JP2000170829A - すべり免震装置および免震構造 - Google Patents

すべり免震装置および免震構造

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JP2000170829A JP10343440A JP34344098A JP2000170829A JP 2000170829 A JP2000170829 A JP 2000170829A JP 10343440 A JP10343440 A JP 10343440A JP 34344098 A JP34344098 A JP 34344098A JP 2000170829 A JP2000170829 A JP 2000170829A
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雅彦 東野
Hiroki Hamaguchi
弘樹 濱口
Kotaro Toyama
幸太郎 遠山
Fumitada Satoji
文規 里路
Kazuo Hirose
和夫 廣瀬
Norio Ito
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Yoshiro Oki
芳郎 沖
Shunichi Tsuji
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Shigeru Wakui
茂 涌井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな地震力のみならず小さな地震力におい
ても、十分な免震機能を有し、かつ小型化ができる。 【解決手段】 下部躯体8と上部躯体9との間に配設さ
れる免震構造に用いられるすべり免震装置であって、上
記すべり免震装置が、潤滑性被膜3が形成された平滑板
2と、四フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成
物で形成され上記平滑板に一方の面が摺接するすべり材
4とを具備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はビル、タワー等の高
層構造体から一戸建てなどの低層構造体に至る建築構造
体、道路・鉄道などの橋梁に至る土木構造体を支持し、
地震外力を低減するすべり免震装置およびそれを用いた
免震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】免震とは、建物に加わる地震力を何らか
の方法で減少させることである。現在は、下部躯体、例
えば基礎と、上部躯体、例えば建物との間に免震装置を
入れて、建物への地震入力の減少を図る「基礎絶縁型」
が免震工法の主流となっている。免震装置としては、例
えば、鋼板とゴム材とを交互に積層した弾性免震装置
(積層ゴム免震装置)が知られているが、この弾性免震
装置は、減衰性能に乏しいという問題がある。そのた
め、水平方向の剛性に対する固有振動数近傍の成分が卓
越した入力に対しては共振を起こし、過大な変形に至り
積層ゴムが破断する場合も生じる。これに対して、ゴム
材を高減衰ゴムにする手法などが考慮されたが、支持荷
重と設計免震周期に限界が多かった。
【0003】他の免震装置として、例えば、積層ゴムの
端面にすべり支承を設けたすべり免震装置などが提案さ
れている。従来のすべり免震装置の一例を図6に示す。
図6は従来のすべり免震装置の断面図である。すべり免
震装置は、上部躯体9に固定するための上板7と、この
上板7に固定され、鋼板11aとゴム材11bとを交互
に積層した積層ゴム11と、この積層ゴム11の下端面
に設けられたすべり材4と、このすべり材4が摺動する
金属板などの平滑板2とから構成されている。このよう
なすべり免震装置を用いた免震構造は大地震での大変形
に対して、すべりによってエネルギーが消費される利点
がある。ここで、免震構造とは免震装置を施工するにあ
たり、下部躯体と上部躯体の間に免震装置を複数個配設
された状態をいう。免震装置とは免震可能な装置単体を
いう。また、すべり免震装置とは少なくともすべり支承
を有する免震装置をいう。
【0004】上記弾性免震装置とすべり免震装置とを並
列に配置してそれら両方で上部構造物の鉛直荷重を受け
止めるようにした免震構造が知られている(特開平8−
158697号)。また、すべり免震装置における低摩
擦化の手段として、官能基を有するフッ素系あるいはポ
リシロキサン系化合物からなる被膜を金属板に設けるこ
とが知られている(特許第2629011号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
すべり免震装置を用いた免震構造においては、いずれも
すべり免震装置における摩擦係数を 0.1程度以下にする
ことができないという問題がある。例えば、すべり免震
装置の摩擦係数が 0.1程度の場合、地震力が 0.1G 以上
にならないと、すべり免震装置はすべり出さない。免震
性能をある程度確保するためには、すべり出すまでの静
摩擦力の影響を緩和するためにある程度のゴム総数を有
する積層ゴムの併用が必要となる。しかし、積層ゴム弾
性免震装置で 0.1G 程度の地震力に対して免震効果を得
ようとすると、その分だけ積層ゴムが水平に変形し、す
べり出したときに荷重の偏在が生じ、すべり性能やすべ
り面の耐久性を低下させる原因となっていた。
【0006】さらに、積層ゴム部分が水平に変形する
と、鉛直軸力を受けるゴムの投影面積、すなわち有効受
