WO2023228557A1 - 成形体、ダウンホールツール部材およびダウンホールツール - Google Patents

成形体、ダウンホールツール部材およびダウンホールツール Download PDF

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Abstract

引張強度を維持しつつ、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が向上した成形体の提供。本発明の成形体は、グリコール酸重合体と環状エステルと無機フィラーとを含む組成物から成る。組成物における、環状エステルの含有量は10質量%以上22質量%以下であり、無機フィラーの含有量は0.1質量%以上15質量%以下である。無機フィラーは、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素からなる群から選択される。

Description

成形体、ダウンホールツール部材およびダウンホールツール
 本発明は、グリコール酸重合体を含む組成物からなる成形体、当該成形体からなるダウンホールツール部材、および、当該ダウンホールツール部材を含むダウンホールツールに関する。
 グリコール酸重合体は高強度でありながら、加水分解性および分解性を有する分解性樹脂材料である。グリコール酸重合体は、その特性を活かし、骨固定材および縫合糸等の医療材料として使用されている。また、近年では、炭化水素資源の回収に使用されるダウンホールツールの部材として用途が拡大している。用途によってはさらなる分解速度が求められており、グリコール酸重合体の分解速度向上について様々な研究開発が行われている。
 例えば、特許文献1は、ダウンホールツール用分解性シール部材を形成する分解性を有する高分子材料に、グリコリド、ラクチドまたは無水フタル酸等を分解促進剤として含んでいてもよいことを開示している。
 また、特許文献2は、有効厚みが1mm以上である成形品を、特定量のカルボン酸無水物を含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物から形成させることによって、66℃未満においても優れた分解性を有することを開示している。
特開2015-143333号公報 特開2015-172106号公報
 ダウンホールツールの部材でのグリコール酸重合体を含む成形体の使用において、成形体の更なる分解速度向上が求められている。特に、厚み5mm超の成形体において、引張強度を維持しつつ、初期厚みから5mm以上減少した後における厚み減少速度の向上が求められている。
 本発明の一態様は、引張強度を維持しつつ、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が向上された成形体を実現することを目的とする。
 本発明者らは鋭意検討した結果、グリコール酸重合体を含む組成物に、特定の環状エステルおよび特定の無機フィラーを含ませることによって、初期厚みから5mm以上減少後における成形体の厚み減少速度が向上することを見出した。さらに、当該成形体に49℃における引張強度低下が抑制されていることも見出して本発明を完成するに至った。
 本発明の一態様に係る成形体は、グリコール酸重合体と、環状エステルと、無機フィラーとを含む組成物からなり、前記組成物における、前記環状エステルの含有量は10質量%以上22質量%以下であり、前記無機フィラーの含有量は0.1質量%以上15質量%以下であり、前記無機フィラーは、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの無機フィラーであり、厚みまたは直径は5mm超である、成形体である。
 本発明の一態様によれば、引張強度を維持しつつ、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が向上した成形体を提供することができる。
 〔成形体〕
 本発明の一態様に係る成形体は、グリコール酸重合体と、環状エステルと、無機フィラーとを含む組成物からなる。
 (グリコール酸重合体)
 本明細書において、グリコール酸重合体は、グリコール酸由来の繰り返し単位(-(-O-CH-CO-)-)を含むポリマーを示す。グリコール酸重合体はグリコール酸の単独重合体(ポリグリコール酸(PGA))であってもよい。また、グリコール酸重合体はグリコール酸由来の繰り返し単位と他の単量体由来の繰り返し単位とを含む共重合体であってもよい。
 以下、グリコール酸由来の繰り返し単位と他の単量体由来の繰り返し単位とを含む共重合体(以下、「グリコール酸共重合体」と示す。)について説明する。
 (グリコール酸共重合体)
 グリコール酸共重合体は、分解速度向上の点で、グリコール酸由来の繰り返し単位からなる直鎖状の高分子鎖Aが、該高分子鎖Aとは異なる高分子鎖Bに2以上化学結合してなる共重合体であってもよい。高分子鎖Aおよび高分子鎖Bについては後述する。
 上記グリコール酸共重合体において、高分子鎖Aが、高分子鎖Bに2以上化学結合していればよく、高分子鎖Bにおける高分子鎖Aの結合位置は特に限定されない。例えば、当該共重合体は、高分子鎖Aが高分子鎖Bの主鎖の両末端に化学結合したトリブロック共重合体(「ABA型ブロック共重合体」、ただし、Aは上記高分子鎖A、Bは上記高分子鎖Bである。)であってもよく、2以上の高分子鎖Aが高分子鎖Bにグラフト結合したグラフト共重合体であってもよい。
 上記グリコール酸共重合体を成形体としたときの分解時の厚み減少速度の向上効果により優れることから、上記共重合体は、ABA型ブロック共重合体(ただし、Aは上記高分子鎖A、Bは上記高分子鎖Bである。)であることが好ましい。
 また、上記グリコール酸共重合体において、高分子鎖Aと高分子鎖Bとがエステル結合により結合していることが好ましい。これにより、グリコール酸共重合体組成物を成形体としたときの分解時の厚み減少速度が向上しやすいという効果を奏する。
 とりわけ、高分子鎖Bが高分子鎖Aよりも親水性または柔軟性の高いユニットである場合には、高分子鎖Aと高分子鎖Bとがエステル結合により結合していることが特に好ましい。具体的には、高分子鎖Bが高分子鎖Aよりも親水性または柔軟性の高いユニットである場合、高分子鎖A付近よりも高分子鎖B付近に水が浸透しやすくなり、高分子鎖Aと高分子鎖Bのエステル結合が高分子鎖A内のエステル結合よりも加水分解しやすくなる。つまり、高分子鎖Aと高分子鎖Bとの間のエステル結合が加水分解してグリコール酸共重合体が高分子鎖Aと高分子鎖Bとの間で切断されることによってその分子量が大きく低下し、厚み減少速度が向上しやすくなる。
