熱性フィルム」とは、ガラス転移温度
が100℃以上、または融点が300℃以上、またはJ
ISC4003で規定される長期連続使用温度の最高許
容温度が121℃以上の樹脂からなるフィルムのことを
いう。
【0016】このような耐熱性フィルムは、例えば芳香
族ポリイミド、ポリアミド、ポリアリレート、ポリスル
ホン、ポリエーテルスルホン等の芳香族系ポリマーやポ
リテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等である。
【0017】このうち特に好ましくは、ポリイミド樹脂
フィルムである。ここでいうポリイミド樹脂とは特に限
定されず、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテ
ルイミドあるいはポリエステルイミド等を挙げることが
でき、非熱可塑性、熱可塑性、熱硬化性のいずれをも含
む。ポリイミド樹脂の分子構造は限定されないが、例え
ば下記一般式(1)
【0018】
【化1】
【0019】で表される繰り返し単位を有する樹脂が含
まれる。好ましくは、式中、R1 は4価の有機基であ
り、より好ましくは、少なくとも1個の芳香環を有して
なり、かつ結合すべき隣接するカルボニル基とは芳香環
が直接結合している。具体的には、R1 は、例えば以下
の化学式
【0020】
【化2】
【0021】(式中、Xは、化3
【0022】
【化3】
【0023】からなる群から選択される1つの2価の官
能基であり、R4 はCH3 −、Cl−、Br−、F−、
CH3 O−であり、1つの官能基中に複数含まれている
場合には、R4 は同一であってもよくまた異なっていて
もよい)で表される官能基の群から選択される少なくと
も1種で有り得る。
【0024】化学式(1)の式中、R2 は、2価の有基
機であり、好ましくは少なくとも1個の芳香環を有して
なり、かつ結合すべき隣接する窒素原子とは芳香環が直
接結合している。具体的には、R2 は、
【0025】
【化4】
【0026】(式中、R4 は、CH3 −、Cl−、Br
−、F−、CH3 O−であり、R4 が同じ官能基に2つ
以上含まれる場合には、同一であっても異なっていても
よい)で表される官能基の群から選択される少なくとも
1種または2種以上であり得る。
【0027】好ましいポリイミド樹脂は、ピロメリット
酸二無水物と4,4' −ジアミノジフェニルエーテルと
から誘導される骨格を主体とするポリイミド、またはピ
ロメリット酸二無水物と4,4' −ジアミノジフェニル
エーテルおよびパラフェニレンジアミンとから誘導され
る骨格を主体とするポリイミド、またはピロメリット酸
二無水物及び3,3' ,4,4' −ビフェニルテトラカ
ルボン酸二無水物または3,3' ,4,4' −ベンゾフ
ェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4' −ジアミノ
ジフェニルエーテルおよびパラフェニレンジアミンとか
ら誘導される骨格を主体とするポリイミド、ピロメリッ
ト酸二無水物及びp−フェニレンビス(トリメリット酸
モノエステル酸無水物)と4,4' −ジアミノジフェニ
ルエーテルおよびパラフェニレンジアミンとから誘導さ
れる骨格を主体とするポリイミド、3,3' ,4,4'
−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレ
ンジアミン及び/または4,4' −ジアミノジフェニル
エーテルとから誘導される骨格を主体とするポリイミド
である。
【0028】ここでフィルムとは、厚み数μm〜数mm
の平板な形状の樹脂を指す。通常のフィルムの厚みは3
〜300μmであり、好ましくは5〜125μm、より
好ましくは5〜75μm、さらに好ましくは5〜50μ
mである。薄いフィルムほどフィルム搬送性等の問題点
が顕著となるため、本発明の効果が十分に得られる。従
って、本発明においては、フィルムの厚みが5μm〜1
5μmの範囲にある場合にその効果が顕著となる。
【0029】本発明の無機微細粒子は特に限定されず、
通常フィラーとして用いられる粒子である。例えば、耐
