JP4186477B2 - 樹脂組成物ならびにそれからなる成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶化特性、耐熱性に優れた樹脂組成物、およびこの樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸樹脂は、生分解性ポリマーの中では高い融点を持ち、また溶融成形可能であることから、実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は結晶化速度が遅いため、結晶化させて成形品として用いるには限界があった。例えばポリ乳酸樹脂を射出成形する場合には、長い成形サイクル時間や成形後の熱処理を必要とすること、および成形時や熱処理時の変形が大きいことなどの実用的に大きな問題があった。また、融点が低いことから高温での使用に制限があるため、その用途は限られたものであった。
【0003】
一方、ポリアセタール樹脂は、機械特性や成形性などバランスに優れた樹脂であることから、射出成形品として広く用いられているが、さらなる耐熱性の向上が求められている。
【0004】
2種またはそれ以上のポリマーを配合して用いる技術については、ポリマーアロイとして広く知られており、このポリマーアロイは個々のポリマーの欠点を改良する目的で広く利用されている。しかしながら、2種以上のポリマーを混合した場合、多くはポリマー同士の分散性が悪く、ペレットや成形品の形状に加工できなかったり、劣った特性を示す傾向となる。
【0005】
しかし、まれに2種のポリマーが均一な非晶相を形成する場合があって、この種のものは、一般に相溶性または混和性のポリマーアロイとして知られており、優れた特性を示すことが期待されているが、その例は少ない。
【0006】
ポリ乳酸樹脂と相溶性のあるポリマーとしては、ポリエチレングリコール(例えば、Polymer 37(26),5849−5857(1996))や、ポリメチルメタクリレート(例えば、Polymer 39(26),6891−6897(1998))が知られているが、これらのポリマーを混合した場合には、ポリ乳酸樹脂の強度や結晶性が大きく低下するという問題があった。
【0007】
また、ポリアセタール樹脂と相溶性のあるポリマーとしては、ポリビニルフェノール(例えば、Polymer 33(4),760−766(1992))が知られているが、このポリビニルフェノールは分子量が一般に低いことから、混合後の樹脂物性が低下するという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明は、結晶化特性、耐熱性に優れた樹脂組成物、およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂及びポリアセタール樹脂を含有してなる樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂が、L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方を含有するか、またはL−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸セグメントからなるブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物が、優れた特性を有することを見い出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)ポリ乳酸樹脂及び(B)ポリアセタール樹脂を含有してなる樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂が、(A−1)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方を含有し、少なくとも一方の重量平均分子量が13万以上30万以下であるポリ乳酸樹脂および/または(A−2)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸セグメントからなり、重量平均分子量が12万以上50万以下であるブロック共重合体であり、樹脂組成物中の(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂とが相溶化していることを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。さらに、樹脂組成物が単一のガラス転移温度を示すことが好ましく、樹脂組成物中の結晶化温度が、(B)ポリアセタール樹脂の結晶化温度より0.5℃以上低下していることが好ましい。
【0012】
なお、本発明の樹脂組成物においては、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂の配合量が99重量部以下50重量部以上であること、
(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(B)ポリアセタール樹脂の配合量が99重量部以下50重量部超であること、
(A)ポリ乳酸樹脂が(A−1)ポリL乳酸樹脂とポリD乳酸樹脂との比率が95:5〜5:95であるか、または(A−2)ブロック共重合体におけるポリL乳酸セグメントとポリD乳酸セグメントの量の比率が95:5〜5:95であること、
(A)ポリ乳酸樹脂(A−1)L−乳酸単位を80モル%以上有するポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を80モル%以上有するポリD乳酸樹脂の両方を含有するか、または(A−2)L−乳酸単位を80モル%以上有するポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を80モル%以上有するポリD乳酸セグメントからなるブロック共重合体であること、
ポリ乳酸樹脂(A−1)において、ポリL乳酸樹脂の重量平均分子量Mw(L)とポリD乳酸樹脂の重量平均分子量Mw(D)について、Mw(L)/Mw(D)またはMw(D)/Mw(L)のいずれか大きいほうの値が2以上であること、
(A)ポリ乳酸樹脂の融点が190℃以上であること、
(B)ポリアセタール樹脂が、ポリアセタールコポリマーであること、
さらに結晶化促進剤を含むこと、が好ましい条件として挙げられ、これらの条件を適用した場合には一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0013】
