JP5871291B2 - ポリイミドフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ポリイミドフィルムに関する。さらに詳しくは、銅張り版作成時に使用される接着材に対する接着性にすぐれたポリイミドフィルムに関するものである。
4,4’−ジアミノジフェニルエーテルに代表される芳香族ジアミンと、ピロメリット酸二無水物に代表される芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機溶媒中で重合反応させてポリアミド酸重合体溶液を得た後、該ポリアミド酸重合液をフィルム状に形成し、これを熱的及び/又は化学的に脱水閉環、すなわちイミド化させることにより得られるポリイミドフィルムは、耐熱性、絶縁性、および機械特性に優れるため、電線の電気絶縁材料、断熱材、フレキシビルプリント基板(以下、FPCと略するときがある)のベースフィルム、ICのテープオートメイティッドボンディング(以下、TABと略するときがある)用のキャリアテープフィルム、およびICのリードフレーム固定用テープなどに広く利用されている。
特に、FPC、TAB用キャリアーテープおよびリード固定用テープなどの用途においては、通常、種々の接着剤を介してポリイミドフィルムと銅箔とが接着されて用いられるが、この場合には、ポリイミドフィルムが種々の接着剤に対して良好な接着性を示すことが要求される。ところが、ポリイミドフィルム表面は元来撥水性が高く、接着剤との被着性が不良である。接着剤との被着性が不良であると、ポリイミドフィルムと他材料を接着して使用する場合に接着不良を起こし、製品の信頼性が低下することとなる。したがって、ポリイミドフィルムの接着剤との被着性を改善し、その接着性を向上させる必要があり、 このための方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、あるいはケミカルエッチング処理、サンドブラスト処理など種々の技術を用いることによる表面改質の検討が従来からなされてきた。
たとえば、芳香族ポリイミドフィルムを低温プラズマで処理することにより改質する技術(例えば、特許文献1及び2参照)や、1段階目の低温プラズマ処理でWBL層を取り除き、2段階目の低温プラズマ処理で接着性を上げる処理を行う方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
一方、該芳香族ポリイミドフィルムに対するサンドブラスト処理技術が開発され、従来から広く使用されているが、これに関連する従来技術としては、フィルム表面を機械的にふき取る方法(例えば、特許文献4参照)およびコロナ放電処理による方法(例えば、特許文献5参照)が提案されている。さらには、フィルムに擦過処理を行うことで、フィルム表面に凹凸をつけてフィルムの接着力を上げる方法(例えば、特許文献6参照)、及び常圧でのプラズマ処理による表面改質方法(例えば、特許文献7参照)が提案されている。
しかしながら、これらの方法には次のような問題点がある。
サンドブラスト処理は、比較的安価に処理できるために広く行われているが、この方法の場合、処理フィルムの表面や表層中に砂が残るため、処理後洗浄処理が必要であり、その際にどの程度洗浄すればよいかを明確に規定できず、生産工程で品質管理が極めて困難であるなどの問題がある。また、サンドブラスト処理は接着性のバラツキをなくし、芳香族ポリイミドのもつ本来の接着力を回復させる点では効果があるが、接着力そのものの向上にはそれ程効果がないという問題がある。さらに、この方法は、砂を強い力で噴きつけるため、砂がフィルムにつきささり、薄いフィルムでは砂が貫通してピンホールを生じたり、あるいはサンドブラスト処理のために表層が削られたりするため、フィルムの強度が低下するなどの問題がある。なかでも、特許文献4に記載の方法は実用的であるが、改質効果がかなり低く、たかだかサンドブラスト並であるうえ、ふき取る際に静電気などによるごみの付着、つまり再汚染が懸念され、生産工程での品質管理が難しいという欠点がある。
また、ポリイミドフィルムに擦過処理を行う方法は、フィルムにキズをつけてしまうことから、高度にファインピッチ化された昨今のFPCなどでは、キズそのものが配線不良の起因となるために処理方法として採用することが問題となるときがある。特許文献5による方法は、20〜300W/m2 /分の放電密度でコロナ放電する方法であり、この方法では十分な改質効果があげられないという問題がある。
