JP2000033643A - 発泡ブロー成形品の製造方法及び発泡ブロー成形品 - Google Patents

発泡ブロー成形品の製造方法及び発泡ブロー成形品

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリカーボネート系樹脂は耐熱性、耐老化
性、耐水性等に優れ、電気的、機械的性状にも優れる
が、押出発泡が困難であり、押出発泡体を得ようとして
も発泡セルが破壊されたり、発泡倍率が不充分なものし
か得られず、外観の美麗な発泡体を得ることは困難であ
った。このため、ポリカーボネート系樹脂の発泡層を含
む優れた発泡ブロー成形品は得られていない。本発明は
耐熱性、耐老化性、耐水性等の優れた性状を有するポリ
カーボネート系樹脂の発泡層を含む優れたブロー成形品
を提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明の発泡ブロー成形品1は、ポリカ
ーボネート樹脂を主成分とする樹脂からなる発泡層2を
少なくとも有するパリソンをブロー成形してなる中空の
成形品であって、上記発泡層2を形成している樹脂の2
50℃におけるメルトテンションが4gf以上であると
ともに、成形品1の密度が0.06〜0.9g/cm3
であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発泡ブロー成形品
及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来よ
り、中空状の発泡ブロー成形品を得る方法として、押出
機内で樹脂と発泡剤とを溶融混練し、これをダイスより
押し出して形成された筒状の発泡パリソンを金型で挟
み、パリソンの内部に加圧気体を吹き込んでパリソンを
金型内面形状に沿わせて成形する方法が一般に用いられ
ている。
【0003】このような発泡ブロー成形品は、断熱性、
防音性、柔軟性等が要求される用途に利用されており、
具体的には、ダクト、自動車部品、容器等の用途が挙げ
られる。これらの用途には3〜30倍の発泡倍率のもの
が特に好適に用いられ、基材樹脂がポリスチレンやポリ
エチレンの場合には、例えば、特公平3−59819号
公報に記載されているように発泡層の発泡倍率が4〜1
2である発泡ブロー成形品が得られている。
【0004】一方、ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、
耐老化性、耐水性等に優れ、また電気的特性、機械的特
性にも優れるため、自動車や建造物の内装材、包装材、
各種容器等への広い利用が期待されている。特に、耐熱
性に優れることから電子レンジ用やレトルト食品用の容
器材料等として利用価値の高いものである。
【0005】特公平4−70974号公報には、押出機
から分解型発泡剤を使用して押出発泡させたポリカーボ
ネート樹脂等の熱可塑性樹脂の発泡パリソンを、金型で
挟んで一端を溶封してパリソン内に加圧気体を吹き込ん
で金型のキャビティーに密着するまで膨張させ、発泡倍
率を1.01〜2.5倍の範囲に制御して発泡ブロー成
形品を得る方法が記載されている。しかしながらポリカ
ーボネート樹脂は、押出発泡温度付近における溶融粘度
がポリスチレン系樹脂に比べて非常に高いため、押出発
泡性、シート化加工適性に劣り、ポリカーボネート樹脂
の発泡ブロー成形品の発泡倍率は、せいぜい1.3倍程
度でしかなく、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹
脂の場合のように、高発泡倍率で優れた発泡ブロー成形
品は得られていない。
【0006】一方、ポリカーボネート押出発泡シートの
製造法においては、従来より種々の工夫がされており、
例えば、発泡剤として溶解度係数が6.5以上の有機物
を使用する方法(特開平2−261836号公報)、沸
点50〜150℃のイソパラフィンを発泡剤として用い
て発泡する方法(特公昭47−43283号公報)、ポ
リカーボネート樹脂を低級アルキルベンゼンと低沸点溶
剤でゲル化して加熱発泡する方法(特公昭46−314
68号公報)等が提案されている。
【0007】しかしながら、これらの上記方法を、発泡
ブロー成形に適用しても、発泡ブロー成形は単に発泡体
を押出発泡により得るだけではなく、パリソンとして得
られた発泡体を軟化状態で、ドローダウン、セルの潰れ
等を考慮しながらブロー成形しなければならないため、
外観、断熱性、成形性等が不充分なものとなり、また発
泡倍率、厚み、気泡のセル径、連続気泡率等を広範囲に
調整することも困難であった。このため、ポリカーボネ
ート樹脂押出発泡シートの技術を発泡ブロー成形品の製
造に適用しても良好な成形品を得ることは困難である。
【0008】本発明者等は、ポリカーボネート樹脂の発