熱性フィルムとして好適なポリイミドに対して加工工程
中及び加工後、さらに使用される用途に要求される諸特
性に何ら影響または変化を与えない化学種、粒度、量を
もって選択される。例えばSiO2 、TiO2 等の他、
IIa族のアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、S
r、Ra)のオルトリン酸塩化合物、中でもCaHPO
4 、Ca2 2 7 等の電気的に絶縁物である化学種を
好適に挙げることができ、これらのうち、1種または2
種以上の混合物として用いることができる。導電性の化
学種であっても、フィルムそのものの絶縁性に影響を及
ぼさない量であれば添加しても差し支えない。
【0030】上記した無機微細粒子により、耐熱性フィ
ルムの表面に微細な突起を形成させる方法としては特に
制約はなく、従来公知の技術あるいはその応用範囲を利
用できる。例えば、フィルム中に無機微細粒子を添加す
る方法、あるいはフィルム表面に無機微細粒子を担持さ
せ、局在化させる方法がある。
【0031】フィルム中に無機粒微細粒子を添加する方
法としては、例えばフィルムの成形工程前のドープや溶
融した樹脂等に添加する方法が挙げられる。
【0032】ポリイミドを例にしてさらに詳しく説明す
る。まず、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジ
アミンと概ね等モル用い、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−
ピロリドン等のアミド系有機極性溶媒中で反応させてポ
リイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を得る。さ
らに得られたポリアミド酸溶液をエンドレスベルトある
いはドラム等の支持体上にフィルム状にキャストして自
己支持性のあるフィルムを得、これを支持体から引き剥
がした後に端部を保持して、テンター炉等を用いて段階
的に加熱処理して最終的に450℃〜550℃程度にま
で焼成処理しポリイミドフィルムを得る。必要に応じて
ポリアミド酸の溶液に化学的イミド化剤である無水酢酸
等の脱水剤とイソキノリン、キノリン、β−ピコリン等
のピコリン類等の3級アミン類を併用して混合した後、
支持体上にフィルム上にキャストして成形してもよい。
この化学的イミド化方法で得られるポリイミドフィルム
の方が、特性上も生産性からも好ましい。
【0033】無機微細粒子は、上記したポリイミドの製
造工程において、ポリアミド酸溶液を支持体上にフィル
ム状にキャストする前の任意の工程でポリアミド酸溶液
に添加し得る。具体的には、ポリアミド酸合成前の有機
極性溶媒中に添加分散させたのち、酸無水物類とジアミ
ン類を反応させる方法、反応途中に添加する方法、最終
的に得られたポリアミド酸溶液に添加混合する方法など
いずれの方法でもよい。このうち、特に好ましくは、ポ
リアミド酸合成前の有機極性溶媒中に添加分散させたの
ちに酸無水物類とジアミン類を反応させる方法か該反応
途中に添加する方法を採用し、無機微細粒子を凝集させ
ずに均一に分散させる。
【0034】ここで用いられる無機微細粒子の粒子径は
0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmを主体とし得
る。10μmを越える大きな粒子を添加するとフィルム
表面に突起を形成することに有効ではあるが、実質的に
フィルムに物理的損傷を与える場合があり、フィルムの
機械的強度の低下を招くなどの不都合が生じる。一方、
0.5μmよりも小さい粒径では機械的強度の低下など
フィルム本来が有する特性に与える影響は小さいが、本
発明の効果を発現させるのに有効な大きさの突起を形成
させるのが困難となる。
【0035】無機微細粒子の添加量は、フィルムの重量
に対して、0.01〜0.5重量%程度が好ましい。
【0036】フィルム表面に無機微細粒子を担持させる
方法を説明する。例えば、上記のポリイミドフィルム製
造において、前駆体のポリアミド酸の有機溶媒溶液を支
持体上にキャストした後、自己支持性のあるフィルムを
