JP2000006203A - 光情報記録媒体用射出成形金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 中心穴を有さない光情報記録媒体においても
効率的に生産することのできる光情報記録媒体用射出成
形金型を提供する。 【解決手段】 固定側キャビティプレート１のキャビテ
ィ側表面に、バルブゲートシステム４と共に樹脂流入用
ゲートを形成するゲートランド８を突出して設ける。ゲ
ートランド８のキャビティ側表面からの突出の高さは、
情報記録信号形成用スタンパー９の厚みと同一とする。
スタンパー９にはゲートランド８と嵌合する穴を形成
し、その穴とゲートランド８とを嵌合させてスタンパー
９を固定側キャビティプレート１のキャビティ側表面に
設置する。これによって、ゲート部も含め均一で平坦な
キャビティ表面が形成される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、光情報記録媒体、
特に、中心穴を有さない光ディスク、カード形状の光情
報記録媒体の成形に好適な射出成形金型に関する。そし
て、この発明は、光情報記録媒体の基板表面の平滑性を
向上させた成形を可能とする射出成形金型を提供するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】光情報記録媒体の成形金型においては、
情報信号等の記録部分の形状が極めて微細で通常の金型
加工技術では加工できず、また、その信号パターンは頻
繁に交換されるために、別途信号部の微細加工を施され
たスタンパーと称する２００〜３００μｍ程度の厚みの
薄いプレートを一般的に金型の固定側表面に取り付け、
スタンパー上のその微細形状を成形基板に転写し成形す
る構造となっている。

【０００３】従来の一般的な光情報記録媒体であるＣ
Ｄ、ＭＯ、ＤＶＤなどの光ディスクは、全て回転の基準
となる中心穴を有しており、さらに、中心穴より信号開
始部までの間はクランピングエリアと呼ばれるスペース
が存在する。そのため、記録信号を形成するためのスタ
ンパーには、多くの場合クランピングエリア外周に合致
する程度の大きな穴が開けられている。光ディスクの成
形基板の中心穴とスタンパー内周穴との間のスペースを
利用して、樹脂流入用のゲート、成形基板取り出しのた
めの突き出し機構、さらにはスタンパーを金型に位置規
制し固定する機構などの射出成形金型に不可欠な機能が
設けられている。

【０００４】しかし、中心穴を有さないディスクもしく
はカード形状の光情報記録媒体においては、前述の光デ
ィスクのように中心部を利用して射出成形金型に必要な
機構を設けることは不可能である。さらに、光情報記録
媒体は透明性と強度を要求されるために、一般的にはポ
リカーボネイト等のあまり流動性の良くない樹脂を使用
することが多い。また、基板厚みも０．５〜０．８ｍｍ
程度と非常に薄いのが現状であるうえ、その機能面より
表面の平滑性を損なうようなゲート位置や形状は取るこ
とはできず、キャビティへの樹脂充填の均一性や流動性
の向上を図ることが難しい。

【０００５】このような表面性を重視しかつ厚みの薄い
カード形状の成形品の例としてはＩＣカード基板などが
ある。しかし、一般的に図４に示すように、樹脂はスプ
ルー１９を経由しカード基板１７の一辺の一部よりサイ
ドゲート１８により基板の厚み方向と垂直方向に充填さ
れ、取り出し後このサイドゲート部をカッター等で切断
しカード形状に仕上げる場合が多い。また、ＩＣカード
の場合は光情報記録媒体とは異なり直接基板に信号を形
成する必要はないため透明性は要求されず、流動性の良
いＡＢＳ樹脂等が使用できるためカードの一端にゲート
を設けても流動性を確保することは可能であり、ゲート
側・反ゲート側の寸法差も重大な問題とはならない。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、透明性は高い
が流動性の良くないポリカーボネイト樹脂等を用いて基
板表面に微細な信号を転写しなければならない光情報記
録媒の場合には、ゲート部よりゲートに相対する端面ま
で均一な信号の転写状態を得るために、樹脂の充填をで
きる限り早くまた均一にする必要がある。このような場
合に成形品の厚み方向と垂直に樹脂を注入するサイドゲ
ート１８の方式では、ジェッティング１９と呼ばれる成
形不良が発生しやすく、基板の光学的特性を大きく損な
うおそれがある。さらには、ゲート側と反ゲート側の充
填状況の差異による樹脂の充填密度の違いのため信号の
均一性確保も困難となる。また、サイドゲート１８部を
切断する際に発生する樹脂の粉などが表面に付着するこ
とによって、信号の読みとりエラーにつながる危険性も
ある。これらのことにより、光情報記録媒体の成形にお
いては、ＩＣカード基板成形に用いられるサイドゲート
方式の成形金型は適さない。