また、本発明の成形品は、上記の樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いられる(A)ポリ乳酸樹脂としては、(A−1)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方を含有するポリ乳酸樹脂、(A−2)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸セグメントからなるブロック共重合体であるが、(A)ポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂(A−1)とポリ乳酸ブロック共重合体(A−2)を同時に含んでいてもよい。
【0016】
本発明において使用するポリ乳酸には、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。共重合成分は、ポリL乳酸樹脂またはセグメントとポリD乳酸樹脂またはセグメントの両方に含まれていてもよいし、どちらか一方にだけ含まれていてもよい。他の共重合成分としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。これら他の共重合成分の共重合割合は、本発明の効果を損なわない程度であり、全単量体中、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明における(A−1)成分は、L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂およびD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方を含有するポリ乳酸樹脂である。L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂としては、L−乳酸単位を80%以上含んでいることが好ましく、さらに90%以上含まれていることが好ましく、95%以上含んでいることがさらに好ましい。D−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂としては、D−乳酸単位を80%以上含んでいることが好ましく、さらに90%以上含まれていることが好ましく、95%以上含んでいることがさらに好ましい。
【0018】
本発明において、ポリL乳酸樹脂とポリD乳酸樹脂の重量比は、特に限定されるものではないが、95:5〜5:95であることが好ましく90:10〜10:90であることがさらに好ましく、70:30〜30:70であることがさらに好ましく、60:40〜40:60であることが特に好ましい。
【0019】
本発明において使用するポリ乳酸樹脂(A−1)においては、L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂とD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂のうち、少なくとも一方の重量平均分子量が13万以上30万以下である。また、L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂とD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方の重量平均分子量が1万以上であることが好ましく、3万以上であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明において使用するポリ乳酸樹脂(A−1)においては、L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂の重量平均分子量Mw(L)とD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の重量平均分子量Mw(D)について、Mw(L)/Mw(D)またはMw(D)/Mw(L)のいずれか大きい値が2以上であることが好ましく、さらには3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましい。
【0021】
(A−1)成分における上記好ましいポリL乳酸樹脂とポリD乳酸樹脂との組み合わせの混合物は、容易にステレオコンプレックスを形成するが、本発明におては、このような組み合わせのポリ乳酸樹脂をポリアセタール樹脂と配合することにより、優れた結晶化特性を達成することができる。
【0022】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A−1)の融解温度は、190℃以上が好ましく、さらに200℃以上が好ましく、210℃以上であることが特に好ましい。ここでいうポリ乳酸樹脂は、ポリL乳酸樹脂とポリD乳酸樹脂の混合物の融点を指す。ポリ乳酸樹脂は、特に前記好ましい態様において、容易にステレオコンプレックスを形成することができ、この場合には融解温度を190℃以上にすることが可能であり、他の共重合成分が少ない場合には、融解温度をより高くすることができる。
【0023】
(A)上記ポリL乳酸樹脂、ポリD乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0024】
本発明における(A−2)成分は、L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸セグメントからなるブロック共重合体である。
【0025】
上記ブロック共重合体において、L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂またはセグメントとしては、L−乳酸単位を80%以上含んでいることが好ましく、さらに90%以上含まれていることが好ましく、95%以上含んでいることがさらに好ましい。D−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂またはセグメントとしては、D−乳酸単位を80%以上含んでいることが好ましく、さらに90%以上含まれていることが好ましく、95%以上含んでいることがさらに好ましい。
【0026】
上記ブロック共重合体におけるポリL乳酸セグメントとポリD乳酸セグメントの重量比は、特に限定されるものではないが、95:5〜5:95であることが好ましく90:10〜10:90であることがさらに好ましく、70:30〜30:70であることがさらに好ましく、60:40〜40:60であることが特に好ましい。
【0027】
上記ブロック共重合体の重量平均分子量は、12万以上50万以下である。
【0028】
