JP3791699B2 - ポリカーボネート樹脂押出発泡積層シート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートに関するものであり、更に詳しくは、金型再現性、深絞り性等加熱成形性に優れたポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂発泡体は、耐熱性、耐老化性、耐水性等が高く、電気的及び機械的性質も良いから、自動車や建造物の内装材、包装材、各種容器等への用途展開が期待されている。また、耐熱性が要求される電子レンジ用やレトルト食品用の容器材料としては特に有望である。このように利点は多いが、ポリカーボネート樹脂の流動開始点がポリスチレン等のそれより大幅に高い上に、溶融粘度が低く加熱シートの伸びが少ないから、通常の押出発泡法で所望の発泡シートを得るのは困難である。そのため、溶解度係数6.5以上の有機物を発泡剤とする方法(特開平2−261836号公報)、沸点50〜150℃のイソパラフィンを発泡剤とする方法(特公昭47−43183号公報)等が提案されている。
しかし、これらの発泡剤を使っても加熱成形加工時に寸法安定性の良い発泡シートが得られず、そのため加工時にシートが破れたり波打つ等の問題がある。
【0003】
また、本発明者らは、先にポリカーボネート樹脂と発泡剤とを溶融混練して得られる特定気泡のポリカーボネート樹脂押出発泡シートを提案した。しかしこの発泡シートも深絞り性等の加熱成形加工性の点で充分満足しうるものではない。
更に、前記した押出発泡法のほか、シート状のポリカーボネートに発泡剤を含浸させて加熱発泡させる方法(特開平6−79816号公報)、低級アルキルベンゼンと低沸点溶剤でゲル化したポリカーボネートを加熱発泡させる方法(特公昭46−31468号公報)等も提案されている。しかし、これらの方法で製造される発泡シートは、押出発泡シートよりコスト高となる上に加熱成形加工時の寸法安定性が向上することもなく、深絞り成形性も良好なものとは言えないから、特別な場合を除いて有利な発泡シートとは云えない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金型再現性、深絞り成形性等の加熱成形性に優れ、しかも発泡倍率の高いポリカーボネート樹脂発泡積層シートを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、押出発泡で得られたポリカーボネート樹脂発泡シートの、金型再現性、深絞り成形性等の加熱成形性の向上、また加熱下に成形加工する際の伸びによる波打ち(以下、あばれという)、それによる加熱ムラが原因で発生する成形品の破れ等の防止について詳細に検討した結果、該発泡シートの表面にポリカーボネート樹脂シートを積層し、更に該発泡シート内の気泡を押出方向に多少扁平の球状に形成するか、或いは該発泡シートの加熱寸法変化率を特定することによって、これらの目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、(1)ポリカーボネート樹脂押出発泡シートを芯層とし、少なくとも片面にポリカーボネート樹脂フィルムよりなる表層を積層したポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートであって、前記芯層が、下記式を満足するポリカーボネート樹脂押出発泡シートであることを特徴とする前記ポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートが提供される。
1<X/Z≦3
1<Y/Z≦5
(X+Y+Z)/3≧0.1mm
[但し、式中、Xはシート幅方向断面の厚み方向と直交する方向の平均気泡径(mm)を、Yはシート押し出し方向断面の厚み方向と直交する方向の平均気泡径(mm)を、Zはシート断面の厚み方向の平均気泡径(mm)を表す]
(2)ポリカーボネート樹脂押出発泡シートを芯層とし、少なくとも片面にポリカーボネート樹脂フィルムよりなる表層を積層したポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートであって、前記ポリカーボネート樹脂発泡積層シートを170℃、30秒間加熱した際の加熱寸法変化がMD方向において0〜−30%、TD方向においては−1〜−10%の範囲であることを特徴とする上記(1)に記載のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートが提供される。
(3)前記表層であるポリカーボネート樹脂フィルムの厚さが20μm〜500μmであり、前記芯層と前記表層とから構成されるポリカーボネート樹脂押出発泡積層シート全体の厚さが1mm〜5mmであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートが提供される。
(4)前記芯層を構成するポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が25000以上であり、前記表層を構成するポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が20000未満であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートが提供される。
【0007】
本発明によるポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートの特徴を説明するために、押出発泡による発泡シートの一般的製造方法を以下に記述する。
▲1▼押し出し機内に樹脂と気泡調整剤等の添加剤とを仕込み、該機内で加熱・溶融・混練する工程