【０００７】基板への樹脂の充填をできる限り均一に行
うには、極力基板の中心近くにゲートを設けることが好
ましい。しかし、ピンゲートタイプやオープンタイプホ
ットランナーシステムでは、十分な流動性を確保するた
めに大きな断面積を持ったゲートを設けるとゲート切れ
が極めて悪くなり、ゲート残りが発生し平滑な表面を得
ることができず、光情報基板の成形用としては適さな
い。

【０００８】本発明の目的は、前述した問題を解決し
て、中心穴を有さない光情報記録媒体においても効率的
に生産することのできる光情報記録媒体用射出成形金型
を提供することである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
するために本発明は、固定側プレートと可動側プレート
との間に、光情報記録媒体の基板成形用のキャビティが
形成される光情報記録媒体用射出成形金型であって、前
記キャビティへの樹脂流入口としてホットランナー方式
のバルブゲートシステムを備え、前記固定側プレートは
そのキャビティ側表面に、前記バルブゲートシステムの
ゲートランド部が情報記録信号形成用スタンパーの厚み
に合わせて突出形成されたことを特徴とする光情報記録
媒体用射出成形金型、を提供すると共に、固定側プレー
トと可動側プレートとの間に、光情報記録媒体の基板成
形用のキャビティが形成され、前記固定側プレートのキ
ャビティ側表面に取り付けられたスタンパーにより前記
基板に情報信号が形成される光情報記録媒体用射出成形
金型であって、前記キャビティへの樹脂流入口としてホ
ットランナー方式のバルブゲートシステムを備え、前記
固定側プレートはそのキャビティ側表面に、前記スタン
パーの厚みと略同一の高さで突出形成された前記バルブ
ゲートシステムのゲートランド部を有し、前記スタンパ
ーは前記ゲートランド部と嵌合する穴を有することを特
徴とする光情報記録媒体用射出成形金型、を提供するも
のである。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明による光情報記録媒体用射
出成形金型は、その固定側プレート内で媒体の基板を成
形するキャビティに対応する場所に、キャビティ内に直
接樹脂を流入するためのホットランナー方式のバルブゲ
ートシステムを組み込む。（金型にキャビティが複数あ
る場合にはキャビティ数と同数のバルブゲートシステム
を組み込むようにしてもよい。）

【００１１】固定側プレートのキャビティ側表面に、バ
ルブゲートシステムと共に樹脂流入用ゲートを形成する
ゲートランド部を突出して設ける。ゲートランド部のキ
ャビティ側表面からの突出の高さは、情報記録信号形成
用スタンパーの厚みと略同一とする。情報記録信号形成
用スタンパーにはゲートランド部と嵌合する穴を形成
し、その穴とゲートランド部とを嵌合させてスタンパー
を固定側プレートのキャビティ側表面に設置する。これ
によって、ゲート部も含め均一で平坦なキャビティ表面
が形成される。

【００１２】前記ホットランナー方式のバルブゲートシ
ステムは、先端が平坦なニードルを前後に駆動すること
によりゲートの開閉を行うものである。従って、樹脂の
充填時の流動性を確保するために十分なゲート径にした
場合にも、ゲートシール後に平滑な表面を得ることがで
きる。以下、図面と共に本発明の具体的実施例について
詳しく説明する。図１は本発明の光情報記録媒体用射出
成形金型の一実施例の構造を示す図であり、図２は一実
施例の樹脂流入のためのゲート近傍の拡大図であり、図
３はゲート閉時の各構成部品の状態を示している。

