JP3587593B2 - ポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、押出発泡性を改善することにより、外観及び成形性に優れたポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐老化性、耐水性等が高く、電気的及び機械的性質にも優れているから、自動車や建造物の内装材、包装材、各種容器等への用途展開が期待されている。また、耐熱性が要求される電子レンジ用やレトルト食品用の容器材料としては特に有望である。このように利点が多いが、発泡体を得ようとした場合、ポリカーボネート樹脂の流動開始温度がポリスチレン等のそれより大幅に高い上に、ポリカーボネート樹脂の発泡温度付近での溶融粘度は、発泡体の汎用基材樹脂であるポリスチレン等に比べて非常に高く、樹脂自体の特性として溶融張力が低く、押出発泡性、シーティング加工性が悪いから、通常の押出発泡法で所望の発泡体を得るのは困難である。そのため、溶解度係数6.5以上の有機物を発泡剤とする方法(特開平2−261836号公報)、沸点50〜150℃のイソパラフィンを発泡剤とする方法(特公昭47−43183号公報)等が提案されている。
【0003】
また前記した押出発泡法の他、シート状のポリカーボネートに発泡剤を含浸させて加熱発泡させる方法、低級アルキルベンゼンと低沸点溶剤でゲル化したポリカーボネートを加熱発泡させる方法(特公昭46−31468号公報)等も提案されている。しかし、これらの方法で製造される発泡シートは、外観、成形性が不十分であり、更に発泡倍率、厚み、幅、セル径の調整が困難なため前記した用途への展開は難しい。
そのため、ポリカーボネート発泡シートにおいて、外観の改良、成形性の改善や倍率、厚み、幅、セル径の調整が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来押出発泡が難しいとされていたポリカーボネート樹脂を基材として前記特性を全て満足するポリカーボネート系樹脂押出発泡体を得る製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂100重量部に、ポリオレフィン系樹脂0.5重量部以上、7重量部未満をブレンドした樹脂組成物を、発泡剤と共に溶融、混練し、次いで押出発泡することを特徴とするポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法が提供され、特に、前記樹脂組成物が、250℃における溶融張力の値が3g以上のものであり、かつ同温度における溶融粘度が4.3×10 3 〜1.4×10 4 a ・s(4.3×10 4 〜1.4×10 5 Poise)のものであることを特徴とする前記ポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法が提供され、更に、前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が20000以上であり、前記ポリオレフィン系樹脂が低密度ポリエチレンであることを特徴とする前記ポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法が提供される。
【0006】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂について、次の性質に着目した。
ポリカーボネート樹脂はポリスチレン等の樹脂に比べて、発泡温度付近の溶融粘度が非常に高く、押出機の圧力が極端に上昇するため、押出発泡が困難である。しかもそのときの溶融張力がポリスチレン等の樹脂に比べて非常に小さいため、一般に発泡で使用される樹脂とは異なり発泡時ダイスリップ口からシートが吐出される時、発泡圧力に絶え切れず発泡セルが破壊され、発泡倍率は不十分でセル径は不均一なものになる。またそのように樹脂の溶融張力が小さいため、ダイスリップ口から吐出された発泡シートを引取り、シーティングするためにマンドレルに掛ける時に、シートの裂け、ヒビ割れ等が起こるためシーティングが困難で、このような原因で引取りスピードを自由に変えられないため、表面状態が良好な様々な幅、厚みのシートを得ることが困難である。更にキメを細かくし外観美麗なシートを得ようとすると、ダイスリップ口から吐出されたシートはセル膜が薄くなるためにますます裂けやすくなりシーティングが困難になる。
【0007】