泡パリソンをブロー成形して発泡ブロー成形品を得る方
法において、従来、上記したような低発泡で断熱性の不
充分な成形品しか得られないという課題を解決すること
を目的とし鋭意研究した結果、発泡剤を含有するポリカ
ーボネート樹脂を環状ダイスより押出して形成したパリ
ソンの層構成に応じて特定のメルトテンションのポリカ
ーボネート樹脂を用いることにより上記課題を解決でき
ることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ち本発明の発泡ブロー
成形品の製造方法の一つは、ポリカーボネート樹脂を主
成分とし、且つ250℃におけるメルトテンションが6
gf以上である樹脂1kg当たりに対し、物理発泡剤を
0.05〜0.5モルの割合で添加して押出機内で溶融
混練して得た発泡性溶融物を、押出機内より押出発泡さ
せて形成した発泡層を少なくとも有するパリソンを、成
形用金型で挟むとともにパリソン内に加圧気体を吹き込
み、パリソンの金型で挟まれた部分を金型内面に沿った
形状に成形することを特徴とする。また本発明の発泡ブ
ロー成形品の製造方法のいま一つは、ポリカーボネート
樹脂を主成分とし、且つ250℃におけるメルトテンシ
ョンが3gf以上である樹脂1kg当たりに対し、物理
発泡剤を0.05〜0.5モルの割合で添加して押出機
内で溶融混練して得た発泡性溶融物と、ポリカーボネー
ト樹脂を主成分とする非発泡性樹脂溶融物とを、押出機
内より低圧下に筒状に共押出して発泡層の内外面に非発
泡樹脂層が形成された多層のパリソンとし、該パリソン
を成形用金型で挟むとともにパリソン内に加圧気体を吹
き込み、パリソンの金型で挟まれた部分を金型内面に沿
った形状に成形することを特徴とする。
【0010】本発明方法において、非発泡性樹脂層を構
成する樹脂は、250℃におけるメルトテンションが1
gf以上の樹脂が好ましい。また発泡剤として沸点が−
30〜100℃の物理発泡剤を用いることが好ましい。
【0011】本発明の発泡ブロー成形品の一つは、ポリ
カーボネート樹脂を主成分とする樹脂からなる発泡層を
少なくとも有するパリソンをブロー成形してなる中空の
成形品であって、上記発泡層を形成している樹脂の25
0℃におけるメルトテンションが4gf以上であるとと
もに、成形品の密度が0.06〜0.9g/cm3 であ
ることを特徴とする。また本発明の発泡ブロー成形品の
いま一つは、ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂
からなる発泡層の両面にポリカーボネート樹脂を主成分
とする樹脂からなる非発泡樹脂層が形成された多層のパ
リソンをブロー成形してなる中空の成形品であって、上
記発泡層を形成している樹脂の250℃におけるメルト
テンションが2gf以上であり、成形品の密度が0.0
6〜0.9g/cm3 であることを特徴とする。
【0012】本発明の発泡ブロー成形品は、発泡層の連
続気泡率が70%以下であることが好ましく、また発泡
層の気泡の平均気泡径が0.15〜2.0mmであるこ
とが好ましい。更に発泡層の主成分であるポリカーボネ
ート樹脂が分岐構造を有する樹脂であることが好まし
い。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は本発明の発泡ブロー成形品
1の一例を示し、図中、2はポリカーボネート樹脂を主
成分とする樹脂よりなる発泡層、3はポリカーボネート
樹脂を主成分とする樹脂よりなる非発泡樹脂層である。
図2は発泡ブロー成形品1の製造方法を概念的に示すも
のである。発泡ブロー成形品1は、図2(a)に示すよ
うに押出機の環状ダイス4から押出されたパリソン5が
軟化状態にあるうちに、金型6、6で挟み、パリソン5
内に、気体吹込口7から加圧気体を吹き込み、図2
(b)に示すようにパリソン5の金型6、6で挟まれた
部分を金型内面に沿わせるように成形することにより得
られる。
【0014】図1に示す発泡ブロー成形品1は、発泡層
2を形成するための発泡性溶融物と、非発泡樹脂層3を
形成するための樹脂溶融物とを、ダイス4内において合
流させ(非発泡樹脂層3を形成するための樹脂溶融物
が、パリソンの5の外面側に位置するように発泡性樹脂
溶融物と合流させる。)た後、環状ダイス4より押出
し、発泡性樹脂溶融物を発泡させて発泡パリソン5を形
成し、このパリソン5を上記したように金型6、6で挟
み、パリソン5内に加圧気体を吹き込んで成形すること
により得られる。尚、パリソンのブロー成形を行う方法
としては上記の方法の他に、予め作成しておいたパリソ
ンを加熱軟化させてブロー成形する方法も採用すること
ができる。
【0015】上記発泡層を形成するための樹脂として
は、250℃におけるメルトテンション(以下、MTと
略す。)が6gf以上の樹脂を用いる。