圧面積が小さくなるという問題がある。その関係を図7
に示す。図7は積層ゴム部分の変形量と有効受圧面積と
の関係を示す図である。すべり支承がすべり出さない小
規模な地震の場合、積層ゴム11が水平に変形するの
で、平滑板2に対する有効受圧面積Bが小さくなる。積
層ゴム部の許容面圧は 10 〜 15MPaとされているので、
例えば柱の軸力が 1,000トンを越えるような場合、積層
ゴムの直径はφ1,300mm 以上の大きなものになる場合が
ある。それに伴い、すべり材の相手材の鋼板の直径はφ
2,000mmを越えるものが必要となり、装置は取り付け作
業性の悪い大きなものになる傾向にあり、近年の装置軽
量化の要求に対応できないという問題がある。
【0007】一方、官能基を有するフッ素系あるいはポ
リシロキサン系化合物からなる被膜を設けた場合、潤滑
性被膜の耐摩耗性を長期間低い値に維持することが困難
で、耐久性に劣るという問題があった。
【0008】本発明は、このような問題に対処するため
になされたもので、大きな地震力のみならず小さな地震
力においても、十分な免震機能を有し、かつ小型化がで
きるすべり免震装置およびそれに用いた免震構造を提供
することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のすべり免震装置
は、下部躯体と上部躯体との間に配設されるすべり免震
装置であって、上記すべり免震装置が、マトリクス樹脂
内に低分子量潤滑成分を含有する潤滑性被膜が形成され
た平滑板と、四フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹
脂組成物で形成され上記平滑板に一方の面が摺接するす
べり材とを具備することを特徴とする。すべり材を四フ
ッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成す
ることにより、耐摩耗性を低下させることができる。ま
た潤滑性被膜が形成された平滑板と組み合わせることに
より、潤滑性被膜との摩擦係数を長期間低い値、例えば
面圧 15 MPa 以上で 0.05 以下に維持することができ
る。
【0010】また、上記マトリクス樹脂がポリイミド系
樹脂および熱硬化性樹脂、特にフラン樹脂から選ばれた
少なくとも一つの樹脂であることを特徴とする。ここで
マトリクス樹脂とは、低分子量潤滑成分を保持すること
のできる樹脂をいう。上記構成とすることにより、安定
した低摩擦特性を有するすべり免震装置が得られる。
【0011】四フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹
脂組成物に配合される配合剤が繊維状配合剤および粉末
状配合剤から選ばれた少なくとも一つの配合剤であるこ
とを特徴とする。また、上記粉末状配合剤の形状が球状
であり、また、上記配合剤が炭素質またはグラファイト
質であることを特徴とする。すべり材を構成する樹脂組
成物に上記配合剤を配合することにより、すべり材の耐
摩耗性を向上させるとともに、圧縮クリープ性に優れ、
高面圧下における潤滑性被膜との摺動において、優れた
摩擦係数を維持することができる。
【0012】すべり材を構成する四フッ化エチレン系樹
脂が、四フッ化エチレン単位と、四フッ化エチレンのフ
ッ素が他の有機基で置換された置換四フッ化エチレン単
位とから構成される変性四フッ化エチレン樹脂であるこ
とを特徴とする。変性四フッ化エチレン樹脂であること
により、上記潤滑性被膜との摺動において、優れた摩擦
係数を得ることができる。
【0013】本発明のすべり免震装置は、上記潤滑性被
膜およびすべり材に加えて、上記平滑板上をすべり材が
すべり出すまで、すべり材の摺接面の対面に直接または
中板を介して、水平力に抗して変形可能な部材が直列に
配置されてなることを特徴とする。中板を設けることに
より、面圧を大きくすることができ、摩擦係数を下げる
ことができる。
【0014】本発明の免震構造は、下部躯体と上部躯体
との間に配設されるすべり免震装置を少なくとも備えて
なる免震構造であって、そのすべり免震装置が、上記す
べり免震装置であることを特徴とする。上記すべり免震
装置を用いることにより、本発明の免震構造は、すべり
出しの加速度を小さく保ったまま免震周期の長周期化が
できる。
【0015】さらに、復元力を有する装置を併設したこ
とを特徴とする。さらに、下部躯体と上部躯体との間に
弾性免震装置を並列して配設することを特徴とする。ま
た、上記弾性免震装置の一部または全部が鉛プラグ入積
層ゴム、あるいは高減衰積層ゴムであることを特徴とす
る。弾性免震装置、特に鉛プラグ入積層ゴム、あるいは
高減衰積層ゴムを用いることにより、免震構造の設計可
能範囲をより大幅に拡大することができる。特に弾性免
震装置が鉛プラグ入積層ゴム、あるいは高減衰積層ゴム
であると、摩擦係数を 0.05 以下のすべり免震装置の作
用とともに、大きな地震力のみならず小さな地震力にお
いても、十分な免震機能を持たせることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のすべり免震装置の一例を
図1により説明する。図1(a)は下部躯体と上部躯体
との間に設けられたすべり免震装置の断面図、図1
(b)はA部拡大断面図である。すべり免震装置1は、
上部躯体9に固定するための上板7と、この上板7と中
板5との間に挟持される単層ゴム材6と、中板5の下端
面に固定されるすべり材4と、このすべり材4と摺動
し、下部躯体8に固定される平滑板2とから構成されて