このようなポリカーボネート樹脂の特性を改善するために多くの研究を重ねた結果、その過程で、溶融粘度の比較的高い樹脂が、ダイス内部での保圧効果が高く、また溶融張力が比較的高いため発泡時のセル破壊が抑制されることが分かった。しかし一方で、溶融粘度が高い為、押出機の圧力が非常に上昇し適正発泡温度での押出が困難となり、対策として発泡温度を高く設定すれば樹脂温度が高くなるために発生するセル破壊等により、得られる発泡体の物性に限界があることが明確になった。そこで高い溶融粘度の原料に他樹脂をブレンドすることによって溶融張力の値を低下させずに溶融粘度を低下できないかを検討した。そして、ポリカーボネート樹脂へのABS、PET、PS等、また各種汎用樹脂のブレンドの研究を進めていったところ、驚くべきことにポリオレフィン系樹脂、なかでもポリエチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂100重量部に、0.5重量部以上、7重量部未満ブレンドすることにより、ポリカーボネート樹脂の発泡温度付近での溶融粘度を低下させ、かつその時の溶融張力が飛躍的に増大でき、その結果、前記のようなポリカーボネート樹脂の欠点は大幅に改善され、キメが均一で細かく、密度、セル径、厚み、シート幅が所望のものであって、外観、成形性に優れたポリカーボネート系樹脂押出発泡体を得ることが可能となった。
【0008】
先ず、本発明によるポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法の特徴を説明するために、押出発泡による発泡シートの一般的製造方法を以下に記述する。
▲1▼押出機内に樹脂と気泡調整剤等の添加剤とを仕込み、該機内で加熱・溶融・混練する工程
▲2▼混練物に所望量の発泡剤を圧入して混練物に発泡剤を練り込む工程
▲3▼発泡剤が練り込まれている混練物を、所定温度で押出機先端のサーキュラーダイスから低圧部に押出し、これを円柱形状の樹脂冷却装置(マンドレル)の表面上に引取って円筒状発泡体を形成させてから、押出方向に切り開いてシート状発泡体とする工程
を経ることにより製造される。
【0009】
ポリスチレン等の樹脂であれば、上記のようなプロセスで問題無く押出発泡が可能である。
一方、ポリカーボネート樹脂の場合、所定温度(発泡温度)での溶融粘度が、ポリスチレン等の樹脂に比べて非常に高くなるために、通常押出機では、圧力上昇により押出困難である。また該温度での溶融張力が、ポリスチレン等の樹脂に比べて非常に小さいため、先端のサーキュラーダイスから低圧部に押出され発泡するときに形成されたセルが発泡圧力に絶え切れず破壊してしまう。その結果、所望の発泡倍率のシートが得られず、セル径も不均一で表面状態の悪いシートしか得られない。また同様に樹脂の溶融張力の関係で、サーキュラーダイスから低圧部に押し出されたシートを、マンドレル表面上に引き取る場合にもシートが引取り時の張力に耐えられず、シートの裂け、表面のヒビ割れが起こってしまい良好なシートは得られにくい。このとき通常、シートの厚みは、押し出されたシートの引取りスピードで調整するため、薄いシートを得るため引取りスピードを早くすると表面に裂け、ヒビ割れが起こり、厚いシートを得るため引取りスピードを遅くするとサーキュラーダイスとマンドレルの間に形成されるバルーンが安定せず、発泡シートがマンドレルに密着せず表面平滑なシートが得られない。従って、種々の厚みをもつ外観良好なシートを得ることが難しい。その上、外観美麗なシートを得ようとして発泡核剤(タルク等の無機物粉体)を増量しセル径を小さくしようとすると発泡セルの壁面が薄くなり、ダイスを出たばかりの発泡直後のシートの伸びが悪くなり、ますますマンドレルにシートを掛けることが困難になってしまう。そのため表面状態が悪く、シート幅、厚み、倍率においても不十分な発泡シートしか得ることが出来ない。従って、外観はデコボコしていて、セルも十分配向された良好なものではないため、加熱成形時に張り戻しがなく垂れ下がり(ドローダウン)が発生してしまい成形性に劣るシートしか得ることが出来ない。
【0010】
本発明のポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法においては、特定粘度のポリカーボネート樹脂100重量部にポリオレフィン系樹脂を0.5重量部以上、7重量部未満、好ましくは1重量部以上、5重量部未満ブレンドすることにより、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を低下させ、その結果、押出機の負荷を軽減し、適正な発泡温度での押出発泡が可能となり、また、ポリカーボネート樹脂の発泡温度付近での溶融張力が大幅に増大するために、先端のサーキュラーダイスから低圧部に押し出され発泡するときに形成されたセルが、発泡圧力に絶えることが出来るため発泡セルは破壊されずに形状を維持することが出来る。