【0016】図1は、上記したような方法で形成したパ
リソン5を成形することにより、内面側が発泡層2とな
り、外面側が非発泡樹脂層3となるように構成した発泡
ブロー成形品1の例を示したが、発泡層の内面側に非発
泡樹脂層が位置するように形成したパリソンを成形し、
発泡ブロー成形品の内面側が非発泡樹脂層となり外面側
が発泡層である発泡ブロー成形品としても良い。また、
非発泡樹脂層を有さない発泡層のみからなるパリソン5
を成形し、発泡層のみからなる発泡ブロー成形品として
も良い。
【0017】尚、上記いずれかの場合(即ち、発泡ブロ
ー成形品が発泡層のみからなる場合、発泡層の外面側に
非発泡樹脂層を有する図1に示した場合、発泡層が外面
側に位置し、内面側に非発泡樹脂層が形成されている場
合)においても、発泡層、非発泡樹脂層の、それぞれが
単層構造である場合に限らず、発泡層、非発泡樹脂層の
いずれか、或いは両方を多層構造とすることもできる。
【0018】上記図1に示した発泡ブロー成形品1や、
特に図示しないが上述した如く発泡層のみからなる発泡
ブロー成形品、或いは発泡層が外面側に位置し非発泡樹
脂層が内面側に位置する層構成の発泡ブロー成形品(上
記したように、発泡層や非発泡樹脂層は、それぞれ単層
の場合に限らず、多層構造とすることもできるが、これ
らは発泡層のみからなるか、発泡層の片面のみに非発泡
樹脂層を設けた構成のものであるから、便宜上、発泡層
のみからなる場合を『単層』と呼び、発泡層の一方の側
の面に非発泡樹脂層が形成されている場合を『片面多
層』と呼ぶ。)の場合、発泡層2は、上記したようにポ
リカーボネート樹脂を主成分とし、且つ、250℃にお
けるMTが6gf以上(好ましくは7〜20gf)であ
る樹脂によって得られる。尚、MTの上限は、おおむね
30gfである。また成形品の密度を0.06〜0.9
g/cm3 とすることが必要である。また発泡層2が複
数層の発泡層からなる場合も、各発泡層は上記した条件
を満たすことが必要である。但し、各発泡層それぞれが
上記した条件を満たしていれば、発泡層を形成するため
の樹脂のMT、発泡層の厚み、密度等は、各発泡層にお
いて全く同一である必要はない。
【0019】上記発泡層2、非発泡樹脂層3を構成する
ポリカーボネート樹脂は、炭酸とグリコールや、フェノ
ール系ヒドロキシル基を有するビスフェノール等の化合
物とから形成される樹脂で、分子鎖にジフェニルアルカ
ンを有する芳香族ポリカーボネート樹脂が、耐熱性、耐
侯性及び耐酸性に優れるため好ましい。このようなポリ
カーボネート樹脂としては、2,2−ビス(4−オキシ
フェニル)プロパン(別名、ビスフェノールA)、2、
2−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス
(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス
(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4
−オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから誘導
されるポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0020】ポリカーボネート樹脂には、直鎖状のも
の、分岐構造を有するものがある。直鎖状のポリカーボ
ネート樹脂の場合、粘度平均分子量が25,000以
上、特に30,000以上のものが好ましい。市販され
ている直鎖状のポリカーボネート樹脂で、粘度平均分子
量が25,000以上で、250℃におけるMTが6g
f以上のポリカーボネート樹脂としては、例えば三菱化
学社製のユーピロンE−1000(粘度平均分子量3
2,000、MT=6.5gf)が挙げられる。
【0021】分岐構造のポリカーボネート樹脂は、三個
又はそれ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化
合物を用いて得ることができる。このような三個又はそ
れ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物と
しては、例えば、フロログリシノール、4,6−ジメチ
ル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−2
−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4
−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ
−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1