本発明において使用するポリ乳酸ブロック共重合体(A−2)においては、ブロック共重合体のセグメント1単位の最小重量平均分子量は、5000以上であることがより好ましい。
【0029】
上記好ましいブロック共重合体は、容易にステレオコンプレックスを形成するものであり、かかるブロック共重合体をポリアセタール樹脂と配合することにより、優れた結晶化特性を達成することができる。
【0030】
なお、本発明において、重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
【0031】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A−2)の融解温度は、190℃以上が好ましく、さらに200℃以上が好ましく、210℃以上であることが特に好ましい。ここでいうポリ乳酸樹脂は、ブロック共重合体樹脂の融点を指す。ポリ乳酸樹脂は、特に前記好ましい態様において、容易にステレオコンプレックスを形成することができ、この場合には融解温度を190℃以上にすることが可能であり、他の共重合成分が少ない場合には、融解温度をより高くすることができる。
【0032】
ポリ乳酸ブロック共重合体(A−2)の製造方法としては、ポリL乳酸ポリマーまたはポリD乳酸ポリマー中で、そのセグメントのモノマー単位の対掌体モノマーを重合する方法や、ポリL乳酸ポリマー及びポリD乳酸ポリマーを多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコール、および多価エポキシ化合物から選択される多官能性化合物で結合させる方法などを挙げることができる。
【0033】
例えば、ポリL乳酸ポリマーまたはポリD乳酸ポリマー中で、そのセグメントのモノマー単位の対掌体モノマーを重合する方法においては、下記(1)および(2)の工程、下記(1)〜(3)の工程、または下記(1)〜(4)の工程を行うことにより製造するのが好ましい。
(1)水酸基またはアミノ基を分子内に2個以上含有する化合物を重合開始剤として用い、L−乳酸またはD−乳酸単位からなるポリマー(I)を製造する第1工程。
(2)ポリマー(I)に対して、ポリマー(I)のモノマー単位の対掌体単位をモノマー単位とするセグメントを結合させたポリマー(II)を製造する第2工程。
(3)前工程で得られたポリマーに対して、前工程で結合させたセグメントのモノマー単位の対掌体単位をモノマー単位とするセグメントを結合させたポリマーを製造する第3工程。
(4)(3)の工程を繰り返す第4工程。
【0034】
また、ポリL乳酸ポリマー及びポリD乳酸ポリマーを多官能性化合物で結合させる方法としては、例えば、ポリL乳酸ポリマー及びポリD乳酸ポリマーを多官能性化合物とドライブレンドした後に押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。
【0035】
ポリ乳酸の各セグメントの製造においては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0036】
本発明に用いられる(B)ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーであり、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として、重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーのいずれであってもよく、また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわち、ブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーのいずれであっても良く、これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からポリアセタールコポリマーであることが好ましい。
【0037】
本発明における(B)ポリアセタール樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造できる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法などが挙げられる。
【0038】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキシドや1,3−ジオキソランなどの共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型攪拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去して製造する方法などが挙げられる。
【0039】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTMD1238法によるメルトフローレート(MFR)が測定可能であり、MFRが1.0〜50g/10分の範囲のものが好ましく、1.5〜35g/10分のものであることが特に好ましい。
【0040】
また、(B)ポリアセタール樹脂としては、あらかじめ熱安定剤や発生ガス補足剤を含有しているものを用いることが好ましい。
【0041】
なお、ポリアセタール樹脂の分解が促進されることにより組成物の耐久性や相溶性を損なうなど、組成物自体の特性に強い影響を与える可能性の高いホルムアルデヒドについては、多くとも樹脂組成物に対して、500ppm未満にとどめておくのが好ましく、さらに250ppm以下にとどめておくのが好ましく、さらに100ppm以下にとどめおくのが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0042】
本発明においては、結晶化特性、耐熱性に優れた組成物が得られることを特徴とするが、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂との配合組成によって特に効果を奏する特性が異なる。(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂99重量部以下50重量部以上、特にポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部以上を配合してなる樹脂組成物においては、ポリ乳酸樹脂の特性を改良する点で有用であり、この樹脂組成物は結晶化特性や耐熱性の改良に特に効果がある。また、この樹脂組成物においては、ポリ乳酸が有する特性を活かして、生分解性を伴ってもかまわない。
【0043】