そのため、セル形状が均一で所望の発泡倍率を持つシートを得ることができる。その上、サーキュラーダイスから押し出されたシートをマンドレル表面上に引き取るときも、このポリカーボネート樹脂の溶融張力が十分に高いため、シートは引取り時の張力に耐えることができ、シート表面は裂け、ヒビ割れのない表面平滑なものが得られる。その結果、シートの厚みは引取りスピードにより自由に調節することが出来、0.5〜10mmの表面状態良好なシートが得られる。さらに、外観美麗なシートを得ようとして、発泡核剤を増量してキメを細かくして、発泡セルの壁面が薄くなっても発泡直後のシートは引取り時の張力に耐えることが出来るので、外観美麗なキメの細かいシートを得ることができる。その結果、得られる発泡シートは、キメが細かく、表面が滑らかで外観がよく、発泡体としての緩衝性に優れ、発泡引取り時に十分な張力がかけられるから、配向されたセルが形成され成形時ドローダウンの少ない成形しやすいシートを得ることができる。以上、押出発泡体が発泡シートの場合について説明したが、本発明の発泡体は、シートの他、板状、ブロック状、柱状のものであってもよく、外観良好なものが得られる。
【0011】
本発明のポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法においては、例えば、主原料のポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量が20000以上、好ましくは25000以上で、250℃における溶融張力が2.0g以上、好ましくは2.3g以上のものを使用する。このようなポリカーボネート樹脂としては、三菱ガス化学社製ユーピロンS−1000〔粘度平均分子量26000、溶融張力2.4g(250℃)〕、ユーピロンE−1000〔粘度平均分子量32000、溶融張力6.4g(250℃)〕、ユーピロンE−2000〔粘度平均分子量29000、溶融張力2.6g(250℃)〕等が例示される。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が20000より低いものは、溶融張力が小さすぎてポリオレフィン系樹脂をブレンドしても良好な発泡体を得ることが困難となる恐れがある。
【0012】
本発明の押出発泡体の主原料として使用される前記ポリカーボネート樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリカーボネートである。そして、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、結晶性が高く高融点の上に、耐熱性、耐候性及び耐酸性に優れているから好適である。このようなポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから誘導されるポリカーボネートが例示される。
【0013】
本発明の製造方法において使用される副原料であるポリオレフィン系樹脂としては、重量平均分子量50000〜250000のもの、好ましくは重量平均分子量100000〜250000のものを使用する。分子量が50000より低いとポリカーボネート樹脂の粘性が著しく低下し好ましくなく、また250000より高いとポリカーボネートとの相溶性が悪くなり好ましくない。
このようなポリオレフィン系樹脂としては、LDPE,LLDPE,HDPE,VLDPE,PP,エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられ、分子構造中に長鎖分岐を有する点から特にLDPEが好ましい。また、押出発泡時のスクリューによる剪断等によるポリオレフィン系樹脂の低分子量化を考慮するとLDPE、LLDPE、HDPE、VLDPE等のポリエチレン系樹脂が好ましい。また市販品としては、日本ユニチカ(株)社製NS−1等の比較的高分子量の低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0014】
ポリカーボネート系樹脂の押出発泡において、押出発泡温度を上まわる250℃での本発明における樹脂組成分の溶融張力は、3g以上のものが好ましく、4g以上のものが特に好ましい。また、同温度における溶融粘度は4.3×10 3 〜1.4×10 4 a ・s(4.3×10 4 〜1.4×10 5 Poise)のものが好ましく、4.5×10 〜7.4×10 a ・s(4.5×10 4 〜7.4×10 4 Poise)のものが特に好ましい。本発明においては、このような優れた押出発泡性を付与するために、前記ポリカーボネート樹脂100重量部に、前記ポリオレフィン系樹脂を0.5重量部以上、7重量部未満、好ましくは1重量部以上、5重量部未満ブレンドする。0.5重量部より少ないと、基材樹脂のポリカーボネート樹脂の粘性に対して十分な改善効果が得られない。また7重量部以上であると、溶融粘度が低下しすぎると共に、溶融張力も低下し、その上材料強度の低下が顕著となる。