▲2▼混練物に所望量の発泡剤を圧入して混練物に発泡剤を練り込む工程
▲3▼発泡剤が練り込まれている混練物を、所定温度で押出機先端のサーキュラダイから低圧部に押出し、これを円柱形状の樹脂発泡体冷却装置(マンドレル)の表面上に引取って円筒状発泡体を形成させてから、押出方向に切り開い
てシート状発泡体とする工程
が含まれる。
【0008】
さらにシートの加熱成形についても以下に記載する。
1.発泡シートをそれが軟化するまで予熱し、モールドに位置決めする工程
2.予熱されたシートをモールド表面に、真空引き等により密着させる成形工程
3.賦型された発泡シートを冷却する工程
4.成形品をモールドのキャビティーから取り出す工程
が含まれる。
上記2.成形工程の具体的な例示としては、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、チャンバブロー方式によるエアスリップ成形、プラグアシスト成形、ドレープアンドプラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形、エアクッション成形、プラグアシストエアスリップ成形、接触加熱式圧空成形等の真空成形、及び/又は圧空成形や単純なプレス成形等が挙げられる。
【0009】
押出発泡法で発泡シートを製造する場合、ポリスチレン発泡シート等の一般的樹脂発泡シート作製時は、樹脂押し出し速度より多少高速で円筒状発泡体が引取られるから、円筒状発泡体に引取り方向の張力がかかって該発泡体内の押し出し方向断面の気泡が偏平に形成される。そして、該シートを成形するために成形機内加熱部で加熱軟化させると、シート内気泡が偏平状から球状になろうとしてシートが収縮し、ピンと張った状態となる。その結果、加熱ムラが無く形の良い成形品が得られ、曲げ強度や機械的強度も向上すると考えられる。
【0010】
一方、ポリカーボネート樹脂押出発泡シートでは、ダイス出口から押し出される樹脂の伸びが極めて小さいから、該樹脂がダイスから押し出される速度より速い速度でマンドレルに引取るのが困難である。そこで、実際には円筒状発泡体を多少だぶつかせながらマンドレルに引取っており、気泡が形成されるダイス出口近付では円筒状発泡体が弛んでいる。このような方法で形成される気泡の形状は厚み方向に多少縦長の球状になる。このように気泡が形成されているために、該発泡シートを成形機内加熱部で加熱軟化させて成形加工する場合には、軟化温度で気泡が真球状になろうとするために発泡シートが伸びてしまう。しかし、成形機内ではシート端部が押えられているから伸びたシートの逃げ場がなく、成形機内加熱部でシートが波打ってあばれて加熱ムラが発生し、その様なシートを成形することによりナキや破れ等の不具合が生じて成形品の品質が低下してしまう。なお、前記したナキは発泡シート表面に形成されるスキン層に亀裂が入っている状態を意味している。
【0011】
以上のほか、従来のポリカーボネート樹脂押出発泡シートの製造では、シート幅500mmを超え実用的な発泡シート製造が困難なことも欠点の一つである。これは、円筒状発泡体の伸びが小さいために、サーキュラダイ直径より250%程度以上直径が大きいマンドレルでは、押し出された円筒状発泡体を円滑に引取るのが難かしいために起る問題である。そして、シート幅が狭いと一般に包装用容器等の連続加熱成形機は、作業効率面から最低でも500mmを超える幅のシートを使うように設計されているから、500mm幅以下のシートでは使用可能な成形機の機種が限定される。
これらを解決するために、例えば強引に直径の大きいマンドレルで円筒状発泡体を引取る方法を採用しても、この方法ではシートが破れてしまったりシート厚が薄くなったり表面状態が悪くなる等の問題が起り、高品質の発泡シートを得ることができない。そこで、サーキュラダイの直径を大きくして幅広のシートを得ることも試みられたが、この場合はサーキュラダイ直径が大きいから押し出し機先端のダイス圧力を保持するのが難かしく、そのためにダイス内部で発泡現象が起こって得られる発泡シートの表面状態や機械的物性等の品質が低下する。
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートは、加熱下に成形加工する際の寸法安定性が良いからシートが破れたり波打ったりせず、高品質成形品を歩留り良く製造できる発泡シートである。また、幅500mmを超える場合でも優れた発泡シートである。本発明積層シートを構成する芯層の発泡シートは独立気泡率が高いものであることが断熱性、機械的強度等の面から好ましいが、独立気泡率が低いものであってもポリカーボネート樹脂フィルムを芯層の少なくとも片面に積層している為、実用的なものとなりうる。例えば独立気泡率が75%未満の発泡シートは真空成形等に使用した場合、気泡が連通している為に真空引きが難しく成形体の角などがシャープに成形できないという金型再現性不良の問題が起こるのに対し、ポリカーボネート樹脂フィルムを積層することでその様な問題も解決できるのである。又、驚くべきことに、シートの断熱性も樹脂フィルムを積層したものは、独立気泡率の高いものに比べてさほど劣らない。更に、独立気泡率の高い発泡シートはシートの厚み、幅等のコントロールが難しいのに対し、独立気泡率の低いものは比較的に厚み、幅、倍率等のコントロールが容易である為、このことを利用することにより本発明の積層発泡シートの生産性も良好となる。
また、発泡シートを構成する気泡形状においては、Xをシート幅方向断面の厚み方向と直交する方向の平均気泡径(mm)、Yをシート押し出し方向断面の厚み方向と直交する方向の平均気泡径(mm)、Zをシート断面の厚み方向の平均気泡径(mm)とした場合、好ましくは1<X/Z≦3、更に好ましくは1.5<X/Z≦3で、好ましくは1<Y/Z≦5、更に好ましくは1.5<Y/Z≦5、しかも(X+Y+Z)/3≧0.1mmの形状を持つ気泡発泡シートである。