−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−
(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2
−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)
−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−
ヒドロキシフェニルイソプロピル)−フェノール、2,
6−ビス−(2−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)
−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニ
ル)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパ
ン、ヘキサ−(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロ
ピル)−フェニル)−オルトテレフタル酸エステル、テ
トラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、テトラ−
(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)−フェ
ノキシ)−メタン、1,4−ビス−(4′,4′′−ジ
ヒドロキシトリフェニル)−メチルベンゼン等が挙げら
れる。
【0022】更に、長鎖分岐型のポリカーボネート樹脂
は、MTがより高い傾向にあるため、高いMTのものを
用いる場合に有利である。市販されている長鎖分岐型の
ポリカーボネート樹脂で、MTが6gf以上のものとし
ては例えば、バイエル社製のマクロロン3118(MT
=16gf)、GEプラスチック社製のレキサン151
−112(MT=9gf)、出光石油化学社製のタフロ
ンIB−2500(粘度平均分子量25,000、MT
=14.5gf)等が挙げられる。
【0023】単層又は片面多層の発泡ブロー成形品を製
造するに際し、発泡層2を形成するために用いる樹脂と
しては、上記した250℃におけるMTが6gf以上の
ポリカーボネート樹脂のみを基材樹脂として用いて構成
する場合に限らず、ポリカーボネート樹脂にアクリル酸
やアクリル酸エステル、メタクリル酸やメタクリル酸エ
ステルをモノマーとする単独重合体や、これらのモノマ
ーと他のモノマーとの共重合体等の、アクリル酸系樹
脂、メタクリル酸系樹脂等を混合することが好ましい。
尚、本発明の目的、効果が達成される範囲で、ポリエチ
レンテレフタレート、ハイインパクトポリスチレ、高分
子量ポリエチレン等の他の合成樹脂を混合して用いるこ
とができるが、混合樹脂の250℃におけるMTが6g
f以上であることが必要である。
【0024】また、片面多層の発泡ブロー成形品を製造
する場合、非発泡樹脂層を形成するための樹脂として
は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする、250℃に
おけるMTが1gf以上の樹脂を用いることが好まし
い。非発泡樹脂層を形成するために、ポリカーボネート
樹脂と混合して用いられる樹脂としては、上記アクリル
系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等が好
ましい。その他、ポリスチレン系樹脂等、他の樹脂を混
合することができる。
【0025】上記単層の発泡ブロー成形品は、ポリカー
ボネート樹脂を主成分とするMTが6gf以上の樹脂1
kg当たりに対し、物理発泡剤を0.05〜0.5モル
添加し、押出機内で溶融混練して形成した発泡性溶融物
を、環状ダイスより押出して発泡させたパリソンを成形
することにより得られる。また片面多層の発泡ブロー成
形品は、発泡層の一方の面に非発泡樹脂層が形成される
ように、ダイス内において上記と同様の発泡性溶融物
と、非発泡樹脂とを合流させた後、ダイスより押出し、
発泡性溶融物を発泡させて片面多層のパリソンを得、こ
のパリソンを成形することにより得られる。
【0026】単層や片面多層のパリソンを得る場合、発
泡層を形成するための樹脂のMTが6gf未満の場合、
発泡層が形成される過程でセル破壊が生じる結果、断熱
性等に優れた発泡ブロー成形品を得ることができない。
【0027】尚、樹脂のMTは、例えば、株式会社東洋
精機製作所製のメルトテンションテスターII型等によっ
て測定することができる。具体的には、オリフィス内径
2.095mm、長さ8mmのオリフィスを有するメル
トテンションテスターを用い、上記オリフィスから樹脂
温度250℃、押出のピストン速度10mm/分の条件
で樹脂を紐状に押し出して、この紐状物を直径45mm