いる。なお、前記すべり材と平滑板とをすべり支承とい
う。また平滑板2の摺動面には潤滑性被膜3が形成され
ている。すべり材4は、四フッ化エチレン系樹脂を主成
分とする樹脂組成物で形成されている。
【0017】本発明は、摺動面に潤滑性被膜3が形成さ
れている平滑板2と、四フッ化エチレン系樹脂を主成分
とする樹脂組成物で形成されているすべり材4とが摺動
するので、従来のすべり免震装置に比較して、摩擦係数
を極めて小さくすることができる。すべり免震装置と弾
性免震装置とを並列して配設する免震構造の場合を例に
とり、すべり免震装置における摩擦係数の重要性につい
て説明する。すべり免震装置と弾性免震装置とを併用し
た場合、建物全体の見かけ上の摩擦係数μ0は、次式で
表される。 μ0={1+(K2/K1)}μα ここで、K2:弾性免震装置のばね定数 K1:すべり免震装置のばね定数 μ:すべり免震装置の摩擦係数 α:すべり免震装置が分担する鉛直荷重の割合である。
【0018】地震の震度が小さい場合においても免震構
造が機能するためには、μ0を小さくする必要がある。
例えば、震度3の地震を仮定すると、すべり免震が働き
始める加速度は約20gal 以上であり、震度3からの地震
に免震装置が機能するためには、μ0は 0.02 の値を要
求される。すべり免震装置の摩擦係数μが 0.02 の値に
達しない場合は、見かけ上の摩擦係数μ0= 0.02 を実
現するために、すべり免震装置と弾性免震装置とが並列
に配設される。
【0019】本発明の免震構造では、弾性免震装置のば
ね定数は、すべり免震装置のばね定数に比較して、積層
されているためにはるかに小さいので、μ0= 0.02 を
実現するためのμとαとの関係を、K1= 20K2と仮定
した。この関係を表1に示す。
【表1】 αは基本的に全体の免震装置の数に対するすべり免震装
置の数を示すことになるので、μが0.1 の場合は免震装
置の約 8割を弾性免震装置にする必要があるのに対し、
μが0.05の場合は約 6割、μが0.03になると弾性免震装
置の割合は約 4割と大幅に少なくなる。したがって、す
べり免震装置の摩擦係数を例えば0.05以下、好ましくは
0.04以下、より好ましくは0.03以下とすることにより、
すべり免震装置に依存した免震構造となり、すべり出し
の加速度を小さく保ったまま免震周期の長周期化ができ
る。逆に、μが0.1 のすべり免震装置をα=0.64 に相当
する個数使用すると、見かけの摩擦係数μ0は約 0.067
であり加速度に換算すると約67gal となり震度5(震度
5は80gal 以上)近くなるまで免震構造として働かない
ことになる。以上よりすべり免震装置の摩擦係数を下げ
ることにより、例えば0.05以下とすることにより、すべ
り免震装置と弾性免震装置の組み合わせを設定できる範
囲が拡がるので、免震構造の設計可能範囲を大幅に拡大
できる。
【0020】本発明は、平滑板2の表面に潤滑性被膜3
を形成し、また、すべり材4を四フッ化エチレン系樹脂
を主成分とする樹脂組成物で形成することにより、相互
の摩擦係数を大きく低下させることができたことに基づ
くものである。平滑板2の材質としては、ステンレス
板、その他の金属鋼板を用いることができ、また、潤滑
性被膜3としては、低分子量潤滑成分をマトリクス樹脂
に混合させた被膜である。すべり材4の材質である四フ
ッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物は、四フ
ッ化エチレン系樹脂に繊維状配合剤および粉末状配合剤
から選ばれた少なくとも一つの配合剤を配合した組成物
であり、摩擦および摩耗性能に優れた樹脂組成物である
ことが好ましい。
【0021】以下、本発明に係る四フッ化エチレン系樹
脂を主成分とする樹脂組成物について説明する。まず、
この発明における四フッ化エチレン樹脂(PTFE)は
四フッ化エチレン(テトラフルオロエチレン)の単独重
合体であって、アルゴフロン(Ausimont社
製)、テフロン(Du Pont社製)、フルオン(I
CI社製)、ポリフロン(ダイキン工業社製)等の商標
名で市販されているフッ素樹脂であり、 310〜 390℃で
軟化して圧縮成形および押出成形は可能であるが、射出
成形は不可能な樹脂である。さらに本発明においてPT
FEは、粉状のものが均質に混合し易く好ましい。さら
に本発明では許容面圧を考慮し、変性PTFEが好まし
い。好適な変性PTFEの一般式を化1に示す。変性P
TFEは、四フッ化エチレン単位と、四フッ化エチレン
のフッ素が他の有機基(−X)で置換された置換四フッ
化エチレン単位とから構成され、−Xは特に限定するも
のではないが、パ−フルオロアルキルエーテル基あるい
はフルオロアルキル基などが好ましい。
【0022】化1の変性PTFEを用いた場合、一般的
なPTFEと比較して耐クリープ特性が向上し、許容面
圧が 30MPa程度まで許容される。それに伴い、すべり面
を小さくでき、同時に平滑板を含めてすべり免震装置の
小型化が可能となる。
【化1】
【0023】PTFE、変性PTFEの重合方法は一般
的なモールディングパウダーを重合する懸濁重合法、フ
ァインパウダーを重合する乳化重合法のいずれも採用で
きるが、分子量は約 50 万から 1,000万が好ましく、さ
らに限定すれば 100万から 700万が好ましい。上市され
ている変性PTFEを具体的に例示すると、テフロン
TG70J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポ
リフロンM111、M112(いずれもダイキン工業社
製)、ホスタフロンTFM1600、TFM1700
(いずれもHoechst社製)等を挙げることができ
る。
【0024】PTFE、変性PTFEに配合することの
できる配合剤は繊維状配合剤または粉末状配合剤単独あ
るいは混合物を用いることができる。以下に代表的な配
合剤の例を述べる。繊維状配合剤はガラス繊維あるいは
炭素繊維が挙げられる。炭素繊維はピッチ系あるいはパ
ン系炭素繊維のいずれでもよい。炭素繊維の繊維長は
0.05mm以上、0.1mm以下のミルド繊維であることが好ま
しい。また、糸種は特に限定しないが、 2,000℃焼成あ
るいはそれ以上の温度での処理品(黒鉛化品)より 1,0
00℃焼成品(炭化品)の方が好ましい。また、低弾性を
狙った低温焼成品あるいは高弾性を狙った高温焼成品い
ずれも使用することができる。繊維径はφ 20 μm 以
下、好ましくは、φ 5μm 〜φ 15 μm であり、アスペ
クト比は 5〜 80 、好ましくは 20 〜 50 である。上市
されている炭素繊維を具体的には例示すると、ピッチ系
炭素繊維としてクレカミルド M101S、M201S
(いずれも呉羽化学社製)、ドナカーボンS241、S
244(いずれも大阪ガスケミカル社製)、パン系炭素
繊維としてベスファイト HTA−CMF0160−0
H、HTA−CMF0070−0H(いずれも東邦レー
ヨン社製)等を挙げることができる。
【0025】繊維状配合剤の他の例として、短繊維の各
種ウィスカを挙げることができる。ウィスカは、硫酸カ
ルシウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜
鉛ウィスカ、硫酸マグネシウムウィスカ等が挙げられ
る。上述の炭素繊維とウィスカとを併用すれば、炭素繊
維は基材を大きく補強するのに対して、これらのウィス
カはミクロ補強の役割を果たすので、すべり材の耐クリ
ープ性、耐摩耗性が著しく向上する。また、ウィスカは
炭素繊維に比べて短繊維であるため摩擦面での存在割合
が大きく、ほとんどの摩擦せん断を受け持つために、潤
滑性被膜が形成された平滑板を損傷しない。しかし、ウ
ィスカの繊維長が短かすぎると十分な耐クリープ性、耐
摩耗性は得られず、繊維長は炭素繊維よりもわずかに短
い 50 μm 前後であることが好ましい。これに該当する
ウィスカとしては、硫酸カルシウムウィスカの無水塩
型、半水塩型が挙げられ、好ましくは無水塩型である。
上市されているウィスカを具体的には例示すると、硫酸
カルシウムウィスカとしてフランクリンファイバーA−
30(無水塩型)、フランクリンファイバーH−30
(半水塩型)(繊維長 50〜 60μm 、大日精化工業社
製)、チタン酸カリウムウィスカとしてティスモN(繊
維長 10〜 20μm 、大塚化学社製)、タイブレック(繊
維長 20μm 、川鉄鉱業社製)、酸化亜鉛ウィスカとし
てパナテトラ(繊維長 2〜 50μm 、松下電器産業社
製)、硫酸マグネシウムウィスカとしてモスハイジ(繊
維長 10〜 30μm 、宇部興産社製)等を挙げることがで
きる。
【0026】粉末状配合剤は、有機化合物系粉末配合剤
と無機化合物系粉末配合剤とを挙げることができる。有
機化合物系粉末配合剤は、PTFEの成形温度 380℃に
耐えうる粉末であることが好ましい。例えば、熱可塑性
ポリイミド樹脂(三井化学社製)、熱硬化性ポリイミド
樹脂(Furon社製、宇部興産社製)、ポリエーテル
エーテルケトン樹脂(Victrex MC社製)、全
芳香族ポリエステル樹脂(住友化学工業社製)、アラミ
ド粉末、ポリアミドイミド樹脂(三菱化成社製)等を挙
げることができる。また、成形性などを考慮すれば、熱
硬化性樹脂を硬化後、 500℃以上の高温で熱処理、粉砕
された有機化合物系粉末が好ましい。さらに 2,000℃以
上で処理し、黒鉛化したものが好ましい。熱硬化性樹脂
の例は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹
脂などがある。粉砕後の平均粒径は 50μm 以下、好ま
しくは 25μm 以下であり、形状は球状が好ましい。市
販されている球状の黒鉛化処理された粉末を例示する
と、メソカーボンビーズ(大阪ガスケミカル社製)、ベ
ルパール(鐘紡社製)、ユニベックス(ユニチカ社
製)、マイクロカーボンビーズ(日本カーボン社製)を
挙げることができる。
【0027】無機化合物系粉末は、二硫化モリブデン、
酸化亜鉛、酸化チタン、黒鉛、金属酸化粉末、ガラスビ
ーズ、シリカ粉末等を挙げることができる。実際の地震
を考慮した場合、潤滑性被膜が形成された平滑板への攻
撃性および多方向への安定したすべり性より、配合剤は
繊維状よりも粉末状が好ましい。また、その形状は球状
であることが平滑板への非攻撃性および低摩擦特性に優
れ好ましい。さらに、配合剤が炭素質またはグラファイ
ト質であることが好ましい。具体的にはグラファイト化
処理された球状粉末が好ましい。炭素質配合剤は、例え
ば熱硬化性樹脂を硬化後、 500℃以上の温度で熱処理す
ることにより得られる。また、グラファイト質配合剤
は、例えばフェノール樹脂を硬化後、2,000℃以上の温
度で熱処理することにより得られる。
【0028】配合剤の配合量はPTFEまたは変性PT
FE 100体積部に対して 5〜 40 体積部であることが好
ましい。配合剤が 40 体積部を越えると成形性に問題が
生じたり、平滑板の潤滑性被膜を損傷する場合がある。
ただし、 5体積部未満であれば補強効果に乏しく、十分