気泡の大きさは、(X+Y+Z)/3≧0.1mmから分るように好ましくは平均直径0.1mm以上、更に好ましくは0.2〜0.5mmに形成されている発泡シートである。この押出発泡シートを図1に示すが、図1の(a)は該発泡シートの斜視図、(b)は(a)のAで示される部分の拡大断面図、(c)は(a)のBで示される部分の拡大断面図である。また、図1のX方向、Y方向、Z方向はそれぞれシート幅方向、シート押し出し方向及びシート厚み方向を表し、X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2は個々の気泡のそれぞれの方向における径を表している。
【0013】
発泡シートは前記形状の気泡で形成されている場合、発泡シートで構成される積層前の芯層を170℃で30秒間加熱した際の寸法変化が樹脂押出方向で−30〜0%、特に好ましくは−30〜−3%の範囲であることにより、加熱成形時には積層されるポリカーボネート樹脂フィルムによらず多少縮むから、シートの弛みがないため加熱ムラがなく形の良い成形品を得ることができる。更に、上記加熱条件における該芯層の幅方向の寸法変化が、−10〜−1%、特に−7〜−3%の範囲であることにより加熱ムラ防止の点で好ましい。なお、加熱寸法変化の測定は以下のようにして求める。170×170mmの試験片を作製し、その中央部分に押し出し方向(MD方向)と幅方向(TD方向)に沿って長さ100mmの直線を十字に引く。この試験片を、170±2℃のオーブン内で30秒間熱処理してから前記直線の長さを測定し、下式によって加熱寸法変化を求める。
加熱寸法変化=〔(加熱後の長さmm−100mm)/100mm〕×100この試験を3回行って平均値を各々MD方向及びTD方向の加熱寸法変化とする。尚、上述の通り、発泡シートは前記形状の気泡で形成されていればポリカーボネート樹脂フィルムによらず、前述のシートのあばれ、ドローダウンや成形品のナキ等が発生せず良好な成形性を示すが、厚みが異常に厚いフィルム等のように芯層の収縮しようとする力を阻む特異なものでは、この効果の実現は難しく、通常20〜500μmの厚みの延伸又は無延伸フィルムが好適である。一方、発泡シートの気泡形状が1≧X/Z、1≧Y/Zの場合であっても、表層のポリカーボネート樹脂フィルムを厚み50μm以上のものを使用することにより、ポリカーボネート樹脂発泡積層シートの加熱成形時のシートの自重によるシート中央部の垂れ下がり(ドローダウン)はみられるものの、シートの大きな伸びによって発生するあばれが引き起こす加熱ムラによるナキや破れの問題をある程度解決することができ、更に表層の該フィルムとして延伸フィルムを使用する事により、ナキや破れはもとよりドローダウンを防止することが可能であり、1<X/Z≦3、1<Y/Z≦5の気泡形状を有する発泡シートを使用した時の効果に近づけることができる。尚、X/Z>3、Y/Z>5の場合は、上述の成形品のナキ、シートのあばれやドローダウンは防止できるが、加熱成形品のシートの伸びが悪くなる恐れがある。本発明において、加熱成形の際にポリカーボネート樹脂発泡積層シートが発泡シート単独の場合と同様に上式により求められる加熱寸法変化がMD方向において0〜−30%、TD方向においては−1〜−10%の範囲であることが好ましく、上述の様に芯層の気泡形状や表層の延伸度等によって調整することができる。尚、TD方向、MD方向の加熱時の収縮、成形時の伸びのバランスを考慮すると、表層は二軸延伸フィルムであることが更に好ましい。このことにより1<X/Z≦3、1<Y/Z≦5の発泡シートを芯層とする時と同様、本発明積層シートの加熱成形時に深絞り成形及び多数個取り成形が容易になる。
【0014】
以上に詳記した本発明の積層シートを構成する芯層のポリカーボネート樹脂押出発泡シートは、種々の方法で製造することができる。例えば、原料のポリカーボネートに粘度平均分子量が25000以上で、250℃における溶融張力が2.3g以上のものを使うことで達成可能である。このようなポリカーボネートとしては、三菱ガス化学社製ユーピロンS−1000〔粘度平均分子量26000、溶融張力2.4g(250℃)〕、ユーピロンE−1000〔粘度平均分子量32000、溶融張力6.4g(250℃)〕、ユーピロンE−2000〔粘度平均分子量29000、溶融張力2.6g(250℃)〕等が例示される。このほか、上記以外のポリカーボネートと特定の発泡剤とを組合せることによって達成可能な場合もある。尚、上記溶融張力は東洋精機製作所社製メルトテンションテスターII型を使用しオリフィスとその真下に位置するロードセルと連結しているプーリーとの間隔を250mmとし捲き取り速度10m/min、樹脂押出ピストン押出速度10mm/minで120℃で3時間乾燥させたポリカーボネート樹脂を測定し、ロードセルに検出される値の平均値を採用した。
【0015】
又、1<X/Z≦3、1<Y/Z≦5の気泡形状の芯層を得る為には以上に加えて、押出機から出る樹脂温度の制御、或いは円筒状発泡体の引取り方法改善等で該発泡シートが得られる。すなわち、以下の通りである。