の張力検出用プーリーに掛けた後、100rpmの捲取
り速度にて直径50mmの捲取りローラーで捲取る。
【0028】本発明において、MTを求めるには、10
0rpmの一定の捲取り速度において、捲取りを行って
張力検出用プーリーと連結する検出機により検出される
紐状物のMTを経時的に測定し、縦軸にMT(gf)
を、横軸に時間(秒)を取ったチャートに示すと、図3
のように振幅をもったグラフが得られる。本発明におけ
るMTとは、図3において振幅の安定した部分の振幅の
中央値(X)とする。但し、捲取り速度が100rpm
に達する前に紐状物が切れる場合には、その捲取り速度
における値をMTとする。尚、まれに発生する特異的な
振幅は無視するものとする。
【0029】図4は発泡層2の内外面に非発泡樹脂層3
を有する発泡ブロー成形品1を示す。この発泡ブロー成
形品1は、発泡層の内外両面に非発泡樹脂層が形成され
るように、押出機内で樹脂と発泡剤とを溶融混練して形
成した発泡性溶融物と、非発泡樹脂の溶融物とをダイス
内で合流させてから環状ダイスより押出して形成したパ
リソンを成形することにより得られる。発泡層の内外に
非発泡樹脂層を形成した構造を、以下便宜的に『両面多
層』と呼ぶ。尚、両面多層の場合も、前記したと同様
に、発泡層や該発泡層の両面側に設けられる非発泡樹脂
層は、更に複層構造であっても良い。
【0030】上記両面多層のパリソンを形成する場合
も、発泡層を形成するための発泡性溶融物は、前記単層
のパリソンや片面多層のパリソンの場合と同様、ポリカ
ーボネート樹脂を主体とする樹脂1kg当たり、物理発
泡剤0.05〜0.5モルを添加して溶融混練して得る
ことができるが、両面多層のパリソンを形成する場合に
は、発泡層を形成するための樹脂は、250℃における
MTが3gf以上(好ましくは4〜20gf)であれば
良い。尚、MTの上限は、おおむね30gfである。発
泡層を形成するために用いる樹脂のMTが3gf未満の
場合、パリソンの発泡層が形成される過程でセル破壊が
生じ、断熱性等に優れた発泡ブロー成形品が得られなく
なる。尚、非発泡樹脂層を形成するための樹脂として
は、ポリカーボネート樹脂を主体とし、250℃におけ
るMTが1gf以上(好ましくは1〜12gf)の樹脂
を用いることが好ましい。
【0031】両面多層のパリソンを形成する場合も、発
泡層、非発泡樹脂層を形成するために用いるポリカーボ
ネート樹脂としては、前記したと同様のポリカーボネー
ト樹脂が用いられる。
【0032】上記したように本発明の発泡ブロー成形品
を製造するに際し、発泡層を構成するための樹脂1kg
当たりに対して物理発泡剤を0.05〜0.5モル添加
することが必要である。発泡剤の添加量が0.05モル
未満であると断熱性、剛性に優れた発泡層が形成されな
い。また0.5モルを超える量の発泡剤を添加すると、
発泡剤が樹脂に充分に溶解しなくなったり、発泡速度が
速くなり過ぎたりする結果、セルが破壊されたり不均一
となったりする虞れがある。
【0033】発泡剤としては沸点が−30〜100℃、
特に−5〜80℃の物理発泡剤を用いることが好まし
い。沸点が−30℃未満の物理発泡剤を用いると、発泡
速度が速くなり過ぎてセル破壊が生じ易くなり、沸点が
100℃を超える発泡剤を用いると、発泡力の不足や発
泡後に発泡剤の液化が生じて発泡層の収縮が生じる等の
虞れがある。このような物理発泡剤としては、例えば、
ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化
メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2
−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフ
ッ化炭化水素等の物理発泡剤が挙げられる。これらの物
理発泡剤は混合して用いることもでき、沸点が押出温度
以下の各種アルコール等のような液体、又は炭酸ガス、
窒素等の無機ガスを併用することもできる。また、炭酸
水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アゾジカルボン
アミド等の分解型発泡剤を発泡層を構成する樹脂に含有
させて使用することもできる。
【0034】尚、発泡層を形成するための発泡性溶融物
中及び/又は非発泡層を形成するための非発泡性溶融物
中には、気泡調整剤、難燃剤、流動性向上剤、耐候剤、
着色剤、熱安定剤、充填剤、帯電防止剤、導電性付与剤
等の各種添加剤を必要に応じて適宜配合することができ
る。
【0035】本発明の発泡ブロー成形品は、上記した単
層、片面多層、両面多層のいずれの場合も、成形品の密
度が0.06〜0.9g/cm3 (好ましくは、0.0
6〜0.45g/cm3 )のものである。成形品の密度
が0.06g/cm3 未満の場合は、機械的強度、外観