な耐クリープ性、耐摩耗性が得られない。
【0029】以上述べたこの発明に用いる諸原料を混合
・混練する手段は特に限定するものではなく粉末原料の
みをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレ
ンダー、レディゲミキサー、ウルトラヘンシェルミキサ
ー等にて乾式混合すればよい。さらに、湿式法などによ
り成形方法に合致する所定の粒径の粒状に造粒すること
が好ましい。成形について述べれば、一般的に知られた
方法を採用することができる。例示すれば、フリーベー
キング、ホットモールディング、アイソスタチックモー
ルディング、連続ラム押し出し成形、ペースト押し出
し、ダイレクトモールド等を挙げることができる。本発
明に係るすべり材を得る工程としては、フリーベーキン
グの後、スカイブにより所定のシート厚みとする。構造
物の一方のフーチングに設置する金属製プレートとすべ
り材とを接合するには、すべり材の片面をエッチング
し、接着可能状態とする。その後、エポキシ系、フェノ
ール系あるいはポリイミド系接着剤により接合させる。
【0030】平滑板の表面に形成される潤滑性被膜につ
いて説明する。潤滑性被膜は、マトリクス樹脂内に低分
子量潤滑成分が配合されてなる。マトリクス樹脂はポリ
イミド系樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれた少なくと
も一つの樹脂であることが好ましい。ポリイミド系樹脂
としては、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂など
を、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール
樹脂、フラン樹脂などを例示することができる。ポリイ
ミド系樹脂としてはポリアミドイミド樹脂が、熱硬化性
樹脂としてはフラン樹脂が、摺動特性および耐候性など
を考慮して好ましい。潤滑性被膜を形成するために、ま
ずマトリクス樹脂を溶剤に分散させたものが好ましい。
溶剤類を例示すれば、N,N−ジメチルホルムアミド、
N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロ
リドン(NMP)、メチルエチルケトン、メチルグリコ
ールアセテート、2−ニトロプロパン、エチレングリコ
ールアセテート、トルエン、クレシル酸などが挙げら
れ、これらの混合物であってもよい。また、マトリクス
樹脂に配合させることのできる低分子量潤滑成分とは平
均分子量 50,000以下、好ましくは 10,000以下の含フッ
素重合体およびポリシロキサンが好ましい。
【0031】含フッ素重合体は、ポリフルオロアルキル
重合体またはフルオロポリエーテル重合体などの含フッ
素重合体が好ましい。ここで、ポリフルオロアルキル重
合体とは、例えば、CF3(CF27−、H(CF26
−、CF2Cl (CF2)CF11−、(CF32CF(C
27−、CF2Cl (CF3)CF(CF27−などの
ポリフルオロアルキル基を有する重合体であり、フルオ
ロポリエーテル重合体は、一般式、−CX2X−O−(X
は 1〜4 の整数)で示される単位を主要構造単位と
し、数平均分子量が 1,000 〜50,000の重合体である。
なお、このような含フッ素重合体で、金属等に対して親
和性の高い官能基、例えばグリシジル基、エポキシ基、
アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、イ
ソシアネート基、スルフォン基、エステル基等を含有し
ているものがあるが、これらの官能基を有する含フッ素
重合体はすべり特性や耐候性を満足しないおそれがある
ため、官能基を有さない含フッ素重合体が好ましい。
【0032】ポリシロキサンは、ジメチルシロキサン、
メチルフェニルシロキサン、トリメチルフルオロプロピ
ルシロキサンなどのオルガノシロキサンの単独重合体ま
たは二種以上の共重合体が好ましい。
【0033】官能基を含まないポリオルガノシロキサ
ン、例えば線状オルガノポリシロキサンブロックを主体
とするポリシロキサンの一般式を化2に示す。また、そ
の一例を化3に示す。
【化2】 (R´は同種もしくは異種の一価の有機基または水素を
表す)
【化3】 (mは 5〜10,000、nは 2〜100 の整数を表す)
【0034】ポリシロキサンの他の形態は、アルコキシ
シランもしくはカーボンファンクショナルシランを主体
に構成されたオルガノシランである。これらのオルガノ
シランを組み合わせても、またこれらのオルガノシラン
にコロイド状シリカもしくはアクリルポリマーなどを配
合したものであってもよい。好ましいオルガノシランと
しては、例えば化4に例示することができる。
【化4】 なお、これらのオルガノシランの重合体の膜を被覆する
ときには、平滑板表面に予めプライマーを塗布しておく
ことが必要である。
【0035】上記の含フッ素重合体あるいはポリシロキ
サンの保持材として、有機化合物としてはシリコーン樹
脂粉末、無機化合物としては一般的なカーボン粉末ある
いは黒鉛粉末を配合してもよい。ただし、これらの配合
剤の粒径は 1〜10μm が好ましい。また、含フッ素重合
体あるいはポリシロキサンの配合量は、マトリクス樹脂
100体積部に対して 5〜 40 体積部であることが好まし
い。配合量が 40 体積部を越えると被膜の密着強度が低
下したり、耐摩耗特性が低下する場合がある。また、 5
体積部未満であると低摩擦係数が得られなくなる。被膜