一般に押し出し機のダイス先端から低圧域に押し出された円筒状発泡体は、内部から空気によって膨らませられながらバルーン(円筒状発泡体の径がダイス径からマンドレル径まで拡大される部分)を形成した後に、マンドレルの円柱側面上に引き取られる。そして、ポリスチレン系樹脂発泡体やポリエチレン系樹脂発泡体の製造時には、前記の空気として常温のコンプレッサーの空気を使えば良いが、本発明の発泡シートの基材樹脂はポリカーボネート樹脂であり、ガラス転移点が150℃と高温なために、常温のコンプレッサーの空気ではすぐに円筒状発泡体が固化して引き取り操作がむずかしくなる。しかし、該空気の温度を151〜200℃の範囲内で調整すれば引き取り操作を容易にすることができる。また、引取り操作の際に引取り速度が遅いと、発泡シートを構成する気泡の押出方向への配向が不充分となるから、引取り速度は下記式によって求められる速度より大きくすることが好ましく、この方法によって本発明の目的とする良好なポリカーボネート樹脂押出発泡シートが得られる。
【数1】
【0016】
上記のように、芯層を構成するポリカーボネート樹脂押出発泡シートを製造する場合の原料や発泡剤は限定される場合もあるが、選択使用可能な原料や発泡剤等の範囲について記述すると以下の通りである。
該発泡シート原料として使用されるポリカーボネートは、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリエステルである。そして、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、結晶性が高く高融点の上に、耐熱性、耐候性及び耐酸性に優れているから好適である。このようなポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから誘導されるポリカーボネートが例示される。
【0017】
本発明の積層シートに係る芯層を構成する発泡シート製造の際に使われる発泡剤は、無機発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれも使用可能であるが、押出発泡法の場合は分解型発泡剤のみを使うと発泡倍率の高い発泡体が得られにくいので、揮発性発泡剤を使用するのが好ましい。
又、無機発泡剤としては、二酸化炭素、窒素等が用いられる。
揮発性発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の低級脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の低級脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の低級芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等の脂肪族低級一価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン等の低沸点ハロゲン化炭化水素;等が用いられる。
以上に詳記した発泡剤は、単独又は2種以上混合して使用可能であり、例えば無機発泡剤と揮発性発泡剤のように異なった型の発泡剤の併用も可能である。
又、気泡径調節の為に分解型発泡剤の併用も可能である。
【0018】
発泡剤使用量は発泡剤の種類や所望する発泡倍率によっても異なり、発泡倍率によって該発泡シートの密度が定まるから、主に所望する発泡シートの密度で発泡剤の使用量が定まると云える。そして、本発明の発泡シートは密度0.03〜0.6g/cm3、好ましくは0.06〜0.24g/cm3とするのが望ましいから、この範囲となるように発泡剤を使えばよい。なお、本発明の発泡シート密度が0.03g/cm3未満では成形品の強度が小さすぎるし、密度が0.6g/cm3を超えると断熱性低下や重量増加の上に製造原価も増加する。
発泡シートの密度は0.06〜0.24g/cm3とするのが好ましく、そのために必要な発泡剤量は樹脂100重量部当り揮発性発泡剤では0.5〜10重量部(ブタンを使用した場合)、無機発泡剤では0.2〜3.0重量部(二酸化炭素を使用した場合)程度である。尚、上記発泡シートの密度とは本発明積層シートに係る芯層の密度のことである。
【0019】
本発明の芯層を構成する発泡シートでは、ポリカーボネート樹脂を円滑に発泡させるために、樹脂と発泡剤との溶融混練物中に必要に応じて気泡調整剤を添加することができる。この場合の気泡調整剤としては、タルクやシリカ等の無機粉末、多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの混合物等が好ましい。その添加量は、樹脂100重量部当り0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが良い。0.01重量部より少ないとポリカーボネート樹脂を事実上発泡せしめることが困難となり、一方5.0重量部よりも多いと得られた発泡成形品の物性が低下し、好ましくない。
【0020】
本発明の発泡積層シートの表層を構成するポリカーボネート樹脂としては、前記発泡シートを構成するポリカーボネート樹脂と同様の原料から製造されるものが用いられる。
本発明のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートは、押出しラミネート法、ポリカーボネートフィルムの熱ラミネート法、接着材によるフィルムの接着、共押出し法等により製造することができる。
ラミネート用樹脂、特に共押出押出ラミネートに用いられるポリカーボネート樹脂の分子量は20000未満であることが好ましい。20000以上では共押出又押出ラミネート用としては流動性が悪く、積層体の厚みが不均一になりやすい。
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量はSchnellによって与えられた粘度式
【数2】
(但し、〔η〕は極限粘度であり、Mは粘度平均分子量である。)を基に塩化メチレン(20℃)を溶媒として浸透圧法によって求められる値である。尚、〔η〕はオストワールド粘度計で比粘度ηspを樹脂濃度を変えて測定し各濃度C〔g/100cm3〕とηsp/Cとをグラフにプロットし、下記の値を求める。