において不充分なものとなり、密度が0.9g/cm3
を超える場合は断熱性、軽量性が不充分なものとなる。
また、本発明の発泡ブロー成形品の発泡層を形成してい
る樹脂のメルトテンションは、単層及び片面多層の場合
は4gf以上(好ましくは5〜20gf)、両面多層の
場合は2gf以上(好ましくは2.5〜20gf)であ
る。発泡層を形成している樹脂のメルトテンションは、
発泡層を形成するために使用する樹脂のメルトテンショ
ンと同等もしくは少し下回る値を示す。よって発泡層を
形成している樹脂のメルトテンションは、発泡層を形成
するために使用する樹脂のメルトテンションを調整する
ことにより概ね制御することができ、発泡層を形成して
いる樹脂のメルトテンションが各々上記の値の場合、発
泡層を形成するための樹脂のメルトテンションが前述の
通り本発明で特定される値の場合と同様の理由により良
好な成形品となる。また成形品の連続気泡率は、好まし
くは70%以下、更に好ましくは50%以下のものであ
る。成形品の連続気泡率が70%を超える場合は、成形
品の気密性、断熱性、外観、機械的強度が悪化する虞れ
がある。一方、吸音用等の如く用途によっては連続気泡
率が高いものが好ましいことがある。発泡層2の厚みは
好ましくは0.5〜15mm、更に好ましくは1.0〜
8.0mmであり、密度は好ましくは0.06〜0.8
g/cm3 、更に好ましくは0.06〜0.4g/cm
3 である。厚みが0.5mm未満では、外観悪化、断熱
性低下の虞れがあり、15mmを超えると、ブロー成形
時の金型再現性の悪化、成形品の連続気泡率が高くなり
過ぎる虞れがある。また発泡層の密度が0.06g/c
3 未満であると、成形品の連続気泡率が高くなり過ぎ
る虞れがあり、0.8g/cm3 を超えると、ドローダ
ウン量増加によりブロー成形時の成形性悪化、成形品の
断熱性、軽量性低下を生じる虞れがある。
【0036】また成形品の発泡層2の気泡の平均気泡径
が0.15〜2.0mmであることが好ましい。平均気
泡径が0.15mm未満であると、成形品の外観が悪く
なる虞れがある。また平均気泡径が2.0mmを超える
と、断熱性が低下する虞れがある。尚、発泡層2の気泡
の平均気泡径は、ASTM D3576に準拠した測定
方法を採用し、発泡層断面を拡大投影し、投影画像上に
直線を引き、その直線と交差する気泡数をカウントし、
画像上の直線長さを気泡数で割ることによって求めた値
を更に0.616で割って求められる、押出方向、幅方
向及び厚み方向の平均径の算術平均値である。
【0037】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り詳細に説明する。尚、実施例、比較例において使用し
た樹脂は、以下の通りである。
【0038】PC−1:三菱化学社製:ユーピロンE−
1000(直鎖状ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子
量32,000、MT=6.5gf) PC−2:三菱化学社製:ユーピロンE−2000(直
鎖状ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量27,00
0、MT=3gf) PC−3:出光石油化学社製:タフロンIB−2500
(分岐状ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量25,
000、MT=14.5gf) PC−4:バイエル社製:マクロロン3118(分岐状
ポリカーボネート樹脂、MT=16gf) PC−5:三菱化学社製:ユーピロンH−3000(直
鎖状ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量18,00
0、MT=0.5gf) PC−6:三菱化学社製:ユーピロンS−3000(直
鎖状ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量2200
0、MT=1.5gf)
【0039】実施例1〜7、比較例1〜3 口径65mmの押出機内で、表1に示す発泡層の原料樹
脂1kg当たりに対して、同表に示す発泡剤が同表に示
す添加量(モル数)となるように樹脂と発泡剤とを溶融
混練して発泡性溶融物を調製した。更に、実施例2〜
7、比較例2、3においては発泡層の内外面に非発泡樹
脂層を形成するために、表1に示す内外層の原料樹脂
を、それぞれを口径40mmの2台の押出機に別々に供
給して溶融し非発泡性溶融物とした。次いで、発泡性溶
融物、実施例2〜7、比較例1、2においては更に非発
泡性溶融物を、発泡層の内面側及び外面側に非発泡樹脂
層が形成されるように、上記口径65mmの押出機内の
発泡性溶融物及び口径40mmの2台の押出機内の非発