また、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂99重量部以下50重量部超、特にポリアセタール樹脂99重量部以下60重量部以上を配合してなる樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂の特性を改良することが可能であり、特に加工性や耐熱性の改良に効果がある。
【0044】
上記の如き態様により(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂とを配合する場合、両者は通常相溶化した状態となる。ここでいう「相溶化」とは、分子レベルで非晶相内に均一相を形成する重合体の混合物を形成することを説明するために用いられる。つまり、配合物の一方または両方が結晶相および非晶相の両方を形成する場合、相溶性とは、非晶相が分子レベルで混合していることを意味する。
【0045】
配合物中の相溶性の判断は、いくつかの方法で行うことができる。相溶性について判断する最も一般的な方法は、ガラス転移温度で判断する方法である。相溶性配合物中では、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、差動走査熱量計(DSC)で測定する方法、および動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
【0046】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は高結晶性であるために、ポリアセタール樹脂の含有量が多い場合には、ガラス転移温度が不明確になるという問題がある。この場合の相溶性の判断としては、ポリアセタール樹脂の結晶化温度を用いることができる。すなわち、ポリアセタール樹脂がそれ自体よりも結晶化速度の遅い樹脂と相溶性配合物を形成した場合には、ポリアセタール樹脂の結晶化速度が単体の場合よりも低下するからである。したがって、この結晶化速度の低下を、DSCで測定した降温時の結晶化温度の低下で判断することができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物では、樹脂組成物中のポリアセタール樹脂の降温時の結晶化温度が、ポリアセタール樹脂単独の結晶化温度よりも低い温度を示す。好ましい結晶化温度の低下は組成によって異なる。
【0048】
(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超及びポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満を配合する場合には、DSCにより降温速度20℃/分で測定したポリアセタール樹脂単独に対する結晶化温度の低下が通常5℃以上となり、好ましい態様においては7℃以上となる。(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂60〜40重量部及びポリアセタール樹脂40〜60重量部を配合する場合には、ポリアセタール樹脂単独に対する結晶化温度の低下は通常2℃以上となり、好ましい態様においては4℃以上となる。(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂40重量部未満1重量部以上及びポリアセタール樹脂60重量部超99重量部以下を配合した場合には、ポリアセタール樹脂単独に対する結晶化温度の低下は通常0.2℃以上となり、好ましい態様においては0.5℃以上となる。
【0049】
また、相溶性配合物からフイルムを作成する場合、光学的に透明なものであるのに対して、非相溶性の配合物から作成したフイルムは一般的に不透明である。この方法も、相溶性の判断として用いることができる。しかしながら、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂の配合物のように、両者が結晶性樹脂である場合には、相溶性であってもどちらか一方の結晶化により不透明になる場合があり、フイルムが不透明であるからといって、非相溶性であることを示しているわけではないが、本発明において、ポリ乳酸の含有量が比較的多い場合には、相溶性の判断として有効である。
【0050】
例えば、本発明の樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂の含有量が多い領域では、0℃に急冷することにより、膜厚100μmで実質的に透明のフイルムを形成することができ、さらには、膜厚100μmで90%以上の光線透過率を有するフイルムを形成することができる。また、さらに低い温度に急冷することによって、ポリ乳酸の含有量が少ない領域でも、実質的に透明のフィルムを得ることができる。
【0051】
また、このようにして得られた実質的に透明なフイルムは、相溶化しているポリマー量が多いため、靱性に優れ、延伸などの後加工性に優れる特徴がある。また、同様のことは、繊維などの他の成形品にも当てはまる。
【0052】
本発明においては、さらに結晶化促進剤を含むことが好ましい。結晶化促進剤としては、多種類の化合物から選択することができるが、ポリマーの結晶核の形成を促進する結晶核剤や、ポリマーを柔軟化して動きやすく結晶の成長を促進する可塑剤が好ましく使用することができる。
【0053】
本発明で使用する結晶化促進剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、30重量部以下0.01重量部以上であることが好ましく、20重量部以下0.05重量部以上であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明で結晶化促進剤として使用する結晶核剤としては、一般にポリマーの結晶核剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
【0055】
また、有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸などのポリマー、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩、および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどを挙げることができる。
【0056】
本発明で使用する結晶核剤としては、上記に例示したもののなかでも、特にタルクおよび有機カルボン酸金属塩から選択された少なくとも1種が好ましい。本発明で使用する結晶核剤は、1種のみでもよくまた2種以上の併用を行ってもよい。
【0057】