【数3】
熱ラミネート用フィルムとしては、前述の通り、二軸延伸、一軸延伸、無延伸のどれを用いても良く成形性の面から好ましくは延伸フィルム特に二軸延伸フィルムが良い。
【0021】
ラミネート又は共押出しするポリカーボネート層の厚さは、20μm〜500μmとすることが好ましく、50〜200μmが特に好ましい。ポリカーボネート層の厚さが20μm未満の場合、ピンホールが発生したり、サージング(吐出の微妙な変動)による厚みむらが発生したりして、安定したラミネート又は共押出し層が得られにくく、又、加熱成形時、独立気泡率の低い発泡シートに積層した時には、真空成形時穴があいてしまう等の問題があり、一方500μmをこえるとシートの柔軟性に欠ける。
また、発泡積層シートの全体の厚みは0.5mm〜10mmの範囲が好ましく、更に1mm〜5mmの範囲が好ましい。シート厚みが0.5mmよりも薄いと成形品に強度がなく、10mmを超えると金型成形時、加熱シート内部まで平均に加熱する為に強力な遠赤外線加熱ヒーター等を使用する等の工夫が必要である。
【0022】
本発明の積層シートを構成する芯層及び/又は表層には、難燃剤、熱安定剤、耐候性向上剤、着色剤等のように、通常の発泡シート等に添加される公知の添加剤を添加することができる。
また、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の無機炭酸塩、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム等の無機亜硫酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の無機硫酸塩、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の無機酸化物、タルク、クレー、カオリン、ゼオライト等の粘度又は天然鉱物等の無機充填剤を5〜30重量%添加してもよい。
【0023】
以上のようにして得られたポリカーボネート樹脂発泡積層シートは、ポリカーボネート樹脂本来の優れた特性を有する発泡積層シートである。そしてその芯層の発泡シートの両面又は一方の面に、該発泡シートとの接着性が良いポリカーボネート樹脂からなる表層を積層したものであるから、機械的強度は極めて優れたものである上、加熱成形に際して芯材の発泡シートの独立気泡率に左右されず真空引きが可能であり、金型再現性、成形性が良好で、特に深絞り加工性が優れている。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
実施例1
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.53モル/kg樹脂、押出機中より圧入し、樹脂温度200度で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なおサーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは、0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.5m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率80%、芯層密度0.12g/cm3、平均セル径0.34mm、シート厚み2.1mm、シート幅640mmとなり、このシートの片面に厚さ80μmとなるようにビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量18000)を押出ラミネートし、表1に示す発泡積層シートを得た。そのシートを多数個取りの熱成形機を用いて上面直径150mm、下面直径110mm、深さ90mmの丼型成形物に真空成形し、成形加熱時の、シートのあばれ、深絞り性、金型再現性、ドローダウン性を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
実施例2
実施例1と同様な発泡シートを芯層に、厚さ100μmの二軸延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量30000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0027】
実施例3
実施例1と同様な発泡シートを芯層に、厚さ120μmの無延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量25000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
実施例4
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.55モル/kg樹脂、押出機中より圧入し、樹脂温度196℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なおサーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは1.2mmである。また円筒状発泡体の吐出量は51kg/hr、該発泡体の引取速度は6.3m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率15%、芯層密度0.08g/cm3、平均セル径0.61mm、シート厚み4.0mm、シート幅640mmとなり、このシートの任意の片面に厚さ150μmの二軸延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量30000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0029】