 以下に、グリコール酸共重合体を構成する高分子鎖Aおよび高分子鎖Bについて説明する。
 (高分子鎖A)
 高分子鎖Aの例として、グリコール酸単位からなる直鎖状の高分子鎖が挙げられる。グリコール酸共重合体中の高分子鎖Aの1ブロックを構成するグリコール酸単位の数は特に限定されず、グリコール酸共重合体が高分子鎖Aに由来する分解性を発現できる範囲において、適宜決定することができる。
 (高分子鎖B)
 高分子鎖Bは、高分子鎖Aとは異なる高分子鎖である。例えば、高分子鎖Bは、ガラス転移温度(Tg)が45℃未満である高分子化合物に由来する高分子鎖であってもよい。また、高分子鎖Bは、重量平均分子量が1500以上250000以下である高分子化合物に由来する高分子鎖であってもよい。
 高分子鎖Bの由来となる高分子化合物(以下、「高分子化合物B」)のガラス転移温度は、グリコール酸共重合体のガラス転移温度を高分子鎖Aのみからなる重合体より低くする観点から、45℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。高分子鎖Bの由来となる高分子化合物のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法により測定することができる。
 高分子化合物Bの重量平均分子量は、成形体における分解時の厚み減少速度がより向上する観点から、2500以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、7500以上であることがさらに好ましい。また、成形体における強度が向上する観点から、高分子化合物Bの重量平均分子量は、50000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましい。高分子化合物Bの重量平均分子量が50000以下であることは、グリコール酸共重合体重合時におけるグリコリドへの溶解性と、共重合反応性の制御という観点からも有利である。高分子化合物Bの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて測定することができる。
 高分子化合物Bは、重合開始剤として機能するために、高分子鎖Aを構成するグリコール酸単位と化学結合可能な官能基を2つ以上の末端に有し且つ上記特定の範囲の重量平均分子量および/またはガラス転移温度を有している、ポリグリコール酸以外の高分子化合物であれば特に限定されない。
 このような高分子化合物Bとして、例えば、上記特定の重量平均分子量およびガラス転移温度を有している、ポリオールを挙げることができる。ポリオールの例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレンオキサレート等が含まれる。「ポリオール」は、1種の繰り返し単位のみからなる単独重合体であってもよく、他の単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。
 グリコール酸共重合体に親水性を付与することができることから、高分子化合物Bは、末端ヒドロキシ基を有する親水性多価アルコール系重合体であることが好ましい。上記末端ヒドロキシ基を有する親水性多価アルコール系重合体の例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール等が含まれる。
 本発明の一態様において、高分子化合物Bは、重量平均分子量3000以上50000以下である末端ヒドロキシ基を有する親水性多価アルコールであり得る。高分子化合物Bが重量平均分子量3000以上50000以下である末端ヒドロキシ基を有する親水性多価アルコールであることにより、グリコール酸共重合体において高分子鎖Bが有する親水性が発現されて、分解時の水との親和性が向上し、その結果、成形体における分解時の厚み減少速度がより向上するという効果を奏する。
 本発明の他の一態様において、高分子化合物Bは、重量平均分子量3000以上50000以下であるポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであり得る。ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールは、ガラス転移温度が特に低く、また親水性も特に高い。このため、末端ヒドロキシ基を有する親水性多価アルコールがポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであることにより、グリコール酸共重合体に柔軟性と親水性とを付与することができるという効果を奏する。
 本発明の他の一態様において、高分子化合物Bは、重量平均分子量7500以上50000以下であるポリエチレングリコールであり得る。高分子化合物Bが重量平均分子量7500以上50000以下であるポリエチレングリコールであることにより、成形体における分解時の厚み減少速度がより一層向上するという効果を奏する。
 高分子化合物Bは、単一の単量体由来の繰り返し単位のみからなる単独重合体であってもよく、他の単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。
 他の単量体としては、例えば、シュウ酸エチレン(1,4-ジオキサン-2,3-ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、β-ピバロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等)、カーボネート類(例えば、トリメチリンカーボネート等)、エーテル類(例えば、1,3-ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えば、ジオキサノン等)、アミド類(εカプロラクタム等)等の環状モノマー;乳酸、3-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸、6-ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上を挙げることができる。