これに対して、低温プラズマ処理による方法は、低圧力下で発生する放電によって処理するものであり、この方法は、容易に安定した放電であるグロー放電が形成されるため、安定した品質の表面改質がなされる利点がある。しかしながら、この低温プラズマ処理による方法は、低圧力雰囲気域を形成する必要上がるため、真空容器および大きな排気設備を必要とし、著しくコスト高になるうえ、所定の圧力雰囲気の調節あるいは条件変更などに長時間を要するなどの問題があるために処理費用がかさむなどの難点がある。また、常圧を含むプラズマ処理は、フィルムの表層にのみ影響を与えていることから、ポリイミドフィルムの接着力が十分に発現しないときがあるという問題があった。
特開昭61−141532号公報 特開昭61−229388号公報 特開平8−3338号公報 特開昭62−184842号公報 特開昭62−162542号公報 特開2008−56756号公報 特開平1−138242号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。したがって、本発明の目的は、接着性、特に銅張り版作成時に使用される接着材に対する接着性が向上したポリイミドフィルムを提供することである。
上記の目的を達成する本発明のポリイミドフィルムは、以下の(1)の構成を有するものである。
(1)ポリイミドフィルムフィルムの表層から厚み方向に50nm内層の面内配向指数が0.40以上であり、かつ同じく100nm内層の面内配向指数が0.30以上であることを特徴とするポリイミドフィルム。
なお、本発明のポリイミドフィルムにおいては、フィルムがプラズマによる表面処理されたものであり、フィルムが該表面処理される前と比較して、表面処理後のフィルムの表層から厚み方向に50nm内層、および同じく100nm内層の面内配向指数が、それぞれ0.10以上上昇していることが好ましい。
本発明の上記ポリイミドフィルムを製造する方法は、代表的には、ポリイミドフィルムに対して、ドラム状電極の比誘電率を25以下とし、酸素濃度を500ppm以下の条件で放電処理を行い、その放電状態が沿面放電となっており、かつ、その沿面放電長さがcm以上となるようにして放電処理を行う。
本発明によれば、以下に説明するとおり、接着性、特に銅張り版作成時に使用される接着材に対する接着性が向上したポリイミドフィルムを得ることができる。
本発明のポリイミドフィルムを製造するために使用されるフィルム処理装置の一例を示した概略図である。
以下に、本発明のポリイミドフィルムについて具体的に説明する。
本発明のポリイミドフィルムは、フィルムの表層から厚み方向に50nm内層の面内配向指数が0.40以上であり、かつ同じく100nm内層の面内配向指数が0.30以上であることを特徴とする。
ここで、本発明におけるフィルムの面内配向指数とは、各測定点(本発明では、後述するように、フィルムの表層から厚み方向に50nm内層の位置、同じく100nm内層の位置の2点)での面内配向値から、フィルムの表層から2μm内層での面内配向値を減じた値である。そのことから、フィルムの面内配向指数とは、その測定点において、フィルム表層から2μm内層の箇所と比較して、分子鎖がフィルムの表面と平行の面にどれだけ配向しているかを示す値となる。
この面内配向指数に関して、本発明のポリイミドフィルムにおいてはフィルムの表層から厚み方向に50nm内層の面内配向指数が0.40以上であり、かつ同じく100nm内層の面内配向指数が0.30以上であることが必要である。
すなわち、ポリイミドフィルムと被接着層との接着は、ポリイミドフィルムの最表面だけに依存せず、極内層の影響を大きく受け、面内配向が高いほど接着力が高くなる傾向がみられる。その理由については定かではないが、面内配向が揃うと芳香環が層状に揃うスタック化が進み、分子間力が上昇して内層の分子も接着に影響している可能性が考えられる。また、その影響度は、最表面に近いほど大きく内層に行くほど減少する。もし、内層の面内配向指数が低いと、接着は最表層の官能基密度でのみの影響で接着力がきまるため、接着が弱くなってしまうのである。
本発明において、面内配向指数を上げる手段は、常圧プラズマによる処理で、放電状態が沿面放電となるようにする。沿面放電は誘電体表面から内部に流れる電流が発生することが知られており、フィルム内層の分子状態にも効率的に影響を与えることができるのである。さらに、沿面放電は、放電がフィルムの表面上を這うように広がって放電が流れることから、ムラが少なく処理できる。常圧プラズマで一般的に行われているグロー放電に近い放電では、フィルムの表層にしか影響を与えることができないことが考えられる。