実施例5
実施例4と同様な発泡シートを芯層に、厚さ100μmの無延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量25000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
実施例6
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.53モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度200℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.4m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率80%、芯層密度0.12g/cm3、平均セル径0.30mm、シート厚み2.0mm、シート幅640mmとなり、このシートの任意の片面に厚さ40μmの二軸延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量30000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例7
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.53モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度201℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は53kg/hr、該発泡体の引取速度は6.8m/分とした。その際、ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量15000)を共押出して、厚さ40μmの表層を片面に設けた。
この発泡シートは、独立気泡率85%、芯層密度0.11g/cm3、平均セル径0.47mm、シート厚み2.0mm、シート幅640mmとなり、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
実施例8
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.43モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度203℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は5.0m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率40%、芯層密度0.15g/cm3、平均セル径0.31mm、シート厚み4.0mm、シート幅640mmとなり、このシートの任意の片面に厚さ70μmの二軸延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量30000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
実施例9
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.50モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度202℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は55kg/hr、該発泡体の引取速度は6.7m/分とした。その際、ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量10000)を共押出して、厚さ50μmの表層を両面に設けた。
この発泡シートは、独立気泡率80%、芯層密度0.10g/cm3、平均セル径0.50mm、シート厚み2.0mm、シート幅640mmとなり、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
実施例10
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを1.1モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度195℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.0m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率80%、芯層密度0.06g/cm3、平均セル径0.65mm、シート厚み5.0mm、シート幅640mmとなり、このシートの任意の片面に厚さ80μmの二軸延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量29000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
実施例11