泡溶融物を、環状ダイス内で合流させ、表1に示す温度
に調整した後、環状ダイスから押出して、発泡層のみか
らなる単層のパリソン又は非発泡樹脂層/発泡層/非発
泡樹脂層の3層構成のパリソンを形成した。このパリソ
ンをダイス直下に位置して設けた握手付き4リットルボ
トル容器成形用金型で挟み、パリソン内に圧力500g
/cm2 の加圧空気を吹き込んでパリソンを金型内面に
沿った形状に成形した。得られた発泡ブロー成形品の性
状を表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】本明細書中において、発泡層厚み、密度、
平均気泡径、非発泡層の厚み、成形品の密度、連続気泡
率、及び成形品の外観、発泡層を形成している樹脂のM
Tの測定方法、評価基準は以下の通りとする。
【0043】※1発泡層及び非発泡層の厚み 成形品のブロー成形時、過度に伸ばされていない部分
(例えばボトル形状の成形品の場合は胴部)を押出方向
に垂直な平面で切断し、得られた断面より発泡体層の厚
みを測定する。
【0044】※2発泡層の密度 成形品からブロー成形時に過度に伸ばされていない、密
度、厚みが均一な部分(例えば、ボトル形状の成形品の
場合は側面中央部)を選んで、なるべく大きなサンプル
を切り取り、サンプル面積:S(cm2 )、サンプル重
量:W(g)、発泡層厚み:T1 (cm)、非発泡層厚
み:T2 (cm)、非発泡層の密度:D(g/cm3
を測定し(各厚みはサンプル断面より測定する。)、次
式により求める。
【0045】
【数1】
【0046】※3平均気泡径 成形品からブロー成型時に過度に伸ばされていない部分
(例えばボトル形状の成形品の場合は側面中央部)を選
んでサンプルを切り取り、ASTM D3576に準拠
した測定方法を採用し、発泡層断面を拡大投影し、投影
画像上に直線を引き、その直線と交差する気泡数をカウ
ントし、画像上の直線長さを気泡数で割ることによって
求めた値を更に0.616で割って求められる、押出方
向、幅方向及び厚み方向の平均径の算術平均値である。
【0047】※4成形品密度 得られた成形品重量(g)を、該成形品をエタノール中
に沈めて水位上昇分より求めた成形品体積(cm3 )で
割って求める。
【0048】※5連続気泡率 ASTM D2856(手順C)の手順により成形品サ
ンプルの実容積(独立気泡部分の容積と樹脂部分の容積
との和):Vx(cm3 )を求め、次式より算出した値
である。
【0049】
【数2】
【0050】※6成形品の外観 成形品外観を観察し、 ◎・・・成形品の表面が平滑であり、穴、亀裂等がない
もの。 ○・・・表面に気泡の凹凸が若干あるものの概ね平滑で
あり、穴、亀裂等がないもの。 ×・・・表面に穴、亀裂等が発生したり、非発泡樹脂層
に極端に薄い部分が発生し、外観が著しく悪いもの。 として評価した。
【0051】※7発泡層を形成している樹脂のメルトテ
ンション(MT) 成形品より発泡層を切り出し120℃で5時間乾燥後、
ヒートプレスにより280℃、100kg/cm2 の条
件により発泡層を構成している気泡を脱泡させシート状
サンプルを得る。次に該サンプルを適当な大きさに切断
し、前述の樹脂のメルトテンションの測定方法と同様の
方法によりMT(gf)を測定した。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように本発明の発泡ブロー
成形品は、ポリカーボネート樹脂を主体とし、250℃
におけるメルトテンションが4gf以上の樹脂から形成
されている発泡層を少なくとも有するパリソンをブロー
成形して得たことにより、押出発泡が難しいとされてい
るポリカーボネート樹脂を環状ダイスより押出発泡して
得た発泡層を有するパリソンをブロー成形した成形品で
ありながら、充分な発泡倍率の発泡層とすることがで
き、また発泡層におけるセル破壊やセルの不均一という
不具合がなく、外観にも優れている等の利点を有する。
また発泡層の内外面に非発泡樹脂層を有する場合には、
発泡層を形成している樹脂の250℃におけるメルトテ
ンションが2gf以上であれば、上記した優れた発泡ブ
ロー成形品となる。
【0053】更に本発明の発泡ブロー成形品は、ポリカ
ーボネート樹脂を主体とするため、耐熱性、耐老化性、
耐水性等に優れ、電気的性質、機械的性質等に優れる効
果がある。
【0054】また本発明方法によれば、特定のメルトテ
ンションを有するポリカーボネート樹脂を使用すること
により優れた発泡ブロー成形品を得ることができ、発泡
剤として沸点が−30〜100℃の物理発泡剤を用いる
と、より確実に優れた発泡ブロー成形品を得ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発泡ブロー成形品の一例を示す縦断面
図である。