【0015】
本発明で云うブレンドとは、広義のブレンドであり、ドライブレンド等の一般的ポリマーブレンドをすべて含み、さらにブロック共重合、グラフト共重合を伴うものも含んでいる。また溶融混練方法に関しては、何等限定されず、各種の方法で行なうことができるが、混練性、生産性などの点から、例えば二軸押出機による一般的ポリマーブレンドが好ましい。
【0016】
本発明の発泡体製造の際に使われる発泡剤は、無機発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれも使用可能であるが、押出発泡法の場合は分解型発泡剤を使うと発泡倍率の高い発泡体が得られにくいから、無機発泡剤や揮発性発泡剤を使用するのが好ましい。
揮発性発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の低級脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の低級脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の低級芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等の脂肪族低級一価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;クロロメチル、クロロエチル、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン等の低沸点ハロゲン化炭化水素;等が、また無機発泡剤としては、炭酸ガス、窒素ガス等の無機ガス等が例示される。
以上に詳記した発泡剤は、単独又は2種以上混合して使用可能であり、例えば無機発泡剤と揮発性発泡剤のように異なった型の発泡剤の併用も可能である。
【0017】
発泡剤使用量は発泡剤の種類や所望する発泡倍率によっても異なり、発泡倍率によって該発泡体の密度が定まるから、主に所望する発泡体の密度によって発泡剤の使用量を決定する。
本発明で得られた押出発泡体は、密度0.04〜0.4g/cmが好ましく、特に好ましくは0.06〜0.24g/cmである。なお、本発明の発泡体密度が0.04g/cm未満ではポリカーボネート樹脂本来の特性である強度が低下し、密度が0.4g/cmを超えると発泡体特性が低下や重量増加の上に製造原価も増加する。
発泡体の密度は前記したように0.06〜0.24g/cmとするのが好ましく、そのために必要な発泡剤量は樹脂100重量部当り揮発性発泡剤では0.5〜10重量部、無機発泡剤では0.2〜3.0重量部程度である。
【0018】
また、本発明の製造方法で得られた発泡体の平均セル径は0.07〜0.50mmであり、0.1〜0.3mmのものが好ましい。
このような平均セル径を有する発泡体は、外観において極めて優れている。該径が0.07mmより小さい場合、成形性が悪くなり好ましくなく、また、0.5mmより大きい場合、表面平滑性、外観が不良となって好ましくない。
【0019】
本発明の発泡体では、ポリカーボネート樹脂を円滑に発泡させるために、樹脂と発泡剤との溶融混練物中に必要に応じて気泡調整剤を添加することができる。この場合の気泡調整剤としては、タルク、シリカ、マイカ、雲母等の無機粉末、多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの混合物等が好ましい。これらの気泡調整剤は1種または2種以上併用して用いてもよい。その添加量は、樹脂100重量部当り0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが良い。0.01重量部より少ないと十分な気泡調整効果が得られず、一方5重量部より多いとセル径が小さくなりすぎて得られる発泡成形品の物性、成形性が低下するため好ましくない。
【0020】
また本発明の発泡体には、難燃剤、熱安定剤、耐候性向上剤、着色剤等のように、通常の発泡体に添加される公知の添加剤を添加することができる。
【0021】
本発明の製造方法で得られた押出発泡体の厚みは、0.5〜10mm、好ましくは0.5〜7mmである。0.5mmより薄いと、発泡体の強度の不足によりシーティングが困難となり、また10mmより厚いと押出が困難であり、成形時の加熱の際に発泡体内部まで平均して加熱できず、熱成形が難しく用途が限定される。