具体的には、ポリイミドフィルムに対して、ドラム状電極の比誘電率を25以下とし、酸素濃度を500ppm以下の条件で放電処理を行い、放電状態が沿面放電となっており、その沿面放電長さが4cm以上となるように放電処理を行うことにより製造される。
本発明における放電処理とは、内部に冷媒を流すことによって10〜100℃程度に冷却された金属管などの導体の表面を誘電体で被覆した高電圧印加電極と、該電極に対向して設けられ、放電が形成される面が誘電体で被覆された、被処理物を支持するための電極との間で形成される。高電圧印加電極としては中空棒状構造を有するものが好ましく、内部を流す冷媒としては空気、フレオンまたは水などがあげられるが、特に水が好ましい。
導体の表面を覆う誘電体としては、ゴム、ガラス、セラミックなどがあげられるが、比誘電率(ε)が20以下、より好ましくは10以下であることが好ましい。比誘電率が低いほど、電子なだれが発生した放電が被処理物の上を這うような沿面放電に発展しやすくなり、処理を行うフィルムの内層に影響を与えやすくなるのである。また、誘電体の厚さは0.1〜5mmが好ましい。さらに、誘電体の材質は、印加される電圧に対し、十分な耐電圧を持つものを選択するのがよい。
非処理物を支持する電極の形状は、被処理物の形態に応じて選択されるが、フィルムなどの長尺物の場合は被処理物を搬送自在に支持できるドラム状電極であることが好ましく、その大きさは例えば前記の棒状高電圧印加電極の直径に対し、2倍以上の直径を持つように形成するのがよい。ドラム状電極の少なくとも放電が形成される面は同様に誘電体で被覆することが重要であり、該誘電体の厚さ、材質など棒状電極の場合と同様のものが使用される。
本発明において、高電圧印加電極と被処理物を支持する電極とは同数である必要はなく、被処理物を支持する電極1個に対し、高電圧印加電極を2個以上設けてもよい。
高電圧印加電極に印加する高電圧の周波数は20kHz〜100MHzの範囲で選択するのが好ましい。20kHz未満では放電が開始しにくく、100MHzより高いと整合をとることが困難になる。より、好ましい周波数は50kHz〜500kHzである。
本発明において、被処理物を支持する電極は接地していてもよいし、あるいは該電極を大地より浮かし、高電圧電源との結線端子の対となる出力端子と結線してもよい。
本発明において、高電圧電源は整合回路を持っていることが好ましい。
本発明において、放電雰囲気のガス組成は、酸素分子濃度が1000ppm以下で行うことが好ましい。沿面放電とするためには、放電活性種は電子なだれを起こす必要がある。酸素は、その活性種を失活させるので濃度が低いことが好まれる。
本発明において、放電雰囲気のガス組成は、希ガス元素を少なくとも50モル%以上であることが好ましい。希ガスが少ない雰囲気下では放電が安定しない可能性がある。本発明においては使用される希ガス元素としては、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnなどが挙げられる。
本発明においては、放電処理部に処理を行いたい雰囲気のエアーを常時供給することが好ましい。ロールトゥロールで処理を行った場合に発生する随伴気流や分子内の結合が破壊されて発生する酸素の活性種による、酸素濃度の上昇を防ぐためである。
本発明において、処理部に供給する雰囲気のエアーはフィルムに直接当てられる方向で供給をすることが好ましい。ポリイミドに対して放電処理を行うと、分子内の結合が破壊されて発生する酸素活性種が放出される。酸素活性種は寿命が短いために、失活した酸素は他の活性種の失活に作用することから、雰囲気ガスで効率的に酸素原子をフィルム表面から遠ざけるためにエアーの流れがフィルム方向に向かっている方が好ましいのである。もし、そうなっていない場合は、雰囲気ガスの供給量を増やして強制的な置換を進めるなどの方法が考えられる。また、給排気のバランスをとるために、排気装置を取り付けてもよい。
ポリイミドフィルムに対する処理強度は、処理を施すべきフィルムに応じて選択するのがよいが、100W.分/m2以上の処理電力密度で処理するのが好ましい。なお、本発明の処理電力密度とは出力を放電幅とフィルムの処理速度で割った値である。
なお、図1にしたがって、本発明で使用するフィルム処理装置の一例を説明すれば以下のとおりである。