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.50モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度210℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.4m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率10%、芯層密度0.10g/cm3、平均セル径0.30mm、シート厚み2.2mm、シート幅640mmとなり、このシートの任意の片面に厚さ80μmの二軸延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量29000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
実施例12
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.53モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度210℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.6m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率10%、芯層密度0.11g/cm3、平均セル径0.51mm、シート厚み2.3mm、シート幅640mmとなり、このシートの任意の片面に厚さ150μmにビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量18000)を押出ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
実施例13
実施例12と同様な発泡シートを芯層に、厚さ80μmの無延伸ポリカーボネート樹脂フィルム(粘度平均分子量25000)を熱ラミネートし、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.53モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度200℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.2m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率85%、芯層密度0.10g/cm3、平均セル径0.53mm、シート厚み1.9mm、シート幅640mmとなり、このシートに表層を設ける事なく、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
比較例2
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.53モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度200℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.5m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率80%、芯層密度0.11g/cm3、平均セル径0.33mm、シート厚み2.0mm、シート幅640mmとなり、このシートに表層を設ける事なく、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
比較例3
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.55モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度213℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.0m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率15%、芯層密度0.13g/cm3、平均セル径0.34mm、シート厚み1.7mm、シート幅640mmとなり、このシートに表層を設ける事なく、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
比較例4
ビスフェノールAよりなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29000)100重量部に対し、核剤としてタルク0.05重量部を加えた原料樹脂を押出機に供給し押出機中で、加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソペンタンを0.55モル/kg樹脂、押出機中より圧入し樹脂温度212℃で押出し、円筒状発泡体の内部及び外部を80℃の熱風で加熱しながらバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引き取ってから押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラダイ直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また円筒状発泡体の吐出量は50kg/hr、該発泡体の引取速度は6.0m/分とした。この発泡シートは、独立気泡率15%、芯層密度0.13g/cm3、平均セル径0.35mm、シート厚み1.8mm、シート幅640mmとなり、このシートに表層を設ける事なく、実施例1と同様に成形評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【表1−(1)】
【表1−(2)】
【0043】
〔評価基準〕
・成形加熱時のシートのあばれ
○ 良好
△ 少々あばれるが成形できる
× 大きくあばれ、成形できない
・深絞り成形性
○ 良好
△ 少々のナキ等があるが成形できる