また、結晶核剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂の合計100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましく、0.05〜10重量部の範囲がより好ましく、0.1〜5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0058】
本発明で使用する可塑剤としては、一般によく知られているものを使用することができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などをあげることができる。
【0059】
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3 −ブタンジオール、1,4 −ブタンジオール、1,6 −ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0060】
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
【0061】
多価カルボン酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルアジピン酸エステルなどのセバシン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
【0062】
リン酸エステル系可塑剤の具体例としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシルおよびリン酸トリクレシルなどを挙げることができる。
【0063】
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
【0064】
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
【0065】
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイル、およびパラフィン類などを挙げることができる。
【0066】
本発明で使用する可塑剤としては、上記に例示したもののなかでも、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましい。本発明に使用する可塑剤は、1種のみでもよくまた2種以上の併用を行ってもよい。
【0067】
また、可塑剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂の合計100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましく、0.1〜20重量部の範囲がより好ましく、0.5〜10重量部の範囲がさらに好ましい。
【0068】
本発明の樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で強化材(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ(天然、合成)、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトまたは白土など)、安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤、離形剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、帯電防止剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0069】
また、本発明の樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質ポリオレフィン系ポリマー、各種コアシュル型エラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーなど)などの少なくとも1種以上をさらに添加することができる。
【0070】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、独特の特性を持つ組成物であり、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。
【0072】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、およびブロー成形品などが挙げられ、シート、フイルム、ボトル、繊維・布、不織布、他の材料との複合材などとしても有用である。また、これらの成形品は、建築土木用部材、農業用資材、園芸用資材、電気・電子部品、自動車部品、医療材料、衣料および日用品など各種用途に利用することができる。
【0073】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0074】
[実施例1〜6、比較例1〜7]
D体の含有量が2%であり、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるPMMA換算の重量平均分子量が表1に示した値であるポリL乳酸樹脂、L体の含有量が1.5%であり、PMMA換算の重量平均分子量が表1に示した値であるポリD乳酸樹脂、ASTMD1238法に従い190℃で測定したメルトインデックス値が27g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS731)、結晶核剤としてタルク(富士タルク社製LMS300)を表1に示した割合で混合し、20mm径の1軸押出機で、温度220℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0075】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度、融解温度、降温時のポリアセタール樹脂の結晶化温度、降温時の結晶化開始温度をDSCを用いて昇降温速度20℃/分で測定した。なお、使用したポリアセタール単独の降温時の結晶化温度は140℃であった。本実施例においては、ガラス転移温度と降温時のポリアセタール樹脂の結晶化温度の低下は相溶性化していることを意味し、降温時の結晶化開始温度の上昇は、結晶化速度の向上を意味する。
【0076】