図1において、ポリイミドフィルム1は送り出しロール2により放電処理部9へ送り出される。放電処理部9にはガス導入系8より、所定組成のガスが供給され、ここでは図示していない簡単な排気装置によって給排気のバランスを維持する。フィルム1は放電処理部において、高圧印加電極3に高電圧電源5より整合トランス6を介して印加された高周波高電圧によって、接地されたドラム状電極4との間で形成される放電により処理された後、巻き取りローラー7に巻き取られる。このとき、放電は目視することができ、フィルム面に当たった放電はフィルムの搬送方向へ流れる。この状態を沿面放電と称し、沿面放電が長いほど好ましいが、cm以上目視できれば好ましい結果が得られる。
本発明でいうポリイミドフィルムとは、有機溶媒中に溶解したポリアミド酸を用いてフィルムをイミド化して作られるものであり、有機溶媒溶液中のポリアミド酸は、部分的にイミド化されていてもよく、少量の無機化合物を含有していてもよい。
本発明におけるポリイミドの先駆体であるポリアミド酸としては、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とからなり、次式[I]で示される繰り返し単位で構成されるものが好ましい。
Figure 0005871291
上記式において、R1は少なくとも1個の芳香族環を有する4価の有機基で、その炭素数は25以下であるものとし、R2は少なくとも1個の芳香族環を有する2価の有機基で、その炭素数は25以下である。
本発明において、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とは、それぞれのモル数が大略等しくなる割合で重合されるが、その一方が10モル%、好ましくは5モル%の範囲内で、他方に対して過剰に配合されてもよい。
上記の芳香族テトラカルボン酸類の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸またはその酸無水物、あるいはその酸のエステル化合物またはハロゲン化物から誘導される芳香族テトラカルボン酸類が挙げられる。
上記の芳香族ジアミン類の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジニフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチルー4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,4−ビス(3−メチル−5−アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらの誘導体が挙げられる。
本発明の方法におけるポリイミドに特に適合する芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分の組み合わせとしては、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組み合わせが挙げられ、さらにこれらの共重合および/またはパラフェニレンジアミンの共重合が好ましい。また、本発明を阻害しない範囲であれば、製膜時に多層体で成形することもできる。
ポリイミドの固有粘度(25℃硫酸中で測定)は、0.2〜3.0の範囲が好ましく、より好ましくは0.8〜2の範囲である。
本発明において、ポリアミド酸溶液を形成するために使用される有機溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンなどの有機極性アミド系溶媒が挙げられ、これらの有機溶媒は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用されるが、ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような非溶媒と組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いるポリアミド酸の有機溶媒溶液は、固形分を好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%含有するものであって、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定で10〜2000Pa・s、好ましくは100〜1000Pa・sのものが、安定した送液が可能であることから好ましい。
重合反応は、有機溶媒中で撹拌および/または混合しながら、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させたりしてもかまわない。