【0022】
以上のように本発明の製造方法で得られたポリカーボネート系樹脂押出発泡体は、成形性が良い上に、ポリカーボネート樹脂本来の特性、即ち、耐熱性、耐老化性、耐水性、耐衝撃性と、更に優れた柔軟性、外観とを兼ね備えた押出発泡体である。
【0023】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0024】
実施例1
ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量25000、密度1.2g/cm、250℃での溶融張力2.2g)100重量部に、LDPE(密度0.920g/cm、融点111℃、MI0.3g/10分[JIS K6760(条件4)])1重量部を、φ47二軸押出機を用いて溶融・混練・ペレタイズした。これに気泡調整剤としてタルク0.02重量部を加え、これを押出機内で加熱・溶融・混合してから、n−ペンタンを混合樹脂に対し0.64モル/kg(樹脂)となるように押出機内に圧入し、表−1(1)に示す樹脂温度で押出機先端のサーキュラーダイスから溶融樹脂を押出、管状発泡体の内部、外部から常温エアー吹くことによりバルーンを形成させ、これを直径200mmのマンドレルで引取ってから、押出方向に沿って切り開いてシート状発泡体を得た。なお、サーキュラーダイス直径は65mm、ダイスクリアーは0.7mmである。また、管状発泡体の吐出量は50kg/hrとし、引取り速度は5.5m/minとした。
得られた発泡シートの密度等の物性を表1−(1)に示す。
【0025】
実施例2
ブレンドするLDPEの量を3重量部とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを作製した。得られた発泡シートの密度等の物性を表1−(1)に示す。
【0026】
実施例3
ブレンドするLDPEの量を4.5重量部とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを作製した。得られた発泡シートの密度等の物性を表1−(1)に示す。
【0027】
実施例4
ブレンドするポリエチレン系樹脂をLLDPE(分子量89300、密度0.928g/cm、融点122℃、MI1.5g/10分〔JISK6760(条件4)〕)、ブレンド量を3重量部とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを作製した。得られた発泡シートの密度等の物性を表1−(1)に示す。
【0028】
実施例5
ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量32000、密度1.2g/cm、250℃での溶融張力6.4g)100重量部に対し、LDPEのブレンド量を4.5重量部とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを作製した。得られた発泡シートの密度等の物性を表1−(1)に示す。
【0029】
比較例1
ブレンドするLDPEの量を7重量部とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを作製した。その結果、ブレンドした原料樹脂組成物の粘性が低すぎ、ダイス部分での保圧が困難で発泡、シーティングが困難であった。得られた発泡シートの物性を表1−(2)に示す。
【0030】
比較例2
ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量32000、密度1.2g/cm、250℃での溶融張力6.4g)100重量部に対し、LDPEのブレンド量を7重量部とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを作製した。得られた発泡シートの密度等の物性を表1−(2)に示す。
【0031】
比較例3
押出原料を実施例1に示されるポリカーボネート樹脂単体とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを作製した。その結果、樹脂温度207℃では樹脂の粘性が高すぎ適性発泡温度での押出が困難であった。また樹脂温度215℃でも溶融張力が十分でないため、得られた発泡シートは、発泡倍率が低く、セル径が大きく、セル形状は不均一であった。また、外観には凹凸があり、引取り張力に発泡直後のシートが絶え切れずヒビ割れのあるものであった。その他、このようにして得られたシートは、十分な配向がかかっていないので、加熱成形時に垂れ下がり(ドローダウン)が発生し成形困難だった。得られた樹脂温度215℃で得られた発泡シートの物性を表1−(2)に示す。