の膜厚は 5μm 以上、30μm 以下が好ましい。なぜなら
ば、 5μm 未満であれば、耐久性に劣り、30μm を越え
ると塗布作業性が困難となり、安定した被膜が得られに
くい。また、被膜の表面あらさは算術平均あらさRaに
て 0.5〜2.5 μm が好ましく、すべり材全体の形状は凹
形状より、むしろ、中央部への緩やかな凸形状(0.1〜
1.0mm)が好ましい。
【0036】以上述べた本発明に用いる諸原料を混合・
混練する手段は特に限定するものではなくマトリクス樹
脂、およびその他配合剤をボールタンブラミキサーなど
に一括配合し、所定時間混練すればよい。また、被膜の
形成方法は、一般的なスプレーコーティング後、焼成す
ればよい。
【0037】本発明のすべり免震装置は、上述のすべり
材と潤滑性被膜が形成された平滑板とから構成される
が、さらに、すべり材がすべり出すまでに、その水平力
に抗して変形可能な部材がすべり材に直接または中板を
介して直列に設けられていることが好ましい。これは、
すべり面の面当たり性を確保することが容易となるため
である。水平力に抗して変形可能な部材としては、単純
にゴム材、すなわち、単層から積層のゴム部材、また
は、エアダンパー、オイルダンパー、ウォータダンパ
ー、コイル、バネ、粘性体、球面受けなどを用いること
ができる。
【0038】本発明の免震構造は、下部躯体と上部躯体
との間に上述のすべり免震装置を少なくとも備えてな
る。また、上述のすべり免震装置のみであっても、本発
明は免震性能を発揮するが、上部躯体に対して高周波成
分の低減の効果を出すため、また、地震に対して残留滑
りの発生を抑えるために、復元性を有する装置を併用す
ることが好ましい。特にすべり免震装置と弾性免震装置
とを併用することが好ましい。また、併用することによ
り、見かけの摩擦係数を低下させることができる。弾性
免震装置としては、積層ゴムからなる弾性免震装置であ
ってもよい。最も好ましい弾性免震装置は、鉛プラグ入
積層ゴム、あるいは高減衰積層ゴムである。鉛プラグ入
積層ゴム、あるいは高減衰弾性ゴムからなる積層ゴムを
用いた弾性免震装置と本発明に係るすべり免震装置とを
組み合わせることにより、免震層の変形を小さく抑えな
がら免震効果を発揮できる、地震後の残留変形を小さく
できるなどの利点がある。
【0039】すべり免震装置と弾性免震装置とを併用す
る免震構造の一例について図3により説明する。図3は
すべり免震装置と弾性免震装置とを併用した免震構造の
断面図である。すべり免震装置1と、上下部躯体に固定
された積層ゴム弾性免震装置10とが、上部躯体9と下
部躯体8との間に配設されている。本発明の免震構造
は、すべり免震装置1の摩擦係数μを0.05以下に設定す
るので、弾性免震装置10の数を少なくしても見かけの
摩擦係数μ0を小さくすることができる。その結果、す
べり出しの加速度を小さく保ったまま免震周期の長周期
化ができ、また免震構造の設計の自由度を増すことがで
きる。
【0040】
【実施例】実施例および比較例に用いる材料を以下に示
す。また、これら材料を用いた実施例および比較例の配
合割合を表1および表2に示す。 1.四フッ化エチレン系樹脂 (1)変性PTFE−1 テフロンTG70J(三井・
デュポンフロロケミカル社製) (2)一般PTFE テフロン7J(三井・デュポ
ンフロロケミカル社製) 2.配合剤 (1)CF−1(ピッチ系炭素繊維) クレカミルドM
101S(呉羽化学社製) (2)球状黒鉛 ベルパールC2000(鐘紡社製) (3)硫酸カルシウムウィスカ フランクリンファイバ
ーA−30(無水塩型)(大日精化工業社製) (4)ガラス繊維 MF−KAC(旭ファイバーグラス
社製) (5)黒鉛 ACP(日本黒鉛社製) 3.マトリクス樹脂 (1)エポキシ樹脂 (2)フラン樹脂 4.低分子量潤滑成分 (1)含フッ素重合体 フォンブリンZ25(Ausi
mont社製) (2)ポリシロキサン ジチルシロキサン(東レ・ダウ
コーニング社製) 5.その他 (1)カーボンブラック FEF(東海カーボン社製) (2)シリコーン粉末 E501(東レ・ダウコーニ
ング社製)
【0041】上記材料を用いてすべり材1〜すべり材1
0、および潤滑性被膜形成のためのコーティング材1〜
コーティング材10を以下の方法で作製した。すべり材
は、表2に示す組成をヘンシェル乾式混合機を用いてド
ライブレンドし、プレス機を用いてφ124mm×φ64mm×
100mmの円筒素形材を予備成形し、 370℃× 4時間、フ
リーベーキング法にて焼成した。さらにスカイビング加
工により 1mm×80mm×1,000mm のシート試験片を得た。
シートの片面をアルカリ処理によりエッチングし、接着
可能とした。ステンレス製治具( 20mm × 20mm × 10m
m )の一面にエポキシ系接着剤を用いて、接合し、摩擦
係数μ測定用のすべり材試験片とした。
【0042】
【表2】
【0043】一方、コーティング材は、表3に示す組成
をボールミルタンブラを用いて、混練し、コーティング
液とした。ステンレス板( 40mm × 40mm ×180mm )の
一面にスプレーコーティングし、 200℃で約 30 分間焼
成し、潤滑性被膜が形成された平滑板とした。なお、膜
厚は約 10 から 15 μm であった。
【0044】
【表3】
【0045】実施例1〜実施例14および比較例1〜比
較例6 すべり材とコーティング材とを、表4に示すように組み
合わせて、その摩擦摩耗試験を行なった。試験は往復動
型試験機を用いた。試験条件は、すべり速度 15cm/se