この場合に、両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸類を添加するのが好ましい。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するために有効な方法である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封鎖剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。
本発明で使用される閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミンおよびイソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環式第3級アミンなどが挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンを使用するのが好ましい。
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、無水酢酸および/または無水安息香酸が好ましい。
ポリアミド酸に対する閉環触媒の含有量は、閉環触媒の含有量(モル)/ポリアミド酸の含有量(モル)が0.5〜8となる範囲が好ましい。
また、ポリアミド酸に対する脱水剤の含有量は、脱水剤の含有量(モル)/ポリアミド酸の含有量(モル)が0.1〜4となる範囲が好ましい。なお、この場合には、アセチルアセトンなどのゲル化遅延剤を併用してもよい。
本発明のポリイミドフィルムは、ポリアミド酸溶液を回転する支持体上にフィルム状に連続的に押し出しまたは塗布したゲルフィルムを、前記支持体から剥離し、延伸、乾燥、熱処理することにより製造されることが好ましいが、ポリアミド酸の有機溶媒からポリイミドフィルムを製造する代表的な方法としては、閉環触媒および脱水剤を含有しないポリイミド酸の有機溶媒溶液をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルムに成形し、支持体上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムにした後、支持体よりフィルムを剥離し、更に高温下で乾燥熱処理することによりイミド化する熱閉環法、および閉環触媒および脱水剤を含有せしめたポリアミド酸の有機溶媒をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するフィルムとした後、支持体よりフィルムを剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う化学閉環法が挙げられる。
本発明は、上記のいずれの閉環方法を採用してもよいが、化学閉環法はポリアミド酸の有機溶媒溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させる設備が必要とするものの、自己保持性を有するゲルフィルムを短時間で得られる点で、より好ましい方法といえる。
本発明でいうゲルフィルムとはポリイミド前駆体およびまたは部分的にイミド化した溶媒を含むポリイミドフィルムのことである。
次に、本発明の記述に用いた、特性の評価方法および評価の基準を述べる。
[面内配向指数]
本発明で面内配向測定には偏光ラマン分析を使用した。偏光ラマン分析の空中分解能を上げるために斜め切片を作成して空中分解能を50nmまで上げた。もし科学技術の進歩でより分解能が上がる装置が入手できれば、切片法と同じ評価結果がでる限りにおいては斜め切片を作成しての測定を行う必要はない。なお、切片を作成する際は、サンプル作成時の外乱を防止するために、全てのサンプルの切り出し方向を一定にし、かつ刃の進行方向をフィルム面に平行になるようにおこなった。
今回の評価での測定点での面内配向値は、ポリイミド分子が面内に配向をしている時に、偏光ラマン分析においてフィルム面に平行に近いと考えられる分子構造Aに対して帰属されるラマンバンド強度IAとフィルム面に垂直に近いと考えられる分子構造Bに対して帰属されるラマンバンド強度IBについて以下の式で定義した。
(各測定点での面内配向値)=(IA平行 /IB平行)/(IA垂直 /IB垂直
A平行 :平行条件でのA のラマンバンド強度
B平行 :平行条件でのB のラマンバンド強度
A垂直 :垂直条件でのA のラマンバンド強度
B垂直 :垂直条件でのB のラマンバンド強度
なお、サンプルに対して励起光の偏光方向がフィルム面と平行(フィルム厚み方向と垂直)のときを平行条件、励起光の偏光方向がフィルム面と垂直(フィルム厚み方向と平行)のときを垂直条件とする。各測定点での面内配向値を測定し、その値から、表層から2μmの面内配向値を減じた値を、その測定点の面内配向指数とする。フィルムの面内配向指数は、サンプルを5検体作成し、最大と最小を除いた3検体の平均を小数点第3位を四捨五入して求めた。当然のことであるが、面内配向指数は最終的には差分によって求められることから、差を減じることを行うことができるのは、同じ切片から測定した結果のみである。