× やぶれて成形できない
・金型再現性
○ 良好
△ 型の角が少々あまくなるが成形できる
× ほとんど型が再現できない
・成形加熱時のシートのドローダウン
○ 良好
△ 少々ドローダウンするが成形に影響はない
× 大きくドローダウンし成形できない
【0044】
〔独立気泡率の測定方法〕
独立気泡率Fc(%)の測定は空気比較式比重計〔930型 東芝・ベックマン(株)製〕を使用しASTM D2856に(エアピクノメータ法)と同様の方法によりVxを計測して下式により求めることができる。但し、サンプルサイズ、見掛け容積Va(cm3)は以下の通りとする。
・サンプルサイズ:表層を除く芯層を25mm角に切り、積み重ねて約30mmになるようにする。
・見掛け容積Va(cm3):上記積み重ねサンプルを構成する各々の芯層をノギスにより10μmの単位まで測定し容積を求める。
Fo=〔(Va−Vx)/Va〕×100
Fc=100−Fo
Fo(%):連続気泡率
Vx(cm3):エアピクノメーター法により求められるサンプルの実容積〔加熱寸法変化の測定方法〕
170×170mmのポリカーボネート樹脂発泡積層シート試験片を作製し、その中央部分に流れ方向(MD)と幅方向(TD)に沿って長さ100mmの直線を十字に引く。この試験片を170℃のオーブン内で30秒間処理してから前記直線の長さを測定し、下式によって加熱寸法変化を求める。
加熱寸法変化=〔(加熱後の長さmm−100mm)/100mm〕×100この試験を3回行って平均値を各々MD方向及びTD方向の加熱寸法変化とする。
〔平均気泡径X、Y、Zの測定方法〕
発泡積層シート(比較例においては発泡シート)の幅方向及び押し出し方向断面を顕微鏡にて拡大し図1(b)、(c)に示すような拡大断面図を得る。次に該断面図上の全ての気泡(少なくとも50個以上の気泡)について図1(d)に示すように最大値をもって気泡径とし、X1…n、Y1…n、Z1…n(nは50以上)の測定を行ない平均気泡径X、Y、Zを求める。但し、拡大断面図上に50個以上の気泡が存在しない場合は他の測定点で更に測定を行ない併せて50個以上の気泡におけるX、Y、Zを求める。又、気泡が連通している場合、円または楕円の形状を維持しているものについては気泡径を求め、その他のものについては除外するものとする。
【0045】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂発泡積層シートは、ポリカーボネート樹脂本来の優れた特性を有し、機械的強度、金型再現性及び深絞り加工性に優れたものであり、特に真空成形及び/又は圧空成形に好適なものである。
また、本発明のポリカーボネート樹脂発泡積層シートは、芯材の発泡シートの気泡を前記の如く、特定のものとすることにより、発泡シートは成形時のドローダウンも防ぐことができ、均一加熱が容易で成形性に特に優れたものとなる。
更に本発明のポリカーボネート樹脂発泡積層シートを構成する芯層及び表層のそれぞれのポリカーボネート樹脂を前記特定の分子量のものとすることによって、加熱加工性に優れ、積層シートの厚みも均一となる他、積層作業性、特に共押出容易となり、又、ポリカーボネート樹脂のリサイクル原料を表層又は芯層として使用する時の材料選択の幅も拡がる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)、(c)、(d)は各々本発明の発泡積層シートにおける発泡層の気泡形状を説明する図である。
【符号の説明】
X シート幅方向
Y シート押し出し方向
Z シート厚み方向
Claims (4)
- ポリカーボネート樹脂押出発泡シートを芯層とし、少なくとも片面にポリカーボネート樹脂フィルムよりなる表層を積層したポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートであって、前記芯層が、下記式を満足するポリカーボネート樹脂押出発泡シートであることを特徴とするポリカーボネート樹脂押出発泡積層シート。
1<X/Z≦3
1<Y/Z≦5
(X+Y+Z)/3≧0.1mm
〔但し、式中、Xはシート幅方向断面の厚み方向と直交する方向の平均気泡径(mm)を、Yはシート押し出し方向断面の厚み方向と直交する方向の平均気泡径(mm)を、Zはシート断面の厚み方向の平均気泡径(mm)を表す〕 - ポリカーボネート樹脂押出発泡シートを芯層とし、少なくとも片面にポリカーボネート樹脂フィルムよりなる表層を積層したポリカーボネート樹脂押出発泡積層シートであって、前記ポリカーボネート樹脂発泡積層シートを170℃、30秒間加熱した際の加熱寸法変化がMD方向において0〜−30%、TD方向においては−1〜−10%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シート。
- 前記表層であるポリカーボネート樹脂フィルムの厚さが20μm〜500μmであり、前記芯層と前記表層とから構成されるポリカーボネート樹脂押出発泡積層シート全体の厚さが1mm〜5mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シート。
- 前記芯層を構成するポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が25000以上であり、前記表層を構成するポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が20000未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂押出発泡積層シート。
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