また、得られた樹脂組成物を、温度180℃でプレスを行うことにより、厚さ2mmのシートを作成した。得られたシートから幅1cm、長さ10cmの短冊状シートを切り出し、このシートを160℃の熱風オーブン中で30分間熱処理し、シートの変形の状態を目視で観測した。これらの結果を表1に併せて示す。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例で記載した本発明の組成物では、ガラス転移温度の低下及びポリアセタールの降温結晶化温度の低下から、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂が相溶性であることがわかる。また、比較例に比べて結晶化開始温度が高くなっており、結晶化特性に優れていることがわかる。また、熱処理時の変形なく、耐熱性に優れていることもわかる。
【0079】
なお、表1において、ポリL乳酸樹脂とポリD乳酸樹脂の両方を用い、ステレオコンプレックスを形成した場合には、融解温度が高くなるので、220℃以上の融解温度を示している。融解温度が二つ記載されているもの中で、実施例1〜4、実施例6は低温側がポリアセタール樹脂の融解温度、高温側がポリ乳酸樹脂の融解温度を示しており、ポリ乳酸樹脂がステレオコンプレックスを形成し、かつポリアセアール樹脂を含有することで、結晶化速度や耐熱性が大きく改善されたと考えられる。また、実施例5では、高い方の融点はポリ乳酸樹脂の融解温度であるが融解ピークは小さくステレオコンプレックスの形成量は少ないものの、ポリアセタール樹脂を含有することで優れた特性を示している。
【0080】
これらの結果から、本発明の樹脂組成物は、結晶化特性、耐熱性に優れていることがわかる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の樹脂組成物は、結晶化特性および耐熱性に優れており、この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の特性を生かして建築土木用部材、農業用資材、園芸用資材、電気・電子部品、自動車部品、医療材料、衣料および日用品など各種用途に利用することができる。
Claims (12)
- (A)ポリ乳酸樹脂及び(B)ポリアセタール樹脂を含有してなる樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂が、(A−1)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方を含有し、少なくとも一方の重量平均分子量が13万以上30万以下であるポリ乳酸樹脂および/または(A−2)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸セグメントからなり、重量平均分子量が12万以上50万以下であるブロック共重合体であり、樹脂組成物中の(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリアセタール樹脂とが相溶化していることを特徴とする樹脂組成物。
- (A)ポリ乳酸樹脂及び(B)ポリアセタール樹脂を含有してなる樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂が、(A−1)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方を含有するポリ乳酸樹脂および/または(A−2)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸セグメントからなるブロック共重合体であり、樹脂組成物が単一のガラス転移温度を示すことを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- (A)ポリ乳酸樹脂及び(B)ポリアセタール樹脂を含有してなる樹脂組成物であり、ポリ乳酸樹脂が、(A−1)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸樹脂の両方を含有するポリ乳酸樹脂および/または(A−2)L−乳酸単位を主成分とするポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を主成分とするポリD乳酸セグメントからなるブロック共重合体であり、樹脂組成物中の結晶化温度が、(B)ポリアセタール樹脂の結晶化温度より0.5℃以上低下していることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 前記(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、前記(A)ポリ乳酸樹脂の配合量が99重量部以下50重量部以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、前記(B)ポリアセタール樹脂の配合量が99重量部以下50重量部超であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記(A)ポリ乳酸樹脂が(A−1)ポリL乳酸樹脂とポリD乳酸樹脂との比率が95:5〜5:95であるか、または(A−2)ブロック共重合体におけるポリL乳酸セグメントとポリD乳酸セグメントの量の比率が95:5〜5:95であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記(A)ポリ乳酸樹脂が、(A−1)L−乳酸単位を80モル%以上有するポリL乳酸樹脂及びD−乳酸単位を80モル%以上有するポリD乳酸樹脂の両方を含有するか、または(A−2)L−乳酸単位を80モル%以上有するポリL乳酸セグメントとD−乳酸単位を80モル%以上有するポリD乳酸セグメントからなるブロック共重合体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリ乳酸樹脂(A−1)において、ポリL乳酸樹脂の重量平均分子量Mw(L)とポリD乳酸樹脂の重量平均分子量Mw(D)について、Mw(L)/Mw(D)またはMw(D)/Mw(L)のいずれか大きいほうの値が2以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記(A)ポリ乳酸樹脂の融点が190℃以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記(B)ポリアセタール樹脂が、ポリアセタールコポリマーであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- さらに結晶化促進剤を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
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