【図2】本発明の発泡ブロー成形品の製造法を示す断面
略図である。
【図3】メルトテンションテスターのノズルから樹脂を
紐状に押出し、この紐状物を一定の巻き取り速度で巻き
取りローラーで巻き取った時の、張力と経過時間とを示
すチャートである。
【図4】本発明の発泡ブロー成形品の他の例を示す縦断
面図である。
【符号の説明】
1 発泡ブロー成形品 2 発泡層 3 非発泡樹脂層 4 環状ダイス 5 パリソン 6 金型 7 気体吹き込み口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29K 105:04 B29L 22:00 C08L 69:00 (72)発明者 小暮 直親 栃木県宇都宮市上横田町808−1 メゾン ドキューブD棟201 (72)発明者 北浜 卓 栃木県宇都宮市砥上町1126−5 Fターム(参考) 4F074 AA70E AB05 BA31 BA37 BA39 BA40 CA22 CC22X DA02 DA03 DA13 DA23 DA54 4F208 AA28C AB02 AG03 AG07 AG20 LA01 LB01 LB22 LN01 4F212 AA28C AB02 AG03 AG07 AG20 UA10 UB01 UB11 UC05 UC06 UC08 UF01 UG05 UN29 UW41

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリカーボネート樹脂を主成分とし、且
    つ250℃におけるメルトテンションが6gf以上であ
    る樹脂1kg当たりに対し、物理発泡剤を0.05〜
    0.5モルの割合で添加して押出機内で溶融混練して得
    た発泡性溶融物を、押出機内より押出発泡させて形成し
    た発泡層を少なくとも有するパリソンを、成形用金型で
    挟むとともにパリソン内に加圧気体を吹き込み、パリソ
    ンの金型で挟まれた部分を金型内面に沿った形状に成形
    することを特徴とする発泡ブロー成形品の製造方法。
  2. 【請求項2】 ポリカーボネート樹脂を主成分とし、且
    つ250℃におけるメルトテンションが3gf以上であ
    る樹脂1kg当たりに対し、物理発泡剤を0.05〜
    0.5モルの割合で添加して押出機内で溶融混練して得
    た発泡性溶融物と、ポリカーボネート樹脂を主成分とす
    る非発泡性樹脂溶融物とを、押出機内より低圧下に筒状
    に共押出して発泡層の内外面に非発泡樹脂層が形成され
    た多層のパリソンとし、該パリソンを成形用金型で挟む
    とともにパリソン内に加圧気体を吹き込み、パリソンの
    金型で挟まれた部分を金型内面に沿った形状に成形する
    ことを特徴とする発泡ブロー成形品の製造方法。
  3. 【請求項3】 非発泡樹脂層を形成するための樹脂が、
    250℃におけるメルトテンションが1gf以上の樹脂
    である請求項2記載の発泡ブロー成形品の製造方法。
  4. 【請求項4】 沸点が−30〜100℃の物理発泡剤を
    用いる請求項1〜3のいずれかに記載の発泡ブロー成形
    品の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹
    脂からなる発泡層を少なくとも有するパリソンをブロー
    成形してなる中空の成形品であって、上記発泡層を形成
    している樹脂の250℃におけるメルトテンションが4
    gf以上であるとともに、成形品の密度が0.06〜
    0.9g/cm3 であることを特徴とする発泡ブロー成
    形品。
  6. 【請求項6】 ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹
    脂からなる発泡層の両面にポリカーボネート樹脂を主成
    分とする樹脂からなる非発泡樹脂層が形成された多層の
    パリソンをブロー成形してなる中空の成形品であって、
    上記発泡層を形成している樹脂の250℃におけるメル
    トテンションが2gf以上であり、成形品の密度が0.
    06〜0.9g/cm3 であることを特徴とする発泡ブ
    ロー成形品。
  7. 【請求項7】 発泡層の連続気泡率が70%以下である
    請求項5又は6記載の発泡ブロー成形品。
  8. 【請求項8】 発泡層の気泡の平均気泡径が0.15〜
    2.0mmである請求項5〜7のいずれかに記載の発泡
    ブロー成形品。
  9. 【請求項9】 発泡層の主成分であるポリカーボネート
    樹脂が分岐構造を有する樹脂である請求項5〜8のいず
    れかに記載の発泡ブロー成形品。
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