 他の単量体由来の繰り返し単位は、高分子化合物Bの物性を調整する観点から採用することができる。例えば、他の繰り返し単位の採用により、高分子化合物Bの水に対する親和性を調整することが可能である。高分子化合物Bにおける他の繰り返し単位の含有量は、高分子鎖Bによる所期の効果が十分に得られる範囲において、適宜決定することができる。例えば、高分子化合物Bにおける他の単量体由来の繰り返し単位の含有量は、50質量%以下であってよく、好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。高分子化合物Bは、直鎖状であってもよく、他の高分子化合物がグラフト結合したグラフト共重合体であってもよい。
 高分子鎖Bは、分子内にエステル結合を有していてもよい。高分子鎖Bが分子内にエステル結合を有していることにより、高分子鎖B内でもエステル結合の加水分解による切断が生じるため、厚み減少速度がより向上しやすくなる。
 グリコール酸共重合体において高分子鎖Bが有する親水性が十分に発現されて、成形体における分解時の厚み減少速度が向上することから、グリコール酸共重合体における高分子鎖Bの量は、質量比で、高分子鎖Aの総量100に対して0.5以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。また、グリコール酸共重合体の強度保持の観点から、グリコール酸共重合体における高分子鎖Bの量は、質量比で、高分子鎖Aの総量100に対して30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
 グリコール酸重合体は、公知の方法により製造することが可能である。例えば、グリコール酸共重合体は、高分子鎖Bの由来となる高分子化合物Bを重合開始剤として用い、グリコール酸の二量体であるグリコリドを少量の触媒の存在下で、かつ溶剤が実質的には存在しない条件(すなわち塊状重合条件)において、開環重合させることにより好適に製造することができる。開環重合における反応温度は、グリコリドの開環重合が適切に進行する範囲で適宜決定することができ、例えば、140℃である。上記触媒の例には、有機カルボン酸スズ、ハロゲン化スズおよびハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒が含まれる。グリコール酸重合体は、市販品を使用してもよい。
 (環状エステル)
 上記組成物に含まれる環状エステルは、例えば、グリコリド、ラクチド、イプシロンカプロラクトン、ガンマバレロラクトン、デルタバレロラクトン、ジグリコール酸無水物およびグルタル酸無水物からなる群から選択される少なくとも一つの環状エステルが挙げられ、グリコリド、ラクチド、イプシロンカプロラクトン、ガンマバレロラクトンおよびデルタバレロラクトンからなる群から選択されるものが好ましい。上記環状エステルの中でも、PGAと最も相溶性の高い化学構造という理由から、グリコリドがより好ましい。環状エステルは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 (Fedorsの溶解度パラメータ)
 本実施形態に係る組成物において、環状エステルのFedorsの溶解度パラメータと、グリコール酸重合体のFedorsの溶解度パラメータとの差の絶対値は6(J/cm1/2以下であり、好ましくは5.5(J/cm1/2以下であり、より好ましくは5(J/cm1/2以下である。以下、「Fedorsの溶解度パラメータ」を「SP値」と略記する場合がある。環状エステルのSP値とグリコール酸重合体のSP値との差の絶対値が上記範囲であることによって、組成物は十分な可塑性を有する。
 SP値は例えば、山本秀樹著「SP値 基礎・応用と計算方法」((株)情報機構発行(2005年)第66~67頁)により算定することができる。より具体的には、下記式(1)に従い、対象化合物(グリコール酸重合体または環状エステル)のSP値δ((cal/cm1/2)を計算する。
   δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・ (1)
 式(1)中、ΣEcohは、Ecoh(対象化合物の構成単位の凝集エネルギー密度(cal/cm))の総和;ΣVは、V(対象化合物の構成単位のモル分子容(cm))を示す。
 上記組成物中に2種類以上の環状エステルが含まれる場合、少なくとも1種類の環状エステルのSP値とグリコール酸重合体のSP値との差の絶対値が6(J/cm1/2以下である。
 上記組成物における環状エステルの含有量は、当該組成物100質量%に対して、10質量%以上であり、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。また、当該含有量は、22質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下であり、さらに好ましくは17質量%以下である。環状エステルの含有量が上記範囲内であると、組成物のガラス転移温度(Tg)を十分に低下させ、組成物に十分な可塑性を付与することができる。
 (無機フィラー)
 上記組成物に含まれる無機フィラーは、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの無機フィラーである。上記無機フィラーは、水と接触した際に加水分解し、アンモニアを生成する窒化物である。上記生成したアンモニアによって、近傍のグリコール酸重合体は加水分解し、ミクロボイドが形成される。グリコール酸重合体組成物中にミクロボイドが存在すると、水の拡散が向上するため、分解促進につながることが推測される。上記無機フィラーの中でも、加水分解を受けやすい窒化アルミニウムが好ましい。無機フィラーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 無機フィラーの形状は、特に限定されず、繊維状、ウイスカー状、板状(層状)、粉末状または粒子状等の無機フィラーを使用することができる。無機フィラーは粒子状であることが好ましい。粒子状とすることで、無機フィラーの凝集を抑制することができる。また、無機フィラーがポリマーマトリクスと接触する際の比表面積が増加し、無機フィラーとポリマーマトリクスが接する界面の接触効率を増やすことができるため、分解速度が向上する。
 上記組成物における無機フィラーの含有量は、当該組成物100質量%に対して、0.1質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上である。また、当該含有量は、当該組成物100質量%に対して、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。無機フィラーの含有量が上記範囲内であると、無機フィラーの分解によって当該組成物からなる成形体の吸水量が向上し、成形体の厚み減少速度がより向上する。