得、これを支持体から引き剥がした後に、その表面に無
機微細粒子の分散液を塗布し、必要に応じて乾燥した
後、引き続きテンター炉等を用いて加熱処理してポリイ
ミドフィルムを得る方法が挙げられるが、これに限定さ
れない。この方法において、無機微細粒子を分散させる
液としては、沸点が50〜230℃程度の低沸点有機溶
媒が好ましく用いられる。このような低沸点有機溶媒
は、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド、テトラヒドロフラン等である。この方法で用いら
れる無機微細粒子は前記した化学種を使用できるが、粒
度は0.01〜10μm、好ましくは0.01〜1μ
m、特には0.02〜0.5μmのものが好ましい。こ
の方法の場合には、無機微細粒子が表面に局在している
ため、この粒径範囲で十分な突起が形成される。
【0037】本発明におけるプラズマ放電処理は、いわ
ゆる真空プラズマ処理あるいは減圧プラズマ処理、およ
び常圧プラズマ処理あるいは大気圧プラズマ処理などで
あり得る。特に常圧プラズマ処理は比較的設備費等が安
価であり好ましく用いられる。プラズマ処理において、
一般に1000W・min/m2 以上の電力密度で長尺
品が連続的に処理される。
【0038】プラズマ放電処理に用い得る電極は、金
属、ガラス、石英、セラミック等を、表面をグロー放電
によって励起されたプラズマのエネルギーによって分解
されない誘電体で被覆して作成する。電極に印加する高
電圧の周波数は、1〜500KHz、好ましくは1〜2
0KHzであり、2000〜8000V、好ましくは3
000〜5000Vの電圧印加によりグロー放電が起こ
る。
【0039】常圧下においては、特定の気体組成物中で
グロー放電処理される。気体組成物としては希ガス、例
えばアルゴン、ヘリウムあるいはこれらの混合ガスを主
成分とし、必要に応じて副成分として反応性ガスを混合
できる。反応性ガスとしては二酸化炭素、窒素、酸素、
アンモニア、シランなどが挙げられ、さらにはアセトン
やメタンなどの有機低沸点化合物や有機性ガスの使用も
可能である。
【0040】希ガスと反応性ガスとの比率は、希ガスが
80容量%以上、好ましくは90〜95容量%の範囲で
ある。希ガスの割合が少ないと安定な放電ができなくな
る一方、反応性ガスが少ないと十分な表面改質効果が得
られない。
【0041】本発明の表面に微細突起を形成させたフィ
ルムは、表面に微細突起のないフィルムと比較して、プ
ラズマ放電処理や表面改質の程度が同じ場合でも、ロー
ルとの密着性及び巻き取られた後のフィルム同士の密着
が改善される。
【0042】具体的には、本発明の表面改質された耐熱
性フィルムのすべり摩擦係数は、ASTM−1894に
則り、フィルム同士の面で測定した場合に0.1以上1
以下、好ましくは0.1以上0.7以下、最も好ましく
は0.1以上0.5以下である。すなわち、すべり摩擦
係数は小さい方がよいが、0.1より小さい値では、フ
ィルム搬送時にロールとの抵抗が小さ過ぎて、蛇行等の
不安定走行が生じる。
【0043】本発明の表面改質された耐熱性フィルムの
静摩擦係数は、ASTM−1894に則り、フィルム同
士の面で測定した場合に0.2以上2以下、好ましくは
0.2以上1.5以下、さらに好ましくは0.2以上1
以下、最も好ましくは0.2以上0.7以下である。す
なわち、静摩擦係数が0.2より小さいと、フィルムを
巻き取った後、例えば輸送中にいわゆる巻ずれが生じた
りする。
【0044】本発明の表面改質された耐熱性フィルムの
表面粗さは、ZYGO社製の NewView200 with ZOOM
で測定長さが100μm、カットオフ値0.008mm
で測定されるRa値が1nm以上、好ましくは3nm以
上、さらに好ましくは5nm以上であることが好まし
い。上限は、好ましくは、200nmであり、より好ま
しくは100nmであり、特に好ましくは50nmであ
る。すなわち、200nmより大きいと、FPCや磁気
記録媒体などのベース材料として使用する際に、接着剤
や磁性体等を塗工する場合に、接着剤や磁性体をはじい