c、荷重 30MPa、ストローク±35mmで 300サイクルの往
復動運転を行ない、10、 100、 300サイクル時の摩擦係
数を測定した。結果を表4に示す。また、すべり材の圧
縮特性を圧縮クリープにより求めた。圧縮クリープは、
ASTM D621を参照し、常温にて面圧 30MPaで圧
縮し、 24 時間後の最大変形率を求めた。結果を表2に
示す。
【0046】
【表4】
【0047】表2および表4の結果から明らかなよう
に、本発明のすべり免震装置に用いるすべり材の圧縮ク
リープ特性は、 24 時間後の最大変形率が 30MPaで 15
%以下であり、 30MPaという高面圧でもすべり免震装置
の使用可能性が認められた。また、本発明に係るコーテ
ィング材から得られる平滑板との組み合わせにより、実
際の往復動の数十倍にあたる 300サイクルまで摩擦係数
μ約 0.03 と小さく安定していた。
【0048】実施例2および比較例4のすべり免震装置
を積層ゴム弾性免震装置とそれぞれ並列に配設して、免
震構造のシミュレーション解析を行なった。シミュレー
ション解析モデルを図4に示す。採用した建物のモデル
を以下に示す。 1)規 模:地下2階、地上6階、塔屋1階(地下階を
含む高さ 40.5m) 2)構造種別:SRC造 3)1次固有周期: 0.86 秒 4)1次減衰定数: 2% 免震構造は地下 2階床下に設置したすべり免震装置1と
鉛プラグ入り積層ゴム免震装置10の混合配置からなる
基礎免震構造とする。また、解析モデルは各階重量を 1
質点に集約した 9質点系等価せん断モデルとする。以下
に解析条件を示す。
【0049】建物モデルの条件:1)各階の重量及び剛
性を図4に示す。2)建物部分は弾性とする。
【0050】免震層モデルの条件: 1)それぞれの免震装置の負担重量比率は、すべり免震
装置が 55 %、鉛プラグ入り積層ゴム免震装置(LR
B)10が 45 %とする。 2)鉛プラグ入り積層ゴム免震装置の復元力特性はNorm
al Bi-Linear型とし、第2勾配は初期剛性の1/6.5 とす
る。 3)免震構造の復元力特性はNormal Bi-Linear型とし、
初期剛性はすべり免震装置と直列に配置した 4)水平力に対して変形可能な部材はせん断弾性係数G
5.5kg/cm2、厚さ16mmの単層ゴムとした。 5)すべり材の組み合わせは、摩擦係数μが0.03とす
る。なお比較例はμが0.10とする。
【0051】入力地震動の条件:入力地震動としては、
El Centro 1940 NS 、Taft 1952 EW、Hachinohe 1968 N
S の 3波を最大速度が 50kine となるように比例倍して
用いる。
【0052】シミュレーション解析結果を図5に示す。
入力地震動によって多少の差違はあるものの、摩擦係数
μが0.03の本発明に係る免震構造は、全般的にμが0.10
である比較例のデータに比べて応答値が低減されてい
る。特に応答加速度および層せん断力係数に関しては本
発明に係る免震構造は最大 50 %程度応答値が低減され
ている。以上の解析により実施例の摩擦低減の効果は非
常に大きい。
【0053】
【発明の効果】本発明のすべり免震装置は、マトリクス
樹脂内に低分子量潤滑成分を含有する潤滑性被膜が形成
された平滑板と、四フッ化エチレン系樹脂を主成分とす
る樹脂組成物で形成され、平滑板に一方の面が摺接する
すべり材とを具備するので、摺動開始初期およびその後
も安定して、優れた低摩擦特性を有する。その結果、免
震設計の自由度が増し、また本発明のすべり免震装置を
用いることにより免震構造の小型化が図れる。
【0054】また、潤滑性被膜が、マトリクス樹脂がポ
リイミド系樹脂および熱硬化性樹脂、特にフラン樹脂か
ら選ばれた少なくとも一つの樹脂であるので、安定した
低摩擦特性を有するすべり免震装置が得られる。
【0055】四フッ化エチレン系樹脂への配合剤が繊維
状配合剤および粉末状配合剤から選ばれた少なくとも一
つの配合剤で、また、上記粉末状配合剤の形状が球状
で、また、上記配合剤が炭素質またはグラファイト質で
あるので、すべり材の耐摩耗性を向上させるとともに、
圧縮クリープ性に優れ、高面圧下における潤滑性被膜と
の摺動において、優れた摩擦係数を維持することができ
る。
【0056】四フッ化エチレン系樹脂が変性四フッ化エ
チレン樹脂であるので、潤滑性被膜との摺動において、
優れた摩擦係数を得ることができる。
【0057】本発明のすべり免震装置は、上記潤滑性被
膜およびすべり材に加えて、すべり材の摺接面の対面に
直接または中板を介して、水平力に抗して変形可能な部
材が積層されてなるので、免震構造の設計可能範囲を拡
大することができる。また、中板を設けることにより、
面圧を大きくすることができ、摩擦係数を下げることが
できる。
【0058】本発明の免震構造は、すべり免震装置部分
が上記すべり免震装置であるので、すべり出しの加速度
を小さく保ったまま免震周期の長周期化ができる。
【0059】また、弾性免震装置を並列して用いるの
で、また、その弾性免震装置の一部または全部が鉛プラ
グ入積層ゴム、あるいは高減衰積層ゴムであるので、免
震構造の設計可能範囲をより大幅に拡大することができ
る。特に弾性免震装置の一部または全部が鉛プラグ入積
層ゴム、あるいは高減衰積層ゴムであると、摩擦係数を
0.05 以下のすべり免震装置の作用とともに、大きな地
震力のみならず小さな地震力においても、十分な免震機
能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】すべり免震装置の断面図である。