 分解後期の厚み減少速度の向上および成形体の引張強度の向上の点で、上記組成物における環状エステルおよび無機フィラーの含有量はそれぞれ、当該組成物100質量%に対して、10質量%以上および15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上および5質量%以下であることがさらに好ましい。
 (組成物の重量平均分子量)
 上記組成物の重量平均分子量(Mw)は、成形体の強度が維持できる点および押出成形の点等で、15万以上が好ましく、16万以上がより好ましく、17万以上がさらに好ましい。また、押出成形時または射出成形時の成形が容易となる点等で、当該組成物のMwは、50万以下が好ましく、45万以下がより好ましく、40万以下がさらに好ましい。
 上記組成物の重量平均分子量は例えば、以下に示す方法によって測定することができる:約10mgの組成物を0.5mLのDMSOで150℃において加熱溶解し、室温まで冷却させる。冷却した溶液をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で10mLにメスアップして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、当該組成物の重量平均分子量の測定を行う。標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いる。GPC装置として、shodexGPC-104(検出器:RI、カラム:HFIP-606M 2本)が例として挙げられる。また、溶媒として5mMのCFCOONaを含むHFIPを使用してもよい。
 (その他の成分)
 上記組成物には、グリコール酸重合体、環状エステルおよび無機フィラーの他に、本発明の目的に反しない範囲で、その他の成分が含まれていてもよい。
 その他の成分の例として、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、親水剤、吸水剤、核剤、増孔剤等の各種添加剤が挙げられる。また、当該組成物は、重合体の調製に使用される重合開始剤および触媒等を含んでいていてもよい。
 本明細書において、分解促進剤とは、グリコール酸重合体を含む組成物の加水分解反応を促進する剤(化合物)を示す。分解促進剤の例として、カルボン酸無水物およびリン化合物等が挙げられる。分解促進剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
 上記組成物におけるカルボン酸無水物としては特に制限はない。当該組成物を成形加工する際の温度に耐え得る耐熱性の観点および当該組成物との相溶性の観点から、環構造を有するカルボン酸無水物が好ましく、無水ヘキサン酸、無水オクタン酸、無水デカン酸、無水ラウリン酸、無水ミスチリン酸、無水パルミチン酸、無水ステアリン酸、無水安息香酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、およびベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸無水物(ピロメリット酸無水物)がより好ましく、無水フタル酸、無水トリメリト酸、無水安息香酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸無水物(ピロメリット酸無水物)が特に好ましい。
 上記組成物におけるリン化合物としては特に制限はないが、リン酸エステルおよび亜リン酸エステル等の有機リン化合物が好ましく、中でも、炭素数8~24の長鎖アルキル基、芳香族環およびペンタエリスリトール骨格からなる群から選択される少なくとも1種の構造を有する有機リン化合物がより好ましい。
 炭素数8~24の長鎖アルキル基を有するリン酸エステルとしては、モノ-もしくはジ-ステアリルアシッドホスフェートまたはこれらの混合物、およびジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート等が挙げられる。芳香族環を有する亜リン酸エステルとしては、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。ペンタエリスリトール骨格構造を有する亜リン酸エステルとしては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、およびサイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト等が挙げられる。
 上記組成物における分解促進剤の含有量は、当該組成物100質量%に対して、好ましくは1質量%であり、より好ましくは3質量%以上である。また、当該含有量は、当該組成物100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。分解促進剤の含有量が上記範囲内であると、分解促進剤が組成物からブリードアウトしにくいので、組成物の分解速度を促進しつつ、組成物の成型加工を容易にすることができる。
 上記組成物は、グリコール酸重合体と、環状エステルと、無機フィラーとを混合することに調製することができる。環状エステルは、グリコール酸重合体の調製時に添加してもよい。また、グリコリドの開環重合によってグリコール酸重合体を得る場合、残存するグリコリドを環状エステルとして使用してもよい。すなわち、グリコール酸重合体の調製によって得られた、グリコリドとグリコール酸重合体とを含むグリコール酸重合体組成物と、無機フィラーと、任意で可塑剤とを混合して組成物を調製していてもよい。
 本発明の一態様に係る成形体は、上記組成物からなるポリグリコール酸成形体である。当該成形体の厚みまたは直径は5mm超である。
 本発明の一態様に係る成形体を49℃の水中に保持したときに、初期厚み(水中に保持する前の成形体の厚み)から5mm以上減少後における成形体の厚み減少速度は0.070mm/時間以上であることが好ましく、0.090mm/時間以上であることがより好ましい。以下、「49℃の水中に保持したときに、初期厚みから5mm以上減少後の成形体」を「分解後期の成形体」と示す場合がある。上記分解後期の成形体の厚み減少速度が0.070mm/時間以上であると、所望の時間における成形体の完全分解に要する時間を短縮することができる。このため、成形体の厚みを大きくすることが可能となり、成形体の強度を高く担保できるという効果を奏する。換言すれば、成形体の厚みを分厚くできる分、成形体の強度を向上させることができるという効果を奏する。