本評価方法を例えば、芳香族ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を使用した場合は、フィルム面に平行に近いと考えられる分子構造Aは1395cm-1に帰属されるイミド結合のCN伸縮振動、フィルム面に垂直に近いと考えられる分子構造Bは1795cm-1に帰属されるC=O伸縮振動を使用することができる。
本評価で使用した装置と、測定条件を下記する。
装置:PDP320 (Photon Design)
測定モード:顕微ラマン
対物レンズ:×100
ビーム径:1μm
クロススリット:120μm
光源:He−Ne レーザー/632.8nm
レーザーパワー:35mW
回折格子:Single 600gr/mm
スリット:100μm
検出器:CCD((株)日本ローパー)
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、実施例における特性評価方法について説明すれば次のとおりである。
(1)アクリル系接着剤との接着強度
ポリイミドフィルムと銅箔の間に、アクリル系接着剤(デュポン(株):パイララックスLF010)をはさみ、成形温度160℃、成形時間30分、成形圧力10.2MPa(400mm□プレート)の条件でプレスを行い、積層板を作成する。その積層板を10mmにカットし、90°剥離を100mm/分で引っ張り測定を行った。なお、評価結果は以下の様に行い○以上を合格とした。
◎:20.0N/cm以上
○:18.0N/cm以上20.0N/cm未満
×:18.0N/cm未満
(2)エポキシ系接着剤との接着強度
エポキシ樹脂接着剤(東亜合成(株):アロンマイティBX−60)をポリイミドフィルムにバーコーターで塗布し、さらに接着剤の上に銅箔をのせてから100℃で2分乾燥する。その後、150℃、50kgf/cm2 で30分間、硬化処理し、積層板を作成する。その積層板を10mmにカットし、90°剥離を100mm/分で引っ張り測定を行った。なお、評価結果は以下の様に行い、「○」以上を合格とした。
◎:20.0N/cm以上
○:18.0N/cm以上20.0N/cm未満
×:18.0N/cm未満
(3)O/C、N/C比の評価
ポリイミドフィルム表面の各元素の原子存在比率は、超高真空中においたポリイミドフィルムに軟X線を照射し、表面から放出される光電子をアナライザーで検出することによっておこなった。具体的には、X線光電子分光装置(ESCALAB220IXL,Thermo VG Scientific)に、励起X線としてmonochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)を用い、X線径1mm、光電子脱出角度を90°にして測定をした。なお、本評価では、中性炭素のC1sピークを284.6eVにしている。
なお、O/C比とは炭素1原子に対して酸素原子の存在比率、N/C比とは炭素1原子に対して窒素原子の存在比率を示している。
(4)放電雰囲気内の酸素濃度
酸素濃度は、処理するフィルムを処理速度で搬送しながら、放電を行わないこと以外は、全て同じ条件で放電雰囲気内のガスを200ml/分の流量でサンプリングしながら、東レエンジニアリング(株)社製のジルコニア式酸素濃度計(LC−850KS)を用いて測定した。
(5)放電状態の確認
放電処理時に目視にて放電状態を確認し、放電が搬送フィルムに沿って流れる状態(沿面放電)になっているときは、沿面放電長さが測定できるように設備の横に設置した物差しでその長さを目視にて測定した。
[実施例1]
カプトン50H(ポリイミドフィルム〔厚み12.5μm〕;東レ・デュポン(株)社製)に対し、図に示したような装置を用いて、常圧プラズマ処理を行った。なお、高電圧印加電極としては、SUS304の棒状電極を、ドラム状電極としては、アルミナコーティングをした鉄製電極(100kHzでの比誘電率=7)を用い、冷媒は水を用いた。処理雰囲気としては、Arガスをフィルム面から3cmの高さから2.8m/秒の流速で、フィルムの搬送方向(横方向)に噴出させ、酸素濃度は200ppm、処理強度は150W・分/m2 で処理をおこなった。放電時の状況として、4cm以上の沿面放電が見られた。得られたフィルムに対し、接着評価を行ったところ、アクリル系接着剤との接着力は20.8N/cm、エポキシ系接着剤との接着力は20.5N/cmであった。面内配向指数とO/C比、N/C比についても表1に示す。なお、処理前のフィルムの面内配向指数等も表1に記載した。