たりして、均一な被覆ができない、などの問題が生じ
る。
【0045】本発明の表面改質効果の発現は、フィルム
表面に微細な突起が形成されたことにより、フィルム搬
送時のロール等との接触面積あるいは巻き取られた後の
フィルム同士の接触面積が減ったことによると推測され
る。
【0046】以下に本発明の好ましい態様を実施例で説
明するが、これらの実施例は本発明を説明するためのも
のであり、限定するためのものではない。当業者は、本
発明の範囲を逸脱することなく種々の変更、修正、及び
改変を行い得る。
【0047】
【実施例】(実施例1)N,N−ジメチルホルムアミド
に4,4' −ジアミノジフェニルエーテルを溶解させ、
さらに粒径1〜5μmを主体とするCaHPO4 を添加
して十分に攪拌し分散させる。次いでピロメリット酸二
無水物を4,4' −ジアミノジフェニルエーテルに対し
て97mol%まで粉末のまま添加し、さらにピロメリ
ット酸二無水物のN,N−ジメチルホルムアミドの7%
溶液を、ピロメリット酸二無水物の総量が4,4' −ジ
アミノジフェニルエーテルに対しておよそ等モル(10
0mol%)になるよう添加し、3500ポイズのポリ
アミド酸溶液を得た。反応は窒素雰囲気中で行われ、ポ
リアミド酸溶液濃度は最終的に15wt%となるよう設
定した。
【0048】得られたポリアミド酸溶液に、アミド酸残
基に対して、無水酢酸を2倍モル量及びイソキノリンを
0.2倍モル量混合した後、エンドレスベルト上にキャ
ストし、100℃で5分乾燥して得られる自己支持性の
フィルムを引き剥し、次いで端部を固定した後テンター
炉にて段階的に昇温して最終的に500℃で1分焼成
し、厚み12.5μmのポリイミドフィルム長尺品を得
た。
【0049】次にこのフィルムを常圧プラズマ処理し
た。この時のガス組成はAr/He/O2=80/20
/3(VOL/VOL)で圧力は760Torrとし
た。内部に冷媒として水を通した鉄製の棒状電極を、厚
さ1mmのガラスで被覆した高電圧印加電極を25対配
置し、周波数5KHz、出力5KWの条件で形成された
グロー放電を、走行速度5m/min(処理電力密度1
000W・min/m)のフィルムに施して処理し、巻
き取った。
【0050】(実施例2)実施例1と同様にして厚み
7.5μmのポリイミドフィルム長尺品を得た。このフ
ィルムに実施例1と同条件で常圧プラズマ処理を施して
巻き取った。
【0051】(実施例3)ジアミン成分として4,4'
−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミ
ンを全ジアミン成分に対しそれぞれ70モル%および3
0モル%用い、酸成分として3,3' ,4,4' −ビフ
ェニルテトラカルボン酸2無水物とピロメリット酸二無
水物を全酸二無水物成分に対し40モル%および60モ
ル%用いる他は実施例1と同様にして厚み12.5μm
のポリイミドフィルム長尺品を得た。但し、ピロメリッ
ト酸二無水物は、57モル%と3モル%に分割し、3モ
ル%相当は、実施例1と同様にDMF溶液として添加し
た。このフィルムに実施例1と同条件で常圧プラズマ処
理を施して巻き取った。
【0052】(実施例4)N,N−ジメチルホルムアミ
ドに4,4' −ジアミノジフェニルエーテルを酸無水物
成分あるいは全ジアミン成分に対して70mol%の量
を溶解させた。次いでピロメリット酸二無水物を粉末の
まま全量添加して溶解させる。次いで粒径1〜5μmを
主体とするCaHPO4 をN,N−ジメチルホルムアミ
ドに十分に分散させた懸濁液(10wt%)を添加して
十分に攪拌混合する。このプレポリマー溶液に、パラフ
ェニレンジアミンのN,N−ジメチルホルムアミドの溶
液(濃度10wt%)を、全ジアミン成分に対して約3
0mol%の量添加し、3500ポイズのポリアミド酸
溶液を得た。反応は窒素雰囲気中で行われ、ポリアミド
酸溶液濃度は最終的に15wt%となるよう設定した。
【0053】得られたポリアミド酸溶液に、アミド酸残
基に対して無水酢酸を、2倍モル量及びイソキノリンを
同0.2倍モル量混合した後、エンドレスベルト上にキ