【００１３】金型の固定側キャビティプレート１は固定
側型板３に固定されており、それらを貫通して金型のキ
ャビティ取り個数と同数のホットランナーシステムによ
るバルブゲートシステム４が設けられている。バルブゲ
ートシステム４内には成形機の射出動作に連動して前後
に摺動するニードル５が設けられており、ニードル先端
部６がキャビティ側表面に開けられたゲート開口部７に
出入りすることにより開閉可能な樹脂流入のためのゲー
トが構成される。前記ニードル先端部６は通常１０μｍ
以下の微小隙間をもってゲート開口部７に挿入され、ニ
ードル先端面はゲート開口部面と一致するように設定さ
れる。

【００１４】ゲート開口部７と共にゲートを構成するゲ
ートランド８が、ゲート開口部７と同心円状にキャビテ
ィ側表面に設けられている。このゲートランド８は使用
するスタンパー９の厚みと同量の高さでキャビティ側表
面から突出し形成されている。

【００１５】固定側キャビティプレート１のキャビティ
側表面には、成形基板に記録信号を形成するためのスタ
ンパー９が各キャビティに対応する位置に取り付けられ
る。スタンパー９には前記のゲートランド８の径に１０
μｍ以下の微小隙間をもって合致する穴が加工されてい
る。この穴をゲートランド８と嵌合させることにより、
精度良く金型固定側プレートにスタンパー９を取り付け
られる。かつ、スタンパー９外周部に設けられたスタン
パー固定具１０によって固定される。

【００１６】さらに、金型固定側表面にはスタンパー形
状に対応する部分に溝１１が加工されており、この溝１
１を真空ポンプ等に接続することによりスタンパー９を
真空吸着することができる。これにより、スタンパー９
の固定側キャビティプレート１への密着性はさらに高く
なり、スタンパー９と固定側キャビティプレート１間の
熱伝導が良好となることによって、キャビティ１２内の
樹脂の流動性を高めると共に、情報記録信号の転写性を
高めることができる。

【００１７】金型の可動側キャビティープレート２に
は、記録媒体の基板を成形するためのキャビティ１２が
その形状に合わせて加工されており、そのキャビティ１
２表面には成形後の基板を金型より取り出すためのエジ
ェクターピン１３が設置されている。

【００１８】上記のように構成された射出成形金型にお
いて、成形される樹脂は常にバルブゲートシステム４内
のゲート開口部７直近まで溶融した状態に保たれてい
る。成形機の射出開始動作と連動し、バルブゲートシス
テム４内のニードル５は後方に移動しゲート部７が開か
れる。そして、良好な溶融状態を保っていた樹脂は、十
分な流動断面積をもったゲート開口部７を通過して、大
きな圧力損失を受けることなくキャビティ１２内に充填
されていく。充填が完了するとニードル５は前方に移動
しゲート開口部７を閉じると共に、ニードル先端はキャ
ビティ表面の一部となり、キャビティ１２内の樹脂は冷
却固化される。

【００１９】図３はゲートが閉じられたときの各構成部
品の位置を示すものである。このとき、スタンパー表面
１４、ゲートランド表面１５及び前進位置でのニードル
先端面１６は同一高さとなるように精密に調整されてお
り、各々の嵌合部も微小隙間で組み合わされている。従
って、成形基板は各嵌合部でのバリの発生もなく平滑な
表面が得られる。なお、成形基板に外観上わずかな凸部
が許される場合には、ゲートランドをスタンパーの平均
厚みよりもわずかに（０．０５ｍｍ程度）高くすること
により、スタンパー厚みにばらつきが発生した際にも、
基板表面に機能上問題となるような凸部が発生すること
を防止できる。また、本実施例では、成形品である基板
の厚み方向と垂直な方向ではなく、厚み方向と平行な方
向に樹脂を注入するので、ジェッティングと呼ばれる成
形不良を防止でき、優れた光学的特性の基板を成形でき
る。