[比較例1]
ドラム状電極として、ポリイミド樹脂、アルミナ、チタン酸バリウムの3層コーティングコーティングをした鉄製電極(100kHzでの比誘電率=16)を用いたこと以外、すべて実施例1と同様の操作を行うことにより、表面処理を行ったポリイミドフィルムを得た。放電時の状況として、3cmの沿面放電が見られた。得られたフィルムに対し、接着評価を行ったところ、アクリル系接着剤との接着力は19.0N/cm、エポキシ系接着剤との接着力は18.5N/cmであった。面内配向指数とO/C比、N/C比についても表1に示した。
[比較例2]
ドラム状電極として、アルミナ、チタン酸バリウムの2層コーティングコーティングをした鉄製電極(100kHzでの比誘電率=22)を用いたこと以外、すべて実施例1と同様の操作を行うことにより、表面処理を行ったポリイミドフィルムを得た。放電時の状況として、沿面放電は見られなかった。得られたフィルムに対し、接着評価を行ったところ、アクリル系接着剤との接着力は18.3N/cm、エポキシ系接着剤との接着力は17.0N/cmであった。面内配向指数とO/C比、N/C比についても表1に示した。
[実施例2]
Arガスをフィルム面から3cmの高さから倍量の5.6m/秒の流速でフィルムの搬送方向(横方向)に噴出させて、酸素濃度は50ppmに変化させたこと以外は、すべて比較例1と同様の操作を行うことにより、表面処理を行ったポリイミドフィルムを得た。放電時の状況として、4cm以上の沿面放電が見られた。得られたフィルムに対し、接着評価を行ったところ、アクリル系接着剤との接着力は21.0N/cm、エポキシ系接着剤との接着力は20.5N/cmであった。面内配向指数とO/C比、N/C比についても表1に示した。
[実施例3]
Arガスをフィルム面から3cmの高さから2.8m/秒の流速でフィルム面に向けて(下方向)噴出させて、酸素濃度が180ppmに変化させたこと以外は、すべて比較例1と同様の操作を行うことにより、表面処理を行ったポリイミドフィルムを得た。放電時の状況として、4cm以上の沿面放電が見られた。得られたフィルムに対し、接着評価を行ったところ、アクリル系接着剤との接着力は20.5N/cm、エポキシ系接着剤との接着力は20.2N/cmであった。面内配向指数とO/C比、N/C比についても表1に示した。
[比較例3]
ドラム状電極としては、アルミナ、チタン酸バリウムの2層コーティングコーティングをした鉄製電極(100kHzでの比誘電率=22)を用いこと以外は、すべて実施例3と同様の操作を行うことにより、表面処理を行ったポリイミドフィルムを得た。放電時の状況として、3cmの沿面放電が見られた。得られたフィルムに対し、接着評価を行ったところ、アクリル系接着剤との接着力は18.2N/cm、エポキシ系接着剤との接着力は18.0N/cmであった。面内配向指数とO/C比、N/C比についても表1に示した。
[比較例4]
カプトン50H(ポリイミドフィルム〔厚み12.5μm〕;東レ・デュポン(株)社製)に対し、ガス組成がアルゴンガス雰囲気中で、圧力0.1torr、出力150W・分/m2 の条件で、グロー放電によるプラズマ処理を行うことで、処理フィルムを作成した。なお、グロー放電なので、沿面放電は発生していなかった。得られたフィルムに対し、接着評価を行ったところ、アクリル系接着剤との接着力は18.0N/cm、エポキシ系接着剤との接着力は16.8N/cmであった。面内配向指数とO/C比、N/C比についても表1に示した。
Figure 0005871291
本発明で得られたポリイミドフィルムは、金属箔または金属薄膜が積層された電気配線板の支持体、フレキシブルプリント回路保護用カバーレイフィルム、ワイヤまたはケーブルの絶縁フィルムおよびフィルム表面接着剤をコーティングした粘着テープなどの用途に対して好適に適用することができる。
1:ポリイミドフィルム
2:送り出しロール
3:高電圧印加電極
4:被処理ポリイミドフィルム支持電極
5:高電圧電源
6:整合トランス
7:巻き取りロール
8:ガス導入系
9:放電処理部

Claims (1)

  1. ポリイミドフィルムの表層から厚み方向に50nm内層の面内配向指数が0.40以上であり、かつ同じく100nm内層の面内配向指数が0.30以上であることを特徴とするポリイミドフィルム。
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