【0032】
比較例4
押出原料として、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量32000、密度1.2g/cm、250℃での溶融張力6.4g)100重量部単体を用いた以外は実施例5と同様にして発泡シートを作製した。得られた発泡シートは、比較例3と同様良好なものではなかった。得られた発泡シートの密度等の物性を表1−(2)に示す。
【0033】
実施例及び比較例の各発泡シートの成形評価及び物性評価は、以下の基準で行なった。
Figure 0003587593
上記条件で図1に示される装置(L=300mm、L=130mm、L=450mm、θ=40°)でロードセルに記録される荷重(g)を溶融張力とした。
〔押出機負荷〕
発泡樹脂温度を205℃、ダイスクリアーを0.7mmの条件下における押出機ダイス圧力を測定し以下の基準で評価した。
○:150kg/cm(G)未満
△:150〜200kg/cm(G)
×:200kg/cm(G)超
〔平均セル径及びセル形状〕
顕微鏡(×20)により発泡体厚み方向断面を得る。得られた拡大断面より図2に示すようにセルの最大径を代表径として少なくとも100個以上のセルについて代表径の測定を行ないその平均値を求め平均セル径とした。
また、セル形状については該拡大断面を観察し、平均セル径±20%の範囲内の代表径を有するセル数が全体セル数の60%以上の場合は○、60%未満の場合は×とした。
〔外観〕
得られた発泡体の表面を目視により観察し、以下の基準で評価した。
○:シートが平滑で、表面に艶がある
△:シート表面に細かい凹凸がある
×:シート表面に凹凸があり、艶がない
〔成形性〕
熱成形時のドローダウン、アバレについて以下の基準で評価した。尚、成形温度は実施例、比較例で得られた各発泡体に最適な105〜120℃の加熱温度条件で行なった。
○:ドローダウン、アバレが発生しない
△:少々ドローダウン、アバレが発生するが成形可能
×:ドローダウン、アバレにより成形が困難である
尚、本明細書中、PCはポリカーボネート樹脂、LDPEは低密度ポリエチレン、LLDPEは直鎖状低密度ポリエチレン、HDPEは高密度ポリエチレン、VLDPEは超低密度ポリエチレンを各々表わす。
【0034】
【表1−(1)】
Figure 0003587593
【0035】
【表1−(2)】
Figure 0003587593
【0036】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法によれば、ポリカーボネート樹脂100重量部に、ポリオレフィン系樹脂0.5重量部以上、7重量部未満をブレンドすることによって、ポリカーボネート樹脂の耐熱性、機械的性質など優れた特性を失わず、溶融粘度、溶融張力等の押出発泡性において、驚くべき樹脂の改質が可能となり、押出機に高い圧力負荷を与えることなくポリカーボネート系樹脂の押出発泡が可能となる。その結果、押出発泡性が大幅に改善され、表面状態が滑らかで外観極めて良好な発泡体を得ることが可能である。
また、このように樹脂の改質により、発泡体に十分な配向をかけることができるため、加熱成形時ドローダウンが少なく良好な成形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融張力の測定を説明する図である。
【図2】セル径の代表径を説明する図である。

Claims (3)

  1. ポリカーボネート樹脂100重量部に、ポリオレフィン系樹脂0.5重量部以上、7重量部未満をブレンドした樹脂組成物を、発泡剤と共に溶融、混練し、次いで押出発泡することを特徴とするポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法。
  2. 前記樹脂組成物が、250℃における溶融張力の値が3g以上のものであり、かつ同温度における溶融粘度が4.3×10 3 〜1.4×10 4 a ・s(4.3×10 4 〜1.4×10 5 Poise)のものであることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法。
  3. 前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が20000以上であり、前記ポリオレフィン系樹脂が低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリカーボネート系樹脂押出発泡体の製造方法。
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