 49℃の水中に保持したときに、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が0.070mm/時間以上であるとき、本発明の一態様に係る成形体の49℃における引張強度は52MPa以上であることが好ましく、54MPa以上であることがより好ましく、56MPa以上であることがさらに好ましい。上記引張強度が52MPa以上であると、ダウンホールツールとして機能するのに必要な成形体厚みを減少させることができ、所望の時間を完全分解に至らしめる時間を短縮できるという効果を奏する。換言すれば、ダウンホールツールとして機能するパーツを薄くできる分、当該パーツの分解時間短くできるという効果を奏する。
 本発明の一態様に係る成形体は上述の通り、特定の環状エステルおよび無機フィラーを含む。環状エステルはグリコール酸重合体の吸水量を向上し、成形体の分解を加速する作用を有する。また、無機フィラーの分解によってグリコール酸重合体の吸水量が向上し、成形体の分解が加速される。上記特定の環状エステルおよび無機フィラーを含む成形体は、無機フィラーの分解によって生じた塩基成分が環状エステルの溶出を促進し、成形体中の水の拡散速度が向上することによって、分解後期の成形体の厚み減少速度を向上させることが推察される。実施例に示すとおり、環状エステルのみを含む成形体および無機フィラーのみを含む成形体と比較して、本発明の一態様に係る成形体は特定の環状エステルおよび無機フィラーの相乗効果によって、引張強度を維持しつつ、分解後期の厚み減少速度が高い。
 (成形体の製造方法)
 本実施形態に係る成形体は、上記組成物を成形することによって得ることができる。成形方法は限定されず、その例には、射出成形、溶融押出成形、固化押出成形、圧縮成形(プレス成形)および遠心成形が含まれる。
 固化押出成形によって成形体を製造する場合の一例を示す。当該組成物からなるペレットを、当該組成物の融点以上255℃以下(通常、200~255℃)に設定したシリンダーの押出機に供給して溶融混練する。次いで、押出機先端の押出ダイからフォーミングダイの流路内に溶融混練物を押出して、フォーミングダイの流路内で当該組成物の結晶化温度以下に冷却して固化させ、フォーミングダイの先端から5~50mm/10分の速度で外部に押し出す。この押出物を加圧してフォーミングダイ方向に1,500~8,500kgの背圧をかけながら引き取ることで、固化押出成形物である成形体を製造する。この成形物を150~230℃の温度で3~24時間熱処理してアニーリングしてもよい。
 射出成形によって成形体を製造する場合の一例を示す。当該組成物からなるペレットを、射出成形用金型を装着した射出成形機に供給する。シリンダーの温度を当該組成物の融点以上255℃以下(通常、200~255℃)、金型温度を0℃以上当該組成物の融点以下(通常、0~190℃)に設定する。そして、射出圧1~104MPa(好ましくは10~104MPa)で射出成形することによって、射出成形物である成形体を製造する。この成形物を組成物の結晶化温度以上融点以下(通常、70~220℃)の温度で1分間~10時間アニーリングしてもよい。
 成形体の厚みまたは直径は、ダウンホールツール部材への機械加工の点等で、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。また、成形体の厚みまたは直径の上限は特に制限されないが、500mm以下が好ましく、400mm以下がより好ましい。
 〔ダウンホールツール部材〕
 本発明の一態様に係るダウンホールツール部材は、石油およびガス等の炭化水素資源を地中から回収するための地下掘削に用いられる部材であり、上記成形体からなる。成形体をそのままダウンホールツール部材として用いてもよいし、従来公知の機械加工(二次加工)を施してダウンホールツール部材を製造してもよい。機械加工の例として、切削加工が挙げられる。
 本発明の一態様に係るダウンホールツール部材の形状および大きさは、特に限定されないが、例えば、厚みまたは直径が5~500mm、好ましくは20~300mm、より好ましくは30~200mmである。また、ダウンホールツール部材の形状は、丸棒、平板、パイプ等の中空品、および異形品等種々の形状であってよい。押出成形およびその後の緻密化処理が容易であるとともに、機械加工用素材である押出成形物に適することが多い点で、ダウンホールツール部材の形状は、丸棒、中空品または平板であることが好ましい。石油掘削用ダウンホールツール部材、特に目止めプラグの芯棒の形成のためには、ダウンホールツール部材の形状は、丸棒であることがより好ましい。
 〔ダウンホールツール〕
 本発明の一態様に係るダウンホールツールは、ダウンホールツール部材を含む。本明細書において、坑井の掘削、坑井の閉塞およびフラクチャリング等の各種坑井処理に用いられ、坑井内に設置される装置またはその部材をダウンホールツールと称する。ダウンホールツールの形状は、特に限定されず、例えば従来知られている形状にすることができる。ダウンホールツールの例には、フラックプラグ、ブリッジプラグ、セメントリテイナー、パーフォレーションガン、ボールシーラー、目止めプラグ、およびパッカー、が含まれる。
 〔まとめ〕
 本発明の態様1に係る成形体は、グリコール酸重合体と、環状エステルと、無機フィラーとを含む組成物からなり、上記組成物における、上記環状エステルの含有量は10質量%以上22質量%以下であり、上記無機フィラーの含有量は0.1質量%以上15質量%以下であり、上記無機フィラーは、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの無機フィラーであり、厚みまたは直径は5mm超である。
 本発明の態様2に係る成形体は、上記態様1において、49℃の水中に保持したときに、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が0.070mm/時間以上であってもよい。
 本発明の態様3に係る成形体は、上記態様1または2において、49℃における引張強度が52MPa以上であり、49℃の水中に保持したときに、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が0.070mm/時間以上であってもよい。
 本発明の態様4に係る成形体は、上記態様1~3のいずれかにおいて、前記組成物における、前記環状エステルがグリコリドであってもよい。
 本発明の態様5に係る成形体は、上記態様1~4のいずれかにおいて、上記組成物における、前記環状エステルの含有量が20質量%以下であってもよい。