【図2】単層ゴム材の変形量と有効受圧面積との関係を
示す図である。
【図3】すべり免震装置と弾性免震装置とを並列に配設
した免震構造の断面図である。
【図4】建物モデルの条件を示す図である。
【図5】シミュレーション解析結果を示す図である。
【図6】従来の弾性すべり免震装置の断面図である。
【図7】積層ゴム部分の変形量と有効受圧面積との関係
を示す図である。
【符号の説明】
1 すべり免震装置 2 平滑板 3 潤滑性被膜 4 すべり材 5 中板 6 単層ゴム材 7 上板 8 下部躯体 9 上部躯体 10 積層ゴム弾性免震装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 深尾 康三 東京都中央区銀座八丁目21番1号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 石垣 秀典 東京都中央区銀座八丁目21番1号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 東野 雅彦 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 濱口 弘樹 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 遠山 幸太郎 東京都中央区銀座八丁目21番1号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 里路 文規 三重県員弁郡東員町大字穴太970 NTN 精密樹脂株式会社内 (72)発明者 廣瀬 和夫 三重県員弁郡東員町大字穴太970 NTN 精密樹脂株式会社内 (72)発明者 伊藤 紀男 三重県員弁郡東員町大字穴太970 NTN 精密樹脂株式会社内 (72)発明者 沖 芳郎 三重県員弁郡東員町大字穴太970 NTN 精密樹脂株式会社内 (72)発明者 辻 俊一 東京都品川区西五反田7丁目22番17号 N TN株式会社内 (72)発明者 涌井 茂 東京都品川区西五反田7丁目22番17号 N TN株式会社内 Fターム(参考) 3J048 AA03 AC01 BA08 BD08 BG04 DA01 EA38

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部躯体と上部躯体との間に配設される
    すべり免震装置であって、 前記すべり免震装置は、マトリクス樹脂内に低分子量潤
    滑成分を含有する潤滑性被膜が形成された平滑板と、四
    フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成
    され前記平滑板に一方の面が摺接するすべり材とを具備
    することを特徴とするすべり免震装置。
  2. 【請求項2】 前記マトリクス樹脂がポリイミド系樹脂
    および熱硬化性樹脂から選ばれた少なくとも一つの樹脂
    であることを特徴とする請求項1記載のすべり免震装
    置。
  3. 【請求項3】 前記熱硬化性樹脂がフラン樹脂であるこ
    とを特徴とする請求項2記載のすべり免震装置。
  4. 【請求項4】 前記樹脂組成物に配合される配合剤が繊
    維状配合剤および粉末状配合剤から選ばれた少なくとも
    一つの配合剤であることを特徴とする請求項1記載のす
    べり免震装置。
  5. 【請求項5】 前記粉末状配合剤の形状が球状であるこ
    とを特徴とする請求項4記載のすべり免震装置。
  6. 【請求項6】 前記配合剤が炭素質またはグラファイト
    質であることを特徴とする請求項4または請求項5記載
    のすべり免震装置。
  7. 【請求項7】 前記四フッ化エチレン系樹脂が、四フッ
    化エチレン単位と、四フッ化エチレンのフッ素が他の有
    機基で置換された置換四フッ化エチレン単位とから構成
    される変性四フッ化エチレン樹脂であることを特徴とす
    る請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載のすべり
    免震装置。
  8. 【請求項8】 請求項1記載のすべり免震装置におい
    て、前記平滑板上を前記すべり材がすべり出すまで、前
    記すべり材の摺接面の対面に直接または中板を介して、
    前記水平力に抗して変形可能な部材が直列に配置されて
    なることを特徴とするすべり免震装置。
  9. 【請求項9】 下部躯体と上部躯体との間に配設される
    すべり免震装置を少なくとも備えてなる免震構造であっ
    て、 前記すべり免震装置が、請求項1ないし請求項8のいず
    れか一項記載のすべり免震装置であることを特徴とする
    免震構造。
  10. 【請求項10】 前記免震構造において、前記すべり免
    震装置とともに復元力を有する装置を併設したことを特
    徴とする請求項9記載の免震構造。
  11. 【請求項11】 前記下部躯体と前記上部躯体との間に
    弾性免震装置を前記すべり免震装置と並列に配設してな
    ることを特徴とする請求項9、10記載の免震構造。
  12. 【請求項12】 前記弾性免震装置の一部または全部が
    鉛プラグ入積層ゴム、あるいは高減衰積層ゴムであるこ
    とを特徴とする請求項11記載の免震構造。
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