ャストし、100℃で5分乾燥して得られる自己支持性
のフィルムを引き剥し、次いで端部を固定した後テンタ
ー炉にて段階的に昇温して最終的に500℃で1分焼成
し、厚み10μmのポリイミドフィルム長尺品を得た。
【0054】次にこのフィルムを常圧プラズマ処理し
た。この時のガス組成はAr/He/N2=60/40
/5(VOL/VOL)で圧力は760Torrとし
た。内部に冷媒として水を通した鉄製の棒状電極を、厚
さ1mmのガラスで被覆した高電圧印加電極を25対配
置し、周波数5KHz、出力4.5KWの条件で形成さ
れたグロー放電を、走行速度2.5m/min(処理電
力密度1800W・min/m)のフィルムに施して処
理し、巻き取った。
【0055】(比較例1)ポリアミド酸の溶液を合成す
る工程でCaHPO4 を添加しないほかは、実施例1と
同様の方法で厚み12.5μmのポリイミドフィルム長
尺品を得た。得られたフィルムを実施例1と同様の条件
で常圧プラズマ処理を施そうと試みたが、安定的に走行
せず巻き取ることができなかった。
【0056】(比較例2)ポリアミド酸の溶液を合成す
る工程でCaHPO4 を添加しないほかは、実施例4と
同様の方法で厚み10μmのポリイミドフィルム長尺品
を得た。
【0057】得られたフィルムを実施例4と同様の条件
で常圧プラズマ処理を施した。辛うじて安定走行を確保
して巻き取ることができたが、繰り出そうとしたとこ
ろ、フィルム同士の密着が強く、安定的に繰り出すこと
ができなかった。
【0058】実施例1〜4および比較例1〜2で得られ
た耐熱性フィルムの特性を表1に示す。なお、フィルム
帯電量の測定は、春日電機(株)製KS−471を用
い、フィルムロール中央部から10cmの位置に測定器
をセットして5m/分の速度でフィルムを繰り出して行
なった。但し、表示される+/−については無視して絶
対値として評価した。
【0059】
【表1】
【0060】表中、「測定不能」とあるのは、すべり摩
擦係数が大きいことが原因と見られるスティックスリッ
プ現象の為に、測定ができなかったことを示す。
【0061】
【発明の効果】本発明の耐熱性フィルムの表面改質方法
によれば、高電力密度での放電処理を行っても、安定的
に製造できかつ均質な表面改質が可能となる。
【0062】また、処理後のフィルムは次工程で使用さ
れる際にも安定的にロールツーロールでの繰り出し及び
搬送が可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F071 AA60 AB18 AB25 AB26 AD02 AF27Y AF28 AF28Y AF45 AG16 BA02 BB02 BC01 BC08 BC16 4F073 AA01 BA16 BA25 BA31 BA32 BA52 BB01 CA01 4J002 BD151 CF161 CL001 CM041 CN031 DE136 DH046 DJ016 GQ01 GQ05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機微細粒子によって耐熱性フィルムの
    表面に微細な突起を形成させた後、プラズマ放電処理を
    施してなることを特徴とする耐熱性フィルムの表面改質
    方法。
  2. 【請求項2】 前記無機微細粒子が、SiO2 、TiO
    2 、CaHPO4 、およびCa2 2 7 からなる群よ
    り選択される少なくとも1種であることを特徴とする請
    求項1に記載の耐熱性フィルムの表面改質方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の耐熱性フィル
    ムの表面改質方法によって表面改質された耐熱性フィル
    ム。
  4. 【請求項4】 すべり摩擦係数が0.1〜1、静摩擦係
    数が0.2〜2、および表面粗さ(Ra値)が1nm〜
    200nmであることを特徴とする請求項3に記載の表
    面改質された耐熱性フィルム。
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