 本発明の態様6に係る成形体は、上記態様1~5のいずれかにおいて、上記組成物における、上記無機フィラーの含有量が10質量%以下であってもよい。
 本発明の態様7に係る成形体は、上記態様1~6のいずれかにおいて、上記グリコール酸重合体が、グリコール酸由来の繰り返し単位からなる直鎖状の高分子鎖Aが、該高分子鎖Aとは異なる高分子鎖Bに化学結合してなる共重合体であってもよい。
 本発明の態様8に係る成形体は、上記態様7において、上記高分子鎖Bが、ガラス転移温度が45℃未満である高分子化合物由来であってもよい。
 本発明の態様9に係る成形体は、上記態様7または8において、上記グリコール酸重合体が、上記高分子鎖Aと上記高分子鎖Bとのブロック共重合体であってもよい。
 本発明の態様10に係る成形体は、上記態様7において、上記グリコール酸重合体がグリコール酸の単独重合体であってもよい。
 本発明の態様11に係る成形体は、上記態様1~10のいずれかにおいて、上記組成物の重量平均分子量が15万以上50万以下であってもよい。
 本発明の態様12に係るダウンホールツール部材は、上記態様1~11のいずれかの成形体からなる。
 本発明の態様13に係るダウンホールツールは、上記態様12のダウンホールツール部材を含む。
 以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
 以下、重合によって得られたグリコール酸重合体の組成物を「重合体組成物」という。また、グリコール酸重合体(または重合体組成物)と、環状エステルと、無機フィラーを含む組成物を、単に「組成物」という。また、以下のSP値の測定に用いられたグリコール酸重合体の組成物を、単に「混合物」という。
 以下の実施例中、特に断りがない限り、%は質量%を表す。
 〔グリコール酸重合体および環状エステルのSP値の測定〕
 山本秀樹著「SP値 基礎・応用と計算方法」((株)情報機構発行(2005年)第66~67頁)を参照してSP値の測定を行った。より具体的には、下記式(1)に従い、対象化合物(グリコール酸重合体または環状エステル)のSP値δ((cal/cm1/2)を計算した。
   δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・ (1)
 式(1)中、ΣEcohは、Ecoh(対象化合物の構成単位の凝集エネルギー密度(cal/cm))の総和;ΣVは、V(対象化合物の構成単位のモル分子容(cm))を示す。
 SP値の測定結果、環状エステルのSP値とグリコール酸重合体のSP値との差、および混合物のガラス転移温度を表1に示す。なお、グリコール酸重合体のSP値は26.8であり。また、混合物中に2種類の環状エステルが含まれる場合、それぞれの環状エステルのSP値とグリコール酸重合体のSP値との差の値のうち、SP値の差の絶対値が大きい値を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 〔組成物および成形体の評価〕
 実施例および比較例で得られた組成物および成形体について、以下の評価を行った。
 (成形体の重量平均分子量の測定)
 約10mgのサンプルを0.5mLのDMSOで150℃において加熱溶解し、室温まで冷却させた。冷却した溶液をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で10mLにメスアップして、GPC装置によって組成物の重量平均分子量の測定を行った。標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。測定条件を以下に示す。
 装置:shodexGPC-104(検出器:RI、カラム:HFIP-606M 2本)
 溶媒:5mMのCFCOONaを含むHFIP
 (成形体中のグリコリド含有量の測定)
 約100mgのサンプルに、p-クロロベンゾフェノン含有DMSO(0.4mg/2mL)を加え、150℃において約10分で加熱溶解させた。室温まで冷却した後、溶液をろ過した。得られたろ液のガスクロマトグラフィ(GC)測定を行った。測定条件を以下に示す。
 装置:島津製作所GC-2010
 カラム:RESTEK Rxi-5ms
 カラム温度:150℃にて5分間保持→(20℃/分で昇温)→270℃にて3分間保持
 インジェクション温度:180℃
 (成形体の厚み減少速度の測定)
 成形体について、一辺が13mmまたは40mmの立方体の試験片を所要数調製した。次いで、温度49℃の1Lのオートクレーブ中に、試験片を入れた。そして、オートクレーブに水(脱イオン水)を満たして浸漬試験を行った。所定時間間隔で浸漬後の試験片を取り出し、切断して断面を露出させた。そして、ドライルーム内で一晩放置して乾燥させた後、試験片の芯部(硬い部分)の厚みを測定した。浸漬前の厚み(当初厚み、具体的には13mmまたは40mmである。)との差から減少厚みを測定した。異なる浸漬時間により測定した試験片の減少厚みの測定値に基づいて、試験片の減少厚みの時間変化を求めた。ここで、0~5mmの厚み減少する期間を分解初期、5mm以上の厚み減少する期間を分解後期と定義する。分解初期または分解後期の範囲における試験片の減少厚みの時間変化から、厚み13mmまたは40mmの試験片の厚み減少速度を算出した(単位:mm/h)。
 (成形体の引張強度の測定)
 本発明の有効厚みが5mm以上である成形品は、所定の試験片によって測定した引張強度が52MPa以上であれば、実用上十分な引張強度を有するということができる。試験片の引張強度は、ISO527-1に準拠して測定することができる。ISO527-1に規定される形状の試験片(5号試験片)について、49℃(温度49℃±1℃)において、速度20mm/分で引張試験を行い、試験片が破断されるまでの間に示した最大点応力を算出し、試験片の引張強度とした(n=5の平均値。単位:MPa)。
 〔実施例1〕
 グリコリド100質量部に対して、触媒として二塩化スズ0.03質量部、熱安定剤としてペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]1質量部、重合開始剤としてポリエチレングリコール(PEG、Mw7500)2質量部を重合容器に仕込んだ。仕込み内容物を140℃の加熱条件下で6時間保持し、重合体組成物1を得た。重合体組成物1にはグリコリドは含まれていない。