【００２０】冷却固化完了後、金型は成形基板を可動側
キャビティ内にて保持した状態にて固定側と可動側に開
かれ、エジェクターピン１３が前進することによって金
型可動側に保持されていた成形基板は内部より取り出さ
れる。

【００２１】

【発明の効果】以上のように構成した本発明の光情報記
録媒体用射出金型の効果は次の通りである。 （イ）固定側プレートに設置されたスタンパーの表面は
ゲートランド表面及びバルブゲートシステムのニードル
先端面と同一表面となるため、凹凸のない滑らかな成形
基板表面を得ることができる。また、成形基板に外観上
わずかな凸部が許される場合には、ゲートランドをスタ
ンパーの平均厚みよりもわずかに（０．０５ｍｍ程度）
高くすることにより、スタンパー厚みにばらつきが発生
した際にも基板表面に機能上問題となる凸部が発生する
ことを防止できる。

【００２２】（ロ）ゲート径を大きくしてもバルブゲー
トシステムのニードル先端の平面性は損なわれず、基板
形状、厚みに応じて使用される樹脂に合わせて十分な流
動性が確保できる最適なゲート径を設定することができ
る。さらに、ゲートランド径はゲート開口径＋１．０〜
２．０ｍｍで十分なためゲートランドとの嵌合用の穴に
よるスタンパーの有効面積の損失も少ない。

【００２３】（ハ）ゲートの設置は成形基板表面の任意
の位置が可能となるため、基板の信号配列やデザイン、
さらには成形性を考慮して最適なゲート設置位置を幅広
く選ぶことができる。 （ニ）流動性に優れたホットランナー方式のバルブゲー
トシステム構造のため、成型時の型内圧力を低く押さえ
ることができ、またゲート位置設定が広範囲に可能とな
るため多数個取り金型への展開が容易となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】一実施例の構造を示す図である。

【図２】図１に示した一実施例のゲート近傍の拡大図で
ある。

【図３】図１に示した一実施例のゲート閉時の各構成部
品の状態を示す図である。

【図４】従来例を示す図である。

【符号の説明】

１ 固定側キャビティプレート ２ 可動側キャビティプレート ３ 固定側型板 ４ バルブゲートシステム ５ ニードル ６ ニードル先端部 ７ ゲート開口部 ８ ゲートランド ９ スタンパー １０ スタンパー固定具 １１ スタンパー真空吸着用溝 １２ キャビティ １３ エジェクターピン １４ スタンパー表面 １５ ゲートランド表面 １６ ニードル先端面 １７ カード基板 １８ サイドゲート部 １９ スプルー ２０ ジェティング不良

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定側プレートと可動側プレートとの間
   に、光情報記録媒体の基板成形用のキャビティが形成さ
   れる光情報記録媒体用射出成形金型であって、 前記キャビティへの樹脂流入口としてホットランナー方
   式のバルブゲートシステムを備え、 前記固定側プレートはそのキャビティ側表面に、前記バ
   ルブゲートシステムのゲートランド部が情報記録信号形
   成用スタンパーの厚みに合わせて突出形成されたことを
   特徴とする光情報記録媒体用射出成形金型。
2. 【請求項２】固定側プレートと可動側プレートとの間
   に、光情報記録媒体の基板成形用のキャビティが形成さ
   れ、前記固定側プレートのキャビティ側表面に取り付け
   られたスタンパーにより前記基板に情報信号が形成され
   る光情報記録媒体用射出成形金型であって、 前記キャビティへの樹脂流入口としてホットランナー方
   式のバルブゲートシステムを備え、 前記固定側プレートはそのキャビティ側表面に、前記ス
   タンパーの厚みと略同一の高さで突出形成された前記バ
   ルブゲートシステムのゲートランド部を有し、 前記スタンパーは前記ゲートランド部と嵌合する穴を有
   することを特徴とする光情報記録媒体用射出成形金型。