 重合体組成物1に、環状エステルとしてグリコリド(GL)、無機フィラーとして窒化アルミニウム(AlN)、分解促進剤としてピロメリット酸二無水物(PMDA)、熱安定剤としてジステアリルアシッドホスフェートおよびモノステアリルアシッドホスフェートの混合体(株式会社ADEKA製「アデカスタブAX-71」)を配合し、組成物を得た。組成物に含まれる、環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量を表2に示す。
 スクリュー温度を190~240℃に設定した二軸押出混錬機(東洋精機株式会社製「2D25S」)のフィード部に組成物を供給して溶融混錬を行い、押出成形して組成物のペレットを得た。そして、組成物のペレットを、シリンダー温度を190~240℃に設定した射出成形機(東芝機械製「EC-100N」)のフィード部に供給して射出成形を行い、成形体を得た。射出成形を行う際の金型温度は80~100℃に設定した。
 〔実施例2、3〕
 環状エステルおよび無機フィラーの配合量を変更した以外は、実施例1と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例2、3の環状エステルおよび無機フィラーの含有量は表2に示す。
 〔実施例4〕
 環状エステルおよび無機フィラーの配合量を変更し、分解促進剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例4の環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量は表2に示す。
 〔実施例5〕
 グリコリド100質量部に対して、触媒として二塩化スズ0.003質量部、重合開始剤として1-ドデカノール0.3質量部を重合容器に仕込んだ。仕込み内容物を170℃の加熱条件下で2時間保持し、重合体組成物2を得た。重合体組成物2にはグリコリドは含まれていない。
 重合体組成物2に、環状エステルとしてグリコリド(GL)、無機フィラーとして窒化アルミニウム(AlN)、分解促進剤としてピロメリット酸二無水物(PMDA)、熱安定剤としてジステアリルアシッドホスフェートおよびモノステアリルアシッドホスフェートの混合体(株式会社ADEKA製「アデカスタブAX-71」)を配合し、組成物を得た。組成物に含まれる、環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量を表2に示す。
〔実施例6~8〕
 環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の配合量を変更した以外は、実施例5と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例6~8の環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量は表2に示す。
 〔実施例9〕
 環状エステルの配合量を変更し、分解促進剤を配合しなかった以外は、実施例5と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例9の環状エステルおよび無機フィラーの含有量は表2に示す。
〔実施例10、11〕
 環状エステルおよび無機フィラーの配合量を変更した以外は、実施例9と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例10、11の環状エステルおよび無機フィラーの含有量は表2に示す。
〔実施例12〕
 環状エステルの配合量を変更し、無機フィラーとして窒化アルミニウムに代えて、窒化ケイ素(SiN)を使用した以外は、実施例9と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例12の環状エステルおよび無機フィラーの含有量は表2に示す。
〔実施例13〕
 無機フィラーの配合量を変更した以外は、実施例12と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例13の環状エステルおよび無機フィラーの含有量は表2に示す。
 〔比較例1、2〕
 環状エステル、分解促進剤の配合量を変更し、無機フィラーを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例1、2の環状エステルおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例3,4〕
 環状エステルの配合量を変更し、分解促進剤を添加しなかったこと以外は、比較例1と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例3、4の環状エステルおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例5、6〕
 重合体組成物1から重合体組成物2に変更し、環状エステルの配合量を変更した以外は、比較例3と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例5、6の環状エステルおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例7〕
 分解促進剤を配合し、環状エステルを配合しなかった以外は、比較例5、6と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例7の分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例8〕
 無機フィラーとして窒化アルミニウムを使用した以外は、比較例7と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例8の分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例9〕
 環状エステルの配合量を変更し、無機フィラーとして酸化アルミニウム(Al)を使用した以外は、比較例5、6と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例9の環状エステルならびに無機フィラーの種類および含有量は表3に示す。
 〔比較例10〕
 無機フィラーとして酸化アルミニウムに代えて、酸化カルシウム(CaO)を使用した以外は、比較例9と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例10の環状エステルならびに無機フィラーの種類および含有量は表3に示す。
 〔比較例11〕
 環状エステルおよび無機フィラーの配合量を変更した以外は、実施例1と同様の手順で組成物および成形体を得た。実施例11の環状エステルおよび無機フィラーの含有量は表3に示す。
 〔比較例12〕
 環状エステルおよび無機フィラーの配合量を変更し、無機フィラーとして窒化アルミニウムに代えて、窒化ケイ素(SiN)を使用した以外は、比較例11と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例12の環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例13〕
 環状エステルの配合量を変更し、無機フィラーとして窒化アルミニウムに代えて、窒化ホウ素(BN)を使用した以外は、比較例11と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例13の環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例14〕
 無機フィラーとして窒化アルミニウムに代えて、炭酸カルシウム(CaCo)を使用し、環状エステル、無機フィラー、分解促進剤の配合量を変更した以外は、実施例5と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例14の環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例15〕
 環状エステルおよび無機フィラーの配合量を変更した以外は、比較例14と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例15の環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例16〕
 環状エステル、無機フィラーの配合量を変更し、無機フィラーとして窒化アルミニウムに代えて、カーボンファイバー(CF)を使用した以外は、実施例5と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例16の環状エステル、無機フィラーおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例17、18〕
 環状エステルの配合量を変更し、無機フィラーを添加しなかったこと以外は、実施例5と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例17、18の環状エステルおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
 〔比較例19〕
 環状エステルの配合量を変更し、無機フィラーおよび分解促進剤を添加しなかったこと以外は、実施例5と同様の手順で組成物および成形体を得た。比較例19の環状エステルおよび分解促進剤の含有量は表3に示す。
実施例および比較例で使用した無機フィラーは何れも粒子状の無機フィラーを使用した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 無機フィラーを添加していない比較例1~7、17~19では、最大点応力52MPa以上、分解後期の厚み減少速度0.07mm/時間以上のいずれか一方しか満たすことができないのに対し、無機フィラーを添加した実施例1~14では、その二つの特性を両立できることが分かった。一方で、比較例8のように、環状エステル無添加の状態で無機フィラーを添加しても、分解加速効果は見られなかったことから、環状エステルと無機フィラーが協奏的に作用して、分解加速効果を増進することが分かった。また、比較例9、10および比較例14~16に示すように、窒化物ではない無機フィラーを添加すると、熱分解のため射出成形ができない、もしくは最大点応力52MPa以上、分解後期の厚み減少速度0.07mm/時間以上のいずれか一方しか満たすことができないことが分かった。また、比較例11~13に示すように、環状エステルの含有量を10質量%以上22質量%以下の範囲外とすると、最大点応力52MPa以上を満たすことができないことが分かった。
 本発明の成形体は分解速度が高く、例えば、坑井掘削におけるダウンホールツールに使用することができる。

 

Claims (13)

  1.  グリコール酸重合体と、環状エステルと、無機フィラーとを含む組成物からなり、
     前記組成物における、前記環状エステルの含有量は10質量%以上22質量%以下であり、前記無機フィラーの含有量は0.1質量%以上15質量%以下であり、
     前記無機フィラーは、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの無機フィラーであり、
     厚みまたは直径は5mm超である、成形体。
  2.  49℃の水中に保持したときに、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が0.070mm/時間以上である、請求項1に記載の成形体。
  3.  49℃における引張強度が52MPa以上であり、
     49℃の水中に保持したときに、初期厚みから5mm以上減少後における厚み減少速度が0.070mm/時間以上である、請求項1に記載の成形体。
  4.  前記組成物における、前記環状エステルがグリコリドである、請求項1に記載の成形体。
  5.  前記組成物における、前記環状エステルの含有量が20質量%以下である、請求項1に記載の成形体。
  6.  前記組成物における、前記無機フィラーの含有量が10質量%以下である、請求項5に記載の成形体。
  7.  前記グリコール酸重合体が、グリコール酸由来の繰り返し単位からなる直鎖状の高分子鎖Aが、該高分子鎖Aとは異なる高分子鎖Bに化学結合してなる共重合体である、請求項1に記載の成形体。
  8.  前記高分子鎖Bが、ガラス転移温度が45℃未満である高分子化合物由来である、請求項7に記載の成形体。
  9.  前記グリコール酸重合体が、前記高分子鎖Aと前記高分子鎖Bとのブロック共重合体である、請求項7に記載の成形体。
  10.  前記グリコール酸重合体がグリコール酸の単独重合体である、請求項1に記載の成形体。
  11.  前記組成物の重量平均分子量が15万以上50万以下である、請求項1に記載の成形体。
  12.  請求項1~11のいずれか1項に記載の成形体からなる、ダウンホールツール部材。
  13.  請求項12に記載のダウンホールツール部材を含む、ダウンホールツール。
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